p1 内閣府 障害者政策委員会 第5次障害者基本計画の実施状況の監視に向けての視点 2024年6月24日 静岡県立大学 名誉教授 障害学会 会長 内閣府障害者政策委員会 前委員長 国連障害者権利委員会 元副委員長 石川 准 p2 目次 1.障害者権利条約と障害者権利委員会 2.国内制度改革と初回対日審査 3.障害者政策委員会が留意すべきこと p3 Part1 障害者権利条約と障害者権利委員会 p4 障害者権利条約 障害のある人の人権や基本的自由を守ることなどを目的として、障害者の権利を実現するために国がすべきことを規定 (作業者注・以下図) 国連欧州本部 万国旗 (作業者注・図終わり) p5 国連の主要人権条約 半世紀をかけて9つの主要人権条約を制定 人種差別撤廃条約/1965年採択/1995年日本加入 自由権規約/1966年採択/1979年日本批准 社会権規約/1966年採択/1979年日本批准 女性差別撤廃条約/1979年採択/1985年日本批准 拷問等禁止条約/1984年採択/1999年日本加入 子どもの権利条約/1989年採択/1994年日本批准 移住労働者権利条約/1990年採択 (作業者注・強調ここから)障害者権利条約/2006年採択/2014年日本批准(作業者注・強調ここまで) 強制失踪者保護条約/2006年採択/2009年日本批准 p6 障害者権利条約は「遅れてできた条約」 最初に ・社会のすべての成員の人権に関する条約 その後 ・女性や子どもといった人権侵害を受けやすい集団に属する人々の人権に関する条約 ・なかでも障害者の権利条約は「待たされた条約」 →待たされた条約だからこそ新しい考えを導入できた p7 障害者権利条約が求めていること ・あらゆる差別の禁止 ・アクセシビリティ ・法的能力の承認と支援 ・自立と自己決定支援 ・教育への平等なアクセス ・雇用の機会均等 ・政策立案と監視への参加 (作業者注・以下図) 国際連合の旗 (作業者注・図終わり) p8 国連 障害者権利委員会(CRPD)とは Committee on the Rights of Persons with Disabilities 障害者権利条約の締約国による実施状況を監視する人権条約機関(human rights treaty body) (作業者注・以下図) CRPDページのトップ画像 (作業者注・図終わり) 出典:OHCHRウェブサイトより https://www.ohchr.org/en/treaty-bodies 委員構成 ・18名の委員(任期4年)から成る委員会 ・締約国からの推薦により立候補し、締約国会議での選挙で選ばれる ・障害者権利委員会の委員の大多数は障害当事者 ・障害のある研究者、弁護士、障害者運動の活動家が推薦され委員を務めることが多い ・政府から独立した立場で監視の任に当たる p9 国連障害者権利委員会(CRPD)の主要任務 ・各締約国による条約実施の定期的「審査」 ・選択議定書に基づく「個人通報」の審議 ・選択議定書に基づく締約国による「重大または系統的な条約違反」の調査 ・権利委員会の条文解釈としての「一般的意見」の作成 (作業者注・以下図) CRPDの会議の様子 (作業者注・図終わり) 出典:OHCHRウェブサイトより https://www.ohchr.org/en/treaty-bodies p10 各締約国による条約実施の定期的審査 政府報告→政府との建設的対話:公開会議(UN Web TVで視聴可能) 市民社会からのパラレルレポート→市民社会からのブリーフィング:非公開会議 ↓ 総括所見の採択:非公開会議 各審査対象国に、委員会から1人から2人、Country Rapporteurがつき、事前質問事項のドラフト、総括所見のドラフト作成を担当 p11 Part2 国内制度改革と初回対日審査 p12 障害者権利条約批准に向けた国内制度改革 日本は当初、障害者権利条約の早期批准を予定→障害者団体は、批准の前に国内の法制度を障害者権利条約に調和させる必要があると主張→政府は障害者団体の主張を受け入れて制度改革を優先する選択 p13 障害者権利条約批准前後の国内制度改革 2006年 障害者権利条約 国連総会で採択 第一期 批准前の制度改革 制度改革推進会議、差別禁止部会、総合福祉部会 障害者基本法の改正(2011)、障害者差別解消法の制定(2013) 2014年 障害者権利条約 日本批准 第二期 批准後の制度改革 障害者政策委員会 障害者差別解消法の改正(2021)、障害者差別解消法基本方針の策定(2023) 国内監視枠組みとして障害者権利委員会に報告(2016・2022) p14 障害者基本法の改正 障害者に関わる政策の基本理念、各分野の政策目標などを規定する法律 平成23年(2011年)の改正のポイント ・障害の社会モデル(相互作用モデル)を導入 ・合理的配慮を含めた差別禁止を規定 ・障害者政策委員会の設置を規定(当事者参画、監視機能) p15 内閣府 障害者政策委員会とは 障害者基本法の改正により2012年に設置 ・国の障害者基本計画の策定 ・基本計画の実施状況監視 ・障害者差別解消法基本方針の策定 ・国連障害者権利条約の「独立した監視枠組み」 p16 障害者差別解消法の制定・改正 平成25年(2013年)制定、令和3年(2021年)改正 この法律のねらい ・行政や事業者と障害者との間の建設的対話により直面する障壁を取り除くための方法を合意すること ・悪質な差別に対しては主務大臣による指導、監督により、不当な差別的取り扱いの禁止の徹底と合理的配慮の提供を民間事業者に浸透させていくこと p17 障害者権利委員会の初回対日審査 障害者権利委員会と日本政府との建設的対話 2022年8月22日、23日 ジュネーブの国連欧州本部 (作業者注・以下図) 国連欧州本部の対日審査の会場の写真 向かい合ってディスカッションをする人(権利委員会・政府代表団)の周りに人の集団(市民社会) 質問 権利委員会 回答 政府代表団:独立した監視枠組み(内閣府障害者政策委員会) (作業者注・図終わり) p18 総括所見(2022年10月7日) 第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見(英文) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448720.pdf (作業者注・以下図) Concluding observations on the Initial report of Japanの1ページ目の画像 (作業者注・図終わり) 出典:外務省ウェブサイトより p19 総括所見で示された主な勧告 ・代行決定制度を廃止して障害者の法の下の平等を確保し、支援型意思決定制度を構築すること ・障害者の強制入院による自由の剥奪を認めるすべての法的規定を廃止すること、および本人同意のない精神科治療を合法化するすべての法的条項を廃止すること ・障害者の施設収容を終わらせるための迅速な措置をとること、および障害者が、居住地、どこで誰と暮らすかを選択する機会を持ち、特定の生活形態で暮らすことを義務付けられないようにし、自分の生活に対して選択とコントロールを行使できるようにすること ・障害のある子どものインクルーシブ教育を受ける権利を認め、すべての障害のある生徒が、すべての教育レベルにおいて、合理的配慮と必要とする個別支援を受けられるように、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択すること ・パリ原則を完全に満たす国内人権機関を設立すること、およびその枠組みの下で障害者政策委員会の制度的基盤を強化すること p20 障害者政策委員会の初回対日審査への関与 2014年 障害者政策委員会は条約批准の際に政府から障害者権利条約の独立した監視枠組みに指定された 2016年 初回政府報告に障害者政策委員会の意見を含めた 2022年6月 障害者政策委員会の見解をまとめ、障害者権利委員会に提出した 2022年8月22日 政府代表団の中に障害者政策委員会委員長も加わり、独立した監視枠組みの責任者の立場で建設的対話で冒頭ステートメントを述べた p21 Part3 障害者政策委員会が留意すべきこと p22 合理的配慮とは合理的環境調整のこと (作業者注・以下図) 元の英語「Reasonable accommodation」→この日本語に訳してしまった…→「合理的配慮」→この日本語をもう一度英語に訳すと…→「Reasonable consideration」 等号否定記号 「Reasonable accommodation(元の英語)」 人の上半身のイラスト:『合理的「配慮」とは「気遣い」や「心配り」のこと?』 石川の似顔絵:『いいえ、違います。合理的「配慮」は(作業者注・強調ここから)合理的「環境調整」(作業者注・強調ここまで)と読みかえてください。』 (作業者注・図終わり) p23 事前的環境整備と合理的配慮は車の両輪 (作業者注・以下図) 車の両輪の図から「社会的障壁の除去へ向かって」と矢印が伸びている (作業者注・図終わり) 事前的環境整備/合理的配慮 不特定多数の障害者が経験するであろう社会的障壁を前もって取り除く/今まさに実際に社会的障壁にぶつかった障害者が求める要求への応答 不特定多数へのプロアクティブな対応/個別的かつリアクティブな対応 p24 3つのPDCAサイクル (作業者注・以下図) Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)→Plan(計画) 「国連のPDCA(障害者権利委員会)」の円の中に「日本政府のPDCA(障害者政策委員会)」の円があり、「日本政府のPDCA(障害者政策委員会)」の円の中に「個別分野のPDCA」の円がある (作業者注・図終わり) p25 内閣府障害者政策委員会の制度的位置づけと求められる機能 制度的位置づけ:審議会 求められる機能:独立した監視枠組み 市民社会にとってはもちろんのこと、政府にとっても、政策委員会を独立した監視枠組みとして引き続き機能させることはきわめて重要なこと