資料3 障害者基本計画(第5次)本文案(総論部分)(第4次計画との新旧対照表) 令和4年3月4日 (作業者注・「障害者基本計画(第4次)本文」における注釈は「#」、「障害者基本計画(第5次)本文案」における注釈は「※」で記載する。) p1 障害者基本計画(第5次)本文案 はじめに (我が国におけるこれまでの主な取組) (作業者注・「障害者基本計画(第4次)本文」に同じ。以下(略)とする。) 障害者基本計画(第4次)本文 はじめに (我が国におけるこれまでの主な取組) 我が国における障害者施策に関する基本法としての位置付けを有する法律を遡ると、昭和45(1970)年に制定された心身障害者対策基本法(昭和45 年法律第84号)に端を発することとなる。同法は、心身障害者対策の総合的推進を図ることを目的として、心身障害者の福祉に関する施策の基本となる事項等を定めており、心身障害があるため長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者を「心身障害者」と位置付けていた。 平成5(1993)年、同法は障害者基本法(以下「基本法」という。)に改正され、従来の心身障害者に加え、精神障害により長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者についても、新たに「障害者」と位置付けられることとなった。さらに、法の目的も、障害者の自立とあらゆる分野の活動への参加の促進に改められた。 その後、平成16(2004)年の改正では、障害者差別等をしてはならない旨が基本的理念として新たに規定されるとともに、中央障害者施策推進協議会が創設された。さらに、多くの障害当事者の参画の下で検討が進められた平成23(2011)年の改正では、平成19(2007)年に我が国が署名した障害者の権利に関する条約(以下「条約」という。)の批准に向けた国内法整備の一環として、条約が採用する、いわゆる「社会モデル」の考え方や「合理的配慮」の概念が新たに取り入れられるとともに、国内において障害者基本計画の実施状況を監視し、勧告を行う機関として、障害者政策委員会が新たに設置された。 p2 障害者基本計画(第5次)本文案 この基本法に基づき、平成25(2013)年9月には「障害者基本計画(第3次)」、平成30(2018)年3月には「障害者基本計画(第5次)」(以下「本基本計画」という。)の前身に当たる「障害者基本計画(第4次)」(以下「旧基本計画」という。)が閣議決定された。旧基本計画は、我が国が条約を批准した後に初めて策定される障害者基本計画として条約との整合性確保に留意しつつ、各分野に共通する横断的視点として、「条約の理念の尊重及び整合性の確保」、「社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上」、「当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援」、「障害特性等に配慮したきめ細かい支援」、「障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援」及び「PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進」の6点が掲げられるとともに、11の施策分野ごとに基本的考え方や具体的な取組が示されており、本基本計画の策定に至るまでの間、障害者政策委員会における実施状況の監視を経ながら、それぞれの施策分野で着実に取組が進められてきた。 障害者基本計画(第4次)本文 この基本法に基づき、平成25(2013)年9月には、「障害者基本計画(第4次)」(以下「本基本計画」という。)の前身に当たる「障害者基本計画(第3次)」(以下「旧基本計画」という。)が閣議決定された。旧基本計画では、各分野に共通する横断的視点として、「障害者の自己決定の尊重及び意思決定の支援」、「当事者本位の総合的な支援」、「障害特性等に配慮した支援」、「アクセシビリティの向上」及び「総合的かつ計画的な取組の推進」の5点が掲げられるとともに、10の施策分野ごとに基本的考え方や具体的な取組が示されており、本基本計画の策定に至るまでの間、障害者政策委員会における実施状況の監視を経ながら、それぞれの施策分野で着実に取組が進められてきた。 障害者基本計画(第5次)本文案 (障害者政策委員会における検討) 旧基本計画の計画期間が令和4(2022)年度をもって満了することを踏まえ、障害者政策委員会において、令和3(2021)年9月以降、本基本計画の策定に向けた精力的な調査審議が行われてきた。 本基本計画の調査審議が開始されるまでの間、障害者施策の分野では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「2020年東京オリンピック・パラリンピック」という。)の開催、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)の改正(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号。以下「障害者差別解消法改正法」という。)の成立・公布)等の大きな動きが見られた。 障害者政策委員会における調査審議においては、こうした動向も踏まえつつ、障害者施策の大きな方向性や取り組むべき政策課題等について、大局的・俯瞰的見地より議論が行われた。 その結果、計(空欄)回にわたる審議を経て、令和(空欄)年(空欄)月、「障害者基本計画(第5次)の策定に向けた障害者政策委員会意見」が取りまとめられた。 (本段落(障害者政策委員会の調査審議状況)については、今後の議論状況を基に更新予定) 障害者基本計画(第4次)本文 (障害者政策委員会における検討) 旧基本計画の計画期間が平成29(2017)年度をもって満了することを踏まえ、障害者政策委員会において、平成28(2016)年10 月以降、本基本計画の策定に向けた精力的な調査審議が行われてきた。 本基本計画の調査審議が開始されるまでの間、障害者施策の分野では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「2020年東京オリンピック・パラリンピック」という。)の開催決定、条約の批准、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25 年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)の施行等の大きな動きが見られた。 障害者政策委員会における調査審議においては、こうした動向も踏まえつつ、本基本計画が旧基本計画から質的な深化を遂げたものとなるよう、障害者施策の大きな方向性や取り組むべき政策課題等について、大局的・俯瞰的見地より議論が行われた。 その結果、計11回にわたる審議を経て、平成30(2018)年2月、「障害者基本計画(第4次)の策定に向けた障害者政策委員会意見」が取りまとめられた。 p3 障害者基本計画(第5次)本文案 (本基本計画の策定) 政府においては、障害者政策委員会の意見に即して本基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、令和(空欄)年(空欄)月に本基本計画を閣議決定した。 障害者基本計画(第4次)本文 (本基本計画の策定) 政府においては、障害者政策委員会の意見に即して本基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、平成30(2018)年3月に本基本計画を閣議決定した。 障害者基本計画(第5次)本文案 (本基本計画を通じて実現を目指すべき社会) (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (本基本計画を通じて実現を目指すべき社会) 基本法第1条は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することが同法の目的である旨を規定している。 本基本計画は、同法の目的の達成はもちろんのこと、次に掲げる社会の実現にも寄与することが期待されている。 「一人ひとりの命の重さは障害の有無によって少しも変わることはない」という当たり前の価値観を国民全体で共有できる共生社会 障害者基本計画(第5次)本文案 「誰一人取り残さない」というSDGs(持続可能な開発目標・Sustainable Development Goals)の理念とも軌を一にした、障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う社会 障害者基本計画(第4次)本文 2020 年東京オリンピック・パラリンピックにおいて、成熟社会における我が国の先進的な取組を世界に示し、世界の範となるべく、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる社会 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 障害者施策が国民の安全や社会経済の進歩につながる社会 本基本計画に基づく施策を策定し、及び実施するに当たっては、こうした目指すべき社会の姿を常に念頭に置くとともに、その実現に向けた観点から不断に取組を進めていくことが重要である。 p4 障害者基本計画(第5次)本文案 T 障害者基本計画(第5次)について 1.位置付け (略) 障害者基本計画(第4次)本文 T 障害者基本計画(第4次)について 1.位置付け 本基本計画は、基本法第11条第1項の規定に基づき、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものであり、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として位置付けられる。 