参考2 基本方針の改定に係るこれまでの議論等(第3〜第6部分) [第66回障害者政策委員会配布資料] p1 1.対応要領 障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(令和2年6月22日)(抄) 3.個別の論点と見直しの方向性 (1)差別の定義・概念について 見直しの方向性 1 差別の定義・概念の明確化 障害のある女性や子供等への差別に関しては、基本方針等において、性や年齢別に具体的な相談事例を蓄積すること等により更に実態把握に努めるとともに、相談事例を踏まえて適切な措置を講じるべき旨を記載することについて検討すべきである。(略) (2)事業者による合理的配慮の提供について 見直しの方向性 2 建設的対話の促進、事例の共有等 建設的対話を適切に行うべきであること、障害者やその家族が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、障害特性によって意思決定や意思疎通が困難である場合に障害者やその家族に配慮することも重要であることを、基本方針等で明確化すべきである。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 六 基本方針等において、障害の分野に応じて、具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むことを検討すること。 七 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害者の権利に関する条約における障害当事者参画の理念等を踏まえ、障害者、障害者団体その他の関係者の意見を聴取すること。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) p2 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 六 基本方針等において、障害の分野に応じて、具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むことを検討すること。 七 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害者の権利に関する条約における障害当事者参画の理念等を踏まえ、障害者、障害者団体その他の関係者の意見を聴取すること。 十五 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害の特性に応じて、ルビ、点字、音声等を用いるなど、全ての人に分かりやすい情報提供となるよう配慮すること。 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける主な御意見 障害女性が被っている差別の事例、性別や年齢に配慮する事例について、基本方針の改定と併せて、対応要領や対応指針等に加筆することが必要である。(障害者団体) 地方自治体における対応要領に関する市町村職員の理解促進のための研修の検討。また、対応要領の作成は努力義務でなく「義務」として行政職員は理解することを義務付けるよう明記。(障害者団体) p3 2.対応指針 障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(令和2年6月22日)(抄) 3.個別の論点と見直しの方向性 (1)差別の定義・概念について 見直しの方向性 1 差別の定義・概念の明確化 障害のある女性や子供等への差別に関しては、基本方針等において、性や年齢別に具体的な相談事例を蓄積すること等により更に実態把握に努めるとともに、相談事例を踏まえて適切な措置を講じるべき旨を記載することについて検討すべきである。(略) (2)事業者による合理的配慮の提供について 見直しの方向性 2 建設的対話の促進、事例の共有等 建設的対話を適切に行うべきであること、障害者やその家族が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、障害特性によって意思決定や意思疎通が困難である場合に障害者やその家族に配慮することも重要であることを、基本方針等で明確化すべきである。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 六 基本方針等において、障害の分野に応じて、具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むことを検討すること。 七 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害者の権利に関する条約における障害当事者参画の理念等を踏まえ、障害者、障害者団体その他の関係者の意見を聴取すること。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 六 基本方針等において、障害の分野に応じて、具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むことを検討すること。 p4 七 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害者の権利に関する条約における障害当事者参画の理念等を踏まえ、障害者、障害者団体その他の関係者の意見を聴取すること。 十五 基本方針、対応要領及び対応方針の改定に当たっては、障害の特性に応じて、ルビ、点字、音声等を用いるなど、全ての人に分かりやすい情報提供となるよう配慮すること。 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける主な御意見 障害女性が被っている差別の事例、性別や年齢に配慮する事例について、基本方針の改定と併せて、対応要領や対応指針等に加筆することが必要である。(障害者団体) 対応指針では合理的配慮の事例が充実しているが差別的取扱いに該当するケースの事例が非常に少ない。事業者の判断基準とするために、差別的取扱いに該当するケースの事例の充実が必要。(事業者団体等) 正当な理由の判断の基準や合理的配慮の範囲や過重な負担の考え方の判断基準について、基本方針に置くか対応方針に置くかは別として、判断基準をより具体的に、また、判断事例をできるだけ多く示してほしい。(事業者団体等) 対応指針についても、事例を充実させ、表現の問題まで詳細に取り上げた方がよい。(事業者団体等) 正当な理由や合理的配慮の事例について、基本方針または対応指針において事例を示してほしい。(事業者団体等) 合理的配慮の義務化に伴い、対応指針の見直しについても障害者団体等のヒアリング等を実施する等、よりよい指針作成の検討。(障害者団体) 今回のヒアリング事項に即した形で、対応指針にも具体的事例等を追加することが望ましい。(事業者団体等) 基本方針はあくまで政府としての基本的な方向を示すものであり、記述内容には法改正により追加された事項の基本的な方向を追記する程度の増加にとどめることが妥当。実務において事業者は、対応指針やこれに基づいて作成された業界ガイドラインなどを遵守しており、詳細はこれらに委ねることが妥当。(事業者団体等) 令和3年度「障害を理由とする差別に関する相談体制の整備、事例の収集・共有に関する調査研究」報告書 7.2 障害者差別の解消に向けた相談体制の在り方 7.2.1 相談の実施体制の構築 (3)相談の実施体制構築モデル 3)国 a.国・地方公共団体全体としての「ワンストップ相談窓口」機能構築について 国及び地方公共団体が全体として「ワンストップ相談窓口」としての機能を担うことについては、検討会の場において以下のとおり合意がなされた。 (略) p5 また、国及び地方公共団体全体として「ワンストップ相談窓口」としての機能を構築するための取組として、担当府省庁の明確化も必要である。障害者差別解消法第6条に基づく「障害を理由とする差別の解消に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、同法第11条に基づく主務大臣が作成する事業者のための対応指針に記載する事項として、「国の行政機関(主務大臣)における相談窓口」があるものの、現状では、所掌する分野(事業者・サービス内容等)と対応する相談窓口の分かりやすさについては、各府省庁により、ばらつきが生じている。この課題への対応としては、まず第一に、対応指針における書きぶりの更なる工夫による、所掌分野と対応した相談窓口の明確化や、内閣府のHP等において、一括して各府省庁の相談窓口を分かりやすく示す(窓口一覧等の作成・掲載)ことなどにより、相談者や各相談機関が法律上権限のある担当府省庁に円滑にアクセスできるための取組を行うことが必要と考えられる。(略) p6 3.相談及び紛争の防止等のための体制の整備 障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(令和2年6月22日)(抄) 3.個別の論点と見直しの方向性 (3)相談・紛争解決の体制整備について 1 地域における相談・紛争解決体制の見直し 障害者差別の解消のためには、双方の建設的対話による相互理解を通じた解決が肝要であること、事案の掘り起こしや事例収集にも資することから、紛争に至る前段階での相談体制を充実させることが重要である。 限られた資源を効果的に活用する必要があることも踏まえ、地域の実情に応じて既存の機関等の活用を図り、建設的対話による事案の解決につなげていくよう、以下の方策を実施すべきである。 (ア)国・地方公共団体の役割分担の明確化 地方公共団体の取組状況も踏まえつつ、各行政機関の基本的な役割を示すべきである。 例えば、市町村は最も身近な相談窓口を担うこと、都道府県は広域的な事案や専門性が求められる事案の解決、市町村への情報提供等の支援を行うこと、国は関係機関と連携しつつ、重層的な相談体制の一翼を担うことなどが考えられる。 (イ)相談体制の明確化等 国や地方公共団体は、相談窓口や事案の取扱いの流れを分かりやすく示すなど、適切な相談機関へのアクセス向上のための情報提供等の取組を積極的に行うべきである。 意思疎通支援の下での相談やICTを活用した相談を可能とすること等について配慮するとともに、相談窓口の特性に応じて、事業者からの相談についても対象とすることを明確化すべきである。 国においては、内閣府が各省庁と協力・連携して全国の相談事例を収集・整理するほか、担当課長連絡会議等を開催し、定期的にそれらの相談事例の共有や分析・公表等を行うべきである。 相談のたらい回しを防止する等の観点から、国における新たなワンストップ相談窓口の設置や既存の相談窓口の効果的な活用、国・地方公共団体の役割分担の整理などを含め、どのような対応が可能かについて検討すべきである。 (ウ)都道府県による広域的・専門的な支援の充実 一部の都道府県において既に配置されている広域支援相談員等について、地域の実情に応じた配置を促すことを検討すべきである。 (エ)相談対応を担う人材の育成及び業務の質の向上 広域支援相談員その他の相談対応を担う者に対する研修やマニュアルの作成等を行うことにより、必要な専門性も有する人材の育成や業務の質の向上を図るべきである。 p7 (オ)国・地方公共団体の関係機関の効果的な連携 国と地方公共団体の効果的な連携による、障害者差別の解消に向けた取組を進めるべきである。 例えば、法務省の人権擁護機関が障害者差別解消支援地域協議会に積極的に参画することなどが考えられる。 相談対応による解決が困難となった場合に、地方公共団体と法務省の人権擁護機関等の機関や障害者差別解消法に基づく権限を有する主務大臣との一層の連携を図るため、各機関の役割を踏まえた事案対応の流れや日頃からの関係構築のための方策について整理することなどを検討すべきである。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 九 障害を理由とする差別に関する相談及び紛争の防止又は解決に必要な体制を整備するに当たっては、以下の諸点に留意すること。 1 障害を理由とする差別に関する相談について、ワンストップの相談窓口を設けるとともに、国と地方公共団体との連携を強化すること。 2 障害者が安心して相談することができるよう、相談窓口における相談対応者に障害者を加えること。 3 既存の機関によるこれまでの対応について調査、分析し、その結果を公表すること。 十 相談窓口については、電話対応だけでなく、FAX、電子メール、SNS等の利用を可能とするなど、聴覚障害者が利用しやすい体制を整備すること 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) 九 障害を理由とする差別に関する相談及び紛争の防止又は解決に必要な体制を整備するに当たっては、以下の諸点に留意すること。 1 障害を理由とする差別に関する相談について、ワンストップの相談窓口を設けるとともに、国と地方公共団体との連携を強化すること。 2 障害者が安心して相談することができるよう、相談窓口における相談対応者に障害者を加えること。 3 既存の機関によるこれまでの対応について調査、分析し、その結果を公表すること。 十 相談窓口については、電話対応だけでなく、FAX、電子メール、SNS等の利用を可能とするなど、聴覚障害者が利用しやすい体制を整備すること 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける御意見 国及び地方公共団体における相談体制の整備・連携強化について p8 相談のたらい回しがなくなるよう、ワンストップ窓口を設置するとともに、国と地方公共団体の連携を強化すべき。(障害者団体) 相談窓口における相談の長期化、相談員の接遇態度の問題などの課題がある。(障害者団体) 合理的配慮の義務化を踏まえ、調整機能が必要。そのためには事業者へ対応が可能な広域的自治体の関わりや、各省による関わりの仕組みをワンストップの先に構築していくことが重要。(障害者団体) 情報の共有、ワンストップ体制の整備、地域特性に応じた相談体制の整備が必要。(障害者団体) 相談体制の構築に当たっては、国においては、各省庁に設置されている相談窓口において、所管法令等について技術的助言や情報提供を行い、それを受け、地方自治体が個別具体的な事案に対する相談支援を行うことにより、効率的、効果的な相談支援を実施することができると考える。(地方団体) 政府や都道府県等による広域的・専門的な相談対応や、国と地方公共団体の効果的な連携も重要。(事業者団体等) 各地公体の相談窓口の充実化が図られることにより、相談者の利便性の向上等が期待される一方、地域間で相談対応のレベルに差が生じ、結果として求められる合理的配慮のレベル感に差が生じることが懸念される。相談体制の拡充等の検討にあたっては、そうした事態のないよう配慮すべき。(事業者団体等) 運行の安全確保の観点から役務の提供ができないと判断せざるを得なかった場合、行政機関の相談窓口において、事業者としての運行上の判断等がどの程度考慮されるのか憂慮している。こういった相談の場合、国にも連携いただくことが必要ではないか。(事業者団体等) 先進的な取組事例等の横展開を希望する。個別事例等に対する都道府県から市町村へのバックアップ体制が整っていない自治体の場合、事例対応のスキルやノウハウ等のない市町村は対応が困難であるものと考える。(地方団体) 公立の相談体制が設置できないときには、民間専門事業所への相談体制の委託などが必要。