有限会社サイトウ・メディカル(飲食サービス)

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パートII 有限会社サイトウ・メディカル(飲食サービス)(PDF形式:1,076KB)PDFを別ウィンドウで開きます

運営のポイント
  • 保育施設運営に関する市の担当部署とは、いつでも連絡できる体制を構築している。
  • 企業主導型保育施設の立ち上げ経験を持つ人を事務長に、認可保育所で副園長経験を持つ人を園長に採用した。園長のネットワークを活用して、経験豊かな保育士を採用した。
  • カウンセラーによる相談対応や、治療と仕事の両立のための両立支援コーディネーター研修を受講した職員を置くなど、保育士の病気やストレスなどへのサポート体制を整えている。
  • 保育士は全員、救命講習を受講している。
  • 従業員や求職希望者など、保育施設の利用に関心を持つ人が、いつでも保育施設を見学できる体制を整えている。
設置者の概要
○企業の概要 ■事業所 山口県下関市
■設立年 昭和54年11月
■資本金 400万円
○業種 飲食サービス
○従業員規模 ・グループ全体 松涛会グループ 773人(うち女性610人)
・単独 124人(うち女性116人)
○企業の特色

・医療法人社団・社会福祉法人松涛会(以下「法人グループ」という)に属し、主に事業所内で調理した飲食料品を法人グループの病院や福祉施設に届けるサービスを行う。

・年間を通して休業日を設けず営業している。

保育施設の概要
○所在地 山口県下関市(人口:約26万人)
○地域の特色

・県西部に位置して、人口規模、経済規模ともに県内で最大の都市である。

・市の待機児童数は平成31年4月1日現在8人で、地域偏在がある。

○設置方式 単独設置・共同利用型
○設置場所 会社近くの住宅地
○運営方式 自主運営方式
○開設日 平成30年3月
○開所時間 通常保育 平日・土曜 7:00~20:00
病児保育 平日 8:00~18:00
○月額保育料 0歳児 35,900円 1・2歳児 35,700円
※令和元年9月6日現在
○保育施設の特色

・スプリンクラーや火災探知器、防犯カメラ、床暖房、24時間換気など、快適で安全な保育スペースを確保している。

・騒音防止を心がけた設備を整備し、事務所から全ての保育室の様子が見渡せる。

○費用の状況 施設整備費 66,936,240円(うち助成分 46,404,000円)
年間運営費 48,174,138円(うち助成分 42,443,510円)
○利用定員と利用者数
  0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 合計
従業員枠 定員数 13人 6人 19人
利用者数 13人 6人 19人
地域枠 定員数 (9人) (9人)
利用者数
合計 定員数 13人 6人 19人
利用者数 13人 6人 19人
※利用者数は平成31年3月1日現在
地域枠については、令和2年より上限を定員数の50%として受け入れ数に応じて柔軟に対応
○運営体制
  専任 非常勤 合計
保育士 6人 3人 9人
子育て支援員
専任病後児看護師 1人 1人
栄養士兼調理員 1人 1人
調理員兼保育補助 1人 1人
専任連携推進職員(事務) 1人 1人
合計 9人 4人 13人

設立までの経緯

保育施設設置の背景

有限会社サイトウ・メディカル(以下「サイトウ・メディカル」という)では、従業員の94%が女性で中高年世代が多く、会社が発展していく中で、次世代を担う人材の確保や離職防止が課題となっていた。その対策として、魅力ある働きやすい職場を検討した際、「保育施設があれば入社したい」という声があり、従業員の子育てと仕事の両立を支援するためにも、安心して子どもを預けられる保育施設の必要性を認識するようになった。そこで取締役が中心となり、法人グループに働きかけ、法人グループの副理事長らとともに事業所内に保育施設を持つ企業を視察し、保育施設の設置を決めた。

企業主導型保育施設の立ち上げや保育施設の運営経験を持つ人に助言をもらいながら、サイトウ・メディカル内に保育施設開園準備室を立ち上げた。保育施設開園準備室にて、従業員の保育施設への要望の取りまとめや保育施設の申請対応、保護者説明会等の開設準備を進めた。

サイトウメディカル組織図

従業員のニーズの把握

保育施設設置の必要性を確認するため、アンケートを実施して従業員に保育施設設置の賛否、受け入れて欲しい子どもの年齢などを聞いた。その結果、保育施設設置に賛成する声が多いこと、0歳~2歳児の利用要望が多いことを確認でき、保育施設設置へと踏み切った。

