分科会

港区赤坂区民センター

 「変貌する都心地域の子育て環境と家族」~学生たちのフィールドワーク報告~ 10:35 ~ 11:10

発表:明治学院大学社会学部 野沢慎司ゼミ学生

〈要旨〉

港区を中心とした東京都心で子育てする家族が置かれている社会環境について、「親・子ども・支援者から見た今の子育て環境の意味・意義」というテーマ設定をし、港区役所、ワーキングマザーサロン、学童クラブなどにおけるフィールドワークを通して見えてきたこと、感じたことについて発表していただきました。

港区の子育ての現状について(港区役所での聞き取り)

全国的には少子化傾向であるが、港区の子どもの人口は、増えているそうです。なぜ港区は人口が増加傾向にあるのか。その背景の一部として、子育て支援の充実が挙げられます。多様なライフスタイルや家族の形に合わせて、様々な行政サービスを行っています。しかし行政担当者からは、利用者に対して、子育て支援は依存するものではなく、上手に活用するものであってほしいという声が聞かれました。

働く母親支援(働く母親のためのサロンでの聞き取り)

実際にサロンに参加して様々な意見や思いを聞いてみたところ、仕事と家庭のバランスを上手くとることで、両方の時間をより効率良く取り組むこともでき、仕事によい影響を与えることがわかりました。

また、子育ては母親だけで行うものではなく、パートナーをはじめ周りの人のサポートがあってこそ出来るものであり、サロン参加者の話から母親は情緒的なサポートを必要としており、これが地域単位で実現できれば、母親にとって安心につながるのではないかと思いました。

港区のパパの会(父親同士の会での聞き取り)

パパの会の目的は、パパ同士がつながりをつくり、子育て方法を共有し、お互いを高めあい、パパ友同士で悩みを相談したりすることです。普段仕事で忙しくあまり子どもたちと一緒に過ごす時間をもてないため、子どもと一緒に遊ぶことを第一としています。パパの会に所属している方は、子育てに非常に関心が高いと感じました。近年では、父親たちも積極的に子育てに介入し、夫婦二人三脚で子育てをしている姿が多く見られます。母親を手伝うだけではなく、自主的な父親達がつながってきていると思いました。

学童期の子育て支援(学童クラブと放課GO→(クラブ)での聞き取り)

乳児期や待機児童対策がクローズアップされていますが、学童期の子どもたちの支援はどうなっているのだろうか、そのような疑問からフィールドワークをしてきました。

子ども中学生プラザ学童クラブは、0歳~18歳未満の子どもの遊び場と様々な活動を提供して自主活動を支援する場所です。放課GO→(クラブ)は、区立の小学校を利用して放課後に子どもが安心して安全に活動できる場所です。

他にも港区の学童期の子育て支援では、積極的に民間を利用していました。これにより、利用者のいろいろな要望に応えています。お迎え時間延長や学童クラブの時間帯で塾や習い事に行けるシステムなど民間だから出来るサービスで、子どもにとっても親にとっても利用しやすくなっていると感じました。充実した設備や多彩なプログラムで小学生高学年以降の施設の利用が増えているそうです。

まとめ

今回のフィールドワークの知見を、3つの視点から要約したいと思います。

まず親の視点から見た子育て環境ですが、港区には充実した支援が整っており、親同士のコミュニティなど繋がりを持つ場がたくさんあり必要性はとても高いと思いました。

次に子どもの視点から見ていきます。これまで述べてきたように、港区には子ども預かりなどの支援が充実していますが、これは親の立場に立った支援ともいえます。その一方で、家族が一緒に過ごす時間が減少している面もあるのではないかと思います。子どもの立場は忘れられがちなのかも知れません。

次に、子育て支援者の立場から見た場合、子育て支援の現場では、多様化する親の生活に合わせて、夜間預かりや長時間の預かりサービス等、今まで以上に多様なサービスが求められるようになっています。その一方、担当者は、「ニーズにどこまでも応えていくべきなのか?」というジレンマを感じているようにもみえました。