障害者基本計画(第5次)本文案 2.対象期間 本基本計画は、令和5(2023)年度からの5年間を対象とする。 (「令和3年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和3年12月21日閣議決定)に基づき、計画期間の延長の要否について検討。) 障害者基本計画(第4次)本文 2.対象期間 本基本計画は、平成30(2018)年度からの5年間を対象とする。 障害者基本計画(第5次)本文案 3.構成 本基本計画は、この「T障害者基本計画(第5次)について」、「U基本的な考え方」及び「V 各分野における障害者施策の基本的な方向」で構成される。 障害者基本計画(第4次)本文 3.構成 本基本計画は、この「T 障害者基本計画(第4次)について」、「U 基本的な考え方」及び「V 各分野における障害者施策の基本的な方向」で構成される。 p5 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 「U基本的な考え方」では、本基本計画全体の基本理念及び基本原則を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。 「V各分野における障害者施策の基本的な方向」では、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を11の分野に整理し、それぞれの分野について、本基本計画の対象期間に政府が講ずる施策の基本的な方向を示している。 障害者基本計画(第5次)本文案 4.条約との関係 (1)条約の概要 1 経緯 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 4.条約との関係 (1)条約の概要 1 経緯 平成18(2006)年6月に条約が採択される前から、国際連合(以下「国連」という。)総会では、障害者の人権を促進及び保護すべく、障害者の権利に関する宣言を採択するなど、様々な取組が行われてきた。 しかしながら、こうした取組にもかかわらず、依然として障害者が人権侵害に直面する状況が指摘されてきたところであり、こうした事態を改善すべく、国際社会において法的拘束力を有する新たな文書を作成する必要性が強く認識されるようになった。 このため、平成13(2001)年12月、第56回国連総会において、障害者の権利及び尊厳を保護し、及び促進するための包括的かつ総合的な国際条約を検討するための条約起草委員会が設置された。 その後、平成14(2002)年から計8回にわたり開催された条約起草委員会を経て、平成18(2006)年12月、条約が国連総会で採択され、平成20(2008)年5月、効力発生の要件が整い発効した。 p6 障害者基本計画(第5次)本文案 2 主な内容 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 2 主な内容 条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めており、障害者に関する初の国際条約に当たる。その主な内容は次のとおりである。 一般原則(障害者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加及び包容等) 一般的義務(合理的配慮の実施を怠ることを含め、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進すること等) 障害者の権利実現のための措置(身体の自由、拷問の禁止、表現の自由等の自由権的権利及び教育、労働等の社会権的権利について締約国がとるべき措置等を規定) 条約の実施のための仕組み(条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置、障害者の権利に関する委員会(以下「障害者権利委員会」という。)における各締約国からの報告の検討) 障害者基本計画(第5次)本文案 3 我が国の関連するこれまでの取組 (略) (令和4年8月に予定される国連障害者権利委員会による対日審査について更新予定) 障害者基本計画(第4次)本文 3 我が国の関連するこれまでの取組 我が国は、条約が国連総会で採択された翌年に当たる平成19(2007)年9月に条約に署名した。一方、条約の批准については、国内の障害当事者等から、批准に先立ち国内法の整備等を進めるべきとの意見が寄せられた。 我が国は、これらの意見も踏まえ、基本法の改正(平成23(2011)年8月)、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)の改正(平成24(2012)年6月。このとき、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)に改称)、障害者差別解消法の制定(平成25(2013)年6月)、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「障害者雇用促進法」という。)の改正(平成25(2013)年6月)など、様々な国内法の整備を進めてきた。 こうした国内法整備を経て、平成25(2013)年11月に衆議院、12月に参議院で共に全会一致で締結が承認され、平成26(2014)年2月、条約が我が国について効力を生じた。 条約は、締約国に対し、「条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告」の定期的な提出を求めており、我が国は、条約が我が国について効力を生じてから平成28(2016)年2月までの期間を対象とした政府報告を取りまとめ、同年6月、国連事務総長を通じて障害者権利委員会に提出した。 p7 障害者基本計画(第5次)本文案 政府報告には、我が国において条約第33条に規定する「条約の実施を監視するための枠組み」の機能を担う障害者政策委員会のコメントを反映させるとともに、案文に対する意見募集(以下「パブリックコメント」という。)を実施した。また、付属文書として、政府報告の提出を視野に入れて障害者政策委員会が実施した「障害者基本計画(第3次)」の実施状況の監視の結果を取りまとめた文書(「議論の整理」)を添付した。 障害者基本計画(第4次)本文 政府報告には、我が国において条約第33条に規定する「条約の実施を監視するための枠組み」の機能を担う障害者政策委員会のコメントを反映させるとともに、案文に対する意見募集(以下「パブリックコメント」という。)を実施した。また、付属文書として、政府報告の提出を視野に入れて障害者政策委員会が実施した旧基本計画の実施状況の監視の結果を取りまとめた文書(「議論の整理」)を添付した。 p8 障害者基本計画(第5次)本文案 (2)条約の基本的な考え方 1 「障害」の捉え方 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (2)条約の基本的な考え方 1 「障害」の捉え方 従来の「障害」の捉え方は、心身の機能の障害のみに起因するとする、いわゆる「医学モデル」の考え方を反映したものであった。一方、条約では、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとする、いわゆる「社会モデル」の考え方が貫かれている。 障害者基本計画(第5次)本文案 2 平等・無差別及び合理的配慮  (略) 障害者基本計画(第4次)本文 2 平等・無差別及び合理的配慮 条約は、第1条において「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的と定めている。 また、第2条では、障害者の人権と基本的自由を確保するための「必要かつ適当な変更及び調整」であって、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」を「合理的配慮」と定義し、第5条で、締約国に対し、障害に基づくあらゆる差別を禁止することや、合理的配慮の提供が確保されるための適当な措置を採ることを求めている。 さらに、第4条では、締約国に対し、障害者に関する問題についての意思決定過程において、障害者と緊密に協議し、障害者を積極的に関与させることを求めている。 障害者基本計画(第5次)本文案 3 実施に関する仕組み (略) 障害者基本計画(第4次)本文 3 実施に関する仕組み 条約は、第33条において、自国の法律上・行政上の制度に従って「条約の実施を監視するための枠組み」を自国内に設置することを締約国に求めている。我が国では、障害者、障害者の自立・社会参加に関する事業の従事者及び学識経験者から構成される障害者政策委員会が設置されており、障害者基本計画の実施状況の監視を通じて条約の実施状況を監視している。この「条約の実施を監視するための枠組み」は、これまでの人権条約には見られない新たな規定である。 また、第35条において、締約国に対し、「条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告」を、国連事務総長を経由して障害者権利委員会に提出することを求めている。この報告の作成に当たっては、公開された透明性のある過程を踏むことを検討するとともに、障害者の関与について十分な考慮を払うことが求められている。 障害者権利委員会は、締約国から選ばれた18名の専門家から構成され、締約国による報告を検討し、提案や勧告を行うことが定められている。この仕組みにより、締約国は条約の実施について国際的に審査されることになる。 p9 障害者基本計画(第5次)本文案 (3)障害者基本計画(第5次)との関係 本基本計画では、旧基本計画に引き続き、条約との整合性確保の観点から条約の理念を随所に反映するとともに、「V 各分野における障害者施策の基本的な方向」で掲げる各分野と、条約の各条項の対応関係を明示している。 (略) (令和4年8月に予定される国連障害者権利委員会による対日審査の動向等を踏まえ更新予定) 障害者基本計画(第4次)本文 (3)障害者基本計画(第4次)との関係 本基本計画は、我が国が条約を批准した後に初めて策定される障害者基本計画であり、条約との整合性の確保が強く求められている。このため、本基本計画では、条約の理念を随所に反映するとともに、「V 分野における障害者施策の基本的な方向」で掲げる各分野と、条約の各条項の対応関係を明示している。これにより、本基本計画の実施状況と、条約の国内実施の状況とを対応させつつ、本基本計画に基づく取組をより効果的かつ適切に進めるとともに、本基本計画の実施状況の監視を通じた障害者政策委員会による条約の実施状況の監視の円滑化に資することが期待される。 また、本基本計画に掲げる施策のPDCA(#1・企画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)及び見直し(Act)をいう。)サイクルの中で、条約の実施状況に関する障害者権利委員会による勧告、意見等も扱うなど、本基本計画と条約に係る取組の適切な連携に努めていく。 p10 障害者基本計画(第5次)本文案 ※「5.2020東京オリンピック・パラリンピックとの関係」については「U 基本的な考え方」に移動 障害者基本計画(第4次)本文 5.2020年東京オリンピック・パラリンピックとの関係 本基本計画の計画期間中には、2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催される。とりわけ、障害の有無にかかわらず、世界中からあらゆる人が集い、障害のある選手が繰り広げる圧倒的なパフォーマンスを直に目にすることのできるパラリンピック競技大会(#2・オリンピックの直後に当該開催地で行われる、障害者スポーツの最高峰の大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。なお、他の国際的な障害者スポーツの大会としては、デフリンピック競技大会(注釈48を参照)、スペシャルオリンピックス世界大会(注釈49を参照)等がある。)は、共生社会の実現に向けて社会の在り方を大きく変える絶好の機会となる。 昭和39(1964)年に開催された東京オリンピック・パラリンピックは、「パラリンピック」の名称が初めて用いられ、また、車椅子を利用する障害者以外の選手も初めて参加する大会となった。同大会には世界21か国から378名の選手が集い、我が国からも選手53名(#3・選手団は84名(選手53名、役員31名)。)が参加するなど、国内でも広く注目を集め、我が国における障害者の社会活動への参画を促す大きな契機となった。それから約半世紀が経過し、東京は、同一都市で2回目の夏季パラリンピック競技大会を開催する世界初の都市として、再び世界中からパラリンピアンを受け入れることとなる。 政府においては、来る2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、共生社会の実現に向けた大きな2つの柱として、心のバリアフリー及びまちづくりの分野における施策を「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)として取りまとめ、障害者の視点を反映しながら推進するなど、各般の取組を進めているところであるが、こうした方向性は、共生社会の実現に向け、政府が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を定める旨を基本理念として掲げる本基本計画においても何ら変わるところはない。 本基本計画は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会において、障害の有無にかかわらず、世界中から多くの人を迎えることも踏まえ、後述のように「社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上」を横断的視点のひとつとして掲げ、社会的障壁の除去に向けた各種の取組をより強力に推進していくため、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れていく旨を記載している。さらに、こうした視点を具体的施策にも反映し、公共交通機関のバリアフリー化を始めとする移動しやすい環境の整備や、障害者に配慮したまちづくり等の取組を幅広く推進していくこととしている。 p11 障害者基本計画(第5次)本文案 ※「5.2020東京オリンピック・パラリンピックとの関係」については「U 基本的な考え方」に移動 障害者基本計画(第4次)本文 また、旧基本計画では小項目のひとつであった「文化芸術活動・スポーツ等の振興」を、本基本計画では独立した施策分野として格上げするとともに、競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化など、パラリンピック競技大会を念頭に置いた施策を充実させている。さらに、障害者が地域でスポーツに親しめる環境の整備や、障害者スポーツ人材の養成・活用の推進など、障害者スポーツの裾野の拡大に向けた取組についても幅広く推進していくこととしている。 加えて、本基本計画では、「重点的に理解促進等を図る事項」として、2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて実現を目指す共生社会の姿について広く発信を行い、国民の機運を醸成するとともに、「心のバリアフリー」への理解を深め、社会全体で推進する旨を明記している。 本基本計画が掲げるこうした視点や各種施策とあいまって、来る2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を、成熟社会における先進的な取組を世界に示す契機とするとともに、我が国が共生社会の実現に向けた大きな一歩を踏み出すきっかけとしていくことが強く求められる。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会そのものをゴールと捉えるのではなく、開催後においても、得られた成果をいかしつつ、共生社会の実現に向けて一層の取組を重ねていくことが重要である。 p12 障害者基本計画(第5次)本文案 U 基本的な考え方 1.基本理念 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 U 基本的な考え方 1.基本理念 条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めている。 こうした条約の理念に即して改正された基本法第1条に規定されているように、障害者施策は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるという理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して講じられる必要がある。 本基本計画では、このような社会の実現に向け、障害者を、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として捉え、障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援するとともに、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的な障壁を除去するため、政府が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を定めるものとする。 障害者基本計画(第5次)本文案 2.基本原則 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 2.基本原則 障害者を、必要な支援を受けながら自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として捉えた上で、政府は、条約の理念に即して改正された次に掲げる基本法の各基本原則にのっとり、当該理念の実現に向けた障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する。 p13 障害者基本計画(第5次)本文案 (地域社会における共生等) (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (地域社会における共生等) 基本法第3条において、共生社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提とする旨が規定されていること、また、条約も「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的としていることに鑑みれば、本基本計画に関しても、全ての障害者が、障害者でない者と平等に、基本的人権を享有する個人として、その尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる機会の適切な確保・拡大を図ることを旨として障害者施策を実施する必要がある。 社会を構成する一員として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する機会の確保 地域社会において他の人々と共生することを妨げられず、どこで誰と生活するかについて選択する機会の確保 言語(手話を含む。以下同じ。)