社会福祉法人あけぼの会(福祉)

[目次]  [戻る]  [次へ]

パートII 社会福祉法人あけぼの会(福祉)(PDF形式:644KB)PDFを別ウィンドウで開きます

運営のポイント
  • 保育士の給与水準を近隣の認可保育所の水準よりも高く設定している。また、保育施設向けの業務支援ツールを導入し、業務の効率化を図るなど残業をできるだけ少なくしている。求人の募集要項にも持ち帰り残業はないと明記した。
  • 保育士を職員配置基準以上、採用している。
  • 保育施設の空き情報をホームページやブログ、園だよりに載せるなどして周知し、利用者の確保につなげている。
  • 子どもたちと介護老人保健施設の入居者との日常的な交流や、合同のイベント開催など、世代間交流を行っている。
設置者の概要
○企業の概要 ■事業所 秋田県大仙市
■設立年 平成9年6月。平成24年6月に医療法人から社会福祉法人に法人形態を変更。
○業種 医療・福祉(社会福祉事業)
○従業員規模 124人(うち女性87人)
○企業の特色

・介護老人保健施設を中核に総合的なリハビリサービスを提供している。リハビリ専門スタッフの在籍数は大曲地区で一番多い。

・常勤医師や24時間滞在の看護スタッフが在籍し、医療と介護が一体となったサービスを提供している。

保育施設の概要
○所在地 秋田県大仙市(人口:約8万人)
○地域の特色

・秋田県のほぼ中央に位置し、秋田新幹線や秋田自動車道の高速系交通が整備されている。

・市の待機時児童は平成31年4月時点ではいないが、年度中間期には4~5人となる。

○設置方式 単独設置・共同利用型(2社と共同利用)
○設置場所 法人本部が位置する敷地内に設置
○運営方式 自主運営方式
○開設日 平成30年6月
○開所時間 通常保育 平日・土曜・日曜 8:00~19:00
一時保育 平日・土曜・日曜 8:00~19:00
○月額保育料 37,000円 一時保育 4時間まで2,500円、1日5,000円
※令和元年9月2日現在
○保育施設の特色

・高い吹き抜けと大きな窓があるため、光を多く取り入れられる構造となっている。1階のウッドデッキは柔らかな雰囲気がある。

・職員の会議スペースを除き、全部屋床暖房でアレルギー対策の塗壁を施している。

○費用の状況 施設整備費 92,988,000円(うち助成分 66,450,000円)
年間運営費 28,872,790円(うち助成分 20,947,250円)
○利用定員と利用者数
  0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 合計
従業員枠 定員数 5人 5人
利用者数 2人 1人 2人 5人
地域枠 定員数 5人 5人
利用者数 2人 1人 2人 5人
合計 定員数 10人 10人
利用者数 4人 2人 4人 10人
※利用者数は平成31年3月1日現在
○運営体制
  専任 非常勤 合計
保育士 6人 1人 7人
子育て支援員 1人 1人 2人
調理員 1人 1人
栄養士
看護師 ー   ー  ー
その他
合計 7人 3人 10人

設立までの経緯

保育施設設置の背景

社会福祉法人あけぼの会(以下「あけぼの会」という)は、市内の大曲地区で介護老人保健施設の運営を中心に、総合的なリハビリサービスを提供しており、リハビリや介護に携わる専門スタッフがたくさんいる。全従業員の平均年齢は36歳で、そのうち介護に携わる従業員の平均年齢は33.4歳で、産休・育休を取得する従業員は毎年5人ほどいる。通常、保育施設は土日・祝日が休みで、途中入園も難しく、曜日に関係なく勤務が発生する従業員にとって、仕事と子どもの両立は悩みの種になっていた。

あけぼの会の中で作っている働きやすい職場プロジェクトで、職場内に保育施設があれば、従業員が仕事と育児のバランスをとりながら、安心して生活できるのではないかと提案があり、保育施設設置の気運が一気に高まった。また、育児休業中の従業員から早く職場復帰をしたいとの声も多く聞かれるようになり、企業主導型保育事業が始まったことを受け、保育施設の設置を決定した。

