資料3 基本方針改定に係る障害者団体からの意見一覧 後半(15時30分から17時ヒアリング分) 目次 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会・・・・・・・・1 一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会・・・・・・・・4 公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会・・・・・・・・・6 特定非営利活動法人 難病のこども支援全国ネットワーク・・10 特定非営利活動法人 日本高次脳機能障害友の会・・・・・・12 特定非営利活動法人 日本失語症協議会・・・・・・・・・・17 一般社団法人 日本自閉症協会・・・・・・・・・・・・・・22 公益財団法人 日本ダウン症協会・・・・・・・・・・・・・25 一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会・・・・・・・・・28 p1 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会 1.(1)について (御意見等) 「正当な理由の判断の視点」について、下記下線部分の変更が必要である。 (現行)行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 -- た (変更後)行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得なければならない若しくは理解を得るよう努める。 変更の理由として、「努める」は努力義務であり、実効性に乏しい。加えて「望ましい」では好ましい(感情的な気持ち)であり現行規定では実効性が皆無である。 1.(2)1について (御意見等) 「過重な負担」について、下記下線部分の変更が必要である。 (現行)行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 -- た (変更後)行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得なければならない若しくは理解を得るよう努める。 変更の理由は、「正当な理由の判断の視点」と同じである。 「合理的配慮」及び「過重な負担」について、障害のある人の社会参加に必要な場合は多いが、例えば「働く」中で障害の度合いによって一方的に「役割」を与えられていることはないか?障害があっても「やりたいこと」「できること」はあるので、当人の声を聴いた上での「合理的配慮」、「過重な負担」に関する事例が増えると、障害のある人の社会参加が増えるのでは p2 ないか? 1.(2)2について (御意見等) 事前に事業者又は行政機関等は、主な業務内容を障害者に対して示し、どのような合理的な配慮があれば過重な負担にならないかを検討し「書面に残した記録」を双方が保管する。また、事業者又は行政機関等は現場職員に対し伝達を行う。 ヒアリングの実施場所について、障害者が普段利用している場所で行ってみてはどうか? 障害のある人にもできることはある。ただ、いきなりはできないこともある。繰り返し説明と実施をしてもらい、評価をして、現状を説明して再度実施することが大事ではないか。必要なことは「本人が話しやすい雰囲気」を日々の声掛けの中から作ることである。 (根拠となる事例) 事業者に対して障害的な特性や実務としてできないことについて説明し理解を得ていたものの、配属先の先の職員には伝わっていなかった。障害者としては受けられるはずの合理的な配慮を受けることができず、事業者(現場職員)としては合理的な配慮が必要であるという認識を持っていなかった。 2.1について (御意見等) 相談機関(窓口)が明確でない・自治体によって格差がある。地方自治体によって格差があり、市区町村毎に相談窓口と電話番号を掲載している自治体もあれば、担当部署のみしか掲載していない自治体も存在している。 障害のある人が多数(マジョリティ)で障害のない人が少数(マイノリティ)の社会であったり、普段から相談しやすい雰囲気であればよいのだが、実際には、差別を受けたり、受けていると感じている人は少数(マイノリティ)であり、相談することは気が重いのではないか。少数(マイノリティ)の立場から相談することはハードルが低くないと思うので、相談しやすい雰囲気を作ることが重要である。 p3 2.2について (御意見等) 「事例の収集・共有」で終わるのではなく、個人情報に慎重に配慮した上で「広く公開」することが必要である。また、地域で事例について意見を語り合う機会が必要である。語り合うのは当事者だけでなく、民生委員など近所の身近な人などの視点(意見)も必要である。障害のある人もない人も「同じところで語り合う」と、今まで見えていない視点が見えてくる可能性がある。また、対応の方法として主導は行政(社協など)にしてほしい。 対応の方法の一つとしては、色んな生きづらさを抱える人同士が、多くの人の前で自分の置かれている状況について声を出す機会を作る。その様子を、障害のない人にこそ聴く機会を作る。 「(3)地域住民等に対する啓発活動」について、内閣府は障害者週間関連事業(弊会も例年セミナーを実施している)以外に、啓発物の作成・配布等にも力を入れてほしい。「啓発活動に積極的に取り組む」ための課題として、例えば弊会は毎年「国際吃音の啓発の日(10月22日)」の時期に路上で啓発グッズ配布などの啓発活動を行っているが、私たちのような当事者団体(セルフヘルプグループなど)ともっと連携していくことは課題ではないだろうか?現状、弊会と内閣府との連携は、「障害者週間連続セミナー」のみである。 「4 障害者差別解消支援地域協議会」について、「障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている」とあるが、協議会が身近な地域において重要な役割を果たすならば、「組織しなければならない」にするべきである。さらに、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」という言葉にあるように、協議会には障害のある当事者や当事者団体(セルフヘルプグループなど)が関わるべきである。例えば弊会は吃音のセルフヘルプグループ連絡協議会として、全国各地から約40の団体が加盟しているが、それぞれの地域で各団体が協議会に参画することで、協議会の取組は活性化し、吃音に関する障害者差別の解消に効果的ではないだろうか? 3.について (御意見等) 罰則規定を設ける。 (以上) p4 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会 1.(2)1について (御意見等) (1)障害児の親に対する「合理的配慮」の必要性を加えていただきたい。心臓病児は、急性期を過ぎても継続した通院や入院といった医療における体調管理が必要である。