その他の意思疎通のための手段について選択する機会の確保 情報の取得又は利用のための手段について選択する機会の拡大 障害者基本計画(第5次)本文案 (差別の禁止) (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (差別の禁止) 基本法第4条において、障害者差別その他の障害者に対する権利利益の侵害行為が禁止されるとともに、合理的配慮の提供が求められていること、また、条約第5条においても、障害に基づくあらゆる差別を禁止するとともに、合理的配慮の提供が確保されるための適当な措置を採ることが求められていること、さらに、障害者差別解消法においてこうした趣旨が具体化されていることに鑑みれば、障害者差別その他の権利利益を侵害する行為を禁止するとともに、社会的障壁を除去するための合理的配慮が提供される必要がある。 p14 障害者基本計画(第5次)本文案 我が国においては、平成28年4月から障害者差別解消法が施行された後、検討規定に基づく所要の見直しが行われ、令和3年6月に障害者差別解消法改正法が公布された。障害者差別解消法改正法では、事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、障害を理由とする差別を解消するための支援措置が強化され、その施行期日は、公布の日(令和3(2021)年6月4日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされている。障害者差別解消法改正法の施行に向けては、政府全体の方針である「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定)を改定するとともに、当該方針の改定を受けて、各省庁において所管分野を対象とした対応指針の見直しや、各地方自治体における相談体制の整備を始めとした様々な対応が必要となる。これらの取組や国民全体への周知啓発といった施行前に必要となる準備を十分に行うことが求められる。 障害者基本計画(第4次)本文 我が国においては、障害者差別解消法が制定され、既に施行されるなど、法制的な整備は講じられているところであるが、今後、障害者差別解消法の実効性の確保のため、その施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。 障害者基本計画(第5次)本文案 (国際的協調) (略) (令和4年8月に予定される国連障害者権利委員会による対日審査の動向等を踏まえ更新予定) 障害者基本計画(第4次)本文 (国際的協調) 基本法第5条において、共生社会の実現は、国際的協調の下に図られなければならない旨が規定されていること、また、条約第32条においても、国際協力及びその促進の重要性について規定されていること、さらに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策が国際社会における取組と密接な関係を有していることに鑑みれば、国際的な協調の下で共生社会の実現が図られる必要がある。 我が国においては、条約を批准するとともに、政府報告を障害者権利委員会に提出するなど、これまでも国際的な枠組みとの連携を深めてきたところであるが、今後、こうした連携をより一層推進し、国際的協調の理念を体現していくことが求められる。 p15 障害者基本計画(第5次)本文案 3.社会情勢の変化 障害者基本計画(第4次)本文 (作業者注・「障害者基本計画(第5次)本文案」にて新設。以下「新設」と記載。) 障害者基本計画(第5次)本文案 (1)2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシー継承 2021年夏、東京は夏季パラリンピック競技大会が同一都市で2度開催された史上初めての地となった。同大会は共生社会の実現に向けて社会の在り方を大きく変える絶好の機会であり、この機を逃さぬよう、政府においては、共生社会の実現に向けた大きなふたつの柱として、「心のバリアフリー」及び「ユニバーサルデザインの街づくり」を「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定。以下「行動計画」という。)として取りまとめるとともに、平成30年12月には、障害者の視点を施策に反映させる更なる枠組みとして、ユニバーサルデザイン2020評価会議を創設し、同会議を通じて行動計画の実行の加速化を図ってきた。 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、東京大会は史上初めて1年延期された大会となり、大会を取り巻く環境も当初想定されていた形から大きく変わることとなったが、ユニバーサルデザイン2020評価会議における総括でも述べられているとおり、障害当事者の意見を取り入れた新国立競技場の整備、2度にわたる高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)の改正、新しい学習指導要領における「心のバリアフリー」に関する記載の充実、一定規模以上のホテルにおけるバリアフリー客室の1%以上の整備義務化など、行動計画の取組を通じて「心のバリアフリー」と「ユニバーサルデザインの街づくり」は大きく進展した。一方で、地方部における障害当事者の参画、人口減少や技術革新による非対面サービスの広がりに起因する格差の拡大への対応や情報アクセシビリティの確保等といった、引き続き取り組むべき課題や新たな課題も指摘されている。 障害者基本計画(第4次)本文 (参考)「I 障害者基本計画(第4次について)」の「5.2020年東京オリンピック・パラリンピックとの関係」 p16 障害者基本計画(第5次)本文案 東京大会を契機とした機運を一過性のものにすることなく、日本全国に広げていくことが重要であり、これまでの取組が大会のレガシーとして大きく花開くよう、本基本計画においても引き続き「社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上」を横断的視点の一つとして掲げ、具体的施策にも反映するとともに、「重点的に理解促進等を図る事項」として「心のバリアフリー」の理解促進に継続して取り組む旨等を明記し、世界に誇れる共生社会の実現に向けた取組を推進していくこととする。 障害者基本計画(第4次)本文 (記載無し) p17 障害者基本計画(第5次)本文案 (2)新型コロナウイルス感染症拡大とその対応 令和2年1月以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は国民生活に様々な影響を及ぼしており、特に、障害者を含め脆弱な立場に置かれている人々が大きな影響を受けている。感染拡大防止措置の影響による地域の交流・見守りの場、相談支援を受ける機会の喪失等によって、社会に内在していた孤独・孤立の問題も顕在化・深刻化しており、障害者やその家族等に対しても、「孤独・孤立対策の重点計画」(令和3年12月28日孤独・孤立対策推進会議決定)を踏まえた支援が必要となっている。また、障害者へのサービス提供を担う事業者側でも、経営に影響が出るなどの課題が生じている。さらに、感染症拡大防止のため身体的距離の確保やマスク着用等の「新しい生活様式」の実践が求められる中、オンライン活用の拡大等がアクセシビリティ向上等に寄与する一方で、障害特性によっては新たな困りごとを抱える障害者もいる。 こうした状況を踏まえ、本基本計画に掲げる各種施策についても、新型コロナウイルス感染症拡大による影響やニーズの違いに留意しながら取組を進めることが求められる。 障害者基本計画(第4次)本文 (新設) p18 障害者基本計画(第5次)本文案 (3)持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現(SDGsの視点) 平成27年9月、国連サミットにおいてSDGsが全会一致で採択された。SDGsは「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指す世界共通の目標であり、2030年を達成年限として、17のゴールと169のターゲットから構成されるものである。我が国ではSDGsの採択を受け、平成28年12月にSDGs推進のための中長期戦略である「SDGs実施指針」(平成28年12月22日SDGs推進本部決定)が策定され、令和元(2019)年12月には同方針の改定が行われた。同方針では、「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」を始めとした8つの優先課題と課題に取り組むための主要原則が掲げられている。 「誰一人取り残さない」というSDGsの理念は、共生社会の実現に向け、政府が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を定める旨を基本理念として掲げる本基本計画においても、その重要性に何ら変わるところはない。障害者施策の推進に当たっては、SDGs推進の取組とも軌を一にし、障害者のみならず行政機関等・事業者といった様々なステークホルダーが共生社会の実現という共通の目標の実現に向け、協力して取組を推進することが求められる。 障害者基本計画(第4次)本文 (新設) 障害者基本計画(第5次)本文案 4.各分野に共通する横断的視点 本基本計画に記載する各分野の施策については、前述の基本原則や社会情勢の変化を踏まえつつ、以下の視点に留意しながら推進するものとする。 障害者基本計画(第4次)本文 3.各分野に共通する横断的視点 障害者基本計画(第5次)本文案 (1)条約の理念の尊重及び整合性の確保 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (1)条約の理念の尊重及び整合性の確保 障害者に係る施策、制度、事業等を策定し、及び実施するに当たっては、条約の理念を尊重するとともに、条約との整合性を確保することが重要である。 