p51   3. 相談体制の好事例調査の結果  3.1 相談体制の好事例調査の概要  3.1.1 調査目的  検討会における相談体制の在り方に関する基本的な考え方等の検討に当たり、参考となる先進地域の取組実態、先行者の立場からの提案を把握するために調査を実施した。    3.1.2 調査対象、調査時期  調査の対象、時期は以下の通りである。  体制構築・運営の行政実務上の工夫・課題を指摘できるよう、一定期間、一定規模で相談体制を運営した実績がある地方公共団体を選定した。  また、地域の実情反映のため、地域バランス、人口規模にも配慮した。    図表66 相談体制の好事例調査の実施経過  1  調査対象 千葉県  実施日時 令和3年9月14日(火)10〜12時(第2回検討会)    2  調査対象 長野県上小圏域  実施日時 令和3年9月30日(木)9時〜12時30分(第3回検討会)    3  調査対象 兵庫県明石市  実施日時 令和3年9月30日(木)9時〜12時30分(第3回検討会)    4  調査対象 岡山県総社市  実施日時 令和3年9月30日(木)9時〜12時30分(第3回検討会)    5  調査対象 福岡県北九州市  実施日時 令和3年9月30日(木)9時〜12時30分(第3回検討会)  ※全件、WEB会議方式で実施。    3.1.3 調査方法  検討会(WEB会議方式)に調査対象地域の担当者を招聘し、検討会構成委員がヒアリングを実施した。    3.1.4 調査項目  調査項目は以下の通りである。    図表67 相談体制の好事例調査の調査項目    (地域の基本情報)  (障害者差別の解消に向けた相談体制)  〇障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  〇相談体制構築の経緯  〇相談の実施体制  〇相談件数・内容  〇障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  〇関係機関との連携  〇相談機関へのアクセス向上方策  〇相談対応に係る人材の確保・育成  〇相談体制構築を円滑に進める上で必要なこと    (相談事例の収集・共有の仕組)  〇事例の収集の現状  〇事例の共有の現状  (障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組) p52   3.1.5 調査結果の概要  相談体制の好事例調査の結果の概要を以下に示す。    図表68 相談体制の好事例調査からみえた相談体制構築パターン  本事業では、本事業内で実施した好事例調査に基づき、都道府県の相談体制を2種類、市区町村の相談体制を6種類に分類した。    都道府県の相談体制は、広域支援相談員配置型と広域連携型の2種類とした。広域支援相談員配置型は、都道府県設置の広域支援相談員等が市区町村を支援する体制である。以降本相談体制を、相談体制分類Aと称する。相談体制分類Aでは、都道府県障害福祉課等に設置された広域支援相談員等の相談員が、市区町村の相談体制を支援する。なおこの際、都道府県に設置された地域協議会等と広域支援相談員等の相談員が連携し、市区町村の協議会や相談体制を支援する場合もある。    広域連携型は、市区町村で相談を受け、困難事例等は広域で支援する相談体制である。以降、本相談体制を相談体制分類Bと称する。相談体制分類Bでは、広域支援相談員等を設置せず、都道府県障害福祉課や都道府県協議会等が、市区町村の相談窓口や協議会を直接支援する方式である。なお、都道府県における相談体制分類AとBでは、それぞれワンストップ窓口を設置する場合としない場合がある。    市区町村における相談体制は、地域協議会を持たない場合と、地域協議会を持つ場合の2つに大別される。それぞれの類型において、窓口の設置形態により3種類に分類する。地域協議会を持たない場合については相談分類ア〜ウ、地域協議会を持つ場合は相談分類エ〜カとし、窓口形態として、複数窓口型、ワンストップ窓口型、重層窓口型の3種類を定義する。複数窓口型は、各部署・機関の窓口で相談を受け付ける方式である。ワンストップ窓口型は、相談を1つのワンストップ窓口で受け付ける方式である。重層窓口型は、ワンストップ窓口と各部署・機関の窓口で重層的に相談を受け付ける体制である。それぞれの窓口形態とその分類名は次の通りとする。  ・相談分類アは複数窓口型(地域協議会無し)  ・相談分類イはワンストップ窓口型(地域協議会無し)  ・相談分類ウは重層窓口型(地域協議会無し)  ・相談分類エは重層窓口・協議会連携型  ・相談分類オはワンストップ窓口・協議会連携型  ・相談分類カは重層窓口・協議会連携型 p53   図表69 相談体制の好事例調査の結果概要    千葉県  基本情報  人口 6,283,727人  世帯数 2,785,297世帯  社会資源の状況   〇基幹相談支援センター:直営9か所、委託15か所   〇指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所:431か所   〇権利擁護センター:直営1か所   〇障害者虐待防止センター:直営47か所、委託7か所    相談体制  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  平成18年に障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例(以下、障害者条例)を制定し、障害のある人もない人も誰もがお互いの立場を尊重し合い、支え合いながら安心して暮らすことのできる社会を実現するという理念のもと、地域に根差した相談員が第三者的な立場から関係者への説明・助言・調整・紹介等を実施  体制構築の経緯  障害者条例に相談体制の規定があるため、条例施行と同時に相談業務を開始  相談の実施体制   〇千葉県本庁:県職員3名   〇広域専門指導員:県内16の障害保健福祉圏域毎に1名   〇地域相談員:535名  障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況   〇千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会:広域専門指導員・地域相談員の委嘱についての意見具申、差別事案に関する審議等   〇障害者差別解消支援地域協議会:具体的な対応事例の共有、市町村単独での対応が難しい事案の協議   〇障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議:個別相談では解決が難しい課題に関する議論・周知  相談件数・内容(相談内容の整理軸を含む)   〇平成30年度:135件、令和元年度:153件、令和2年度:103件   〇相談内容の整理軸:差別の類型別、事例の内容別、情報の収集方法別、解決状況別  相談件数・内容の直近3年間の傾向   〇新型コロナウイルス感染症の影響により、相談件数が減少   〇例年、障害種別では精神障害に関する相談が最も多く、分野別では福祉サービス関連が最も多い。  相談の流れ(障害者から)(受付の方法・相談員)   @相談受付   Aケース検討会議にて取組方針検討   B双方から事情を確認   C助言・調整案の提案   D双方に対し、助言・調整   E合意   F活動結果の評価  相談の流れ(事業者から)(受付の方法・相談員)  障害者からの相談と同様の流れ  関係機関との連携(連携する内容を含む)   〇障害者差別に関する相談の内容に応じて県内市町村、中核地域生活支援センター、障害者就業・生活支援センター等と連携   〇広域専門指導員が市町村の地域支援協議会に同席する等、日常的に市町村と連携  アクセス向上方策・意思疎通支援の工夫(ICT活用を含む)   〇相談窓口を記載したパンフレット等に音声コードを添付   〇事業者に対する広報媒体の配布や法律・条例の説明   〇「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」による配慮の実施   〇専用メールアドレスの活用  相談対応に係る人材の確保・育成   〇広域専門指導員等連絡調整会議での事例検討(月1回)   〇地域相談員への研修(年1回)  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  平成18年に障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例(以下、障害者条例)を制定し、障害のある人もない人も誰もがお互いの立場を尊重し合い、支え合いながら安心して暮らすことのできる社会を実現するという理念のもと、地域に根差した相談員が第三者的な立場から関係者への説明・助言・調整・紹介等を実施    事例の収集・共有の仕組  事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む)   〇事例の分類、内容、対応等で整理   〇事例の収集先:市町村や教育庁、県警、広域専門指導員を配置している保健所、障害者相談センター  事例の共有   〇今後の相談活動の参考になるよう、相談分野、類似事例の有無、具体的対応等調整活動の妥当性などを勘案し、共有事例として選定    その他  障害者差別の解消に向けた相談体制の構築を進めるために必要なこと・課題   〇県と市町村の障害者差別解消支援地域協議会の活性化が必要   〇市町村によって規模や相談件数等が異なり、未設置となっている地域や差別相談がない地域との関わり方が課題    各自治体特記事項  【広域専門指導員】  障害を理由とする差別相談に関する助言や調整活動、個別訪問等による障害者条例及び障害者差別解消法の周知啓発や、地域相談員への助言・研修を実施    長野県上田・小県群圏域  基本情報  人口 155,223人  世帯数 68,446世帯  社会資源の状況 〇基幹相談支援センター:委託1か所   〇指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所:53か所   〇権利擁護センター:設置なし(権利擁護機能を持つ機関:直営4か所)   〇障害者虐待防止センター:直営1か所、委託1か所    相談体制  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇障害者理解の周知・啓発が重要であることを障害者差別解消支援地域協議会で共有し、周知啓発活動を展開   〇差別解消に係る相談窓口を上田市障がい者支援課に設置し、市民からの相談も受付  体制構築の経緯  障害者差別解消法施行の1年前から障害当事者・支援機関等との会議によりパンフレットを作成し、相談窓口を計画  相談の実施体制   〇上田市障がい支援課:35名   〇基幹相談支援センターの相談支援専門員:10名  障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況   〇上小圏域障がい者自立支援協議会 本会:市町村相談実績及び相談内容・対応内容の報告と検証を実施し、差別解消協議会に報告し周知を図る  相談件数・内容(相談内容の整理軸を含む)   〇平成30年度:1件、令和元年度:3件、令和2年度:2件   〇相談内容の整理軸:障害種別、相談者の状況、相談者の種別(個人・団体)、差別の類型別  相談件数・内容の直近3年間の傾向   〇不当な差別:障害に対する理解不足による差別的対応が主   〇合理的配慮:当事者及び当事者の家族からの一般市民・社会に対する合理的配慮への働きかけの訴えが主  相談の流れ(障害者から)(受付の方法・相談員)   @相談受付   A管理職報告・課内検討   B相談者及び対応者へのアクセスと事実確認   C解決に向けた対応者への説明と合意  相談の流れ(事業者から)(受付の方法・相談員)   @相談受付   A管理職報告・課内検討   B相談者及び対応者へのアクセスと事実確認   C必要に応じた支援会議での方向性と解決に向けた方法の検討   D解決に向けた対応者への説明と合意  関係機関との連携(連携する内容を含む)   〇相談案件が出た際に、支援会議等に基幹相談支援センターも同席して内容の把握と解決方法を検討   〇圏域ごとの権利擁護委員会が県の自立支援協議会に参画して議論  アクセス向上方策・意思疎通支援の工夫(ICT活用を含む)   〇電話相談窓口の明確化   〇身近な自治センターでの相談受付   〇手話通訳士(者)の配置、コミュニケーション支援アプリ・遠隔手話通訳、筆談、点字・点訳広報   〇メール相談・SNSでの相談・TV電話・オンライン会議等の導入  相談対応に係る人材の確保・育成   〇行政担当者と基幹相談支援センター合同研修会を開催(年1回)  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇障害者理解の周知・啓発が重要であることを障害者差別解消支援地域協議会で共有し、周知啓発活動を展開   〇差別解消に係る相談窓口を上田市障がい者支援課に設置し、市民からの相談も受付    事例の収集・共有の仕組  事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む)   〇事例の分類、事例の内容、障害の種別、事例が生じた場面、対応内容等で整理   〇事例の収集先:障害者支援課、権利擁護委員会  事例の共有   〇個人情報を保護した形で障害者差別解消支援地域協議会での資料として、内容を含め報告    その他  障害者差別の解消に向けた相談体制の構築を進めるために必要なこと・課題 〇障害者の権利擁護相談支援についての担当者レベルの研修の機会づくり   〇一定の質が担保された相談体制モデル構築と窓口の増加   〇専門部会での周知活動、勉強会、教育カリキュラムへの組み込み    各自治体特記事項  【広域連合・協議会の活用】   〇障害者自立支援協議会本会が障害者差別解消地域協議会機能を兼ねる   〇複数の部会を設置し、具体的な議論を行う体制を構築    兵庫県明石市  基本情報人口 299,623人  世帯数 130,352世帯  社会資源の状況   〇基幹相談支援センター:委託1か所   〇指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所:27か所   〇権利擁護センター:委託1か所   〇障害者虐待防止センター:委託1か所    相談体制  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇明石市障害者配慮条例の基本理念(第2条)に基づいて実施   〇差別をする人を非難することが目的ではなく、差別をした人、された人両者が話し合って、お互いに理解を深め、積極的に合理的配慮がなされるようになることが目的  体制構築の経緯  障害者差別解消法施行に合わせて「明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例」を制定し、条例に基づく相談体制を構築  相談の実施体制   〇障害福祉課障害者施策担当:4名   〇障害者がよく相談に訪れる4機関でも障害者差別相談を受付  障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況   〇障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会:あっせん手続き、障害を理由とする差別を解消するために必要な施策を市長に表明、条例の施行状況検討・見直し、その他障害を理由とする差別を解消するために必要な事務  相談件数・内容(相談内容の整理軸を含む)   〇平成30年度:3件、令和元年度:18件、令和2年度:6件   〇相談内容の整理軸:相談窓口別、対応別、差別の類型別、事例が生じた場面別、相談者別  相談件数・内容の直近3年間の傾向   〇窓口開設初年度と比較し、減少傾向   〇本人が調整を望まない場合、主訴が別の相談で背景に差別が伺われるが、相談者が差別相談とは考えていない場合等、相手方との調整までに至らない案件が多い  相談の流れ(障害者から) (受付の方法・相談員)   @相談受付   A調整会議で事案担当者決定   B担当者による双方の事情確認   C調整会議で助言・調整案を検討   D担当者による助言・調整の実施   E合意が得られれば終結   F地域協議会(あっせん部会)があっせんを実施  相談の流れ(事業者から)(受付の方法・相談員)  障害者施策担当で受け付け、必要に応じて関係機関に協力を求めて対応  