p151  6. 有識者調査の結果  6.1 有識者調査の概要  6.1.1 調査目的  検討会で相談体制の在り方に関する基本的な考え方等をとりまとめる上で必要な専門的知見を有する有識者の立場から、助言や提案等を聴取するため、調査を実施した。    6.1.2 調査対象、調査時期  調査の対象、時期は以下の通りである。  図表99 有識者調査の実施経過  調査対象、実施日時を以下に示す。  1検討会 小牟礼構成員、穂苅構成員、又村構成員 2021年12月2日(木)13:00~15:00  2佐藤彰一國學院大學教授 2021年12月3日(金)10:00~11:00  3日本弁護士連合会 2021年12月2日(木)15:30~17:00  ※全件、WEB会議方式で実施。    6.1.3 調査方法  WEB会議方式で、有識者に事務局がヒアリングを実施した。    6.1.4 調査項目  調査項目は以下の通りである。  図表100 有識者調査の調査項目  調査対象、調査項目は以下の通り。  1検討会 小牟礼構成員、穂苅構成員、又村構成員  ・都道府県・市区町村行政と関係機関との連携:関係機関との役割分担・体制構築、個別の相談事案における連携  ・都道府県・市区町村行政における相談機関へのアクセス向上策:ICT活用に関する工夫・課題、相談を掘り起こすための周知啓発方策  ・都道府県・市区町村行政からみた相談体制の構築に対する課題・意見等:相談体制の構築に係る工夫・課題、地域協議会の活用状況    2佐藤彰一國學院大學教授  ・障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  ・相談の実施体制、相談事案の取扱いの基本的な流れ  ・関係機関との連携  ・相談者(障害者、事業者)の相談機関へのアクセス向上、相談の掘り起こし、周知啓発の方策  ・相談対応に係る人材の確保・育成  ・相談事例の収集・共有の仕組み  ・相談体制構築を円滑に進める上で必要なこと    3日本弁護士連合会  「自治体対象者向け障害者差別解消相談対応マニュアル」を作成した経緯  作成過程で明らかになった自治体の困りごと等  マニュアル作成の際の工夫した点・課題等  マニュアルを活用したセミナー等実施の有無  マニュアルに対する地方自治体の反応  マニュアル作成経験をふまえた相談体制の在り方 p152   6.2 調査結果  有識者調査の結果を以下に示す。    6.2.1 検討会構成員  (1) 関係機関との連携  1) 関係機関との連携や、支援内容、役割分担  国には国民が相談できるワンストップ相談窓口の設置を希望。  国のワンストップ窓口の相談員は、当初5〜10人程度の配置で始動することを想定。  連携先を探すのが難しい、あるいは判断が難しい相談事例があった場合に、当該事例の対応を実施する市町村のフォローを行う機関の設置を希望。  2) 国から移譲されている権限に基づくもの、あるいは条例等による自治体独自の権限による救済措置による相談事案解決  都道府県と国とが連携することで解決する事例も多いと思われるため、適切な国の部署につなぐ機能が重要で、国版の地域協議会が必要。 p153   (2) 相談機関へのアクセス向上策  1) 相談を掘り起こすための周知啓発方策  広報より一歩進んだ啓発が重要で、障害当事者、家族を含め権利侵害のケースを具体的に示すことが必要。ある自治体での障害者向けアンケートで7割が「差別を受けたことはない」、事業者向けで6割が「差別に該当する事象がある」という回答もあり、障害者側が相談の必要性に気付くことの重要性を示唆。  当事者に日常生活を語ってもらうだけでも他の障害特性の人も含めて多くの気付きが得られるのに加え、合理的配慮の欠如のケースを整理しマニュアルにまとめること等も可能。  気付きの啓発に関しては国で一括して取り組み、それを自治体に広めていくのが肝要。  大阪府では障害理解の促進等を目的に「共に生きる障がい者展」を実施している。令和3年度は合理的配慮や障害者差別解消についてわかりやすく学ぶことができるフォーラムを開催し、動画配信している。詳細を下記に示す。    図表101 地方自治体での取組みの紹介(大阪府)  第18回共に生きる障がい者展として実施した、Web版ともいきの開催の事例を示す。  大阪府では、障がいのある人もない人も一堂に会し、ふれ合いながらお互いの理解を深めることを目的として、様々なプログラムを行うイベント「共に生きる障がい者展」を開催してきた。