p180  資料編  (1) 尾上構成員 第1回検討会提出資料 国におけるワンストップ相談窓口についての検討を?国と自治体の連携強化に向けて  1) 関わった自治体の相談事例から  ・あるテーマパークに関する相談事例(乗車制限や、車いす二人で並んでショーを観ることが認められない)〜担当省庁を確認するまでに時間を要した   ・ライド系(含むマニュアル)→国交省   ・ショーの車いすスペース→消防庁  ・携帯ショップでのハンドル式車いすでの入店拒否?個別店舗の対応だけでなく、「店舗の共通マニュアル」に記載がある    2) DPI差別相談事例より  ・たらい回しにあったが、担当窓口にたどり着いて解決した事例   差別事例の概要   ・全国チェーンのエステ店で施術を受けたいと電話し、車いすだと伝えると「車椅子の人は施術をすることができない」と言われた。杖歩行が可能だと伝えたが、車いすの人は全員断らせてもらっていると言われた。設備、スタッフのスキルともに受け入れ体制が整っていないとのこと。   事例の経過   ・相談者本人が相談したところ、厚労省→内閣府→法務局と回されて法務局で止まっていたが、DPIに相談があり対応。DPIから厚労省に問い合わせると「美容は所轄だが、エステは違うので経産省に連絡して」と言われ、経産省のヘルスケア産業課に相談。   ・経産省からエステ店に事実確認をしたところ、内容通りであると認めた。解消法への対応として指針をつくっているが、車いすの人に対しては付添や対応に慣れたスタッフがいるかなどによって施術を受けてもらっていることもあり、一律に拒否しているように伝わり、不快な思いをさせて申し訳なく思っている。マニュアルを見直し、今後同じようなことがないように徹底するということになった。  この事例のポイント    ・本人は、エステは厚労省が所轄だと思って連絡したが違った。その後たらい回しにあって途中で止まってしまった。どの省庁が所轄なのか一般の人はわからない分野も多い。   ・経産省は適切に対応してくださった。所轄の窓口にたどり着ければ、このように解決できる。 p181   3) 参考 障害者差別解消法改正 衆議院・参議院附帯決議、並びに大臣答弁  【2021年4月16日 衆議院・内閣委員会、2021年5月27日 参議院・内閣委員会 附帯決議より】  九 障害を理由とする差別に関する相談及び紛争の防止又は解決に必要な体制を整備するに当たっては、以下の諸点に留意すること。  1.障害を理由とする差別に関する相談について、ワンストップの相談窓口を設けるとともに、国と地方公共団体との連携を強化すること。  2.障害者が安心して相談することができるよう、相談窓口における相談対応者に障害者を加えること。  3.既存の機関によるこれまでの対応について調査、分析し、その結果を公表すること。    【2021年5月27日参議院・内閣委員会議事録より】  〇横澤高徳参議院議員  …法の趣旨から鑑みて、内閣府の障害者差別に特化した相談窓口を設置することが必要になってくると考えますが、大臣、内閣府に是非このワンストップ相談窓口の開設を検討していただきたいんですが、いかがでしょうか。    〇坂本内閣府特命担当大臣  障害者政策委員会の意見書が昨年、令和2年6月に出されました。その中で、「相談のたらい回しを防止する等の観点から、国における新たなワンストップ相談窓口の設置や既存の相談窓口の効果的な活用、国・地方公共団体の役割分担の整理などを含め、どのような対応が可能かについて検討すべきである。」というふうに意見が出たところでございます。  これを受けまして、内閣府におきまして、今年度、令和3年度には、効果的な相談体制の在り方等につきまして調査研究を行うこととしております。そして、一元的な相談窓口なども含めて、相談体制の在り方を検討し、適切な仕組みが整えられるよう、しっかりと取り組んでまいります。    (2) 尾上構成員 第6回検討会提出資料「適切な担当省庁の相談窓口へのアクセスの確保を」  本検討会の第1回目において提示資料の通り、国におけるワンストップ相談窓口の必要性に関連して、「適切な担当省庁の窓口につながり解決した事例」を紹介した。  このような事例が広がることを願うが、「所掌する分野と対応した相談窓口の明確化や、内閣府のHP等において、一括して各府省庁の相談窓口を分かりやすく示すこと」だけでは解決し得ない事例を紹介したい。  これらのように、どの省庁が担当か相談者が分からない場合、分かっても適切な対応が得られない場合、さらに、テーマパークのように複数の省庁にまたがる場合など、適切な担当省庁の相談窓口につなぎ解決に向けて働きかけていく役割が司令塔である内閣府には求められるのではないか。    【たらい回しや不適切な対応により解決に至らなかった事例】  1.飲食店で入店拒否にあったため、まず農水省に相談すると「飲食店関連は厚労省へ」と言われ、厚労省の対応指針の窓口にかけた。ところが「飲食所管の部局にかけて下さい」と言われた。飲食所管の部局にかけたところ、「ここではなく、生活衛生課に連絡を」 p182 と言われた。