関係機関との連携(連携する内容を含む)  必要に応じて関係機関(相手方が事業者であれば、管轄する行政機関、加盟する業界の上部団体等)と連携して対応  アクセス向上方策・意思疎通支援の工夫(ICT活用を含む)   〇障害者団体等を通じた差別事例の収集、相談窓口の周知、ホームページ、パンフレット等での周知   〇合理的配慮の提供を支援する助成制度利用事業者へのアンケート実施   〇手話通訳、テキストデータや点字での情報提供、Web問い合わせ・電子メールによる相談対応、対話支援機器の利用  相談対応に係る人材の確保・育成   〇「障害を理由とした差別」に関わる案件を判断するスキル向上用研修を実施   〇差別相談の手引きを作成して相談員に周知  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇明石市障害者配慮条例の基本理念(第2条)に基づいて実施   〇差別をする人を非難することが目的ではなく、差別をした人、された人両者が話し合って、お互いに理解を深め、積極的に合理的配慮がなされるようになることが目的    事例の収集・共有の仕組  事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む)   〇事例の分類、事例の内容、対応内容等で整理   〇事例の収集先:所管部局、障害者差別解消支援地域協議会、明石市障害当事者等団体連絡協議会  事例の共有   〇事例の共有の際には個人情報等を加工し、詳細な内容が必要な場合は本人の同意を得てから共有    その他  障害者差別の解消に向けた相談体制の構築を進めるために必要なこと・課題   〇地域の障害者団体との連携により事業者への合理的配慮に関する助言や日頃の情報交換などができる関係作り   〇合理的配慮の提供が過重な負担であるかを判断するための基準や、公的な支援制度の充実   〇専門的な知識や地域のネットワーク    各自治体特記事項   【既存の複数の相談窓口の活用】   障害者配慮条例に基づき複数の相談窓口を設け、障害を理由とした差別に関連する相談を受付   【合理的配慮の支援】   合理的配慮の提供のための支援助成制度を運用    岡山県総社市  基本情報  人口 69,739人  世帯数 28,940世帯  社会資源の状況   〇基幹相談支援センター:委託1か所   〇指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所:8か所   〇権利擁護センター:委託1か所   〇障害者虐待防止センター:直営1か所    相談体制  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇「全国屈指の福祉先駆都市」を目指し、障がい者千五百人雇用事業を始め、多様な支援を展開   〇行政だけでなく、関係機関等との連携のもと、地域の実情を踏まえ、各機関が主体的に取組を推進  体制構築の経緯   福祉施策を通じて構築されていたつながりをベースに総社市地域自立支援協議会において相談体制構築の準備を遂行  相談の実施体制   〇保健福祉部福祉課:2名   〇その他各種センターがワンストップで対応できる体制を構築  障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況   〇障害者差別解消支援地域協議会:対応要領策定の諮問機関、差別解消の取組を円滑に行うための役割   〇総社市地域自立支援協議会:障害のある方が、総社市で安心して暮らせるよう関係者が話し合う場所、障害者施策を協議し、情報共有できる場所として設置  相談件数・内容(相談内容の整理軸を含む)   〇平成30年度:0件、令和元年度:0件、令和2年度:0件   〇差別解消支援地域協議会への直接の相談を件数として計上し、連携の他機関の支援の中において、相談が必要な案件は、情報共有等により相談につなげる  相談件数・内容の直近3年間の傾向   〇直近3年間の相談実績なし  相談の流れ(障害者から)(受付の方法・相談員)   〇基幹相談支援センター、障がい者千五百人雇用センター、権利擁護センターなどが支援を実施   〇相談案件がある場合は、協議会で集約し、他機関と連携のうえ情報収集を行い、支援方針の検討・事案の評価、基本的な事案への対応等を実施  相談の流れ(事業者から)(受付の方法・相談員)   〇基幹相談支援センター、障がい者千五百人雇用センターなどによる事業所訪問で情報交換を実施   〇相談案件がある場合は、協議会で集約し、他機関と連携のうえ情報収集を行い、支援方針の検討・事案の評価、基本的な事案への対応等を実施  関係機関との連携(連携する内容を含む)   〇障がい者千五百人雇用事業などの福祉施策を通じて、様々な機関が連携   〇当事者団体をはじめ、家族団体・事業所・支援団体と日ごろから関係構築し、相互連携  アクセス向上方策・意思疎通支援の工夫(ICT活用を含む)   〇障害者と関係機関、協議会の関係構築   〇事業者との日ごろからの訪問を通した関係構築   〇手話通訳者、要約筆記者の派遣や意思疎通のための関係機関との連携   〇Web会議での相談対応体制づくり  相談対応に係る人材の確保・育成   〇各機関に専門知識のある有資格者等を配置し、横の連携を取り合って対応   〇業務遂行に必要な研修、障害者差別解消法対応要領に伴う職員研修を受講  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   〇「全国屈指の福祉先駆都市」を目指し、障がい者千五百人雇用事業を始め、多様な支援を展開   〇行政だけでなく、関係機関等との連携のもと、地域の実情を踏まえ、各機関が主体的に取組を推進    事例の収集・共有の仕組  事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む)   特になし  事例の共有   特になし    その他  障害者差別の解消に向けた相談体制の構築を進めるために必要なこと・課題   〇日ごろから関係機関との連携を密にし、いつでも相談できる体制を構築   〇企業を定期的に訪問し、意見交換を行うことで差別相談の予防につなげている    各自治体特記事項   【ワンストップの相談】   複数の支援センターや障害者差別解消支援地域協議会が連携して対応できる体制づくり    福岡県北九州市  基本情報  人口 934,130人  世帯数 435,354世帯  社会資源の状況   〇基幹相談支援センター:委託1か所   〇指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所:106か所   〇権利擁護センター:委託1か所   〇障害者虐待防止センター:委託1か所    相談体制  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方   「差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」が行われた場合に、個別の事案ごとに「正当な理由」や「過重な負担」などの様々な要素を考慮し、民間事業者や行政機関と障害当事者の双方の意見を聞きながら公平・中立な立場で対応  体制構築の経緯   「障害により差別を受けた・いやな思いをした事例」等の調査の結果、約4割が「どこにも相談していない」という回答であり、障害者差別解消法の施行によりこれまで埋もれていた相談が多数寄せられる可能性があることから、専門相談員を配置し、障害者差別解消相談コーナーを開設  相談の実施体制   〇保健福祉局障害福祉部障害福祉企画課職員:3名(うち相談員1名)  障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況   北九州市障害者差別解消支援地域協議会:障害者差別に関する情報共有や、差別解消の取組のためのネットワーク構築   北九州市障害者差別解消委員会:市の相談対応で解決が困難な事案に関する調査審議、あっせん  相談件数・内容(相談内容の整理軸を含む)   〇平成30年度:103件、令和元年度:79件、令和2年度:54件   〇相談内容の整理軸:事例の内容別、事例の解決状況別  相談件数・内容の直近3年間の傾向   〇医療・福祉、行政などが多い   〇相談件数は年々減少   〇相談件数減少は、障害者差別解消法施行からの時間経過や、新型コロナウイルス感染症の影響の可能性あり  相談の流れ(障害者から)(受付の方法・相談員)   〇相談を受け付け、介入を求められた場合は調整活動を実施   〇係内で支援方針を検討し、調整活動や、他機関への連絡、調整等は相談員が対応  相談の流れ(事業者から)(受付の方法・相談員)   〇相談受付から対応まで相談員が実施  関係機関との連携(連携する内容を含む)   〇障害団体への技術的支援の相談   〇事例内容について障害者差別解消支援地域協議会で検討   〇相談内容に応じて保健所、ハローワーク等の適切な窓口を案内  アクセス向上方策・意思疎通支援の工夫(ICT活用を含む)   〇障害団体への案内、広報物、障害者週間啓発イベント、市ホームページへの掲載や研修・出前講演時に相談窓口を周知   〇電話、電子メール、FAXや対面相談に対応し、筆談対応や遠隔手話通訳体制を整備  相談対応に係る人材の確保・育成   〇障害福祉に関する実務経験がある有資格者を公募で採用   〇障害団体等と協議を行うことが、障害福祉に関する知識の習得に有効  障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  「差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」が行われた場合に、個別の事案ごとに「正当な理由」や「過重な負担」などの様々な要素を考慮し、民間事業者や行政機関と障害当事者の双方の意見を聞きながら公平・中立な立場で対応    事例の収集・共有の仕組  事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む)   〇事例の分類、事例の内容、障害の種別、事例が生じた場面、対応内容等で整理   〇事例の収集先:「障害者差別解消相談コーナー」での相談内容、合理的配慮の不提供事例等の情報提供  事例の共有  〇相談当事者や事業者が特定できないように加工したうえで、障害者差別解消支援地域協議会で共有    その他  障害者差別の解消に向けた相談体制の構築を進めるために必要なこと・課題 〇業務の専門性や特殊性により、公募では適当な人材を確保することが困難となる可能性あり   〇障害者団体や事業者の声を聞きながら検討していくことが重要    各自治体特記事項   【障害者差別解消支援地域協議会】   〇事業者も参加した北九州市障害者差別解消支援地域協議会を設置 p58   3.2 千葉県  3.2.1 自治体の基本情報  (1) 基本データ  人口 6,283,727人  世帯数 2,785,297世帯  面積 5,157.57?  障害福祉サービスの利用者数(実数)(令和3年4月) 集計なし  障害児給付費の利用者数(実数)(令和3年4月) 16,983人  障害者手帳所持者数(令和3年3月31日現在)  全体  身体障害者手帳 178,653人  療育手帳 45,439人  精神障害者保健福祉手帳 54,662人  うち65歳以上  身体障害者手帳 126,597人  療育手帳 集計なし  精神障害者保健福祉手帳 集計なし    (2) 地域の特徴(地域特性、産業等)  千葉県は、首都圏の東側に位置し、太平洋に突き出た半島となっている。三方を海に囲まれており、冬暖かく夏涼しい海洋性の温暖な気候である。石油・鉄鋼等の素材産業企業が多く集まる京葉臨海地域や、オフィス・商業・アミューズメント施設など複合的な機能を備える国際業務都市である幕張新都心、東葛テクノプラザなどの産業支援機関を有する東葛地域等、商業・工業バランスの取れた活動が活発に行われている。図表70に千葉県の障害保健福祉圏域を示す。 p59   図表70 千葉県の障害保健福祉圏域  千葉県は、障害保健福祉圏域として、16の圏域を設置している。内訳は、千葉、船橋、柏、習志野、市川、松戸、野田、印旛、香取、海匝、山武、長生、夷隅、安房、君津、市原の各圏域である。  出所)第七次千葉県障害者計画    (3) 社会資源の状況  基幹相談支援センター 直営9か所、委託15か所  指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所 市町村から障害者相談支援事業の委託を受けている事業所 63か所  市町村から障害者相談支援事業の委託を受けていない事業所 368か所  権利擁護センター 直営1か所  障害者虐待防止センター 直営47か所、委託7か所    3.2.2 障害者差別の解消に向けた相談体制  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  平成18年に障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例(以下、障害者条例)を制定し、障害のある人もない人も誰もがお互いの立場を尊重し合い、支え合いながら安心して暮らすことのできる社会を実現するという理念のもと、地域に根差した相談員が第三者的な立場から関係者への説明・助言・調整・紹介等を行うこととしている。 p60   (2) 相談体制構築の経緯  千葉県の障害者条例は、障害を理由とした差別の解消に関する全国初の条例であり、平成18年に成立、平成19年より施行された。本条例において相談体制の規定があるため、条例施行と同時に相談業務も開始した。    (3) 相談の実施体制  1) 行政の庁内体制  障害者条例は健康福祉部障害者福祉推進課が所管しており、担当職員は常勤の県職員3名(保健師1名・一般行政職2名)である。条例の施行開始時点では、社会福祉士2名、保健師1名、行政職4名の計7名の職員が配置されていたが、徐々に職員数が減少し、現在の体制となっている。なお、庁内の担当職員数が減少した要因の1つとして、相談件数が減少したことがある。また、以前は障害福祉課の職員として駐在していた広域専門指導員の所属を各健康福祉センター(保健所)及び障害者相談センターとし、相談体制の主体が本庁全体から出先機関に移行したことの影響も大きいと考えられる。    2) 相談員の配置状況  県内16の障害保健福祉圏域ごとに非常勤の相談員として広域専門指導員を1名ずつ、計16名を各保健所、各障害者相談センターに配置している。広域専門指導員は障害者条例に基づき設置されるものであり、担当圏域を構成する市町村長からの推薦と、地方自治法上の附属機関である障害のある人の相談に関する調整委員会の承認が必要となる。また、地域相談員として535名(令和3年3月1日時点)が、地域に根差した相談員として相談業務を担当している。地域相談員は身体・知的・その他(精神・福祉サービス・医療・商品サービス・労働者雇用・教育・建物及び公共交通機関・不動産)の分野に専門知識を有する者より選定しており、その中には、民生委員や人権擁護委員経験者等も含まれる。    広域専門指導員は、当初は本庁直属の職員として各保健所等に駐在する形であったが、勤怠管理の課題等があり、その後各保健所等が直接雇用する形となった。    3) 相談員の業務内容  【広域専門指導員】  障害を理由とする差別相談に関する助言や調整活動、個別訪問等による障害者条例及び障害者差別解消法の周知啓発や、地域相談員への助言・研修を行っている。広域専門指導員は各保健所や障害者相談センターに配置されており、そうした機関の職員と一緒に活動するケースが多い。また、地域相談員と連携して活動するケースもあり、原則として単独で活動することはない。    【地域相談員】  障害を理由とする差別相談に関する助言や調整活動を行っている。 p61   4) 障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況  千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会と障害者差別解消支援地域協議会は、構成メンバーの一部が重複することから、同時開催となっている。それぞれの詳細を以下に示す。    