全国リレーシンポジウム〈千葉県〉 パネルディスカッション

4.パネルディスカッション「働き方改革―子育て支援と企業の生産性維持・向上のために」

(パネラー)

黒河 悟
連合千葉 会長
竹山 正
株式会社千葉銀行 取締役頭取
堂本 暁子
千葉県知事
広浜 泰久
株式会社ヒロハマ 代表取締役社長

(コーディネータ)

鹿嶋 敬
実践女子大学 教授

パネルディスカッションの様子

○鹿嶋 ワーク・ライフ・バランスというと、最近大分耳に馴染んだ言葉になっていますが、私は2005年まで日本経済新聞の記者をしておりまして、2004年4月12日付の新聞に「ワーク・ライフ・バランスという言葉を耳にするようになった」といった書き出しで記事を書いています。新聞記者としてかなり早くからこの言葉を使っていたと思うのですが、このような背景を見てもワーク・ライフ・バランスという言葉が日本で普及してきたのは、この3年ぐらいのことだと思います。


コーディネータの鹿嶋敬氏

以前はというと、ワーク・ファミリー・バランス、ファミリー・フレンドリーな企業という言葉があるように、共働き家庭にウエートをおいた、仕事と私生活の両立策だったわけですが、アメリカなどは1990年代に入ると「ファミリー・フレンドリー」から「ライフ・フレンドリー」に変化してきて、やっと日本の方にも共働き家庭だけではなくて、シングルの男性、女性、あるいは片働き家庭、そういう人たちも含めた私生活と仕事の両立の大切さというものが強調されてきたわけです。同時に、日本は今、深刻な少子化問題を抱えています。アメリカの場合は、2004年の合計特殊出生率が2.05ですから、人口置換水準が2.07ということを考えると、少子化問題は存在しません。最近、西欧先進国で2を突破してきたのがフランスで、2006年の数字が2.00と回復してきました。日本では、1.26という非常に深刻な数字でして、西欧先進国で日本より低い国はまだあるのですが、大体が右肩上りになってくる中で、日本だけが右肩下がりになっている。そういう中でどういうふうにしたらいいのかという一つの手がかりとなるのが仕事と私生活の両立という問題であると思っています。
今日は、4人のパネリストの方にご登壇いただきました。
まずそれぞれのお立場から少子化対策、あるいは働き方改革を、それぞれどういう考え方、やり方で取り組んでいるのかを発表していただきます。

4‐1.働き方改革にむけた取組

○堂本 なぜ日本では、こんなにフランスに比べて少子化が進むのかと言えば、やはりこれは女性だけの問題ではないです。女性が生む、生まないということではなく、子どもというのは、ご夫婦、カップルが生みやすいか生みにくいか、子どもが大勢欲しいか欲しくないかということだと思うのです。そういう中で、どうして子どもの数が少ないのか。なぜ2人3人、もっと大勢持たないのかということを若い方に聞くと、理想としては2人とか3人が一番多い。しかし、現実の問題としては、経済的理由で生まない。経済的理由ということは、スウェーデンなんかもそうですけれども、ご夫婦で働きながら子育てができれば、経済的な余裕もありながら子育てもできるわけです。一番誤解していただきたくないのは、やたら女の人が働きたがっているのだと、そればっかりが先行しているようにちょっと思えますけれども、そうではない。やはり経済的な理由というのが現代社会の中ではとても大事。やはり女性も収入を得て、ご夫婦二人の収入の中で生める状況ということがとても大事ではないかと思っています。
そういうことで、千葉県の次世代育成支援行動計画というものを、お父さん、お母さんたちとの話し合いを重ねながらつくってまいりました。その中で大事なことは、やはりお父さんお母さん、主に若い方ですが、仕事と子育てが両立する働き方の実現ということが出てきました。より生きやすい、楽しく地域で暮らせるということはどういうことかというと、やはり子育てと仕事が両立するということです。そのため、県としては、経済界、労働界と話し合いをさせていただきました。千葉県として本当に素晴らしいと思うのは、経済界・労働界が本気でそのことを理解して下さって、協定を結ぶことができたということなのです。商工会議所連合会、経済同友会、商工会連合会、経営者協会、中小企業団体中央会、中小企業家同友会、連合千葉、千葉県生産性本部と県と、相当網羅していると思います。その間で私たちは、ぜひ仕事と子育ての調和が取れる働き方を実現するために努力をしていこうということを申し合わせました。


堂本暁子・千葉県知事

 それからもう一つ。県の中で「社員いきいき!元気な会社宣言企業」というのを募集しています。「社員いきいき!元気な会社」とはどういう会社を指しているかと言うと、育児休業が取れる、あるいは子育て中の社員への短時間労働を認めている、あるいは子どもの看護休暇が取れる、それから父親も休暇が取れる、それからそういうことを推奨するためのニュースレターを出しているといったようなことを一つでもやっている会社を千葉県では「社員生き生き!元気な会社宣言企業」として募集をしています。これは平成17年10月にスタートしましたが、19年1月17日現在123社、そして平成21年度末までには、これを700社にしたいという目標を定めています。
また、仕事と子育ての両立ができるように「仕事と子育て両立支援企業経営アドバイザー」を養成しています。両立支援は、特に中小企業ではなかなか大変なことですから、実務面からアドバイスをするということで、17年度からアドバイザーの養成を始めています。
もう一つ、再就職をしたくてもなかなかできない女性のために、「マザーズハローワーク・ちば幕張ブランチ」という国の施設と「子育てお母さん再就職センター」という県の施設が一つの部屋の中で、一緒になって再就職支援をやっています。実際に、そこへいらして、いい仕事が見つかったと言って喜んでいる方、2年後に働きたいと思っているけれども、それまでにどういう形で自分の職業能力を強化したらいいかということを考えている、そういう方も出てきました。
さらに、千葉県庁で育児休業の制度、男性の育児休業を50%にしたいということを言っています。たとえ1週間でも1カ月でも、奥さんが出産するときには男性も育児休業を堂々と取ってください。制度がない時代は、13年間で3人しか男性は育児休業を取らなかった。ところが、プランを立てて初年度、これを実行するようになってから17年度は5人が取りました。働いている人全体の4.5%です。2年目は5名が取る予定で、取得率は5.5%になります。これは平成17年度の国全体のレベルで申しますと、千葉は今、千葉県庁は4.5%ですけれども、国は1.0%、地方公共団体も全部平均では0.6%、民間では0.5%です。こうした目標をきちんと立てて、男性も出産の前後、あるいは子育てに一番忙しいときにそういう休暇を取ってくださいということを、ぜひ、ほかの会社でも進めていただきたい。そうすれば家事や仕事を全部女性が負担するのではなく、一緒に働きながら一緒に子どもを育てているということを女性の側も実感できると思っています。

○鹿嶋 5.5%というのは大変いい数字ですね。国の目標まで10%ですが、いずれにしても大変いい数字だと思います。
続いて、企業経営者の立場でお話を頂戴したいと思います。