あけぼの会各部門の長が集まる運営推進会議の中にプロジェクトチームを立ち上げ、設置に向けた行動を開始した。プロジェクトチームでの検討内容は運営推進会議に報告し、その後、各部門長から従業員に情報共有した。

あけぼの会組織図

従業員のニーズの把握

保育施設を設置した時の利用希望の有無や保育内容の希望について、全従業員にアンケートした。その結果、利用希望者が10人ほどいること、病児保育の希望があることがわかった。

設置場所の確保

保育施設の設置場所は、利用する従業員が子どもを預けやすく、子どもとあけぼの会が運営する介護老人保健施設の利用者が交流できることを考慮した。そのため、あけぼの会の本部とその隣の介護老人保健施設の前にある駐車場を活用することにした。

設置方式・運営方式の決定

保育施設運営の知識がなかったので、全国の取組を情報収集し、公益財団法人児童育成協会(以下「児童育成協会」という)にも相談した。あけぼの会の理念やあけぼの会らしい保育施設をつくりたいという思いから、単独設置での自主運営とした。

共同利用契約は、日頃から情報交換しているあけぼの会の系列法人と企業と結んでいる。また、市内のリハビリ・介護等の専門職のネットワークから、地元に0歳~2歳児の保育ニーズがあるとの情報を得たため、地域枠を設定した。

企業内に向けた対応

従業員が優先して保育施設を利用できるようにし、従業員の保育料の一部を福利厚生としてあけぼの会が負担することとした。

設立までの流れ

時期 内容
開設2年3か月前
平成28年3月頃
従業員からの早期の職場復帰や保育施設設置を望む声を受け保育施設の設置を検討。
企業主導型保育事業の活用を検討。
⇒設置方式や運営方式の決定
⇒設置場所の決定
開設1年2か月前
平成29年4月頃
他法人の企業主導型保育事業を視察。 ⇒開設に向けた具体的準備
開設1年1か月前
平成29年5月頃
児童育成協会へ申請。 ⇒申請手続き
開設8か月前
平成29年10月頃
保育施設の着工。
園長以外の職員を募集。
⇒施設整備
⇒人材確保
開設3か月前
平成30年3月頃
従業員の利用ニーズを調査。 ⇒ニーズの把握
開設2か月前
平成30年4月頃
自治体と情報交換。
職員の新人研修実施。
⇒自治体等との調整
開設1か月前
平成30年5月頃
運営マニュアルの作成などの開設準備。
園児の募集案内チラシを近隣住宅に配布。
従業員や近隣住宅を対象とする内覧会を開催。
⇒開設に向けた具体的準備
⇒利用者の募集
平成30年6月 保育施設の開設。 ⇒開設

運営のポイントの詳細

自治体との連携

あけぼの会は医療・介護サービス事業を行う中で市と連携を取ってきている。保育施設の設置に際しても、市の健康福祉部子ども支援課を訪ね、開設後の連携や事務手続き、地域枠の設定、年度途中の一時的な受け入れ方法などについて助言してもらった。

保育施設設置後も市に定期的に出向き、利用状況などを報告している。市からも月1回程度、空き情報の照会が入る。市では、保護者から保育施設入所の問い合わせがあると、空き状況を踏まえ、必要に応じて保育施設を紹介してくれている。

市では小学校・幼稚園・保育園連携協議会を設置し、情報交換会や園児の小学校体験入学などを行っている。保育施設として参加は求められていないが、連携協議会が開催された時には、市から協議内容の提供があるので、情報がわかるようになっている。

地域との関わり

保育施設の開設前に、施設内覧会の案内チラシを近隣に配布し、3日間内覧会を開催した。地域枠があって、年度途中でも入所可能であり、一時保育もしてもらえるので、ぜひ利用したいという近隣住民の声を聞くことができた。

