資料1 令和3年度調査研究 概要 障害者差別の解消に向けた相談体制、事例の収集・共有の在り方について (今後の方向性) p1 1.基本的な考え方 今般の障害者差別解消法の改正により、事業者の合理的配慮の提供が義務化。 →障害者に対する支援を行うだけでなく、義務化の対象となった事業者が適切な取組を行えるよう、相談対応や情報提供などの必要な支援を行うことが不可欠。 改正法の円滑な施行に向け、国と地方公共団体が連携して相談対応、事例共有等に関する仕組みを整備し、総合的・一体的に取組を推進する必要がある。 2.障害者差別の解消に向けた相談体制の在り方 (1)相談の実施体制の構築 障害者差別に関する相談の体制構築の考え方 障害者や事業者との日常のやり取り等の中から相談担当者が差別相談を拾い上げられるようにするためには、明示的な「障害者差別相談窓口」に加え、地方公共団体において日常的に生活支援に関わる部局や商工関係部局等も相談の一次受付として重要な役割を担う。 相談の一次受付から案件終結までに想定される「基本的な対応」としては以下のような事項を想定。基本的な対応で解決が難しい場合は、次のステップとして(作業者注・下線ここから)地方公共団体による行政措置(条例により独自の権限を定めている場合等)(作業者注・下線ここまで)や(作業者注・下線ここから)障害者差別解消法第12条に基づく主務大臣による行政措置(報告徴収、助言、指導、勧告)(作業者注・下線ここまで)が考えられる。 基本的な対応 相談者からの情報収集(事実確認) 関係者での情報共有、対応方針の検討 相手方からの情報収集(事実確認) 関係者での情報共有、事案の評価分析、対応方針の検討 相談者と相手方との調整、話合いの場の設定 相談の実施体制構築モデル 相談の実施体制構築に当たっては、国・都道府県・市区町村の役割分担(市区町村は身近な窓口として相談に対応、都道府県は広域的な相談等への対応・市区町村への支援、国は所掌分野に応じて地方公共団体のみでは対応が困難な事例において地方公共団体に対し適切な支援等実施すること)を基本としつつ、(作業者注・下線ここから)相談者がどの相談機関に相談しても、つながるべき機関につながり、適切な対応が図られるような環境整備(作業者注・下線ここまで)が必要。 p2 内閣府においては、各府省庁の相談窓口の明確化や人材育成の支援、事例共有等を通じた障害者・事業者の障害者差別解消に関する理解の向上や行政の対応力の強化等に取り組むことにより、(作業者注・下線ここから)国・地方公共団体全体としてワンストップ相談窓口の機能を担えるようにすること(作業者注・下線ここまで)が求められる。 a.国・地方公共団体全体としての「ワンストップ窓口」機能構築について 国及び地方公共団体が全体として「ワンストップ相談窓口」機能を担うことについては、検討会の場において以下のとおり合意がなされた。 (作業者注・下線ここから)障害者差別解消法第12条に基づく主務大臣の権限は、分野ごとに当該事業を所管する各主務大臣(各府省庁)が所管(作業者注・下線ここまで)しており、現状でも各府省庁に分野ごとの相談窓口が設置されている。このため、事案ごとに、各相談機関等が(作業者注・下線ここから)適切な省庁の相談窓口に円滑にアクセスできること(作業者注・下線ここまで)が重要。 一方、現状では各府省庁の所掌する分野が複雑に入り組んでおり、相談窓口が必ずしも明確ではない。このため、内閣府において以下の取組を行うことで、(作業者注・下線ここから)どの相談機関でも対応されない事例が発生しないようにすること(作業者注・下線ここまで)が重要。 相談対応を行う人材の育成支援(研修プログラムの作成等)や事例の収集・分析・共有の取組など、他の相談機関のバックアップ 対応指針の記載の工夫による、所掌分野と対応した相談窓口の明確化や、内閣府のHP等における各府省庁の相談窓口一覧等の作成・掲載 加えて、各相談機関等における相談対応プロセスの中で国の対応を求める必要がある場合等において、国の窓口一覧を確認したものの、所管が複数の省庁にまたがるなど、どの省庁が担当するか分からないような場合に、内閣府が必要な助言等の対応を行うことが期待される 司令塔としての役割を担う内閣府においては、障害者差別の解消の推進のために、障害者と事業者双方の困りごとを受け止めつつ、相談体制構築・強化に係る国や地方公共団体の取組に対する十分な支援ができるような体制整備を検討することが望まれる。 