保育施設の運営内容を検討した際は、従業員に開所時間の要望や利用意向等をヒアリングした。

設置場所の確保

近隣で保育施設を新築する予定だったが、市街化調整区域が多く、見つけられなかった。最終的に、法人グループの施設に挟まれた場所で、コンビニエンスストアだった建物を改修し利用することにした。

設置方式・運営方式の決定

保育施設の開設にあたり、サイトウ・メディカルの取締役が法人グループ全体に保育施設の利用を働きかけたところ、2社から共同利用の要望があり、単独設置・共同利用になった。

運営は、継続的に質の高い保育の提供や保育士の育成、保育施設職員の世代交代や継承が円滑に行えるよう、また、保育施設職員が同じ法人グループの従業員であれば保護者が安心して相談などできるのではという配慮から、自主運営方式で行うことにした。

企業内に向けた対応

保育料の一部を福利厚生費として会社が負担することにした。そのため、保育料は市内の認可保育所を利用した場合の半分ほどに設定した。

設立までの流れ

時期 内容
開設2年前
平成28年3月頃
保育施設の設立を検討。
アンケートで従業員に保育施設を設置することへの賛否や受け入れて欲しい子どもの年齢などのニーズを確認。
⇒設置検討
⇒ニーズの把握
開設1年前
平成29年3月頃
事業所内に保育施設を設置している企業を視察。
企業主導型保育事業の情報を入手し事業の運営方式を検討。
⇒運営方式の決定
開設9か月前
平成29年6月
保育施設建設予定地の選定を開始。
市に保育施設の整備を行うことを相談。
⇒設置場所の選定
⇒自治体への相談
開設8か月前
平成29年7月
従業員に開所時間や保育施設の利用可能性についてヒアリングし、利用者を把握。 ⇒設置方式の決定
⇒自治体等との連携
⇒設置場所の決定
開設7か月前
平成29年8月
保育施設開園準備室を設け児童育成協会へ助成申請。 ⇒準備室の設置
⇒申請手続き
開設3か月前
平成29年12月
保育士や職員の獲得に向け、募集や社内の人事異動を検討。 ⇒人材確保
開設2か月前
平成30年1月
社内に保育施設の開所日を告知。
共同利用企業を含めた利用希望者向け説明会の開催。
園児募集開始。
⇒説明会の開催
⇒利用者の募集
平成30年3月 保育施設開設。 ⇒開設

運営のポイントの詳細

自治体との連携

サイトウ・メディカルでは、これまでも配食事業等を進めるにあたって市に相談をしており、市と良好な関係を構築していた。

保育施設の設置決定後に、市のこども未来部幼児保育課へ報告に行ったところ、市の担当者が企業主導型保育事業をよく知っていて、様々な相談に乗ってもらった。市内の待機児童の状況や保育施設の申請手続き、保育施設開設にあたっての留意点について情報提供や指導をしてもらった。病児保育事業を開始する際には、案内パンフレットを市の窓口に置いてもらった。児童虐待に関しては、事例を交えながら指導を受け保育計画づくりの参考とした。市から助成金や補助金の案内もあり、下関市多子世帯保育料等軽減事業助成金や下関市民間保育サービス施設入所児童処遇向上事業補助金を活用している。

その他、公園緑地課からの園外活動で使用する広場の使用許諾、消防局からの消防訓練の指導、総務部防災危機管理課からの災害情報や不審人物・危険動物などの出没情報の随時提供など、市の各部署と良好な関係を築いている。

地域との関わり

保育施設の両隣に同じ法人グループが運営する介護老人保健施設があって、子どもたちが散歩していると介護老人保健施設の職員が手を振ってくれるなど地域で子どもたちを温かく見守る環境ができつつある。介護老人保健施設に入所する高齢者から、子どもたちと触れ合う機会を持ちたいという要望が出されたので、これに応えて交流する機会を設けている。夏祭りやハロウィンなどの保育施設の行事を地元の人たちにも開放し、地元への定着を図っている。

