資料6 バリアフリー施策の推進 p1 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)に基づき、高齢者、障害者等の円滑な移動及び建築物等の施設の円滑な利用の確保に関する施策を総合的に推進。 令和2年5月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとしての共生社会の実現に向け、ハード対策に加え、移動等円滑化に係る「心のバリアフリー」の観点からの施策の充実などソフトの対策を強化するバリアフリー法の改正が行われ、令和2年6月19日に一部施行されていたところであるが、令和3年4月1日に全て施行された。 1.改正バリアフリー法の全面施行(令和3年4月1日) (1)公共交通事業者など施設設置管理者におけるソフト対策の取組強化 公共交通事業者等に対するソフト基準(スロープ板の適切な操作、明るさの確保等)適合義務の創設 公共交通機関の乗継円滑化のため、他の公共交通事業者等からのハード・ソフト(旅客支援、情報提供等)の移動等円滑化に関する協議への応諾義務を創設 障害者等へのサービス提供について国が認定する観光施設(宿泊施設・飲食店等)の情報提供を促進(令和2年6月19日施行) (2)国民に向けた広報啓発の取組推進 1 優先席、車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進 国・地方公共団体・国民・施設設置管理者の責務等として、「車両の優先席、車椅子用駐車施設、障害者用トイレ等の適正な利用の推進」を追加 公共交通事業者等に作成が義務付けられたハード・ソフト取組計画の記載項目に「上記施設の適正な利用の推進」等を追加 2 市町村等による「心のバリアフリー」の推進(学校教育との連携等)(主務大臣に文科大臣を追加)(令和2年6月19日施行) 目的規定、国が定める基本方針、市町村が定める移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の記載事項や、基本構想に記載する事業メニューの一つとして、「心のバリアフリー」に関する事項を追加(令和2年6月19日施行) 心のバリアフリーに関する「教育啓発特定事業」を含むハード・ソフト一体の基本構想について、作成経費を補助(令和2年6月19日施行) バリアフリーの促進に関する地方公共団体への国の助言・指導等(令和2年6月19日施行) p2 (3)バリアフリー基準適合義務の対象拡大 公立小中学校及びバス等の旅客の乗降のための道路施設(旅客特定車両停留施設)を追加 2.移動等円滑化の促進に関する基本方針 基本方針において旅客施設、車両、公園、建築物等について、令和2年度末までの整備目標を設定されていたところであるが、「バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会」において、令和元年11月から令和2年11月まで4回にわたって学識経験者、高齢者・障害者等団体、事業者団体の方々から専門的・具体的なご意見をいただきながら、新型コロナウイルス感染症による影響等の状況も踏まえ、令和3年度以降の目標をとりまとめ、令和2年12月に告示改正を行った。 (1)基本方針における目標の概要 1 目標の設定に向けた見直しの視点 従前の目標においては、施設等の種別ごとにバリアフリー化の目標を設定し、国、地方公共団体、施設設置管理者等が連携してバリアフリー化に取り組み、一定程度の進捗がみられたが、引き続きバリアフリー化を進める必要がある。 新たな目標については、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進していく観点から、以下の点に留意。 各施設等について地方部を含めたバリアフリー化の一層の推進 聴覚障害及び知的・精神・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化 マスタープラン・基本構想の作成による面的なバリアフリーのまちづくりの一層の推進 移動等円滑化に関する国民の理解と協力、いわゆる「心のバリアフリー」の推進 2 目標期間 社会資本整備重点計画等の計画期間、バリアフリー法に基づく基本構想等の評価期間、新型コロナウイルス感染症による影響への対応等を踏まえ、時代の変化により早く対応するため、令和3年度から5年間としている。 (従前の目標期間は、平成23年度から令和2年度までの10年間) 3 目標値 次頁参照 p3 (以下表。※は、車両等におけるバリアフリー化の内容として、段差の解消、運行情報提供設備(車両等の運行(運航を含む。)に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備。福祉タクシーにあっては、音等による情報提供設備及び文字による意思疎通を図るための設備)の設置等が含まれる旨を明記。) 