セキスイハイム東海株式会社(建設)

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パートII セキスイハイム東海株式会社(建設)(PDF形式:670KB)PDFを別ウィンドウで開きます

運営のポイント
  • グループ会社6社と共同利用契約を結び、各社従業員に保育施設の利用を呼びかけている。また、保育施設の空き状況がわかる利用者名簿を月に1度、保育施設のある区の担当課に提出し、入所相談に来る市民への保育施設の紹介に役立ててもらっている。
  • 保育士等が個々に見つけた研修や講座に参加できるよう保育施設で参加費を負担したり、休みを提供するなどして支援している。
  • 保育施設の整備では、建設業としての強みを活かした。例えば、グループ会社の設計会社に入ってもらい、施工もグループ会社に予算の範囲でお願いすることができた。防犯対策も、日頃、取引をしている警備会社の助言を受け、整備した。
  • 季節の行事に食育を取り入れ、子どもたちと一緒に時間をかけて準備することで子どもたちは食べることの楽しさを感じることができるようになっている。
設置者の概要
○企業の概要 ■事業所 静岡県浜松市
■設立年 昭和46年9月
■資本金 1億9,800万円
○業種 建設業
○従業員規模 ・グループ全体 1,014人(うち女性129人)  
・単独 584人(うち女性148人)
○企業の特色

・積水化学工業株式会社のユニット住宅を静岡県内で販売・設計・施工しており、県内での戸建て住宅の建築実績は17年連続第1位である。

・水曜日・木曜日が休日である。

保育施設の概要
○所在地 静岡県浜松市(人口:約80万人)
○地域の特色

・平成31年4月1日現在の浜松市の待機児童数は9人であるが、保育施設がある東区は市内でも待機児童が多い。

○設置方式 単独設置・共同利用型(6社で共同利用)
○設置場所

・従業員が働いている事務所の近く。

・グループ会社が使っていた建物を増改築して活用。

○運営方式 外部委託方式(株式会社キャリア・ン)
○開設日 平成28年12月
○開所時間 通常保育 平日・土曜・日曜 8:00~19:00(従業員枠)
平日 8:00~19:00(地域枠)
○月額保育料 女性従業員の子ども 15,000円 男性従業員の子どもと地域枠の子ども 34,300円
※令和元年9月27日現在
○保育施設の特色

・園庭に出入りしやすいように玄関が広く、年度ごとの年齢(月齢)構成に対応できるよう、ワンフロアになっている。

・保育施設北側は全面強化ガラス窓で、全開した窓からは直接園庭へ出られる開放的な空間。

・園庭には砂場をつくり、子ども達が伸び伸びと育つ空間として適した環境づくりも意識した。

○費用の状況 施設整備費 13,000,000円(うち助成分 8,708,000円)
年間運営費 31,470,000円(うち助成分 30,788,879円)
○利用定員と利用者数
  0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 合計
従業員枠 定員数 3人 4人 5人 12人
利用者数 1人 1人 4人 6人
地域枠 定員数 (6人) (6人)
利用者数 1人 1人
合計 定員数 3人 4人 5人 12人
利用者数 1人 2人 4人 7人
※注:地域枠については、上限を定員数の50%として受け入れ数に応じて柔軟に対応
※利用者数は平成31年3月1日現在
○運営体制
  専任 非常勤 合計
保育士 3人 6人 9人
子育て支援員 1人 1人
調理員 1人 1人
栄養士 1人 1人
看護師 1人 1人
その他 1人 1人
合計 4人 10人 14人

設立までの経緯

保育施設設置の背景

セキスイハイム東海株式会社(以下「セキスイハイム」という)では、出産を理由に退職する女性従業員が多く、新卒者の採用や人材確保などの面で課題となっていた。そこで、子育て世代の女性従業員が出産後も安心して働き続けることができる職場環境を整えようと、平成25年頃から従業員向けの保育施設の設置検討を始めた。まず従業員のニーズ調査を行い、セキスイハイム総務部が経営層へ、保育施設の利用希望者や利用可能性のある従業員の状況などを報告しながら準備を進めた。

その後、平成28年度に内閣府の企業主導型保育事業が始まるという話を聞いて、この制度を利用できるのではないかと考え関連情報の収集を行った。開設3か月前に従業員に説明会や内覧会を開催し、地区の自治会総会や町内の回覧板で保育施設の開設を近隣住民に周知し理解を求めた。