【千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会】  構成員 障害当事者、県議会議員、福祉・医療・雇用・教育・法律その他障害のある人に対する差別の解消について専門的な知識を有する者(18名)  目的 広域専門指導員及び地域相談員の委嘱についての意見具申、差別事案の解決のための助言・あっせん、勧告の実施についての審議等  開催頻度 年1〜2回程度  その他 −    【障害者差別解消支援地域協議会】  構成員 千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会の委員に国・地方公共団体等の委員(26名)  目的 具体的な対応事例の共有、広域にわたる事案等、市町村単独で対応が難しい事案のバックアップ等について協議  開催頻度 年1〜2回程度  その他 −    【障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議】  構成員 知事(座長)、障害当事者、障害関係団体や事業者(33名)  目的 個別の相談では解決が難しい、社会的慣習やルールが背景にある差別の問題について議論・周知する役割  開催頻度 年1回程度  その他  〇コミュニケーションに障害のある人への配慮として、「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」を策定(1回改訂)し、県庁ホームページにも掲載  〇車いすマークの駐車場の適正利用についても議論し、2021年7月にパーキング・パーミット制度が導入され、車いすマークの駐車場を利用する方に対する駐車許可証発行を実現  〇銀行窓口における視覚障害者の自署代筆の取組も導入され、その後全国に普及    5) 相談体制の全体像  千葉県では、行政(福祉施策所轄部署)の窓口を活用し、相談体制を構築している。相談体制の全体像を図表71に示す。 p62   図表71 相談体制の全体像  千葉県の相談体制は、地域相談員や地域相談員の指導・助言を実施する広域専門指導員と、知事、千葉県障害のある人の相談に対する調整委員会で構築されている。  相談者は、まず地域相談員に相談をする。なお、ここでの相談者は、障害のある人、保護者、関係者だけでなく、差別をしたとされる人も含まれる。相談者は、地域相談員からの説明・助言・調整を受け、必要に応じて地域相談員は、関係行政機関に対し、相談事実の通告や虐待の通報を行う。  相談者が知事に申し立てを行った場合、知事は広域専門指導員に申し立てに関わる調査指示を行い、広域専門指導員は任意の調査を実施する。その上で、知事は千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会に助言、あっせんを付託する。千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会は障害のある人、保護者、関係者や差別をしたとされる人に対し、助言やあっせんを行い、知事に対して是正勧告の進言をし、知事は差別をしたとされる人に対する勧告や、障害のある人、保護者、関係者への訴訟援助を行う。  出所)千葉県 令和元年度活動実績報告書    (4) 相談件数・内容  1) 直近3年間の相談件数の推移  直近3年間の相談件数の推移を以下に示す。  平成30年度 135件  令和元年度 153件  令和2年度 103件    2) 相談件数をカウントする際の軸  以下の項目に分けて相談件数のカウントを実施している。    収集先 障害者施策主管部局や主管部局等、障害者施策主管部局以外の部局(人権主管部局等)、地方公共団体の出先機関  差別の類型 不当な差別的取扱、合理的配慮の提供  事例の内容 性別、年代、種別、場面、相談者種類  事例情報の収集方法 対面、電話、電子メール、文書・郵送  事例の解決情報 解決、継続中、未解決  その他 −    3) 相談件数・内容の年次推移の傾向  令和元年度から令和2年度にかけての相談件数の減少は、新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛が要因の1つではないかと考えられる。令和2年度の相談において p63 は、精神障害の方からの相談が最も多く約3割を占め、次いで、視覚障害、肢体不自由の順となっている。精神障害は、毎年相談件数の約3割を占めており、最も多い傾向にある。事業者からの相談もあるが、現状は少ない。差別解消法の改正により、民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されていくことになるため、今後は相談件数が増えていくものと考えられる。  相談内容の分類では、令和2年度において最も多かったのは福祉サービスに関する差別相談であり、毎年多い傾向にある。    4) 未解決となった相談事案の件数及びその主な理由  平成19年から令和2年度までに2,432件の相談を受け、239件(9.8%)が不調となっている。費用面の問題や人員配置の難しさ等、様々な理由が挙げられる。相談者の求める合理的配慮が相手方の過重な負担等を理由に行われなかった場合、お互いの状況を理解し合えるように調整を試みるが、相談者から理解を得られなかったこと等の事例がある。不調案件について、国や所轄省庁等への報告・相談等は実施していない。    (5) 障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  1) 障害者からの相談  以下の段階に分けて相談対応を実施している。  @地域相談員及び広域専門指導員が相談受付・内容の把握  Aケース検討会議を開催して取組方針の検討  B双方からの事情を確認(相談者からの合意の上で実施)  C対応方針を検討し、助言・調整案の提案  D双方に対し、助言・調整  E合意、合意が困難な場合は調整委員会へ助言・あっせんの申し立て  F活動結果の評価    Aケース検討会議の開催 やD助言・調整 を行う際は、必要に応じて関係機関(市町村や中核地域生活支援センター※等)が同席する場合がある。  令和元年度の相談件数(97件)について相談先の内訳を見ると、広域専門指導員が55件、県障害者福祉推進課が16件、保健所が11件、市町村が7件、県の障害者相談支援センターが2件、中核地域生活支援センターが2件、地域相談員が2件、その他2件となっており、地域相談員への相談件数は少ない。現状では、県庁等が受け付けた相談について、広域専門指導員が適任の地域相談員に協力を依頼して一緒に活動していく形になっている。調整委員会への助言・あっせんの申し立てが行われたケースは、平成19年7月〜現在までで8件である。  ※中核地域生活支援センター:児童、高齢者、障害のある人といった対象者種別にとらわれず、福祉全般にわたる相談に365日、24時間体制で応じ、速やかに適切な機関への連絡・調整などの必要な活動を行う。千葉県独自の取組として、健康福祉センター(保健所)の所 p64 管区域ごとに設置している。    2) 事業者からの相談  以下の段階に分けて相談対応を実施している。    @地域相談員及び広域専門指導員が相談受付・内容の把握  Aケース検討会議を開催して取組方針の検討  B双方からの事情を確認(相談者からの合意の上で実施)  C対応方針を検討し、助言・調整案の提案  D双方に対し、助言・調整  E合意、合意が困難な場合は調整委員会へ助言・あっせんの申し立て  F活動結果の評価    差別解消法や県条例に係る事業者の認知の状況については、具体的な調査を行っていないため詳細は把握していないが、十分とは言えないと感じる。事業者への周知啓発・研修等については、具体的な検討はこれからであるが、ガイドラインや対応要領の周知などについては更に情報発信していきたい。    (6) 関係機関との連携  1) 相談体制の構築・運用における関係機関との連携状況  障害者差別に関する相談の内容に応じて、県内市町村、中核地域生活支援センター、障害者就業・生活支援センター等と連携している。相談者や関係者が様々な機関にすでに相談しているケースでは複数の機関と連絡を取り合いながら、役割分担等を話し合い、調整活動等を進めていく。連携に当たっては、普段から広域専門指導員が各種会議等に積極的に参加するとともに、適宜連絡を取り合い対応する。  広域専門指導員の人選に際して市町村長の推薦を条件としているため、市町村が人選に関わっている。市町村が関係する案件については、相談者の同意を得た上で、市町村と協力して対応している。広域専門指導員が市町村の地域支援協議会に同席するなどして、日常的に市町村との関係を深めている。    (7) 相談機関へのアクセス向上方策  1) 相談窓口へのアクセス向上方策(障害者向け)  相談窓口を記載したパンフレット等に音声コードを添付し、視覚障害のある人でも相談窓口や連絡先が分かるようにしている。地域相談員については、県民への周知があまり進んでおらず、相談者から地域相談員への相談は少ない傾向にある。相談者が相談しやすい環境づくりのために地域相談員の活用方法や周知について検討していく必要がある。 p65   2) 相談窓口へのアクセス向上方策(事業者向け)  広域専門指導員が県内の事業所を訪問し、相談先が記載された広報媒体(パンフレットやチラシ)の配布、法律や条例の概要の説明等を行っている。現在は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から事業所への訪問は控え、広報媒体(パンフレットやチラシ)を郵送することで相談先等の周知啓発を図っている。    3) 意思疎通支援に関する工夫、課題  障害のある人と情報のやりとりをする際にどのような配慮を行うべきか示した「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」を策定し、活用することで障害のある人それぞれの特性に応じた配慮を実践している。  新型コロナウイルス感染拡大防止と日常生活の両立のため、「新しい生活様式」の実践(マスクの着用等)を県民や事業者に依頼しているが、障害特性によりマスクを着用しているとコミュニケーションがとりづらくなること(例:聴覚障害を持つ人は相手の口の動きを見て情報を把握するため、マスクで口の動きが見えなくなるとコミュニケーションが困難)や身体的距離の確保がうまくできない(例:視覚障害を持つ人はスーパーマーケットのレジに並ぶ際に前後の距離を認識することが困難)、知的障害を持つ人はマスクの着用が難しい、など、生活のしづらさや不安を抱えているとの声がある。そういった方たちの生きづらさや不安を解消するための、感染対策とコミュニケーション手段の確保を両立させる方法については課題である。    4) ICT活用に関する工夫、課題  障害者条例相談専用のメールアドレスがあり、電子メールでも相談を受け付けている。関係機関とケース検討会議を行う際、オンライン会議の活用を検討していくことが課題である。    (8) 相談対応に係る人材の確保・育成  1) 相談対応に係る人材の確保・育成の取組  広域専門指導員等連絡調整会議を毎月開催しており、実際にあった相談事例の対応等について検討している。新任の広域専門指導員に対する研修は行っていないが、条例や制度の理解に関する新任研修等は今後必要となる可能性がある。広域専門指導員に求められる資質としては、障害者の特性を理解していること、障害者・事業者双方との調整能力があること、が挙げられる。双方の争いごとを調停するため、双方から信頼される人間性も求められる。  地域相談員への研修は年1回行っており、各圏域の広域専門指導員が企画・運営を行っている。内容は毎年広域専門指導員が考え、テーマ等によっては外部講師を依頼して実施する。   p66  2) 相談対応に係る人材の確保・育成の課題  広域専門指導員は資格等が必須ではないものの、業務内容を鑑み、社会福祉士や精神保健福祉士等の資格を所持していることが望ましい。しかし、広域専門指導員が退職等の理由で欠員となった際、地域によってはそのような資格を持つ後任の広域専門指導員を見つけることが難しい場合がある。また、最近では対応に苦慮する困難事例が増加傾向であることから、そういった事例に対応できる人材を育成していくことが課題である。    (9) 障害者差別の解消に向けた相談体制の構築  1) 相談体制の構築を円滑に進めるために必要なこと  障害者差別解消法が制定され、市町村にも相談窓口が設置されたことから必要に応じた相談事案の共有や関係機関を含めた相談体制のネットワークづくりが必要である。体制の構築を円滑に進めるためには、障害者差別解消支援地域協議会等での連携が必要である。また、障害のある人に対する差別の解消について理解を促すための周知活動を通し、相談窓口を周知することが必要である。    2) 相談体制の構築を進める上での課題、その他自由意見  相談体制を構築するために、県と市町村の障害者差別解消支援地域協議会の活性化が必要だが、市町村によって規模や相談件数等が異なり、未設置となっている地域や差別相談がない地域との関わり方が課題である。    国に対する要望としては、法改正に伴い民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されたため、合理的配慮の具体例を示して頂けるとよい。    3.2.3 事例の収集・共有の仕組  (1) 事例の収集の現状  1) 収集・共有する事例の選定  相談者から差別を受けたという相談すべてを収集している。共有する際は、事例を共有することについて同意書を記載いただき、同意が取れた事案について共有している。    2) 収集している事例において取得している情報  収集している事例において、取得している情報を以下に示す。    事例の分類 不当な差別的取扱い、合理的配慮の提供  事例の内容 性別、年代、種別*1、場面*2、内容、経緯、背景、相談者種類  *1障害の種別 視覚障害、聴覚・言語障害、盲ろう、肢体不自由、知的障害、精神障害、発達障害、内部障害、難病に起因する障害、重症心身障害  *2事例が生じた場面 行政・公共施設、教育、医療・福祉、雇用・就業、交通・移動  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の収集方法 対面、電話、電子メール、紙文書・郵送  その他 記載なし p67   3) 事例の収集先  市町村や教育庁、県警、広域専門指導員を配置している保健所、障害者相談センターから事例を収集している。    (2) 事例の共有の現状  1) 共有している事例における共有情報  共有している事例における共有情報を以下に示す。    事例の分類 不当な差別的取扱い、合理的配慮の提供  事例の内容 性別、年代、種別*1、場面*2、内容、経緯、背景、相談者種類  *1障害の種別 視覚障害、聴覚・言語障害、盲ろう、肢体不自由、知的障害、精神障害、発達障害、内部障害、難病に起因する障害、重症心身障害  *2事例が生じた場面 行政・公共施設、教育、医療・福祉、雇用・就業、交通・移動  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の収集方法 文書ファイル、電話、電子メール、紙文書・郵送  その他 記載なし    2) 事例の共有先  事例の共有先は、各市町村や障害者が関わりあう部署、障害者差別解消支援地域協議会や保健所、障害者相談センター等である。各市町村には、広域専門指導員活動報告書を送付し、事例の共有をしている。また、障害者に関わりがある部署、健康福祉部、商工労働部、教育庁に広域専門指導員活動報告書を送付し、事例の共有を図っている。  障害者差別解消支援地域協議会では、広域専門指導員活動報告書に記載されている事例の紹介をするとともに、委員で共有したい事例について選定し、共有している。なお、保健所、障害者相談センターに広域専門指導員を配置しているため、相談事案全てについて報告を受け、共有している。現在は国との事例の共有が行えていないが、今後要請があれば協力していきたい。    3) 収集した事例の共有にあたっての考え方・工夫  個人を特定されないよう配慮することを前提として事例を共有することについて同意書を記載いただき、同意を得た事例についてのみ共有している。事例の共有にあたり、今後の相談活動の参考になるよう、相談分野、類似事例の有無、具体的対応等調整活動の妥 p68 当性などを勘案し、共有事例として選定している。    3.2.4 障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組  広域専門指導員が県内にある事業所や学校等の施設を訪問し、広報媒体(チラシやパンフレット等)を用いて法律や条例の概要を説明している。