今年度は、新型コロナウイルス感染症対策のため、初めてWeb開催とし、府ホームページにて公開している。    「Web版ともいき」のプログラム例は以下である。  ・フォーラム「身近な事例を基に障がい者差別解消について考える」(動画配信)  ・大阪府障がい者芸術・文化コンテスト(動画配信)  ・IT機器展2021・ユニバーサルデザイン生活展  ・すべての人に読書の楽しみを〜様々な読書の方法のご紹介〜  フォーラム「身近な事例を基に障がい者差別解消について考える」と大阪府障がい者芸術・文化コンテストは動画配信形式で実施された。    なお、フォーラムのプログラムは以下である。  ・令和3年4月に大阪府障がい者差別解消条例を改正し、「事業者による合理的配慮の提供」を義務化  ・「合理的配慮」「障がい者差別解消」について、実際にあった相談事例をもとにした寸劇で紹介  ・有識者・事業者・障がい当事者等によるパネルディスカッション 地方自治体での取組みとして、長野市では障害者理解促進を目的として、障害のある人を特別視することなく障害のある人が安心してサービスを利用できる「心のバリアフリー」の気持ちのある店を「長野市障害者にやさしいお店」として登録(エントリー)する事業を実施している。詳細を下記に示す。 p154 図表102 地方自治体での取組みの紹介「長野市障害者にやさしいお店登録制度」  「長野市障害者にやさしいお店登録制度」の趣旨は、 障害のある人を特別視することなく、障害のある人が安心してサービスを利用できる「心のバリアフリー」の気持ちのある店を「長野市やさしいお店」としてエントリー・登録してもらい、障害のある人の社会参加を応援していくもの としている。  「やさしいお店」とは、以下の5点について、適切な対応ができるお店である。  ・障害を理由としてサービス提供拒否や入店拒否をしないこと  ・心のバリアフリーを大切にした店づくりを進めること  ・合理的配慮の提供に努めること  ・障害者の社会参加を応援すること  ・障害者との対話を大切にすること  本事業開始にあたっては、平成30年4月より当事者、民間事業所、福祉関係者、行政がメンバーとなり、やさしいお店プロジェクトを始動した。この際、差別解消地域協議会で協力要請を行っている。その後、シンボルマーク案を令和元年9月に決定し、令和2年1月17日には、タウンミーティング「やさしいお店登録制度説明会」を実施した。令和2年2月28日にはステッカー贈呈式を実施している。なお、登録一号店は「そば亭油や」である。  「長野市障害者にやさしいお店」に登録するためには、以下の4ステップが設定されている。  @「やさしいお店づくりマニュアル」を読み基本事項を理解  A長野市に「登録申込書」を提出  B長野市から「ステッカー」及び「リーフレット」を送付  C入り口等にステッカー、店内にリーフレットを掲示  なお、「長野市障害者にやさしいお店」のシンボルマークは、障害のある人もない人も共に生きていく社会の実現に向けて、人と人がつながり、お互いの個性を尊重し合い、協力し合い、支え合える社会を目指して制定された。  安らかな笑顔を取り囲む花びらのような7つのハートは、よくみると少しずつ形が違っており、これはいろいろな人のいろいろな形の優しさが、障害のある人をはじめ多様な個性を包み込む社会を表現している。  本事業は、社会福祉法人 森と木 への委託事業であり、以下の事項を委託している。  ・店舗等の申請受付・登録・台帳管理  ・登録店に対する啓発、助言  ・ステッカー、マニュアル、リーフレットの作成  ・長野市障害ふくしネットとの協働による事業実施      なお、店舗等の申請受付・登録・台帳管理の一部は長野市障害福祉課で実施している。  本事業の目標登録店数は、毎年200店を5年間として、1000店であり、令和4年 1月31日時点では 256店である。  事業の終期設定は、目標達成時又は令和5年度であり、市の事業終了後は事業の協働先である「長野市障害ふくしネット」へ事業を移管を予定している。  2) ICT活用に関する工夫・課題  電話相談が困難な人に対しメールやFAXでのアクセスを周知する等、アクセシビリティの平等性確保が必要。電話リレーサービスもICT活用の1つ。  総務省LGWANにおけるセキュリティー・リスク管理の制約からSNSの利用が広が p155 りにくく、Zoom等の活用も不十分な可能性があり、LGWANの機能拡張も併せて言及することが必要。  SNSでの差別相談に係るツールの使い方の提示が必要。一方、相談窓口の周知・啓発としてのSNSは、障害者差別や人権に関するイベントの告知や、イベントのビデオ動画の配信等に活用可能。    (3) 地域協議会の活用状況  虐待防止と差別解消を一緒にした地域協議会を設置する自治体の例では、警察(関係案件に差別事案が多い)も参加。他には、消費生活センターとの連携も候補。消費生活センターは都道府県設置・広域設置の場合、都道府県からの後押しが重要。法務局・労働局・運輸局、教育委員会、弁護士・司法書士、医師会とも、具体的な相談対応で連携。  市町村規模を考えると、全ての市町村で個別の協議会設置は困難。地域協議会未設置の市町村には、都道府県からの助言・アドバイスが必要。地域協議会の形骸化対策として、都道府県担当者や相談員が出向いて話をするという事例も存在。  各協議会は趣旨に合わせて独立設置・運営することが理想だが、趣旨の似ている協議会はまとめた形も考えられる。ただ、複数協議会をまとめて開催するケースでも、差別解消に必要な関係者は含めるべきで、趣旨の異なる議論を行うため同一日で開催時間を区分する方式等も考慮する必要。  地域協議会で最低限行うべき活動として、差別解消に関する施策の策定・運営等に関するPDCAの議論や、事例検討、職員の対応要領の策定等。    (4) 相談対応を担う人材の育成・業務の質の向上  相談対応のノウハウは、置かれた場面によって求められるものが異なる。@市町村で差別解消を主に担当する場合、A相談をファーストコンタクトでキャッチする場合、B地域協議会を含めて行政介入を行う場合、C権限行使について都道府県・国と連携する場合などがあり、現状では@やBが主。  相談対応者には経験の蓄積と、傾聴だけでなく事業者との調整能力も求められるレベルの高い相談業務である。  ファーストコンタクトを受け付ける窓口人材については、福祉事業所職員やサービス担当者などを含め、適切な相談窓口につないでいく能力・感度の高さなど共通のリテラシーが必要で、国の方で共通教材などの作成を希望。    (5) 事例の整理・分析・共有方法  国として全国的な事例共有の仕組みを期待。内閣府が収集した事例の自治体への共有を希望。ただしオープンな形での共有は、案件の個別性が失われるケースも出てくるため、パスコード設定し閲覧者を限定する等、共有方法は要検討。  国による有権解釈等のQ&A作成が必要。  事例が少ない自治体では国で事例データベースを構築、対応まで含めた開示を期待。  一方、最初は事例そのものの掲載ではなく、検討の素材の一つとしてのモデル事例で p156 データベースをスタートする方策もあり。具体的な事例を内閣府で収集・整理し、各自治体にフィードバックしたもので解決・対応の方法が検討可能な形式を想定。法改正で事例収集は自治体の努力義務になったため、規定通りの対応であれば自治体から事例収集も可能。    6.2.2 佐藤彰一國學院大學教授  (1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  「差別」の切り口では「自分は差別されている」と思う人以外は相談にはあまり来ず、むしろ「生活困りごと相談」くらいの切り口の方が、相談につながると思料。消費生活相談や就労、生活困窮などの相談にも根本に差別の問題が潜んでおり、相談を受けた側が、差別の存在に気付く必要あり。  差別事案が多くある中で各自治体の障害福祉課等の職員に相談が来るが、職員も権限はなく相手方事業者との板挟みになるため、国として相談を解決する仕組みを作る必要があり、自治体の職員が関与する場合には、職員側に明確な権限・役割を与えることが必要。    (2) 相談の実施体制、相談事案の取扱いの基本的な流れ  差別を扱う相談窓口を行政内に設定するとしてもそれは2次相談で、最初に受け止める生活相談が1次相談であり、それらには消費生活相談や生活困窮、場合によって警察関与の事案など様々な相談を包含。そこから差別事案を拾い上げ、2次相談、差別解消に向けてアドバイスという流れと認識。  差別とは関係ないと思われる部署であっても、行政内の全ての相談対応者が、差別に対する意識を持ち、差別が潜んでいるケースがあれば差別専門の相談窓口につなぐことが必要。    (3) 関係機関との連携  1次相談で「差別」に気づき、該当案件を差別に特化した機関につなげる必要があるが、現状ではつないでも解決に至らないため、その解決の機関を作ることが必要。障害者差別解消法においてもそのような機関は規定されておらず、法律家に相談しても、調整・解決の制度はないことから、調整・解決の機関を作ることが必要。  