パネルディスカッション

 パネルディスカッション 

15:15 ~ 16:15

テーマ:「長岡から日本全国にエール~復興を通して見えた家族や地域の絆~」

コーディネーター:羽賀 友信
(国際活動家・長岡市教育委員会 教育委員)


パネリスト:今井 進太郎
(にいがた子育て応援団「トキっ子くらぶ」代表)

パネリスト:佐竹 直子
(NPO法人多世代交流館になニーナ 代表理事)


パネリスト:三浦 かおり
(臨床心理士・長岡市教育委員会子どもサポートカウンセラー)

〈実態と課題(普段の活動で接する子どもや子育て家族の現実と、それを支えていくための今後の地域の在り方等について)

佐竹
中越地震を経験した時に、小さな避難所の中で、「色んな人たちが普段から理解し合って交流していないと何かあった時に助け合うこと、理解し合うことって難しいんだなぁ」と思う場面を目にして、今まで自分がやってきた子育て支援活動の視点が、もしかしたら違っていたのではないか、と感じました。
一人でいる人をなくし、また、子育てをしている人たちだけが、支援・サービスを受ける側という、構図を変えたいと考えました。そこで、普段の活動を、子育て世代の人だけではなく、中山間地域の方、企業の方、あとはこれから子どもを産み育てるチャンスがある学生さんたち、また地域の方たちとも繋がりながら活動しています。子育て世代、子育てに直接関係のない人たちが集まって、お互いが知恵を出し合い、元気になる、またそれが居場所づくりのきっかけにもなる、そんな場所を目指しています。
今井
私が子育て世帯向けへの優待制度事業「トキっ子くらぶ」を始めたきっかけは、自分に子どもが生まれたということです。子どもが生まれてから、成長していく生活の色んな場面で、企業さんとの関わりは非常に大きく、私は、企業さんに子育てにもっともっと眼差しをむけていただくことが大事なんだろうなと思って、日々活動をしております。
この前、嬉しかったのが、最近加わっていただいたある「トキっ子くらぶ」の協賛店(カレー屋さん)に、お邪魔したら、張り紙が貼ってあったんですね。
「お子様は散らかし上手どうぞ思う存分散らかして帰って下さい。」
それを見て、私の妻は、感動しまして、「このお店、毎回行く!」という話になりました。割引やドリンクサービスといったサービスも確かに嬉しいんですけど、それだけじゃなく、その視点をもっともっと子育て世帯に向けていく、社会全体で包み込んであげるような、そんな取組が今後も推進出来れば良いのかなと思って活動しております。
三浦
震災ケアに関わっている中で、やはり一番大事だなと思うのは、例えば子どもには、生まれてから自分の物語というものが必ずあります。どんなに小さい子でも、「自分はこういう子だ。」、「お父さんとお母さんから大事にされて大事な子だ」とか、「お父さんとお母さんが、今こういう状況で~。」とこういった意味付けの積み重ねで、自分というものを把握しています。それがこういった大変な震災とか色んなことがあった時に、何か凍りついてしまう、もしくは、崩れそうになって、恐ろしくなってしまう、ということがあります。それを、色んな方の力を借りながら、そして元々持ってる子どもの力が引き出されることによって、子どものお話がまたもう一回ちゃんと繋がっていくという所までお手伝い出来るといいなとは思っています。

(想いを形にするためのアドバイス)

