資料6 特別支援教育について 2022年11月14日 文部科学省 特別支援教育課 p1 目次 1.特別支援教育の現状 2.文部科学省の取組状況 1 通級による指導の充実等 2 教師の専門性向上等 3.参考資料 p2 1.特別支援教育の現状 p3 障害のある児童生徒の就学先決定について(手続の流れ) 本人・保護者の意見を最大限尊重(可能な限りその意向を尊重)し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的に市町村教育委員会が就学先を決定 p4 特別支援学校等の児童生徒の増加の状況 直近10年間(平成23年から令和3年)で義務教育段階の児童生徒数は1割減少する一方で、特別支援教育を受ける児童生徒数は倍増。 特に特別支援学級(2.1倍)、通級による指導(2.5倍)の増加が顕著。 p5 特別支援学校、特別支援学級に在籍する子供の数の推移 少子化により子供が減少(H23:1,054万人からR3:961万人)する一方で、特別支援教育の対象となる子供の数は年々増加。特に、特別支援学級の在籍者数の増加が顕著。 特別支援学校の在籍者数及び特別支援学級の在籍者数は年々増加しているが、いずれも障害種として知的障害が増加している。 p6 学年別の特別支援学校在籍者(R3年度) 小学部から中学部、そして高等部にあがるにつれて在籍者は増加している。 小学部(1学年8,150人、2学年8,259人、3学年7,911人、4学年7,998人、5学年7,822人、6学年7,675人) 中学部(1学年10,785人、2学年10,588人、3学年10,437人) 高等部(1学年21,434人、2学年21,556人、3学年21,481人) (出典)令和3年度学校基本調査 p7 特別支援学校(知的障害)での学習内容(1段階の生活科を例に) 特別支援学校学習指導要領(抜粋) 第1節 小学部 第2款 知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校 第1 各教科の目標及び内容 「生活」 1段階 (2)内容 ア 基本的生活習慣 食事や用便等の生活習慣に関わる初歩的な学習活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 (ア)簡単な身辺処理に気付き,教師と一緒に行おうとすること。 (イ)簡単な身辺処理に関する初歩的な知識や技能を身に付けること。 (注)この他、生活科の内容としては、「安全」「日課・予定」「遊び」「人との関わり」「役割」「手伝い・仕事」「金銭の扱い」「きまり」「社会の仕組みと公共施設」「生命・自然」「ものの仕組みと働き」が挙げられている。 特別支援学校学習指導要領 解説(抜粋) 「食事や用便等の生活習慣」とは,食事や用便のほか,寝起き,清潔に保つこと,身の回りの整理,身なりを整えることを主とする生活習慣に関する指導のことである。(略) 食事:食事前の手洗いや配膳,食後の片付けをすることなどの指導内容がある。食事の流れや基本的な行動の方法に気付くことが大切である。 用便:尿意や便意を伝えようとすること,用便の手順に沿って用を足すこと,用便後は手を洗うことなどの指導内容がある。用便の手順に気付き,教師と一緒に行おうとしたり,伝えようとしたりすることが大切である。 寝起き:一人で就寝することに不安をもたないように,着替えを援助するなどして,気持ちをリラックスできるように配慮することが大切である。 清潔:洗面や歯磨きをする,タオルで拭こうとすることが大切である。 身の回りの整理:持ち物の整理,自分の衣服や靴など自分の使った物の整理や,決められた場所に置くことに気付くことが大切である。 身なり:簡単な衣服の着脱や,長靴等の身に付け方に気付くことが大切である。 小学校学習指導要領においては、「生活」の第1学年及び第2学年の内容として、「学校,家庭及び地域の生活に関する内容」「身近な人々,社会及び自然と関わる活動に関する内容」「自分自身の生活や成長に関する内容」を挙げているが、生活習慣に関する内容はない。 p8 特別支援学校(知的障害)での学習内容(中学部の理科を例に) 中学校学習指導要領 解説 理科編 「水溶液とイオン」 酸・アルカリ 中和と塩 「化学変化と電池」 金属イオン 化学変化と電池 特別支援学校学習指導要領 解説 各教科等編 「物と重さ」 形と重さ 体積と重さ p9 特別支援学校(知的障害)での学習内容(1段階の理科を例に) 特別支援学校学習指導要領(抜粋) 第2節 中学部 第2款 知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校 第1 各教科の目標及び内容 「理科」 1段階 (2)内容 C 物質・エネルギー オ 電気の通り道 電気の回路について、乾電池と豆電球のつなぎ方と、乾電池につないだ物の様子に着目して、電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。 (ア)次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する初歩的な技能を身に付けること。 ア 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。イ 電気を通す物と通さない物があること。 (イ)乾電池と豆電球などをつないだときの様子について調べる中で、差異点や共通点に気付き、電気の回路について疑問をもち、表現すること。 小学校学習指導要領(抜粋) 第2章 各教科 第4節 理科 第2 各学年の目標及び内容 「第3学年」 (2)内容 A 物質・エネルギー (5)電気の通り道 電気の回路について、乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子に着目して、電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。 (ア)次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。 ア 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。イ 電気を通す物と通さない物があること。 (イ)乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子について追究する中で、差異点や共通点を基に、電気の回路についての問題を見いだし、表現すること。 p10 2.文部科学省の取組状況 1 通級による指導の充実等 p11 通級による指導の概要 通常の学級に在籍し、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒に対して、障害に応じた特別の指導を行う指導形態。(平成5年度から小中学校で制度化、平成30年に高等学校に拡大) 実施形態:自校通級、他校通級、巡回指導 対象障害種:言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肢体不自由、病弱・身体虚弱 目標(自立活動の指導) 個々の幼児児童生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う。 障害による困難さの改善・克服に係る指導内容の一例 発音の困難さ:口や舌の体操等を通して自分の発音を意識して明瞭に話せるように指導 読みの困難さ:カード等を用いて、文字や単語、文を流暢に読めるように指導 筆記の困難さ:ICT端末を活用したキーボード入力やフリック入力など、自分に合った学び方ができるように指導 文部科学省の取組 教職員定数の改善 公立小・中学校における基礎定数化(H29年度〜R8年度の10年間で13人に1人) 公立高等学校における加配定数措置(R4年度:301人分の経費を地方財政措置) 研修や指導の充実 (独立行政法人)国立特別支援教育総合研究所における指導的立場の教員を対象とした研修等 発達障害に関する通級の研修体制や指導法に関する調査研究事業 (R2年度:高等学校における発達障害に関する通級による指導の研究事業) 「改訂第3版 障害に応じた通級による指導の手引き 解説とQ&A」を作成 「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」を作成 p12 通級による指導を受けている児童生徒数の推移 平成5年 12,259人、平成10年 24,342人、平成15年 33,652人、平成16年 35,757人、平成17年 38,738人、平成18年 41,448人、平成19年 45,240人、平成20年 49,685人、平成21年 54,021人、平成22年 60,637人、平成23年 65,360人、平成24年 71,519人、平成25年 77,882人、平成26年 83,750人、平成27年 90,105人、平成28年 98,311人、平成29年 108,946人、平成30年 123,095人、令和元年 134,185人、令和2年 164,697人 ※令和2年度のみ令和3年3月31日を基準とし令和2年度中に通級による指導を実施した児童生徒数について調査。その他の年度の児童生徒数は年度5月1日現在。 ※「注意欠陥多動性障害」及び「学習障害」は、平成18年度から通級による指導の対象として学校教育法施行規則に規定し、併せて「自閉症」も平成18年度から対象として明示(平成17年度以前は主に「情緒障害」の通級による指導の対象として対応)。 ※平成30年度から、国立・私立学校を含めて調査。 ※高等学校における通級による指導は平成30年度開始であることから、高等学校については平成30年度から計上。 ※小学校には義務教育学校前期課程、中学校には義務教育学校後期課程及び中等教育学校前期課程、高等学校には中等教育学校後期課程を含める。 p13 特別支援教育支援員の地方財政措置について 「特別支援教育支援員」は、幼稚園、小・中学校、高等学校等において、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教師等と連携のうえ、日常生活上の介助(食事、排泄、教室の移動補助等)、発達障害等の幼児児童生徒に対する学習支援、幼児児童生徒の健康・安全確保、周囲の幼児児童生徒の障害理解促進等を行う。 特別支援教育支援員の配置に係る経費の地方財政措置 公立幼稚園、小・中学校及び高等学校等において、教育上特別の支援を必要とする幼児児童生徒の学習又は生活上必要な支援を行う「特別支援教育支援員」を配置するため、都道府県・市町村に対して、必要な経費を措置するもの。 