(障害者団体) 各障害や疾患別に正しい情報や専門家などを提供できる全国の窓口一覧(マップ)を、国の責任で提供することも必要(障害者団体) 相談窓口の明確化について 相談窓口が明確になっていない場合が多く、障害者や家族がストレスなく相談できる仕組みになっていない場合が多い。(障害者団体) 差別的な対応を受けたとしても、どこに相談したらいいのか分からないという現状が見られることから、相談窓口の明確化・広報を強化する必要があるのではないか。(障害者団体) 相談機関(窓口)が明確でない、自治体によって格差がある。(障害者団体) p9 相談窓口の連絡先等の一覧表の作成など、差別に関する相談場所等がどこに設置されているか広報していく必要がある。実際に問題が発生した際の相談窓口が明確でないと思われる。(事業者団体等) 事業者は相談に慎重、ためらいがあるが、その背景には相談窓口がどこか分かりにくいことや事業者からみた困りごとを受け止めてもらえるのかといった不安がある。(事業者団体等) 現行の基本方針の記載として「障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要」とあるが、「事業者」からの相談についても明記し、事業者からの相談にも対応する体制について明確化すべき。(事業者団体等) 事業者からの相談対応の仕組みも導入する必要がある。(地方団体) 相談窓口での利便性向上・求めるサービスについて 相談窓口においても、(電話のみ、メールのみといった限られた手段だけではなく)相談者のコミュニケーションのニーズを満たす方法で相談が受けられることが望ましい。(障害者団体) 相談や話し合いの方法として、電話や対面のほか、オンライン会議システムなども活用してほしい。特に複数の機関が関係する話し合いが必要な場合は、移動に困難のある障害者にとっても無理なく参加できる方法を導入してほしい。(障害者団体) 窓口来所に限らず、電話・メールなど相談方法を拡げていただくことが望ましい(事業者団体等) 合理的配慮の義務化に伴い、事業者もこれまで以上に相談窓口を活用するニーズが高まるため、中立・公正に建設的対話を促すための相談対応を促進すべきである。(事業者団体等) 事業者への相談対応に当たっては、類似事例や企業の実態を把握した上で「正当な理由」や「過重な負担」に関する的確な助言や、「代替措置の選択」等の解決策に関して、双方にとって現実性のある的確な提案ができることが望ましい。(事業者団体等) 業務マニュアルの作成・改定や内部研修を実施する際に、内容の妥当性等について助言をいただく体制があると有難い。(事業者団体等) 障害者と事業者との間の話し合いが平行線にあった際に、助言や相談・紛争解決できる体制を希望。(事業者団体等) 相談対応を行う人材の育成・確保 広域専門相談員も含めた相談を受ける職員の専門性の向上が必要である。(障害者団体) 意思疎通も含め個々の障害特性にきめ細かく応じられる人材の育成が必要である。(障害者団体) 相談員の方が障害者・事業者の双方と円滑にコミュニケーションを取れるようにするためのスキル向上を図ってほしい。(事業者団体等) p10 相談者と相手方との間で、問題解決についての調整・あっせんにおいて、複数回にわたる面談等が必要と思われ、十分に機能するために人材の育成が重要である。(事業者団体等) 相談を受ける職員の専門性の向上及び業務の明確化(事業者からの相談への円滑な対応と助言、情報提供、関係者間の調整役等)が必要。(障害者団体) 本当に障害者疾病を理由に無理解、偏見、差別が生じているのかを見定める客観的な判断ができる機関(専門員)が必要ではないか。(障害者団体) 相談員の研修内容等が地域により異なるため、国の予算措置を含め、全国で統一的なテキストや研修等を実施し、一定のスキルを確保することが必要。(障害者団体) 精神障害を始めとする「見えない障害」「理解が難しい障害」についての研修機会の推進が必要である。(障害者団体) 障害のある当事者で経験を積んだ人を窓口の相談員として配置してほしい。(障害者団体) 相談担当者に必要なスキルについて、当事者の意見聴取を行った上で人材育成等の仕組みを検討してほしい。(障害者団体) 紛争解決・仲裁の機能について 第三者機関としての救済機関(調整委員会、調整・助言・指導や不服申立て等の救済制度といった仕組み、客観的な判断ができる機関(専門員))設置の検討。(障害者団体) 既存の機関の相談員が多様な障害特性をすべからく理解するのは至難の業であると思われる。したがって、既存の機関ではなく、紛争解決まで可能な独立した相談機関が必要である。(障害者団体) 第三者的立場でのアドバイス、紛争事例の調停(調整)のほか、その個別のケースに対して、適切な形で参考となる合理的配慮や紛争解決に関する具体的な事例の提供が行われることなどを期待する。また、例えば地域協議会を通じた地域の支援リソース・紛争調停の機能との接続なども必要である。(事業者団体等) 相談窓口のサービスや支援に関しては、相談にとどまらず、相手方との仲裁的な機能を担っていただきたい。(事業者団体等) 令和3年度「障害を理由とする差別に関する相談体制の整備、事例の収集・共有に関する調査研究」報告書 7.2 障害者差別の解消に向けた相談体制の在り方 7.2.1 相談の実施体制の構築 (2)障害を理由とする差別に関する相談の体制構築の考え方 これまでの調査結果等を踏まえると、相談体制構築に当たり、以下の3つのプロセスごとに、それぞれ以下の事項に留意する必要があると考えられる。 特に、地方公共団体における相談体制構築に当たっては、相談体制の地域間格差が大きい現状を踏まえ、地域の社会資源の状況、人口規模等に応じて、どの機能を、どの程度の規模(箇所数等)で、どのエリア単位(市区町村、圏域、都道府県)で相談窓口を整備するか等、段階的な体制整備方針を検討する必要がある。 p11 また、国においても、地方支分部局又は各府省の相談窓口・担当課において相談対応を行うことから、以下の事項に留意した対応を検討する必要がある。 1)相談の一次受付 相談の一次受付では、様々なチャンネルがあることが望ましい。 差別相談はどこに相談に行けば良いか分かりにくいため、障害者も事業者も分かりやすいよう「差別相談窓口」と明確に看板を掲げた窓口が必要である。その際、全国共通の通称を決めておくことも、分かりやすさに寄与すると考えられる。 一方、相談者本人が初めから差別という認識を持って相談に来るケースは少ないため、障害者からの生活上の困りごと相談や通常業務における事業者とのやり取り等の中から担当者が差別相談を拾い上げる必要がある。この点では、明示的な「差別相談窓口」だけでなく、日常的に生活支援に関わる部局や商工関係部局等も一次受付として重要な役割を担うこととなる。なお、これら部局等は目前の課題解決に注力せざるを得ない面がありつつも、差別事案への気付きや対応が後回しにならないよう留意することが求められる。 身近なところで相談できる利便性の担保が重要である一方、差別相談の性格上、日常的な関わりがないところに相談したいというニーズもある。この点では、一次受付窓口の役割は必ずしも基礎自治体である市区町村のみが担うものではなく、圏域、都道府県、国の地方支分部局等国レベルでの一次受付窓口の重要性にも留意する必要がある。 2)基本的な対応 窓口ごとに案件対応にばらつきが生じることのないよう、一次相談窓口で受け付けた差別相談については当該窓口のみで対応を完結させるのではなく、統一的な対応方針に基づく対応ができるよう、関係者間で案件を共有し、対応を検討することが望ましい。 相談の一次受付から案件終結までに想定される「基本的な対応」としては以下のような事項が想定される。 相談者からの情報収集(事実確認) 関係者での情報共有、対応方針の検討 相手方からの情報収集(事実確認) 関係者での情報共有、事案の評価分析、対応方針の検討 相談者と相手方との調整、話し合いの場の設定 p12 共有先となる「関係者」については、障害者施策関係部局のみならず、普段事業者等との関係がある部局(商工関係部局)等も含まれることに留意(なお、共有に当たっては、個人情報の保護のための所要の対応を行うことが必要である。) 