鉄軌道 鉄軌道駅(1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上のものが対象) 2019年度末(現状(速報値)) 段差の解消 92%、視覚障害者誘導用ブロック 95%、案内設備(文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備、標識、案内板等) 74%、障害者用トイレ(便所を設置している旅客施設が対象) 89% 2025年度末までの目標 バリアフリー指標として、案内設備(文字等及び音声による運行情報提供設備、案内用図記号による標識等)の設置を追加 3,000人以上/日の施設及び基本構想の生活関連施設に位置付けられた2,000人以上/日の施設を原則100% この場合、地域の要請及び支援の下、鉄軌道駅の構造等の制約条件を踏まえ可能な限りの整備を行う その他、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず利用実態をふまえて可能な限りバリアフリー化 高齢者、障害者等に迂回による過度の負担が生じないよう、大規模な鉄軌道駅については、当該駅及び周辺施設の状況や当該駅の利用状況等を踏まえ、可能な限りバリアフリールートの複数化を進める 駅施設・車両の構造等に応じて、十分に列車の走行の安全確保が図れることを確認しつつ、可能な限りプラットホームと車両乗降口の段差・隙間の縮小を進める 鉄軌道 鉄軌道駅(1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上のものが対象) 2019年度末(現状(速報値)) ホームドア・可動式ホーム柵 858駅 2025年度末までの目標 駅やホームの構造・利用実態、駅周辺エリアの状況などを勘案し、優先度が高いホームでの整備を加速化することを目指し、全体で3,000番線 うち、10万人/日以上の駅は800番線 鉄軌道 鉄軌道車両 2019年度末(現状(速報値)) 75% 2025年度末までの目標 約70% 令和2年4月に施行された新たなバリアフリー基準(鉄軌道車両に設ける車椅子スペースを1列車につき2箇所以上とすること等を義務付け)への適合状況(50%程度と想定)を踏まえて設定 新幹線車両について、車椅子用フリースペースの整備を可能な限り速やかに進める バス バスターミナル(1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上のものが対象) 2019年度末(現状(速報値)) 段差の解消 95%、視覚障害者誘導用ブロック 98%、案内設備(文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備、標識、案内板等) 76%、障害者用トイレ(便所を設置している旅客施設が対象) 84% 2025年度末までの目標 バリアフリー指標として、案内設備(文字等及び音声による運行情報提供設備、案内用図記号による標識等)の設置を追加 3,000人以上/日の施設及び基本構想の生活関連施設に位置付けられた2,000人以上/日の施設を原則100% その他、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 バス 乗合バス車両(※) 2019年度末(現状(速報値)) ノンステップバス 61% 2025年度末までの目標 約80%(対象から適用除外認定車両(高速バス等)を除外) バス 乗合バス車両(※) 2019年度末(現状(速報値)) リフト付きバス等 5% 2025年度末までの目標 約25%(リフト付バス又はスロープ付きバス。適用除外認定車両(高速バス等)を対象) 1日当たりの平均的な利用者数が2,000人以上の航空旅客ターミナルのうち鉄軌道アクセスがない施設(指定空港)へのバス路線を運行する乗合バス車両における適用除外の認定基準を見直すとともに、指定空港へアクセスするバス路線の運行系統の総数の約50%について、バリアフリー化した車両を含む運行とする バス 貸切バス車両(※) 2019年度末(現状(速報値)) 1,081台 2025年度末までの目標 約2,100台 タクシー 福祉タクシー車両(※) 2019年度末(現状(速報値)) 37,064台 2025年度末までの目標 約90,000台 各都道府県における総車両数の約25%について、ユニバーサルデザインタクシーとする 船舶 旅客船ターミナル(1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上のものが対象) 2019年度末(現状(速報値)) 段差の解消 100%、視覚障害者誘導用ブロック 100%、案内設備(文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備、標識、案内板等) 54%、障害者用トイレ(便所を設置している旅客施設が対象) 100% 2025年度末までの目標 バリアフリー指標として、案内設備(文字等及び音声による運航情報提供設備、案内用図記号による標識等)の設置を追加 2,000人以上/日の施設を原則100% 離島との間の航路等に利用する公共旅客船ターミナルについて地域の実情を踏まえて順次バリアフリー化 その他、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 p4 船舶 旅客船(旅客不定期航路事業の用に供する船舶を含む。)