○竹山 千葉銀行の竹山です。社会の多くの場面で少子化対策にかかわる重要なテーマの一つとして「仕事と育児が両立できるような職場環境づくり」が挙げられており、企業経営者のリーダーシップが叫ばれているところです。職場環境に関する事がらですから、当然企業の役割が重要なことはもちろんですが、この問題はやはり企業だけで何とかできる問題ではありません。国や県、そして国民もそれぞれの立場におきまして、きちんとした役割を果たすことが重要だと考えております。こうしたことから、本日のこのシンポジウムは大変意義深いものと思っています。


竹山正・千葉銀行取締役頭取

 私の銀行経営者としての役割としては、少子化に伴って労働力人口が減少する中でも、千葉銀行がしっかりと必要な人材を確保していくためには、男女双方にとって働きがいのある職場だと感じてもらえるように、今のうちから職場風土変革に取り組むことであろうと考えています。現在千葉銀行では「高い意欲を持ったチャレンジ精神旺盛な女性には一段の活躍の場を広げ、男女が共に研鑽し合う、活力ある職場づくり」を目指した基本方針「女性いきいきキャリアアップ宣言」を掲げています。この宣言では、女性の活躍のために、「仕事と育児の両立支援は必要不可欠である」ことはもちろんのこと、男性も子育てに参加するなど、男性自身の働き方の見直しも必要だろうということを示しています。この宣言を平成17年11月に制定して、社内報、ポスターや銀行ホームページ等を通じて銀行内外に公表しており、現在、これからご紹介するさまざまな取組を進めているところです。
私がこのような方針を打ち出したのは、ここ数年銀行では「貯蓄から投資へ」の大きな流れと銀行業務の規制緩和が進み、当行でも投資信託や個人年金の販売が非常に大きな主力を占めておりますが、投信の件数では7割、金額では5割が窓口で販売されている。すなわち女性行員により販売されているということが一つのきっかけとなっております。確かに収益的にもそれで非常に潤っているわけですけれども、それよりも何よりも、こういう投信を販売することによって、女性行員が非常に活性化したということが何よりの喜びです。こういうものをやる前は日経新聞等々を読む人は少なかったわけですが、今や銀行に来る前に日経新聞、あるいはビジネスサテライトを見てこないと営業はできないということで、非常に女性が活性化したということです。
両立支援の拡大については、確かに企業にとって一時期コストアップになる面もありますが、いずれ職場復帰の際には、より人間的に成長して、銀行の業績向上に役立ってくれるものと確信しています。
現在、当行では、出産・育児に関して、有給の産前・産後休暇に続いて育児休業、そして職場復帰に向けての支援プログラム、復帰後にはお子様の看護休暇や時間外労働の免除制度などの支援策があります。個別の内容については、基本的には改正育児介護休業法などの法の定めよりも充実した支援になるよう努力しています。
また、一旦仕事から離れて子育てに専念し、子育てが落ち着いたら再び働きたいというニーズに応えて導入したのが、出産や育児等で退職しても、職場復帰ができるような再雇用を制度化した「リ・キャリアプラン」です。この制度は新聞等で取り上げられた結果、多くの元行員から利用の申し込みがありまして、現在数名の方が復帰し、大いに活躍しています。
また、女性が活躍できる環境を考えると、子育て支援に限らず仕事と生活との両立支援という観点も考えなければなりません。銀行は時間外労働、長時間労働の問題がありまして、これを解決しなければならないと考えています。銀行も随分帰宅時間が早くなったのですが、時には遅い日もありますので、極力早く帰れることを徹底したいと思っています。
私は常々職員に対して、地域に根ざした企業である千葉銀行の強みは「お客様との距離感」だと話しています。その距離感を縮めるものが「お客様満足の追求」でありまして、お客様満足を提供するには、豊富な知識、ノウハウと共に笑顔を欠かすことはできません。そして、その笑顔の原点は家庭にあると常々言っています。家庭、自分の一番身近にいる家族を幸せにできない人間が、なぜ他人である行員やお客様に満足を与えることができるのか。幸せな家庭こそCSの原点である。ですから幸せな家庭から出てきて、笑顔で幸せな気持ちで銀行に入ってきますと、それが行員すべてに伝わり、その行員がまた笑顔になり、そういう気持ちでお客様を迎える。CSの原点がそこにあるということで、やはりすべての基本は家庭にあると言っているところです。こうした考え方から私は千葉銀行をさらに働きがいある職場にしたいと考えていますし、職員が充実した生活を送りながら、それぞれが持つ能力を最大限発揮できるような企業であり、かつ「家族・友人に誇れる銀行」を目指して、これからも取組を進めていきたいと考えています。

○鹿嶋 「女性いきいきキャリアアップ宣言」は、男性行員も含め、浸透しているのですか。

○竹山 はい。銀行という職務上、女性なしには成り立っていかないということで、女性云々というより、女性がいなければ我々が困るというくらい組み込まれています。

○鹿嶋 続いて、中小企業の経営者の立場からお話を伺いたいと思います。


広浜泰久・ヒロハマ代表取締役社長

○広浜 株式会社ヒロハマの広浜です。千葉県の中小企業家同友会の代表理事もさせていただいております。
まずこの子育て支援、働き方改革ということですが、まず社員に対する基本姿勢というものがどうあるべきなのかということを我々がどのように考えているかから少し入っていきたいと思います。
実は私、中小企業家同友会に入って最初の例会でびっくりしたのですが、そこで我々は企業家を目指しているのだというのです。生業や家業ではなくて企業家を目指しているのだから、例えば一人でも他人社員が入ってきたら会社というのは公のものなので、入ってきた他人社員の生涯設計に対しても、やはり責任を持たなくてはいけないということを教えられたのです。私にとって非常にショックなことでして、それだけ責任のあるものなのだと感じながら、今日までやってきました。
そんなことで、我々は社員が入ってきますと、一人ひとりいろいろな希望もありますし、何が得意、何が不得意ということもあるし、そんなことで大体35歳になったら、自分の一番ピタッとはまる、一番能力の発揮できる、そういった力を発揮できるような仕事に就いてもらう。そのために、いわゆる知識や経験というものを積み重ねることができるような教育だとか、ローテーションとかを組んでやっていこうよということでやっております。そこで、途中に子育てが入ってきた場合はどうなのかということですけれども、全く同じふうに考えなければいけないだろうと思うのです。ですから、女性も20代、30代、40代、それぞれ経験や知識を積んでいって、よりレベルの高い仕事をやってもらう。やっとレベルの高い仕事ができるようになったときに、辞められてしまうと会社としても非常にマイナスなのです。その意味で仮に育児休暇とかあっても、しっかりと我々がそれをとれるような環境をつくっていかなければいけないと考えているわけです。
では、実際どういう形でやっているかと言うと、120人くらい社員がいるのですが、いわゆる正社員は70名くらいですね。その中で、この10年くらいで産休、育児休暇を取った人は5人います。5人いて延べ9回ですね。その間、どうやって穴を埋めたのかというと、基本的に派遣社員の方でカバーするという形を取ってきました。何で派遣社員なのだというと、育児休暇を取ってきた人が戻ってきた場合、もといた、もとやっていた仕事に戻ってもらうということを基本にしています。ですから、別の人をつけると、またいろいろ考えなければいけないことがあるので、なるべくそういう形を取ろうとしています。実際に元の職場に戻れたのかということでは、一人はローテーションで別の職場へ行っています。一人は、子どもさんが二人目までは同じ職場に戻ってきたのですが、三人目が生まれてさすがにこれは難しいぞと、というのはそこは結構残業の多い職場でして「これはちょっと無理だね」ということで、残業のない、今までとは違う仕事に就いてもらっています。
大体、残業がある職場なのですが、ただ残業というのは、25%余計に払うわけで、我々経営者としてもできればやってほしくない、また働く人にとっても嬉しくないということで、できるだけ仕事を効率的にしていくよう、また別のテーマで取り組んでいるところです。
そういう形でずっと派遣社員でカバーしながらやってきていたのですが、本当にうまくいったのかというと、これはなかなか大変です。優秀な人であればあるほど、その人にしかやっている仕事がわからない。だから代わりにやろうと思ってもできない、またどういうところに無駄があるのか、ということもわからないという状況の中で、日々仕事をしています。ですから、その人がいなくなると、非常に戸惑うし、業務にも支障をきたす。ですから、いろいろと経験を積み重ねてきて、どういう準備をしなければいけないのかということもだんだんわかってきまして、そういう準備をしていくことが、我々の企業の成長にもつながっていくのだということがようやくわかってきました。