また、重症な疾患をもつ子どもでは保育園の入園も困難なケースが多い。さらに、就学後も親が付き添わなければならない、または自宅での待機が必要などといったことも多い。在宅酸素療法などの医療的な支援が必要な病児の場合にはそれが顕著である。そのために、親が働くことを断念せざるをえない状況になっている。障害があっても安心して通える保育園、親が付き添わなくても通える学校にしていくこととあわせて、障害児を育てている親であっても社会とのつながりをもち、さらには働き続けられるような配慮が行われることが必要です。 (2)医療の進歩にあわせた配慮、シームレスな配慮への見直しを加えていただきたい。基本方針に述べられている「障害の状態に変化があるため」「提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要」とあることについての加筆をお願いしたい。内部障害共通の特徴として、医学の進歩により医学的な状態は日々変化していくが、それは社会的な状況の変化ともつながる。また、幼少期〜青年期〜成人期といった年齢によっても変化していく。さらに、疾患名が同じであっても個別に違う。 (3)「3 合理的な配慮(1)合理的な配慮の基本的な考え方のウの意思の表明」に関して、外見では障害がわからない内部障害者ヘの配慮を加えていただきたい。心臓病患者のような内部障害者は、内部に障害があるため、外見のみでは障害者と判断できない場合がある。外見では障害があることがわからないことから、本人の意思表明に周囲が気づきにくく、本人が意思表明を逡巡し社会的障壁の除去の必要性に周囲が気づかないことも多い。このような内部障害者に対しては、行政機関等及び事業者が周囲にあらかじめ障害について認識させた上で、社会的障壁の除去のために必要な配慮が何かを障害者本人や家族に問いかける等をすることが望ましい。 (根拠となる事例) (3)について 全国心臓病の子どもを守る会が2018年に行ったアンケートでは、就労している心臓病者が p5 同僚に病気を伝えたと言う回答が、障害者雇用で35%、一般雇用で23%と低い割合になっている。回答から、就労にあたって人事担当には話をしているが、実際に勤務する職場の同僚には障害を理解されていないとことがわかる。一方、心臓病者が仕事を辞めた理由として6割が「体力的に働けなくなった」と回答しており、働くために配慮して欲しいこととして、5割が「体調に合わせた仕事」と回答している。必要な配慮があれば離職しなかった内部障害者が離職により生活の維持が困難になっている。 まずは外見では障害があるとわからない内部障害者に障害があることを周囲に認識させた上で、必要な配慮について内部障害者と建設的な対話をして欲しい。 就労の現場だけでなく、学校等においても、外見ではわからない障害のため、授業や行事を欠席せざるを得ない、体育を見学することが、差別につながることもある。就学時、進級時、就職時など周囲と新たな関係を築く局面において、行政機関や事業者が周囲に外見ではわからない内部障害について理解させる取り組みをすることが大切である。 2.1について (御意見等) 相談体制の中に疾患特性を理解できるように医療との連携を進めるべきである。心臓病患者は、疾患、治療状況、年齢などにより個別に抱える日常生活・社会生活上での障害は多様である。その理解のためには、本人からの意見を充分に聞くとともに、専門医療機関、専門医から医学的な助言をえる必要がある。 第三者から見ると「障害を理由とする差別」に相当すると思われる事例でも、当事者がそう考えていないこともある。当事者への事例周知など強めていただきたい。また「相談窓口」がどこにあるのかの周知も強めていただきたい。 (以上) p6 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会 1.(1)について (御意見等) 「正当な理由の判断の視点」 --た 正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましいとあるが、「努める必要がある」等、きちんとした対応を求める記述に修正する。 (根拠となる事例) 理由が不明確なままでは、当事者にとっては「正当な理由」とはならないと考えられる。 障害特性によっては理解が難しい場合があっても、手を尽くして理解を得られるような対応が必要と考える。 事例1 主治医との関係性が悪くなり、診察中に当事者が暴力的になったため診察は中断された。その後、落ち着いてから当事者がお詫びをしたがくすりの処方も拒否された。薬を服用することもできず、主治医から見放されたという思いで病状が悪化した。 状態が落ち着いたところで、主治医から正当な理由の説明がなされ、当事者の納得が得られていれば、その後の経過は変わっていた可能性がある。 1.(2)1について(合理的配慮について) (御意見等) 知識や理解の欠如から生じる合理的配慮以前の認識のなかで、どこまでが合理的配慮なのかが徹底しにくい法律である。経営上過度の負担が生じない範囲という説明が利益を追求するのが民間事業体なので、適正な理解が浸透することなしに、合理的配慮の範囲内という線引きは出来ないのではないか。少しでも負担が生じれば配慮できないという考え方になる。人手がないから障害者を雇用する。それには障害者が働きやすい環境が必要だから配慮するのでは人手が足りれば配慮しないと言うことになる。 これを避けるには合理的配慮が曖昧なものではないものにするために、定義および過重負担について分かりやすくしっかりと法に明記する必要がある。(この点は情勢金やその財源がないと実施できないとのことにもなるので、財源の有無にかかわらず当然やるべきこととするためには削除したほうが良いです。) (根拠となる事例) p7 在職中親しかった会社の経営者に「障害者を雇用できないかと相談したところ、「事務的な仕事では精神の人は病状により安定性がない。現業なら人数を増やせば良い。しかし、安全上怖い。技術上安全対策は可能でもその金がない。」といわれた。 1.(2)2について(建設的対話を行うために) (御意見等) 障害者と事業者又は行政機関等の双方の建設的対話を行うために必要なことは、障害当事者が障害を理由に人格と個性が尊重されないことがないように当然の権利意識を持つことに加え、事業者又は行政機関等の従事者が障害理解を深めることの両方が必要であると考えます。(差別解消法「第1条 障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする」のワードから入れてみました) (根拠となる事例) 精神障害当事者が出産のために近隣の産科に受診したが、統合失調症で服薬をしていると伝えると、「そういう方は当院では受けることができません。」と当事者の顔も見ることなく診察も検査も拒否された。当事者は受信拒否されたことに落胆し、泣き寝入りすることしかできなかった。当事者がまっとうな権利意識を持っていたなら、冷静に診察してもらえない理由を問いかけ、どうしたら良いか相談し、対応可能な医療機関を紹介してもらうなどの可能性があったかもしれない。