資料2-3 手話に関する施策の推進に関する法律の施行について(通知) p1 文書番号と日付 府政共共第459号 こ支障第282号 7文科初第850号 職発0625第1号 障発0625第1号 令和7年6月25日 宛名 各都道府県知事殿 各指定都市市長殿 各中核市市長殿 各都道府県教育委員会教育長殿 各指定都市教育委員会教育長殿 各国公立大学法人の長殿 大学を設置する各地方公共団体の長殿 各文部科学大臣所轄学校法人理事長殿 大学を設置する各学校設置会社の代表取締役殿 構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長殿 独立行政法人国立高等専門学校機構理事長殿 各大学共同利用法人機構長殿 各指定教員養成機関の長殿 厚生労働省医政局長殿 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長殿 差出人 内閣府政策統括官(共生・共助担当) こども家庭庁支援局長 文部科学省総合教育政策局長 文部科学省初等中等教育局長 文部科学省高等教育局長 スポーツ庁次長 文化庁次長 厚生労働省職業安定局長 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 p2 手話に関する施策の推進に関する法律の施行について(通知) 平素より障害者施策の推進に御理解、御協力をいただき、厚く御礼申し上げます。 手話に関する施策の推進に関する法律(令和7年法律第78号。以下「本法」という。)は、令和7年6月25日に公布され、同日施行されました。 つきましては、本法制定の経緯及び本法の概要は下記のとおりですので、御了知いただきますとともに、手話の習得及び使用する者の意思の尊重、またそれに関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるために必要な環境の整備、手話文化の保存、継承及び発展、並びに手話に関する国民の理解と関心の増進を図るため、適切な対応をお図りいただくよう御配慮願います。 また、各都道府県知事におかれましては、貴管内の市町村(指定都市及び中核市を除く。)、関係機関・団体、住民及び所轄の学校法人に対して、各指定都市市長及び中核市市長におかれましては、関係機関・団体及び住民に対して、各都道府県教育委員会教育長におかれましては、所管の学校(専修学校及び各種学校を含む。以下この段落において同じ。)及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会教育長におかれましては所管の学校に対して、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれましては、所轄の学校設置会社に対して、各国公立大学法人の長におかれましては、その設置する大学等に対して、各文部科学大臣所轄学校法人の理事長におかれましては、その設置する大学等に対して、独立行政法人国立高等専門学校機構理事長におかれましては、その設置する高等専門学校に対し、厚生労働省医政局長及び同省社会・援護局障害保健福祉部長におかれましては所管の専修学校に対して、本法制定の経緯及び本法の内容を広く周知するなど、よろしくお取り計らいいただきますよう、お願い申し上げます。 なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添えます。 p3 記 第1 本法制定の経緯 手話は、手話を使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上で言語その他の重要な意思疎通のための手段である。これまでも、障害者基本法(昭和45年法律第84号)において「言語」と位置付けられ、同法に基づく障害者基本計画において、手話による情報提供の充実、意思疎通支援の充実といった方向性が示され、各種の施策が講じられてきている。これらの施策のより一層の推進を図るため、多くの地方公共団体において、手話に関する条例の制定等が行われるなどしており、手話に焦点を当てた新たな法律の制定が必要とされたところである。また、きこえない・きこえにくい人の国際スポーツ大会であるデフリンピックが本年11月に我が国で初めて開催されるのを前に、手話に関する国民の関心も高まってきている。 このような状況を踏まえ、本法は、手話に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、当該施策の基本となる事項を定める等により、他の関係法律による施策と相まって、当該施策を総合的に推進するため、令和7年6月12日に参議院内閣委員会において起草され、同月13日に参議院において、同月18日に衆議院において、それぞれ全会一致で可決され成立に至ったものである。 第2 本法の概要 1 目的(第1条関係) この法律は、手話がこれを使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上で言語その他の重要な意思疎通のための手段であることに鑑み、手話の習得及び使用に関する施策、手話文化の保存、継承及び発展に関する施策並びに手話に関する国民の理解と関心の増進を図るための施策(以下「手話に関する施策」という。)に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本となる事項を定めること等により、他の関係法律による施策と相まって、手話に関する施策を総合的に推進することを目的とすることとされた。 