また、介護・リハビリサービスの利用者が、従業員との会話の中で保育施設のことを聞き、あけぼの会であれば自分の孫にも利用させたいと言ってくれている。

保育施設開設からまだ1年ほどしか経っていないが、地域から多くの関心と期待をもって見られている。

展覧会の案内

内覧会の案内

保育士の確保・定着

保育士は市内にあるハローワークを通して募集した。募集要項に持ち帰り残業はないと明記し、給与は市内の認可保育所の保育士の給与水準より高く設定した。5人の募集に対し14人の応募があった。保育士のみならず、事務職も保育士資格を持っている人を採用した。認可保育所や病児保育室で経験を積んだ保育士が経験の浅い保育士をサポートする体制としている。園長はあけぼの会の介護事業で相談支援を担当していた人で、園長に就任するにあたって1年間のマネジメント研修を受けた。

人員は、園長、保育士7人、子育て支援員2人、調理師1人の11人体制である。祝祭日の勤務体制も取れるよう、配置基準より多い職員を採用している。また、業務報告や保護者への情報交換に保育施設向けの業務支援ツールを導入し、業務を効率化することで残業をできるだけ少なくするなど、保育士定着のための労働環境の整備にも取り組んでいる。

利用者の確保

あけぼの会で月1回開催する運営推進会議で、毎回保育施設の受け入れ状況や潜在的利用者の情報を共有している。妊娠がわかった従業員に人事担当が保育施設の利用方法の説明や利用意向などを確認している。

地域枠による利用者の確保については、市と定期的に空き状況を共有しており、空きがある時に市から入所を希望する保護者に保育施設を紹介していただいている。空き情報はあけぼの会のホームページや保育施設の園だより、ブログにも載せるなどし、利用者の確保につなげている。

企業の特色を活かした取組

保育施設はあけぼの会が運営する介護老人保健施設の前にあることから、日常的に子どもたちと高齢者世代の交流がある。介護老人保健施設の庭に保育施設のすべり台やブランコなどの遊具が設置されており、介護老人保健施設の大きな窓からは子どもたちの様子をいつでも見ることができる。入所している高齢者が庭に出てきて子どもたちと話をすることもある。豆まきや七夕、敬老の日の交流会、クリスマス会など介護老人保健施設と共同開催している行事も多い。子どもたちの思いやりや優しさを育くむ保育環境にある。

あけぼの会には障害児の支援事業を行っているところがあり、子どもに気になる症状があった場合の相談先になっている。また、保育施設の職員が療育内容の見学に行き、保育施設でも療養方法を取り入れることができるようになった。

節分のまめまき

介護老人保健施設入所者と子どもの交流

保育内容

保育の質(専門性の向上)

あけぼの会では、新人研修と園内研修を行っている。新人研修は1か月、あけぼの会の各職場で介護や事務などの仕事を体験してもらう。法人の理念を理解し、法人が求める人材のあり方を学んでもらうための研修である。園内研修は年間3回実施している。内容は、園児の成長の振り返り、行事の立案と振り返り、保護者との関わり方、献立内容、そしてあけぼの会全体に関わる苦情処理対応や感染症対策などである。

外部研修は、県主催の障害児保育、食育・アレルギー対応、保健衛生・安全対策、感染症予防研修、保育士等キャリアアップ研修などに加えて、市主催の就学期の教育・保育合同研修などに参加している。また、社会福祉法人日本保育協会主催の保育所保育指針解説書セミナー、県社会福祉協議会主催の福祉保健施設・事業者等事務職員研修などにも参加している。外部研修に参加することで、園内研修とは異なる専門性を身に付けることができる。

外部研修に参加した保育士は出張報告書を作成し、研修内容を保育施設の全職員に伝わるようにしている。さらに、家庭で注意してほしいことがあれば、園だよりで保護者にお知らせするなど、研修内容を日々の保育に活かすようにしている。

安全の確保

避難訓練は、月1回実施するものとあけぼの会全体として実施するものがある。毎月の避難訓練では、地震、火災、水害、落雷、停電、不審者対応などテーマを絞り実施している。年齢が低い子どもたちには、テーマに合わせたイラストや写真を事前に見せてどのように避難したらよいのか理解できるよう工夫している。また、避難先になると考えられる介護老人保健施設に日頃から行き来し、行き慣れるように心がけている。年度末に毎月の防災訓練の内容を振り返り、必要に応じて防災マニュアルを改訂している。