保育施設が地元に知られるようになるにつれ、入所希望の声が多く寄せられるようになったが、現在、定員が常に充足しているため地元の子どもを受け入れることができていない。一方、地域社会への貢献として実施している病児保育事業は、市にパンフレットを置くなどして周知に努めてきたが、利用者は低調である。

夏まつり

夏まつり

高齢者と子どもたちの交流

高齢者と子どもたちの交流

保育士の確保・定着

園長と事務長は、サイトウ・メディカルの取締役と交流があった人に引き受けてもらった。園長は認可保育所で副園長の経験と28年の保育経験を持ち、事務長は前職で企業主導型保育事業の立ち上げに関わった人である。保育士は園長のネットワークを活用して、経験豊かな人を採用した。

人員は、園長、保育士、専任病後児看護師、栄養士兼調理員、専任連携推進員の13人体制である。保育施設開設時は保育士8人全員が13年以上の保育経験を持ち、そのうち1人は主任経験者でかつ准看護師資格保有者の体制であった。その後、家庭の事情で3人が退職し、代わりに経験5年と3年の保育士、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの小児集中治療室で看護経験のある看護師を迎えた。

保育士をはじめとする職員には、病気やストレスなどに対するサポート体制を整えている。法人グループのカウンセラーへの相談や、独立行政法人労働者健康安全機構が実施している治療と仕事の両立支援のための両立支援コーディネーター研修を受講した職員の配置などである。

利用者の確保

保育施設開設時には、法人グループの施設に保育施設のポスターを掲示した。人事関係の担当者が従業員に保育施設開設の案内を配布し、保育施設開設の約2か月前に従業員と保育施設に関心のある人を対象に説明会を開催したところ、従業員のほぼ全員が参加した。

現在、求職希望者、新人社員、育休明けの従業員は、いつでも保育施設を見学できるようにしている。また、従業員と共同利用先の従業員には、認可保育所の申請が始まる10月頃までに、保育施設への入所希望者を募り、入所の可否を事前に通知する対応を取っている。

保育施設では、豊富な経験を持つ保育士や小児の救急救命の経験を持つ看護師を採用し、保護者からのどのような相談にも対応することができている。このような体制は利用者の確保に大いに役立っている。

企業の特色を活かした取組

サイトウ・メディカルは配食事業などで食品に携わっている。そのため、食事づくりのノウハウを活かした安全な食材と子どもの成長に配慮した手づくりの食にこだわっている。オーブンには食材のうまみや水分を逃すことなく調理が行えるスチームコンベクションオーブンを導入し、食材そのものの味を活かした給食を提供している。

また、法人グループ内に病院や介護老人保健施設があり、施設利用者との交流やハロウィンパレードで病院を訪問したりするなど、施設を活用した行事を行っている。

保育内容

保育の質(専門性の向上)

保育の質を維持、向上するため、新入社員研修をはじめ人材育成のための研修の受講を重視している。

新入社員研修では、①コンプライアンス、②顧客満足、③自己啓発(知識から見識へ・向上心)に関して法人グループが求める職員の心構えを習得してもらっている。また、情報管理規程の概要、防災設備・避難体制・感染防止などの基本となるものについて学んでもらっている。

外部研修では、県や市、下関市医師会、一般社団法人日本こども育成協議会などが主催する研修に参加している。県主催の研修として、子育て支援員研修、認可外保育施設研修、病児・病後児保育研修会があり、事前に研修の案内をもらい、全ての研修に参加するようにしている。市主催の研修では、事業所内保育施設等保育従事者研修に参加した。その他、メンタルヘルス対策、アンガーマネジメント、喫煙による健康への影響、自分の気持ちや考えをまっすぐに表現できるやり方など、多岐に渡るテーマで行っている山口産業保健総合支援センター主催の研修会にも積極的に参加している。

保育士全員が外部研修に参加することは難しいため、研修に参加した職員には毎月実施する職員会議で研修内容を発表してもらい、保育士全員で研修内容を情報共有するようにしている。

安全の確保

避難訓練を毎月行うほか、市の消防局に本来は30人以下の施設は対象外となる消防訓練を指導してもらっている。保育施設に隣接する介護老人保健施設に、災害時の1次避難先、津波の際の避難先、緊急時の応援などをお願いし、承諾を得ている。