上記の「基本的な対応」については、基礎自治体である市区町村レベルで実施できるような体制の整備が望ましい。 ただし、小規模な市区町村では、人材確保、ノウハウの蓄積等の観点から単独対応は難しい場合もある。また、一定規模の市区町村であっても、市区町村域を超えるため単独対応できない場合も想定される。このような場合は、都道府県が広域支援相談員等を通じて市区町村を支援することが期待される。 なお、相談者が障害者である場合や小規模事業者である場合等には、相談を躊躇したり諦めたりしてしまうことのないよう、公正中立な立場である相談窓口の担当者とは別に、相談者に「寄り添う」アドボケーターやアドバイザー等を置くことも円滑な相談対応に資すると考えられる。 3)基本的な対応で解決が難しい場合の対応 基本的な対応で解決が難しい場合、次のステップとして以下のような対応が考えられる。その際、他機関への連携・協力を依頼する必要が生じることもあるが、その場合においては、権限を有する機関を判断し、当該機関に円滑に引き継ぎや連携協力の依頼を行うことが可能となるよう(「たらい回し」の防止)、後述のような担当機関の明確化、関係機関の連携が重要となることに留意する。 当該地方公共団体による行政措置(条例により独自の権限を定めている場合や、障害者差別解消法第12条について、各事業法等における監督権限に属する事務を地方公共団体の長等が行うこととされている場合) 当該地方公共団体による行政措置による対応ができない場合やより有効な解決を図ることができると考えられる場合等において、障害者差別解消法第12条に基づく主務大臣による行政措置(報告徴収、助言、指導、勧告) (3)相談の実施体制構築モデル 前項のプロセスを踏まえた各行政機関における相談体制の在り方の検討等に資するよう、望ましい相談の実施体制の在り方について、市区町村・都道府県・国それぞれの役割について、以下のとおり整理することとする。 相談の実施体制の構築に当たっては、以下に述べるような役割分担を基本としつつ、相談者がどの相談機関に相談しても、つながるべき相談機関につながり、適切な対応が図られるような環境整備が必要である。このため、内閣府においては、各府省庁の相談窓口の明確化や、各相談窓口の人材育成の支援、事例の収集・分析・共有を通じた障害者・事業者の障害者差別解消に関する理解の向上や行政の対応力の強化等に取り組むことにより、国・地方公共団体全体としてワンストップ相談窓口としての機能を担うことができるようにすることが求められる。 p13 1)市区町村 現在、各市区町村において窓口を担っている主な機関は以下のとおりである。 差別相談のワンストップ窓口 市区町村の障害福祉施策所管部署 市区町村の教育、就労、生活困窮、消費生活、施設管理、公共サービス、市民生活全般に関する相談窓口 障害者総合支援法の基幹相談支援センター、市町村障害者相談支援事業を実施する相談窓口(事業の受託を受けた相談支援事業者) 障害者虐待防止法に基づく障害者虐待防止センター 成年後見制度利用促進のための中核機関(権利擁護センター等) 社会福祉法に基づく重層的支援体制整備事業の相談窓口 相談者の利便性担保の観点から、市区町村は身近なところで相談できる基本的な窓口の役割を担うことが望ましい。 前述の差別事案の掘り起こし及び相談者からのアクセス向上の要請を踏まえると、市区町村においては将来的には重層窓口型を志向し、明示的な差別相談のワンストップ窓口と日常的に生活支援に関わる機関の窓口双方で、相談者の困りごとの中から差別相談を拾い上げられるような対応をすることが望ましい。ただし、小規模な市区町村ではワンストップ窓口は複数市町村において共同設置することも考えられる。 あわせて、各市区町村又は複数市町村共同で地域協議会を設置することで関係者間の連携を強化するとともに、各窓口での対応方針等を関係者で決定・確認し統一的に対応する体制を構築することも重要である。 2)都道府県 都道府県には、広域支援相談員や都道府県の地域協議会等を通じて、市区町村の相談体制整備、具体的な相談対応を広域的に支援する役割が求められる。 また、市区町村に相談の一次受付窓口が十分に整備されていない現状や、差別相談の特性上、相談者に日常的な関わりがないところに相談したいというニーズがあることを踏まえると、基本的な窓口としてアクセス可能な相談窓口(一次受付窓口)を、市区町村だけでなく都道府県においても設置することが望ましい。 3)国 a.国・地方公共団体全体としての「ワンストップ相談窓口」機能構築について 国及び地方公共団体が全体として「ワンストップ相談窓口」としての機能を担うことについては、検討会の場において以下のとおり合意がなされた。 p14 国においては、障害者差別解消法第12条に基づき、主務大臣は、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導もしくは勧告を行うこととされている。これらの権限は特定の府省庁が一元的に担っているわけではなく、分野ごとに当該事業を所管する各主務大臣(各府省庁)が有しており、現状においても各府省庁に分野ごとの相談窓口が設けられている。国に対しては、差別相談の内容が各府省庁の所管法令等に関係する場合や事業者が広域展開している場合等、市区町村や都道府県のみでは対応が困難な事例において市区町村や都道府県に対し適切な支援等行うことが基本的な役割として求められており、このため、事案ごとに、市区町村や都道府県の相談機関等が同条の権限を有する適切な省庁の相談窓口に円滑にアクセスできることが必要となる。 一方で、現状においては各府省庁の所掌する分野が複雑に入り組んでおり、相談窓口が必ずしも明確ではないため、障害者や事業者のみならず、地方公共団体にとっても、相談窓口が分かりにくいという問題がある。このため、内閣府においては、これらの課題に対応するため、以下の環境整備を行うことが考えられる。 環境整備のための取組としては、まず相談対応を行うための人材育成の支援や事例収集・分析・提供に係る取組が考えられる。各相談窓口において「適切な相談窓口にきちんとつなぐ機能を備えるためには、関係者に必要な事実関係を確認し、対応方針を整理した上で適切な担当機関に連携・協力依頼を行うことができる人材の育成や、そのために参考となる事例の収集・分析・共有が必要である。このためには、内閣府において、後述の7.2.4のような研修プログラムの作成・窓口担当者向けのマニュアル作成等や事例の収集・分析・共有の取組など、他の相談機関をバックアップするための取組が必要である。 また、国及び地方公共団体全体として「ワンストップ相談窓口」としての機能を構築するための取組として、担当府省庁の明確化も必要である。障害者差別解消法第6条に基づく「障害を理由とする差別の解消に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、同法第11条に基づく主務大臣が作成する事業者のための対応指針に記載する事項として、「国の行政機関(主務大臣)における相談窓口」があるものの、現状では、所掌する分野(事業者・サービス内容等)と対応する相談窓口の分かりやすさについては、各府省庁により、ばらつきが生じている。この課題への対応としては、まず第一に、対応指針における書きぶりの更なる工夫による、所掌分野と対応した相談窓口の明確化や、内閣府のHP等において、一括して各府省庁の相談窓口を分かりやすく示す(窓口一覧等の作成・掲載)ことなどにより、相談者や各相談機関が法律上権限のある担当府省庁に円滑にアクセスできるための取組を行うことが必要と考えられる。