2 基本理念(第2条関係) 手話に関する施策は、次に掲げる事項を旨として行われなければならないこととされた。 (1) 手話の習得及び使用に関する施策を講ずるに当たっては、手話を必要とする者及び手話を使用する者の意思が尊重されるとともに、手話の習得及び使用に関する必要かつ合理的な配慮が適切に行われるために必要な環境の整備が図られるようにすること。 (2) 手話が長年にわたり受け継がれてきたものであり、かつ、手話により豊かな文化が創造されてきたことに鑑み、手話文化(手話及び手話による文学、演劇、伝統芸能、演芸その他の文化的所産をいう。以下同じ。)の保存、継承及び発展が図られるようにすること。 p4 (3) 全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資するよう、手話に関する国民の理解と関心を深めるようにすること。 3 国及び地方公共団体の責務等(第3条関係) 国及び地方公共団体は、2の基本理念にのっとり、手話に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有することとされた。 4 障害者基本計画等との関係(第4条関係) 政府が障害者基本法第11条第1項に規定する障害者基本計画を、都道府県が同条第2項に規定する都道府県障害者計画を、市町村が同条第3項に規定する市町村障害者計画を策定し、又は変更する場合には、それぞれ、当該計画がこの法律の規定の趣旨を踏まえたものとなるようにするものとすることとされた。 なお、本規定を踏まえ、国では、次期障害者基本計画において所要の施策等を盛り込むこととしている。 5 財政上の措置等(第5条関係) 政府は、手話に関する施策を実施するため必要な財政上又は法制上の措置その他の措置を講じなければならないこととされた。 第3 基本的施策 1 手話を必要とするこどもの手話の習得の支援(第6条関係) (1) 国及び地方公共団体は、手話の習得についての理解に資するよう、手話を必要とするこども及びその保護者に対する手話に関する情報の提供、相談及び助言その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) 国及び地方公共団体は、手話を必要とするこどもがその希望により手話を習得することができるよう、乳幼児期においてその心身の発達に応じて手話を学習することができる機会の提供、学校(学校教育法第1条に規定する学校(大学及び高等専門学校を除く。)及び幼保連携型認定こども園をいう。2において同じ。)の授業その他の教育活動においてその心身の発達に応じて手話を学習することができる機会の提供その他の手話の習得の支援のために必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (3) 国及び地方公共団体は、手話を必要とするこどもの手話の習得に資するよう、その保護者及び家族が手話を学習することができる機会の提供、これらの者に対する手話に関する相談及び助言その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 p5 2 学校における手話による教育等(第7条関係) (1) 国及び地方公共団体は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、手話を使用するこどもが在学する学校において、その意向ができる限り尊重されつつ手話による教育を受けることができるよう、手話の技能を有する教員、手話通訳を行う者、手話に関する必要な支援を行う者等が適切に配置されるようにするための取組の推進、手話を使用した教材の提供その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) 国及び地方公共団体は、(1)の施策の実施に資するため、手話の技能を有する教員が養成されるようにするための大学及び教員養成機関による取組の促進、手話を使用するこどもが在学する学校の教員に対する手話を使用した指導方法に関する研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (3)国及び地方公共団体は、手話を使用するこどもが学校生活において手話を自由に使用することができる環境の整備が図られるよう必要な施策を講ずるものとすることとされた。 3 大学等における配慮(第8条関係) 国及び地方公共団体は、大学等(学校教育法第1条に規定する大学及び高等専門学校並びに専修学校、各種学校その他の同条に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うものをいう。以下この3において同じ。)