全国リレーシンポジウム〈千葉県〉 基調報告

2.基調報告 「政府の少子化対策について」

尾澤 英夫 内閣府大臣官房審議官

 一昨年の我が国の出生数は106万人、出生率は1.26と、これまでの最低を記録しているところです。このような状況が続きますと、この先、我が国の人口は現在の1億2700万人から加速度的に人口減少が進み、2046年には1億人を下回り、2055年には9000万人を下回ると予測されています。しかも人口の高齢化率、65歳以上の人口の占める割合が現在の20%から40%になるということが予測されています。
こうした少子化の原因については未婚化の進展があげられています。2005年の国勢調査の結果、男性が30代前半で47.1%の方が未婚、女性は30代前半で32%の方が未婚という状況になっています。また晩婚化も進展しています。平均初婚年齢は現在男性で29.8歳、女性で28歳となっています。さらに御夫婦が子供を持たれた場合の子供の数についても、これまで2.2人前後で推移しておりましたが、最近それについても低下の傾向が見られます。
こうした少子化、未婚化、晩婚化の進展の背景には、よい結婚相手にめぐり会わない、独身生活に利点がある、経済的に不安定な若者の増加、自立できない若者の増加、あるいは仕事と家庭の両立が難しい、それから育児や教育のコストの負担、夫の育児への不参加の問題といったことが指摘されています。
こうした状況に対して、政府はこれまで何度か大きなプランをつくり、対策を進めて来ました。1990年代半ばからエンゼルプラン、そして、新エンゼルプランを作成して少子化対策を進めて来ました。これらのプランの特徴は、保育サービスの充実を中心にしている点です。ここで掲げられました保育所の整備などの政策については、ほとんど目標値を達成して来ましたが、それにもかかわらず、出生数や出生率の低下傾向には歯止めがかかっていません。
こうした状況の中で、2003年に政府は「少子化社会対策基本法」をつくりました。この基本法で少子化対策について全般的な対策に取り組んでいこうということを決めました。それが「少子化社会対策大綱」というもので、その中では4つの重点課題を決めました。若者の自立、仕事と家庭の両立支援や働き方の見直し、生命の大切さと家庭の役割等についての理解、そして子育ての新たな支え合いと連帯です。この重点課題を基に「子供子育て応援プラン」を策定し、これを実行して来ました。
そうした状況の中で一昨年の状況を見ると、少子化がさらに進行している。人口減少が現実のものになったということで、これらの対策の中でも特に重点を決めて進めていかなければいけない対策を、もう一度打ち立てようということで、「新しい少子化対策」を昨年の6月に政府として決定しました。これによって、これまでの少子化対策の抜本的な拡充、強化、転換を図るという決意をしたわけです。
「新しい少子化対策」で決められた具体的な対策が40項目あります。この対策に基づいて平成19年度の少子化対策関係予算が編成されています。政府の少子化対策関係予算は、来年度1兆7064億円となり、前年度の1兆5000億円強から比べて1800億円、12.3%増ということになりました。政府全体は歳出歳入一体改革の中で大変厳しい予算査定をされていますが、この少子化対策については12%増の予算という政府原案となっています。
この中の幾つかのポイントを申し上げますと、一つは子育て支援策ということで一番目に妊娠、出産、乳幼児期からの対策として小児科、産科医療体制の確保、不妊治療の支援などの母子保健医療の充実。それから子育て支援に関する情報提供をお子さんが生まれた家庭に対して、いろいろお伝えしていくために生後4カ月までに全ての御家庭を訪問する「こんにちは赤ちゃん事業」というものを始めます。それから妊娠中の方々の検診費用の負担軽減についても充実しようということで、予算計上しています。また、特に若い世代の方々の最初にお子さんが生まれたときの経済的な困難度が非常に強いというご意見が大変多くありましたので、児童手当の乳幼児加算を創設しました。これによって、3歳未満のお子さんについては、児童手当はこれまで月5,000円から1万円に増額支給されます。それから地域子育て支援センター事業は、これまでのプランでは平成21年度に全国6,000カ所の計画でしたが、これを大幅に前倒しして、来年度に6,000カ所すべてを実施することにしました。
小学生期のお子様に対する対策ということでは、「放課後子供教室」、「放課後児童クラブ」といったものを平成19年度で2万ヵ所、全小学校区域につくることを決めています。
働き方の改革については、仕事と育児の両立、子育ての孤立感と負担の軽減という観点から、育児休業の取得促進のための育児休業給付の拡充ということで、これまで休職前賃金の4割であったものを5割に引き上げることにしています。また、育児休業や子育て期の短時間勤務等の制度を企業の中で普及していただくために、こうした取組をしている事業主に対して、助成制度を新たに創設することを考えています。長時間労働の抑制のための労働時間法制の見直し、パートタイム労働者の方々の均衡処遇の推進についての制度の充実と整備も図っていきたいと考えています。
女性の方々の再就職支援のために全国マザーズハローワークが整備されていますが、これについてもさらに拡充したいと考えています。それから若者の自立支援ということで、フリーター25万人常用雇用化プランの推進もあります。
その他の政策としては、企業の子育て支援税制の創設ということで企業の中に設置している事業所内託児施設に対して、一定の要件に該当する場合に税制で支援しようということで、割増償却制度を創設することにしております。このような形で政府としても予算や制度面で、できる限りの対策を盛り込んでおります。
子育て支援については、国、地方、企業、労使、そして地域の方々全員に取り組んでいただきたいということで、「官民連携子育て支援推進フォーラム」を昨年9月に立ち上げ、シンポジウムの開催、あるいは労使で取り組むべき課題について意見等いただいております。こうした取組の中、一昨年から婚姻数が増えて来ました。また出生数についても昨年は前年を上回ってきています。こうした流れを定着させるべく国としても全力をあげていきたいと考えております。