安全点検は、各保育士が月替わりでチェック項目に沿って実施している。危険箇所があれば改善し、事故等があれば事故報告書やヒヤリハット報告書を作成し、情報共有している。

避難訓練・安全指導1

避難訓練・安全指導2

避難訓練・安全指導

避難訓練・安全指導3

感染症対策の手洗いの徹底

食育の推進

食育計画は保育施設が作成し、給食の献立は介護老人保健施設の委託先の管理栄養士が作っている。温かいものを食べてもらえるように給食は園内で調理している。

こどもの日、七夕、クリスマス、ひな祭り等の行事食のほか、お誕生会の手づくりおやつ、季節の食材を使用した給食を提供している。離乳食は、各家庭の調理方法に合わせて作って提供している。楽しんで食べてもらうために、介護老人保健施設の利用者と従業員が一緒に育てたサツマイモを子どもたちが収穫し、焼き芋にして食べる取組も行っている。

定期的に園長、保育士、委託先の管理栄養士、栄養士による給食会議を開催し、人気の献立や行事食、残食、食材の確認、給食に対する要望などを検討し、改善につなげている。改善点があれば、管理栄養士が保育施設の調理員に伝える。また調理員も、子どもたちの食べている様子を必ず見て状況を確認するようにしている。給食会議により食育に対する認識の共有にもつながっている。

企業主導型保育事業への取組の効果

企業にとって

若い世代が子育てと仕事を無理なく両立できる環境が整った。産休・育休後の従業員の職場復帰が円滑に行われている。専門技能のある有能な人材が定着し、勤務調整がしやすく、人材採用にも有効である。市の待機児童解消にもつながっており、あけぼの会としての地域貢献度が高まった。

今後は、これまで得た知見やノウハウを活かし、子育てに悩む人に助言できるようなセミナーの開催や、地元の様々な問題や課題に対して何ができるかを提案していきたいと考えている。

地域にとって

保育施設では、認可保育所であれば難しい年度途中での受け入れや、里帰り出産等の際の一時受け入れに市と連携しながら対応している。0歳~2歳児の待機児童受け入れにも貢献している。

保育施設の周辺は高齢者が多く住んでいるが、周辺の住民からは、子どもたちが大きな声を出して明るく遊んでいると元気がもらえるという声が聞かれ、保育施設周辺は明るく和やかな雰囲気となっている。

保護者にとって

従業員枠の保護者からは、保育施設探しの手間がかからない、職場復帰が円滑に行えた、職場の理解が得やすいと評価されている。保育施設があることで離職をせずにキャリア形成が行えると好評である。地域枠の保護者からも、保育士の質が高くて信頼できる、保育施設との連絡アプリでいつでも子どもや子育てに関する情報交換や情報共有が図れ、安心して子どもを預けることができると好評である。

企業担当者・利用者・自治体関係者の声

企業担当者の声

企業担当者

地域枠を従業員枠と同数にしたのは、地元の同業他社の人たちから保育施設の存在が羨ましがられることがあるからです。他の事業所の方が利用してくれれば、保護者の思いやニーズを吸い上げられるし、使いやすいのではないかと思ったわけです。

従業員利用者の声

従業員利用者

自分の就労スタイルに合わせて子どもを預けることができています。保育施設が職場の隣にあるので毎日の送迎の負担も少ないし、子どもの体調不良時にもすぐに迎えにいくことができ、とても助かっています。

従業員利用者の声

従業員利用者

他の保育園と比べても、子どもの個性に合わせた保育をしてくれていると思います。また、家ではできない体験をさせてもらっているので、子どもにとっても毎日行くのが楽しみな場所になっていると感じます。子どもの様子も写真付きで毎日更新されるので、1日の終わりに連絡帳を見るのが親の癒しになっています。

[目次]  [戻る]  [次へ]