最近では、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から事業所等への訪問は控え、郵送などの方法で広報媒体を送付して周知啓発を図っている。また、県内の商業施設において、相談先などが記載されたカード入りポケットティッシュを来場者向けに配布している。県の職員(新規採用、新任管理職)に向けては、研修を毎年実施し、法律や条例の概要について説明を行っている。 p69   3.3 長野県上小圏域  3.3.1 自治体の基本情報  (1) 基本データ  人口 155,223人  世帯数 68,446世帯  面積 552?  障害福祉サービスの利用者数(実数)(令和3年4月) 1,374人  障害児給付費の利用者数(実数)(令和3年4月) 286人  障害者手帳所持者数(令和3年4月1日現在)  全体  身体障害者手帳 6,156人  療育手帳 1,677人  精神障害者保健福祉手帳 1,969人  うち65歳以上  身体障害者手帳 4,694人  療育手帳 157人  精神障害者保健福祉手帳 400人    (2) 地域の特徴(地域特性、産業等)  水と緑が豊かであり、高い技術力を持つ製造業が盛んな地域である。温泉や観光地も点在しており、「信州の鎌倉」と呼ばれている。塩田平は昨年6月に「レイラインがつなぐ「太陽と大地の聖地」〜龍と生きるまち」として日本遺産として登録された。図表72に、上小圏域の地図を示す。  図表72 上小圏域の地図  長野県上小圏域は、長野県の北東部に位置し、上田市、東御市、青木村、長和町、坂城町で構成される圏域である。  出所)上田地域広域連合,「広域連合の紹介」, http://www.area.ueda.nagano.jp/?page_id=78, (参照:2021/9/22)    (3) 社会資源の状況  基幹相談支援センター 直営0か所、委託1か所(委託先:上小圏域基幹相談支援センター)  指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所 市町村から障害者相談支援事業の委託を受けている事業所 27か所  市町村から障害者相談支援事業の委託を受けていない事業所 26か所  権利擁護センター 権利擁護センターの機能を持つ機関:直営4か所 (上田市・東御市・長和町・青木村の障害福祉担当課)  障害者虐待防止センター 直営1か所、委託1か所(委託先:上小圏域基幹相談支援センター(窓口)) p70   3.3.2 障害者差別の解消に向けた相談体制  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  法律施行に向けては、障害者理解の周知・啓発が重要であることを協議会で共有し、パンフレットの作成と全戸配布、コンビニや医療機関等への周知活動展開を行っている。障害者虐待防止センターとして、上田市障がい者支援課の窓口において相談対応を行っていることから、市民からの差別解消に係る相談窓口も同様に上田市障がい者支援課とした。  図表73 上小圏域 パンフレット(一部抜粋)  上小圏域では「障がいを知り、誰もが暮らしやすい地域を作ろう」と題したパンフレットを作成している。パンフレットでは、障害のある人、社会的障壁を定義したうえで、障害のある人の生きにくさを知り、差別的な取り扱いをせず、障壁を取り除く配慮を呼び掛けている。また、障害者差別解消法についても説明している。また、具体的な障害の症状や困りごと、配慮やサポートのポイントを紹介している。  出所)上小圏域 圏域版リーフレット   p71  (2) 相談体制構築の経緯  障害者差別解消支援地域協議会において、障害者差別解消法施行に向けた相談体制構築を重要なメインテーマとして事業計画に盛り込んだことから、具体的議論を開始した。法施行1年前より、障害者差別解消支援地域協議会内に設置した障がい者の権利擁護委員会の議題に相談体制構築を据えた。障がい者の権利擁護委員会では、障害当事者と支援機関などの合同会議を重ね、共通パンフレットを作成し、相談窓口も計画化した。圏域4市町村には相談窓口を設置し、紛争解決の仕組みを作ったうえで、相談事案の協議・検討・共有の場として、障害者差別解消支援地域協議会の権利擁護委員会が設置されている。    (3) 相談の実施体制  1) 行政の庁内体制  上田市障がい者支援課(本庁・丸子自治C・真田自治C・武石自治C)が所管し、担当職員として常勤(27名、このうち社会福祉士2名、精神保健福祉士1名)・非常勤(8名)、社会福祉士(2名)、精神保健福祉士(1名)、社会福祉主事(23名)が業務にあたっている。    2) 相談員の配置状況  障害者差別解消に関する特別な職員の配置はなく、行政の庁内体制に記載された35名が対応している。また、市のケースワーカー及び委託先である基幹相談支援センターの相談支援専門員(10名:社会福祉士・精神保健福祉士・言語聴覚士・保育士など)も相談対応にあたっている。    3) 相談員の業務内容  【長野県】  長野県健康福祉部障がい者支援課内に、広域支援相談員として非常勤の専門員を1名配置し、長野県内の相談受付及び市町村障害福祉課との連携などによる解決に向けた取組を行っている。    【上田市】  相談受付・解決に向けた取組・必要な場合の紛争解決を行っている。市町村直営の紛争解決の仕組みと、それを共有し協議する障害者の自立支援協議会の図を図表74に示す。 p72  図表74 支援フロー図  上小圏域での支援フローを示す。  上小圏域では、不当な差別や不利益な取り扱いに関する相談、行政相談や生活困窮者相談、人権相談、法律相談、消費生活相談、家庭相談などの多様な相談を市町村窓口で一元的に受け付ける。この際、構成機関への相談も市町村窓口へ一元化している。ここでの構成機関とは、法務局、公共職業安定所、渉外担当、健康推進、消費生活、教育、当事者、家族、PTA、相談支援、事業者、民児協、医療、商工、交通、弁護士、人権擁護、学識を指す。  相談を受けた市町村窓口は、相談窓口のあっせんや相談窓口の紹介、紛争解決に向けた調整を行い、障害者差別解消法第12条、22条に基づき、主務大臣、公安委員会、県知事、市町村長によるチームでの対応を行い、助言や指導、勧告を行う。  実務者会議では、以下4つについて取組を実施する。  @各市町村の実態把握、情報収集、困難案件の協議  A困難案件の協議  B紛争の防止、解決に向けた協議、それぞれの機関の情報交換  C取組の共有、分析、研修啓発、発信  代表者会議では、以下3つについて取組を実施する。  @運営方針の検討  A政策提言、研修啓発の企画決定  B関係機関への情報の提供、意見の表明、協力要請  なお、代表者会議は、構成機関と相談・連携・参画しながら進められる。  在宅福祉サービス連絡会やケアマネージメント連絡会、施設連絡協議会、主任者会やケア会議から寄せられたニーズや課題、困難ケースへの対応として、療育部会、権利擁護部会、発達専門部会、就労専門部会、地域生活移行部会、人材育成専門部会、重心ワーキングがある。これらを束ねる事務局会は、総合センター専門部会担当・事務局員により構成される。  事務局会の上部組織として運営委員会があり、市町村担当係長・保健福祉事務所係長、総合支援センター等により構成される。運営委員会では、各専門部会の内容検討及び集約/本会運営内容の検討が行われる。さらに上部組織として設置されている広域設置の全体会(本会)は、市町村障がい福祉課長、関係団体、当事者団体、総合支援センター等により構成される。  出所)2017年度 障がい者自立支援協議会 本会資料    4) 障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況  【上小圏域 障がい者自立支援協議会 本会】  長野県は、圏域ごとに自立支援協議会を設置する特徴がある。上小圏域の障がい者自立支援協議会では、年度末に圏域内の相談案件の報告が行われている。平成24年度の障害者虐待防止法の施行に伴って、虐待防止のフローを圏域の中で作成した。そのフローを活用する形で、市町村窓口と基幹相談支援センターで相談対応をしている。具体的な相談対応は市町村それぞれの状況に応じて行われるが、圏域の権利擁護委員会に事案を上げて検証を行うだけでなく、年3回実施される本会(医療・教育・福祉・就労等の分野の代表計60名ほど)で状況報告を行っている。上小圏域 障がい者自立支援協議会 本会の詳細を以下に示す。    構成員 上田市立長野大学教授(座長)、市町村課長・医療機関・特別支援・校長会・就労(労働局)・支援関係機関代表・当事者会市町村代表・県保健福祉事務所・基幹相談支援センターなど(計50名程度)  目的 市町村相談実績及び相談内容・対応内容の報告と検証を実施。本会(差別解消協議会)に報告し周知を図っている  開催頻度 年3回(5月、10月、3月)  その他 障害者差別解消支援地域協議会機能を兼ねる p73   5) 相談体制の全体像  障害者総合支援法の基幹相談支援センターを活用しており、基幹機能が全ての項目と連動した機能となっている。図表75に組織体制図を示す。就労関係としてハローワークも自立支援協議会に参画しているが、事業者団体の参画は今後の課題である。運営委員会はほぼ毎月開催されているほか、市町村の担当係長と基幹相談支援センター事務局が集まる会議は月数回開催されている。そのため、関係者が頻繁に話し合いを重ねる体制が構築されている。  図表75 相談体制図  上小圏域障がい者自立支援協議会は3層構造となっている。  第1層として、本会と称する全体会・代表者会議と称する障害者差別解消地域協議会がある。この層は広域設置に関するものであり、上小圏域にもそれぞれ設置されている。なお、これらの組織は市町村福祉課長・関係団体・当事者団体・障害者総合支援センター等により構成される。  本会は年に3回開催される。  第2層として運営委員会・権利擁護委員会がある。これらは市町村福祉係長と上田保健福祉事務所係長、基幹相談支援センターや就業・生活支援センターといった障害者総合支援センター等で構成される。  ここでは、各専門部会の内容検討及び集約や本会運営内容の検討が行われる。  運営委員会は適時開催であり、第6期障害福祉計画推進プロジェクトとして、地域生活支援拠点整備等が行われている。設置されている委員会としては、緊急ショートステイ運営委員会、相談支援体制整備検討委員会、医療的ケア児等支援連携推進委員会、地域包括ケアシステム検討委員会がある。  第3層として事務局会議があり、障害者総合支援センター専門部会担当・事務局員で構成される。  事務局会議の専門部会として、療育・発達専門部会、地域生活移行専門部会、就労支援専門部会、生活支援専門部会、人材育成専門部会がある。  事務局会議は適時開催である。  なお、ニーズ・課題・困難ケース等は、在宅福祉サービス連絡会、ケア会議、施設連絡協議会、ケアマネジメント連絡会が障害者自立支援協議会にあげる。    出所)2021年度開催 障がい者自立支援協議会 運営委員会本会報告資料  圏域内市町村の福祉係長が5つの専門部会の部会長を担っている。事務局は基幹相談支援センターが担当しており、例えば就労支援部会の事務局には障害者就業・生活支援センターも参画している。就労支援部会の取組では、ハローワークとも連携している。そのため、就労している障害者への対応については、就労支援専門部会において具体的な議論が行われるようになっている。また、発達障害については療育・発達専門部会で議論されるようになっている。それぞれの部会長と基幹相談支援センター事務局員は、日常的にコミュニケーションをとっており、月1回開催される事務局会議では、本会内で差別解消地域協議会機能として、状況報告・検証を行っている。ただし、いずれの部会も合理的配慮や差別解消に特化した議論は行わないため、特化した組織を立ち上げる必要性を感じている。    (4) 相談件数・内容  1) 直近3年間の相談件数の推移  平成30年度 1件  令和元年度 3件  令和2年度 2件 p74  2) 相談件数をカウントする際の軸  以下の項目に分けて相談件数のカウントを実施している。  収集先 −  差別の類型 不当な差別的取扱、合理的配慮の提供  事例の内容 障害種別、相談者の状況  事例情報の収集方法 −  事例の解決情報 −  その他 −    3) 相談件数・内容の年次推移の傾向  現段階では相談件数の年次推移分析には至っていない。不当な差別的取扱いに関する相談については、一般市民において障害者や盲導犬に対する理解が十分でないがゆえに大変失礼な、差別的な対応をされた、という内容の相談が主であった。合理的配慮に関する相談については、当事者及び当事者の家族から、一般市民・社会に対する合理的配慮への働きかけの訴えが主であった。    4) 未解決となった相談事案の件数及びその主な理由  基本的に、相談を受けた事案については解決に至っており、相談後に相手方に丁寧な説明を行うことで理解を求める対応をすることで終結している。    (5) 障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  1) 障害者からの相談  以下の段階に分けて相談対応を実施している。なお、相談者が一般の場合・自治体の場合ともに対応は共通である。    @行政相談で相談を受け付け  A管理職(上司)報告・課内検討  B相談者及び対応者へのアクセスと事実確認  C解決に向けた対応者への説明と合意  D相談者に回答  過去の事例においては、相談対応の職員が該当の公共機関に出向いて、合理的配慮の取組の徹底を依頼し、2か月後に確認も実施した。    2) 事業者からの相談  以下の段階に分けて相談対応を実施している。    @行政相談で相談を受け付け  A管理職(上司)報告・課内検討  B相談者及び対応者へのアクセスと事実確認  C解決に向けた対応者への説明と合意  D相談者に回答 p75   (6) 関係機関との連携  1) 相談体制の構築・運用における関係機関との連携状況  障害者差別に関する学びの機会も少なく、自己流的な発想で捉えている事業所も多いため、管理者を含めた障害者差別解消法の理解及び障害特性を含めた障害者理解の浸透が課題と考える。よって、相談案件が出た際には丁寧なコミュニケーションを取り、支援会議等に基幹相談支援センターも同席して内容の把握と解決方法を検討することとしている。  県との連携については、障害者の権利擁護を考える委員会を全ての圏域で設置し、圏域ごとの権利擁護委員会が県の自立支援協議会に参画して議論する形となっており、差別解消に関する情報共有や検証も共同で実施している。ただし、全ての圏域で差別解消地域協議会の組織が設置されているわけではない点が課題である。県は平成16年から各圏域に相談窓口の体制を整備し、また、自立支援協議会も圏域ごとに設置しており、圏域全体で一つの方向を目指している。    (7) 相談機関へのアクセス向上方策  1) 相談窓口へのアクセス向上方策(障害者向け)  相談の入口として、電話相談窓口を明確化し、パンフレットおよび市のHP等で周知している。相談窓口の開設時間は、障がい者支援課の窓口受付時間と同様とし、必要に応じて相談のアウトリーチも実施している。平成18年の市町村合併以降は、本庁以外の身近な自治センターでも相談受付が出来る体制を取っている。新型コロナウイルス感染症対応での特例的な対応は現在行っていない。    2) 相談窓口へのアクセス向上方策(事業者向け)  相談の入口として、電話相談窓口を明確化し、パンフレットおよび市のHP等で周知している。相談窓口の開設時間は、障がい者支援課の窓口受付時間と同様とし、必要に応じて相談のアウトリーチも実施している。平成18年の市町村合併以降は、本庁以外の身近な自治センターでも相談受付が出来る体制を取っている。新型コロナウイルス感染症対応での特例的な対応として、必要に応じてオンライン会議での相談を受け付けている。    3) 意思疎通支援に関する工夫、課題  上田市において手話言語・情報コミュニケーション条例を制定している。この条例に基づき、相談窓口における意思疎通支援については、市町村窓口に手話通訳士を配置しているほか、基幹相談支援センターにも手話通訳士の相談支援専門員を配置しており、電子メールやSNSでの相談対応や、コミュニケーション支援アプリ・遠隔手話通訳システムを p76 導入するなど、IT機器の活用にも取り組んでいる。また、筆談への対応、障害特性に配慮した説明資料(点字・点訳の広報など)の活用などの対応を実施している。一方で、突然の来所相談では、即時に対応の体制が整わない場合がある点が課題である。    4) ICT活用に関する工夫、課題  一部の基幹相談支援センターにおいて、メール相談・SNSでの相談・TV電話・オンライン会議を活用している。