加えて、各相談機関等における相談対応プロセスの中で国の対応を求める必要がある場合等において、国の窓口一覧を確認したものの、所管が複数の省庁にまたがる等どの省庁が担当するか分からないような場合には、内閣府が必要な助言等の対応を行うことが期待される。これらの取組により、どの相談機関でも対応されない事例が発生しないようにすることが重要である。また、司令塔としての役割を担う内閣府においては、障害者差別の解消の推進のために、障害者と事業者双方の困りごとを受け止めつつ、相談体制構築・強化に係る国や地方公共団体の取組に対する十分な支援ができるような体制整備を検討することが望まれる。 p15 b.国民からの一次相談を受け付ける総合窓口としての国の「ワンストップ相談窓口」新設について 内閣府における「ワンストップ相談窓口」の新設については、以下のとおり本調査研究の有識者ヒアリング及び検討会の場で様々な意見が出され、本検討会において意見の一致には達しなかったが、今後、本調査研究において得られた知見等も踏まえ、相談対応機能の充実のための取組について引き続き検討を進めることが望まれる。 国、都道府県にも市町村にもワンストップの相談窓口を設置することを期待。国としての相談窓口は、全国的な大企業を相手先とする事案の対応には必須。(日本弁護士連合会に対する有識者ヒアリング。なお発言内容はヒアリング対象者個人の見解) 国には国民が相談できるワンストップ相談窓口の設置を希望。相談員は、当初5〜10人程度の配置で始動することを想定。連携先を探すのが難しい相談事例等があった場合に、当該事例の対応を実施する市町村のフォローを行う機関の設置を希望。(検討会構成員に対する有識者ヒアリング) 国のワンストップ窓口を設置した場合に、当該窓口が果たすべき役割 1.相談受付窓口としての役割:従前より、障害者が国に差別に関する相談を行う際、担当する主務官庁が分かりづらく、いわゆる「たらい回し」の状態になるとの問題点が指摘されている。これを解消するため、国においても、障害者の差別に関する相談をワンストップで受け付ける窓口を設置することが望ましい。 2.連絡・調整機関としての役割:障害者から寄せられた差別に関する相談について、各省庁に設置されている相談窓口の中から、担当することが適切な省庁の相談窓口につなぐ役割を担うことが望ましい。また、省庁の相談窓口と連携して、事業者・相談者と個別に、あるいは、同時に協議を行う場を設定する等の調整を行う役割を担うことも考えられる。(第5回検討会における構成員提出資料より一部抜粋・整理) 仮に想定される事例ごとにどの相談窓口にアクセスするのが適当かを整理した窓口一覧を作成した場合、当該一覧はかなりの情報量となり相談者にとっては使いづらい。内閣府が最初の総合相談窓口としての役割を担う必要があるのではないか。 どの省庁にアクセスすべきか道案内してくれるような窓口や、所管等相談できるようなルートは必要。 p16 自治体でしっかり相談対応をした上で、それでもなお対応に迷うものにつきどのように処理していくかが重要。担当省庁が分からない事例については、内閣府が「総合窓口」として各省に割振りをしていくのが良いのではないか。なお、割振りをする場合には、内閣府から各府省庁の担当課長会議(障害者差別解消関係府省連絡会議)につなぎ、そこから適当な窓口に繋げるような流れを想定。実施に当たっては、障害当事者の立場から助言等を行えるような人員も含めた体制整備が必要。 相談体制の構築に当たっては、差別解消法の目的である共生社会の実現に結び付けていくことが重要であり、この点では、まず地域の相談体制を育てることが必要。全国展開の店舗も従業員は地域住民であり、いきなり国が介入することは地域の事業者も委縮する。相談体制については、まさに市区町村が地域の「かかりつけ医」的な存在として一次的な事案の対処に当たり、それでもなお対処が困難な事例があれば「専門医療機関」的な存在である都道府県や各省庁に上がっていく、というような重層的な相談体制が重要。 地域の重要性を踏まえると、まずは地域の相談窓口につながり、地域が主体となって相談対応に当たることが重要ではないか。都道府県は広域対応を行い、国では所管省庁としての見解を示すということではないか。内閣府では、個別事案対応ではなく、窓口の明確化や人材育成支援(障害者差別解消のための指導者養成研修などによる地方公共団体への支援も含む。)、事例収集、国民の機運醸成を担うべきではないか。 事業者の実態からすると、まず相談に行くのは地域の事情を知る地域の窓口。例えば、店舗によっては自治体との間で、当該地域にお住まいの高齢者・障害者の方に係る対応等も盛り込んだ地域包括協定を締結していることもある。このような観点からも、相談事例への対応については地域としっかり結びついた対応を行いたい。 内閣府が個別の相談対応を担うのは法的にも予算・体制的にも困難。内閣府は既存の各府省庁の窓口等の情報整理を行うなど、市町村・都道府県のバックアップを担うのが基本ではないか。 7.2.4 相談対応を担う人材の確保・育成方策 差別相談の解決を図るためには、障害者や事業者等からの相談を適切に受け止め、対応する人材の確保・育成が重要である。障害者差別解消法改正法においても、国・地方公共団体の相談対応を担う人材の育成及び確保についての責務が明確化されており、国及び地方公共団体においては人材育成・確保に一層取り組む必要がある。 相談対応を行う人材には、公正中立な立場から相談対応を行えるよう、障害者差別解消法や解決事例に関する専門的な知識に加え、当事者同士の考えや希望を聞いてそれを調整する能力が必要であるとともに、事業者の現場での業務実態等に関する知識や、どの機関に相談があろうとも、適切な対応が図られるよう、事案に応じて、連携・協力依頼を行うべき機関に関する知識・ネットワークを有していること等の様々な能力が重要になってくる。 p17 国においては、自治体単独で取り組む場合など、自前での研修資料の作成や研修の実施が困難である場合もあることを踏まえ、できるだけ多数の窓口で相談の一次受付を担えるよう、例えば、以下のような2種類の研修用コンテンツを作成し、既存の各相談機関に提供するとともに、必要に応じ、当該相談機関の人材育成プログラムの一部に盛り込むよう関係機関に働きかけることが効果的である。 国や地方公共団体における既存の各相談窓口(基礎):日常の困りごとから差別事案を引き出し適切に対応できるよう、障害者権利条約の理念や障害の「社会モデル」の考え方、障害者差別解消法・基本方針の解説など基本的な法令知識や、必要に応じ、他機関に連携・協力依頼ができるよう、差別相談窓口の連絡先等を盛り込んだコンテンツ。 ワンストップ窓口(障害者差別相談窓口)(応用):ワンストップで相談を受け付けられるような人材を育成するための「ワンストップ相談研修」用の素材として、上述の既存の各相談窓口向けコンテンツに加え、相談対応の一連の流れや関係機関の役割、具体的な事例分析・ポイントの整理等、個別具体の差別事案への適切な対応等に資するようなコンテンツ。 このツールは、特に、以下の人材育成プログラムで活用してもらえるよう関係機関に働きかけることが期待される。 地方公共団体における各種相談受付窓口の担当者研修、初任者・管理職研修 各府省庁における相談窓口課室の担当者研修、初任者・管理職研修 相談支援専門員研修 人権擁護部局、行政相談部局、消費生活相談部局等の国が運営する類似相談制度の担い手に対する研修 既存の人材育成プログラムの中で研修を実施することが難しい場合や、こうした研修を受講する機会がない相談窓口があることも踏まえ、当該コンテンツはインターネットを利用したeラーニングでの提供も検討することが望まれる。 4.啓発活動 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 二 本法並びに本法に基づく基本方針、対応要領及び対応指針の改定については、国の各行政機関、地方公共団体及び民間事業者に周知徹底すること。 