において手話を使用する者に対しその意向ができる限り尊重された適切な教育上の配慮がなされるよう、手話通訳を行う者の確保のための大学等による取組の促進その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 4 職場における環境の整備(第9条関係) 国及び地方公共団体は、手話を使用する者を雇用し、又は雇用しようとする事業主における手話を使用する者が手話を適切かつ円滑に使用することができる職場環境の整備のための取組が促進されるよう、事業主に対する情報の提供、相談及び助言その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 5 地域における生活環境の整備等(第10条関係) (1) 国及び地方公共団体は、手話を使用する者が地域において手話を使用して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができる環境の整備が図られるよう必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) 国及び地方公共団体は、手話を使用する者が災害その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合においてその安全を確保するため必要な情報を迅速かつ確実に取得することができるよう、手話による情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。情報を迅速かつ確実に取得することができるよう、手話による情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 p6 6 その他の手話の習得の支援(第11条関係) 国及び地方公共団体は、1に定めるもののほか、音声言語を習得した後に音声言語による意思疎通を行う上での困難を有することとなった者であって手話を必要とするものその他手話を必要とする者がその希望により手話を習得することができるよう、手話に関する情報の提供、相談及び助言、手話を学習することができる機会の提供その他の手話の習得の支援のために必要な施策を講ずるものとすることとされた。 7 手話文化の保存、継承及び発展(第12条関係) (1) 国及び地方公共団体は、手話文化の保存、継承及び発展が図られるよう必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) (1)の施策には、文化芸術活動、スポーツ及びレクリエーションを通じて手話文化の保存、継承及び発展が図られるようにするための取組が含まれるものとすることとされた。 8 国民の理解と関心の増進(第13条関係) (1) 国及び地方公共団体は、手話に関する国民の理解と関心を深めるよう、手話に関する広報活動及び啓発活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) 国及び地方公共団体は、学校教育において手話に関する理解と関心が深められるよう、学校教育において利用できる効果的な手法に関する情報の提供、児童、生徒等が手話を学習することができる機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 9 手話の日(第14条関係) (1) 国民の間に広く手話に関する理解と関心を深めるようにするため、手話の日を設けることとされた。 (2) 手話の日は、9月23日とすることとされた。 (3) 国及び地方公共団体は、手話の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとすることとされた。 なお、今後国において、地方公共団体との協力の下、手話の日の前後に、手話に係る行事の開催を実施する予定であり、地方公共団体においても、手話の普及に資する行事、ブルーライトアップ、メディアを利用したキャンペーン等の広報活動・周知啓発の取組を実施いただきたい。ーン等の広報活動・周知啓発の取組を実施いただきたい。 p7 10 人材の確保等(第15条関係) 国及び地方公共団体は、手話通訳を行う者その他の手話に関する専門的な知識及び技能を有する人材の安定的な確保、養成及び資質の向上のため、研修の機会の確保、適切な処遇の確保その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 地方公共団体におかれては、本法の趣旨を踏まえ、手話通訳者の人材確保に向けた取組等を実施いただきたい。 11 調査研究の推進等(第16条関係) (1) 国は、手話文化の保存、継承及び発展に資するよう、手話文化に関する調査研究の推進、情報の収集及び提供その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 (2) 国は、手話の習得のための効果的な手法の開発、手話による円滑な意思疎通を図るためのデジタル技術その他の先端的な技術を活用した機器等の開発、手話の習得及び使用に関する調査研究等の推進並びにその成果の普及のために必要な施策を講ずるものとすることとされた。 12 国際交流の推進(第17条関係) 国は、手話に関する国際交流を推進するため、手話を使用する者の国際的交流の支援、手話文化に関する情報の交換等の活動の支援その他の必要な施策を講ずるものとすることとされた。 13 意見の反映(第18条関係) 国は、手話に関する施策の策定及び実施に資するよう、手話を使用する者その他の関係者の意見を聴き調査審議を行う等、その意見を国の施策に反映させるために必要な措置を講ずるものとすることとされた。 第4 施行期日等に関する事項 1 施行期日(附則第1項関係) この法律は、公布の日から施行することとされた。 2 検討(附則第2項関係) この法律の規定については、この法律の施行後おおむね5年を目途として、その施行の状況等を勘案して検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすることとされた。