資料3-1 第89回障害者政策委員会 意見書 一般財団法人全日本ろうあ連盟 石橋 大吾 1.差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止 1-(1)-4 意思決定支援の推進 特にろう重複障害者については、本人の障害特性や生活背景、固有のコミュニケーション方法を理解し、意思の形成・表明を支える専門的な支援が必要である。また、音声言語が中心の環境では、聴覚障害児・ろう重複障害児の言語獲得や情報収集が困難となる懸念がある。文化的・言語的アイデンティティを形成・発展させ、自己決定する力を育むため、福祉サービスにおいても手話言語によるコミュニケーションを保障し、同じ障害特性を持つ子ども同士が交流し、学び合える集団支援の場と専門的な支援体制の整備を求める。 1-(1)-6 身体障害者相談員 令和7年4月において、身体障害者相談員は、市町村で5,541人、都道府県で395人とあるが、障害種別ごとの内訳を求める。 1-(1)-7 権利侵害に関する相談・救済 電話や音声による相談を前提とした体制では、聴覚障害者が相談をためらい、権利侵害が表面化しないおそれがある。手話言語による相談を保障するとともに、相談後の調査や救済手続においても情報保障を徹底することを求める。 1-(1)-7、1-(2)-7 「面談・電話等による相談に応じている」となっているが、手話で相談したい場合に手配してもらう体制も必要。 1-(2) 障害を理由とする差別の解消の推進 ・ろう者に対する合理的配慮については、手話通訳の配置や手話言語による情報提供など、言語的なニーズに応じた対応が必要である。 ・制度の周知にとどまらず、ろう者が実際に必要な配慮を受けられているかを把握し、研修内容や対応の改善につなげることを求める。 1-(2)-1 障害を理由とする差別の解消 合理的配慮の提供義務化に伴い、一部の自治体では、企業や学校、幼稚園等が手話通訳・要約筆記を手配すべきものと解釈し、当事者からの派遣申請を認めない事例が生じている。その結果、必要な意思疎通支援を受けられない状況がある。合理的配慮と意思疎通支援事業の役割を明確にし、当事者への支援が後退しないよう、自治体への周知徹底を求める。 1-(2)-2 障害者差別解消法だけでなく、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法にものっとった運用を基本とすべきである。 1-(2)-4 「手話リンクを用いた相談の受付を開始した」とあるが、周知方法と利用件数を知りたい。 1-(2)-6 ハローワークでの相談は手話協力員に手話通訳を依頼できるが、労働局での相談では手話通訳は用意できないと言われた。きこえない人があっせんや紛争解決の援助申立をしたい場合の体制整備が必要ではないか。 1-(2)-10 (人事院)「代読」とあるが、文章の読解が難しいろう者の場合に手話通訳者が手話で代読することも認められるのか。 (財務省)「耳の不自由な来庁者に対して筆談の案内板を設置」とあるが、手話通訳の手配は行わないのか。 2.安全・安心な生活環境の整備 公共施設や交通機関では、緊急放送や呼び出しなど音声による情報提供が依然として多い。設備の設置だけでなく、文字表示やフラッシュライト等によって、きこえない人が必要な情報を確実に取得できる環境整備を求める。 2-(2)-1、2-(2)-2 案内設備も接遇も事故発生時の運行遅延や停止の案内がきちんとされていないので、改善が必要。 2-(4)-1 聴覚障害者に係るバリアフリーの進捗状況の見える化、「心のバリアフリー」の推進等、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化を推進したとあるが、具体的には何をしたのか。また、音声情報の視覚化や緊急時の情報伝達設備の整備状況を把握できる指標の設定を求める。 3.情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実 文字情報の提供だけでは、日本語の理解が難しいろう者やろう重複障害者に十分な情報保障ができない場合がある。