少子化社会対策大綱検討会(第1回)議事要旨

1.日時 平成15年12月10日(水)9:30~10:45
2.場所 総理大臣官邸 3階南会議室
3.出席者

(少子化社会対策会議委員)
  福田 康夫 内閣官房長官
  小野 清子 内閣府特命担当大臣(青少年育成及び少子化対策)
  原田 義昭 文部科学副大臣(文部科学大臣代理)
  坂口 力 厚生労働大臣
  鶴保 庸介 国土交通大臣政務官(国土交通大臣代理)
(有識者)
  大塚 陸毅 東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長
  大日向 雅美 恵泉女学園大学人文学部教授
  奥山 千鶴子 特定非営利活動法人びーのびーの理事長
  榊原 智子 読売新聞編集局解説部記者
  佐藤 博樹 東京大学社会科学研究所教授
  白石 真澄 東洋大学経済学部助教授
  宮島 洋 早稲田大学法学部特任教授
  桃井 真里子 自治医科大学小児科教授

4.議事次第

 1 開会
 2 議事
 (1)少子化対策に関する考え方等について
 (2)自由討議
 3 閉会

4.議事次第

1 開会
○福田官房長官あいさつ
 最近の少子化の進行は大変深刻な問題であり、このような少子化の流れを変えなければ、21世紀の我が国は大変心配が多く、また、世の中が沈滞化しているというムードも、この少子化の動きの中で出てきているのではないかというような危惧をしており、少子化に対処するための施策を一層強力に、効果的に進めていかなければいけないと考えている。
 少子化社会対策基本法に基づく、少子化に対処するための施策の大綱を来年5月を目途に策定することとしており、今般この大綱の策定に皆様方の知見をお借りするため、閣僚と有識者委員による検討会という形で、本日お集まりをいただいた。忌憚のない御意見をいただき、また閣僚とも意見交換をしていただきたい。
 いずれにしても、次代を担う子どもたちを安心して生み、また家族や地域の中で子育ての喜びを実感してもらう社会の実現を目指さなければいけないと考えている。そのような社会づくりということも含め、よろしく御検討いただきたい。
○小野内閣府特命担当大臣から、本検討会について、9月10日に開催された第1回の少子化社会対策会議での決定に基づき、少子化に対処するための施策の大綱の案の作成に資するために開催されるものであること、司会は少子化担当である小野大臣が務める旨の説明があった。

2 議事

(1)少子化対策に関する考え方等について
○各有識者委員及び出席大臣等から資料に基づき以下の意見が述べられた。
(大日向委員)(資料1‐1)
 少子化をもたらしている要因については、既に出尽くされている。これからは、重点課題を見極めていかに実行に移すかであり、今後の社会的、経済的動向を踏まえて、どのようなライフスタイルを重点的に支援すべきなのか、子育て支援の対象を明確にした政策論議が必要である。
 具体的には、重点課題として5つ申し上げる。
 第1は、女性の就労継続支援に政策をシフトすべきである。少子化による将来の労働力不足や女性の高学歴化などから判断して、女性が働くことは当然の傾向である。職場の両立支援、保育所整備、女性が働き続けられるような支援は最優先課題だが、その点は現状いまだ不十分である。
 第2に、専業主婦による在宅育児への支援も必要だが、専業主婦支援は、社会参画支援の充実に重点を置く必要がある。育児不安、育児ストレスは専業主婦に顕著であり、その主な原因が、社会的活動からの疎外感にある。親子で楽しく集える広場事業などの充実とあわせて、再就職支援などの社会参画支援が必要である。
 第3に、仕事と家庭の両立支援は、これまで支援が手薄な男性に対して重点的に、ということを申し上げたい。子育て支援の対象が女性に偏っている限り、女性の育児負担は軽減されないし、男性にとっても家庭生活、育児参加できる働き方は必要である。
 第4は、育児不安、育児ストレス、虐待が急増している現状から考えて、親育て支援の必要性である。そのためにも、支援者側の専門性の養成ということも大切で、それを通じた地域の子育て力回復を指摘したい。