(※) 2019年度末(現状(速報値)) 48% 2025年度末までの目標 約60% 2,000人以上/日のターミナルに就航する船舶は、構造等の制約条件を踏まえて可能な限りバリアフリー化 その他、利用実態等を踏まえて可能な限りバリアフリー化 航空 航空旅客ターミナル(1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上のものが対象) 2019年度末(現状(速報値)) 段差の解消 87%、視覚障害者誘導用ブロック 95%、案内設備(文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備、標識、案内板等) 95%、障害者用トイレ(便所を設置している旅客施設が対象) 97% 2025年度末までの目標 バリアフリー指標として、案内設備(文字等及び音声による運航情報提供設備、案内用図記号による標識等)の設置を追加 2,000人以上/日の施設を原則100% その他、地域の実情にかんがみ、利用者数のみならず利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 航空 航空機(※) 2019年度末(現状(速報値)) 99% 2025年度末までの目標 原則100% 道路 重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路 2019年度末(現状(速報値)) 63%(重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路約4,450kmが対象。2019年度末の数値は集計中であるため2018年度末の数値) 2025年度末までの目標 約70% 都市公園 園路及び広場 2019年度末(現状(速報値)) 57%(2019年度末の数値は集計中であるため2018年度末の数値) 2025年度末までの目標 規模の大きい概ね2ha以上の都市公園を約70% その他、地域の実情にかんがみ、利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 都市公園 駐車場 2019年度末(現状(速報値)) 48%(2019年度末の数値は集計中であるため2018年度末の数値) 2025年度末までの目標 規模の大きい概ね2ha以上の都市公園を約60% その他、地域の実情にかんがみ、利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 都市公園 便所 2019年度末(現状(速報値)) 36%(2019年度末の数値は集計中であるため2018年度末の数値) 2025年度末までの目標 規模の大きい概ね2ha以上の都市公園を約70% その他、地域の実情にかんがみ、利用実態等をふまえて可能な限りバリアフリー化 路外駐車場 特定路外駐車場 2019年度末(現状(速報値)) 65%(2019年度末の数値は集計中であるため2018年度末の数値) 2025年度末までの目標 約75% 建築物 2000u以上の特別特定建築物のストック(公立小学校等(小学校、中学校、義務教育学校又は中等教育学校(前期課程に係るものに限る。)で公立のもの)は除く。) 2019年度末(現状(速報値)) 61% 2025年度末までの目標 床面積の合計が2,000m2以上の特別特定建築物を約67% 床面積の合計が2,000m2未満の特別特定建築物等についても、地方公共団体における条例整備の働きかけ、ガイドラインの作成及び周知により、バリアフリー化を促進 公立小学校等については、文部科学省において目標を定め、障害者対応型便所やスロープ、エレベータ―の設置等のバリアフリー化を実施する 信号機等 主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等 2019年度末(現状(速報値)) 99% 2025年度末までの目標 原則100% 信号機等 音響機能付加信号機、エスコートゾーン 2025年度末までの目標 主要な生活関連経路を構成する道路のうち、道路又は交通の状況に応じ必要な部分に設置されている信号機については原則100% 基本構想等 移動等円滑化促進方針の作成 2019年度末(現状(速報値)) 8自治体(2020年6月末の数値) 2025年度末までの目標 約350自治体(全市町村(約1,740)の約2割) 基本構想等 移動等円滑化基本構想の作成 2019年度末(現状(速報値)) 304自治体(2020年3月末の数値) 2025年度末までの目標 約450自治体(2,000人以上/日の鉄軌道駅及びバスターミナルが存在する市町村(約730)の約6割に相当) 「心のバリアフリー」2025年度末までの目標 移動等円滑化に関する国民の理解と協力を得ることが当たり前の社会となるような環境を整備する 「心のバリアフリー」の用語の認知度を約50%(現状:約24%(2020年6月に国土交通省が実施した「心のバリアフリーに関するアンケート調査」による。)) 