b.国民からの一次相談を受け付ける総合窓口としての国の「ワンストップ相談窓口」新設について 内閣府における「ワンストップ相談窓口」の新設については本調査研究で以下のとおり様々な意見が出されたことから、本検討会での意見の一致には達しなかった。今後、(作業者注・下線ここから)本調査研究で得られた知見等も踏まえ、相談対応機能の充実のための取組について引き続き検討を進めることが望まれる。(作業者注・下線ここまで) 意見の例 いわゆる「たらい回し」状態を解消するため、国においても障害者差別に関する相談をワンストップで受け付ける窓口を設置することが望ましい。また、連絡・調整機関として適切な省庁につなぐことや、省庁の窓口と連携して調整を行う役割を担うことも考えられる。 担当省庁が分からない事例については、内閣府が「総合窓口」として各省に割振りをしていくのが良いのではないか。 p3 共生社会の実現という点では、地域の相談体制を育てることが重要。市区町村が一次的な事案の対処に当たり、それでもなお対処が困難な事例があれば都道府県や各省庁に上がっていくという重層的な相談体制が重要。内閣府では個別事案対応ではなく、窓口の明確化や人材育成支援等を担うべきではないか。 事業者がまず相談に行くのは地域の実情を知る地域の窓口であり、相談事例への対応も地域と結びついた対応を行いたい。 (2)地域協議会の充実・活用 役割 (作業者注・下線ここから)多様な関係者が集い、事例共有等を通じて認識の共有を図り、地域における差別解消の機運醸成を図る場(作業者注・下線ここまで)として地域協議会の重要性は高い。 都道府県においては、管内各市区町村における地域協議会の設置状況等の把握や好事例の展開等を通じ、市区町村の積極的な支援が求められる。 地域協議会を活用した関係者の連携強化 障害者施策関係部局や障害者団体、福祉関係者等のほか、地域協議会の構成員として今後更なる連携が期待される機関等として以下が考えられる。 地方公共団体の商工関係部局、教育関係部局等、国の地方出先機関(法務局、運輸支局、地方経済産業局等)、地域の事業者団体 等 地域協議会の設置促進・利活用の工夫としては以下の事項が考えられる。 設置促進策 差別相談への対応に主眼を置いて議論を行う観点からは地域協議会の単独設置が本来望ましいが、単独設置が難しい場合は、必要な構成メンバーは確保しつつ、他の協議会等と一体的に運営するなど柔軟に開催形式を検討することが考えられる。小規模な市区町村では地域協議会を複数で共同設置することでも差し支えない。 利活用策 「普及啓発策や職員研修の企画立案等の施策提案」や「架空事例を活用した相談対応のシミュレーション」等、議題を工夫することにより定期的に協議会を開催し、地域の取組を推進。 (3)相談機関へのアクセス向上策 相談機関があることを周知広報するだけでなく、どのようなことが障害者差別に当たるのか気付きを促していくことも相談機関へのアクセス向上策として重要。 継続的な広報周知 国及び地方公共団体においては、定期的・継続的に情報発信することが求められる。地方公共団体における情報発信に当たっては、障害者団体や事業者団体等と連携しつつ、多様な媒体を活用することが期待される。また、国においても、ポータルサイトの設置・運用等を通じた情報発信を行うとともに、広報用コンテンツの提供等を通じて各自治体への取組を支援する必要がある。 p4 対象を限定した啓発・意識喚起 障害者に対しては、アンケート調査等を通じて確認した困りごと等から差別事案を引き出し、このような場合は積極的に相談することが問題解決につながり得ることを認識してもらうことが差別事案の掘り起こし・相談窓口の活用促進に有効であると考えられる。 事業者に対しては、合理的配慮の充実がサービス向上や新たなビジネスの芽につながり得るという建設的な視点での情報提供に留意しつつ、事案への適切な対応について理解促進を図ることや、既存の業務マニュアル点検など事業者自身が取り組める予防的な対応について積極的に発信することが考えられる。 