 第5は、子育て支援は地域の多様性を生かしたプラン作成が必要だということである。上記5つの課題を通して特に強調したい点は、子育ては女性の仕事だという戦後半世紀余りの体制から脱却して、男性も地域の人も企業も参画して、みんなで育児を分担できる男女共同参画社会体制づくりが一層充実されなくてはならない点を指摘したい。
 最後に、こうした重点課題を実行していくに当たって忘れてはならない点だが、少子化対策は、産めよ増やせよのイメージ強調になってはならない。これでは人々のコンセンサスは得られない。個人の主体的な選択を真に尊重する社会の実現に注力すべきである。
 今後は女性側に所在する問題と、今日の社会的、経済的問題という2つの要因を視野に入れて、抜本的な社会の構造改革や思い切った政策をいかに展開していくかにかかっていると考える。こうした施策によって、おのずと産みたい人が安心して生める社会、自分の子どもの有無にかかわらず子どもの成長に暖かなまなざしを注ぐ人が増えていくような社会が必要である。目先の出生率向上を急ぐあまりに、個人の生き方と社会とのバランスのあり方を見誤ってはならない。
(大塚委員)(資料1‐2)
 少子化対策の問題については、今も話があったが、これまでも各方面でいろいろな議論がされており、その対策のためのメニューはほぼ出尽くしている。要は、強い危機感と決意を持ってそれぞれが行うべき施策をスピーディーに実行に移していくというところに差しかかっている。
 企業としても当然行うべき施策については、主体的に取り組んでいくつもりだが、少子化の問題は、我が国の将来を左右する極めて重大な国家的な課題であるという観点から、主導的な役割を果たすべきは国である。かつ、この対策は、息長く持続的に取り組まなければならず、国における優先的な大事な政策はたくさんあるが、その中においても、この少子化対策というのは極めて優先順位が高いものであるから、そういう位置付けを明確にして進めるということが必要である。
 具体的な施策として2つほど申し上げる。1つは、雇用環境の整備という問題であり、もう1つは保育サービスの問題である。
 雇用環境については、「意識面の改革」と「人事諸制度の改革」という2点が、特に企業が取り組むべき少子化対策としてあるのではないか。
 「意識面の改革」は、それぞれの企業の経営トップが先頭に立って進めるという強い意思を示すことが必要であり、一人一人の社員の労働時間、休暇等の制度面の改革についても、できるだけ社員に対して多くの選択肢を提示するということが必要ではないか。
 企業は、当然これから競争力を強化していかなければいけないので、男女を問わず優秀な人材を確保することが非常に大事である。そういう点から、仕事と育児を両立できる環境を主体的に整備することが不可欠である。ただ、あくまでそれぞれの企業が自主的に行うものであり、例えば法律の方で一律に規制をするというようなことはあまり好ましくないと基本的には考えている。
 保育サービスについては、現在の保育所は、量的に大変不足していることに加え、多様化する個人の働き方、あるいはライフスタイルにマッチしたサービスを必ずしも提供できていないという面がある。いろいろ議論のある幼保一元化の問題をもっとスピードをあげて具体的に進めていくということも必要である。現在、地方公共団体独自の認証保育所には多くの民間企業が参入して、運営コストの大幅な低減なども実証されており、こういった制度を拡大していくということが必要である。
 特に、待機児童の大変多い都市部は地価も高く、保育所の整備が非常に難しいため、賃料等の補助や軽減ができる仕組みが必要であり、現在、社会福祉法人だけが認められている施設整備費の補助や低利の融資制度を民間企業にも適用できるようにすれば、大きな効果が得られるのではないか。
 また、現在の認可保育所制度というのを思い切って見直し、競争原理を導入する方策についても検討すべきではないか。
 最後に、子育ての経済的支援について触れたい。現在、国家的に課題として、いろいろな面で行財政の抜本的な見直しをしていかなければいけないという状況にあるが、その中でも、この少子化対策の優先順位を高く位置付けることが必要であり、いろいろな規制改革等の抜本的な見直しとあわせて、少子化対策に重点的に予算を配分できるようにすべきである。保育所の補助等について、削減等の話も聞くが、こういったことはすべきではなく、是非、少子化対策の優先順位を高めるようにしていただきたい。