十一 障害を理由とする差別の解消に向けた啓発活動に当たっては、障害者団体等が実施している研修に関する情報を可能な限り収集し、その内容も十分に踏まえて検討すること。 p18 十四 国の各行政機関又は地方公共団体が合理的配慮を提供しない場合は、その理由を障害者側に十分説明することに努め、その旨を国の各行政機関及び地方公共団体に周知徹底すること。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) 二 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についての理解がより一層深まるよう啓発に努めるとともに、本法並びに本法に基づく基本方針、対応要領及び対応指針の改定については、国の各行政機関、地方公共団体及び民間事業者に周知徹底すること。 十一 障害を理由とする差別の解消に向けた啓発活動に当たっては、障害者団体等が実施している研修に関する情報を可能な限り収集し、その内容も十分に踏まえて検討すること。 十四 合理的配慮の提供に当たっての意思の表明について、知的障害等により本人の意思の表明が困難な場合には家族、介助者等が本人を補佐して行うことも可能であることを、国の各行政機関、地方公共団体及び民間事業者に十分に周知すること。 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける御意見 障害者差別解消法を知らない市民も多数と思うので、メディアやSNSの活用など、時代にあった周知方法を進めるべき。(障害者団体) 障害者差別解消法の認知度が低く、障害者自身の解釈にも個人差がある。法の理念と内容を再確認する上でも啓発活動が必要。(障害者団体) 一般向けの広報・啓発活動だけでは、情報入手に困難を抱え盲ろう者等には情報が入らないこともあり、当事者団体、官民で連携・協力が不可欠。(障害者団体) 内閣府は啓発物の作成・配布等に力を入れてほしい。当事者団体の啓発活動との連携が課題。(障害者団体) ポスター、テレビCM、デジタルサイネージ、パンフレットの配布、参加(体験)型直接交流の機会等を通じて普及啓発を行うことが効果的ではないか。(事業者団体等) 難病患者や内部障害者のような外見からはわからない障害を持つ障害者がいることの啓発が不十分。障害の特性理解も合わせた啓発活動を行うことが必要。(障害者団体) 障害理解には、教職員はもとより、幼少期における普及啓発が重要課題であり、障害理解を深めるための取組が大切。(障害者団体) 教育の中で、障害、差別、合理的配慮、建設的対話等について学ぶ機会が必要。(障害者団体) 行政機関や事業者、支援学級等の教職員及び通常学級の教職員への研修が必要。また、当事者や家族、支援者に対する合理的配慮の趣旨の普及啓発活動が必要。(障害者団体) 行政機関等や事業者における研修には、その企画・実施に障害者団体等が参加・連携すべき。また、障害当事者が講師などとして参加することが効果が大きい。(障害者団体) p19 障害者差別解消法の理解を深めるために、行政機関等や事業者、障害者団体等の関係者が共同で研修を行えば効果が期待できるのではないか。(障害者団体) 合理的配慮の提供について啓発する上では、共生社会の実現に向けて、建設的対話と相互理解が必要である旨を全面に出すことが重要である。(事業者団体等) 心のバリアフリー(障害の社会モデル)への理解促進が差別解消に役立つのではないか。(事業者団体等) 合理的配慮は一般市民が手伝わなくても事業者が障害者に提供すれば差別のない状況を担保できる趣旨のもの。一般市民に呼び掛ける「こころのバリアフリー」は、障害者を健常者とは違い、助けを必要としている可能性が高いことを意識させるもので、それこそが市民の差別意識を高める可能性があるのではないか。(障害者団体) 地域住民や他の一般利用者の協力・行動に係る記載があってもよい。(事業者団体等) 障害者差別解消法の改正の趣旨や内容や顧客・取引先など広く関係者に理解していただくことが必要であり、一般事業主が法改正の啓発活動ができるポスター・リーフレット等を作成し、必要に応じて事業主が利用できるようにすべき。(事業者団体等) 事業所内で定期的に研修会を開催できるよう、専門性を有する団体による研修会開催補助、自治体からの講師派遣、オンラインコンテンツの配信を検討すべき。また、行政機関等による、相談窓口の活用に関する研修会を開催すべき。(事業者団体等) 事業者は、「どのような場合に」「どのような行為をする」と義務違反となるのかを知りたいと思っており、事業者の視点で作成された広報物が必要である。(事業者団体等) 企業活動の現場に根差した機会をとらえて法を周知し、機運を醸成することが考えられる。(法定の講習、公的支援策の説明会など)(事業者団体等) セミナーや講演、無料の講師派遣、研修動画の配信、研修資料等の提供等の支援策を強化・拡充してほしい。(事業者団体等) 意識改革のためには、事業者などの教育を含めた対策が必要。業界の研修制度に組み込むことが必要。(事業者団体等) 法律の概要、定義、企業が取り組むべき内容、具体的事例、判断基準などをわかりやすく説明する情報が、社内研修や啓発活動でも活用でき、有効。(事業者団体等) 障害者差別解消法の逐条解説の冊子が欲しい。各障害の特性などに応じた場面ごとの事例があると良い。(事業者団体等) 行政機関からの定期的な具体事例の周知、業界団体から加盟事業者への展開の仕組みをつくることが必要。(事業者団体等) 合理的配慮の好事例を共有することが差別解消に向けた啓発となり、合理的配慮が浸透していくいい循環を生むと考える。(障害者団体) p20 5.情報の収集、整理及び提供 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 十二 障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集及び整理に当たっては、国の各行政機関及び地方公共団体が協力・連携し、データベースの構築等により、情報を共有すること。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) 五 障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。また、地方公共団体と連携して、複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと。 十二 障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集及び整理に当たっては、民間事業者に対し情報の提供等を求めつつ、国の各行政機関及び地方公共団体が協力・連携し、データベースの構築等により、情報を共有すること。 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける御意見 相談窓口の経験や対応力には地域間格差があるため、これを是正すべく、対応事例等の共有を強めるべきである。(障害者団体、事業者団体等、地方団体) 「正当な理由」や「過重な負担」についてある程度統一的な目線・理解を持てるようにするため、「正当な理由」や「過重な負担」に該当する事例の収集・蓄積を行い、情報還元してほしい。(事業者団体等) 失敗事例や解決に至らなかった事例に学ぶ観点があってもよい。生きた事例を活用する点で事業者にとって参考になる。(事業者団体等) 内部障がいなどの見えにくい障害や、社会的障壁の除去のための意思の表明が自身では(直接表明することが)難しい方等の事例等は集まりにくい。こうした事例などは広く共有されるべきものであると認識しているため、他団体等の好事例があれば参考にしたい。