福島卸商団地協同組合(サービス)

[目次]  [戻る]  [次へ]

パートII 福島卸商団地協同組合(サービス)(PDF形式:996KB)PDFを別ウィンドウで開きます

運営のポイント
  • 保育事業の経験やノウハウを持っていなかったが、長く保育事業に携わってきた認可保育所の元理事長に出会い、その人の知見を学び、人脈から人材の確保にもつなげられた。
  • 保育施設を開設する3か月前に開設準備室をつくり、保育士等の主要な職員を先行的に採用し、保育理念や保育方針、運営方針などを保育経験者とともに整備した。
  • 保育士をはじめ職員は経験のある人を雇用することに注力し、給与を他施設よりも高くし、能力のある人材を確保した。
  • 有給休暇や土曜出勤の代休もほぼ100%取得できるよう対応している。
  • 毎日、献立の実物を保育施設の入り口に置き、保護者が見られるようにしている。
設置者の概要
○協同組合の概要 ■事業所 福島県福島市
■設立年 昭和44年11月
■資本金 67億2千万円
○業種 サービス業(共同金融事業・共同展示場事業・共同給油事業・教育情報事業・福利厚生事業)
○従業員規模 ・グループ全体 43人(うち女性41人)
・単独 6人(うち女性4人)
○協同組合の特色

・組合員63社で構成され、組合員の企業経営をあらゆる分野から支援している。

・金融事業、経営支援事業、展示場運営等の共同事業を行う。

保育施設の概要
○所在地 福島県福島市(人口:約30万人)
○地域の特色

・福島市は県内で待機児童数が最も多い。

・平成31年4月時点の市の待機児童数は97人で1歳児が40人と多い。

○設置方式 単独設置・共同利用型(26社と共同利用)
○設置場所 駅前で交通の便の良い場所
○運営方式 自主運営方式
○開設日 平成30年6月
○開所時間 通常保育 平日・土曜 7:00~18:00(延長保育18:00?19:00)
一時保育 平日 8:00~19:00
病児保育 平日 8:00~17:00
○月額保育料 0歳児 30,000円 1歳児 28,000円 2歳児 25,000円 3歳児 23,000円
4歳~5歳児 18,000円 兄弟割引(下の子どもは保育料半額)
延長保育 1回300円
病児保育 5時間以上 3,000円 5時間以内 1,500円
一時保育 0歳~2歳児 5時間以上 2,500円 5時間以内 1,500円
3歳~5歳児 5時間以上 2,000円 5時間以内 1,000円
※令和元年8月1日現在
○保育施設の特色

・広々とした園内と遊具を揃えた園庭を備え、子どもたちがのびのび遊べる環境を整えている。

・保育設備、人員体制等が認可保育所を上回る基準で運営が行われている。

○費用の状況 施設整備費 276,933,000円(うち助成分 179,470,000円)
年間運営費 86,324,162円(うち助成分 52,463,316円)
○利用定員と利用者数
  0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 合計
従業員枠 定員数 6人 6人 6人 6人 6人 6人 36人
利用者数 6人 6人 3人 1人 0人 0人 16人
地域枠 定員数 6人 6人 6人 6人 6人 6人 36人
利用者数 6人 6人 3人 1人 0人 0人 16人
合計 定員数 12人 12人 12人 12人 12人 12人 72人
利用者数 12人 12人 6人 2人 0人 0人 32人
※利用者数は平成31年3月1日現在
○運営体制
  専任 非常勤 合計
保育士 11人 1人 12人
子育て支援員 1人 1人
調理員 1人 1人
栄養士 2人 2人
看護師 4人 4人
その他 1人 1人
合計 18人 3人 21人

設立までの経緯

保育施設設置の背景

福島市は県内で待機児童数が最も多く、慢性的に保育施設が不足していた。平成20年頃から福島卸商団地協同組合(以下「協同組合」という)には、組合員企業から、産休・育休の従業員の職場復帰の遅れが多く、団地内に保育施設を設置して欲しいという要望が出ていた。また、市からも、協同組合に団地内保育施設を設置してはどうかと以前からすすめられていた。そういう状況の中で、国の企業主導型保育事業が始まり、市長自らが、市のこども未来部こども育成課に働きかけ、協同組合にこの事業を紹介してくれた。