(奥山委員)(資料1‐3)
 大学を卒業してから10年企業で働いた後、出産、子育てで退職した。9歳、6歳、4歳の3人の子育て中の母親でもある。
 地域での子育て支援というのがとても重要だという観点から、NPO法人びーのびーのを立ち上げ、乳幼児と親のための居場所づくりを始めて4年になる。今子育てをしている親たちが、子育てすることに価値観を見出せない、もしくは子育てに対して周りから支えられていないというような感じ方が、少子化に反映されているのではないか。もちろん、就労支援も大変必要なことだが、すべての施策が子どもたちをどう育むかということに重点を当てたものになってほしい。家族の就労の権利とともに子育ての権利というものも両方保証していくことが大事ではないかと思う。
 また、子育ての経済的負担を考えた場合に、今は個人が子どもの数を減らすということでカバーしているが、これを社会でカバーしていかなければ少子化に歯止めがかからないというところまで来ているのではないかと思う。
 先ほど来、子育て支援のメニューは出し尽くしているということだったが、それぞれの地域に戻ってみれば、そのメニューの中で幾つ具体的に実施されているのかというのはまだまだ疑問である。国として全国的にやっていかなければならないもの、その地域ごとに合わせてやっていかなければいけないものを連動して進めなくてはいけないのではないか。
 また、子育て世代だけの問題ととらえられがちだが、これが高齢者の支援とともに国の重要な位置付けであると認識、推進されなければ、多くの国民に認知されないのではないか。
 考え方として4つ書いたが、すべての世代にわたって認知されるものであること、親自身、子育て中の私たちが、自分たちもこれは関係ある、身近に支援が受けられるものなのだと身をもって感じられるものであること、日本全国で実施が可能なこと、最後に、私たち子育て中の親も主体的に取り組めること、NPOなど市民力を有効活用すること、こういったことを重点的に盛り込んでいただきたい。
 家庭を支える場の必要性ということで、私たちは「つどいの広場事業」を地域で実施しているが、まだまだ数が足りていない。今は地縁、血縁的なつながりの中で子育てをすることが地方でもかなわなくっているので、こういった居場所づくりを推進していただきたい。
 また、その場には、専門的知識を持ったコーディネーターが行政と地域、住民とのつなぎ役として必要だが、その部分は、今まではボランティアに頼ってきたために、なかなかうまく推進されてこなかったのではないかと思う。
 また、日本の子育ては年齢的な横のつながりだけで、縦のつながりが非常に薄い。学生さんたちが乳幼児、赤ちゃんと触れ合うような機会がない。親になる前に、いろいろな地域の子どもたちと触れ合うことをシステムとしてつくり上げていくことが大事ではないか。それがひいては地域の子育て力を育むシステムにつながっていくと思う。
 それから、今一番子育て中の親が感じているのは、この国の子育て家庭に対する冷たい視線である。日本より子育てしやすかった、みんなが親切だったという声が、海外で暮らしたことがある方々から聞こえてくる。なぜこういう状況になったのか。
 今、子育てバリアフリーというとおむつ替えができるトイレということしか出てこないが、例えばそういったものを男性のトイレにもつけるとか、海外にいろいろな工夫がある。そういう工夫が、この国は子育ての家庭に非常に優しい目を持っているんだと、具体的なものから感じられることというのはたくさんある。このあたりは国土交通省の方にぜひ考えていただきたいと思う。また、交通機関、移動手段が非常に子育て中の方たちにはバリアが高い。JRの方もいらっしゃるので、ぜひそういった交通機関の部分についても考えていただきたいと思う。
 また、子どもたちがいきいきと暮らせる環境整備、学校の役割というのも非常に重要である。幼児教育だけではなく、今ある小学校、中学校と地域が連動して、いい形で地域を住民とともにつくっていっていただきたいと思う。