○鹿嶋 代替要員はきちんと派遣社員で穴埋めするのですね。でも、さすがに子どもが3人にもなると、周囲から不満みたいなものが出るのですか。

○広浜 実はそうなのです。一人目は本当にみんなが「おめでとう」と言ってくれるのです。二人目になると、ややちょっと首をかしげながら「おめでとう」となって、三人目になると「本当かよ」みたいな形になるのが実際のところではあります。まあでも、そういう形でも何とかみんなで対応しようということでやっているわけです。

○鹿嶋 続いて、労働組合の立場からお話しをしていただきます。

○黒河 連合千葉の黒河と申します。労働組合、勤労者という立場から意見を述べさせていただきますが、今、大きな企業、中小、そういう立場でそれぞれ努力をされているという報告を受け、大変心強く思いました。いずれにしても、取組にあたって、企業のトップの方が決断をして、そして前へ進む。このことの大事さを引き続きお願いしたいと思います。
連合というのは、同種の企業別組合が集まって産業別の組織をつくり、ナショナルセンター、ローカルセンターという形で集まっています。そのように言うと、それぞれの経験というのは一つひとつの企業の中で蓄積されています。


黒河悟・連合千葉会長

 連合では、労働組合の労働条件実態調査を2年ごとにやっていますが、その調査結果を見ると、国がいろいろな制度を導入する。そうすると、ほとんど労働組合は一定の整理ができている。しかし、それをどういうふうに活用、利用しているかというと、なかなか十分に活用がされていないと、こんな結果が出ています。さらに考えてみますと、皆さんご承知のとおり、8割の働く人にとって組合がない。こういうことですから、このシンポジウムの中では具体的ないろいろな事例が出ていますけれども、やはりもう一度、働く者全体で、今、どういうような働き方の状況になっているのかということをおさらいすることが必要だと思います。
先ほどの働き方でどうしても問題になってしまうのは、総実労働時間の問題です。政府等の調査で見ますと、1,800時間程度ということになっていますが、現実は短時間勤務のパートの皆さんも含めた総労働時間です。製造業を含めて、多いところはまだ2,200時間。平均でも正規職員の場合は2,000時間を超えている。これが実態です。さらに時間外労働についても、男性だけで見ても600万人が週20時間の残業。子育て期の35~39歳にいたっては4人に1人。逆に30~34歳という子育て手前の皆さんについても週15時間以上残業をしている人は40%だと。これが常態としてあるのだということです。さらに、年休の取得も日数は8日程度と、年々減少していると。こういう実態に私たちはおかれているということを押さえていくことが必要だと思います。このことは連合傘下の産別の調査でも、仕事と生活のバランスに満足していないという声が、30歳代で満足しているという回答を大きく上回っています。また、残業も月40時間を超えますと、仕事と生活時間のバランスに満足をしていないと、こういうアンケート結果に回答される人が増えていると、こういったことです。
もう一つ、全体の問題を考えるときに、どうしても、収入のことを考えざるを得ません。皆さんご承知のとおり、パート派遣契約等の非典型が増えていまして、その結果、逆に年収300万円以下が38%、そしてうち22%が200万円以下。こういうことが現実として私たちのおかれている条件ですから、昨年の厚労省の調査でも、パートより正社員の結婚率が3倍であるとか、それからフリーターは結婚率が半分だとか、いろいろな調査結果が既に出ているとおりです。やはり全体として、こういった問題をきちんと踏まえて、この働き方改革を考えていかなければいけないと思います。その意味では、今問題になっているのは"働き方の改革"であると同時に、"働かせ方"をどうするのか。こういう問題に対し、企業がどこまで問題意識を持っていただけるか、このことが非常に大きいと思います。
今日はニチレイの方、そして今、お二人の方、それぞれそういう問題意識を持って取り組んでおられるということで、心強いわけですが、ぜひともこの働き方の改革を構想する場合には、やはり社会全体のことをどう考えるか、このことが非常に重要だろうと思います。その意味では、私どもは実は失業率が5%のころにワークシェアリングの推進をやりました。しかし結果は必ずしもうまくいったとは言い切れません。それはどういうことかと言うと、ワークシェアをするときに、結果としては正規職員、もしくは正規職員と同等の条件でワークシェアすることが非常に難しいのです。現実にはワークシェアすると言ったときには、先ほど申しました非典型に働き方が置き換えられてしまう。こういう状況が続いている限り、なかなか今申し上げました両立支援、こちらの課題になったときにもうまくいくかどうか、懸念があると思います。実はワークシェアリングに関しては、オランダがうまくいった事例だと言われているのですが、これも政労使で国民的な合意を図る。いろいろなことをやりました。この両立支援については、ぜひとも千葉は千葉という立場で、県、経済界、労働団体、これが一緒になって共同宣言も出しましたけれども、もう一つ大きく社会的な合意を取っていく。このことが極めて大事だろうということを申し上げておきたいと思います。

○鹿嶋 一つひとつの問題提起、大変大きな課題だと思います。ワークシェアの問題にしても、年収300万円以下の、"ワーキングプア"という言葉が最近出ていますが、そういう人たちがどういうふうな形で収入を増やすのか、あるいはワーク・ライフ・バランスを保つのかは大変大きな問題ですが、その問題については、今から第2ラウンドに入りますので、その中で指摘をしていただきたいと思います。
これからは、取り組む過程でどういう問題があるのか、あるいは成果としてどういうものが出ているのか。この問題、例えば男性の意識の改革とかといった問題を含むと思うのですが、そういうことで今悩んでいるのだとか、その辺りの話を率直に提示していただければと思います。
私は基本的な考え方としては、ワーク・ライフ・バランスは企業に利益をもたらすと思います。もともとこの考え方はアメリカから入ってきていますが、アメリカは冒頭に申し上げたように、少子化問題というのは基本的にありません。アメリカの合計特殊出生率は2.05ですから、そういう中でアメリカ企業がなぜワーク・ライフ・バランスに取り組んでいるのかと言えば、経営に利益をもたらすからです。そういう中で、皆さんは企業の中で、あるいはそれぞれのお立場でどういう問題を抱え、どういうふうに克服してきたかをお話し下さい。