従業員のニーズの把握

保育施設に対して実際どれくらいのニーズがあるのかを把握するため、セキスイハイムの従業員だけでなくグループ会社6社の従業員も含めたアンケートを行った。この結果、保育施設ができたら利用したいという従業員の数や、土曜・日曜も開所してほしいという要望が多いことなどがわかった。

※グループ会社6社中1社は平成31年4月にセキスイハイム東海株式会社に吸収合併。

セキスイハイム東海組織図

設置場所の確保

保育施設の設置場所は、従業員が利用しやすいように事務所の近くで、かつ、待機児童が多い地区を優先することとし、市に待機児童の情報を聞きながら探した。他の場所も検討したが、駐車場を広く確保できる場所がなかったので、最終的に天竜川の西岸にあるグループ会社が所有する空き施設に決めた。

設置方式・運営方式の決定

企業主導型保育事業が始まる前から、従業員向け保育施設の設置を検討していたこともあり、グループ会社との共同利用による単独設置とした。運営は、自社で保育事業の経験がないため保育実績のある会社に委託した。保育施設を設置した東区は、市内でも待機児童数が多い区で、地元への貢献や企業のイメージアップを考え、地域枠を設定した。

企業内に向けた対応

保育施設は福利厚生の一環であり、また、子育て世代の女性従業員の離職対策としても位置付けている。そのため、従業員は優先的に利用できるようにし、女性従業員の保育料も低く設定している。

設立までの流れ

時期 内容
開設3年前
平成25年頃
従業員の福利厚生の一環として、保育施設の設置を検討。
保育施設に対する従業員のニーズや運営上の要望などを調査。
⇒社内での設置検討
⇒社内ニーズの把握
(アンケートの実施)
開設2年前
平成26年頃
自主運営方式と外部委託方式のメリットやデメリットを調査。 ⇒運営方式の検討
開設10か月前
平成28年頃
企業主導型保育事業の情報を入手。
従業員のニーズを再度調査。
各設置方式の特色を踏まえ、自社に合った設置方式を検討。
⇒参考情報の入手
⇒ニーズの把握
⇒設置方式と運営方式の決定、
外部委託業者の選定
開設6か月前
平成28年6月
整備費、運営費それぞれの助成要項に基づき、児童育成協会へ申請。 ⇒申請手続き
開設3か月前
平成28年9月
自治体との連携確認。
従業員、近隣住民、保護者等への説明。
⇒自治体との連携
⇒説明会の開催
開設1か月
平成28年11月
利用予定者の施設見学及び給食試食会。
保育施設利用者の募集(地域枠)。
⇒内覧会の実施
平成28年12月 保育施設の開設。 ⇒開設

運営のポイントの詳細

自治体との連携

保育施設の開設前に、セキスイハイムの担当者と園長が市のこども家庭部幼児教育・保育課へ挨拶に行った。市内の待機児童の状況を聞く一方で、市民から保育施設を利用したいと相談があった時に紹介してほしい旨お願いしたところ、保育施設のある東区の担当者を紹介してもらった。東区に挨拶に行き、保育施設の紹介などの協力を取り付けた。そこで月1回、区に保育施設の空き状況を報告している。地域枠の空きがあれば、入所希望者を紹介してもらえることになっている。

市の担当課とは定期的に情報交換を行っている。市の子育て情報サイトに企業主導型保育事業一覧のページがあり、市内の企業主導型保育施設の概要や連絡先が掲載されている。

地域との関わり

近隣に住む人が、野菜やおもちゃなどを持って保育施設に遊びに来てくれたり、地域のお祭りに誘ってくれたり、子どもたちが散歩をしている時に笑顔で手を振ってくれたりする。地元の人に親しまれながらのびのびとした保育ができている。

お散歩中に地元の人との交流

保育士の確保・定着

保育士は、外部委託事業者がハローワークを通じて募集した。子ども達を取り巻く環境が偏らないように、意識的に20歳~70歳代という幅広い年齢層で採用を行った。園長は、幼稚園教諭、インテリアコーディネーター、地元テレビ局の営業職など多彩な職歴を持ち、自ら保育施設を設置、運営した経験もある。保育士やその他の職員も、認可保育所勤務、私立幼稚園勤務、民間企業勤務、企業経営者など多彩な職歴の人材が集まった。

