p144  5. 類似制度の取組調査の結果  5.1 類似制度の取組調査の概要  5.1.1 調査目的  関係省庁が実施している相談体制等のうち比較的類似した制度について状況を把握し、実効性のある相談体制の在り方を検討するため、調査を実施した。    5.1.2 調査対象、調査時期  調査の対象、時期は以下の通りである。  図表95 類似制度の取組調査の実施経過  調査対象、実施日時は以下の通り。  1法務省 人権相談 2021年10月19日(火)14:00〜15:30  2総務省 行政相談 2021年10月6日(水)13:00〜14:30  3消費者庁 消費生活相談 2021年10月6日(水)16:00〜17:30  ※全件、WEB会議方式で実施。    5.1.3 調査方法  WEB会議方式で、類似制度を運営する省庁担当者に事務局がヒアリングを実施した。    5.1.4 調査項目  調査項目は以下の通りである。  図表96 類似制度の取組調査の調査項目  〇相談受付・対応に関する基本的な考え方  〇国、都道府県、市区町村の役割分担  〇相談の実施体制  〇相談件数・内容  〇相談事案の取扱いの基本的な流れ  〇関係機関との連携  〇相談者の相談機関へのアクセス向上方策、相談を掘り起こすための周知啓発方策  〇相談対応に係る人材の確保・育成  〇相談事例の収集・共有の取組  〇相談体制構築を円滑に進める上で必要なこと    5.2 調査結果  類似制度調査の結果を以下に示す。 p145  図表97 類似制度の相談体制  類似制度調査として実施したヒアリングの結果をもとに、法務省・人権相談、総務省・行政相談、消費者庁・消費生活相談の相談体制について示した。  法務省・人権相談の所轄官庁・担当部署は法務省人権擁護局調査救済課である。相談窓口は、全国50か所に設置された法務局・地方法務局(法務局:8か所、地方法務局:42か所)と、全国261か所に設置された支局に設置されている。相談に対応するのは法務局職員と人権擁護委員(約14000名、ボランティア、法務大臣委嘱)である。  総務省・行政相談の所轄官庁・担当部署は総務省行政評価局行政相談企画課である。相談窓口は、全国50か所に設置された出先機関(管区行政評価局:8か所、行政評価事務所:7か所、行政監視行政相談センター:35か所)に設置されている。総務省行政評価局行政相談企画課は出先機関の監督・指示・支援等を行っている。相談に対応するのは出先機関職員と行政相談委員(約5000名、ボランティア、総務大臣委嘱)である。行政相談委員は市区町村毎に1名以上配置されており、出先機関からの支援を受けて相談に対応している。  消費者庁・消費生活相談の所轄官庁・担当部署は、消費者庁地方協力課であり、消費生活相談を所轄支援等している独立行政法人国民生活センターの監督等を行っている。相談窓口は、消費生活センター、消費生活窓口に設置されている。消費者庁地方協力課と独立行政法人国民生活センターは、消費生活センターや消費生活相談窓口の支援等を行っている。消費生活センターは、都道府県は設置必須、市区町村は努力規定となっている。消費生活相談窓口は、消費生活センターの基準(週4日以上の窓口開所、消費生活相談員の配置、PIO-NETなどの電子情報処理組織その他の設備の配置)を満たさない相談窓口である。現在は、全市区町村に消費生活センターまたは消費生活相談窓口が設置されており、相談に対応するのは消費生活相談員(約3000名、自治体採用)である。   p146   図表98 類似制度調査の結果  法務省・人権擁護機関による人権相談  基本情報 名称 人権相談  開始時期 人権相談所は昭和24年に初めて開設された。  目的 憲法に保障されている基本的人権を擁護し、自由人権思想の普及高揚を目的とする。  所轄官庁・担当部署 法務省人権擁護局調査救済課  相談体制 相談のあり方に関する基本的な考え方 人権問題に関して相談に応じ、助言等の必要な措置を採ることにより、憲法に保障されている基本的人権を擁護し、併せて自由人権思想の普及高揚を図る。  相談体制構築の経緯 昭和24年に、全国の法務局職員と人権擁護委員が人権相談を担うようになった。  取り扱う相談の内容 セクハラ、パワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめ、インターネットでの誹謗中傷、差別等を含む様々な人権相談に応じている。  相談窓口の設置状況 〇全国の法務局・地方法務局又はその支局内に常設相談所を設置。〇市町村役場や公民館等の公共施設、デパートや社会福祉施設等に特設相談所を随時開設。  対応する相談員 法務局職員や人権擁護委員(法務大臣が委嘱した民間ボランティア)が対応。  相談員の確保・育成 〇人権擁護委員は、市町村長から推薦された候補者の中から、法務大臣が委嘱(人権擁護委員法第6条)。〇人権擁護委員は、定期的に相談対応を含む研修を受講。  関係機関との連携 支援を受けている機関・受けている支援の内容 相談内容に応じて、関係機関を紹介するほか、関係機関との間で情報共有を行っている。  支援している機関・支援している内容 同上。  国・都道府県・市区町村の役割分担 特になし。  相談件数等 平成30年度・31年度・令和2年度における相談件数 平成30年:216,239件、令和元年:203,570件、令和2年:173,634件。  