相談者の利便性に考慮した相談対応 障害者の相談者が利用しやすい窓口として、相談受付時に障害特性に応じた意思疎通支援を柔軟に行うことは重要。 (4)相談対応を担う人材の確保・育成方策 相談対応を行う人材には、(作業者注・下線ここから)公正中立な立場から相談対応を行えるよう(作業者注・下線ここまで)、障害者差別解消法や解決事例に関する(作業者注・下線ここから)専門的な知識(作業者注・下線ここまで)に加え、(作業者注・下線ここから)当事者同士の考え等を聞いて調整する能力(作業者注・下線ここまで)が必要であるとともに、事業者の現場での業務実態等に関する知識や、どの機関に相談があろうとも適切な対応が図られるよう、(作業者注・下線ここから)事案に応じて、連携・協力依頼を行うべき機関に関する知識・ネットワーク(作業者注・下線ここまで)を有していること等の様々な能力が重要になる。 国においては、(作業者注・下線ここから)国や地方公共団体における研修用コンテンツ(作業者注・下線ここまで)(既存の各相談窓口向けの基礎的なものや、障害者差別解消に係るワンストップ相談窓口向けの応用的なもの)(作業者注・下線ここから)を作成して既存の各相談機関に提供(作業者注・下線ここまで)するとともに、必要に応じ、当該相談機関の人材育成プログラムで活用してもらえるよう関係機関に働きかけることが効果的である。 3.障害者差別の解消に向けた事例の収集・共有の在り方 障害者差別の解消に向けた事例の収集・共有は、(作業者注・下線ここから)障害者、事業者双方の障害者差別の解消に関する認識を深める(作業者注・下線ここまで)とともに、国及び地方公共団体の(作業者注・下線ここから)相談体制強化の観点からも非常に重要(作業者注・下線ここまで)である。 今後、内閣府において構築するデータベースに(作業者注・下線ここから)収集事例を蓄積(作業者注・下線ここまで)するとともに、地方公共団体や障害者、事業者等に対し、(作業者注・下線ここから)参考となる事例を、事案や解決のポイント等が分かりやすい形で定期的にフィードバックすることや、周知啓発を行うこと(作業者注・下線ここまで)が重要。 →特に、内閣府において事例の内容・対応パターン別にどのような機関と連携し、どのような対応を進めることが解決に当たって適当であったのかなど、収集事例のケーススタディを行い、分かりやすく整理した上で各相談機関に共有することが望ましい。 4.検討会から関係者へのメッセージ 障害者差別に関する相談件数が少ない=差別事案が少ない(ニーズが少ない)と捉え相談体制を整備しないこととするのではなく、相談体制の構築・強化に取り組み、いかに差別事案の掘り起こし・課題解決を図っていくか、地域の行政機関、事業者、障害者など関係者が一体となって検討を進めていくことが差別解消の推進ひいては住みやすい地域づくりに資するものと考える。 p5 相談体制の構築・強化を始めとした障害者差別の解消に係る取組を一歩ずつ進め、「多様性」を尊重するという価値観を地域の関係者皆で共有することが、ひいては障害者のみならず、社会全体の「多様性」を認め、共に生きる共生社会の実現に向けた原動力となるものと考える。 国や地方公共団体を始めとする関係者においても、本報告書に記載の取組事例等も参考に、ぜひ積極的に相談体制構築・強化に取り組んでいただきたい。 (参考)障害者差別の解消に向けた相談体制、事例の収集・共有の在り方等に関する検討会構成員名簿 注:※は座長 岩上 洋一 (一社)全国地域で暮らそうネットワーク代表理事 尾上 浩二 DPI日本会議 副議長 小牟礼 まゆみ 大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課 課長 杉崎 友則 日本商工会議所 産業政策第二部 担当部長 曽根 直樹 日本社会事業大学院福祉マネジメント研究科 准教授 田中 伸明 (福)日本視覚障害者団体連合 評議員/名古屋市視覚障害者協会 会長 田中 正巳 日本チェーンストア協会 常務理事 ※野澤 和弘 植草学園大学副学長/(一社)スローコミュニケーション代表 穂苅 修利 長野市保健福祉部障害福祉課長 又村 あおい (一社)全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事兼事務局長 以上