一方で、当事者が活用できるかという点や、行政の受信方法や庁舎内全体のセキュリティは課題である。    (8) 相談対応に係る人材の確保・育成  1) 相談対応に係る人材の確保・育成の取組  毎年度初めに、障がい者虐待防止研修とともに、行政担当者と基幹相談支援センター合同研修会を夜間に企画開催している。    2) 相談対応に係る人材の確保・育成の課題  行政担当者は異動により経験値の高い人材が継続して相談対応を担うことができないため、基幹相談支援センターとの連動や研修会の継続を図っている。権利擁護委員会を開催する中で、職員向けに虐待防止の研修は行っているが、差別解消についての研修も毎年開催できるとよい。差別解消のマニュアルはあるが、職員ごとに認識にばらつきがあるため、国から差別解消のマニュアルが示されれば活用していきたい。    (9) 障害者差別の解消に向けた相談体制の構築  1) 相談体制の構築を円滑に進めるために必要なこと  障害者の権利擁護相談支援についての担当者レベルの研修機会づくりが必要である。    2) 相談体制の構築を進める上での課題、その他自由意見  市町村の窓口と基幹相談支援センターだけでは全ての相談をすくい上げることは難しいため、相談窓口は今後さらに増やしていく必要がある。相談体制の構築にあたり、一定の質の担保がとれる相談体制モデルがあれば目標に向かいやすい。障害者差別の予防的な取組を行う上では、自立支援協議会の様々な専門部会で周知活動や勉強会が開催されている。しかし、障害者への理解は子どもの時期から行っていく必要があるため、教育カリキュラムに組み込んでいくことが重要である。 p77   3.3.3 事例の収集・共有の仕組  (1) 事例の収集の現状  1) 収集・共有する事例の選定  圏域の自立支援協議会への差別解消相談の報告義務を設け、かつ対応に関する検証の機会を事務局で毎年継続している。    2) 収集している事例において取得している情報  以下に事例の収集の際に取得している情報と、収集のための報告書を示す。    事例の分類 不当な差別的扱い、合理的配慮の不提供  事例の内容自由記述形式で記載(含む種別*1、場面*2)  *1障害の種別 視覚障害、聴覚障害、盲ろう、肢体不自由、知的障害、発達障害、難病、その他  *2事例が生じた場面 自由記述形式で記載  対応内容等 自由記述形式で記載  事例の収集方法 −  その他 − p78  図表76 障害を理由とする差別に関する報告(報告書)  障害を理由とする差別の禁止に関する報告書では、相談を受けた市町村名、相談者の障害種別、相談者の状況、相談内容、相談の対応状況を記載する。  相談者の障がい種別の記載例としては、視覚障がい、聴覚障害、盲ろう、肢体不自由、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病、その他が挙げられている。    出所)2018年度 障がい者自立支援協議会 権利擁護委員会    3) 事例の収集先  事例の収集先は、各市町村の障害者支援課や権利擁護委員会である。    (2) 事例の共有の現状  1) 共有している事例における共有情報  以下に事例の収集の際に取得している情報と、集約のための報告書を示す。    事例の分類 不当な差別的扱い、合理的配慮の不提供  事例の内容 自由記述形式で記載(含む種別*1、場面*2)  *1障害の種別 視覚障害、聴覚障害、盲ろう、肢体不自由、知的障害、発達障害、難病、その他  *2事例が生じた場面 自由記述形式で記載  対応内容等 自由記述形式で記載  事例の収集方法 直営相談窓口において、市町村内での事例を集約し、権利擁護委員会へ書面提出・共有後回収  その他 事例収集の際には、長野県権利擁護センターの専門職のオンライン会議同席等の対応をする場合がある   p79  図表77 障害を理由とする差別に関する報告(集約)  障害を理由とする差別の禁止に関する報告書の集約版では、報告書に記載された事例の件数と、各項目の集計結果を記載するための枠が設定されている。  出所)2018年度 障がい者自立支援協議会(差別解消地域協議会) 本会    2) 事例の共有先  事例は、障害者差別解消支援地域協議会の際に、個人情報は保護した形で、協議会資料として内容を含めた報告を行い、意見交換をしている。    3) 収集した事例の共有にあたっての考え方・工夫  事例の加工は行っていない。報告書へ記載をする際に担当者主観が入る可能性があることから、圏域の協議会の委員会内で共有し、概況の説明や対応検討の振り返りを行った上での資料のため、一部は加筆や修正が入った資料となっている。 p80   3.3.4 障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組  上小圏域のパンフレットは、内閣府から障害者差別解消に係るパンフレットが出された際に作成したものである。当事者団体が協議会の権利擁護委員会に参画し、見える障害・見えない障害がある中で、地域の中でしっかりと合理的配慮が図られるように、障害に対する理解を深める趣旨で作成した。  法施行に際して上田市ではパンフレットの全戸配布や商工会議所等による事業所配布等を行った。また、地域の子どもたちの理解を深めていくために、小中学校において授業カリキュラムの中に権利擁護委員会のイベント、地域のイベント等、障害者理解を深めていくための内容を組み込むようにしている。   p81  3.4 兵庫県明石市  3.4.1 自治体の基本情報  (1) 基本データ  人口 299,623人  世帯数 130,352世帯  面積 49.42?  障害福祉サービスの利用者数(実数)(令和3年4月) 2,457人  障害児給付費の利用者数(実数)(令和3年4月) 1,319人  障害者手帳所持者数(令和3年3月31日現在)  全体  身体障害者手帳 11,213人  療育手帳 3,157人  精神障害者保健福祉手帳 2,873人  うち65歳以上  身体障害者手帳 8,234人  療育手帳 118人  精神障害者保健福祉手帳 集計なし    (2) 地域の特徴(地域特性、産業等)  明石市は、東経135度の日本標準時子午線上に位置しており、瀬戸内海に面し、明石海峡をはさんで淡路島を眼前に臨むことができる。気候は温暖で、古くは万葉歌人柿本人麻呂によって多くの歌が詠まれた風光明媚な地である。さらに、阪神都市圏と播磨臨海地域、そして海を隔てて淡路・四国と結ぶ位置にあり、海陸交通のうえで重要な拠点となっている。  市の東と北は神戸市と接し、西は加古川市、稲美町、播磨町と接している。現在、市の面積は49.42?、周囲は60.4kmです。最長距離は、東西15.6km(海岸線は15.9km)、南北で9.4kmあり、東西に細長いまちを形成している。図表78に明石市の地図を示す。  図表78 明石市の地図  兵庫県明石市の地図を示す。明石市は兵庫県南部に位置し、瀬戸内海に面しており、対岸には淡路島がある。  出所)明石市作成 p82   (3) 社会資源の状況  基幹相談支援センター 委託1か所(委託先:明石市社会福祉協議会)  指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所 市町村から障害者相談支援事業の委託を受けている事業所 27か所  市町村から障害者相談支援事業の委託を受けていない事業所 0か所  権利擁護センター 委託1か所(委託先:明石市社会福祉協議会)※後見支援センター  障害者虐待防止センター 委託1か所(委託先:明石市社会福祉協議会)    3.4.2 障害者差別の解消に向けた相談体制  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  明石市障害者配慮条例の基本理念(第2条)に基づいて実施している。なお、差別をする人を非難することが目的ではなく、差別をした人、された人両者が話し合って、お互いに理解を深め、積極的に合理的配慮がなされるようになることが目的である。明石市障害者配慮条例の基本理念(第2条)を以下に示す。    明石市障害者配慮条例の基本理念(第2条)  ・障害を理由とする差別を解消するに当たっては、障害のある人とない人との権利の平等が、最大限尊重されなければならない。  ・共生社会の実現は、障害を、障害のある人だけの問題としてではなく、障害のない人も含めたすべての人の問題として認識し、相互の違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重することを基本として行われなければならない。  ・障害を理由とする差別の解消は、差別する側とされる側がお互いを一方的に非難することにより行われるべきものではなく、ともに協力し合うことによって実現しなければならない。  ・合理的配慮の提供は、障害のある人が、障害のない人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを基本として行われなければならない。    (2) 相談体制構築の経緯  平成28年4月の障害者差別解消法施行に合わせて「明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例」(通称「障害者配慮条例」)を制定し、 p83 本条例(第11条)に基づき相談体制を構築した。    (3) 相談の実施体制  1) 行政の庁内体制  福祉局生活支援室障害福祉課障害者施策担当が担当しており、担当職員数は4名である。    2) 相談員の配置状況  相談業務は主に障害福祉課障害者施策担当4名(直営、常勤、兼務)で行っている。知識・経験や資格要件等はないが、現在、手話通訳士2名、社会福祉士1名が配置されている。加えて障害者がよく相談に訪れる4機関(基幹相談支援センター、発達支援センター、障害福祉課、地域総合支援センター)で、生活相談等の中で障害者差別相談を受け付けている。    3) 相談員の業務内容  相談業務内容は、障害を理由とする差別の相談受付、関係者への事情聴取・説明及び助言、関係行政機関への通告・通報その他の通知、あっせんの申し立ての支援、その他障害を理由とする差別を解消するために必要な対応である。    4) 障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況  【障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会】  障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会を設置している。詳細を以下に示す。    構成員 18人(障害者3人、学識経験者1人、弁護士1人、社会福祉関係者1人、医療関係者1人、障害者関係団体の代表者4人、事業者の代表者2人(商店会会長・バス協会会長)、関係行政機関の職員1人、公募市民4人)  目的 障害のある人とない人が、ともに支えあい、活かしあうことができる地域社会を実現する  開催頻度年2回程度  その他  所管する事務は、以下の4点  〇あっせん手続き(相談及び助言で解決できない場合)、  〇障害を理由とする差別を解消するために必要な施策について市長に意見を述べる  〇条例の施行状況の検討及び見直し  〇その他障害を理由とする差別を解消するために必要な事務    5) 相談体制の全体像  行政(福祉施策所管部署)の窓口を活用して相談を受けている。相談の流れを以下の図 p84 表79に示す。  図表79 障害者差別相談の流れ  明石市における障害者差別相談の流れを示す。  @差別をされた障害者や、その代理人からの相談は、庁内窓口である障害福祉課や発達支援課、又は相談機関である基幹相談支援センター、地域総合支援センターが受け付ける。この際、来所又は電話等での相談に応じる。また、相談窓口での受付だけでなく、日常の業務や活動の中での相談についても対応する。  A障害福祉課障害者施策担当と差別事案にかかわる調整会議を開催し、相談体制を確立したうえで、相談者に対して事案の担当者を決定する。以降、差別事案にかかわる調整会議を、調整会議と称する。  B事案の担当者が双方から事情を確認する  C調整会議を開催し、必要に応じて関係機関に出席を要請し、助言・調整案を検討する。  D事案の担当者が双方に対して助言及び調整を実施する。  E合意が得られた場合、終結する。  F合意の形成や調査自体を拒否された場合など、状況を説明したうえで、相談者本人の意思に従い、本人又は代理人が市長に申立て、条例第15条に規定する地域協議会が設置したあっせん部会があっせんを行う。  なお、匿名の相談についても、相談メモで障害者施策担当に事例を報告する。  出所)相談の手引き(明石市作成)    (4) 相談件数・内容  1) 直近3年間の相談件数の推移  平成30年度 3件  令和元年度 18件  令和2年度 6件    2) 相談件数をカウントする際の軸  以下の項目に分けて相談件数のカウントを実施している。  収集先 相談窓口(障害者施策担当、障害福祉課、発達支援センター、基幹相談支援センター、地域総合支援センター)  差別の類型 不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供、複合型、その他  事例の内容 事例が生じた場面(商品・サービス、福祉サービス、建物・施設、交通、住宅、教育、医療、雇用、個人間、その他)  事例情報の収集方法 −  事例の解決情報 相談のみで終了、調整、あっせん申立  その他 相談者(障害のある人、家族、行政職員、事業者、支援者) p85   3) 相談件数・内容の年次推移の傾向  相談件数は、窓口開設初年度の2016年度から年々減少傾向にある。2019年度に、背景に差別が伺われるが、相談者が差別相談とは考えていない案件についての事例把握を行い、一時的に件数が増加した。  相談内容は、本人が調整を望まない場合や、主訴が別の相談で背景に差別が伺われるが、相談者が差別相談とは考えていない案件など、相手方との調整までには至らない案件が多い。傾向についての経年変化は見受けられない。    4) 未解決となった相談事案の件数及びその主な理由  これまで、未解決となった事案が2件ある。市の調整結果を当事者が受け入れられなかったケースと、事業者が提供可能なサービスと当事者が求める配慮に乖離があったケースである。    (5) 障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  1) 障害者からの相談  以下の流れで相談対応を実施している。    @相談窓口において、来所または電話等での相談に応じる。また、相談窓口での受付だけでなく、日常の業務や活動の中での相談についても対応する。  A差別事案にかかわる調整会議(以下「調整会議」)では、相談体制を確立した上で、相談者に対して事案の担当者を決定する。  B事案の担当者が双方から事情を確認する。  C調整会議を開催し、必要に応じて関係機関に出席を要請し、助言・調整案を検討する。  D事案の担当者が双方に対して助言及び調整を実施する。  E合意が得られた場合、終結する。  F合意の形成や調査自体を拒否された場合など、状況を説明した上で、相談者本人の意思に従い、本人又は代理人が市長に申立て、条例第 15 条に規定する地域協議会(あっせん部会)があっせんを行う。  これまであっせんに至ったケースはなく、自治体職員を相手方とする差別相談についても、一般の相談事案と処理の流れは変わらない。    2) 事業者からの相談  以下の流れで相談対応を実施している。   p86  @障害者施策担当で相談を受け付け  A必要に応じて関係機関に協力を求めて対応    (6) 関係機関との連携  1) 相談体制の構築・運用における関係機関との連携状況  必要に応じて関係機関(相手方が事業者であれば、管轄する行政機関、加盟する業界の上部団体等)と連携して対応する。    (7) 相談機関へのアクセス向上方策  1) 相談窓口へのアクセス向上方策(障害者向け)  障害者団体等を通じた差別事例の収集及び相談窓口の周知や、ホームページ、パンフレット等での周知を行っている。パンフレットは、障害のある方についての配慮やポイントなどを分かりやすく記載したものであり、条例の理念や相談窓口の案内についても掲載している。    2) 相談窓口へのアクセス向上方策(事業者向け)  ホームページ、パンフレット等での周知や、合理的配慮の提供を支援する助成制度を利用した事業者にアンケートを実施している。    