主な相談の内容 相談内容は多岐にわたるが、インターネット上の誹謗中傷や学校におけるいじめ、住居・生活の安全関係の相談が多い。  最近の傾向 人権相談の件数は近年、面談による相談を中心に減少傾向にある。直近は、新型コロナウイルス感染症の影響が要因と考えられる。  相談事案の取り扱いの基本的な流れ 相談発生〜対応の基本的な流れ 人権相談の処理としては助言が多く、相談者からの救済の申し出があり、相談内容から人権侵犯に該当する疑いがあるときは人権侵犯事件に切り替え、調査結果を踏まえ、事案に応じた適切な措置(援助、調整、説示等)を講じている。なお、調査結果によっては、侵犯事実を認定することができない場合もある。  相談者からのアクセスを向上するための方策 幅広いツール(面談、電話、手紙、インターネットメール等)により人権相談を受け付けている。  ICTの活用状況 面談・電話以外に、インターネットメール等により人権相談を受け付けている。また、SNSの活用を順次拡大していくことを検討している。  相談を掘り起こすための周知啓発方策 ポスター、リーフレット、ホームページ、SNS、新聞、広報誌など、様々な媒体で人権相談窓口の周知を図っているほか、専用相談電話の強化週間を設けて、集中的に広報を行っている。  相談事案の事例の収集・共有の仕組 事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む) 〇人権相談に関する統計作成に必要な項目をシステムに入力している。〇各法務局・地方法務局において、管内の相談事例を収集・把握。  事例の共有・情報発信 人権擁護機関が救済措置を講じた具体的事例を年に10件程度抽出し、ホームページ等で公開。  その他 相談体制の構築を進める上で必要なこと・課題等 被害者の実効的救済に向けて、加害者に直接指導・改善を要請することができる立場にある業界団体や当該所管省庁を関係機関として含めることが有益。  障害者差別解消に係る相談窓口を設置する際のアドバイス ―    総務省・行政相談  基本情報 名称 行政相談  開始時期 行政管理庁が、国の行政機関の業務の運用改善を目的とする行政監察の一環として昭和30年2月に開始。「苦情相談暫定処理要領」を策定し、国民の行政に関する苦情等を聞いてその解決を促進するための相談窓口を開設。  目的 担当行政機関とは異なる立場から、行政などへの苦情や意見、要望を受け、その解決や実現を促進するとともに、行政の制度や運営の改善に生かすことを目的とする。  所轄官庁・担当部署 総務省行政評価局行政相談企画課  相談体制 相談のあり方に関する基本的な考え方 個人(個別)の問題を解決することと、問題点の原因となっていると思われる行政の課題を改善することの2つの役割を有する。  相談体制構築の経緯 管区行政監察局と一部の地方行政監察局における監察業務に付随して実施されていたが、相談件数が多かったため、全管区行政監察局及び地方行政監察局に相談窓口を開設。  取り扱う相談の内容 〇国の行政すべてを対象とした幅広い相談に対応。〇相談窓口がわからない、という相談を受け付けることが多い。  相談窓口の設置状況 〇全国に50か所の出先機関を設置。〇全市区町村に1人以上の行政相談委員を約5,000人配置。○全国の主要都市(17都市)のデパート等に総合相談所を開設  対応する相談員 〇総務省にある全国50か所の出先機関職員約700人が行政相談に関連。〇全国の市区町村に必ず1人は配置された約5,000人の行政相談委員(ボランティア)も相談業務を担当。  相談員の確保・育成 〇行政相談委員は、市町村長からの推薦を受けて、総務大臣が委嘱。研修や自主的な勉強会を実施。〇職員を対象とした研修では、業務の基本的な知識や相談対応方法を共有。  関係機関との連携 支援を受けている機関・受けている支援の内容 中央レベルの府省の連絡協議会で、窓口担当者同士の情報交換や協力要請を実施。  支援している機関・支援している内容 国の行政機関、独立行政法人、特殊法人、都道府県・市(区)町村(国の仕事の関係)に対する支援を実施。  国・都道府県・市区町村の役割分担 総務省の出先機関において、管轄内の国の機関・自治体等と情報共有・協力を要請。  相談件数等 平成30年度・31年度・令和2年度における相談件数 平成30年度:169,100件、令和元年度:163,689件、令和2年度:119,116件。  主な相談の内容 医療保険・年金、雇用、道路、社会福祉、交通機関などの相談が多いが、行政相談が担当する相談では、「どこに相談したらよいか分らない」といった入り口の整理の場合が多い。  最近の傾向 新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、定例相談所における対面での相談受付が一定期間中止されるなど、委員活動が減少したことにより、令和2年度の受付件数は、大きく減少している。  相談事案の取り扱いの基本的な流れ 相談発生〜対応の基本的な流れ 行政相談を受けた当該機関での処理が原則であり、担当者の回答で終了する相談が大半であるが、対象機関への照会・あっせんが必要な場合もある。基本的には担当者からの回答で完結する。  