令和4年度措置 幼稚園 8,400人、小学校 45,700人、中学校 12,400人、高等学校 800人、合計 67,300人 (66,000人 ※令和3年度の措置人数) ※平成19年度〜:公立小・中学校について地方財政措置を開始 平成21年度〜:公立幼稚園について地方財政措置を開始 平成23年度〜:公立高等学校について地方財政措置を開始 p14 学校における新たな支援スタッフの学校教育法施行規則への位置付けについて 1 学校における働き方改革の推進 2 GIGAスクール構想の着実な実施 3、4 医療的ケアをはじめとする特別な支援を必要とする児童生徒等への対応 これらのため、 1 教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ) 2 情報通信技術支援員(ICT支援員) 3 医療的ケア看護職員 4 特別支援教育支援員 を学校教育法施行規則に位置付け、配置を促進 1 教員業務支援員 教員が一層児童生徒への指導や教材研究等に注力できるよう、資料準備や印刷、帳合、採点補助、消毒をはじめ教員の業務の支援に従事。 令和4年度は10,650人の配置経費を措置。今後、学校に標準的に配置されるべき支援スタッフとして、役割の明確化・配置促進を図る。 教員業務支援員は、教員の業務の円滑な実施に必要な支援に従事する。 2 情報通信技術支援員 教員のICT活用(授業、校務等)の支援に従事。 令和4年度は4校に1人を配置するために必要となる経費について地方財政措置。今後、GIGAスクール構想の本格実施にあたり学校にとって不可欠な支援スタッフとして、役割の明確化・配置促進を図る。 情報通信技術支援員は、教育活動その他の学校運営における情報通信技術の活用に関する支援に従事する。 3 医療的ケア看護職員 特別支援学校をはじめとする各学校で行われている医療的ケアに従事するために看護師等が配置。 令和4年度は各自治体等における配置に係る経費を補助するため、3,000人分の予算を計上。 医療的ケア看護職員は、小学校における日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいう。)を受けることが不可欠である児童の療養上の世話又は診療の補助に従事する。 4 特別支援教育支援員 食事、排せつ、教室移動など学校における日常生活の介助や学習支援等のサポートに従事。 令和4年度は67,300人を配置するために必要となる経費が地方財政措置されており、必要不可欠な支援スタッフとなっている。 特別支援教育支援員は、教育上特別の支援を必要とする児童の学習上又は生活上必要な支援に従事する。 その他 ※今回の改正にあわせて、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの規定を幼稚園にも準用させる(令和3年8月23日 公布・施行) 参考:学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号) 第四節 職員 第64条 講師は、常時勤務に服しないことができる。 第65条 学校用務員は、学校の環境の整備その他の用務に従事する。 第65条の2 スクールカウンセラーは、小学校における児童の心理に関する支援に従事する。 第65条の3 スクールソーシャルワーカーは、小学校における児童の福祉に関する支援に従事する。 第78条の2 部活動指導員は、中学校におけるスポーツ、文化、科学等に関する教育活動(中学校の教育課程として行われるものを除く。)に係る技術的な指導に従事する。 p15 特別支援教育支援員(推移) 平成22年度 37,800人分、平成23年度 38,800人分、平成24年度 41,500人分、平成25年度 44,700人分、平成26年度 46,300人分、平成27年度 49,700人分、平成28年度 53,800人分、平成29年度 56,000人分、平成30年度 63,100人分、令和元年度 65,000人分、令和2年度 65,800人分、令和3年度 66,000人分、令和4年度 67,300人分 p16 通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議 (令和4年5月18日設置) 趣旨 特別支援教育への理解や認識の高まり、障害のある子供の就学先決定の仕組みに関する制度改正等により、特別支援教育を必要とする児童生徒が増加 発達障害の可能性のある児童生徒は、全ての通常の学級に在籍する可能性 学校教育法施行令第22条の3の障害の程度(学校教育法第75条(障害の程度)に基づき、特別支援学校の指導の対象となる障害の種類及び程度を定めている。)に該当する児童生徒が、特別な支援を受けながら、通常の学級等に在籍 小中学校の通級による指導の担当教師の基礎定数化、高等学校における通級による指導の制度化等により、通級による指導体制が充実。また、通常の学級において、合理的配慮の提供や、特別支援教育支援員による支援など、一人一人の子供の教育的ニーズに応じた支援が行われている状況 障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの更なる実現に向けて、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の実施状況、成果と課題について把握した上で、より効果的な支援施策の在り方について外部有識者の協力を得て検討。 