一方で、産科医師が精神障害への理解があったならば、もう少し丁寧な説明や対応ができたのではないだろうか。この事例から、建設的対話のためには双方の意識改革の必要性を実感する。 2.1について(障害を理由とする差別に関する相談体制について) (御意見等) 差別的な対応を受けたとしても、どこに相談したら良いのかわからないという現状が見られる。相談窓口の明確化、広報を強化する必要があるのではないか。都道府県や市区町村によって窓口の名称が異なる場合があるのではないか。わかりやすい名称で、ワンストップの窓口の整備が必要ではないか。(障害者差別に特化した窓口という意味ではない) 2.2について p8 (御意見等) 「障害を理由とする差別に関する啓発活動」 --た 啓発活動も必要だが、義務教育の中で障害について、差別について、合理的配慮について、建設的対話についてなど、年齢相応の内容で繰り返し学ぶ機会が必要である。基本方針の中で、義務教育・中等教育・高等教育での障害理解への教育の推進を明記していただきたい。 事例の収集・共有について --た 事例収集は必要なことだが、その事例から何を見出すかがより重要だと考えられる。集められた事例を基に、更に調査・研究し、それを障害者差別解消に役立てるものとする必要がある。 3.について (御意見等) (1)基本方針の文章全体を通して、「期待する」「望ましい」「期待される」という表現は「推し進める」「する」「こととする」等と改める。 (理由) 合理的配慮が義務化されたことにより、障害者差別解消を一層、推し進めるという意思を明確にするために、曖昧な表現は修正すべきと考えるため。 (2)福祉サービス提供者(支援者)の障害理解、特に精神障害者への理解がまだまだ不足していることを実感している。精神障害を始めとする「見えない障害」「理解が難しい障害」についての研鑽の機会を十二分に進める必要がある。 (理由) 居宅介護事業所に精神障害者のヘルパー派遣を依頼しても、「精神は扱っていません」と断られることが多く、事業所探しに苦労する。あるいは、精神障害による疲れやすさがあるために、日常的には家事・育児に対応して疲れるので、ヘルパー訪問の日はゆっくり休みたいのだが、「訪問中にベッドに横になり携帯を触っていた」とヘルパーから相談支援事業所にクレームが入ったために、ヘルパー訪問の日には当事者が緊張してヘルパーに対応しなければならなくなった、などの事例があり、合理的配慮や建設的対話以前の課題解決の重要性を忘れないでいただきたい。 (その他) p9 (3)精神障害者関係者にとって一般と障害者の差別よりも障害間差別(格差)に関心が深い。 なぜ、交通料金が同じように障害手帳を持っていても精神は割引がないのか。なぜ医療費助成が精神は除外されているのか。障害年金はなぜこんなに精神は不利なのか。関係者はみんな解っているのに放置されている。これらの問題はいつどこで論議されるのでしょうか。 三障害一元化のなかで障害者間格差の問題を放置したまま、「障害を理由とする差別の解消の推進」は出来ないと思う。 (4)障害者にとって自立するためのアパートを見つけることは難しい。精神は特に難しい。これには差別意識の解消は大切であるが、公的に障害者が住めるところを提供する必要がある。そこで精神障害者が立派に社会生活を営んでいることを見せれば差別解消に最も貢献できる。 (5)先日NHKのEテレで精神障害者とコロナのことの放映がありました。このテレビの制作時点では一般の人に較べてきわめて難しいことが紹介されました。コロナでなくても精神障害者が精神科以外の身体的医療が難しい状況です。ここにも差別の問題もあります。 新型コロナは世界的にも猛威をふるう感染症で未知のことがある中でも、医療対策が全国民的課題となり、ひとりひとりの健康と命をどう守っていくのかと多くのひとが日々対応に追われています。不十分さはあるにしても、陽性者になったら医療保障として対応されます。 しかし、精神科病院に入院する要請患者には、その医療体制が保証されず、人権も命も守られない実態が浮かび上がりました。 なぜ、一般市民が受けられる治療が、精神疾患者には保障されないのでしょうか。しわ寄せのように一番弱い立場のひとたちに社会の歪が表れていることがよくわかります。 震災などの災害時もそうですが、平常時ににいくら福祉や諸政策で、セーフティーネットを装っても、実力の伴わないものは、嘯いていることが露呈されます。 素晴らしい取り組みをされている医療機関もたくさん知っていますが、番組の中で紹介されている状況は特殊ではなく、精神科医療の実態でもあります。 これらの体系的・体制的な差別についてはこの法律はどう生かされるのでしょうか。 (以上) p10 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利活動法人 難病のこども支援全国ネットワーク 1.(1)について (御意見等) 差別の定義・概念を明確化を図ることにより、実効性のあるものにするべき。 反対解釈の濫用など恣意的な解釈を防ぐための基本方針やガイドラインの策定・運用も並行して行うべき。 (根拠となる事例) 校外学習や修学旅行なども含む学校現場においては、過剰と思われる安全の確保や多人数の管理を理由として、参加の制限や機会の提供を拒否されることも多い。 1.(2)1について (御意見等) 差別の定義・概念を明確化を図ることにより、実効性のあるものにするべき。(再掲) 反対解釈の濫用など恣意的な解釈を防ぐための基本方針やガイドラインの策定・運用も並行して行なうべき。(再掲) 行政機関における合理的配慮は、民間事業主におけるそれと比べるとより高い次元のものが保証されるべき。 (根拠となる事例) 校外学習や修学旅行なども含む学校現場においては、介助者・看護師の不在(制度がない、人員が確保できない)を理由として、親の付き添いが求められるケースは枚挙に暇がない。学校や保育所などの行政機関に属する人たちの、合理的配慮の提供に対する意識が低いと感じることも多い。 1.(2)2について (御意見等) 合理的配慮の提供においては、当事者およびその家族の完全参加と同意を条件とするべき。 合理的配慮は、当事者の個別ニーズをもとに規定されるものであって、前例がないことなどを p11 理由にして一律に上限や制限を設けるべきではない。 均衡を失した又は過重な負担を理由にして合理的配慮の提供を拒む場合には、当事者およびその家族の求めに応じて、書面にてその理由と根拠等を開示すべき。 (根拠となる事例) 多くの困難事例では、均衡を失した又は過重な負担を理由にして必要な合理的配慮の提供が拒まれてしまう。(学校における介助者・看護師の配置、垂直移動のためのエレベーターの設置など) 2.1について (御意見等) 相談窓口を明確化・ワンストップ化すべき。 第三者機関による調整・助言・指導や不服申立て等の救済制度を確保すべき。 2.2について (御意見等) 地域協議会を活性化するための情報やノウハウの提供を行なうべき。 3.