4‐2.子育て支援にかかる課題とその成果

○広浜 子育て支援に取り組んだ成果ということでは、双子のお子さんができた人が、ちょっとこれは無理だということで辞めたケースがありますが、他の方はずっと継続して働いています。
事例として非常にうまくいったものと、これはひどかったなあというケースがありますので、その辺りのところを反省事項を踏まえてお話ししたいと思います。
まず失敗例ですが、お客さんから注文がきます。「いつものやつちょうだいね」、「いつものやつ1万個ね」みたいな注文がくるわけですね。慣れている人だったらそれでわかるわけですが、引き継ぎ期間が短かったりすると、何が何だかわからないわけです。それを、じゃあ何なのだろうと調べてやっていくと、5分~10分かかってしまう。それが何10件という形になると、発送するまでに到底間に合わなくなってしまうのですね。それが原因で納期遅れが続いてしまう。もう本当にひどい状況で、お客さんから苦情の嵐という事態になってしまったことがあります。
原因を探ってみますと、我々の作業システムとか、あるいは指導体制とか、そういったことに不備がありまして、あらかじめそういう準備をきちんとやっていれば、もっともっと早い段階で会社のシステムを改善して、さらに普段よりもよい形で処理ができたはずだと思うのです。と言うのも、そういったことがあって2年ぐらいかかったのですが、受注の仕組みを大きく変えました。もちろん他にもいろいろな改善点はありましたが、結果的には300件あった納期遅れが、月1件あるかないかというような形になれたのです。もっと早く気がつけばよかったと思ったのですけれども、そのような改善事例がありました。
そういう失敗例もありましたが、成功例もありまして、そういうケースを横目で見ていた、やはり育児休暇を取った方が、引継ぎをした派遣社員の方と常にコンタクトを取るようにしたのですね。本当に大変なときには無理でしょうけれども、ある程度時間ができてきた、家にはいる。そういうときは「わからないことがあったらすぐに聞いてね」という形ですぐ聞く。場合によっては、時々会社の方に来て「こういうふうにやりましょう」という形で指導してくれる。これは非常にうまくいきまして、実際に育児休暇を取った人も、育児休暇が終わって戻ってきたときに、すんなり戻ってこられる。そういうブランクがない形で、うまくいったのです。
やはり育児休暇を取っているということは、周りに対していろいろな形でひずみを与えているし、迷惑もかけているという、本人にもそういう気持ちがあって、周囲に対して配慮もするということがあった。会社側だけではなくて、休暇を取る本人たちの思いとか行動とかいうこともかなり重要だということを、改めて感じました。
こういう子育てにまつわる育児休暇を一つの機会として、この人は何をやっていたのだろう、どういうところに無駄があったのだろうということを見詰め直す機会にすると、かえってこのことで経営がレベルアップすることがあるのだということを私の経験としてお話しさせていただきます。

○鹿嶋 余人をもって替え難いという状況ではなく、だれにでもできるという段取りにして、育休をカバーするということですね。同時に、コミュニケーションを密にすると。そして今までの業務体制の不備もそこに発見できるというふうに理解していいわけですね。

○鹿嶋 それでは千葉銀行の竹山さん、よろしくお願いします。

○竹山 銀行というところは女性がある面では主力部隊ですから、女性に働いてもらわないと業務が回っていかないということです。私も支店長をやっていましたが、限られた人数でやり繰りしている小さい店で一時に3人の方が産休に入ると、店が回っていかないという現実があるということも事実です。それではどうしたらいいかということで、やはり本部の支援体制と、うちはブロック制を敷いておりますので、一店舗の中では解決できない問題はブロックの中で調整してもらうというバックアップ体制を整える必要がある。そういう休みやすい体制をつくっているということで最近は定着してきましたので、支店長の方も「じゃあ、ご苦労さん」という形で比較的スムースに対応されているのではないかと思います。
ただ、先ほどもありましたが、休む人を支える人とのコミュニケーションが大切でして、休む人が日ごろから職場内で尊敬されていると言いますか、非常によくやっておれば、周りが温かく見守り協力してくれると、こういうことが大事であろうと思います。ですから、やはり日ごろのコミュニケーションと言いますか、日ごろ一生懸命やることが第一の基本ではなかろうかと思います。それで、なおかつ職場の人たちだけでは支えきれない場合には、本部からも応援体制を組んでいくということです。
男性の育児休業については、残念ながら当行ではまだ一つも事例がありません。特に私たちの年齢ですと、「子どもが生まれるので、ちょっと早く帰らせていただきたい」と言ったら「ばか」と言われました。今はそんなことはなくて、育児休業こそ取ってはおりませんが、父親休暇と言いますか、生まれて3日間ぐらいは「どうぞ、お休みください」という制度はしっかり根づいています。
問題は、男性行員が本当に育児に携われる、休暇をきちんと取れるような雰囲気づくりをしていかなくてはいけないと思っています。やはり、ぎりぎりの人員で営業していますから、当然そこに他から補充をしなくてはいけない。一番よいのはその間だけ、昔の学校の先生の臨時教員制度のようなことを銀行でもできないかといろいろと考えておりますが、なかなか見つからない。そうなると、多めに採用をしなくてはいけないという、コストとの兼ね合いが出てきて、これは非常に難しいので、こういう制度を定着させるためには、やはりトップの決断しかないのだろうなと思います。「ある程度コストがかかってもいいのだよ、だからやれ」と、こういう形でやらないとなかなか制度は定着していかないと思います。
私が頭取に就任したのは、かれこれ2年半ぐらい前ですが、銀行業界の寒風吹きすさぶ中から、若干日の当るところに出てきましたので、コストをかけても吸収できるというふうになってきました。やはりこれは、最終的にはトップが決断をし、「いいからやれ」という形でやらないと、なかなか難しいと思います。ですから、今後ともこういう面は積極的にやってまいりたいと思います。

○鹿嶋 ワーク・ライフ・バランスをコストをかけても吸収できるような体制になってきたということですね。その辺りをもう少し聞きたいのですが、最後にまとめの時間がありますので、そこでぜひ触れていただきたいと思います。
もう一つはやはりトップダウンでしょうか。こういう問題はボトムアップでなくてトップダウン、つまりトップの認識、理解が必要だと思います。こういう見識がこれからの企業に問われるのではないか、と思います。