相談者からのアクセスを向上するための方策 電話を中心とした相談を受けているが、手話通訳を導入しているケースもある。  ICTの活用状況 今後はオンライン会議システムによるリモート相談の導入を検討しており、現在、数か所で試行的に導入している状況。  相談を掘り起こすための周知啓発方策 〇ポスター・チラシの活用。○市町村広報誌への掲載依頼○政府広報の活用〇「一日合同行政相談所」の開催。  相談事案の事例の収集・共有の仕組 事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む) 〇各局所、センターが受け付けた行政相談をデータベースに一元管理。〇行政分野や相手機関、氏名や連絡先、相談履歴、解決したかどうかを入力。  事例の共有・情報発信 〇入力された相談事案は各局・センターで閲覧可能。〇データベースに入力された相談事案を定期的に確認し、意見交換や個別指導を実施。  その他 相談体制の構築を進める上で必要なこと・課題等 〇国家公務員の定数が削減傾向にあることから、AI等の仕組みの活用を検討。〇非対面での相談受付に向けたICTの活用。  障害者差別解消に係る相談窓口を設置する際のアドバイス 〇相談が必要な方々への周知の方法を考えること。〇通常の情報の流れの他に個別のコミュニティの活用。    消費者庁・消費生活相談  基本情報 名称 消費生活相談  開始時期 1960年代に一部の地方自治体での自治事務として取り組みを開始したのち、全国的に広がる。  目的 消費者の救済やあっせん、消費者への注意喚起等による消費者保護、不当な取引や表示に関する悪質事業者への指導・処分、欠陥品や消費者事故につながる商品やサービスの早期発見による消費者安全の確保等。  所轄官庁・担当部署 消費者庁地方協力課、独立行政法人国民生活センター  相談体制 相談のあり方に関する基本的な考え方 事業者と消費者の間に生じたトラブルの適切な解決を図るため、助言やあっせん等を実施。  相談体制構築の経緯 〇1970年に国民生活センターを設置。〇2009年に消費者庁を設置し、すべての地方自治体での消費生活相談体制を確保。  取り扱う相談の内容 商品の購入や、サービスを利用した際の販売方法・契約・品質・価格などのトラブルに関して、トラブル解決のための助言、あっせん、情報提供等  相談窓口の設置状況 〇地方自治体に消費生活センター又は消費生活相談窓口を設置。 〇都道府県は必ずセンターを設置し、市町村については努力規定。 ※法令上に消費生活センターの基準が存在し、その基準を満たさない窓口は消費生活相談窓口となる。  対応する相談員 全国に設置された約3,000人の消費生活相談員が、事業者に対する消費者からの苦情に係る相談・あっせんを実施。  相談員の確保・育成 〇「消費生活相談員資格試験」に合格した者又はこれと同等以上の専門的な知識及び技術を有すると都道府県知事若しくは市町村長が認めた者のうちから任用。 〇国民生活センターで実践研修を実施。  関係機関との連携 支援を受けている機関・受けている支援の内容 各業の所轄省庁や、業界毎のトラブルを扱う相談窓口等を対象に他機関紹介を実施。  支援している機関・支援している内容 国民生活センターが、各自治体の消費生活センター等からの問い合わせに対し、助言や共同処理、移送を実施。  国・都道府県・市区町村の役割分担 地方公共団体の消費生活センターの休業日に、国民生活センターが代替的に業務を実施。  相談件数等 平成30年度・31年度・令和2年度における相談件数 2018年:102.6万件、2019年:94.0万件、2020年:93.4万件。  主な相談の内容 デジタルコンテンツやインターネット接続回線に関する通信サービスや架空請求を含む商品一般、健康食品の定期購入に関連した食料品の相談件数が多い。  最近の傾向 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、新型コロナウイルスワクチン詐欺に関連した相談に対応するための相談専用ダイヤルを設置。  相談事案の取り扱いの基本的な流れ 相談発生〜対応の基本的な流れ 〇全国共通番号(188、ナビダイヤル)により、地方公共団体の消費生活センターが相談を受ける。解決が難しい場合は国民生活センターで対応する。 〇国民生活センターの裁判外紛争解決手続き(ADR)は、重要消費者紛争に対応している。  相談者からのアクセスを向上するための方策 ポスター・チラシ、SNS等を活用。  ICTの活用状況 現在は電話対応が中心だが、アクセシビリティ向上のため多チャンネル化を検討。  相談を掘り起こすための周知啓発方策 〇ポスター・チラシ、SNS等の活用。 〇制度の長い歴史により、すでに一定の知名度がある。  相談事案の事例の収集・共有の仕組 事例の収集・蓄積(事例内容・情報の整理軸を含む) 〇全国共通のフォーマットにより事例を一元管理。 〇入力内容は事業の性質上公開不可。  事例の共有・情報発信 〇消費者庁と各消費生活センター等をつなぐシステムで一元管理し、閲覧可能な人員を限定。 〇国民生活センターを通じて、重要事例を相談員に周知。  その他 相談体制の構築を進める上で必要なこと・課題等 〇電話に代わる相談受付方法の検討。 〇体制構築のための費用面での確保が重要。  障害者差別解消に係る相談窓口を設置する際のアドバイス ―