「私たちのことを、私たち抜きに決めないで(#4・英語表記では「Nothing About Us Without Us」。)」の考え方の下、「インクルージョン(#5・英語表記では「inclusion」。条約第3条(c)では「包容」と訳されている。)」を推進する観点から、障害者を施策の客体ではなく、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会に参加する主体として捉えるとともに、障害者施策の検討及び評価に当たっては、障害者が意思決定過程に参画することとし、障害者の視点を施策に反映させることが求められる。その際、障害者の社会参加は、障害者の自立にもつながることに留意する。 p19 障害者基本計画(第5次)本文案 また、障害者の政策決定過程への参画を促進する観点から、国の審議会等の委員(※4・臨時委員、特別委員及び専門委員を含む。)の選任に当たっては、障害者の委員の選任に配慮する。特に、障害者施策を審議する国の審議会等における障害者の委員については、障害種別及び性別にも配慮して選任を行うものとする。また、障害者である委員に対する障害特性に応じた適切な情報保障(※5・障害により情報の取得が困難な者に対して、代替手段を用いて情報を提供すること。)その他の合理的配慮を行う。 障害者基本計画(第4次)本文 また、障害者の政策決定過程への参画を促進する観点から、国の審議会等の委員(#6・臨時委員、特別委員及び専門委員を含む。)の選任に当たっては、障害者の委員の選任に配慮する。特に、障害者施策を審議する国の審議会等における障害者の委員については、障害種別及び性別にも配慮して選任を行うとともに、「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月25日閣議決定)の定めるところにより、女性の参画拡大に向けた取組を行うものとする。また、障害者である委員に対する障害特性に応じた適切な情報保障(#7・障害により情報の取得が困難な者に対して、代替手段を用いて情報を提供すること)その他の合理的配慮を行う。 p20 障害者基本計画(第5次)本文案 (2)社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上 1 社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティ向上の視点の採用 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (2)社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上 1 社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティ向上の視点の採用 条約が採用している、いわゆる「社会モデル」の考え方に即して改正された障害者基本法第2条においても、障害者を「障害がある者であって、障害と社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しており、障害者が経験する困難や制限が障害者個人の障害と社会的な要因の双方に起因するという視点が示されている。 障害者基本計画(第5次)本文案 こうした視点に照らして、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している事物、制度、慣行、観念等の社会的障壁の除去を進めることにより、障害者の社会への参加を実質的なものとし、障害の有無にかかわらず、その能力を伸長し、最大限に発揮しながら安心して生活できるようにする必要がある。そのためには、バリアフリー法等に基づく環境整備と、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供を両輪として障害者のアクセシビリティ(※6・施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。)向上を図ることが重要であり、社会的障壁の除去に向けた各種の取組をより強力に推進していくため、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れていく。 障害者基本計画(第4次)本文 こうした視点に照らして、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している事物、制度、慣行、観念等の社会的障壁の除去を進めることにより、障害者の社会への参加を実質的なものとし、障害の有無にかかわらず、その能力を伸長し、最大限に発揮しながら安心して生活できるようにする必要がある。そのためには、障害者のアクセシビリティ(#8・施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。)向上の環境整備を図ることが重要であり、社会的障壁の除去に向けた各種の取組をより強力に推進していくため、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れていく。 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 また、障害を理由とする差別は、障害者の自立又は社会参加に深刻な悪影響を与えるものであり、社会のあらゆる場面においてその解消に向けた取組が行われる必要がある。このため、障害者差別解消法及び障害者雇用促進法に基づき、地方公共団体や障害者団体を始めとする様々な主体の取組との連携を図りつつ、事業者・事業主や国民一般の幅広い理解の下、障害者差別の解消に向けた取組を積極的に推進する。 あわせて、社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上と心のバリアフリーを推進する観点から、積極的な広報・啓発活動に努めるとともに、企業・市民団体等の取組を積極的に支援する。 さらに、審議会等の開催時を含め、障害者施策に関する情報を公開する際や、障害者施策に関連する命令、計画等に関するパブリックコメントを行う際には、障害特性に配慮した適切な情報保障を実施するなど、アクセシビリティの向上を進める。 p21 障害者基本計画(第5次)本文案 2 アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進 近年、5G、IoT、AI技術等のデジタル技術が進展し、データのメディア変換も容易になり、自分に合ったスタイル(音声、視線の動き等)でデジタル機器・サービスが利用可能となっている。こうした新たな技術を用いた機器やサービスは、アクセシビリティとの親和性が高いという特徴があり、社会的障壁の除去の観点から、障害者への移動の支援や情報の提供を行う場合など、様々な場面でアクセシビリティに配慮したICTを始めとする新たな技術の利活用について検討を行い、積極的な導入を推進する。 「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)においても、多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき、国民一人ひとりの幸福に資する「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることとされており、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月24日閣議決定)の定めるところにより、国、地方公共団体、企業、国民等が皆で支え合うデジタル共生社会の実現を図るため、デジタル機器・サービスに係るアクセシビリティ環境の整備を促進するための各種取組を推進することとする。 また、アクセシビリティに配慮した機器・サービス等の政府調達を一層推進するため、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等(※7・政府調達に関する議定書(以下「議定書」という。)の適用を受ける調達若しくは政府調達に関する協定を改正する議定書(以下「改正議定書」という。)の適用を受ける調達又は「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月31日関係省庁申合せ。以下「運用指針等」という。)の適用を受ける調達をいう。)を行うに当たっては、WTO政府調達協定等(※8・議定書若しくは改正議定書又は運用指針等をいう。)の定めるところにより、適当な場合には、アクセシビリティに関する国際規格が存在するときは当該国際規格(※9・JISZ8071「規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針」など、国際規格に整合する国内の指針等を含む。)に基づいて技術仕様を定める。 障害者基本計画(第4次)本文 2 アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進 社会のあらゆる場面で情報通信技術(以下「ICT」という。)が浸透しつつある。こうした新たな技術を用いた機器やサービスは、新たな社会的障壁となる可能性がある一方で、アクセシビリティとの親和性が高いという特徴もあり、社会的障壁の除去の観点から、障害者への移動の支援や情報の提供を行う場合など、様々な場面でアクセシビリティに配慮したICTを始めとする新たな技術の利活用について検討を行い、利活用が可能なものについては積極的な導入を推進する。 障害者基本計画(第5次)本文案 さらに、アクセシビリティの向上に資する技術等を含め、中小・ベンチャー企業が行う先進的な技術等については、市場創出が大きな課題となるため、市場創出の呼び水としての初期需要の確保等の観点から、国が需要側の視点に立った施策の充実を図る必要がある。