資料2-1 内閣府障害者政策委員会提出2024全国調査概要 2025年11月19日 p1 内閣府障害者政策委員会 委員各位 新銀輝子(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会) この度、当会が全国の精神障害者と同居するご家族を対象に実施した生活実態調査の報告書が完成いたしました。本資料は、報告書の主要な結果、特に福祉新聞などのメディアで大きく取り上げられた「年間2兆円超」に上る家族の経済的損失の推計を中心に、家族の生活、健康、就労への深刻な影響をA4判2枚に要約しました。 是非、今後の政策議論の参考資料としてご活用ください。 『調査の概要と報道で注目された経済的損失』 1.調査の目的と概要 本調査は、精神障害者と同居する家族の生活実態、介護負担、就労環境、および健康状態を包括的に把握し、特に家族が抱える「見過ごされてきた経済的な損失」を数値化することで、社会的な支援の必要性を強く訴えるために実施しました。 調査名 2024年度精神障害者と家族の生活実態と意識調査~全国家族ニーズ調査~報告書 調査期間 2024年12月~2025年2月 回答者 精神障害者と同居する家族等 1,617名(家族会会員・非会員を含む) 2.『福祉新聞でも大きく報道』家族のケア負担による経済的損失の推計結果 本調査の発表後、福祉新聞をはじめとするメディアでは特にこの経済的損失の推計結果が注目されました。この推計は、家族が精神障害者のケアを担うことにより生じる、家族の「労働生産性の低下(プレゼンティズム)」と「労働時間短縮・転職(アブセンティズム)」に基づくものであり、家族の負担が個人の問題を超えた社会全体の課題であることを数値で示しています。 (1)推計された年間経済損失額:2兆2,878億円 対象 55歳未満の精神障害者と同居する全国の家族のうち、就労者と仮定した約191万人。 根拠 家族が精神障害者の病気や体調のために経験する労働パフォーマンスの低下度合い、および労働時間短縮・転職による賃金水準の変化を集計。 (2)家族ひとりあたりの年間平均損失額:119万5千円 家族ひとりひとりが年間平均で約120万円近い経済的な負担を背負っている計算となり、これは個人の努力や自助では解決しえない、社会的な課題であることを示しています。 p2 3.報告書で明らかになった家族の就労環境と健康状態への深刻な影響(経済的損失の背景) 就労への影響 約40%の家族が、ご本人の病気や体調のために「勤務時間の短縮」や「転職」を行ったと回答。 収入状況 就労している家族の年間収入は、いっぱん就労者と比較して低い水準にあることが判明。労働時間短縮やキャリアの中断が長期的に影響している 身体の不調 約80%の家族が、「じゅうぶんに睡眠をとれない」など、身体面での不調を感じている。 精神面の不調 約30%の家族が、自身の精神的な不調により「精神科・心療内科の受診・通院」を経験している。 ケアの現状 家族は、ご本人の生活支援(食事、服薬管理、通院同行、金銭管理など) 4.本調査結果から導かれる政策的含意と提言 今回の調査結果は、精神障害者へのケアが依然として家族に過度に依存している実態と、その結果として「家族のQOLの低下」にとどまらず、メディアでも大きく取り上げられた「大規模な社会経済的損失」をもたらしていることを明確に示しました。 家族のケア負担は、単なる「個別家庭の問題」ではなく、「日本の労働力維持と社会保障費の適正化に関わる構造的な課題」として捉える必要があります。 提言 家族支援の抜本的な強化による「社会的損失の軽減」 内閣府障害者政策委員会におかれましては、本調査結果を以下の政策推進の重要参考資料としてご検討いただきたく、強く提言いたします。 1. 経済的支援の強化 提言 家族が離職や労働時間短縮を余儀なくされないための経済的補償(例:家族介護者手当の創設、税制優遇措置)の検討。 2. 専門的な相談・支援体制の拡充 提言 家族自身の心身の健康を維持するための専門相談窓口の拡充、およびレスパイトケア(短期入所・休息)の利用しやすい体制の整備。 3. 地域生活支援体制の抜本的見直し 提言 精神障害者本人の地域生活を支えるサービス(訪問支援、アウトリーチ支援、居場所づくりなど)を強化し、家族が担うケアの割合を「社会が担うケア」へ移行する政策転換の推進。 参考 当会HP:https://seishinhoken.jp/publications/01k6yjxdbrketgrsnrmgtdbh9d 報道状況:本調査結果のうち、特に経済的損失の推計結果は「週刊福祉新聞」(2025年10月7日号)yahooニュースなどにて大きく取り上げられ、社会的な関心が高まっています。 p3 「福祉新聞」2025年10月16日の記事 『精神障害者家族の生産性低下で経済損失、年2兆円超 全国団体が初の推計』 精神障害者と同居する家族の労働生産性が低下したことによる経済的な損失が、全国で年間2兆円を超えることが、このほど、全国精神保健福祉会連合会(岡田久実子理事長、みんなねっと)の初の推計で分かった。 精神障害のある人のケアを家族に依存する実態はこれまでも問題視されてきたが、同連合会は経済的な損失も示すことにより、家族支援の必要性を広く訴えていく考えだ。 推計のもとになる調査は2024年12月~今年2月に実施。家族会未入会者を含め1619票の有効回答を得た。就労する家族には、自身の仕事の生産性の変化を11段階で評価してもらった。 その結果、本人が発症した後の家族の労働生産性は、平均で通常時の半分になることが判明。それをもとに算出すると、就労家族1人につき年間で平均119万5000円の損失となる。65歳未満の精神障害者と同居する全国の家族の半数(約191万人)が就労していると仮定したところ、損失額は2兆2878億円に上る。 また、回答者全体の49%が本人の病気や体調のため勤務時間を短縮したり、転職したりしたと回答。就労している家族の年収が、いっぱん就労者より低いことも分かった。 回答者全体の約8割がじゅうぶんに睡眠をとれないなど身体面で不調を感じ、約3割が精神科を受診するなど精神的な不調を抱えていることも分かった。 報告書は「家族自身も困難を抱えていることは長年指摘されてきたが、問題は見過ごされ、家族が孤軍奮闘している実態が明らかになった」としている。 (福田敏克)