(地方団体) 事例の収集・分析のため、共通の事例収集フォーマットを内閣府で作成し、担当省庁、自治体に示すべき。(障害者団体) 事例の収集・共有のみならず、地域で事例について意見を語り合う機会が必要。(障害者団体) 事例から何を見出すかがより重要だと考えられる。集められた事例を基に、更に調査・研究し、それを障害者差別解消に役立てるものとする必要がある。(障害者団体) p21 障害女性等の複合差別について、国連の障害者権利委員会の総括所見などの国際的な動向を踏まえながら、事例の収集や分析を進める旨を記載すべき。(障害者団体) 相談事例の集計の際には、性別、年齢と他の要素を掛け合わせたクロス集計を行い、障害のある女性の差別事例を可視化すべき。(障害者団体) 好事例を集約し、業種・業態や企業規模、場面や内容等で検索できる機能を合わせて提供できると有効。(事業者団体等) 自治体が開催するバリアフリー協議会等における情報・事例を提供してはどうか。(事業者団体等) 定期的に、業種ごと、障害特性ごと、事業者の規模ごと、等の事例提供が望ましい。(事業者団体等) 対応の詳細、対応のポイントの解説等が記載されたケーススタディの形で提供してほしい。(事業者団体等) コロナ禍収束後の「ニューノーマル」に対応した事例が欲しい。(事業者団体等) インターネット等で速やかにアクセスできる体制を構築すること。(事業者団体等) 関係する職能団体が協議会に参画することで協議会における事例の収集、共有を図ることができる。また、関係団体等にメールを通じての情報提供・周知等も必要(事業者団体等) 動画による提供があれば活用しやすい。(事業者団体等) 令和3年度「障害を理由とする差別に関する相談体制の整備、事例の収集・共有に関する調査研究」報告書 7.3 障害者差別の解消に向けた事例の収集・共有の在り方 障害者差別の解消に向けた事例の収集・共有は、障害者、事業者双方の障害者差別の解消に関する認識を深めるとともに、前述のとおり国及び地方公共団体の相談体制強化の観点からも非常に重要である。 地方公共団体においては、自治体内で受け付けた相談を共通帳票で収集した上で、当該事例を関係機関や地域協議会で共有し、個別事例の対応や今後の相談体制の在り方検討に活用している例が多い。しかし、単一自治体内では相談件数が少なく、事例収集・分析を通じた相談ノウハウの蓄積には至っていない場合が多い。 一方、内閣府では、市町村、都道府県、関係省庁から、毎年「広く情報共有することが望ましい、特徴的な相談事例」を収集しており、これを元に作成した「合理的配慮の提供等事例集」を平成29年4月にホームページ上に掲載している。しかし、その後は更新されておらず、市町村、都道府県が相談対応に困った際に閲覧するインセンティブは低下しているのが現状である。 単一自治体内では事例収集・分析を通じた相談ノウハウの蓄積が困難であることを踏まえれば、今後、内閣府において構築するデータベースに収集事例を蓄積するとともに、参考となる事例を、自治体や障害者、事業者等に対し、事案や解決のポイント等が分かりやすい形で、定期的にフィードバックすることや、周知啓発を行うことが重要である。 p22 特に、各相談機関における事案対応力を向上させる観点からは、参考となる事例を共有するに当たっては、単に収集事例をそのまま共有するだけでなく、内閣府において、事例の内容・対応パターン別にどのような機関と連携し、どのような対応を進めることが解決に当たって適当であったのか等、収集事例のケーススタディを行い、分かりやすく整理した上で各相談機関に共有することが望ましい。このことは、類似事案において連携が必要となる関係機関の見当をつける際の参考にも資すると考えられる。 このような内閣府による事例の収集・分析・共有を通じて、合理的配慮や差別の禁止についての社会的な認識共有を図り、建設的対話が円滑に進むことや、各相談機関における事案対応力が向上することが期待される。 p23 6.障害者差別解消支援地域協議会について 障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(令和2年6月22日)(抄) 3.個別の論点と見直しの方向性 (4)障害者差別解消支援地域協議会について 見直しの方向性 1 都道府県による市町村の地域協議会設置等の支援 都道府県が、その設置・運営を通じて得られた知見や管内市町村の地域協議会について得た情報を基に、市町村に対して他の市町村の取組に関する情報提供を行うことや、必要に応じて圏域単位など複数の市町村による地域協議会の共同設置・運営を支援することを促すべきである。 2 複数の地域協議会の間での情報共有等の促進 都道府県の地域協議会と市町村の地域協議会の間や、市町村の地域協議会と他の市町村の地域協議会の間において、必要に応じて情報共有や助言その他の支援・連携を行うことについて検討すべきである。 国においても、それぞれの地域協議会において、関係機関が対応した事例の共有等が図られるよう、各地域の取組を更に促すとともに、地域における好事例が他の地域において共有されるための支援をすべきである。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年4月16日 衆議院内閣委員会)(抄) 十五 障害者差別解消支援地域協議会について、未設置市町村も少なくないことを踏まえ、地方公共団体に対して十分な支援を行うこと。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年5月27日 参議院内閣委員会)(抄) 十七 障害者差別解消支援地域協議会について、未設置市町村も少なくないことを踏まえ、地方公共団体に対して十分な支援を行うこと。 障害者差別解消法に基づく基本方針改定に係る団体ヒアリングにおける御意見 構成員の多様性について その地域における「主要な障害者団体(当事者、家族、専門家による)」が構成員としてかかわることが望ましい。その場合、地域協議会に関わる構成員の性別、状態、障害種別等の公平性に配慮し、特定の障害種別に関わる関係者にかたよることなく、全ての障害種別から公平に構成員を選ぶことが必要である。(障害者団体) 基本方針において、障害当事者団体からの委員選出を平等・公平なものとすることを明記するとともに、選考理由・選考過程の透明性を確保すべき。(障害者団体) 地域協議会のメンバーに、事業を営んでいる者を入れることが肝要。(障害者団体) p24 障害者差別解消支援地域協議会に事業者が参画することにより、問題点の共有や課題解決に向けての対応等を図ることがより円滑になる。また事例の提供方法としても有効。(事業者団体等) 法務局の権利擁護や労働基準監督署が所管する差別等、相談内容によっては連携・分担する内容も多く、連携システムをつくることが望ましい。(事業者団体等) 協議の対象となる事業分野、所管法令等が多岐に渡るため、障がい当事者、有識者、行政機関のほか、民間事業者も委員として参画している。協議内容によっては、関係者などのオブサーバー参加が必要となるが、その人選に苦慮することがあり、課題となっている。同様の課題は他の地方公共団体でも抱えていると思われるため、意見を伺うことのできる関係者の情報を共有する仕組みがあると有益と考える。(地方団体) 国の各機関においても協議会のような組織を立ち上げるべき(国の法律や制度、あるいは制度との関係において、障害者への不当な差別的取扱や合理的配慮の不提供の課題が出される場合ある。)(障害者団体) 地域協議会の設置促進等 市町村レベルでの地域協議会の設置が進まなかったり、実質的に機能していない実態がある。その要因を明らかにし、設置促進に向け改善策を講じる。(障害者団体) 地域によって活動に差があるため、事例の収集を一律の活動に位置付け、具体的に実施する必要がある(都道府県単位でのフィードバックを含む)。