主な検討事項 (1)通級による指導の更なる充実に向けた取組等の在り方について (2)学校教育法施行令第22条の3の障害の程度に該当する児童生徒の支援の在り方について スケジュール:令和4年6月14日に第1回を開催。第2回以降、月1回程度を目安に開催し年度内に報告を取りまとめ。 p17 2.文部科学省の取組状況 2 教師の専門性向上等 p18 特別支援学級等に配置されている教員の雇用形態 5月1日時点で学校に配置されている教員の雇用形態別内訳(上表)およびそのうち学級担任の雇用形態別内訳(下表)。 特別支援学級の学級担任について、臨時的任用教員の比率が通常学級より高い。 (上表)学校に配置されている教員の雇用形態別内訳(5月1日時点) (注1)表中の()内は合計に対する割合を表す。 (注2)「うち産休・育休代替教員等」には産休代替教員、育児休業代替教員、配偶者同行休業代替教員の数を計上。 学校種:小学校 正規教員(全体) 331,697(87.38%):再任用教員(フルタイム) 11,236(2.96%):再任用教員(短時間) 3,737(0.98%) 臨時的任用教員(全体) 41,991(11.06%):うち産休・育休代替教員等 18,528(4.88%) 非常勤講師(会計年度任用職員) 5,911(1.56%) 合計 379,598 学校種:中学校 正規教員(全体) 191,090(87.45%):再任用教員(フルタイム) 9,781(4.48%):再任用教員(短時間) 1,559(0.71%) 臨時的任用教員(全体) 23,820(10.90%):うち産休・育休代替教員等 5,857(2.68%) 非常勤講師(会計年度任用職員) 3,594(1.64%) 合計 218,504 学校種:高等学校 正規教員(全体) 143,067(89.59%):再任用教員(フルタイム) 11,211(7.02%):再任用教員(短時間) 2,000(1.25%) 臨時的任用教員(全体) 11,092(6.95%):うち産休・育休代替教員等 2,687(1.68%) 非常勤講師(会計年度任用職員) 5,529(3.46%) 合計 159,688 学校種:特別支援学校 正規教員(全体) 63,899(81.43%):再任用教員(フルタイム) 2,441(3.11%):再任用教員(短時間) 533(0.68%) 臨時的任用教員(全体) 13,274(16.92%):うち産休・育休代替教員等 3,437(4.38%) 非常勤講師(会計年度任用職員) 1,301(1.66%) 合計 78,474 (下表)小・中学校の学級担任の雇用形態別内訳(5月1日時点) (注1)表中の()内は合計に対する割合を表す。 (注2)「うち産休・育休代替教員等」には産休代替教員、育児休業代替教員、配偶者同行休業代替教員の数を計上。 学校種:小学校の学級担任 正規教員(全体) 237,099(88.40%):再任用教員(フルタイム) 5,533(2.06%) 臨時的任用教員(全体) 30,826(11.49%):うち産休・育休代替教員等 13,892(5.18%) その他 276(0.10%) 合計 268,201 学校種:小学校の学級担任のうち特別支援学級 正規教員(全体) 39,164(76.17%):再任用教員(フルタイム) 2,725(5.30%) 臨時的任用教員(全体) 12,182(23.69%):うち産休・育休代替教員等 4,491(8.73%) その他 70(0.14%) 合計 51,416 学校種:中学校の学級担任 正規教員(全体) 101,750(90.72%):再任用教員(フルタイム) 2,266(2.02%) 臨時的任用教員(全体) 10,402(9.27%):うち産休・育休代替教員等 2,131(1.90%) その他 8(0.01%) 合計 112,160 学校種:中学校の学級担任のうち特別支援学級 正規教員(全体) 16,750(76.03%):再任用教員(フルタイム) 1,435(6.51%) 臨時的任用教員(全体) 5,276(23.95%):うち産休・育休代替教員等 914(4.15%) その他 4(0.02%) 合計 22,030 (出典)「教師不足」に関する実態調査(文部科学省、令和4年1月) p19 校長の特別支援教育に関わる教職経験 小学校又は中学校の校長自身の特別支援学級、通級による指導や特別支援学校など特別支援教育にかかわる教職経験について、特別支援学級等での教職経験の無い校長は、小学校で70.6%、中学校で75.4%(令和3年度)。 ※特別支援学級が設置されている学校(小学校、中学校、義務教育学校を含む)は82.3%(令和2年度時点)。 