高齢者、障害者等の立場を理解して行動ができている人の割合を原則100%(現状:約80%(2020年6月に国土交通省が実施した「心のバリアフリーに関するアンケート調査」による。また「高齢者、障害者等」については、乳幼児連れも含む)) (表ここまで) p5 3.移動等円滑化評価会議 平成30年の改正バリアフリー法において、高齢者、障害者等の当事者等が参画する会議を設置し、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価することが定められた。 これを受け、移動等円滑化評価会議を平成31年2月に第1回会議を開催以降、これまで計5回開催。 地域特性に応じたバリアフリー化の進展状況を把握・評価するため、全国10ブロックに「移動等円滑化評価会議地域分科会」を設置し、例年6から9月にそれぞれ開催。 高齢者、障害者等の様々な特性に応じたニーズや意見を適切に把握するため、「特性に応じたテーマ別意見交換会」を開催。 4.新幹線の新たなバリアフリー対策 東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとしての「真の共生社会」の実現に向けて、新幹線のバリアフリー化はその象徴となるべきものと考え、世界最高水準のバリアフリー環境を有する高速鉄道の実現を目指して、障害者団体、鉄道事業者等で構成される検討会を立ち上げ検討を行い、令和2年8月に「新幹線の新たなバリアフリー対策」をとりまとめ。 このとりまとめに基づき、バリアフリー法に基づく移動等円滑化基準の改正及びバリアフリー整備ガイドラインを改訂し、新たに導入される新幹線に車椅子用フリースペースの設置を義務付け。 令和3年4月20日から東海道・山陽新幹線で6席分、同年7月16日からは北陸新幹線で4席分の車椅子用フリースペースを備えた車両が運行をスタート。 主な改正内容 1 「車椅子用フリースペース」の基本的な考え方 隣の座席への移乗の有無や介助者等の有無、ストレッチャー式車椅子使用者など様々な障害の状態等に対応し、車椅子使用者がグループで快適に旅行等を楽しめるよう、「車椅子用フリースペース」を一般客室に設ける。 2 車椅子スペース数の考え方 一編成あたりの提供座席に応じて以下のように設定 (以下表) 一編成あたりの座席数 1001席以上 車椅子スペースの数 6以上 主な新幹線車両 N700S(東海道・山陽) 備考 車椅子スペースの数は多目的室を除く 一編成あたりの座席数 500から1000席 車椅子スペースの数 4以上 主な新幹線車両 E5・H5系(北海道・東北)、E7・W7系(北陸)等 備考 車椅子スペースの数は多目的室を除く 一編成あたりの座席数 500席未満 車椅子スペースの数 3以上 主な新幹線車両 E8系(山形ミニ)等 備考 車椅子スペースの数は多目的室を除く (表ここまで) p6 5.トイレの環境整備に関する調査及びガイドライン等の改正 令和2年度に「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究検討会」を開催し、公共交通事業者等や商業施設等の管理者等へのアンケート調査や障害当事者等へのヒアリング等も踏まえ、利用者の多様な特性に配慮したトイレ整備のあり方と適正利用の推進に関する今後の取組方針をとりまとめた報告書を作成。 本調査報告書では、多様な障害者、乳幼児連れの方等の多様なご意見を可能な限り収集し、今後の公共トイレ整備に必要な基本的な考え方を整理。 本報告書でとりまとめた方針に基づき、各種ガイドライン等の改正や、適正利用の推進に向けた広報啓発等の取組を推進予定。 6.接遇ガイドライン 平成29年2月に決定された「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を受け、交通モード毎の特性や様々な障害の特性等に対応した「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を平成30年5月に作成・公表。 令和元年6月に決定した「認知症施策推進大綱」を受け、認知症の人対応のための「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」の別冊(認知症編)を令和3年2月に作成・公表。 新型コロナウイルスの感染が懸念される中、改めて、障害当事者や交通事業者からのヒアリング等を通じて、障害者等の困りごとを整理し、それに対する感染対策を踏まえた適切な接遇方法をガイドラインとしてとりまとめ、令和3年7月に公表、交通事業者に周知・徹底したところ。 以上