斡旋の仕組みはあるが、行政職員から相手先事業者に強制する権限がなく、相手先事業者が「どうにもできない」との話で終わってしまい、相手先事業者の名前を公表も困難。  そこでADRのような仕組みを設ければ、相手先事業者と一緒に差別解消に向けて考えていける。    (4) 相談対応に係る人材の確保・育成  法律家だから適任、社会福祉士だから適任という資格ベースの議論ではなく、障害者 p157 の生活や環境、抱えている課題を感じる人間的なセンスを持つ人材が必要で、行政側ではそのような人材を発見するアンテナを高く張ることが必要。センスは育まれるもので、そうした人材を研修で養成することは困難と思料。  差別相談は主観的な問題が多くのウェイトを占めており、感情の問題になってしまうと相談者の納得を得られにくい。そうした問題に対応する行政職員の「心が折れる」ケースも心配であり、行政職員に対するケアを行うこと(研修・支援等)が必要。    (1) 相談体制構築を円滑に進める上で必要なこと  国の役割も重要であり、ADRのような紛争解決の手段を設定することに期待。  弁護士に対する支援も国として必要。弁護士が差別事案に関わる際に相応の報酬を得ることができ、差別解消に取り組みやすくすることが必要。    (5) 相談体制構築を円滑に進める上で必要なこと  国の役割も重要であり、ADRのような紛争解決の手段を設定することに期待。  弁護士に対する支援も国として必要。弁護士が差別事案に関わる際に相応の報酬を得ることができ、差別解消に取り組みやすくすることが必要。    (6) 公正・中立な相談機関として、障害者に寄り添いつつ事業者からも信頼される相談体制の在り方について  今の世の中の状況で事業者も対話を拒む姿勢は持たないと考えられるが、問題の解消の仕方でのズレ、相談者のニーズと事業者の姿勢にズレがあると、話し合ううちに感情的な対立が生じることがある。この対立を調整することが必要で、現状は両者の間に行政職員が板挟みになるが、行政職員には権限・役割がなく調整できないため、調整のノウハウを持つ人が解決に向けて動ける制度が必要。  調整・解決のための機関は、理想的には人口10万人程度に1か所ずつの設置が適当。  相談対応にWebの活用も考えられるが、Webでの相談は匿名のものが多くなると思われ、そのような匿名の案件は本来の相談と言えるのか疑問。    (7) 地域協議会のあり方について  現状設置されている地域協議会は周知・広報の役割が多く、相談対応や紛争解決の機能を持っているケースはほとんどない。地域協議会にADR的な機能を持たせるのは現行法制度では難しいため法改正の必要がある。機関に権限がないことと、そのために調整を担う人材の力量が育っていないため、きちんとした権限・権能を付与することが必要。  架空事例の模擬的な検討は可能であり、進めるべきで、関係者間で「頭の訓練」を行うことが必要。  日常的に差別相談に関与する職員の立場を明確にし、職員に寄せられている相談事例をもっと公表して共有する仕組みが必要で、その仕組みを地域協議会で作ることが地域協議会の形骸化の防止にも寄与。  各自治体の地域協議会はレベルがバラバラであり、地域の関係者が集まって差別について話し合うこと、地域協議会メンバーが差別解消法を勉強することを期待。  地域協議会は、毎月開催して参加可能なメンバーが適時参加する形、重要な相談案件が発生した際の随時開催も考えられる。  行政職員と地域協議会の接点を増やすことが必要。 p158   6.2.3 日本弁護士連合会  (注)下記内容全てが日本弁護士連合会としての意見ではなく,ヒアリングに出席した弁護士個人の見解が含まれる。    (1) 「自治体対象者向け障害者差別解消相談対応マニュアル」(以下「マニュアル」)作成の経緯  日弁連では2002年に人権擁護委員会障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する調査研究委員会(現:人権擁護委員会障がいを理由とする差別禁止法制に関する特別部会)を設置。障害者差別禁止法の制定を求めていたが、成立した障害者差別解消法には障害者権利条約及び当連合会が従前から求めてきた内容と比べると不十分な点があるとともに、条例の有無も背景に自治体ごとに対応の差異が考えられ、地域格差が生じることを懸念。  障害者差別解消法を見ても、それだけでは差別相談に対応することは困難。差別相談は人権に関わるし、解決には法的思考が必要なため、法律家の関与が必要である。思考過程を示した本マニュアルを契機にこのことについての行政と弁護士の連携を期待。  先進的な自治体での事例集はあっても対応マニュアルはほとんどなかった。法律の条文や基本方針だけでは、行政職員や一般福祉職レベルで解決の道筋を立てることは困難との認識。    (2) マニュアル作成の際の工夫した点・課題等  1) 障害者差別の解消に向けた相談の在り方に関する基本的な考え方  不当な差別的取り扱いと合理的配慮の不提供の区別が難しく、明らかに不当な差別的取り扱いと考えられる事案でも、合理的配慮の不提供として処理されるケースが存在。  不当な差別的取り扱いの解消をまず検討すべきことをマニュアルで周知するように意図。  実際には権利侵害がなされていても曖昧に処理されてしまうため、マニュアルでは対応のフローチャートを作成し対応の仕方を整理。最初は不当な差別的取り扱いを考え、そうでなかった時に合理的配慮の不提供に当たるか検討する流れ。  2) 相談の実施体制、相談事案の取扱いの基本的な流れ  相談が入った時に、きちんと話を聞き、相談に対応していく姿勢が重要である点を記載。  苦情や一般的な相談に見える場合であっても先入観を持たずきちんと話を聞くと、不当な差別的対応の問題であることもあるため、自治体が介入することで解決につなげられる可能性がある点を強調。  相談を広く受け付けられるよう、一般的な相談でも根本に差別の問題が関係してい p159 ないかと考える姿勢が必要で、それには一般行政職員にもまず差別解消法を知ってもらうことが重要。  大阪市では、毎月開催される事例検討会に報告が上がり対応を検討。同検討会には行政職員に加え、対応についての助言ができる人材(弁護士・当事者・学者)を配置。話の聞き方や、調査の仕方、調整の仕方などのアドバイザーも必要。  各自治体の取り組みや事例をリファレンスする仕組みが必要で、それらの情報を自治体職員が独力で集めることは難しいため、将来的には国がデータベース化することが理想。  差別相談の件数の増加のため、相談窓口の明確化が必要。    (3) 関係機関との連携  国、都道府県にも市町村にもワンストップの相談窓口を設置することを期待。国としての相談窓口は、全国的な大企業を相手先とする事案の対応には必須。  差別の事案として法的整理が必要であり、弁護士会と連携は必要。福祉的な観点からは社会福祉士会、精神保健福祉士会をはじめとした福祉職が関与することで、障害特性に応じた対応が可能。  都道府県が率先して、自治体職員と弁護士の懇談会のようなものを開催することを期待。    (4) マニュアルを活用したセミナー等実施の有無、(実施の場合)実施に当たって工夫した点や課題等  日弁連として障害者差別解消法に関する研修(キャラバン)を各地の弁護士会で開催し、弁護士が差別相談の事案へ対応できることを目指す。    (5) マニュアルに対する地方自治体の反応(自治体での活用実績等)  自治体職員からはもっと弁護士と行政が協力・連携したいという声あり。  マニュアルを評価してくれる自治体は意識の高い自治体。多くの自治体はまだ差別相談に対応した経験に乏しい。  現状のマニュアルは中級編の内容を含んでおり初級者には難しいところもあるので、対象者に応じて,より分かりやすい初級編の内容を意識したマニュアルが必要。  各自治体で相談対応に責任を持つ部署が設置され、職員が実際に対応する段階になって初めて本マニュアルの活用段階に到達。    (6) 相談者(障害者、事業者)の相談機関へのアクセス向上 、周知啓発 の方策  相談窓口が明確に設定され解決の仕組みがあることが市民に周知されることが相談に直結。住民に、相談すれば何とかなる、窓口に話を持ち込むと解決する、という姿を示すことが必要。 p160  (7) 相談対応に係る人材の確保・育成  差別相談に対応するためには高度な専門性が必要なため、都道府県・指定都市レベルで人材育成の予算化(専門職を配置すれば予算が付くなど)の仕組みが必要。  一方で、相談者の話を聞く、訪問して実際の現地を見ることができるのは地元市町村の職員であり、広域的な人材での対応は難しいため、地元市町村の職員と当該職員への助言等を行う広域的な人材を組み合わせた対応が必要。遠方の職員に対する助言等の実施に当たっては、オンラインの活用も要検討。  差別相談に関係するのは障害福祉課だけではなく、学校教育、さらには建設・土木やなど全ての部署が関係していることから、関連部署ごとの研修や一般職員向けの研修も必要。  条例で差別解消を明確に規定している自治体では相談の件数も多い傾向。一般的な相談に差別関連の相談もあるはずで、相談を受ける自治体職員全体の差別に関する意識醸成が必要。