について (御意見等) 現場で日々困難と向き合っている当事者とその家族にとって、実効性を確保する基本方針の改定をつよく望みます。 (以上) p12 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利活動法人 日本高次脳機能障害友の会 1.(1)について (御意見等) 高次脳機能障害には病識が無いケースや判断能力が乏しいケースが存在します。高次脳機能障害により、現状での困り感や病識、先々の計画性を欠く場合、当事者と家族のニーズが相反するものとなることがあります。対話による解決が困難なケースや解決に時間を要することが不利益につながるケースもあり、「正当な理由」として優先するべきものは、本人の意思なのか、一般常識的な計画性なのか、対話による歩み寄りなのか検討する必要性があると考えております。 (根拠となる事例) 当事者は病識が無く、脱抑制、状況の判断能力の低下を認めた。家族は、当事者が脱抑制により感情のコントロールができず、些細な事で怒ることや、怒ったことを他責して問題意識を持たないことを問題視しており、病院受診や治療を希望していた。しかし、当事者本人には病識・自覚が無く、家族が病院受診を勧めても「病気や障害があるわけでは無いから病院には行かない」と怒る状況であった。 1.(2)1について (御意見等) 上記と同様に高次脳機能障害者の意思に沿う配慮をすると、家族にとっては納得のいく配慮とはならない場合があります。 (根拠となる事例) 当事者は病識が無く、状況の判断能力の低下を認め、失語症があり、言語理解にも問題があった。買い物には自分で行くことができ、買い物に行くときには母にお金をもらっていた。家庭は経済的に困窮してきていたが、診断書があれば年金の申請が可能であったため、障害年金を受給し当事者にかかる費用を年金で補填しようと家族は考えていた。しかし、当事者本人は病院にネガティブな印象を抱いており、病院受診を拒み続け、診断書が手に入らなかった。一人で買い物ができるだけの能力があること、本人が病院受診を拒んでいることから、訪問による医師の診察は断られた。 p13 1.(2)2について (御意見等) 障害者と事業者・行政機関等がお互いに歩み寄る姿勢・態度を持つことは当然ですが、お互いの意見・主張に折り合いがつけられないことがあります。そのような場合には、中立の第三者によるお互いの意見の確認・整理、解決案の調整・助言、結果や改善事項等の確認を行うことが望ましいと考えます。この場合の第三者は障害特性の理解がある者が望ましいと考えます。 (根拠となる事例) 障害者側はリスク覚悟で投資による増収をしようとしており、支援者側は節約して出費を抑えることで支出を減らそうとしていた。支援者側は投資によるリスクや障害による判断能力の低下を説明していたが、障害者側は聞く耳を持たなかった。両者の間に別の支援者が入り、双方とも資金を蓄えるという目的は同じであることを説明し、投資に利用できる資金を整理した。投資に利用できる資金はほとんどなく、その資金は節約して貯めていくこととなった。 意見の対立が起こると、障害者側の判断能力や認知機能に着目され、情報を整理して折り合いをつけるという視点が見失われがちになる。専門的な知識を持つ支援者が間に入ることでお互いが合意できたケース。 2.1について (御意見等) 相談窓口は行政のホームページなどに掲載されているが周知されておらず、インターネットを利用しない障害者は相談窓口までたどり着けないケースが存在します。差別等の問題があっても、相談先が分からず、場合によっては耐えきれず事業者との関係性が破綻するケースがあります。 行政、事業者だけでなく障害当事者やその家族、および地域住民への普及啓発も必要であると考えます。 2.2について (御意見等) 高次脳機能障害者は、地域住民からの偏見や差別的言動に心を痛めています。高次脳機能 p14 障害は「見えない障害」であり、高次脳機能障害という障害の存在を知っていないと気付けません。地域住民の理解が得られ、高次脳機能障害者も安心して暮らせる社会を実現するために、事業者側への障害・差別の理解の普及啓発に加え、地域住民への理解の普及啓発も望みます。 各都道府県および自治体に障害者差別解消支援地域協議会が設置されていますが、自治体によっては高次脳機能障害者当事者が所属していない現状があります。そのため、高次脳機能障害者の事例の収集・共有ができていない場合があります。高次脳機能障害の障害特性上、様々な障害像を呈し、行政機関や事業者に対して合理的配慮を依頼する際に高次脳機能障害当事者団体の意見は重要であると考えます。障害者差別解消支援地域協議会への高次脳機能障害当事者団体の参画を望みます。 障害者差別にあたるか否かを判断する材料となる「不当な差別的取り扱い」「正当な理由の判断の視点」「合理的配慮」「過重な負担」については、Q&Aや事例集などの具体例が無ければ分かりづらいため、事例の収集・共有は積極的に行っていただきたいと考えております。また、これらは技術の進展、社会情勢の変化等で変わり得るため、一定期間ごとの更新を行うなどして、その時代に即した事例が共有されることを望みます。 3.について (御意見等) 高次脳機能障害は脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されていることが診断基準となっており、精神障害とは発症機序が異なります。基本方針の第2の3の(1)のウで「障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)」という明記箇所に、発達障害と並列に高次脳機能障害も明記していただきたいです。それに併せるかたちで、第2の1の(1)の明記も「なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれる」という記載ではなく、2カ所それぞれに、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害、高次脳機能障害を含む。)」と明記していただきたいです。 本ヒアリングの設問「1.(1)について,「1.(2)1について」における、「不当な差別的取り扱い」「正当な理由の判断の視点」「合理的配慮」「過重な負担」の基本的な考え方については、前述のように障害当事者と家族の思いが建設的な対話により合意できないケースが存在するものの、基本方針に記載されている内容自体には賛成しております。しかし、法に則った対応がなされていない現状がありますので、下記に不当な差別的取り扱いを p15 受けた事例や、合理的配慮が得られなかった事例を記載します。 不当な差別的取り扱いを受けた事例、合理的配慮が得られなかった事例 1高次脳機能障害(遂行機能障害)の影響により、計画的に行動をすることが困難になった当事者が、子供の保育園の迎えに遅刻することが多くあった。その際に、保育園側から、どうしようもない親と捉えられ、実際に「どうしようもない親」と言われた。 