人員は、園長、保育士、子育て支援員、栄養士、看護師を合わせた14人体制である。子育てや介護など、女性ならではの生活環境を考慮し、職員の配置にとても気を遣っている。熟練保育士が経験の浅い保育士をフォローできるような配置としたり、Zoomやチャットワークなどの共有ツールを活用し、何でも相談できる環境を整えたり、研修会への参加を積極的に支援したりするなどで保育士の定着を図っている。

Zoomを使っての保育ミーティング

利用者の確保

グループ会社6社と共同利用契約を結び、各社従業員に保育施設の利用を定期的に呼びかけている。新卒者の採用時に保育施設があることを宣伝し、保育施設を紹介するホームページも作った。自治体との連携のところでも触れたように、毎月、区に保育施設の空き状況を報告しており、空きがあれば区にて入所相談に来る保護者に保育施設を紹介してくれることになっている。

また、利用者アンケートや入所を希望する保護者と園長との面談で保護者の要望を聞いている。できるだけその内容を保育内容に取り入れるようにし、利用者の満足度を高める努力をしている。

企業の特色を活かした取組

保育施設の整備では、グループ会社の設計会社に入ってもらい、園庭に出入りしやすいように玄関を広くしたり、外で遊んだ子どもたちが手洗いしやすいように入り口に洗面台を設置した。太陽の光をたくさん取り込めるように建物北側を全面強化ガラス窓にするなど、安全性を優先しながらも、子どもや職員が長い時間気持ちよく過ごせるように工夫した。施工もグループ会社に予算の範囲でお願いすることができた。また、防犯対策も、日頃、取引をしている警備会社の助言を受けて防犯カメラの設置場所を決めるなど、建設業としての強みを活かして施設整備をすることができた。

園庭での流しそうめんの様子

砂場で遊ぶ子ども達

保育内容

保育の質(専門性の向上)

県や市が主催している子育て支援員や保育士向けの研修、保育施設向けの研修に参加している。その他、職員が個々に見つけた研修に対しても、保育施設が参加費や交通費等を全額負担し、日当や研修手当なども支給するなど積極的に研修への参加を支援している。

平成30年度は、県主催の『子育て支援研修』、『キャリアアップ研修』に参加し、市主催の認可外保育施設を対象とした『保育者のための保護者対応』や『救急時の対応と応急処置の研修』、認可保育所、認可外保育施設、幼稚園を対象とした『園長等管理職の発達支援に関する研修』や『職員研修』、『事故防止に特化した研修』に参加した。平成30年度の研修会参加回数は、県主催の研修に17回、市主催の研修に6回である。

保育士等が個々に参加した研修は、浜松学院大学短期大学部の『夏季大学』や一般社団法人日本こども育成協議会の『アレルギー研修』、浜松商工会議所の『大人のための折り紙教室』、静岡県栄養士会の『災害時栄養支援スタッフ養成研修会』や『指導者のための健康・栄養セミナー』などである。

研修した内容は、月初めの職員会議で共有し、月毎に決める保育方針に反映している。

安全の確保

防災訓練は毎月1回、防犯訓練は年2回行っている。

防災計画は様々な状況を想定して立てている。また、保育施設は天竜川の近くにあるため、津波や洪水などの危険も考え、近隣住民とは日頃から交流を深め、災害時にお互いに助け合えるようにしている。平成30年10月に市で台風による大規模停電と断水が起き、それをきっかけに食料などの備蓄品や防災用品、訓練の見直しを行った。ウォータータンクの水で手を洗ったり、園にいられない時のために、園庭にタープを張って避難場所を作ったり、停電を想定して備蓄品の食料を使って作った給食を食べたりなど、訓練の幅も広がった。

また、おさんぽなどの外出時にはココセコムを携帯、午睡時にはセンサー式の医療機器を活用するなど、積極的にIT化を進め、職員の心理的な負担の軽減も図っている。事故予防対策をまとめた事故防止マニュアルを作成しているほか、日々の保育の中で事故につながりそうな体験をまとめたヒヤリハット集を作成し、職員の間で情報共有して、事故防止に努めている。

