その他資料に対する委員からの意見 委員からのご意見 【臼井専門委員】 【質問と意見】国民生活基礎調査2022年版における障害との関連での集計公表について ワシントングループ指標を反映して、障害に関する質問項目を新しく加えたのですから、それらについて結果を公表し、分析と今後にむけた検討を可能にすることは、政府の本来的な仕事にあたります。今後どのように進めていくか質問します。 標題の調査において、所得と他の要素(年齢、性別、仕事、年金、学歴、休養、睡眠など)との関係を示す集計が、公表されています。その一方で、所得と障害との関係の集計が(重要な指標となるものであるにもかかわらず)公表されていないことは、大きな欠落です。 例えば、「年齢階層と仕事の有無と性別および障害の有無」については公表集計表を元にグラフ作成できました。しかし「年齢階層と所得階層と性別および障害の有無」については、同様の作業は不可能です。 もし、標題の調査が抽出調査であるがゆえに、所得と障害との関係の集計を公表出来ないのだとすれば、今後、全数調査である国勢調査においてならば、可能性がありますか? 総務省が管轄されている公的統計の「二次利用」をしやすくすることを強く要望します。標題の調査は現在、二次利用の一つ「オンサイト利用」のみ可能とされていますが、オンサイト利用は、統計の専門家のなかでもミクロ統計の専門家でないと利用申請からしてドルが高いことを把握しています。 <更問>(障害者政策委員会での発言) 質問の1つは、障害に関する質問項目を国勢調査に是非加えていただきたいです。御見解はいかがでしょうか。 補足として、第23回政策委員会で統計の専門家から提言がありました。他の者との平等の状況を監視するには、大半の国で行われているように、国勢調査に障害に関する質問項目を加えることが不可欠です。そうできるように準備をという内容でした。その後、日本でも国民生活基礎調査などに障害に関する質問項目が入れられるという進捗がありましたが、これらは国勢調査の代わりにはなりません。やはり権利条約の第31条と総括所見を受けて、国勢調査に加えることが必要と考えます。 ご意見に対する回答 (厚生労働省) ワシントングループの項目は2022(令和4)年調査で追加して初めて調査を行いました。 その集計結果として、現在は、性・年齢階級別、教育に関するもの、就労に関するものの3表を公表しています。 国民生活基礎調査において、ワシントングループの項目は、「日常生活における機能制限の状況」として公表しています。 所得と「日常生活における機能制限の状況」のクロス集計にあたりましては、令和4年の結果では、機能制限のある者は高齢者にかたよっているため、高齢に伴い機能低下となった者も含まれている可能性があり、そのようなデータで集計した結果が実態を捉えたといえるのか疑問が生じております。 そのため、ワシントングループの項目について、国立リハビリテーションセンターに分析を依頼しているところです。 なお、現在公表していないのは上記の理由であり、集計の粒度によっては誤差率が大きくなる可能性があると考えられるものの、抽出調査であることを理由に公表していないわけではありません。 分析結果を踏まえて、有用性のある集計表の充実を検討していきたいと考えております。 (総務省) 国勢調査は、我が国の人口及び世帯の実態を把握する国の最も基本的な統計調査であり、各種行政施策その他の基礎資料を得ることを目的としています。 その結果は、衆議院議員小選挙区の改定や地方交付税の算定など、各種の法定人口として用いられるほか、国及び地方公共団体における、人口減少や少子高齢化、地方創生など各種行政施策の基礎資料として幅広く活用されています。 国勢調査の調査事項は、国や地方公共団体の施策利用、回答の負担や正確性の確保などを踏まえて設計し、各府省・地方公共団体からの要望や有識者会議における議論を踏まえ、統計委員会にお諮りした上で決定しているところです。 なお、令和7年10月1日実施予定の国勢調査の調査事項はすでに確定しております。 委員からのご意見 【臼井専門委員】 【質問】学校基本調査および教育にかかわるデータについて 特別支援学校以外の教育機関における、障害のある児童生徒学生の人数と、障害の種別や性別などの内訳を、今後どのように把握していくか、質問します。 (理由)障害者基本法や障害者差別解消法の目的「障害の有無で分け隔てられることのない共生社会」にむけて、一般校に学ぶ児童生徒学生についても特別支援学校と同様に把握されなければなりません。更に、本年度から改正障害者差別解消法が私立学校など民間事業者に対して合理的配慮の提供を義務化したのですから、その実施のために私立学校に学ぶ人のデータ整備が必要とされています。 特別支援学校においては、学年と障害の種別と性別が調査・集計されていますが、それ以外の小・中学校においては、特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒のみ調査・集計されており、かつ、性別は調査されていません。さらに、通常学級および高等教育に在籍する障害がある人は、学校基本調査では全く把握されていません。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)において、「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」が2005年度から毎年実施公表されていますが性別については調査が行われていません。 ご意見に対する回答 (文部科学省) ○児童生徒について 文部科学省においては、「学校基本調査」において、特別支援学級に在籍する児童生徒の人数を調査しているとともに、「通級による指導実施状況調査」において、通常の学級に在籍して通級による指導を受ける児童生徒の人数を調査しております。ご指摘の性別などの把握については、障害のある児童生徒のプライバシーや学校教員の働き方改革、教育委員会等の事務負担にも配慮する必要があると考えており、これらのことを踏まえて、引き続き適切に調査を行ってまいります。 ○学生について 日本学生支援機構の「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」においては、大学、短期大学、高等専門学校の障害のある学生の在籍者数やその障害種別を調査しております。今後、性別を調査することについては、大学等におけるニーズ等を踏まえながら、日本学生支援機構と検討してまいります。 委員からのご意見 【臼井専門委員】 【質問】障害者雇用促進法に基づく毎年の政府統計について 障害者雇用促進法に基づく毎年の政府統計に、少なくとも性別に関する項目を加え、被雇用障害者の性別クロス集計を出せるようにすることについて、ご見解をうかがいます。 (理由)性別に関する記入項目が設けられていないために、日本の主要な法律である障害者雇用促進法の下で、雇用されている障害者の性別を把握できない状態が続いています。このことは、全般的に障害者雇用分野で性別の把握集計分析がされないことにもつながっています。五年に一度の「障害者雇用実態調査」のみでは不十分であり、かつ、これをもって代替することはできません。 ご意見に対する回答 (厚生労働省) 御指摘の障害者雇用状況報告については、雇用義務のある従業員40人以上の企業に対して雇用義務を満たしているか否かの報告を義務付け、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合は罰則を適用するものであり、その目的に必要な範囲において、企業側の負担も考慮した内容とする必要があることから男女別の報告を求めることは考えておりません。 また、障害のある女性の就労実態の把握については、障害者の就労に関する調査としての「障害者雇用実態調査」(直近はR5、H30、H25)のみならず、就労の状況を含めた日常生活のしづらさが生じている方の生活実態と支援ニーズに関する調査として、「生活のしづらさなどに関する調査」(直近はR4、H28、H23)があり、これら調査は、男女の別を把握するものであり、定期的に実施しております。 これら調査を踏まえて、雇用における障害女性の課題等について適切に対応してまいります。