2高次脳機能障害(社会的行動障害・失語症)の当事者が警察官から事情聴取された場面で、高圧的に早口で質問を投げかけられる場面があった。支援者が当事者の障害特性を説明し、ゆっくり話してあげて欲しいとお願いしたが、受け入れてもらえず、罪を犯している可能性があるという理由でそのやり取りが継続され、当事者はストレス過多となり、てんかん発作を起こし、病院に搬送された。 3復職を希望する高次脳機能障害者が企業から受けた条件が、「復職とは、もとの業務に復帰することで、それができなければ復職することは難しい」とのことであった。3年の休業期間を経て最後の企業との面談で、就業規則に記載している復職の条件として「元の状態に治癒する」に該当しないとの理由で自主退職を促され、ご本人もその条件を受け入れ退職することとなった。 休業期間の期限に至るまでに障害者職業センターと特定相談支援事業所、就労継続支援B型事業所と協働して復職を目指してきた。その中で、病前と比べて低下している能力、および、当事者が遂行可能な業務等の説明を企業に行ったが、障害者を雇用すると業務以上の人員が必要となるという理由で、以前の営業の業務に元の通り復帰してもらうこと、という復職の条件を変更してもらえなかった。復職に向けて支援をする側は、障害者雇用としての復職、労働条件の変更に伴い給与の変更、必要であれば引き続き公的サービス(服薬管理や体調管理)の継続等を提案したが、就業規則に記載がないためそのような対応は難しいという回答であった。過重な負担がない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮を行うことを求めたが、企業側からは歩み寄る姿勢や態度が感じられなかった。 4医療機関から退院して復職する際に、高次脳機能障害を有しているにも関わらず、本人が望まなかったという理由で職場調整や復職支援がなされないまま復職し、復職後に様々な問題が生じた。高次脳機能障害は当事者本人が自ら気づくことが難しい障害であり、復職後の問題等を本人が想像することは極めて困難である。病識や自覚の乏しさから p16 発せられる不用意な言葉を額面通り受け取り、必要な機関(障害者職業センター等)への引継ぎや支援が提供されなかった。 5復職した高次脳機能障害者が、以前に比べ、業務が遂行できないことから、自ら降格願いを提出した。それが受理された後で、労働組合に相談してから提出すべきだったと考え直し、降格願いの取り下げを申し出たが、高次脳機能障害により判断能力が低下していることは考慮されず、その申し出は受理されなかった。 いくつかの事例を紹介させていただきました。高次脳機能障害は脳の器質的損傷に伴う認知機能障害の総称です。今まで当たり前にできていたことが、突然うまくできなくなるだけでなく、そのことに自らが気づけないことも多々あります。社会生活において認知機能は非常に重要な役割を担っており、軽微な障害であっても重大な生きづらさに繋がる可能性があります。高次脳機能障害のある人が安心して暮らせる社会を作るためにも、高次脳機能障害の正しい理解が普及されることを強く望んでおります。 一方で、高次脳機能障害は脳機能由来の障害であるため、損傷部位の違いにより多様な症状を呈し、なかには社会的に受け入れられない言動や行動(社会的行動障害)が前面に出るケースもあります。社会的行動障害の問題とされる行動の中には、到底、社会が受け入れることができない言動や行動があることも重々理解しておりますが、だれもが当事者となる可能性を持っている障害が高次脳機能障害であるということを念頭に置いて、万が一、脳に損傷を負っても安心して暮らせる社会づくりのために何卒、公平な視点でのご検討をお願いいたします。 (以上) p17 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利活動法人 日本失語症協議会 1.失語症者の基本的人権の保障 (御意見等) 失語症の障害等級が障害の重さに比例していないこと 就労が困難で稼得能力の低い失語症者の障害年金が適切でないこと 回復期病院退院後の失語症の機能訓練施設がないこと 障害者総合支援法による機能訓練期間が障害すべてに一律であり、失語症状に対してリハビリの効果が反映されないこと 失語症者の意思疎通にかかわる支援が不足していること (根拠となる事例) 失語症に対する社会の認知度が低いため、障害サービスも含め、社会のあらゆるところで差別による生活の不自由が生じている 失語症の障害者手帳等級が3級と4級しかないことで、失語症者に有効な障害サービスがなく、当たり前の日常生活を送ることが困難となっている 稼得能力が乏しい失語症の障害者年金が2級までしかないこと(高次脳機能障害との併合認定では1級がある) 回復に時間を有する失語症の機能訓練施設が地域にほとんどないこと 失語症は回復に長期間必要であるにも関わらず、機能訓練期間が他の障害と一律に定められていること 裁判関連、警察関連、選挙権、被選挙権、意思決定場面(後見人制度等)などにおける、基本的人権にかかわる部分に失語症者にかかわる公的に認められた支援(意思疎通支援)がないこと 1.(2)1合理的配慮の提供 (御意見等) 失語症者に対する「合理的配慮」は多種類のコミュニケーション環境の整備です。 関係するすべての人が、失語症の特性を理解し、種々のコミュニケーションの方法を技術面で会得するなどして、失語症者のニーズを把握すること p18 失語症者の社会参加に必要な意思疎通支援者の派遣を実現すること 失語症者が必要とする場所には最小限コミュニケーションボートと筆記用具の設置をすること 新語、英語、和製英語等を含め、それらの使用には十分な配慮を必要とすること 病院の問診票、災害時の避難の環境説明、電気等機器の説明書等の、説明が必要な文書には、係が説明するなどの配慮を要すること パソコンやタブレット等の機器などの説明には、昨今、訪問して説明をするケースは少なく、メールによる問い合わせ、あるいは電話による問い合わせのみで、失語症者には困難な場合が多いこと。 昨今、病院等の予約には電話やメールが多用されるが、失語症者には電話での聞き取りや会話は難しく、パソコンやスマートフォンの使用も困難な場合が多いこと。 病院内での検査や診察の折に、医師や検査官の指示が聞き取りにくく、検査を受けることに不便を生じていること。 医師や看護師、検査官、薬剤師に自分の症状を明確に伝えることができず、誤診につながる例があること。検査室の案内などをされても、動線がわかりにくいこと。 診察前や、病院の精算時に名前や、生年月日を聞かれるが、言葉で言う事が困難であるので別の方法で確認するなどすること。 処方箋や検査結果などは、説明なしに見せられても、内容の理解ができないことで複雑な説明や専門用語は理解が難しく、自分の健康に不安が生じていること コロナ禍の今、会議等はリモートで開催される場合が多いが、失語症者には文字情報の少ないリモート開催会議への参加は困難となっていて、活動が制限されていること。 コロナ禍の今、マスクの着用が推奨されるが、失語症者には、マスク越しのくぐもった話は聞きづらく、内容の理解が進まないことが多くなっていること。 