現代の都心の子育て環境は、親、地域、行政と民間団体、この3者が相互に連携しあって、作られています。今日、親の生活が多様化し、より深いサービスが求められる一方、家族に対してサービスを提供しすぎて、親の役割を代替してしまってよいのかなど、新たな問題が生じています。

子育てを取り巻く都心の社会環境は、3者の連携を取る体制づくりが進行しているけれど、その連携の仕方やバランスが難しく、どこに境界線を引くかが新たな課題となりつつあるようです。

明治学院大学発表の様子1
明治学院大学発表の様子2

 「港区地域こぞって子育て懇談会」  11:10 ~ 11:45

発表:「港区地域こぞって子育て懇談会」実行委員代表・事務局
廣田 千秋、堀尾 祥久、河野 亜実、下村 博史、平野 幸子
テーマ:~みんなで聞こう いっしょに話そう みんなでつながる地域づくり~

港区立子ども家庭支援センターと明治学院大学社会学部付属研究所が共催し、「みんなで聞こう・いっしょに話そう」をキャッチコピーに、「港区地域こぞって子育て懇談会」がスタートしました。「港区地域こぞって子育て懇談会」の実行委員のみなさんから、参加のきっかけ、活動の内容等を発表していただきました。


下村

私は「芝の家」をメインに活動しています。「芝の家」は港区と慶應義塾大学が協働運営する地域の拠点です。「芝の家」は、子どもから高齢者まで安心して暮らすことができる地域づくりをめざし、昭和30年代にあったような人と人とのつながり・支えあいを再生することを目的とした施設です。「芝の家」では多世代の交流が始まり、やがてそれは地域活動に育っていきました。「芝の家」は目的中心から、人間中心の「場」づくりを目指しています。

先月の10月21日に芝の家オープン四周年を記念した「いろはにほへっと芝まつり」を開催しました。「いろはにほへっと芝まつり」では町会・老人クラブ・近所の方が実施する屋台や、芝会議「地域コミュニティ部会」が実施するオリジナル☆メンコづくり&対決など、たくさんのブースが出展しました。人が集まり、その人たちの持ち味が充分に発揮された状態を「芝の家」と考えることにし、受け入れられているという実感が、エネルギーになる。更に、多様な主体が「ともにいる」ことで、いろいろなことがはじまるのです。

廣田

「こぞって」に関わるきっかけは、私が主催するサークル「おおきなき」で行っている保育付き講座で平野さんと知り合い、2006年度に「こぞって」でサークル紹介をした事です。2007年度から企画メンバーになり、年を重ねるごとに色々な人との出会いがあり、繋がりができました。

2008年に子育てサークルが集まって、みなと子育てネット「Wa.Wa.Wa」が誕生し、10月にPRを兼ねて「みなと区民まつり」に参加。そこからお祭り隊長として毎年参加しています。2010年度は「とりもつプロジェクト」が誕生しました。3月に東日本大震災が起こり、自分たちも何か出来ないかと、「ふれ愛まつりだ!芝地区」に参加し、フリーマーケットでの売上げを義援金として寄付させていただきました。

これからも港区で、色々な人とのつながりを作り、楽しみながら出来ることをやっていきたいと思っています。色々な人からやっていただいたことを次の世代に繋げ、それがまた繋がり、循環していくようになれたら、とても住みよい街になっていくのではないかと思います。

平野

「港区地域こぞって子育て懇談会」は、子育て中の人たちと子育てを応援する人たちなどが集まって、課題提起やいろいろなアイディアを出し合う、いわば「井戸端会議」です。

2006年度は、家訓ならぬ地訓をつくりました。(例)「声かけでまわりに友だちを。はじめの 一歩」)

2007年度は、子育て中に困ったことをアンケート調査し、その結果を踏まえて、「子育てにやさしい店と街へ」というメッセージを提案しました。

2008年度は、「つながりの輪をひろげたいなぁ~」というメッセージになりました。

企画に関わるメンバーも多様化し、2006~2008年度はママのみ15名で半数以上が専業主婦、子どもたちも幼稚園児が多数でしたが、2009~2011年度はパパ6名、ママ24名。フルタイム勤務者の育休中の参加増加や子ども関係起業者(&ボランティア活動)も増えました。