断水を想定しての防災訓練

医療機器センサーと目視で午睡チェックする保育士

食育の推進

『食も保育』と考えており、食育には力を入れている。年間を通して、園庭では様々な野菜を育て、水やりや追肥などをしながら世話をして、食べ頃になったものを自分達で収穫する。給食に使う食材の水洗いや皮むき、種取りなどのお手伝いをしたり、収穫したしいたけでパイシチューを作ったり、さつまいもで栗きんとんを作ったりするなど、毎月1回程度クッキングも行う。こうした活動により、子どもたちは給食やおやつを残さず楽しんで食べられるようになっている。

ひな祭り、お月見、餅つきなどの日本の伝統行事には特に拘り、食育の中に取り入れている。例えば、お月見の時は、子どもたちと一緒に月の変化を記録するお月さまカレンダーをつける保育を展開し、すすきを取りに行ったりしながら楽しみに待つ。十五夜の日にはみんなでお月見団子を作り、供えてお月さまを待った。ついたお餅で鏡餅を作って家に飾り、園では木づちで叩いて鏡開きをし、お汁粉を食べたりもした。

食育は、栽培・お手伝い・クッキングを中心に常に保育と連動し、子ども達の中に一体化して根付く形で進めている。

田植えをした稲の刈り取り

伝統を大切にした給食

企業主導型保育事業への取組の効果

企業にとって

以前は、女性従業員は子どもができたら退職するという雰囲気が社内にあったが、保育施設の設置により、仕事と子育てが両立できるという意識に変わり、子育て世代の女性が仕事を続けるようになった。加えて、男性社員の中にも子育てをしながら働く女性への配慮や気遣いなど受容する気持ちが芽生え、子どもが熱を出して早退したり、お休みしなければならない時などの対応に変化が見られてきた。従業員の子どもを優先して受け入れることができるのが企業主導型保育事業の大きなメリットである。仕事を持ちながら安心して子育てができることは、女性のキャリア形成を阻害せず、優秀な人材の定着につながり、企業にとって有益な取組である。

採用にも良い変化が見られる。新卒者の採用では、保育施設があること、仕事と子育てを両立している女性従業員がいることを紹介している。先輩女性が子育てしながら仕事をしているロールモデルが身近にあることが、安心して就職するポイントになっているようである。これまでは内定を出しても4割程度の辞退者がいたが、2割程度まで減った。

地域にとって

地域枠を設けたことで、地域の待機児童減少に貢献できている。企業と地元住民の良好な関係を築く上でも効果的である。

保護者にとって

産休・育休後の職場復帰が円滑に行える、会社営業日の土日も保育施設が開所しているなど、保護者からは子育てと自身のキャリア形成を見通すことができる職場環境が整ったと好評である。2回実施した利用者アンケートでも、本当に助かっている、ありがたい、という声が多かった。

保育施設が運営する保護者専用ブログに子どもの情報を載せており、保護者からは保育施設での子どもの様子がわかるので安心できるとの声もある。

施設全景

企業担当者・利用者・自治体関係者の声

企業担当者の声

企業担当者

毎月1日に利用者名簿を東区に提出し、空き状況をお知らせしています。空きがあれば区の窓口に相談に来られた方に当施設を紹介していただいています。市とは定期的に情報交換し、連携を大切にしています。

当施設は静岡県の企業主導型保育事業第1号なので、新聞やテレビに紹介されて多くの企業の方が見学に来られています。地域には自治会の総会で説明したり、ホームページや回覧板で情報を提供し、広く周知を図っています。

従業員利用者の声

従業員利用者

保護者専用ブログで、子どもの遊んでいる様子や帰りの報告などを細かく報告してくださるので安心です。施設が新しいということもあるかと思いますが、清潔感があり、お掃除が行き届いている印象です。一人ひとりに対応してくださる給食がうれしいです。栄養バランスはもちろん考えられていますし、食材を個人に合った大きさにカットしてくれたりと個々の対応ができるのも小規模保育のいいところですね。

自治体担当者の声

自治体担当者

保育施設から毎月、利用者の名簿をもらって人数の把握をしています。年1回、監査がありますが、特に指摘事項はないし、利用者からの苦情も入ってきていません。最初は「企業主導型保育って何?」と聞かれることがありましたが、最近では認知されてきたように思います。待機児童の受け皿になっていますし、小規模のところが多いので、一人ひとりの子どもに行き届いた保育ができることが安心材料になっているのかもしれません。

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