災害時の避難場所での、音声による案内だけなので、食事の配布を受けられなかったり、他のサービスが受けられなかったりするので、文字情報による案内があるとよいこと。 災害時の避難所は、多くの人がいて、ざわざわしていて騒がしく、聞き取りが難しい失語症者には情報を聞き取ったり、コミュニケーションをとることが困難であること。 片麻痺のある失語症者にとり、エスカレーターの片側空けの習慣や階段等の片側だけの手すりの設置など、歩行には困難を生じること 右半身まひの多い失語症の人が選挙権の行使の際に、投票用紙が小さくて紙が動いてしまう。失語症協議会は10数年前に、投票所への文鎮の設置をお願いしたが、文鎮では、ある程度の効果はあるものの、投票用紙が小さすぎて役に立たないこともある。今般、紙の下に敷いて動かなくするようなもの(製品名 スベラナイト)等のものがあるので、 p19 すべての投票所にはそれらを設置していただきたい。 (根拠となる事例) 失語症への理解がないために、赤ちゃん言葉で話しかけられたり、認知症や知的障害があると思われたりする場面が多くあること。 出先でよく置いてあるアルコール消毒容器が、手押し式になっていると片麻痺のある者が多い失語症者には利用ができないこと。 失語症者が診断を受けた際に、自分の症状を正確に伝えられなかったため、症状が重篤になるまで放置され、発見されたときには手遅れとなり、死亡された事例がある。 病院で検査を受けた際、検査官のいう事が理解できず困っていたら、言葉を理解できないと検査は受けられませんと言われ、検査を受けることができなかった事例がある。 医師から失語症は一生治らないから、あきらめなさいと言われた。(病前の様には治らないが訓練によるある程度までの改善はあるにもかかわらず。)医師(その他医療職)にも失語症に対する正しい知識を持つ必要があること。 災害時(3.11)の際、避難所での食事の連絡が音声によるアナウンスだけであったので失語症者は聞き取りができず、食事の配布を受けられなかった。また多くの人が混在している避難所では、アナウンスを聞き取ろうとしても、周りの雑音に邪魔されることで余計に聞き取りが困難になる。 リモートでの集会では、音声による会議となることが多いので、参加を見合わせた。(字幕も主催者の配慮で付く場合もあるが、失語症者に適した要点をまとめた字幕ではないため、あまり有効ではない スーパーマーケットの自動精算、レストランでのタブレット注文など、機器の取り扱いの説明もないので、操作方法が理解できず、買い物にも行けなくなった人が多くいること。 選挙権の行使のため、投票所に行ったが、係員が失語症を知らなかったため、案内をしてもらえず、投票ができず、基本的人権が損なわれた事例もある。 1.(2)2行政等との建設的な考え方 (御意見等) 行政として、多くの障害を一律に見ることなく、それぞれの障害の特性をよく学び、理解し、それぞれの障害者団体との話し合いを重ね、障害別に合理的配慮に対する施策を深慮し実施に移ることが必要。 日本全体に、それぞれの障害を持つ方々の人数の把握。生活環境の把握。それぞれに何が必要で、何が不要か、障害一つ一つに必要な合理的配慮等を考察し、効果的な施策を実施 p20 すること 最低限の基本的人権を保障すべき対策をすること (根拠となる事例) 社会に失語症への理解がないため、簡単な買い物でも失語症であることを示しても、症状自体に理解がないことも多く、多方面で生活のしづらさを感じている失語症者が多い。 この度のコロナ禍で顕著なことであるが、多くの情報が英語、和製英語、新語、特殊用語など今まで聞いたこともないような言葉で発信されることが多い(パンデミック、アラート、オーバーシュート等々)。これらは失語症者にとり理解が困難となる。公的な情報はすべての人にわかりやすくしっかりと理解できるような条件をクリアすることが必要。 失語症の相談窓口がないため、どこにも相談に行くことができない。失語症に特化した相談窓口、あるいは失語症センターが必要。 回復に長期間が必要な失語症の改善にもかかわらず、地域にいる(回復期病院退院後)失語症の機能訓練事業所がほとんど存在しないため、失語症の改善が進まず、家庭復帰、社会参加、就労、就学の機会が奪われている。行政として、失語症の回復への道筋を理解し、地域での失語症のリハビリの機会を奪う事のない環境整備が必要。 2.1障害を理由とする差別に関する相談体制が必要 (御意見等) そもそも、失語症に特化した専門の相談機関がないため、地域で暮らす失語症者には多くの不利益が生じている。一般の高次脳機能障害支援センターの相談窓口では、失語症の理解がないため相談しても良い回答が得られず、相談すること自体に抵抗がある。 公立の相談体制が設置できないときには、民間専門事業所への相談体制の委託などが必要。 2.2障害を理由とする差別に関する啓発活動、協議会の事例の収集・共有への課題 (御意見等) 世の中のすべての人々が、大勢の人と違う少数の人々の差別をなくすべく、努力すること。多数の論理を排除すること。 日本の教育(保育園、幼稚園、義務教育期間)の中で、自分と違う人間(もの)への差別を解消するような教育をすること。差別を助長するような言動、行為等の植え付けをなくすこと。特別支援学級などを区別することを廃止し、幼いころから同じ空間場所を共有して教育すること。さらに、そのような教育を実行できる人材を育成することなどが必要。 p21 3.その他 (御意見等) 現在の身体障害者手帳の認定サービスの在り方にも、個々の障害に対し適切ではない。失語症が身体障害等級認定の3級、4級しか認められていないこと。失語症の障害の重さと認定の基準に大きな乖離があること。さらに、身体障害者手帳サービスの中には失語症に対する有効かつ具体的、効果的な支援がないことは、大きな差別であると確信する。 失語症者はコミュニケーションの障害であるから、この情報社会の中で、最も就労に困難な障害であり、稼得能力において著しく困難な状況に直面しているにも関わらず、障害者年金の等級において、単独2級以下の制度しかないことは大きな差別であると確信する。 失語症の回復には(完治はないが)、長期間の訓練が必要とされているが、現在の回復期、病院でのリハビリテーションは180日のみである。これは障害特性を無視した、大きな差別である。さらに、回復期・病院退院後の地域でのリハビリを実施する事業所のないことも、失語症者の社会参加等を阻んでいる。それぞれの障害に適したリハビリ期間、および、リハビリ施設がないことは、失語症に対する差別に他ならない。 (以上) p22 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 一般社団法人 日本自閉症協会 1.(1)について (御意見等) 「不当な差別的取扱い」については,障害を直接の理由とするものだけでなく、障害に関連する事由を理由とするものが含まれることを明記してください。 (根拠となる事例) 当協会の加盟団体の会員が、ホテルに宿泊予約の確認の電話を入れた際に、マスク着用を求められた。