令和3年度全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会調査 調査対象:各都道府県において知的障害特別支援学級、自閉症・情緒障害特別支援学級、通級指導教室を設置する小・中学校の校長 ※全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の各地区理事を通じて約10%の抽出 調査結果1:校種別の回答学校数(※表中の%は項目ごとの合計における割合を指す) 小学校 1,160校(約68%):中学校 521校(約31%):義務教育学校 17校(約1%):合計 1,698校 調査結果2:校長自身の特別支援教育にかかわる教職経験 特別支援学級等での教職経験無 小学校 70.6%:中学校 75.4%:義務教育学校 82.4% (出典)令和3年度全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会調査報告書(全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会調査部、令和4年1月) p20 特別支援教育に関わる教師の専門性向上に向けた方策 (令和4年3月31日特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議報告) ※が検討会議のアウトプット・方向性 現状・課題 特別支援教育の「個別最適な学び」と「協同的な学び」に関する知見や経験は、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与。 →特別支援教育の専門性を担保しつつ、特別支援教育に携わる教師を増やしていくことが必要。 特別支援教育を必要とする児童生徒数が増えている一方で、小学校で70.6%、中学校で75.4%の校長が、特別支援教育に携わる経験が無い。 →多くの学校で特別支援学級等で教職経験の無い校長が特別支援教育を含む学校経営を実施。 小学校等の特別支援学級の臨時的任用教員の割合は、学級担任全体における臨時的任用教員の割合の倍以上。 →特別支援教育に関わる教師が、他の教師と比べて、長期的視野にたって計画的に育成・配置されているとは言いがたい状況。 1 養成段階での育成 ※特別支援学校教諭免許状の教職課程の内容や水準を全国的に担保するため、共通的に修得すべき資質能力を示したコアカリキュラムの策定 ※教育実習、介護等体験で、特別支援学校、特別支援学級等の経験を推奨 ※大学間連携による単位互換制度の促進など、免許取得・単位取得を可能とする体制整備 ※教育委員会との連携による実践力の養成(実務家教員、教職大学院等) 2 採用段階での工夫 ※特別支援教育の経験を採用時に考慮 ※採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験 3 校内体制の整備、キャリアパスの多様化、人事交流の推進による専門性向上 ※特別支援学校において、特別支援学校教諭免許状を有しない教師の条件を限定 ※校内研修、交換授業、OJTの推進 ※特別支援学級等の教師による特別支援学校への人事交流の充実 ※管理職の任用にあたり、特別支援教育の経験を考慮 ※学校経営方針等に特別支援教育に関する目標を設定し、校内体制を整備 スケジュール 特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム R4.7:策定・周知(以降、大学の教職課程の点検・見直し) R5.4又はR6.4:コアカリキュラムに基づく教職課程開始 上記以外の事項 各関係者において速やかに検討・対応に着手し、R6年度には実現できるよう取り組む。 p21 3.参考資料 p22 障害者権利条約 第24条 第二十四条 教育 1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容するあらゆる段階の教育制度及び生涯学習を確保する。当該教育制度及び生涯学習は、次のことを目的とする。 (a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。 (b)障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。 (c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。 2 締約国は、1の権利の実現に当たり、次のことを確保する。 (a)障害者が障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと及び障害のある児童が障害に基づいて無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。 (b)障害者が、他の者との平等を基礎として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること。 (c)個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。 (d)障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般的な教育制度の下で受けること。 (e)学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること。 3 締約国は、障害者が教育に完全かつ平等に参加し、及び地域社会の構成員として完全かつ平等に参加することを容易にするため、障害者が生活する上での技能及び社会的な発達のための技能を習得することを可能とする。このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとる。 (a)点字、代替的な文字、意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式並びに定位及び移動のための技能の習得並びに障害者相互による支援及び助言を容易にすること。 (b)手話の習得及び聾社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。 (c)盲人、聾者又は盲聾者(特に盲人、聾者又は盲聾者である児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。 4 締約国は、1の権利の実現の確保を助長することを目的として、手話又は点字について能力を有する教員(障害のある教員を含む。)を雇用し、並びに教育に従事する専門家及び職員(教育のいずれの段階において従事するかを問わない。)に対する研修を行うための適当な措置をとる。この研修には、障害についての意識の向上を組み入れ、また、適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れるものとする。 5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。 p23 障害者権利条約対日審査勧告(第24条・教育部分)抜粋(仮訳)1 51.委員会は、以下を懸念する。 (a)医療に基づく査定を通した、障害のある子どもの分離された特別教育が永続していること。障害のある子ども、特に知的障害、精神障害またはより集中的な支援を要する子どもが、通常環境での教育にアクセスできなくしている。また、通常学校に特別支援学級があること。 (b)障害のある子どもを受け入れるには事実上準備不足であると受け取られていることにより、障害のある子どもの通常の学校での受け入れを否定していること。また、特別学級の児童が授業時間の半分以上を通常の学級で過ごしてはならないとした、2022年に発行された政府の通知。 (c)障害のある児童、生徒に対する合理的配慮の提供が不十分であること。 (d)通常教育の教員のインクルーシブ教育に関する技術の欠如及び否定的な態度。 (e)ろうの子どもに対する手話教育、盲ろうの子どもに対するインクルーシブ教育を含め、通常の学校における、代替・拡大コミュニケーション・情報様式及び方法の欠如。 (f)大学入試及び学習過程を含めた、高等教育における障害のある学生の障壁を扱った、国の包括的政策の欠如。 p24 障害者権利条約対日審査勧告(第24条・教育部分)抜粋(仮訳)2 52.インクルーシブ教育への権利に関する一般的見解第4号(2016年)及び持続可能な開発目標の目標4、ターゲット4.5及び指標4(a)を想起して、委員会は以下を締約国に要請する。 (a)国の教育政策、法律及び行政上の取り決めの中で、分離特別教育を終わらせることを目的とし、障害のある子どもがインクルーシブ教育を受ける権利を認識すること。また、特定の目標、期間及び十分な予算を伴い、あらゆる教育レベルにおいてすべての障害のある児童、生徒が合理的配慮及び必要とする個別化された支援を提供されることを確保するために、質の高いインクルーシブ教育に関する国の行動計画を採択すること。 (b)すべての障害のある子どもに対して通常の学校へのアクセシビリティを確保すること。また、通常の学校による、障害のある児童、生徒の通常の学校への通学拒否が禁止されていることを確保するための「非拒否」条項及び政策を策定すること、及び特別学級に関する政府の通知を撤回すること。 (c)すべての障害のある子どもに対して、個別の教育要件に見合う合理的配慮を保障し、インクルーシブ教育を確保すること。 (d)通常の学校の教員及び教員以外の教育職員に、インクルーシブ教育に関する研修を確保し、障害の人権モデルに関する意識を向上させること。 (e)点字、イージーリード、ろうの子どもに対する手話教育を含む、拡大・代替コミュニケーション様式及び方法の、通常の教育環境での利用を保障し、インクルーシブ教育環境の中でろう文化を推進し、盲ろうの子どものためのインクルーシブ教育へのアクセスを保障すること。 (f)大学入試及び学習過程を含め、高等教育における障害のある学生の障壁を扱った国の包括的政策を策定すること。 p25 2022年9月13日永岡文部科学大臣 会見録(抜粋) (略)文部科学省では、これまでもですね、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごせるように、通級によります指導の担当教員の基礎定数化ですとか、また、通常級に在籍いたします障害のある子供のサポートなどを行います「特別支援教育支援員」に対します財政支援や、また、法令上の位置付けなどに取り組んでまいりました。引き続きまして、勧告の趣旨を踏まえまして、インクルーシブ教育システムの推進に向けた取組を進めていきたいと考えているところでございます。 あとは、やはり、障害者権利条約に規定されておりますインクルーシブ教育システムというのは、障害者の精神的、また、身体的な能力を可能な限り発達させるといった目的の下に障害者を包容する教育制度であると、そういう認識をしております。