 最後に、子育ての費用負担に関して述べると、やはり社会保障の給付金が、保育園の運営費を入れても子育て分野はたった3%である。高齢者支援に約70%かかっていることを考えると、諸外国並みに10%ぐらいまで引き上げていただきたい。そのためには、高齢者との割合をどうするのか、財源をどう確保するのかというところにも踏み込んでいただきたい。
(榊原委員)(資料1‐4)
 記者をする中で、6年前に出産をした。その中で、日本の今の社会での産みにくさ、育てにくさということを自分なりに感じた。育休を半年間取った後復帰し、ワーキングマザーとして記者を続けてきたが、今の子育て世代がなぜ結婚をしないのか、出産をしないのか。1人を産んでも2人目、3人目をなぜ諦めるのかということに関心を持ち、自分の取材のテーマの1つとして探ってきた。
 その一方で、政治報道のフィールドに長くおり、そうした子育ての現場の声というのが政治の方でどう受け止められているのかということにも関心を持って取材をしてきたが、一部の政党、または一部の政治家の方々を除いて、そうした声が届いていない、または、そうした状況を変えようということに対する熱心さが欠けているということを痛感した。
 そうした中で、ここまでの日本の出生率の低下は、自然現象ではなく、かなり人為的ないろいろな要因が絡んでの状況であると確信するようになった。その中で、子育て世代のライフスタイルに沿った対策をとらなければ、出生率を上昇させるとか、子育て世代の子育ての状況がより幸せなものになることはないだろうと考えている。
 第1点は、子育ての今の環境が一昔、二昔前とは非常に違ってきているということを、まず認識していただきたいということである。よく今の子育て世代の親の世代の方達から、自分たちもやってきたことをなぜできないのかといった見解があるが、今の状況がいかに変わってきているかというところを踏まえた上での対策が必要である。ましてや、上からの価値観の押しつけでは、決して今回取り組もうと思っている対策もうまくはいかないであろう。
 もう1つが、先ほど来のメニューは出尽くしているという意見に同感だが、平成11年の基本方針以来、取組の方向は間違っていないと感じている。ただ、投じてきた熱意とエネルギーの量が余りにも乏しくて効果を生んでこなかったのではないかと感じている。手を尽くしたけれども効果がなかったという指摘も耳にするが、それは誤りではないか。ニーズの大きさに対して、焼け石に水程度のことしかやってこなかったというところからスタートしなければ、今回の試みも意味はないであろう。
 もう1つが、本当に子育てをめぐる今の日本の状況を変えたいのであれば、せめて介護保険を導入したぐらいの時の熱意とエネルギーを社会全体で投じるべきではないかと感じている。子育てのしにくさは介護が非常に辛いというものになった時と同じように、核家族の進展、生活の都市化、そうした家族の扶養力の低下が背景にあり、家族の扶養力をバックアップするという意味でも、やはり子育ての社会化――社会化という言葉にいろいろ誤解もあるが、社会を挙げて応援するということを介護保険の時並みにやる必要がある。今は、現金か、サービスか、働き方の見直しかどれからやるべきかという議論もあるが、個人的には全部力を入れてやるべきであると考えており、その上で効果が本当にあったのか、なかったのか考えるべきである。
 生みたいけれど生めない、2人、3人生みたいけれど生めないと言っている人の多さを考えると、国や社会を挙げて応援した場合、追い風があれば出産行動は変わる可能性はかなりあると考えている。
 その上で、実際に何をやるべきかということは紙に書いてあるが、大きな話だけすると、育児は親の責任としてきた考え方から、子育てを社会全体で応援する子育ての社会化、この考え方自体は社会の中にかなり広まってきたと思うが、政権を挙げ、政治の意思として取り組むということを明確にしていないというところがまだ欠けていると思う。
 2つ目に、子育て支援の対象をこれまでのように働く母親の子どもだけ、保育に欠ける子どもだけというところから、すべての子どもに広げるべきである。その上で、支援の量と質を飛躍的に拡充しなければならない。現在の社会保障給付総額のうち、わずか3%程度にとどまっている子ども・家族関連施策の比重を、先進各国の平均的な水準である10%程度に引き上げるということが1つの目安になるのではないかと考えている。