自閉症のある子が感覚過敏がありマスクの着用ができないと伝えたところ、宿泊を断られた。自閉症の障害を理由としての宿泊拒否ではないが、自閉症の特性である感覚過敏によってマスクができないことを理由としての拒絶であって、障害に関連する差別的取扱いである。 なお、この問題については、日本発達障害ネットワークと当協会とで要望を行い、厚生労働省のホームページで「マスク等の着用が困難な状態にある発達障害のある方等への理解について」との周知がなされた。(URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14297.html) その結果、当該会員については宿泊をすることができたが、同様の事例は繰り返し起きている。このような関連差別については「不当な差別的取扱い」に含まれると明記されることで、理解が広まり、差別の解消につながると考える。 1.(2)1について (御意見等) 「意思の表明」について、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、合理的配慮の提供をすべきであると変更してください。 (根拠となる事例) 言葉による意思疎通が難しい自閉症のある青年が、家族と出かけたところ、家族がちょっと目を離したすきに、いなくなってしまった。最終的に、この青年は二つ隣の県の駅前のコンビニエンスストアで見つかった。店長が、明らかに支援を必要としている青年を見かけ、 p23 コミュニケーションボードを示すなどの合理的配慮を行ったことで、連絡先がわかったものである。二つ隣の県に行くまでに鉄道を乗り継いでいたが、どこかの地点で誰かが合理的配慮をしてくれていれば、もっと早く見つけることができたと思われる。 この件については結果として無事で良かったが、最悪の結果となった事例も残念ながら存する。社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、合理的配慮の提供の必要性もまた明白であるので、「自主的な取組に努める」のではなく、「積極的に合理的配慮の提供をすべきである」とするべきである。 1.(2)2について (御意見等) 双方の建設的対話による相互理解を実現するためには、障害特性をよく理解した専門的知見のある者の協力を得ることが必要であると考えます。 (根拠となる事例) 新型コロナウイルスのワクチン接種が自治体を中心に進められているが、特に先の見通しがつかないことに不安を強く感じる自閉症児者にとっては、見通しをつけるための視覚支援等の合理的配慮の提供がなければ、ワクチン接種の実施が困難となる。 そこで埼玉県自閉症協会では、ワクチン接種が実施されるにあたり、自閉症児者がこれから行われることを理解し、少しでも安心して接種を受けられるよう、「保護者からASD児者に情報を伝えるための補助具」として、絵カードや、ワクチン接種の見通し等、どのように伝えたらよいかのサンプル例を、埼玉県発達障害総合支援センターの協力を得て作成した。(URL http://as-saitama.com/jyouhoubox/covid-19/sikakusien/) そのうえで、埼玉県発達障害総合支援センターから埼玉県内全市町村に宛てて「ASD児者への合理的配慮の一例」として送付してもらい、各接種会場内で掲示できるようにした。また、会場掲示用パワーポイント資料のイラストと、視覚支援ツールのイラストを同一にして、自閉症児者が自分でマッチングしながらワクチン接種を進められるようにとの工夫をしている。 このようなコロナ対策における自治体と発達障害者支援センターの取組みは各地で行われている。(URL http://www.rehab.go.jp/ddis/covid19_info/#Municipality) そのほか、発達障害者支援センターなど自閉症の専門的知見を有するところの協力は、障害者と行政機関等との建設的対話のみならず、就労場面など障害者と事業者との建設的対話でも非常に有益である。 p24 2.1について (御意見等) 相談等に対応する際には、障害者の性別、年齢、状態等に配慮することが重要であるところ、既存の機関の相談員が多様な障害特性をすべからく理解するのは至難の業であると思われます。従って、既存の機関ではなく、紛争解決まで可能な独立した相談機関が必要であると考えます。 また、特に自閉症の場合は、相談すること自体が苦手であるという障害特性があり、被害を伝えることにも困難を伴うため、相談にあたっては、自閉症をよく理解した者や障害者団体などと協力・連携することが必要であると考えます。 2.2について (御意見等) すべての活動について、立案から実施まで、当事者や保護者を参加させ、当事者らの意見を聴くことが必要であると考えます。そのために当協会は、全面的に協力を惜しみません。 3.について (御意見等) 特になし (以上) p25 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 公益財団法人 日本ダウン症協会 1.(1)について (御意見等) 不当な差別的取扱いについて、具体的な事例を示し、障がい理解と差別解消についての普及啓発をより強く進めていただきたい。典型的に不当な差別的取扱いに該当する事例として、医療機関、学校等障がいのある人が頼るべき行政機関、事業者における障がいのある人の存在、価値を否定するような言動がある。 障がいのある人の家族に対する不当な差別についても、これが許されないことを明記していただきたい。 (根拠となる事例) ダウン症のある子の目の前で母親に対し、「出生前検査受けなかったの?」との発言が医師やスクールカウンセラーからなされた事例が多数報告されている。近年の出生前検査の広がりから、ダウン症がある子が生まれてくることについての否定的な言論が更に広まることが懸念される。 支援学校判定だが支援学級への入学を希望したダウン症がある生徒と保護者に対して、支援学級教員が「地域の学校と言いますが卒業後のつながりはありませんよ。強いていえば、お店には連れて行って顔を覚えておいてもらうとよいでしょう。この子たちは地域の不審者なので。」と発言した。 眼科、耳鼻科、歯科等でダウン症があることを理由に診療を拒否された。 腎機能が悪化し将来人工透析が必要となるとされたダウン症のある人について、主治医が「ダウン症なので人工透析はしない方がよい」と発言した。 医学系大学で研究員をしている母親が「ダウン症児は健常児よりも病気になりやすく、看護やリハビリに費やす時間が必要になり、復職しても今のポジションで仕事を持続することは無理ではないか」などと上司から言われて復職を断念せざるを得なかった。 1.(2)1について (御意見等) 合理的配慮について具体的事例を示し、障がい理解と差別解消についての普及啓発をより強く進めてもらいたい。 (根拠となる事例) p26 小学校通常学級に在籍する生徒について、保護者の付き添いを要求される事例が多数報告されている。