こうした動きを受け、協同組合は平成29年6月の理事会で保育施設の設置について検討を始めることにし、協同組合の組合員企業及び従業員にアンケート調査を実施した。その結果、保育施設の必要性を感じている人や、実際に利用を希望する人が多いことが明らかとなり、早急に団地内に保育施設を設置することを決めた。

運営体制を整えるため、開設3か月前に開設準備室を設置し、保育士など主たる職員を先行採用し、保育理念、保育目標、保育方針、運営方針を決定するなど開設に向けた準備を進めた。その後、従業員等に対して保育施設の説明会を複数回開催して利用を呼びかけた。

組合員のニーズの把握

協同組合では、組合員企業及び従業員を対象に、保育施設に関するアンケートを平成29年6月に実施した。質問は、居住地域、子育ての状況、希望保育料、保育施設選択の条件と選択で重視すること、保育施設を設置した場合の利用可能性等である。67社1,120人から回答を得た(回収率87.01%)。その結果、「卸商団地内に保育所があると求人がしやすく、長く勤めやすい職場になると思うか」については85.2%が「そう思う」と答え、「近い将来保育所を利用するか」については、45.4%が「はい」と回答した。回答者の年齢は男女ともに子育て世代の20歳~40歳代が多く、潜在的な利用者の多さも明らかとなった。

設置場所の確保

設置場所の参考とするため、他の企業主導型保育施設や近隣の新設の認可保育所を視察した。保育環境を考慮し、阿武隈急行卸町駅近くで交通の便がよいところ、そして交通往来の激しい大通りから少し離れた300坪程度の土地があれば理想的だと考えた。かつて東日本大震災で被災した建物を撤去し、共同駐車場にしていた土地がそのような場所であったので、そこを保育施設の設置場所に決めた。

設置方式・運営方式の決定

設置方式・運営方式の決定においても、外部に運営を委託している企業主導型保育施設を調査し、検討資料を集めた。その上で、従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するには、協同組合が直接運営するのがよいだろうと考え、共同利用での自主運営方式とした。

協同組合内に向けた対応

運営方針などを検討する際に、アンケートで保育施設を利用したいと回答した組合員企業と連携し、意見交換会や従業員の意見の聞き取り調査を行った。保育料は、近隣の保育施設の料金を参考に利用者負担を検討し、従業員枠と地域枠ともに同じ保育料とした。ただし、企業枠利用者には各組合員企業が福利厚生として保育料の一部を補助するので、従業員は実質、地域枠利用者より低い保育料で利用できる。

設立までの流れ

時期 内容
開設1年前
平成29年6月頃
組合員企業及び各社従業員に保育施設の必要性や運営上の要望などを調査。 ⇒ニーズ把握
開設10か月前
平成29年8月頃
定員、運営方式、設置場所、施設規模等を決定。
保育施設建設予定地の建物を解体。
保育施設の遵守すべき基準や手続き、地域枠について市に相談。
⇒運営方式の決定
⇒設置場所の決定
⇒自治体との決定
開設9か月前
平成29年9月頃
児童育成協会への助成申請のための関係書類の作成及び申請。 ⇒整備費申請
開設8か月前
平成29年10月頃
保育施設の整備、保育士等の必要人材の確保、安全管理の対策等の準備を開始。 ⇒開設に向けた具体的な準備
開設7か月前
平成29年11月頃
保育施設の設置について第1回卸団地内企業向け説明会、地域住民向け説明会の開催。 ⇒企業及び地域住民説明会
開設6か月前
平成29年12月頃
保育士及び看護師、栄養士の面接及び内定。
保育施設の設置及び保育料、保育内容について第2回卸団地内企業及び地域住民向け説明会の開催。
園舎建築工事発注。
⇒保育士等必要人材の確保
⇒企業及び地域住民説明会
開設4か月前
平成30年2月頃
入所申込み受付開始。
保育施設開設に向け、人材の確保、備品の整備等の準備を開始。
⇒自治体等との調整
⇒申請手続き
開設3か月前
平成30年3月頃
保育園開設準備室を開設。
保育園のしおり、保育園ホームページの開設、スタッフの追加採用。
⇒開設に向けた具体的な準備
開設2か月前
平成30年4月頃
入所申込み受付開始。
保育施設開設に向け、人材の確保、備品の整備等の準備を開始。
⇒開設に向けた具体的な準備
平成30年6月 保育施設の開設。 ⇒開設