佐竹
中越地震を経験されたり今回の震災なんかでも色々見聞きする中で、皆さんそれぞれ考えられて、もう行動になって、実際、生活や想いが変わってるっていう方も多いと思います。私はフィリピンという所で若い時に少し生活してた事もあって、日本に帰ってきた時に水道の蛇口をひねれば当たり前に水が出るとか、電気のスイッチをつけたら「あっ!電気が点く」という、「すごく当たり前の生活をありがたい」と思ったんですね。有難いって「有ること」が「難しい」って漢字で書きますけど、小さな事に、当たり前の事に感謝をする生活っていうのは、おそらく一人一人が今からでも出来る事かなと思います。
もう一つ、私は、人は、色んなものを生み出すことが出来る力を持っていると思います。私は長い間、市民活動をやっている中で、「自分で出来そうな事だったら、自分で作ってしまおう。」、「ないものだったら、自分で生み出そう。」という風に思って活動をしてきました。なので、少し発想の転換をして、何か自分が困ってるという思いがあったら、ひょっとしたら自分だけじゃなくて、その後ろにはもう何十人も何百人も同じような事で困っていらっしゃる方がいるかもしれない。そしたら、その生み出す勇気、一歩前に出て行動する勇気を一緒に持っていただいて、誰かに声を掛けたら、手をつなげる人がたくさん出てくるかもしれない。そんな思いで今、私自身が「になニーナ」の活動もやっています。
また長岡市には市民協働という来年の市民協働条例に向けての動きもある中で、「色んな立場の人たち、色んなジャンルの人たちと手をつないで活動していこう。」そんな風に思ってますので、皆さんも、見ている傍観者ではなくて、一緒に仲間になってできると思っています。
今井
今回、被災地への様々な支援を全国各地、もしくは世界中からいただいていると思うんですけれども、人を助けるとか、人のお役に立つっていうのは本当に素晴らしいことで、自分自身を見つめ直すきっかけにもなるのかなと思っています。
私事で恐縮ですが、数年前から、学校に通えない子どもたちに月々の募金で、その子どものスポンサーになる、その方が学校に行けるような支援を少しやっております。それで支援したお子さんから手紙が来たりするんです。そうすると、やっぱりものすごい感動したり、「やって良かったんだ」とか、または世界の貧困の情勢とかそういったものにも興味を持ち始めて、どんどんどんどん視野が広がっていきました。そういう意味で、自分の環境について、不満や苦しいことも色々あるとは思いますが、もっともっと外に目を向けて色んな人のお役に立つという視点を持つことで、自分自身の視野も広がって自分自身が成長出来るきっかけにもなるのかなというふうに思っております。
そういう意味で、出来ることから取り組み始めていただければな、という風に思います。
三浦
マザーテレサは「まず家庭がベースだよ」とおっしゃていました。「家庭を慈しみの場としたり、また限りなく許し合う場としなければいけないんだよ。そこが出来ていない、お互いに対する時間がないとそこから戦争が始まってるんだよ。」という風におっしゃったと思います。私は今、あまり余裕がない中での子育てなんですけれども、そこでその言葉をいつも忘れないように心がけています。
もう一つは、特に福島とか今回の被災で、避難されて来られているお子さんたちから学んだことがあります。だいたい多くのお子さんたちが、「自分が何も出来なかった」とか「自分が・・ここが出来なかったのが悪いから」というように、非常に自分を否定するような感覚を持っている場合が多いです。それは、今回の震災だけではなく、中越地震、中越沖地震の時もそうでしたが、そんな子どもたちにカウンセリングで関わっていく時、特に今回の未曾有のこういった大変な事態の中で、子どもたちは少し元気になったら、今度自分が自分より小っちゃい子に何か返してあげたりとか。本当に人の力になりたいっていうことを言うんですね。それを聞いた時に、私は非常に学ばされるというか、教えて頂く思いがしましました。
そういうところを大事にしながら、「まず自分が母親として何が出来るのか、地域の近所のおばちゃんとして何が出来るのか、そういった出逢い一つ一つの中で自分は何が出来るのか。」ということを、意識をして関わっていけるといいかなと思っています。反省ばかりなのですが、今後とも皆さんと一緒に頑張りたいと思います。
羽賀
実は、私が何故国際協力に携わっているかというと、単純な理由で、人の役に立てるということは、エネルギーのチャージが至って高く出来るということです。人間にとって、エネルギーを出せる生き方っていうのは、私は一番大事なことだと思います。
そして、もう一つ大事なことが、想う力です。「私たちの子どもが、もしあの現場にいたら」「あんな国に間違って生まれてたら」という想う力を使ってリアルな体験として、自分が受け止める。これが、非常に大事なことだと思います。
例えば、家庭内で自分の家族のために色んなことをする。これをボランティアとは呼びません。だけど一歩外に出ればそれが、ボランティアと呼ばれる。家庭の中で行われていることを他人にも、家族のようにする、ということが必要なのではないでしょうか。先ほど、渡部さんが言われたご近所も一つの大きな家族。その拡大版が県を越え、国を越え、そういう力になる。そういう人たちの想いが結集するということが、復興への大きなエネルギーになるのかな、と思いました。