○黒河 先ほど仕組みの話をしましたので、今度は子育て支援、さらには仕事と家庭の調和といったことに少し触れてみたいと思います。労働組合的には次世代行動計画、これが今後の10年間にどれだけ定着するかということで、私たちも力を入れているところです。ただ、ご承知のとおり301人以上の企業はほぼ地方自治体を含めて策定をしているのでしょうが、労働局の調査を聞いても、やはりまだ中小の皆さん方は努力義務ということもあって、数%しか行動計画ができていない。
そこで私たちが提案しているのは、何10万社、20万社という中小企業・零細の皆さんがいるので、例えば51人以上300人までの1,500社程度、これをまず一つの目標にきちんと設定をして何年間の中でやろうとか、そういったことを具体的にやる必要がある。またこの後、知事の方から「3つの目のつけどころ」の話が出ると思うのですけども、中小の皆さんのいろいろな話を聞きますと、そういう制度はできていないけれども、実際にはいろいろなことを、やれることはやっているのだ。こういった話も耳にしますので、ぜひその実効性を上げていくということを第一において、制度をつくるのはもちろんだけれども「3つの目のつけどころ」に準じながら具体的な行動を展開していくことが大事だろうと思っています。
特に、私どもから提言しているのは、経済7団体と労働組合が一緒にこれを推進しているということをもっと活用して、例えば業種別や地域別の組織に働きかけるとか、例えば市町村と協力して新たな託児保育システムをつくるとかいろいろ手がけてみる。そういったことが必要だろう。特に中小・零細への応援という意味からお願いをしたいなと思っています。
労働組合というのは企業とパートナーの部分もありまして、これまではどちらかというと、例えば交渉をやってどういうふうに制度を定着させるかといったことをやってまいりましたが、労働組合自身もいろいろな形でもって自ら直接的にいろいろな仕組みをつくろうという動きもあります。千葉でいいますと、例えば直接労働組合ではありませんけれども、労働組合が中心になってつくっている労働者福祉協議会という組織がNPO法人を立ち上げて、現実にこの数年、子育て支援を続けています。またあるところでは、労働組合自身が企業とタイアップをして、労働組合の組合事務所を託児所に開放して委員長が園長を兼務して、従業員の子育て支援をやる。いろいろな形が出てきていますので、恐らく時代の流れとか組合員ニーズ、こういったことから、ただ企業に要求するだけではなくて、これからいろいろな形でもって自らがこの子育て支援のバックアップとして行動を起こす。こんな時代になると思っています。
あと、この関連で一つだけ申し上げたいのは、働く者の意識の問題です。いろいろな問題が出ていますが、残念ながらやはり性別役割分担意識、これは労働組合にはそういうことはないということはなくて、もちろん国民一般意識と同じでありますから、私たちの調査をやっても、まだまだこの性別役割分担意識が強く残っているなと。やはりここのところを変えていかないとだめだということを強く感じています。例えば、結婚している男女の半数程度は、回答では仕事と家庭の両立を望んでいる。しかしやっていることは、皆さんご承知のとおり、例えば直近のデータでも女性は1日7時時間以上いろいろ家庭の仕事をするけれども、男性は30分以下だと。こんなことが触れられておりますが、実際私どものアンケートでも女性は家事分担に対して、家族で共同分担する形を強めたいとか、自分の分担を減らしたいという負担軽減、共同分担志向、これがやはり強い。こういう結果が出ているのですが、残念ながら男性の方は現状維持、特に考えてない。これが多数派で、家族で共同分担を強めるとか、自ら自分の分担をすすんで増やすと、こう言っている方は2割弱という、少数に終わっていると。こんなことをまずいろいろな形でもって払拭していくことが必要だと思います。その意味では、子育て支援は仕事と家庭の両立支援。そして男女共同参画の推進、こういう一連の流れの中で、ものを考えていく、この必要性を強く感じております。
そのためには、一つは、男性の経験がやはりあまりにも少ないのではないか。男性の子育て、家事への参加にかかる職場や社会での意識変革ということだけでなく、現実的な基盤支援をやる必要があるのだろう。そのために、育児家事研修とか、福祉介護ボランティアの参加、こういった幅広い形でもって、いろいろな仕組みを考えないと、やれやれと言ってもなかなかそこに手が届かない。そんなことも感じているところです。また、育児休業も取れ取れと男性に言ってもなかなか増えないのではないか。例えば、最初の一年は女性が取るけれども、生後一年以降今度は連続して男性が取ってみるとか、いろいろな柔軟な取り方、こういったことがこれから益々必要になってくると思います。
国の施策を見ていましても、意識面や行動面で男性が変わっていく必要性があるのにもかかわらず、残念ながら、そこの予算措置や政策・施策、こういったものが不十分な気がしました。この後、堂本知事が発言されますので、ぜひ自治体が率先をして、そういったところに取り組む。こんなことを期待して発言にかえたいと思います。

○鹿嶋 性別役割分担意識の問題を含め、幅広い視点からの提言でした。総務省の調査では、日本の男性の育児時間1日25分、家事時間25分、西欧先進国と比べると最低でした。ワーク・ライフ・バランスという問題を考えれば、具体的に個々の家庭でどうするか。そういうことも私どもは考えていく必要があるのかなという感じがします。
それでは堂本知事、働き方改革の「3つの目のつけどころ」について、具体的に説明をしていただきたいと思います。

○堂本 今皆様の発言を伺っていて、つくづく男性の問題だということを感じました。20年以上前ですが、アメリカへ行ったときに保育園で隣が高校だったのですが、高校生の男の子がアルバイトで赤ちゃんの世話をしていたのです。「どうして?」と言ったら「今に結婚をして子どもができる。そのときに赤ちゃんを抱いたり世話したりするために、こうやって保育所でアルバイトをしているのだ」と男の子に言われて、非常に驚きました。そういった問題意識で男性が結婚をするのとしないのでは随分違うのではないかと思うのです。今黒河さんがおっしゃったように、家庭にどれだけ男性の場があるのか、地域にどれだけ男性の場があるのか。今のアメリカの高校生のように、しっかりと、結婚をして子育ての間、家庭の中にも、地域にも、職場と同じだけの場を持っていることがとても大事だと思います。少子化の視点だけではなく、そういう視点も大事ではないかと思います。今はまだまだ性別の役割分担が強い。これはもうどなたも、男性も女性も感じているのではないかと思いますが、その辺がとても大事な意識改革かなと思いました。
「3つの目のつけどころ」ということでは、この1月25日に県が経済界、労働界とご一緒に共同アピールを出させていただいたばかりです。一つ目が、女性が子育て中でも働きやすい、また再就職しやすい環境を整備します。でも、これはその裏側には男性も協力するというのがないとだめなのですね。二つ目のポイントですが、女性―ママだけではなく男性、パパの両立も支援します。そして三つ目の目のつけどころ、それは制度づくりや利用しやすい風土づくりを進めます。
先ほど竹山頭取の話を伺いながら、本当におっしゃるとおりだと思いました。県庁の中でも、ちょうど奥さんが出産の時期を迎えていた課長がいたので、必ず育児休業を取らなきゃだめよと。それから奥様に電話か手紙を書いて、必ず育児休業を取るように伝えてねと言ったのですが、取らなかった。仕事が優先なのです。そういう中において、やはりトップの決断が大事なのです。そういった制度を定着なさるのは、大変だと思います。楽ではないでしょうけれども、トップの決断しかないとおっしゃるからには、決断して下さるのかなと思いながら聞いておりました。
ところで、今日この場に共同アピールに調印してくださったメンバーが半分以上いらっしゃいます。ぜひ、この方たちにも一言お話をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○鹿嶋 今日、急遽千葉県商工会議所連合会会長の千葉滋胤さんが出席できなくなりましたので、メッセージを預かっています。私の方で代読いたします。
少子化対策についての施策の重点をどこにおくか、一つは経済支援を重視すべきとの考え方があります。経済的支援の中身としては、児童手当の拡充、医療費の助成、保育や教育にかかる費用の助成などがあるでしょう。内閣府の2004年度の少子化対策に関する子育ての意識調査によれば、経済的支援への要望は69.9%と7割になっております。一方では、就業と出産、育児の両立を可能にするための政策こそ優先すべきであります。経済的支援よりも、両立支援を充実させることが重要との見解もあります。私は、この二つの見解は本来対立するものではなく、並立させるべきものと思いますが、両立支援は経済支援とは異なり、ライフスタイルの選択という個人の自由に深くかかわるものだけに、人間らしい生活を保障するという観点から、まずは取り組むべき課題ではないかと思います。
今回経済界と労働界、県が両立支援の取組について「3つの目のつけどころ」という形で発表をしましたが、これは、課題は何かをまず収斂させたものです。これで充分とは言えませんが、経済界と労働界、県の三者が同じ方向にむかってトライをしていくことが一番大事なことではないかと思います。
それでは続いて、千葉県商工会連合会会長の磯村貞雄さん。お願いいします。