(事業者団体等) 小さな自治体が単独で協議会を設置するには、専門的知識・人材の不足、人事異動等による支援の継続性等に課題があるため、生活圏が同じ自治体と相談専門機関での合同設置が有益と考える。(地方団体) 地域協議会が総合的に課題を吸い上げ、解消に向けて取り組むことで差別解消に役立つ(事業者団体等) 令和3年度「障害を理由とする差別に関する相談体制の整備、事例の収集・共有に関する調査研究」報告書 7.2 障害者差別の解消に向けた相談体制の在り方 7.2.2 地域協議会の充実・活用 (2)役割 内閣府のガイドライン(内閣府政策統括官「障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営等に関するガイドライン」(平成29年5月))においては、地域協議会で検討する事項として以下の内容が挙げられており、地域協議会の設置・活用によって相談への迅速かつ適切な対応や紛争解決に向けた対応力の向上等が期待されるとされている。 複数の機関等によって紛争の防止や解決を図る事案の共有 関係機関等が対応した相談に係る事例の共有 障害者差別に関する相談体制の整備 p25 障害者差別の解消に資する取組の共有・分析 構成機関等における斡旋・調整等の様々な取組による紛争解決の後押し 障害者差別の解消に資する取組の周知・発信や障害特性の理解のための研修・啓発 個別の相談事案に対する対応 障害者施策関係部局や障害者団体、福祉関係者だけでなく地域の事業者・事業者団体など多様な関係者が集い、事例共有等を通じて認識の共有を図り、地域としての差別解消の機運醸成を図る場として、地域協議会の重要性は高い。地域協議会未設置の自治体においては設置の検討を進めるとともに、地域協議会を設置しているものの利活用が十分でない自治体においては積極的な活用を検討するといった対応が期待される。 また、各自治体での設置促進・利活用に当たっては都道府県の役割が重要である。都道府県においては、管内各市町村における地域協議会の設置状況・実施状況の把握や好事例の展開等を通じて、市区町村における取組のバックアップを積極的に行うことが求められる。 (3)地域協議会を活用した関係者の連携強化 2)関係者の連携強化 合理的配慮の義務化を内容とする障害者差別解消法改正法が施行されれば、地域の事業者、障害者からの相談が増加することが予測される。各地方公共団体においては、それらの事案に適切に対応し、又はトラブルを事前に防止することが求められる。地域支援協議会は、地域における差別の解消の推進を担う機関として、地域の様々な関係者やその関連する行政部局を参集し、地域の問題解決に当たることが重要である。 相談対応の円滑化、相談体制の充実に向け、地域協議会の構成メンバーとしては、従来、障害者施策関係部局や障害者団体、福祉関係者等の参画は確保されてきたが、今後更に連携が期待される機関や関係者として以下が考えられる。 地方公共団体の機関(商工関係部局、教育関係部局等):障害者福祉関係部局のみならず、事業者関係、教育関係など、合理的配慮の提供を担う者に関わる部局の参集を求めることが適当である。 国の地方出先機関(法務局、運輸支局、地方経済産業局等):地域の具体的な差別事案を共有し解決の支援を受けるとともに、所管団体・機関への相談窓口の周知や事例の共有を依頼することも想定される。 地域の事業者団体:地域における合理的配慮の提供の推進の重要な担い手であり、具体的な差別事案や合理的配慮の提供の事例の共有・分析を通じて、行政機関や障害者団体等とともに、共通認識を形成していくことが期待される。また、差別事案の共有を通じ、類似事例が発生しないよう、例えば、傘下の企業への情報提供や各企業のマニュアル等の見直しを行う等の差別解消の取組の広がりが期待される。 その他:関係案件に差別事案が含まれ得る警察や、差別判断に当たり、専門的知見からの検討や助言のため、弁護士や医師会、学識経験者を含めることも有効と考えられる。 p26 また、これらメンバー構成に留意した上で考えられる地域協議会の設置促進・利活用の工夫としては以下の事項が考えられる。 設置促進策 地域の事業者・事業者団体を始めとする多様な主体の参画の下、差別相談への対応に主眼を置いて議論を行う観点からは、地域協議会の単独設置が本来望ましい。一方で、小規模自治体ほど設置率が低いことを踏まえると、地域協議会を単独の会議体として設置する負担が大きいことが考えられる。このような場合には、構成メンバーが一部重複する障害者総合支援法に基づく(自立支援)協議会、障害者虐待防止法に基づくネットワーク、障害者基本法に基づく審議会等に合わせて開催したり、これらの会議の部会として位置付けるなど、柔軟に開催形式を検討することも考えられる。ただし、いずれの場合においても、他の協議会と一体的に運営した結果、連携を図るべき主体(地域の事業者・事業者団体等)が参画できていない状態となることを避けるため、構成メンバーについては「差別の解消」という目的に応じて必要な入替を行うなど、多様な関係者の参画を担保することが重要である。 また、小規模な市区町村では地域協議会を複数の自治体で共同設置することでも差し支えない。 設置促進策の好事例としては、以下の自治体の取組が挙げられる(以下の取組事例については本調査研究で実施したヒアリングで得た事例のほか、内閣府において別途収集した事例も含まれる)。 複数の自治体で設置 長野県上小圏域:圏域で協議会を設置(P72「3.3長野県上小圏域 3.3.2(3) 4)障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況」参照) 静岡県・香川県:地域によって圏域又は複数の市区町村で共同設置 他の協議会と併せて開催 千葉県:構成メンバーの一部が重複する「千葉県障害のある人の相談関する調整委員会」と同時開催(P61「3.2千葉県 3.2.2(3) 4)障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況」参照) 長野県上小圏域・岡山県総社市:(自立支援)協議会と地域協議会を兼ねて実施(長野県上小圏域については上述のP72該当部分、岡山県総社市についてはP95「3.5岡山県総社市 3.5.2(3)4)障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況」を参照) p27 利活用策 「相談事案が少ない」等の理由により、開催回数が少ない地域支援協議会も多い。関係機関が「顔の見える関係」をつくり、事案発生時に迅速・円滑に対応できるネットワークを維持するためには、実際の意見交換の機会を確保することも有効であること、また、地域における障害者差別解消を推進するためには、「相談事案がないから地域に障害者差別はない」と安易に考えるのではなく、地域における実質的な障害者差別解消が進むよう、例えば、以下のような議題で定期的(年に複数回程度)に協議会を開催し、地域の取組を推進することが期待される。 差別解消の推進施策の効率的・効果的な実施(PDCAサイクル) 普及啓発策や職員研修の企画立案等の施策提案 行政職員の対応要領の更新 架空事例を使用した相談対応のシミュレーション、各機関の役割分担の確認 差別相談で基本的な対応を担当する行政職員に対する助言 差別事案の発生防止を目的とした企業内のマニュアルの見直しのポイント(障害者差別解消法に抵触する事項の有無の確認等)の提示やそれを踏まえた見直しの促進 利活用策の好事例としては、以下の自治体の取組が挙げられる(以下の取組事例は内閣府において別途収集した事例)。 福岡県:条例に関する県の取組状況についての審議 兵庫県明石市:障害を理由とする差別を解消するために必要な施策に係る市長への意見・条例の施行状況の検討及び見直し 広島県広島市:条例・条例施行規則の検討、条例の実効性確保に向けた検討 宮城県:新規条例の制定に向けた検討