〈長岡から日本全体へのエール、メッセージ〉

佐竹
私は「ピンチはチャンス」だと思っています。へこんだり、辛かったり、泣きたくなったりということはありますけど、こうやって今笑って生きていられるのは、それを乗り越えてきたからだと思います。私の場合、この40数年の中で、大きな災害にたくさん出遭ったのも、自分の宿命かなと思い、そこはピンチ、「もうダメだ」と思うか、そこから何かを学んで、生み出していくか、繋がっていくかだと思います。大災害があったようなこういう時だからこそ、氷山の下の方で普段見えなかったもの、見えなかった部分が、目に見えて「こんな気付きをもたらしてくれた」それに気づかせてもらい、気づいた人たちで新しいものを作りあげていける、そのチャンスだと思っています。
今井
キーワードは「地域力」だと思います。例えば、より良い子育てしやすい社会を作ろうとか、そういったある特定の課題に対して、民間企業であったり、NPO、ボランティアや行政、そして、市民、そういった色んな人たちが、色んな力を持って、連携をして、一つの課題に取り組んでいく。そうすることが大きな成果を生み出していくんじゃないかなと、思っています。そう思ったきっかけは、やはり東日本大震災での支援のあり方です。そういったものをまざまざと見ておりますと、やはり、その連携、そして地域の力こそが、これからとても大事になってくるんじゃないかなという風に思います。
そして、その連携を取りまとめるものが、「想い」だと思うんですよね。「こういうふうな社会にしたいんだ。こういうふうな家庭にしたいんだ。」、そんな想いが大事なんですよね。想いがあれば、そこに色んな人たちが集まって来て連携し合って課題に取り組んでいく。そういうことが出来れば、非常にワクワクして楽しい世の中になってくるんじゃないかなというふうに思っております。
三浦
いろんな価値観や、物が多様化して、良いとは思う一方、多様すぎるが為に統一が出来ず、一致がしづらいという状況もあります。そういった中でどう繋がるのかということを考えた時に、やはり喜怒哀楽っていうものでしょうか、「感情」とか「嬉しい」とか「楽しい」とか「悲しい」とか、そういった色んな気持ちを文化や価値観が違っても、私たちは、共有出来るんじゃないかなと思っています。そういった意味で人の気持ちを思いやることは、やはり大事だなと改めて思います。
そして、もう一つは繋がっていくために色んなやり方があると思うんですけれども、まずは「繋がりたい。」、「社会と繋がりたい。」、「色んな所で繋がりたい。」っていうことを思うようになるためには、やはり私たち一人一人、そして、子どもたち一人一人が、社会は信頼できる所だというふうに、感じられるっていうことがとても大事だと思います。安心で安全で、余裕を持って生きていけるっていうところが今日のテーマになっているかと思います。またそこで自分に何が出来るか考えていきたいと思っています。
羽賀
今回の大震災で、国だけに頼っていては、もうダメだという、限界点を見せられましたから、その社会には色んな行政だけでなく、いわゆるアクターとしての参加者がいるわけですから、それをお互いに活かし合うシステムをこれから大事にしていかないと、なかなかそこは機能しないのかと思いました。
また勝間先生の話に、私は非常に感銘を受けました。環境という視点から社会をきちんと変えていかなければ、いくら一家庭が努力してもそこには限界があるということですね。ですから、「ワーク・ライフ・バランス」であるとか、それから一人ひとりの生産性を少しずつ変えていくことによって、渡部さんがおっしゃったような「家族が毎日ご飯を一緒に食べる」ということが可能になると思います。渡部さんがおっしゃった中ですごく心に残ったのは、やっぱり紛争地で、私も仕事をしていたので分かりますが、最後に彼らが信頼してるのは家族なんです。その家族の力は、ものすごく大事な力で、してもらう力よりも、してあげる力が拮抗作用を生んで、どんどんエネルギーになっていくことがあると、私は思います。
私は三浦先生がおっしゃられた中で、「安心」という言葉が、全ての社会のキーワードではないかと思います。心の置き場がある。この言葉。心の置き場がないというのは、実はアイデンティティの喪失っていうんですが、難民問題もそうです。それから虐待もそうです。いじめもそうです。それから、今回の震災で言えば、孤立して人に繋がらない人もそういうことです。
ですから、私たちはまず、自分の心の置き場を作ると同時に、被災者のみなさんの心の置き場を一体どこに作ったらいいのかという視点から活動をやっていったら、皆さんが参画できて、なおかつ、また自分に戻って来る力があると信じています。