これまでの文部科学省では、このインクルーシブ教育システムの実現に向けまして、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごす条件整備と、それから、一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備、これらを両輪として取り組んでまいりました。特別支援学級への理解の深まりなどによりまして、特別支援学校ですとか特別支援学級に在籍するお子様が増えている中で、現在は多様な学びの場において行われます特別支援教育を中止することは考えてはおりませんが、引き続きまして、勧告の趣旨も踏まえて、通級によります指導の担当教員の、先ほどもお話し申し上げましたけれども、基礎定数化の着実な実施などを通しまして、インクルーシブ教育システムの推進に努めてまいる所存でございます。そうですね、通知の撤回がありました、お答えいたします。 昨年度、文部科学省が、特別支援学級の在籍児童生徒の割合が高い自治体を対象に行いました実態調査におきまして、特別支援学級に在籍いたします児童生徒が、大半の時間を通常の学級、普通学級でございますが、通常の学級で学び特別支援学級において障害の状態等に応じた指導を十分に受けていない、また、個々の児童生徒の状況を踏まえずに、特別支援学級では自立活動に加えまして算数や国語の指導のみを行うといった不適切な事例が散見をされたところでございます。 こうした実態も踏まえまして、ご指摘の通知は、特別支援学級で半分以上過ごす必要のない子供については、やはり、通常の学級に在籍を変更することを促すとともに、特別支援学級の在籍者の範囲を、そこでの授業が半分以上必要な子供に限ることをですね、目的としたものでございまして、むしろインクルーシブを推薦(注・「推薦」と発言しましたが、正しくは「推進」です。)するものでございます。勧告で撤回を求められたのは大変遺憾であると思っております。引き続きまして、通知の趣旨を正しく理解をしていただけるように、周知徹底に努めてまいりたいと思っております。 p26 特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知) (令和4年4月27日 初等中等教育局長通知) 趣旨 交流及び共同学習は、インクルーシブ教育システムの理念の構築に向けて大きな意義を有し、「交流」の側面と「共同学習」の側面を分かちがたいものとして捉えて推進していく必要。 この理念を踏まえ、交流及び共同学習の在り方を含め、特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について改めて周知。 第1 特別支援学級又は通級による指導のいずれにおいて教育を行うべきかの判断について 通級による指導の対象となる児童生徒について、その児童生徒が通学する小・中学校等に通級による指導の場を設けることが容易ではない場合に、安易に特別支援学級を開設することは適切とは言えないこと。 第2 特別支援学級に在籍する児童生徒の交流及び共同学習の時数について 障害のある児童生徒が、必要な指導体制を整えないまま、交流及び共同学習として通常の学級で指導を受けることが継続するような状況は、実質的には、通常の学級に在籍して通級による指導を受ける状況と変わらず、不適切であること。 特別支援学級に在籍している児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学んでいる場合には、学びの場の変更を検討するべきであること。言い換えれば、特別支援学級に在籍している児童生徒については、原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において児童生徒の一人一人の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた授業を行うこと。 ただし、例えば、次年度に特別支援学級から通常の学級への学びの場の変更を検討している児童生徒について、段階的に交流及び共同学習の時数を増やしている等、当該児童生徒にとっての教育上の必要性がある場合においては、この限りではないこと。 (改善が必要な具体的な事例) 特別支援学級では自立活動に加えて算数(数学)や国語といった教科のみを学ぶといった、機械的かつ画一的な教育課程を編成している。 全体的な知的発達に遅れがあるはずの知的障害の特別支援学級に在籍する児童生徒に対し、多くの教科について交流及び共同学習中心の授業が行われている。 通常の学級、通常の学級における指導と通級による指導を組み合わせた指導、特別支援学級、特別支援学校という学びの場の選択肢を、本人及び保護者に説明していない。 p27 第3 特別支援学級に在籍する児童生徒の自立活動の時数について 特別支援学級において特別の教育課程を編成しているにもかかわらず自立活動の時間が設けられていない場合は、自立活動の時数を確保するべく、教育課程の再編成を検討するべきであること。 第4 通級による指導の更なる活用について 実施形態の選択に当たっては、児童生徒が在籍する小・中学校等で専門性の高い通級による指導を受けられるよう、自校通級や巡回指導を一層推進することが望ましいこと。 他校通級に係る児童生徒の移動にかかる時間や保護者の送迎の負担等を含め、今後文部科学省において、関係者の意見を聴取するなどして、より教育的な効果の高い運用の在り方について検討を行う予定であること。