3) 意思疎通支援に関する工夫、課題  意思疎通のため、わかりやすい言葉での説明を心掛けるほか、設置手話通訳者による手話通訳対応やあかし手話サービス、遠隔手話通訳による対応を行っている。また、窓口での対話支援機器の利用や、必要に応じてテキストデータや点字での情報提供を行っている。  視覚障害のある人からの相談の際、差別された場面での周囲の状況が分かりづらい場合があること、知的障害のある人がとりとめもなく話すなどの場合があり、相談内容を把握するのに時間がかかること、メールでの相談の際、相手の感情や伝えたい要旨が把握しきれないことがあり、どのように返答するかが難しいこと、といった課題意識がある。当事者への説明は、具体的な表現を用いて周囲の状況等を丁寧に伝える必要があると感じている。    (8) ICT活用に関する工夫、課題  あかし手話サービスでの対応や、遠隔手話通訳による対応、ホームページからのWeb問合せ、電子メールを活用している。遠隔手話通訳を行う際、相談者のICT機器の設定の問題により、円滑に通訳できない場合がある。 p87   (9) 相談対応に係る人材の確保・育成  1) 相談対応に係る人材の確保・育成の取組  「障害を理由とした差別」に関わる案件かどうかを判断するスキルを高めるため、図表80に示す研修を実施している。差別相談の手引き(差別相談窓口開設時(2016年)に担当職員が作成)を用いて相談員に周知している。    図表80 差別解消相談員研修実施一覧  明石市で実施された、差別解消相談員研修について示す。  平成28年には、以下の3つの研修が実施された。  @相談体制の考え方、事例説明等  A明石市障害者配慮条例の概要と特徴  B相談事例の事例検討  @「相談体制の考え方、事例説明等」の講師は弁護士職員と、障害者施策担当課長であり、参加者:27人であった。  A「明石市障害者配慮条例の概要と特徴」の講師は障害者施策担当課長であり、参加者は27人であった。  B「相談事例の事例検討」の講師は他市の元行政職員であり、参加者は27人であった。    平成29年には、以下の4つの研修が実施された。  @各相談窓口の業務内容の共有  A障害者差別解消法と障害者差別解消条例(基本編)  B精神障害者について  C相談面接技術について  @「各相談窓口の業務内容の共有」の講師は各相談窓口担当者であり、参加者:39人であった。  A「障害者差別解消法と障害者差別解消条例「基本編」」の講師は障害施策担当課長であり、参加者:22人であった。  B「精神障害者について」の講師は精神保健福祉士であり、参加者:22人であった。  C「相談面接技術について」の講師は基幹相談支援センターの社会福祉士であり、参加者は21人であった。    平成30年には、以下の3つの研修が実施された。  @相談者・関係機関とのやりとりから  A障害者差別解消法と明石市障害者配慮条例について  B障害者差別の事例と関係機関の連携について  @「相談者・関係機関とのやりとりから」の講師は発達支援センターの臨床心理士であり、参加者は23人であった。  A「障害者差別解消法と明石市障害者配慮条例について」の講師は弁護士職員であり、参加者は40人であった。  B「障害者差別の事例と関係機関の連携について」の講師は弁護士職員であり、参加者は56人であった。    令和2年には、以下の研修が実施された。  ・障害者差別について考える  「障害者差別について考える」の講師はNPO法人事務局長であり、参加者:29人であった。  出所)明石市障害福祉課作成    2) 相談対応に係る人材の確保・育成の課題  人事異動による知識・経験等の引継ぎが難しい。研修も実施しているが、差別事例に該当するかどうかの判断が難しいケースがある。どこまで配慮すれば合理的配慮となるのか判断は難しい。国による事例の蓄積、開示が望ましい。    (10) 障害者差別の解消に向けた相談体制の構築  1) 相談体制の構築を円滑に進めるために必要なこと  行政職員だけでなく、地域の障害者団体との連携により事業者への合理的配慮に関する助言や日頃の情報交換などができる関係作りが必要である。また、合理的配慮の提供が過重な負担であるかを判断するための基準や、合理的配慮を提供するための公的な支援制度の充実が必要である。 p88   2) 相談体制の構築を進める上での課題、その他自由意見  相談件数が少ない理由に、@相談窓口の周知が不十分A相談しづらい環境(心理的、物理的)B障害者差別に関する意識の醸成が不十分、などが考えられる。相談件数が少ないからよいということではなく、簡単に相談窓口にアクセスできる方法の検討と、相談した障害当事者や事業者が「相談して良かった」と思える環境づくりが重要と考える。しかし、現時点では、事業者の人材不足や環境整備のための予算確保が難しいことから、提案できる改善策が少ない。  障害のある人のニーズも多様であり、一つの方法だけでは改善できないこともある。時間をかけて双方の状況を理解し、建設的な対話を進めていくには、専門的な知識や地域のネットワークが重要と考える。  企業における予防的取組(マニュアルの整備)については、企業規模も様々な中でどのように有効な取組ができるか検討課題である。企業に予防的取組を依頼するためには、相応の予算措置も必要となる。また、現場担当者としては障害者に丁寧に接していきたいと考えていても、経営者としては対応が難しく、経営者と現場担当者の間で認識が異なっている場合があるため、対応が困難である。企業のスタッフは、正社員だけでなく、パート職員・アルバイト職員もいるため、全ての職員に障害者対応研修を受けてもらうことも難しいケースがある。そうした点への対応が重要である。  地域の困りごとがわからないと施策に繋がらないことから、地域の障害のある方へのアンケートや個別ヒアリング、当事者団体との対話を通して、職員がイメージをつかむことが重要である。当事者とともに働くことで、生活を身近に感じ、必要な制度の検討に繋がると考えられる。    3.4.3 事例の収集・共有の仕組  (1) 事例の収集の現状  1) 収集・共有する事例の選定  相談事案を差別相談受付窓口間で収集・共有し、好事例や困難事案等を地域協議会で共有している。    2) 収集している事例において取得している情報  収集している事例において、取得している情報は以下である。また、相談を受けた際の相談受付票と相談メモを図表81、図表82に示す。    事例の分類 不当な差別的扱い、合理的配慮の不提供  事例の内容 性別、年代、内容、経緯、背景、相談者種類  *1障害の種別 記載なし  *2事例が生じた場面 記載なし  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の収集方法 対面、電話、webページ、電子メール、紙文書・郵送  その他 個人情報の部分は加工して、概要として共有している。詳細な検討が必要と判断されれば、相談者本人の同意を得た上で、個人情報も含めて共有している。 p89   図表81 障害者差別解消相談受付票  明石市で使用している相談受付票では、相談者と対象者の基本情報と、相談内容・対応を記載する形式となっている。  対象者の基本情報では、障害者手帳の有無や障害年金、生活保護や介護保険の状況や、利用中のサービス、通院医療機関や病名、調整活動についての意向確認までを記載する。  相談内容・対応では、困りごとや、解決に関する希望を聞き取ったうえで、相手方の情報や言い分を記載する。  また、相談受付票の中に、条例に基づく相談窓口の教示や、障害者施策担当への情報提供の諾否、障害者施策担当からの折り返し電話の可否までの確認欄を設置することで、相談受付後の対応の参考としている。  相談結果の記載欄には、事案の緊急性や継続回数等の状況を選択肢式で記載したうえで、対応結果を記載する形式となっている。  出所)障害者差別解消相談受付票(明石市作成) p90   図表82 障害者差別解消 相談メモ  明石市で使用している相談メモでは、相談者・相談内容・対応について、自由記述形式で記載欄を設定している。  また、相談者の調整の要望の有無や、差別的な対応が見受けられるか、差別事例に該当しないかを選択肢形式で記載する方式となっている。  出所)障害者差別解消 相談メモ(明石市作成)    (2) 事例の収集先  事例の収集先としては、障害者施策主管部局や主幹部局等、障害者差別解消支援地域協議会、事業者、民間団体等がある。障害者施策主管部局や主幹部局等では、相談事例の収集を実施し、障害者差別解消支援地域協議会では好事例の収集を実施している。また、事業者、民間団体等では、明石市障害当事者等団体連絡協議会から差別事例の収集を行っている。    (3) 事例の共有の現状  1) 共有している事例における共有情報  共有している事例における共有情報を以下に示す。  事例の分類 記載なし  事例の内容 場面*2、内容、経緯、背景、相談者種類  *1障害の種別 記載なし  *2事例が生じた場面 相談者から聞き取った内容を記録し、概要を書面で共有している  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の収集方法 文書ファイル、紙文書・郵送  その他 記載なし p91   2) 事例の共有先  事例の共有先は、障害者施策主管部局や主幹部局等と障害者差別解消支援地域協議会である。障害者施策主管部局や主幹部局等には相談事例を共有し、障害者差別解消支援地域協議会では好事例の収集や困難事例について取り扱っている。    3) 収集した事例の共有にあたっての考え方・工夫  事例を共有するにあたり、個人情報等を加工して概要を共有している。対応方法等について協議するとき等、詳細な内容の共有が必要な場合は、本人の同意を得たうえで個人情報も含めて共有している。    3.4.4 障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組  ホームページ、パンフレット等での周知、小学生対象の手話体験教室・バリアフリー教室、市職員、新任教職員への障害理解研修や市民への出前講座等での周知を行っている。また、明石ユニバーサルモニター制度(知的・精神・身体に障害のある明石市民30名にモニターとして登録して頂き、日頃の生活の中で気づいたことや改善が必要なことの意見の提示を受け、具体的な改善事項を検討)の運用や、合理的配慮の支援のための費用助成(対象:飲食店における点字メニューの作成、筆談ボード・ポータブルスロープの購入、手すりの取り付け、段差解消等)を行っている。  また、障害のある人とない人の交流の機会づくりとして、タクシー協会と共同したイベントを開催し、対応を学ぶ機会の設置や、バス会社の協力を受けた、車いすの当事者向けの対応研修を実施している。?   p92  3.5 岡山県総社市  3.5.1 自治体の基本情報  (1) 基本データ  人口 69,739人  世帯数 28,940世帯  面積 211.90?  障害福祉サービスの利用者数(実数)(令和3年4月) 506人  障害児給付費の利用者数(実数)(令和3年4月) 593人  障害者手帳所持者数(令和3年4月1日現在)  全体  身体障害者手帳 2,102人  療育手帳 558人  精神障害者保健福祉手帳 433人  うち65歳以上  身体障害者手帳 1,541人  療育手帳 32人  精神障害者保健福祉手帳 63人   p93  (3) 社会資源の状況  基幹相談支援センター 委託1か所(委託先:総社市社会福祉協議会)  指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所 市町村から障害者相談支援事業の委託を受けている事業所 1か所  市町村から障害者相談支援事業の委託を受けていない事業所 7か所  権利擁護センター 委託1か所(委託先:総社市社会福祉協議会)  障害者虐待防止センター 直営1か所    3.5.2 障害者差別の解消に向けた相談体制  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  総社市では、以前より「全国屈指の福祉先駆都市」を目指している。福祉課では障害に係る施策として、障がい者千五百人雇用事業を担当しており千五百人雇用センターも所管しているほか、障害者施策(サービス)も担当しており基幹相談支援センターを所管している。その他、権利擁護、生活困窮、引きこもり支援も担当している。所管しているセンター等は社会福祉協議会に委託し、専門的な組織が横断的に対応できるような形としている。  相談については、行政だけでなく、関係機関等との連携のもとに、地域の実情を踏まえ、各機関が主体的に取組を推進する。  平成28年4月には、障害者差別解消法の施行に伴って、市職員の対応要領を作成した。対応要領の中では、障害を理由とする差別を解消するための留意事項として、@不当な差別的取り扱いの基本的な考え方、A正当な理由の判断の視点、B不当な差別的取り扱いの具体例、C合理的配慮の基本的な考え方、D過重な負担の基本的な考え方、合理的配慮の具体例、を掲載している。 p94   図表84 障害者差別解消法の施行及び対応要領の策定  障がい者差別解消法の施行及び対応要領の策定は平成28年4月1日に施行されている。ここでは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律である障害者差別解消法に基づき、職員が対応するための要領が設定されている。対応要領の対象者は嘱託・臨時職員も含む総社市職員であり、目的は、法第10条に基づき、法や基本方針に即し、市職員が適切に対応するためのものである。記載内容としては、以下のようなものである。  ・第1条 目的  ・第2条 不当な差別的取扱いの禁止  ・第3条 合理的配慮の提供  ・第4条 監督者の責務  ・第5条 相談体制の整備  ・第6条 研修・啓発    第2条と第3条に記載された、不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供での、障がいを理由とする差別を解消するための職員対応要領に係る留意事項では、以下の6つの内容を明記している。  @不当な差別的取扱いの基本的な考え方  A正当な理由の判断の視点  B不当な差別的取扱いの具体例  C合理的配慮の基本的な考え方  D過重な負担の基本的な考え方  E合理的配慮の具体例  出所)総社市作成    (2) 相談体制構築の経緯  平成27年当時、進めていた福祉施策を通じて構築されていたつながりをベースに自然と相談体制構築の準備が進んだ。その結果、既存の総社市地域自立支援協議会にその機能を付加することができた。    (3) 相談の実施体制  1) 行政の庁内体制  保健福祉部 福祉課が所管し、常勤2人(内 兼務2人。1人は社会福祉士)が業務を担当している。    2) 相談員の配置状況  配置なし。    3) 相談員の業務内容  設定なし。 p95   4) 障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況  総社市に設置された会議体や各種センターの詳細を以下に示す。    【障害者差別解消支援地域協議会】  構成員 総社市地域自立支援協議会の運営委員  目的 @対応要領策定の諮問機関としての役割 (平成27年6月〜)A差別解消の取組を円滑に行うための役割 (平成28年4月〜)  開催頻度 総社市地域自立支援協議会の運営会議に合わせて定例会を開催(年3回)、そのほか必要に応じて随時開催  その他 〇事務局は障がい者基幹相談支援センター、〇連携を組む地域自立支援協議会の事務局を担っている障がい者基幹相談支援センターのほか、障がい者千五百人雇用センター、権利擁護センター、生活困窮支援センター、ひきこもり支援センターをワンフロア(1室)内に整備しており、常時非常時に関わらずワンストップで対応できる体制づくりを行っている    【総社市自立支援協議会】  構成員 70以上の団体機関(家族会・ボランティア・民生委員児童委員・障害福祉サービス事業所・支援学校・ハローワーク・更生相談所・保健所・県民局・総社市各課等)  目的 障害のある方が、総社市で安心して暮らせるよう関係者が話し合う場所、障害者施策を協議し、情報共有できる場所として設置  開催頻度 全体会議1回/年,その他,実務担当者,運営会議,専門部会等のそれぞれ開催  その他 〇事務局は障がい者基幹相談支援センター、〇各種専門部会・プロジェクトチームの連絡会を持ちながら、個別支援会議を開催   p96  図表85 令和3年度の構成  自立支援協議会の令和3年度の構成は、最上位の全体会より、実務担当会議、専門部会・プロジェクトチーム・連絡会、サービス担当者会議・個別支援会議と続く形である。