運営のポイントの詳細

自治体との連携

団地内の保育施設設置を市が推し進めていたこともあり、県や市は積極的に支援をしてくれた。市と保育認定書の交付について詳細な打ち合わせを行い、対応してもらった。保育施設設置後は、市と地域枠の空き状況について情報交換している。市から利用希望者の紹介を受け、空きがある場合は受け入れている。

地域との関わり

卸商団地は、団地を造成する際に市が住民から買収した土地を協同組合が購入した経緯がある。このことから協同組合は、長年地元に貢献したいという強い思いを持っていた。保育施設の設置にあたり、地域枠を設け、保育料も従業員枠と同額にしたのはこうした思いからである。また、近隣の中央卸売市場の関係者・企業に幅広く声をかけ、保育施設の共同利用契約を結び、協同組合と地元企業が連携して地域の子育て環境を整えている。

開設3か月前の平成30年3月から開園予告のホームページを開設し、4月6日に近隣の住民を対象にした説明会を開催した。

保育士の確保・定着

協同組合は保育施設の運営に関する知識や経験もなかったため、付き合いのある人材派遣会社のつてを頼り保育経験者等を紹介してもらい、経験豊富な認可保育所の元理事長に出会った。保育士の確保に際しては、その人の人脈に頼り、関係者に働きかけを行った。

保育士は経験者の採用にこだわり、給与を周辺の保育施設より高く設定し、働きやすい職場環境を整えた。そして、園長は認可保育所で副園長の経験を持つ人を、他の保育士も認可保育所での副園長クラスの人を採用できた。看護師と専任栄養士も経験者を採用した。

人員は、施設長、園長、保育士、非常勤保育士、看護師、栄養士、パート調理員、事務、パート子育て支援員の計23人体制である。配置基準より多く採用し、有給休暇や土曜出勤の代休もほぼ100%消化できる状況である。

利用者の確保

保育施設設置前に実施したアンケートで得られた開所時間や保育料などへの要望を運営に反映することで、満足度を高め、利用者の確保につなげている。従業員枠は弾力的に地域枠に振り替えることができるようにしている。そして市と空き状況を頻繁に情報共有することで、市から入所希望者を紹介してもらい、安定的な利用者の確保と高い定員充足率を維持している。

パンフレットやしおりも作成し、組合員企業や町内会、町内連合会に配布している。ホームページやインスタグラムでも保育の状況や運営の内容を公開し、保育施設を知ってもらうようにしている。

協同組合の特色を活かした取組

協同組合では、団地内の施設を活用した取組を進めている。協同組合が設置した屋内施設「ウィル福島アクティおろしまち」は、雨天の際に子どもたちの遊び場として使えるようにしている。この施設は、子どもが元気いっぱいに駆けまわれる広さがあり、また、災害時の緊急避難先にもなっている。その他、外部から講師を呼び、英会話教室、体操教室を始めた。

ウィル福島 アクティおろしまち1

ウィル福島 アクティおろしまち2

ウィル福島 アクティおろしまち

英会話教室

英会話教室

体操教室

体操教室流

保育内容

保育の質(専門性の向上)

市が主催する事故防止と事故対応、感染症対策、発達過程に応じた保育、食育活動と食物アレルギーについての認可外保育施設職員研修に参加している。

県が主催する保育士等キャリアアップ研修にも積極的に参加し、新任の保育士は、新任保育士研修も受講している。

研修後は、報告書を作成し、職員会議で他の職員と情報を共有し、研修内容を日々の保育に取り入れている。

安全の確保

月1回、年間計画に基づき避難訓練を行っている。避難訓練では、火災、地震、風水害、不審者など、毎月取り組むテーマを変えて実施している。また、年2回、管轄消防署に消防訓練実施計画書を提出し、総合防災訓練を行っている。保育施設は、災害共済給付に加入している。