手話言語による情報提供を基本的な選択肢として位置付け、当事者が必要な情報を自ら選択して取得できる環境整備を求める。 3-(1)-7 企業等が雇用する聴覚障害者のために業務上使用する電話リレーサービスの法人契約の普及にも努めてもらいたい。また電話リレーサービスや手話リンクの導入だけではなく、電話リレーサービスからの入電においても、通常と同様のサービスの提供を求める。電話リレーサービスは公共インフラとしての位置付けがあるにも関わらず、電話リレーサービスを使用したきこえない当事者からの電話は依然として拒否、特に本人確認などが必要な分野において、電話の拒否や保留などが続いている。サービスを提供する事業者や従業員への聴覚障害への理解や電話リレーサービスの周知啓発、またその利用について、全省庁において取り組みを進める必要がある。 3-(2) 情報提供の充実等 手話放送については、資料に示された放送時間の実績からも、放送局によって提供時間に差がある。今後の取り組みには、放送時間の拡大に加え、災害・緊急情報、行政情報、教育・文化に関する情報など、ろう者にとって必要性の高い情報が、適切なタイミングで手話言語により提供されるために充実させる必要がある。 3-(2)-1 情報提供の充実等 字幕、解説、手話放送充実 比較的増加しつつあるが、地方局では、早朝や深夜は字幕や手話放送がほとんど放送されていない。またドラマなど再放送となると、地方局の事情により、字幕有無の判断が委ねられている状況にある。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法を踏まえて、地方局においては字幕や手話放送を導入できるよう整備を進めることを求める。 3-(2)-2 聴覚障害者情報提供施設の充実 聴覚障害者情報提供施設は、現行の法制度が施設の役割や事業の実態に十分対応できておらず、報酬も据え置かれている。手話施策推進法等を踏まえ、手話言語の普及、意思疎通支援、ろう児・ろう重複障害者への支援などを担う総合的な拠点施設として、機能の拡充と報酬体系の見直しを含めた法制度の検討を開始することを求める。 3-(4) 行政情報のアクセシビリティの向上 ・字幕は重要な情報保障の手段であるが、手話言語を第一言語とするろう者にとって、字幕だけでは十分に情報を理解できない。字幕と手話言語による情報保障をそれぞれ充実させるとともに、実際に情報を理解し、行動につなげられるかという観点から、施策の効果を検証することを求める。 4.防災、防犯等の推進 4-(1) 防災対策の推進 ・情報伝達手段の多様化を促すだけでなく、ろう者が避難情報や被害状況を迅速かつ正確に把握できる体制が、実際に整備されているかを確認することが重要である。 ・手話言語、文字情報、視覚的な情報提供等を組み合わせた情報伝達の実施状況を把握するとともに、ろう者が参加する防災訓練等を通じて実効性を検証し、自治体の取組の改善につなげることを求める。 4-(1)-7、4-(3)-1 緊急通報システムや110番アプリシステムを利用した場合の手話通訳者の手配状況が地域によってばらつきがあるので、統一基準が必要ではないか。 4-(3)-2 手話リンクの導入を促進してほしい。 4-(4)-1〜5 詐欺手口が巧妙になり、聴覚障害者が被害に遭うことが増えているので、防止から実際に被害を受けた際の対応まで手話で相談できる体制が必要。 5.行政等における配慮の充実 5-(2)-1 選挙における配慮等 政見放送で手話通訳を担当する手話通訳士が少ない現状にある。手話通訳士は公務員として従事している方が多く、公職選挙法で手話通訳士は運動員とみなされるためである。そのため、手話通訳士が運動員であるという公職選挙法の改正を求める。また、政党や候補者の判断により、手話通訳や字幕を付与することができることとなっているため、義務化することを求める。 (その他) 大きな話になるが、「合理的配慮の提供」という日本語訳を見直す段階ではないか。内閣府障害者政策委員会の前委員長である石川准先生は「合理的環境調整」という言葉が適切ではないかと提言されている。その意見も反映させるべき。