また、運営会議の中に障がい者差別解消支援地域協議会が設置されており、事務局は障がい者基幹相談支援センターが担っている。行政とは、意見・検討にて連携をしながら、協議会から提言を行うという形になっている。  専門部会・プロジェクトチームの詳細を以下に示す。  ・住まいを考える部会  ・ハートフルそうじゃ実行委員会  ・地域生活支援拠点等整備検討プロジェクトチーム  ・医療的ケア児支援体制検討プロジェクトチーム  連絡会の詳細を以下に示す。  ・日中活動事業所連絡会  ・こどもに寄り添う連絡会  ・日中一次支援連絡会  ・療育支援事業所連絡会  ・相談支援事業所連絡会  出所)総社市社会福祉協議会作成    【障がい者基幹相談支援センター】  障がい者基幹相談支援センターの詳細を以下に示す。また、その構成図を図表86に示す。  構成員 センター長1名、社会福祉士1名、発達障がい支援コーディネーター1名(計3名)  目的 専門的な相談や、権利擁護・虐待防止、地域移行・地域定着の業務等  設置時期 平成24年4月  その他 児童の発達や相談支援も展開 p97   図表86 障がい者基幹相談支援センター  障がい者基幹支援センターは、総合相談・専門相談、地域移行・地域定着、地域の相談体制の強化の取組、権利擁護・虐待防止の機能を持つ組織である。また、相談支援事業者や児童発達支援センターといった相談支援事業者との連携も行っている。  総合相談・専門相談では、障害の種別や各種ニーズに対応しており、3障害に対応した総合的な相談支援や、専門的な相談支援を実施している。  地域移行・地域定着では、入所施設や精神科病院への働きかけや、地域の体制整備に係るコーディネートを行っている。  地域の相談支援体制の強化の取組では、相談支援事業者への専門的支援・助言や、相談支援事業者の人材育成、相談機関との連携強化の取組を行っている。  権利擁護・虐待防止では、成年後見制度利用支援事業や、虐待防止に取り組んでおり、通報受理や相談等を実施する市町村障害者虐待防止センターを兼ねることができる。  出所)総社市社会福祉協議会作成    【障がい者千五百人雇用センター】  障がい者の1,000人雇用を目標に掲げていたが、平成29年5月にその目標が達成されたため、同年11月に1,500人の雇用を目標にした。令和3年8月1日現在の就労者数は1,196名である。  障害者と民間企業の仲介を障がい者千五百人雇用センターが担当し、企業を訪問する等のアウトリーチ活動や、障害者の雇用・募集の依頼、賃金アップの依頼等を行っている。また、企業訪問を年に一回実施している。市の仕事としても、ごみの減量化に向けての紙資源の回収の受付を行ってもらう、市内の公園における清掃業務を担当してもらう、等の委託を行っている。特に市民に触れ合う場における業務を障害者団体に依頼している。障がい者基幹相談支援センターの詳細を以下に示す。また、協議会の構成図を図表87に示す。    構成員 障がい者千五百人雇用センターに4名、ハローワーク総社に6名、総社市役所に5名の体制  目的 障害者が就労を通して、生きがいを感じながら安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること  設置時期 平成24年4月  その他 支援内容は、登録者に対してマッチングから生活までマンツーマンでサポートの実施、企業など就労先へのアフターケア p98   図表87 障がい者千五百人雇用センター  障がい者千五百人雇用センターは、障がい者が就労を通して、生きがいを感じながら安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的として設置されている。以前は、1000人を目標に掲げていたが、達成したため、現在は1500人を目標に取り組んでいる。障がい者雇用に向けて、障害者就業・生活支援センターと同等の機能を有する障がい者千五百人雇用センターとハローワーク総社、総社市役所の三本の矢で支援を行っている。  出所)総社市作成    【その他組織】  権利擁護センターは平成25年4月に設置された。センター内に設置されている支援検討委員会において様々な問題・課題に対応するとともに、中核機関体制整備WGにおいて成年後見制度や虐待事案の検討などを行っている。障がい者権利擁護支援推進WGでは、障害者の成年後見制度利用促進、虐待に関する予防及び対応を中心に、障害者の権利擁護支援の推進について検討している。2つのWGでは、主に課題の解決に向けた方策を検討している。  生活困窮支援センターは生活困窮への対応が主な業務であるが、生活困窮の事案においても障害者が対象となるケースがあるため、基幹相談支援センターも横の連携の中に位置づけるようにしている。  本来は生活困窮支援の中に位置づけられるものであるが、ひきこもり支援に特化した組織(ひきこもり支援等検討委員会)も設置している。障害があってもなくても社会の中で自立した生活ができるように取組を進めている。    5) 相談体制の全体像  行政(福祉施策所管部署)の窓口や、障害者総合支援法の基幹相談支援センター、障害者差別解消支援地域協議会、障害者自立支援協議会等の会議体、虐待防止センター、権利擁護センター、総社市が独自に設置している「障がい者千五百人雇用センター」、「生活困窮支援センター」、「ひきこもり支援センター」の活用が考えられる。図表88に相談を受けた際のフローを示す。 p99  図表88 相談の流れ  総社市での相談体制を示す。  障がいのある人やその家族、または事業者から、不利益な取り扱いに関する相談を、市役所の各所属部署窓口で受けた際、相談内容を市役所福祉課に集約する。そのうえで、多岐にわたる相談や取組・分析を障害者差別解消地域協議会と行い、障害者差別解消支援地域協議会からは分析結果・紛争解決の後押しを受ける。  障害者差別解消支援地域協議会は、障害団体や警察署、医療機関、基幹相談センター、千五百人センター、権利擁護センター、生活困窮センター、引きこもり支援センターと連携し、これらの対応を実施する。  出所)総社市作成    (4) 相談件数・内容  1) 直近3年間の相談件数の推移  平成30年度 0件  令和元年度 0件  令和2年度 0件    2) 相談件数をカウントする際の軸  差別解消支援地域協議会への直接の相談を件数としてカウントしている。連携の他機関の支援の中において、相談が必要な案件は情報共有等により相談につなげている。    収集先 障害者施策主管部局以外の部局、地方公共団体の出先機関  差別の類型 −  事例の内容 −  事例情報の収集方法 −  事例の解決情報 −  その他 −    3) 相談件数・内容の年次推移の傾向  相談実績なし。    4) 未解決となった相談事案の件数及びその主な理由  特になし。   p100  (5) 障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  1) 障害者からの相談  基幹相談支援センター、障がい者千五百人雇用センター、権利擁護センターなどが、障害者に寄り添う中で、日頃から差別解消の視点をもちつつ支援を実施している。なお、相談がある場合は、以下の段階に分けて相談対応を実施する。  @障害者差別解消支援地域協議会で集約  A他機関と連携のうえ、情報収集を実施  B支援方針の検討・事案の評価、基本的な事案への対応等を実施  また、相談案件がある場合は、障害者差別解消支援地域協議会で集約し、他機関と連携のうえ、情報収集を行い、支援方針の検討・事案の評価、基本的な事案への対応等を行う。    2) 事業者からの相談  基幹相談支援センター、障がい者千五百人雇用センターなどが、定期的に企業や事業所訪問(主に障がい者千五百人雇用センター)等を行う中で、日頃から差別解消や合理的配慮の視点をもちつつ情報交換等を実施している。  なお、相談がある場合は、以下の段階に分けて相談対応を実施する。  @障害者差別解消支援地域協議会で集約  A他機関と連携のうえ、情報収集を実施  B支援方針の検討・事案の評価、基本的な事案への対応等を実施    (6) 関係機関との連携  1) 相談体制の構築・運用における関係機関との連携状況  障がい者千五百人雇用事業などの福祉施策を通じて、様々な機関が連携を図るとともに、総社市地域自立支援協議会により当事者団体をはじめ、家族団体・事業所・支援団体などの関係機関と日頃から「顔」の見える関係が構築されている。そのため、相談のケースに応じて、それぞれの機関が連携し、専門性などを生かした役割分担の下で相互に支援する体制を構築している。    (7) 相談機関へのアクセス向上方策  1) 相談窓口へのアクセス向上方策(障害者向け)  障害者が相談窓口にアクセスするには、窓口の場所、受付時間、受付方法、相談対応者、広報の方法等の課題がある。総社市においては、個々の障害者が日頃から接している関係 p101 機関との連携に基づいており、障害者と関係機関、地域自立支援協議会が「顔の見える関係」であるため、比較的アクセスはしやすい状況であると考えている。    2) 相談窓口へのアクセス向上方策(事業者向け)  事業者は、適切な相談窓口にアクセスしづらい点が課題と考えるが、総社市においては、障害者を雇用している事業所等に対して、日頃から訪問を実施しており、そういった機会を通じて、事業所と関係機関、地域自立支援協議会が「顔の見える関係」づくりに努めている。    3) 意思疎通支援に関する工夫、課題  総社市においては、手話通訳者を嘱託職員として採用するとともに、手話通訳者・要約筆記者の派遣等を行っている。また、ろう者以外でも、精神・知的の障害により、自分の言葉でうまく意思疎通ができない場合は、相談支援を行っている各機関が継続して支援を行うなど、関係機関等と連携を図り、必要に応じて意思疎通支援に係る対応やアドバイス等がもらえる関係を構築している。なお、令和3年4月に手話言語条例を制定している。一方で、すべての方に応じた意思疎通支援を即座に行うことは難しいのが現状であり、様々な連携を生かして可能な限り支援できる体制づくりを行うことは課題である。    4) ICT活用に関する工夫、課題  現在特別な工夫はしていないが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、迅速な対応が必要な場合等はWEB会議で対応できる体制づくりは行っている。    (8) 相談対応に係る人材の確保・育成  1) 相談対応に係る人材の確保・育成の取組  それぞれの相談において、高度な専門性や知識・経験などが必要であるが、総社市においては、様々な対応を行う各機関に専門知識のある有資格者等を配置し、それぞれが横の連携を取り合うことで幅広く対応することとしている。また、各職員は業務遂行にあたって必要な研修等を受講し、その情報を共有するなどしてスキルアップを図っている。また、年1回は、障害者差別解消法対応要領に伴う職員研修を実施し、人材育成を図るとともに、市役所窓口や施策への反映に向けた取組等での対応力向上につなげている。    2) 相談対応に係る人材の確保・育成の課題  自治体の規模的にも多くの人材を相談対応に充てることは難しい。国から相談事例の提示があれば、今後の運用に活用したい。現状では相談事例が発生していないため、人員の増員は検討していない。   p102  (9) 障害者差別の解消に向けた相談体制の構築  1) 相談体制の構築を円滑に進めるために必要なこと  相談機関を設置するにあたり、構成員となる有識者を新たに招集することは、時間等もかかり、困難である。総社市では、障がい者千人雇用事業などの福祉施策を通じて、当事者団体をはじめ、家族団体・事業所・支援団体などの関係機関と日頃から「顔」の見える関係が構築されていた。また、障害者施策を通じて、市民、職員等が障害者を「知る」ということが無意識にできていたなど、「障がい者雇用」をキーワードに共生社会に関する意識共有が進んでいたため、地域自立支援協議会を中心として、比較的スムーズに相談体制の構築ができたと考えている。    2) 相談体制の構築を進める上での課題、その他自由意見  啓発及び合理的配慮の提供として、特に、課長級(監督者)、新規採用職員への啓発が必要であり、年1回は、研修を実施し、障害の理解を深めている。また、自立支援協議会をはじめとした連携機関、民間企業等を巻き込んだ研修等による啓発や情報共有も重要である。加えて、「顔」の見える関係の継続には、課題意識の共有や障害者施策の継続が必要であり、そのため地域自立支援協議会や障害者雇用等のイベント実施など日頃から連携を密にし、いつでも相談等ができる体制の整備を図っている。  企業に対しても定期的に訪問して意見交換等を行っているため、差別相談の予防につながっているのではないかと思われる。相談体制を構築できていない自治体は、障害を担当している部署が窓口を立ち上げることから始めてもよいのではないかと考える。    3.5.3 事例の収集・共有の仕組  (1) 事例の収集の現状  1) 収集・共有する事例の選定  特になし。    2) 収集している事例において取得している情報  特になし。    3) 事例の収集先  特になし。 p103  (2) 事例の共有の現状  1) 共有している事例における共有情報  特になし。    2) 事例の共有先  特になし。    3) 収集した事例の共有にあたっての考え方・工夫  特になし。    3.5.4 障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組  障害者差別解消法の施行及び対応要領に伴う職員研修の実施や、地域自立支援協議会における情報共有や研修機会の確保を行っている。 p104   3.6 福岡県北九州市  3.6.1 自治体の基本情報  (1) 基本データ  人口 934,130人  世帯数 435,354世帯  面積 491. 69km2  障害福祉サービスの利用者数(実数)(令和3年4月) 9,144人  障害児給付費の利用者数(実数)(令和3年4月) 2,866人  障害者手帳所持者数(令和3年3月31日現在)  全体  身体障害者手帳 47,084人  療育手帳 11,526人  精神障害者保健福祉手帳 9,864人  うち65歳以上  身体障害者手帳 集計なし  療育手帳 集計なし  精神障害者保健福祉手帳 集計なし    (2) 地域の特徴(地域特性、産業等)  北九州市は、九州の最北端に位置する国際産業貿易都市である。  アジア諸国に近いというロケーションを活かし、日本の四大工業地帯のひとつとして近代化を支えてきた歴史がある。世界に誇る環境や産業の技術集積、空港や港湾などの都市基盤を有する一方、長く美しい海岸線や緑豊かな山々など自然にも恵まれた街である。図表89に北九州市の地図を示す。  図表89 北九州市の地図  北九州市は、九州地方の福岡県北部に位置している。  出所)北九州市ホームページ: https://www.city.kitakyushu.lg.jp/kouhou/file_0002.html(令和 p105 4年2月2日)    (3) 社会資源の状況  基幹相談支援センター 委託1か所(委託先:公益社団法人北九州市障害者相談支援事業協会)  指定特定相談支援事業所・指定障害児相談支援事業所 市町村から障害者相談支援事業の委託を受けている事業所 指定特定相談支援事業所 1か所、指定障害児相談支援事業所 1か所、(うち重複 1か所)  市町村から障害者相談支援事業の委託を受けていない事業所 指定特定相談支援事業所 86か所、指定障害児相談支援事業所 64か所、(うち重複 45か所)  権利擁護センター 1か所(実施主体:社会福祉法人北九州市社会福祉協議会)  障害者虐待防止センター 委託1か所(委託先:公益社団法人北九州市障害者相談支援事業協会)    3.6.2 障害者差別の解消に向けた相談体制  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  「差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」が行われた場合に、個別の事案ごとに「正当な理由」や「過重な負担」などの様々な要素を考慮し、民間事業者や行政機関と障害当事者の双方の意見を聞きながら公平・中立な立場で対応を行う。    (2) 相談体制構築の経緯  平成27年7月に障害団体等および指定障害福祉サービス事業者に協力を依頼し、「障害により差別を受けた・いやな思いをした事例」などの調査を実施した結果、約4割が「どこにも相談していない」という回答であった。