保育施設のハード面での安全対策では、玄関にIC電子カードキーを導入したり、防犯カメラ8台、警備会社と契約して緊急通報ボタンを設置したりしている。各部屋のドア・窓などに指詰め防止を施し、園庭に人工芝や弾力性のある柵を取り付け、また、うつ伏せに寝かせないことを徹底し、午睡用のベッドにはメッシュベッドを使っている。

ソフト面では、危険箇所・時間帯、注意すべき状況などを各職員がヒヤリハット集や事故対応マニュアルとしてまとめ、職員全体で共有し、対応の徹底を図っている。また、職員は全員、救命講習を受講している。

消防訓練

消防訓練

消防訓練

消防訓練

食育の推進

食育の取組として、子どもたちに食材に触れる体験の場を設け、日々の食事に興味を持ってもらえるような工夫をしている。子どもたちは、枝豆のふさ取りやトウモロコシの皮むきにチャレンジし、採った枝豆やトウモロコシは茹でておやつにしている。夏野菜の話をした後に、箱の中に何の野菜が入っているかを当てるクイズを行って、食物に関する知識と選択力を自然に身につけられるようにしている。

おやつやパンも手づくりにこだわっている。野菜が苦手で食べられなかった子どもが野菜入りの給食を美味しいと言って何度もおかわりをして食べられるようになった。

行事食は、年間の行事ごとに献立を作っている。5月であれば、子どもの日にこいのぼりランチを提供している。1歳半~2歳児向けにはチキンライスこいのぼり、0歳児には離乳食のケチャップ粥こいのぼりと子どもの成長に合わせ調理方法も変えている。

アレルギーの子どもには、食器の色を変え、トレーに名札を貼り、職員が複数で声を掛け合って確認、配膳している。

一般食 チキンライスこいのぼり

一般食 チキンライスこいのぼり

消防訓練

離乳食 ケチャップ粥こいのぼり

5月 こどもの日 こいのぼりランチ

ふさから枝豆を取り出す

ふさから枝豆を取り出す

企業主導型保育事業への取組の効果

企業にとって

産休・育休後の従業員の職場復帰が円滑になり、従業員と職場の両者にとって効果があった。保育施設を設置したことで、若い世代の従業員にも安心して働き続けられる職場であるとの理解が進み、仕事へのモチベーションが向上した。子育て世代の新規採用や新卒者の採用も進み、保育施設の設置は事業継続の上で大きな効果がある。

地域にとって

子どもたちが歌を歌いながら保育施設の周辺を散歩すると、地元の人たちから拍手をしてもらうことがある。保育施設の隣の介護老人保健施設とは定期的に訪問し合い交流している。夏祭り、敬老の日のハガキ作り、ハロウィン、クリスマス会など保育施設にはたくさんの行事があるが、卒園してからも夏祭りなどに遊びに来てくれる親子もいて、地元と良い関係が築かれつつあると感じている。

保護者にとって

保育施設は小規模で、子ども一人ひとりに丁寧に対応した保育が実現できている。安心して子どもを任せられて仕事に集中できると、保護者の満足度は高い。

保育施設が職場の近くにあるため、子どもの送り迎えが楽である。また、開所時間も7時~20時までと朝早くから夜遅くまで子どもを預けられるため、急な仕事でお迎えが遅くなる時も柔軟に延長保育で対応できる。夕食も希望すれば提供してもらえるため、従業員は安心して子育てと仕事の両立ができる。

保育施設は、保護者が子どもの様子を身近に見ることができるよう職場の近くに設置しており、保護者の職場との交流も盛んに行っていることから、保護者に安心感や信頼感がうまれている。

企業担当者・利用者・自治体関係者の声

企業担当者の声

企業担当者

自社の目的である人材確保、特に子育て世代の雇用において大きく貢献しています。
また、年度途中での育児休業からの復職者が安心して入園でき、保育時間が長いので急な早出や残業にも対応し夕食も提供するので保護者から喜ばれています。
さらに、地域の方から子どもたちの笑顔を見ることで元気がでますと感謝されています。
今後は保育園を多くの方に認知していただき、少しでも就職を希望する方が増えると幸いです。

従業員利用者の声

従業員利用者

給食が美味しくて、よく食べているようです。保育施設に通えるのは2歳までなので3歳から他の保育園に移らなければならないのですが、できればこの保育園にずっと預けていたいです。小規模で子どもたち一人ひとりに目が行き届いているので安心して働けます。

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