本来は支援員の配置等の合理的配慮により義務教育が提供されるべき。 特別支援学級の生徒について、通常学級で配布される教科書が配布されない。 1.(2)2について (御意見等) 行政機関や事業者における障がい理解、障がいを理解しようとする姿勢が最も重要と考える。行政機関や事業者における研修の実施等、普及啓発活動が必要である。また、障がい理解のために教育の果たす役割が大きいと考える。支援学級や支援学校の教職員だけではなく、通常学級の教職員の研修により一層力をいれてもらいたい。 合理的配慮を求めることができることや合理的配慮の意味を障がいのある人やその家族、支援者が十分に理解できるような普及啓発活動も必要である。 知的障がいのある人が適切な合理的配慮を求めるためには、本人に寄り添い本人の信頼を得て本人が気持ちや考えを伝えることができる支援員が必要である。 (根拠となる事例) トイレの介助が必要な生徒に対して、それは支援員の仕事ではないとされて、学校で合理的配慮が提供されなかった。 ダウン症のある人は不安や緊張から固まってしまって気持ちや考えを伝えられなかったり、第三者に迎合的な受け答えをしてしまったりすることが多い。 児童発達支援施設の建設について、近隣住民の反対があるところ、市は自治会の同意書の提出を求める一方で説明会の開催に協力をしない。提出を求める一方で説明会の開催に協力をしない。 都立高校に入学したダウン症がある生徒が、知的障がいがあるというだけで転学を勧められた。面談のたびに苦言を呈され、本人、保護者共に半年以上苦しい生活を強いられた。しかし、その後、本人の生活、学習態度を学校が認めたうえで、合理的配慮提供義務について学校がようやく理解し、実践を開始して生徒は進級し、在学中である。 選挙の際、投票会場での対応が近年、非常に良くなったと感じる、コロナのワクチン接種の際、会場での説明、対応が丁寧に感じられる、公的な書類関係で、知的障がい者向けのもので、本人にもわかるように、概要版が出され、フリガナもふってあり、読めるようになったものが少しずつ増えているとの好事例も報告されている。 2.1について (御意見等) 相談のたらい回しがなくなるようにしていただきたい。 例えば、療育の相談窓口を探したところ、障害福祉課に行くと保健師さんに聞いて下さいと言われ、保健師さんに相談しようとすると障害福祉課では?とたらい回しにされた等の相談が p27 寄せられている。 障がいのある人、その家族や支援者に相談ができることや相談窓口の周知をより徹底していただきたい。 2.2について (御意見等) 1.(2)2記載のとおり 3.について (御意見等) 今回の基本方針改定後においても、定期的、継続的に、差別解消が進んでいるかどうかを検証し、必要に応じて障害者差別解消法及びこれに関する基本方針の見直しをしていただきたい。 (以上) p28 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 1.(2)1について (御意見等) 合理的配慮の考え方について 「合理的配慮」は個々の状況で様々であり、非常に「あいまいさ」を感じます。それを個々のケースを網羅して対応することは困難に思います。具体的事例の学習による客観的な考え方の理解と実践は必要な取り組みですが、それだけでは不十分と考えます。 上記に加えて、法の基本理念を踏まえた人道的な面での取り組み強化を望みます。例えば、職場に常にはない重い荷物が届いて力のない女性が運ぼうとした時、力のある男性が「私が運ぶよ」と声をかける場面は多いと思います。これは、女性には無理があると男性が配慮しているからだと思います。誰に対しても自然で様々な配慮が出来る人間性を育てることが何よりも大切だと考えています。 1.(2)2について (御意見等) 建設的対話に必要なこと 客観的状況にもとづき理屈の上で相互理解に努めるだけでは不十分であると考えます。お互いを尊重し、相手の立場を慮って共感する段階まで歩み寄ることで、初めて建設的かつ実効的な対話が成立します。 上記のような対話の前提となる教育が双方にとって必要です。インクルーシブ教育は学校において児童生徒、保護者だけに行われるべきものではなく、「共生社会」実現に資するかつ関係性のための教養として国民全体に向けて行われるべきものと考えます。 (根拠となる事例) p29 建設的対話がうまくいかなかった事例 事業者の取り組みとして研修・啓発が明記されていますが、業種ごとの偏りが見られます。介護福祉関係事業所では積極的に取り組まれている一方で、他の一般業種においては機会が確保されているとは言い難い状況です。 2.2について (御意見等) 啓発活動についての課題 難病患者や内部障害者などのような外見からはわからない障害を持つ障害者がいることについて啓発が不十分です。基本方針(第2の1法の対象範囲)や内閣府リーフレット『「合理的配慮」を知っていますか?』には、対象者として「その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)」との記載がされておりますが、難病に起因する障害には内部障害が多く外見からはわからないため、その特性の理解も併せた啓発活動を行う必要があります。 啓発活動についての対応 上記課題の対応として、対象者の説明に「難病に起因する障害」との文言と併せて「内部障害」といわれる「外見からはわからない障害」を持つ患者が多くいることを明記することが望まれます。「慢性的な痛みや倦怠感、食事や運動の制限」などの具体例により、さらに理解を深める啓発も効果的と考えます。 3.について (御意見等) 「難病」の表記について 対象に「難病に起因する障害」が含まれることは基本方針(第2の1法の対象範囲)に補足的に明記されておりますが、より明確にするためには、基本方針の根拠となる法の条文「その他の心身の機能の障害」を改め、「難病を含むその他の心身の機能の障害」などと明記することが望ましいと考えます。基本方針の改定事項には当たりませんが、関連重要事項として受け止めていただきたくお願いいたします。 国民は基本方針よりもまず法の条文から「難病」というものの存在を知ります。人は言葉で p30 認識し、思考します。名前のわからないものや不明確なものについて正しい理解と認識を持つことは困難です。「難病」の文言を法に明記することは難病啓発を促進するうえで必要不可欠と考えます。 障害者手帳の有無で差別されない柔軟な対応について 「難病」が障害者に含まれたことは大きな進展ですが、現状の障害者手帳ありきの施策では難病患者全体の支援につながりません。難病患者の障害者手帳所持率は3割にも満たないと言われております。手帳の有無のよって支援の有無を判別されることの無いよう、難病の特性も考慮した個々の事案に沿った具体的施策の拡充を望みます。 情報の収集、整理及び提供について 障害者としての難病患者に対する正しい知識と共通理解を得るため、情報の収集、整理及び提供にあたっては、難病患者を独立した区分として統計データの作成を行うことが望ましいと考えます。 (以上)