○磯村 商工会連合会会長の磯村です。私どもの会員は、小規模企業、零細企業が多いわけで、子育て支援推進といっても、なかなか浸透するのに骨が折れるというところですが、これから一生懸命努力をしてまいりたいと思っています。
先ほど知事から子ども一人育てるのに大変な財政がかかるというお話がありましたが、昔と違って、子どもを一人つくれば、相当の金がかかる。それから、昔は親とおじいさん、おばあさんと暮らすのは当たり前だったわけですが、それが今はみんな核家族です。私の愚痴かもしれませんが、敢えて、昔の制度なり、家族のあり方が懐かしいと申し上げたい。教育にしてもそうです。親の負担は大変なもので、その辺りをきちんと計算をして、子どもをつくれるような社会をつくることが、我々の責務ではないかと思います。
それからもう一つ。昔のように、若い人を結婚にこぎつける世話焼きのような社会の努力、特にいろいろな立場にある人は、なおその気分になってもらいたいなと、しみじみ思えてなりません。どうかひとつ、お互いに一生懸命努力してもらいたいと思います。

○鹿嶋 次は千葉県中小企業団体中央会会長の坂戸誠一さん、よろしくお願いします。

○坂戸 中小企業の件について、いろいろお話しいただいたわけですが、県内企業16万ちょっとあると言われている中の99.8%が中小企業と呼ばれている企業なわけです。この中でも、従業員が50人未満、俗にいう小規模企業が80%以上あるわけです。こういう企業が、どういう状況におかれているかと言いますと、例えば皆さん方の町中の個人のお店にしても、なかなか消費が回復しない。あるいは、いろいろな原材料だとか、原油がどんどん値上がりしてきた。こういうものを製造業では価格に転嫁できないということで、小規模企業のほとんどは、大変に厳しい環境の下で経営を強いられているわけですから、正直に私が代弁すれば、そういう人たちにとって、とてもじゃないけれど少子化支援だとか、子育て支援だとか何かとコスト増のしわ寄せを、おっかぶせられるのではないかと、できれば離れていたいというのが、本音ではないだろうかと思っているところです。ですから、子育て支援をどんどん推進していくには、これが、新たな企業負担と感じることのないような工夫や支援が重要です。
私ども中央会は、国から次世代育成支援センターということで指定をされています。この3年間専門アドバイザーをおいて、主に組合を単位としてこの考え方の啓蒙普及活動を行ってきたところですが、先般の共同アピールをきっかけに、成功例等を参考にして、個別の会員企業が抱える不安や、問題解決に対する支援というものに、これからは力点を置いていこうと考えているところです。
また、小規模企業ですから、経理に一人、総務に一人というわけにはいかない、一人が二役も三役も四役もやっているわけです。その人に休業を取らせてあげるために、派遣会社から3人も4人も代わりを連れてくるのということは、現実的にはできないわけです。ですから、やはり派遣された方が一人で三役も四役もやって欲しい。しかし、そういう方にめぐり会うことはなかなか難しいというのも現実です。そこで、中央会としては、地域でそういう中小企業でお働きになってリタイアされた方、あるいはそういう知識をお持ちの方、そういう方に4人か5人でも結構ですから、企業組合というような形で集まってもらう。あるいはNPO法人という形で集まっていただく。いずれにしても連携組織体をつくっていただいて、地域の中小企業と連携を取りながら、地域の活性化に参加していただけるように働きかけていこうと考えているところです。
あるいは、子育て期を終えた、あるいは子育ての目途がたった方が、再就職をしようというようなときに、中小企業、あるいは小規模企業というのは大変大きな部分を担っていると私どもは自負しております。当然、県内各地に中小企業がたくさんあるわけですから、その近くにお住まいの方、近いから通いやすい、あるいは近いからその会社のことをある程度知っているということでお勤めいただく。そして再就職して20年、25年と長い期間働いてくださっている例を、私はたくさん知っております。
ここで行政に一つお願いを申し上げるとすれば、例えば製造業の現業で旋盤を動かしたり、クレーンに乗ってもらうというような視点も、再就職の支援の中に入れていただければ、中小企業にも助かりますし、地域の活性化にも役立つのではないだろうかと思います。