このため、アクセシビリティの向上に資する新技術を含め、公共部門における新技術を用いた製品の調達に当たっては、「科学技術・イノベーション基本計画」(令和3年3月26日閣議決定)の定めるところにより、日本版SBIR制度(※10・中小企業等に対する研究開発補助金等の支出機会の増大を図り、その成果の事業化を支援する省庁横断的な制度(SBIR・Small Business Innovation Research)。)を活用して開発された製品等を政府が調達し、初期需要を創出するなどの必要な措置を講ずる。 障害者基本計画(第4次)本文 また、アクセシビリティの向上に資する技術等を含め、中小・ベンチャー企業が行う先進的な技術等については、市場創出が大きな課題となるため、市場創出の呼び水としての初期需要の確保等の観点から、国が需要側の視点に立った施策の充実を図る必要がある。このため、「科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)の定めるところにより、国は、アクセシビリティの向上に資する新技術を含め、公共部門における新技術を用いた製品の調達において、透明性及び公正性の確保を前提に、総合評価落札方式等の技術力を重視する入札制度の一層の活用を促進し、イノベーション創出に貢献し得る中小・ベンチャー企業の入札機会の拡大を図るなどの必要な措置を講ずる。 障害者基本計画(第5次)本文案 なお、新たな技術を用いた機器やサービスの利活用に当たっては、当該機器・サービスが新たな社会的障壁となる可能性があることにも留意することとする。 あわせて、遺伝子診断、再生医療等に見られるように、科学技術の社会実装に関し、倫理的・法制度的な課題について社会としての意思決定が必要となる事例が増加しつつあることにも留意する。 障害者基本計画(第4次)本文 さらに、アクセシビリティに配慮した機器・サービス等の政府調達を一層推進するため、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等(#9・政府調達に関する議定書(以下「議定書」という。)の適用を受ける調達若しくは政府調達に関する協定を改正する議定書(以下「改正議定書」という。)の適用を受ける調達又は「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月31日関係省庁申合せ。以下「運用指針等」という。)の適用を受ける調達をいう。)を行うに当たっては、WTO政府調達協定等(#10・議定書若しくは改正議定書又は運用指針等をいう。)の定めるところにより、適当な場合には、アクセシビリティに関する国際規格が存在するときは当該国際規格(#11・JISZ8071「規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針」など、国際規格に整合する国内の指針等を含む。)に基づいて技術仕様を定める。 あわせて、遺伝子診断、再生医療等に見られるように、科学技術の社会実装に関し、倫理的・法制度的な課題について社会としての意思決定が必要となる事例が増加しつつあることに留意する。 p22 障害者基本計画(第5次)本文案 (3)当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (3)当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援 障害者の尊厳、自律及び自立の尊重を目指す条約の趣旨を踏まえ、障害者が各ライフステージを通じて適切な支援を受けられるよう、教育、文化芸術、スポーツ、福祉、医療、雇用等の各分野の有機的な連携の下、施策を総合的に展開し、切れ目のない支援を行う。 支援に当たっては、基本法第2条の障害者の定義を踏まえ、障害者施策が、障害者が日常生活又は社会生活で直面する困難に着目して講じられる必要があること、障害者の支援は障害者が直面するその時々の困難の解消だけに着目するのではなく、障害者の自立と社会参加の支援という観点に立って行われる必要があること、障害者の家族を始めとする関係者への支援も重要であることに留意する。 また、複数の分野にまたがる課題については、各分野の枠のみにとらわれることなく、関係する機関、制度等の必要な連携を図ることを通じて総合的かつ横断的に対応していく必要がある。 p23 障害者基本計画(第5次)本文案 (4)障害特性等に配慮したきめ細かい支援 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (4)障害特性等に配慮したきめ細かい支援 障害者一人ひとりの固有の尊厳を重視する条約の理念を踏まえ、障害者施策は、障害特性、障害の状態、生活実態等に応じた障害者の個別的な支援の必要性を踏まえて策定及び実施する。その際、外見からは分かりにくい障害が持つ特有の事情を考慮するとともに、状態が変動する障害は、症状が多様化しがちであり、一般に、障害の程度を適切に把握することが難しい点に留意する必要がある。 また、発達障害、難病、高次脳機能障害(#12・交通事故や病気などによる脳への損傷に基づく後遺症により、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などの認知機能(高次脳機能)が障害された状態を指し、器質性精神障害として位置付けられる。)、盲ろう、重症心身障害その他の重複障害等について、社会全体の更なる理解の促進に向けた広報・啓発活動を行うとともに、施策の充実を図る必要がある。 特に発達障害については、社会全体の理解促進、家族支援、福祉・労働・教育・医療分野の取組等を総合的に進めていくことが重要である。 障害者基本計画(第5次)本文案 (5)障害のある女性、子供及び高齢者に配慮した取組の推進 条約第6条、第7条等の趣旨を踏まえ、障害のある女性を始め、複合的に困難な状況に置かれた障害者に対するきめ細かい配慮が求められていることを踏まえて障害者施策を策定し、及び実施する必要がある。 障害のある女性は、それぞれの障害の種別ごとの特性、状態により様々な支援が必要であることに加えて、女性であることにより、いわゆる複合的差別など更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることから、こうした点も念頭に置いた障害者施策の策定・実施には政策決定過程への当事者参画が重要である。このため、「第5次男女共同参画基本計画」(令和2年12月25日閣議決定)の定めるところにより、女性の参画拡大に向けた取組を行うとともに、障害のある女性の政策決定過程への参画拡大に向け、前述のとおり障害者施策を審議する国の審議会等における障害者の委員の選定に当たっては、性別のバランスに配慮しつつ、障害のある女性委員の人数・比率について定期的に調査・公表を行う。あわせて、団体推薦による障害のある審議会等委員について、各団体等に対して、団体からの委員の推薦に当たって性別に配慮するよう格段の協力を要請することとする。 障害者基本計画(第4次)本文 (5)障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援 条約第6条、第7条等の趣旨を踏まえ、障害のある女性を始め、複合的に困難な状況に置かれた障害者に対するきめ細かい配慮が求められていることを踏まえて障害者施策を策定し、及び実施する必要がある。 障害のある女性は、それぞれの障害の種別ごとの特性、状態により様々な支援が必要であることに加えて、女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることから、こうした点も念頭に置いて障害者施策を策定し、及び実施することが重要である。 障害者基本計画(第5次)本文案 また、「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」(令和3年12月21日閣議決定)においては、こども(※12・同基本方針における「こども」とは、大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者をいうとされている。)に関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えて(「こどもまんなか社会」)、こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を後押しすることとされている。障害のある子供に対しても、障害児の地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進する観点等を踏まえた支援を行うことが必要であり、この場合、成人の障害者とは異なる支援を行う必要性があることに留意することが求められる。 さらに、障害者支援から高齢者支援への切れ目のない移行等が重要であることに留意する。 障害者基本計画(第4次)本文 また、障害のある子供は、成人の障害者とは異なる支援を行う必要性があることに留意する必要がある。 さらに、障害のある高齢者に係る施策については、条約の理念も踏まえつつ、高齢者施策との整合性に留意して実施していく必要がある。 p24 障害者基本計画(第5次)本文案 (6)PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 「確かな根拠に基づく政策立案(※13・英語表記では「Evidence-Based Policy Making」。)」