生活衛生課に電話をかけ相談をしたがその後、2か月返事がなかった。もう一度、催促の電話をしたが、その後、連絡はこないままである。(2017年、神奈川県)  2.人工呼吸器ユーザーに対し、クラシックコンサートの主催者が参加を拒否した。主催者と話し合いを重ねたが解決に至らなかったため、担当省庁の相談窓口に連絡をした。ところが、「わが省は芸術を推進する立場なので」「両者を裁く立場にない」などと言われ、各部署へたらい回しされた。ようやく担当者が決まったが、その後、京都に異動したとのこと、内閣府HPに掲示の相談窓口ではなく当該担当者の異動先の番号にかけてくれと言われた。(2018年、東京都)  ※なお、事例に関しては、いずれも調査協力者が記入した内容をそのまま記載している。    (3) 田中(伸)構成員 第5回検討会提出資料「国のワンストップ窓口に対する意見」  これまでの当検討会における議論及び各種調査の結果を踏まえると、市町村及び都道府県にワンストップの相談窓口を設置することに加え、国レベルでもワンストップの相談窓口を設置することが検討されるべきである。  そこで、これまでの当検討会の議論状況から、国のワンストップ窓口を設置した場合において、この設置窓口が果たすべき役割に関して、試案としての意見を述べる。    1) 相談受付窓口としての役割  従前より、障害者が国に差別に関する相談を行う際、担当する主務官庁が分かりづらく、いわゆる「たらい回し」の状態になるとの問題点が指摘されている。  これを解消するため、国においても、障害者の差別に関する相談をワンストップで受付ける窓口を設置することが望ましい。    2) 連絡・調整機関としての役割  障害者から寄せられた差別に関する相談について、各省庁に設置されている相談窓口の中から、担当することが適切な省庁の相談窓口につなぐ役割を担うことが望ましい。  また、省庁の相談窓口と連携して、事業者・相談者と個別に、あるいは、同時に協議を行う場を設定する等の調整を行う役割を担うことも考えられる。    3) 相談対応マニュアルの策定事業  相談を受け付ける窓口の担当者向けのマニュアルを作成し、提供することにより、地域間格差を解消する方向を目指すことが望ましい。  また、事業者がアクセスしやすい方法により、事業者が障害者からの申し出を受けた場合に参照できる対応マニュアルを作成し、提供することも検討されるべきである。    4) 研修プログラムの作成・提供事業  相談窓口を設置していない地方自治体に対して、相談窓口設置を支援するため、相談担当者向けの研修プログラムを作成することが望ましい。 p183  また、事業者に対する合理的配慮の提供が義務とされたことに伴い、事業者向けの研修プログラムを作成し、提供することも検討されるべきである。    5) 事例収集・整理・提供事業  国及び地方自治体の相談窓口で受け付けた相談事例を収集・整理・提供する役割を担うことが望ましい。この場合、データベースとして提供することが考えられる。  また、解決困難な事例の分析を行い、将来に向けて改善・提言に結びつけることも考えられる。    6) 好事例の共有  解決した好事例を積極的に周知し、可能な場合には全国的な対応を求めることが望ましい。また、何らかの省庁間調整が必要な場合には、その連絡・調整を行うことも考えられる。   p184   「障害者差別の解消に向けた相談体制、事例の収集・共有の在り方等に関する検討会」構成員名簿  1岩上 洋一 (一社)全国地域で暮らそうネットワーク 代表理事  2尾上 浩二 (認定NPO)DPI日本会議 副議長  3小牟礼まゆみ 大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課 課長  4杉崎 友則 日本商工会議所 産業政策第二部 担当部長  5曽根 直樹 日本社会事業大学院福祉マネジメント研究科 准教授  6田中 伸明 (福)日本視覚障害者団体連合 評議員、名古屋市視覚障害者協会 会長  7田中 正巳 日本チェーンストア協会 常務理事  8野澤 和弘 植草学園大学副学長/(一社)スローコミュニケーション代表  9穂苅 修利 長野市保健福祉部障害福祉課長  10又村 あおい (一社)全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事兼事務局長  ※五十音順・敬称略    ■オブザーバー(関係省庁)  ・法務省 人権擁護局調査救済課  ・国土交通省 総合政策局バリアフリー政策課  ・厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部企画課  ・経済産業省 経済産業政策局経済社会政策室    ■発注者  内閣府政策統括官(政策調整担当)付障害者施策担当 p185  「障害を理由とする差別に関する国内の実態及び今後の相談体制の整備、事例の収集・共有等に関する調査研究」報告書    2022年3月    株式会社三菱総合研究所  ヘルスケア&ウェルネス本部  TEL(03)5157-2111(代表)