日々の安全対策にも細心の注意を払ってきた。保育施設の開設準備段階から他施設や児童育成協会の公表データを参考に危機管理、食物アレルギー、感染症、散歩、プール・水遊び、午睡チェックなどの各種事故対応マニュアルの作成と実施について十分検討し、職員に周知している。保育施設の屋内遊技場に人工芝を敷いて怪我を防止している。また、保育園管理運営ソフトウェアと午睡マットを導入し、午睡時の事故を未然に防ぐ助けとしている。ヒヤリハットは小さなことでも都度記入し、全職員で閲覧できるようにしている。

避難訓練

避難訓練

避難訓練

消防訓練

交通安全教室

交通安全教室

食育の推進

日々の食事や食育を通し、食べることを楽しみ、食を大切にする心を育むことで、心身ともにすこやかに成長・発育することを目指している。食事の質を保つため、給食は保育施設で調理することを前提に、栄養士2名、調理師1名を採用した。近隣の中央卸売市場から食材を購入し、地元に根差したものや季節のもの、栄養価の高いものを取り入れている。献立の実物を毎日保育施設の入り口に並べ、保護者が見られるようにもしている。さらに、子どもたちに食に興味を持ってもらえるように、子どもたちが実際に季節の食材に触れたり、調理を手伝ったりする活動を取り入れるなど、体験を通じた食育を行っている。

経験豊富な栄養士が開設準備段階から食器や機材、素材までの多くを選定し、アレルギー対応についても万全を図っている。

企業主導型保育事業への取組の効果

企業にとって

従業員の育休の職場復帰が速やかに行われるようになり、求人では保育施設があることが好印象を与え、若手の採用活動が円滑になるなど、従業員、組合員企業の双方にとって望ましい状況が実現できている。

協同組合では、保育施設の整備、運営に相当の資金を拠出してきたが、保育施設が設置されたことで協同組合の活動がマスコミ等を通じて報道され、協同組合のイメージ向上につながった。周辺住民からも好評である。

地域にとって

地域枠を設けたことで市の待機児童対策に貢献できている。

保護者からの保育施設に対する評価も高く、近隣住民から自分の孫を保育施設に通わせたいなど、保育施設に関する明るい話題は多い。

保護者にとって

就労時間に合わせた開所時間など、保護者の要望を反映した運用が保護者に好評である。認可保育所以上の設備や人員体制も評判で、保護者の安心材料となっている。保育施設に空きがあるのであれば、子どもを預けたいという声が多く寄せられるようになった。

企業担当者・利用者・自治体関係者の声

企業担当者の声

企業担当者

保育園についての知識も経験もゼロでしたが、認可保育所の元理事長で長いこと保育事業に携わっていた人に出会え、保育を一から教えてもらい、その重要性、大変さがわかりました。その人脈にも頼り、順調に開設できました。保育の質と食事に自信を持っていますが、従業員にも地域枠の利用者にも高い評価を得ています。ベテランの保育士やスタッフに開設前から入ってもらい、一緒に保育園づくりに参加してもらったのも良かったと思います。

従業員利用者の声

従業員利用者

市には待機児童が多く、育休明けに保育園を見つけて職場復帰できるか不安でしたが、みらい・ゆめ保育園が開園してくれたので望みどおり復帰することができました。職場と保育園が近いので、子どもの具合が悪くなってもすぐに迎えにいけるところが助かっています。

地域枠利用者の声

地域枠利用者

近くの認可保育園に入れず待機していました。保育施設は認可外保育園ということで最初は迷いましたが、見学に行ってみるととても良い雰囲気で、認可保育園よりも環境が良く、すぐに入園を決めました。実際に預けてみると、いろいろな行事や体操教室などもあり、子どもも毎日楽しく通っています。

[目次]  [戻る]  [次へ]