の実現に向けた必要なデータ収集及び統計の充実を図るとともに、PDCAサイクルの構築、着実な実行及びPDCAサイクル等を通じた施策の不断の見直しを図ることについては、障害者権利条約第31条(統計及び資料の収集)、第33条(国内における実施及び監視)等の趣旨を踏まえ、旧基本計画においても各府省に対し取組を進めるよう求めてきたが、当事者参画の観点等において分野ごとに進捗の差がみられる。 障害者施策の更なる推進のためには、障害者政策委員会が政府全体の見地から本基本計画の実施状況を監視するのみならず、各府省において取り組む個々の施策に対しても、国の審議会等への障害者委員の参画や、障害者やその家族を始めとする関係者への意見聴取等を通じた当事者参画の推進に留意しつつ、適切な評価・監視がなされることが重要である。障害者政策委員会及び各府省においては、次に掲げるところにより、各施策の進捗状況の点検をより充実させるとともに、更なる取組の推進を図るよう努めることとする。 障害者基本計画(第4次)本文 (6)PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 条約第31条、第33条等の趣旨を踏まえ、「確かな根拠に基づく政策立案(#13・英語表記では「Evidence-Based Policy Making」。)」の実現に向け、次に掲げるところにより、必要なデータ収集及び統計の充実を図るとともに、障害者施策のPDCAサイクルを構築し、着実に実行する。また、当該サイクル等を通じて施策の不断の見直しを行っていく。 p25 障害者基本計画(第5次)本文案 1 企画(Plan) (略) 障害者基本計画(第4次)本文 1 企画(Plan) 「確かな根拠に基づく政策立案」を実現する観点から、障害当事者や障害当事者を取り巻く社会環境の実態把握を適切に行うため、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意しつつ必要なデータ収集や統計の充実を行うことが重要である。 障害者基本計画(第5次)本文案 このため、各分野における障害者施策の一義的な責任を負うこととなる各府省は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(令和2年6月2日閣議決定)において施策上のニーズ等を踏まえた障害者統計の充実が求められていることも踏まえつつ、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの適切な収集・評価の在り方等を検討するとともに、本基本計画に掲げる施策について具体的な成果目標を設定し、より効果的な施策を企画できるよう努める。 障害者基本計画(第4次)本文 このため、各分野における障害者施策の一義的な責任を負うこととなる各府省は、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの適切な収集・評価の在り方等を検討するとともに、本基本計画に掲げる施策について具体的な成果目標を設定し、より効果的な施策を企画できるよう努める。 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 本基本計画の着実な推進を図るために策定する各分野における成果目標は、それぞれの分野における具体的施策を、他の分野の施策との連携の下、総合的に実施することにより、政府全体で達成を目指す水準であり、地方公共団体や民間団体等の政府以外の機関・団体等が成果目標に係る項目に直接取り組む場合においては、成果目標は、政府がこれらの機関・団体等に働きかける際に、政府として達成を目指す水準として位置付けられる。 p26 障害者基本計画(第5次)本文案 2 実施(Do) 各府省は、障害の多様性にも留意しつつ、障害者やその家族を始めとする関係者の意見を聴き、本基本計画に基づく取組の計画的な実施に努める。また、障害者施策を適切に講ずるため、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの収集・分析を行うとともに、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意しつつ、その充実を図る。 障害者基本計画(第4次)本文 2 実施(Do) 各府省は、障害者やその家族を始めとする関係者の意見を聴きつつ、本基本計画に基づく取組の計画的な実施に努める。また、障害者施策を適切に講ずるため、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの収集・分析を行うとともに、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意しつつ、その充実を図る。 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 また、効果的かつ効率的に施策を推進する観点から、高齢者施策、医療関係施策、子供・子育て関係施策、男女共同参画施策等、障害者施策に関係する他の施策・計画等との整合性を確保し、総合的な施策の展開を図る。 障害者基本計画(第5次)本文案 3 評価(Check) 障害者施策の評価に当たっては、障害者が意思決定過程に参画することとし、障害の多様性にも留意しながら、障害者の視点を施策に反映させることが求められる。また、障害者施策の推進に係る取組の実施状況の継続的なモニタリングを行うことが重要である。 障害者基本計画(第4次)本文 3 評価(Check) 障害者施策の評価に当たっては、障害者が意思決定過程に参画することとし、障害者の視点を施策に反映させることが求められる。また、障害者施策の推進に係る取組の実施状況の継続的なモニタリングを行うことが重要である。 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 こうした考え方の下、各府省は、数値等に基づき取組の実施状況及びその効果の把握・評価を行う。また、障害者施策の実施に当たり課題や支障が生じている場合は、その円滑な解消に資するよう、具体的な要因について必要な分析を行う。 また、障害者政策委員会は、基本法に基づき、政府全体の見地から本基本計画の実施状況の評価・監視を行う。 p27 障害者基本計画(第5次)本文案 4 見直し(Act) (略) 障害者基本計画(第4次)本文 4 見直し(Act) 各府省は、障害者施策の推進に係る取組の実施状況やその効果に係る評価結果を踏まえ、不断に取組の見直しを行う。また、必要があると認められる場合には、所要の法制的な整備を含め検討を行う。 障害者政策委員会においては、基本法に基づき、政府全体の見地から本基本計画の実施状況を評価・監視し、必要に応じて内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に本基本計画の実施に関して勧告を行う。さらに、「条約の実施を監視するための枠組み」としての立場から、本基本計画の実施状況の監視を通じて条約の実施状況の監視を行う。また、障害者政策委員会の円滑かつ適切な運営のため、事務局機能の充実を図る。 社会情勢の変化等により本基本計画の変更の必要性が生じた場合、あるいは本基本計画の推進及び評価を通じて本基本計画の変更の必要性が生じた場合には、計画期間の途中であっても、政府は本基本計画を柔軟に見直すこととする。 また、成果目標のうち、計画期間の途中で目標の期限が到来するも のについては、本基本計画を通じて実現を目指すべき社会の姿に照らしつつ、当該目標の達成状況等も踏まえて、連続性の確保に留意しながら新たな成果目標の設定を行うなど、必要な対応を行う。 障害者の実態調査等を通じて得られた知見については、本基本計画の推進状況の評価及び評価を踏まえた取組の見直しへの活用に努める。 p28 障害者基本計画(第5次)本文案 5.施策の円滑な推進 (1)連携・協力の確保 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 4.施策の円滑な推進 (1)連携・協力の確保 政府の障害者施策を一体的に推進し、総合的な企画立案及び横断的な調整を確保するため、各府省相互間の緊密な連携・協力を図る。 また、本基本計画は政府の障害者施策の基本的方向を定めるものであるが、障害者の地域移行を推進し、障害者が必要なときに必要な場所で、地域の実情に即した適切な支援を受けられるようにするなど、実効性ある形で取組を実施していくためには、地方公共団体との連携・協力が必要不可欠である。このため、適切な役割分担の下、地方公共団体との連携・協力体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体において優良かつ先進的な取組やモデルを実施している場合は、その知見もいかしつつ施策を展開する。 障害者基本計画(第5次)本文案 さらに、SDGs推進の取組と軌を一にしつつ障害者の自立と社会参加に関する取組を社会全体で進めるためには、「SDGs実施指針」に掲げられる包摂性・参画型の原則も踏まえ、障害者団体のみならず、専門職による職能団体、企業、経済団体等のステークホルダーも一体となり全員参加型で施策の推進に取り組むことが重要であり、施策の推進に当たっては、これら関係団体等の協力を得るよう努める。特に、障害者の自立及び社会参加の支援に当たり、障害者団体等の自主的な活動は重要な役割を果たしており、本基本計画の推進に当たっては、これらの団体等との情報共有等の一層の促進を図る必要がある。 また、国際機関、諸外国政府等との連携に努めるとともに、関係行政機関相互の緊密な連携の下、条約の国内実施に十分留意する必要がある。 障害者政策委員会において、必要があると認められる場合は、他の審議会等との情報共有を行うことについて検討を行う。 障害者基本計画(第4次)本文 さらに、障害者の自立と社会参加に関する取組を社会全体で進めるため、政府における様々な活動の実施に当たっては、障害者団体、専門職による職能団体、企業、経済団体等の協力を得るよう努める。