大学等における障害のある学生の修学支援について
日本学生支援機構(以下「JASSO」という)は、学生支援を総合的に展開する独立行政法人として平成16年4月に設置された法人で、「障害により修学に特別の支援を必要とする学生等に対する支援」に関する事業も担っています。
JASSO では、障害のある学生の修学支援に関して、全国の大学、短期大学及び高等専門学校(以下、「大学等」という)を対象とする実態調査を平成17年度から継続的に実施しています。23年5月1日現在の大学等に在籍する障害のある学生は、10,236人(大学院生、専攻科生含む。)であり、学生総数3,235,575人のおよそ0.32%に当たります(回答校数:1,206校回収率:100%)。
障害種別には、「視覚障害」が681人(障害学生総数の6.7%)、「聴覚・言語障害」が1,556人(同15.2%)、「肢体不自由」が2,491人(同24.3%)、「病弱・虚弱」が2,047人(同20.0%)、「発達障害(診断書有)」が1,453人(同14.2%)などとなっています(※1、図1)。また、障害のある学生が在籍している学校数は807校で、これは学校総数の66.9%に当たります(図2)。
平成19年度調査から実施している、障害学生の進路状況については、平成22年度最高年次障害学生数1,903人のうち、卒業した障害学生数は1,439人であり、更にこのうち進学・就職等(※2)をした数は935人となっています(図3)。
また、平成20年度調査から、新たに、診断書は有していないものの、発達障害があることが推察されることにより、実際に教育上の支援を行っている学生数及び具体的な支援内容について調査しており、平成23年度についても同様に調べたところ、診断書は有していないものの、発達障害があることが推察されることにより、実際に教育上の支援を行っている学生数は、2,310人でした。具体的な支援内容としては、授業支援では「実技・実習配慮」「休憩室の確保」「注意事項等文書伝達」など、授業以外の支援では「保護者との連携」「学習指導(履修方法、学習方法等)」などでした。調査結果の詳細については、JASSO ホームページをご覧ください。
JASSO では、実態調査等から明らかとなった実態を踏まえ、大学等における障害のある学生に対する支援環境の整備・充実を図る取組を進めていくため、平成18年10月に「障害学生修学支援ネットワーク事業」を立ち上げました。本事業では、積極的に取組を進めている大学を「拠点校」とし、全国の大学等の障害学生修学支援担当者からの相談に応じる等の事業を行なっています。現在、札幌学院大学、宮城教育大学、筑波大学、富山大学、日本福祉大学、同志社大学、関西学院大学、広島大学、福岡教育大学の9大学が拠点校となっています。また、障害者施策の専門的な研究機関を「協力機関」としており、国立特別支援教育総合研究所、筑波技術大学、国立障害者リハビリテーションセンターの3機関がこの事業をサポートしています。
また、すでに障害学生支援に取り組んでいる教職員を対象とし、個別事例について各大学等の担当者が情報交換と検討を行い、課題の解決につなげていくことを目的に「障害学生修学支援事例研究会」を、開催しています。この他、障害のある学生を初めて受け入れる学校においてもわかりやすいよう、高等教育における障害学生支援の基本的な考え方や、どのような支援を行えばよいかを障害種別、場面別にまとめた『教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成23年度改訂版)』を作成しています。今回の改訂では、災害時の支援として、日頃から確認しておく事項等を障害種別ごとに記載しています。また、教職員を対象とした研修において、その研修の目的、内容、時間等に合わせてオリジナルプログラムが組め、教職員を対象とした研修に使えるようなプログラムである『障害学生支援についての教職員研修プログラム(DVD&PowerPoint)』を作成し、全高等教育機関に配布するとともに、ホームページにも掲載し、積極的に障害学生の支援情報を提供しています。こうした取組を通じて、高等教育機関における障害のある学生の修学支援の充実につなげていきたいと考えています。
JASSO 障害学生修学支援URL
※1 「病弱・虚弱」及び「発達障害」については、医師の診断書がある者を条件に調査
※2 大学院、大学学部、短期大学本科、専攻科、別科、臨床研修医、専修学校・教育訓練校等へ進んだ者及び就職者
図1 障害学生数(障害種別)
図2 障害学生在籍学校数
図3 平成22年度卒業障害学生進路状況
(注)係数は、四捨五入の関係で一致しない場合がある。