2009年度は、改めて地域のつながりを考え、「つながりの輪をひろげたいなぁ、まちに顔見知りがいると安心できるね」というメッセージになりました。また、懇談会でできた繋がりをもっと発展させたいという意見から、「地域こぞってネットワーク会議」が生まれました。

2010年度は、「まちの中に、あなたや子どもの居場所ありますか?」というメッセージになりました。

2011年度は、東日本大震災の被災地の方から「災害に備え、子どもを守るために地域でしておくこと」を学んだり、「地域でつながろう、子どもたちを守ろう」というお題でパパたちにプレゼンテーションしてもらいました。

この懇談会は、それぞれの立場から、地域の仲をとりもち、ひとりぼっちで子育てする人がいない地域になるよう、子育て当事者中心に、これからも進化する予定です。

河野

私は今、もうすぐ5歳になる娘と夫と、夫の両親と同居して、自宅でレストランとスタジオをやっています。だから在住・在勤であり、「地域の1つのモノとして何かできるかなぁ」、「仕事と子育てと色んなことを良くしていきたいなぁ」との思いから、子育て支援に興味を持っていて、2009年度の「こぞって」に行ってみました。そこで色んな繋がりが出来て、2010年度から企画メンバーになりました。

港区民祭りに出たり、芝祭りもお手伝いしたりしました。また、うちのスタジオで産褥期ケアの「マドレボニータ」も開催したり、「マドレボニータ」のインストラクターと、「マドレボニータ」の講座を受けていた「こぞって」のメンバーの2人とで、「みなとボニータ」と名前をつけて、産後ヘルプをしたりしました。

産後に里帰り出来ないお母さんとか結構います。そういう人が行政のサービスで産後ヘルプみたいなのを来てもらうのもあるのですが、行政のサービスとか民間のサービスにお金を払って使うのではなくて、仲間との繋がりで産後ヘルプが出来るようになればいいね、という事で始めました。私は産む前から、先輩ママがいなかったので、そういう人が一人でもいてくれて、「ああ、そんなの大丈夫よ!」と言ってくれるだけでも気持ちが救われるのだな、っていうのをすごい今でも感じています。

でも「そういう繋がりをどこで見つけるか?」というと、やっぱり地域で見つけないと、ワザワザ遠くの友達に来てもらうとか、親に頼るとかは大変なので、地域で見つけるって事が大事だと思います。

今、私は「こぞって」に来ているから、いろいろな方が手伝ってくれたりしていますが、「みなとボニータ」としても産後女性の心と体へのケアの重要性を広く皆に知ってもらい、「産後ってこんなに大変なんだよ」っていうのを教えてあげるだけでも、すごくいいのかなって思います。

堀尾

昨年の保育業界について調べており、その中で、子育て支援事業に携わっている企業の代表から、「子どもは社会が育てるもの」という言葉を伺いました。その時「自分の娘は社会の中で育っているのだろうか?」と感じ、私自身の地域とのつながりが薄いため、娘の住む世界が小さくなっている事に気づかされました。その時、娘が通う保育園で見つけたのが、「こぞって」のパンフレットでした。とりあえず行動あるのみと思い、「参加させてください。」というメールを送ったのがきっかけです。

活動に携わって何が変わったかというと2つあります。

1つは、ご近所さんができたことです。この街に住んでいるという実感も生まれ、街の温もりを感じます。

もう1つは、港区内で行われるイベントに参加する機会が増えたことです。イベントに参加することで、家族と地域のつながりが広がっています。

参加する前に比べると、娘から見える世界は少し大きくなったのかなぁと思っています。

私自身、子育てしやすい街は住み良い街と感じています。港区がより住み良い街になるために、この活動を通して少しでもお役にたてればと思っています。

「港区地域こぞって子育て懇談会」実行委員発表の様子1
「港区地域こぞって子育て懇談会」実行委員発表の様子2