○鹿嶋 では、千葉県経営者協会会長の大塚弘さん、どうぞお話し下さい。

○大塚 千葉県経営者協会の会長を務めさせていただいている大塚です。私ども経営者協会では、一昨年からこの少子化問題について、黒河会長以下連合千葉さんと、また県と三者での懇談会を何回か持ってきました。また昨年12月には、連合千葉と、経営者協会と連名で県に対して提言を行いました。これはワーク・ライフ・バランスと、私、どうも横文字は好きではないのですが、要するに仕事と生活の調和という提言をさせていただきました。また、先週1月25日には、育児と仕事との両立ということでの共同アピールをさせていただいた。こういう時期にこういうフォーラムが開かれるのは、本当に時機を得たよいタイミングだと思っています。
今、まさにグローバリゼーションということで、企業は国内だけではなくて、世界を相手に非常に厳しい競争の中にあります。こういう中で勝ち抜いていくためには、どうしても、先ほどもお話がありましたけれども、技術革新ということが絶対に必要なことですし、そういうことをやれるのは人の力なのです。一方で、今後少子高齢化ということもありますし、また人手不足ということが、これから重要になってきます。そういう中で、せっかく有能な女性社員が結婚して辞めていく。あるいは子育てのために辞められてしまうということを、今まではどちらかというとそれを平然といいますか、当たり前のように見過ごしてきたわけですが、こういう有能な人材を確保していきたいというのは、企業にとって最大の関心です。そういうことで、今後も何とか子育て支援をやっていきたいという切実な考えがあります。
ただ、企業が生き残っていくためにはどうしても業績を上げていかなければならないですし、生産性を落としたのでは何もならない。生産性を低下させないという大前提の下で、この問題に取り組んでいかなければならないと思うわけで、この辺については労働界との話し合いを、今後特に重視していきたいと思っています。
そういう中で一言お話しをさせていただきたいのは、中小企業対策でます。私ども経営者協会、実は私は千葉県で千葉県経済協議会というのと、千葉県経営者協会という2つの会長で、今日は千葉県経営者協会の会長という立場で話をさせていただいていますが、これらの一番大きな違いは、千葉県経済協議会は、大手の会社の団体で、他方、千葉県経営者協会は会員が現在840社ほどあるわけですが、その大半が中規模、小規模の企業です。後者の立場でお話をさせていただきたいと思うのですが、こういう会社は先ほどもお話がありましたように、非常に厳しい経営環境の中で事業継続をされている。組織的にも人的にもギリギリの線でやっている。したがいまして、育児休業といったようなことで人を減らすということが、即、仕事に、業績に影響をしてしまう、非常に厳しい中でやっています。大手企業、あるいは官公庁でのいろいろな取組についてのお話もございましたし、これは全体のレベルアップを図っていくために大いに必要なことですけれども、それと同時に、非常に水準の低いところのレベルアップ、底上げのためのいろいろな検討、話し合い、フォーラムをぜひぜひやっていくべきではないかと思います。

○鹿嶋 県と経済界と労働界のコラボレーション、これをぜひ実りあるものにしていただきたいと思います。


4‐3.参加者との質疑応答

○参加者 今、千葉県には認可保育園と無認可があります。中小企業というのは、外注で親元から仕事をもらって、さあ次の日の朝までに納めろということが大変多くあります。そうすると、どうしても9時、10時まで働かなくてならないということがあります。そういう中で、ではそれを受けとめてくれる受け皿が、認可か無認可かということが大きな問題だと思います。認可でそれだけのものをきちんと受けとめてくれるということは、行政と企業と保育所の三つ、そして社会が一緒になって初めてうまくいくのではないかと思うのですが、堂本さんに、千葉で、利用者、お母さん方が選べる保育所がつくれるか、これをぜひお聞きしたいと思います。

○鹿嶋 今のご質問に対する回答は、最後に知事の方でまとめの中に入れてください。今からはそれぞれの方々から会場にいらっしゃる皆さんへのメッセージも含めて、これからどういうふうに社会全体、あるいは企業の意識改革、取組を促していけばいいのか、メッセージをいただきたいと思います。
それから、企業の生産性の問題ですね、これもどう維持していくかいうこともワーク・ライフ・バランスの実現と並行して、大変重要な点です。その辺りも含めまして、お話をいただきたいと思います。


4‐4.参加者へのメッセージ

○竹山 私がいつも行員に言っているのは、「仕事も思い切ってやれ、そのかわり遊びも思い切ってやれ」ということでして、中途半端が一番いけないということで、すべてを思い切ってやれと。私は支店長時代から夜遅くまで働いている人、あるいは休暇を取らずに働いている人は決してプラスとは考えない、「むしろ、ぐずであるぞ」と言っていました。休暇がきちんと取れるように、自分の仕事の手当てをきちんとやって、堂々と休めと、こういうことを昔から言ってありますので、比較的当行は取りやすくなっているのだろうなと思います。そうは言っても現場はどうなるかわかりませんから、目を光らせて、定着できるように今後ともやっていきたいと思います。

○広浜 まず、子育て支援はコストアップになるのかどうかというと、やり方によってはコストアップになってしまうということは、自分の経験からもありますが、やり方によっては逆にコストダウンになると思います。午前中、第1分科会の中で、ワーク・ライフ・バランスで、突き詰めて一番ポイントとなるのは何かという話がありました。それは時間当たりの生産性を上げることだという、そういうことにやはり会社を挙げて取組ましょうよということなのです。その中の一つに、子育て支援の問題も入ってくるということです。そういうことをずっとやっている中で、たまたま子育てでお休みする方が出るということについて、会社全体の取り組んでいる方向からすれば、決してコストアップにはならないということを今日発表させていただきながら、私どものいろいろな過去を振り返ってみても確信した次第です。ぜひそういった形で、今後もワーク・ライフ・バランスに取り組んでいきたいと感じています。
それから、子育てに関して、例えばこういう形でやると補助金が出ますよというようなことが随分あります。実際、私どもも利用しているのですが、我々の仲間の経営者の人に話を聞くと、全く知らない人が多い。子育てに関するこういった事柄について、やはりもっとみんなに知らしめていく必要があるだろうということを、非常に強く感じています。今日、この会場に、経営者団体が全て集まるという形で開いているわけで、その団体、我々も含めてですが、全体でそういう風土、話を皆さんに伝えていただくと、千葉県における、いわゆる会社の、中小企業も含めて、子育てに対する考え方も随分変わるのではないかということを実感していますので、ここにいらっしゃる会場の皆さんともども、それに取り組んでいけたら素晴らしいなと改めて感じております。

○黒河 先ほど質問者の方が若干触れていましたが、ご承知のとおり、日本はいわゆる二重三重の下請け孫請け、賃金一つとっても、やはり一番川下の方が大変な形になっていくという実態があります。恐らく、一つひとつの企業の努力、それぞれの立場があるでしょうが、そういう抜本的なところを社会全体の枠組みの中で考えない限り、結果としてはこの子育て支援についても、幾つかの成果はあるかもしれないけれども、いわゆる社会全体の流れになり切れないだろう。こんな思いで、今日は話をさせていただきました。その意味で、もう一回繰り返したいのは、安定した雇用と一定の収入の確保。これはわかり切ったようなことではありますけれど、やはり子どもを生み育てる、そういった意味では一番基本的なことになるだろうと、そう考えたときに、現在の仕組みというのを本当に、かなり抜本的に変えるというのは、企業だけでは全くできないだろうと。そういったことをせっかくの場なので、一方では皆さんと一緒になって共通理解をして、その上で、一年一年では成果が出ない、やはりこの次世代育成支援が10年間の計画だと言ったときに、やはり10年間きちんとお互いに努力していく。このことが極めて大事だろうし、特に連合の立場で申せば、まず足元からということで、特に男女共同参画と、こういう立場から、今年からまた新たな計画を立てて、できるだけ労働組合という立場でこういったことが実現できるように、私たち自身も努力しますし、先ほど言いましたように、とりわけまずは中小の皆さんの支援、こういったことも子育て支援を含めて努力をしていきたいと。
そして最後に、これも繰り返しになりますけれども、やはり日本は残念ながら8割の働く人に組合がない。それがいいか悪いかではなくて、本当に働く者を労働組合がその人たちのことも含めて、これからも子育て支援に限らず、私たちとしては日本の社会全体がより変わっていく、そのために全力を尽くしたいという決意だけ申し上げて発言にかえます。