特に、障害者の自立及び社会参加の支援に当たり、障害者団体等の自主的な活動は重要な役割を果たしており、本基本計画の推進に当たっては、これらの団体等との情報共有等の一層の促進を図る必要がある。 国際機関、諸外国政府等との連携に努めるとともに、関係行政機関相互の緊密な連携の下、条約の国内実施に十分留意しつつ、持続可能な開発目標(以下「SDGs」という。)の実施を総合的かつ効果的に推進する。 障害者政策委員会において、必要があると認められる場合は、他の審議会等との情報共有を行うことについて検討を行う。 p29 障害者基本計画(第5次)本文案 (2)理解促進・広報啓発に係る取組等の推進 1 重点的に理解促進等を図る事項 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 (2)理解促進・広報啓発に係る取組等の推進 1 重点的に理解促進等を図る事項 「命の重さは障害の有無によって少しも変わることはない」という当たり前の価値観を社会全体で共有し、障害のある者と障害のない者が、お互いに、障害の有無にとらわれることなく、支え合いながら社会で共に暮らしていくことが日常となるように、国民の理解促進に努める。また、本基本計画の実施を通じて実現を目指す「共生社会」の理念や、いわゆる「社会モデル」の考え方について、必要な広報啓発を推進する。 2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて実現を目指す共生社会の姿について広く発信を行い、パラリンピック競技大会に向けた国民の機運を醸成するとともに、障害者施策の意義について更なる理解の促進を図る。 障害者基本計画(第5次)本文案 障害者が自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性に対する国民の理解を深め、様々な心身の特性や考え方を持つ全ての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う「心のバリアフリー」を社会全体で推進するとともに、「心のバリアフリー」を学び身に付けるためのツールも活用し、心のバリアフリーへの理解を深めるための取組を2020年東京オリンピック・パラリンピック後も継続して進める。その際、知的障害、精神障害、発達障害、難病、高次脳機能障害、盲ろう、重症心身障害その他の重複障害など、より一層の国民の理解が必要な障害や、外見からは分かりにくい障害を含め、障害には様々な種類や程度があることについても、理解が促進されるよう取り組むことが必要である。 障害者基本計画(第4次)本文 あわせて、障害者が自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性に対する国民の理解を深め、様々な心身の特性や考え方を持つ全ての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う「心のバリアフリー」を社会全体で推進するとともに、「心のバリアフリー」を学び身に付けるためのツールも活用し、心のバリアフリーへの理解を深めるための取組を進める。 知的障害、精神障害、発達障害、難病、高次脳機能障害、盲ろう、重症心身障害その他の重複障害など、より一層の国民の理解が必要な障害や、外見からは分かりにくい障害について、その障害特性や必要な配慮等に関する理解の促進を図る。 障害者基本計画(第5次)本文案 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 一般国民における、点字、手話、視覚障害者誘導用ブロック、身体障害者補助犬(#14・盲導犬、介助犬及び聴導犬をいう。)、障害者用駐車スペース等に対する理解を促進するとともに、その円滑な利活用に必要な配慮等について周知を図る。また、障害者団体等が作成する啓発・周知のためのマーク等について、関連する事業者等の協力の下、国民に対する情報提供を行い、その普及及び理解の促進を図る。 児童、生徒や地域住民等のボランティア活動に対する理解を深め、その活動を支援するよう努めるとともに、企業等の社会貢献活動に対する理解と協力を促進する。 p30 障害者基本計画(第5次)本文案 2 理解促進等に当たり配慮する事項 (略) 障害者基本計画(第4次)本文 2 理解促進等に当たり配慮する事項 障害者施策は幅広い国民の理解を得ながら進めていくことが重要であり、行政はもとより、企業、民間団体、マスメディア等の多様な主体との連携による幅広い広報・啓発活動を計画的かつ効果的に推進する。その際、効果的な情報提供や、国民の意見の反映に努めるとともに、障害当事者以外に対する訴求も重要であることに留意する。 また、地域社会における障害者への理解を促進するため、福祉施設、教育機関等と地域住民等との日常的交流の一層の拡大を図るとともに、NPO法人(特定非営利活動法人)、ボランティア団体等、障害者も含む多様な主体による障害者のための取組を促進するため、必要な活動環境の整備を図る。 国内外の取組等に関する調査研究や先進的な事例の紹介等に努める。その際、障害に係る訳語の統一を図ることが分かりやすさや比較の便宜に資することに留意する。 また、基本法に定められた障害者週間(#15・毎年12月3日から9日までの1週間を期間とする。)における各種行事を中心に、一般市民、ボランティア団体、障害者団体など幅広い層の参加による啓発活動を推進する。 障害者基本計画(第5次)本文案 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との相互理解を深めるための活動を一層促進するとともに、障害者に対する理解と認識を深めるための取組を推進する。 障害者基本計画(第4次)本文 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との相互理解 を深めるための活動を一層促進するとともに、小・中学校等の特別活動等における、障害者に対する理解と認識を深めるための指導を推進する。 (作業者注・テキスト版では本文中に注釈を挿入しているが、元資料と同様に、「障害者基本計画(第5次)本文案」・「障害者基本計画(第4次)本文」の注釈一覧を以下に記載する。) p31 障害者基本計画(第5次)本文案 注釈 ※1・(作業者注・#1に同じ。) (作業者注・注釈#2及び#3は削除) ※2・(作業者注・#4に同じ。) ※3・(作業者注・#5に同じ。) ※4・(作業者注・#6に同じ。) ※5・(作業者注・#7に同じ。) ※6・(作業者注・#8に同じ。) ※7・(作業者注・#9に同じ。) ※8・(作業者注・#10に同じ。) ※9・(作業者注・#11に同じ。) ※10・(新設)中小企業等に対する研究開発補助金等の支出機会の増大を図り、その成果の事業化を支援する省庁横断的な制度(SBIR・Small Business Innovation Research)。 ※11・(作業者注・#12に同じ。) ※12・(新設)同基本方針における「こども」とは、大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者をいうとされている。 ※13・(作業者注・#13に同じ。) ※14・(作業者注・#14に同じ。) ※15・(作業者注・#15に同じ。) 障害者基本計画(第4次)本文 注釈 #1・企画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)及び見直し(Act)をいう。 #2・オリンピックの直後に当該開催地で行われる、障害者スポーツの最高峰の大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。なお、他の国際的な障害者スポーツの大会としては、デフリンピック競技大会(作業者注・「障害者基本計画(第4次)」における注釈48を参照)、スペシャルオリンピックス世界大会(作業者注・「障害者基本計画(第4次)」における注釈49を参照)等がある。 #3・選手団は84名(選手53名、役員31名)。 #4・英語表記では「Nothing About Us Without Us」。 #5・英語表記では「inclusion」。条約第3条(c)では「包容」と訳されている。 #6・臨時委員、特別委員及び専門委員を含む。 #7・障害により情報の取得が困難な者に対して、代替手段を用いて情報を提供すること。 #8・施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。 #9・政府調達に関する議定書(以下「議定書」という。)の適用を受ける調達若しくは政府調達に関する協定を改正する議定書(以下「改正議定書」という。)の適用を受ける調達又は「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月31日関係省庁申合せ。以下「運用指針等」という。)の適用を受ける調達をいう。 #10・議定書若しくは改正議定書又は運用指針等をいう。 #11・JISZ8071「規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針」など、国際規格に整合する国内の指針等を含む。 #12・交通事故や病気などによる脳への損傷に基づく後遺症により、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などの認知機能(高次脳機能)が障害された状態を指し、器質性精神障害として位置付けられる。 #13・英語表記では「Evidence-Based Policy Making」 #14・盲導犬、介助犬及び聴導犬をいう。 #15・毎年12月3日から9日までの1週間を期間とする。 以上