差別解消法の施行により障害者差別等に対する意識が高まり、これまで埋もれていた相談が多数寄せられる可能性が極めて高いことから、平成28年4月より、専門相談員を配置し、「障害者差別解消相談コーナー」を開設した。    (3) 相談の実施体制  1) 行政の庁内体制  保健福祉局障害福祉部障害福祉企画課が所管し、3名の担当者が対応している。内訳は、係長、職員(臨床心理士、公認心理師)、職員(相談員、社会福祉主事任用資格)である。 p106   2) 相談員の配置状況  直営、常勤、専従の相談員を1名配置している。相談員は社会福祉主事任用資格を持つ生活保護のケースワーカー経験者である。    3) 相談員の業務内容  障害のある人やその家族、事業者、市役所各部局等からの障害者差別に関する相談対応や、障害を理由とする差別事案についての当事者間の調整や助言、市民及び事業者等への啓発(出前講座・研修の企画運営等)、業務に関する書類作成等の一般事務(パソコン操作含む) 等を行う。    4) 障害者差別の解消に関して協議する会議体の設置状況  【北九州市障害者差別解消支援地域協議会】  参加者が情報共有・意見交換を行いながら、協議会の方向性を議論している。このような場で相談員と障害者団体の交流も行われている。協議会は、事例のデータベースとしての機能は持っておらず、全ての事例の情報は市が集約し、管理している。ただし、ある程度情報共有を図る必要はあるかもしれない。協議会の場でも、事例の検討は行われているが、年に2〜3回かつ、1回あたりの時間も2時間程度と限られているため、1回の協議会の中で3事例程度の検討にとどまっている。昨年度までは、3事業者のみ参画していたが、令和3年度より増加予定である。分散会として、構成員をグループ分けした会議の開催も検討している。会議の詳細を以下に示す。  構成員 学識経験者、法曹、医療・福祉等、教育、支援団体、障害当事者団体、民間事業者、行政など計28名  目的 障害者差別に関する相談等について情報を共有し、障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うネットワークを構築する  開催頻度 協議会を年2〜3回程度開催。その他、必要に応じて事務局会議等を開催している(令和2年度は事務局会議を14回開催)  その他 〇事務局は市と協力の上、障害関係団体に委託    【北九州市障害者差別解消委員会】  「障害を理由とする差別をなくし誰もが共に生きる北九州市づくりに関する条例」に基づいて設置された市の付属機関として、北九州市障害者差別解消委員会が設置されている。詳細を以下に示す。  構成員 学識経験者、法曹、障害当事者・家族、事業者、相談支援事業者  目的 「障害を理由とする差別をなくし誰もが共に生きる北九州市づくりに関する条例」に基づいて設置された市の付属機関である。障害を理由とする差別に関する事案で、市が相談対応を行ってもなお解決が図られない事案について、障害のある人などからの申立てがあった場合に、当該事案を調査審議し、解決に向けた助言又はあっせんを行う。  開催頻度 申立てがあった場合に開催(開催は設置時の1回のみであり、これまでに申立てによる開催はない)  その他 事務局は、保健福祉局障害福祉企画課が担当 p107   5) 相談体制の全体像  市役所本庁舎内に専用の窓口を設置している。相談体制全体のイメージ図を図表90に示す。    図表90 相談体制の全体像イメージ図  北九州市での相談の流れを示す。  障害を理由とする差別に関する相談は、まずは、「障害者差別解消相談コーナー」で専門相談員が対応する。それでもなお解決が難しい場合には、「北九州市障害者差別解消委員会」による助言・あっせん等を行うことで、問題の解決を図る。  出所)北九州市 障害者差別解消条例パンフレット    (4) 相談件数・内容  1) 直近3年間の相談件数の推移  平成30年度 103件  令和元年度 79件  令和2年度 54件    2) 相談件数をカウントする際の軸  収集先 障害者施策主管部局や主管部局等  事例の分類 分類していない  事例の内容 性別、年代、種別、場面、相談者種類  事例情報の収集方法 対面、電話、電子メール、その他(FAX)  事例の解決状況 事案の顛末は把握しているが、分類はしていない  その他 − p108   3) 相談件数・内容の年次推移の傾向  相談分野として、医療・福祉、行政などが多く、相談が顕著に増えている分野は無い。相談件数は全体的に減少傾向であり、中でも相談が減っている分野は、医療・福祉(平成30年度:27件 令和元年度:20件 令和2年度:10件)、行政(平成30年度:21件 令和元年度:12件 令和2年度:10件)である。全体的に相談件数が減少している理由として、法・条例施行当初は、障害者差別解消についての気運が高かったが、法施行から5年、条例の施行から4年が経過し、落ち着いてきていること、新型コロナウイルス感染症の影響により、周知・啓発の機会が減少したこと、人との接触機会が減少し、トラブルが減少したことが挙げられる。企業からの相談については、令和元年度は13件、令和2年度は0件、令和3年度は1件であった。    4) 未解決となった相談事案の件数及びその主な理由  相談による解決が困難であり、障害者差別解消委員会への申し立てが行われた相談事案は無く、調整の結果、すべて解決に至っている。なお、相談事案の中には、明らかに差別案件ではないものや、事実関係が不明確で、傾聴のみで終わるものが多く含まれる。    (5) 障害者差別の解消に向けた相談事案の取扱いの基本的な流れ  1) 障害者からの相談  以下の段階に分けて相談対応を実施している。    @相談受付、情報収集(相談員)  A聞き取りの際に当事者から相手方への介入を求められた場合は、調整活動を実施  B相談内容を整理  C係内にて支援方針を検討    調整活動や、他機関への連絡、調整等は相談員が対応する。基本的な事案か、専門的な事案かといった事案の評価については実施していない。  自治体職員を相手とする相談についても、一般の相談と同様である。ただし、合理的配慮や不当な差別的取り扱いの防止は自治体職員にとっては義務であるため、該当の職員に対して研修を行い再発の予防に努めることになる。公共機関の職員の場合でも、再発防止に向けて出前講演を行うようにしている。    2) 事業者からの相談  相談受付から対応まですべて相談員が実施している。状況に応じ係内にて支援方針の検討を行う。事業者からの相談内容としては、障害のある方に対しての対応方法や、障害者 p109 差別解消法・条例の解釈、合理的配慮の提供方法について、実際に起こった事案についての相談など様々であるが、内容を整理し、説明や助言等を実施している。基本的な事案か、専門的な事案かといった事案の評価については実施していない。    (6) 関係機関との連携  1) 相談体制の構築・運用における関係機関との連携状況  障害の特性に応じた対応等の技術的支援については、障害団体等へ相談している。情報の共有については、障害者差別解消支援地域協議会において議題として取り上げ、事例内容について検討している。関係機関との連携については、医療に関する相談であれば保健所(医療安全相談コーナー)、労働の相談はハローワーク、市の保健福祉サービスについての相談は北九州市保健福祉オンブズパーソン事務局等、内容に応じた窓口を案内している。    (7) 相談機関へのアクセス向上方策  1) 相談窓口へのアクセス向上方策(障害者向け)  アクセス向上のためには、事業者への法・条例および相談窓口のさらなる周知啓発が重要である。商工会議所を通じた事業者への周知や、出前講演の開催等を今後も継続的に企画し、実施していく。現在は、事業者向けの障害者差別解消条例リーフレットを作成・配付し、周知を図っている。新型コロナウイルス感染症防止に関連して、従来のように出前講演等を実施することができないため、今後の周知方法等について検討している。    2) 相談窓口へのアクセス向上方策(事業者向け)  アクセス向上のためには、事業者への法・条例および相談窓口のさらなる周知啓発が重要である。商工会議所を通じた事業者への周知や、出前講演の開催等を今後も継続的に企画し、実施していく。現在は、事業者向けの障害者差別解消条例リーフレットを作成・配付し、周知を図っている。新型コロナウイルス感染症防止に関連して、従来のように出前講演等を実施することができないため、今後の周知方法等について検討している。    3) 意思疎通支援に関する工夫、課題  聴覚障害のある人が来庁した場合、筆談にて対応できるようにしている(部署の窓口や相談室に耳マークを設置済み)。また、タブレット端末の導入及び通信環境の整備により、遠隔手話通訳を実施する体制を整えている。  意思疎通支援が必要であることを事前に把握できた場合は対応できるが、そうでない場合は対応に苦慮することが予想される。北九州市では手話通訳者派遣事業、要約筆記者派遣事業、盲ろう者通訳・ガイドヘルパー派遣事業を実施しているため、必要に応じて派遣を依頼する。    4) ICT活用に関する工夫、課題  相談窓口専用のメールアドレスを設け、電子メールによる相談を受け付けている。また、聴覚障害のある人が来談した場合に、遠隔手話通訳を実施できるよう体制を整えている。  電子メールでの相談の場合、内容によっては本題にたどり着くまでに何回もやり取りが必要なため、相談内容の整理に時間を要する。相手方が電子メールのフィルタリング機能を利用している場合は、相手方に返信ができない場合があるため、電子メール以外の連絡手段について把握しておく必要がある。    (8) 相談対応に係る人材の確保・育成  1) 相談対応に係る人材の確保・育成の取組  相談員の業務は、各種相談に対する対応や関係機関との調整、市民および事業者等への啓発(出前講演・研修の企画運営等)、相談事例の収集など多岐にわたることから、社会福祉士又は精神保健福祉士もしくは、社会福祉主事の任用資格を有する者で、障害福祉に関する実務経験がある者を公募で採用している。障害団体等と協議を行うことが、障害福祉に関する知識の習得に繋がっている。    2) 相談対応に係る人材の確保・育成の課題  民間事業者や行政機関と障害当事者の双方の意見を聞きながら公平・中立な立場で判断を行うためには、障害特性をよく理解し、適切に支援ができる知識と技術を有する者(社会福祉士、精神保健福祉士、障害者施設で相当年数勤務歴がある者)が必要となる。  相談員は1名のみ配置しており、これまでは福祉系の経験者が中心であったが、企業経験者の活用も検討課題である。今後機会があれば、ぜひ企業経験者の募集も検討したい。相談員に必須の要件は、どのような相談者が来てもコミュニケーションできる能力であり、また、1人で抱え込まずに相談内容を共有できることも重要な条件である。国全体で、マニュアルや相談事例など統一的なツールがあれば、ぜひ活用していきたい。    (9) 障害者差別の解消に向けた相談体制の構築  1) 相談体制の構築を円滑に進めるために必要なこと  「障害者差別に関する相談窓口」という業務の専門性や特殊性により、公募では適当な人材を確保することが困難となる可能性がある。相談においては、住居に関するトラブル等から行政制度に関するものまで、生活に関する多種多様な内容に対応できる知識・経験が必要となるため、単に知識や資格を有するだけでなく、日々の業務等で障害者と接し、相談支援等を行う実務経験がある者が求められる。そのため、人材確保の方法等について検討が必要となる。 p111   2) 相談体制の構築を進める上での課題、その他自由意見  相談体制を直営としているため、公募により広く人材を募集する必要があり、相談業務に適当な人材を確保することに苦慮している。北九州市の特色として、障害者差別解消に限らず、様々な障害者施策を進める上で、必ず障害者団体や事業者の声を聞きながら検討していくことが、これまでの相談対応が粛々と進んできた要因ではないか。特に障害団体の方々と議論できる場を長年にわたり積み重ねてきていることがポイントと思われる。  事業者向けのリーフレットの作成等は行っているが、接客対応マニュアルの提示まではできていない。これまでの相談対応事例が、接客対応マニュアルに反映されていけばよいと考えている。    3.6.3 事例の収集・共有の仕組  (1) 事例の収集の現状  1) 収集・共有する事例の選定  事例の収集について、相談コーナーに相談があったものについては、全ての事例(調整をおこなったもの、他の窓口を紹介したもの、傾聴したのみのもの等)について、「障害者差別相談受付表【報告】」に記録し収集している。  事例の共有について、「北九州市障害者差別解消支援地域協議会」において、相談事例の中から、いくつか事例を選定し協議会委員で共有している。選定については担当課で実施しており、相談分野や、障害種別、調整の有無等を勘案し選定している。 p112  図表91 障害者差別 相談受付票[報告]  北九州市で使用している様式では、相談者名や事業所名、障害当事者の基本情報である障害種別や手帳の有無、年齢、性別の記載欄や、相談経緯の概要、今後の方針を記載する欄が設置されている。なお、今後の方針の欄では、調整活動や啓発・広報活動の有無や、助言、他機関紹介等の情報提供上についても記載することとなっている。  出所)北九州市様式    2) 収集している事例において取得している情報  収集している事例において、取得している情報を以下に示す。  事例の分類 不当な差別的取り扱い、合理的配慮の提供、環境の整備  事例の内容 性別、年代、種別*1、場面*2、内容、経緯、背景、相談者種類  *1障害の種別 視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、知的障害、精神障害、発達障害、内部障害、難病に起因する障害、その他(重複、不明)  *2事例が生じた場面 行政・公共施設、教育、医療・福祉、雇用・就業、交通・移動、その他(サービス、その他(災害含む))  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の収集方法 対面、電話、電子メール、その他(FAX)  その他 −    3) 事例の収集先  事例の収集先は、「障害者差別解消相談コーナー」での相談内容や、合理的配慮の不提供事例等の情報提供である。 p113   (2) 事例の共有の現状  1) 共有している事例における共有情報  事例の共有先と共有方法について、以下に示す。  事例の分類 不当な差別的取扱い、合理的配慮の提供、環境の整備  事例の内容 種別*1、事例が生じた場面*2  *1障害の種別 視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、知的障害、精神障害、発達障害、内部障害、難病に起因する障害、その他(重複、不明)  *2事例が生じた場面 行政・公共施設、教育、医療・福祉、雇用・就業、交通・移動、その他(サービス、その他(災害含む))  対応内容等 対応内容、対応結果  事例の共有方法 その他(協議会の場で紙文書で配布(共有後回収))  その他 −    2) 事例の共有先  事例の共有先は、障害者差別解消支援地域協議会であり、3.6.3 (1) 1)、3.6.3 (2) 1)の記載内容について、情報の共有を行っている。共有する事例は、相談当事者や事業者が特定できないよう加工している。協議会では、紙文書で配布(共有後回収)している。    3) 収集した事例の共有にあたっての考え方・工夫  収集した事例は、相談当事者や事業者等が特定できないように事例情報を加工している。北九州市の場合、「北九州市障害者差別解消支援地域協議会」においてのみ相談情報を共有しているが、協議会での議題を決定する際に、妥当性・中立性について課内にて精査している。また、情報の正確性の確保については、相談後に「障害者差別相談受付【報告】」を作成し、課内で供覧しているが、その際に不明な点、捕捉が必要な点について随時、確認を行っている。    3.6.4 障害者差別の解消に関する全般的な周知啓発の取組  障害者差別解消条例等について、市民や事業者を対象に出前講演を実施している。障害者週間啓発事業として、例年、障害者団体と協力して街頭啓発イベントを実施している。また、助け合いのしるしである「ヘルプマーク」について、市の広報誌への掲載、公共交通機関等への啓発ポスターの掲示等の取組を行った。マスクができない方をお知らせするステッカーの作成も行っている。障害者週間に合わせ、令和2年度に啓発ラッピングバスの運行を開始した。