○鹿嶋 最後に、堂本知事。先ほどの参加者の方の質問に対する答えを含めてお願いします。

○堂本 まず、今日はいろいろ多角的に、そして本質的な問題に話が及んだことを大変うれしく思っております。「3つの目のつけどころ」というような形で女性ができるだけ再雇用とか、それから仕事と子育ての両立、それも女性だけではなくてお父さん、お母さん両方でするというような方向性、これは正しいと思いますし、経済界、労働界、そして県とが一緒になってそれを前に進めることも大事だ。しかし、どう実現するのかということが問題です。企業である以上は収益を上げることが第一義的な株主への目的であるとすれば、社会奉仕が先にいくというわけにはいきません。どれだけ収益を上げながら、なおかつ男性も女性も働きやすい環境をつくるかというところが、経営者としての手腕が問われることかもしれません。
そういった意味では、先ほどお話が出ました生産性の向上、これがもう何よりも大事ではないか。非常に効率的な仕事の中で、残業なんかも少なくすめばそれに越したことはない、あるいは企業と企業との間の連携でそれがどうできるのか、先ほどお話が出た50から100ぐらいの企業でもって、代行的な職員の派遣を、そんなに長くなければ1週間でも、あるいは1か月でもです。2007年問題で、大変業務に慣れたOBの方でもOGの方でも、また元気な60代がそこへお手伝いに入れるシステムをつくるのか、これからまだまだ相当工夫をした、そういうバックアップをするようなシステムを、県として、また三者ご一緒に相談しなければいけないのではないか。そして実際にそれが実現できるような方法を考えなければいけないのではないかと、つくづく感じました。今日がデスティネーションキャンペーンのキックオフですけれども、同時にこの問題でも千葉県のキックオフと考えて、どうやってそのことを本気で社会として担保できるのか。マクロの問題と、それから全体としてのミクロの問題、一つひとつの小さい、例えば職員が5人とか10人しかいらっしゃらないところでは、一体どうやって人を休めさせられるか。「そんなことは無理だ」とおっしゃると思うのですね。それをどうまた実現できるような、慣れた方がまた元の職場に戻ってこられるような方法をどうやって実現させるのかということを工夫していかなければならないと思いました。
しかし、マクロのことから言えば、本当に安定した雇用がない限り、結婚もできないし、子どもを生み、子育てができないということもあります。そういった意味から言いますと、最初にお話があった、フランスが工夫したように、日本も工夫しなければならないということであろうと思います。細かいことの政策を丁寧につくり上げながら、全体として大きな方向性を、また豊かに子育てができる社会をつくっていく、地域をつくっていく、千葉県づくりをしていくということが、結局日本全体のことにもつながっていくだろうと思っています。
先ほど出ました子どもの問題、保育園の問題、これがまた親のことだけが今日の話の中心になりましたけれども、どのぐらいの時期に、最初のところで私は、女性の場合非常に、カップルの場合と言った方がいいかもしれませんが、いろいろな選択、個人の選択、一人目で休暇を取るのか、あるいは二人、三人というお話がありました。そういう形で働き続けるのか、あるいは3年間は仕事を休んでまた再就職するのか、いろいろな選択があるかと思います。働き続ける場合に、そうしなければ経済的にやっていけないというような場合に、ゼロ歳児の赤ちゃんから預けるとしたら、どういう認可の保育園がいいのか。「無認可の保育園を千葉でやる気があるのか」というご質問でしたけれども、これは認可保育園だと千葉の場合でもそうですけれども、延長保育ですとか、夜間保育ですとか、病児保育ですとか、多様な保育を認可保育園でやることは大変難しい。そこで実際にお母さんたちが必要として、自分たちでつくっていくような、そういった運動が随分起こり、そして実際に無認可の保育園というのがたくさんできたわけです。
問題はやはり赤ちゃんです。ゼロ歳児の赤ちゃんは、すぐ具合が悪くなって、病気になるということだけではなくて、人間としての基礎が培われる、ゼロ歳から3歳の間、ここは本当に働きながら、おじいちゃん、おばあちゃんと協力するのか、あるいは公的な保育園を利用するのか、あるいはこれはむしろそういった公的な保育園、そして無認可の保育園をどう活用していくのかというようなことが問題ですが、そのときに一番大事なことは、やはりゼロ歳児、2歳、3歳の子どもについては、きちんと発達を担保できるだけの内容の保育所である必要がある。今では無認可の場合でも認可保育所の8割のきちんとした場所とか、それから保育者が担保されなければいけないということが決まっております。
ですから千葉であろうが、東京であろうが、日本中どこであろうが、仕事をしながら子育てをするお母さんが増えてきた場合には、一方で子どもをどういう形で育てるか。おじいちゃん、おばあちゃんのいらっしゃるお宅はよいのですが、いらっしゃらない場合に、どういう形で子どもの発達を担保しながら、保育園、あるいは今度は幼稚園と保育園の両方を併設したような形の認定子ども園というのもあるわけですが、いろいろな形があると思います。いずれにしても、行政の側の責任者として申し上げられることは、必ず子どもが安全に、そして健やかに、そしてのびのびと発達が担保されるような形の保育を千葉では実現していきたいということです。

○鹿嶋 少子化の原因は晩婚・非婚ですが、これからの問題として、この非婚の問題が出てくる可能性があります。これは国政調査でデータが出るのですけれども、50歳の時点で、生涯未婚率、法手続きを経た結婚をしたことのない人が、男性15.6%という数値が出ております。2000年の国政調査では11%、9人に1人だったのですが、今は7人に1人と増えました。女性は7.2%。2000年の国政調査は6%でしたが、これが7%に増えました。私たちとしてはこういうことへの危機意識を十分に持つことが必要です。何せ7人に1人の男性が50歳になっても結婚していないのですから。それにどういうふうな対応をしていくのか、今日いろいろな意見が出ました。人事管理にしても、竹山さんがおっしゃったように、長く会社にいればいいというのはマイナス評価にするのだと、いうような発想の転換というのが必要になってくると思うのです。
いろいろな形での経営改革、これは昨年6月に出た「新しい少子化対策について」の働き方の改革というのは、そういうものが盛り込まれております。黒河さんがおっしゃっていたように、非正規雇用、フリーターですね、そういう人たちが増加している中では、非婚という選択を選んでしまいますので、経済問題も絡めて、それからどういうふうに経営をしていくのかという問題も絡めて、少子化問題を考えなければならない。そういう問題意識を共有するよい機会に、今日のパネルディスカッションがなればいいと思います。
千葉県は、先ほど申し上げましたように、県と労働、それから経済界のコラボレーションが進んでいますので、ぜひ協力して、それから市民の県民の理解も得ながら、この問題の解決を図っていただきたいと思います。
今日は長時間、会場の皆様方もご参加いただき、本当にありがとうございました。パネリストの皆様も、本当にありがとうございました。