資料3−4:臼井専門委員提出資料 第5次障害者基本計画フォローアップに関わる公的統計についての質問・意見として 臼井久実子(専門委員) 2024年11月28日 現状は、障害のある人に関わる統計が少ない上に、既存の調査統計の大部分に、障害の種類や程度への注目と、性別や年齢の捨象が見られます。国連障害者権利委員会勧告(2022年)以降、公的統計において新たに示されたものは乏しいと言えます。そのため、特に障害のある女性の実態や課題が見えにくく、PDCAサイクルが回っていません。更に、国連女性差別撤廃委員会は今年10月、女性と少女にかかわるデータ収集の欠如を懸念し、「年齢と社会経済的背景別に細分化された統計データの収集」を日本に勧告しました。障害だけでなく性、年齢などのデータ収集と分析と政策化が必要です。 【質問と意見】国民生活基礎調査2022年版における障害との関連での集計公表について ワシントングループ指標を反映して、障害に関する質問項目を新しく加えたのですから、それらについて結果を公表し、分析と今後にむけた検討を可能にすることは、政府の本来的な仕事にあたります。今後どのように進めていくか質問します。 標題の調査において、所得と他の要素(年齢、性別、仕事、年金、学歴、休養、睡眠など)との関係を示す集計が、公表されています。その一方で、所得と障害との関係の集計が(重要な指標となるものであるにもかかわらず)公表されていないことは、大きな欠落です。 例えば、「年齢階層と仕事の有無と性別および障害の有無」については公表集計表を元にグラフ作成できました。しかし「年齢階層と所得階層と性別および障害の有無」については、同様の作業は不可能です。 もし、標題の調査が抽出調査であるがゆえに、所得と障害との関係の集計を公表出来ないのだとすれば、今後、全数調査である国勢調査においてならば、可能性がありますか? 総務省が管轄されている公的統計の「二次利用」をしやすくすることを強く要望します。標題の調査は現在、二次利用の一つ「オンサイト利用」のみ可能とされていますが、オンサイト利用は、統計の専門家のなかでもミクロ統計の専門家でないと、利用申請からしてハードルが高いことを把握しています。 【質問】学校基本調査および教育にかかわるデータについて 特別支援学校以外の教育機関における、障害のある児童生徒学生の人数と、障害の種別や性別などの内訳を、今後どのように把握していくか、質問します。 (理由)障害者基本法や障害者差別解消法の目的「障害の有無で分け隔てられることのない共生社会」にむけて、一般校に学ぶ児童生徒学生についても特別支援学校と同様に把握されなければなりません。更に、本年度から改正障害者差別解消法が私立学校など民間事業者に対して合理的配慮の提供を義務化したのですから、その実施のために私立学校に学ぶ人のデータ整備が必要とされています。 特別支援学校においては、学年と障害の種別と性別が調査・集計されていますが、それ以外の小・中学校においては、特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒のみ調査・集計されており、かつ、性別は調査されていません。さらに、通常学級および高等教育に在籍する障害がある人は、学校基本調査では全く把握されていません。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)において、「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」が2005年度から毎年実施・公表されていますが、性別については調査が行われていません。 【質問】障害者雇用促進法に基づく毎年の政府統計について 障害者雇用促進法に基づく毎年の政府統計に、少なくとも性別に関する項目を加え、被雇用障害者の性別クロス集計を出せるようにすることについて、ご見解をうかがいます。 (理由)性別に関する記入項目が設けられていないために、日本の主要な法律である障害者雇用促進法の下で、雇用されている障害者の性別を把握できない状態が続いています。このことは、全般的に障害者雇用分野で性別の把握集計分析がされないことにもつながっています。五年に一度の「障害者雇用実態調査」のみでは不十分であり、かつ、これをもって代替することはできません。 以上