 3つ目に、社会を挙げた応援を目に見える形で行っていかなければ、現場にいる人たちには追い風を感じることはできない。そのためにも、例えば介護保険の試みにならって、「こども支援基金」といったような新しい拠出の仕組みをつくるなど、財源の面での取組も併せて行う必要があるであろうと考える。
 具体的なサービスで、こういった取組がさらにできるのではないかといったこととしては、例えば、NPOとの連携、それから年金、医療、税、社会保障のいろいろな制度の中で、子育て家庭の負担を軽減するような配慮を入れるようなこと、または育休の取得を進めるために、パパクオータ制を導入するような検討、または、企業の行動原理を変えるためのいろいろな仕掛けをするということなどの様々な取組はまだ考えられる。
 最後に、内閣を挙げて取り組んでいることに心強く感じながらも、一段の強力な推進を図るということであるならば、日本が人口減少に突入するこの5年、10年を集中的な取組期間と定め、例えば、橋本内閣の時の行政改革推進本部のような独立した推進本部を総理直属で設け、専任の閣僚、また首相補佐官といったような政治のリーダーシップをとれる方を置くといった対応をしていただきたいと思う。
 小泉政権は、「米百俵」ということを例えに引き、国民に構造改革の取組を求めているが、これに耐えたら一体どうした明日が見えてくるのかという、次への希望というものを示していないと感じている。国民の中からもいま一つ元気が出てこないのはそこの点があるのではないかと感じている中で、次世代に社会を挙げて投資しよう、今我慢している富をそちらの方に向けようと、政権を挙げてメッセージを送るということはできないのかと期待している。
(佐藤委員)(資料1‐5)
 少子化対策を考えるときに、結婚しているカップルの出生率が下がっているということが新しい課題で、それに取り組む必要があるということは非常に大事だが、同時に、生涯結婚しない人の比率が下がっているわけではなく、生涯未婚率が高い水準にあるという状態が改善してないことに注目する必要がある
 したがって、結婚したい人が結婚できるようにし、結婚をした人たちが子どもを持ちたければ持てるようにするという両方の施策、つまり結婚したい人が――結婚しなければいけないとか、子どもを持たなければいけないということではなくて――結婚をしたいけれども、なかなか結婚できない、結婚して子どもを持ちたいけれども子どもを持てない、こうした状況を改善する施策を実施していく必要があるのではないか。
 そうしたときに、結婚したいけれども結婚できないというところに構造的な問題があるとすれば、それを取り除くような施策もやはり少子化対策として取り組む必要があるのではないか。いわゆる結婚しているカップルの子育てを支援するための施策はいろいろやってきたが、未婚率上昇に関する施策という点では取組が遅れているのではないかと思う。
 例えば、未婚率上昇の構造的な要因として幾つか挙げると、最近の若い人たちが定職に就けないという議論があるが、結婚できるだけの収入が得られる仕事がない、あるいは働いていても20代、30代の人で週60時間以上働いている人が相当いる。つまりこれだけ働いていると、仕事が終わった後、土日も家で寝ているだけでは、なかなかパートナーとの出会いの時間をとれない。あるいは女性も結婚したいと思うけれども、結婚しても子どもを持てないような職場だから結婚を諦めてしまう、こういうようなさまざまな要因があるのではないか。
 したがって、例えばこういう構造的な要因があるとすれば、実労働時間を下げるとか、結婚しても子育てできるような職場環境にするというようなことが結婚のための環境整備となる。もちろん、これは子どもを持ちやすい、子育てをしやすい環境とも結びつくわけだが、未婚率上昇の要因というものも考えながら少子化対策を進めていくということが大事なのではないかと思う。
 例えば、昔であれば職場の上司が結婚相手を探したり、地域のいろいろな世話役がいたり、あるいは会社の中でもいろいろなクラブ活動がありそれらが出会いの機会となったが、そういうものが実際上減ってきている。そうであるならば、例えば民間の結婚ビジネスサービスみたいなものを、国がやることは反対だが、そういうサービスを社会的に認知したり、どういう質のサービスなのかを国として評価することなども、例えば出会いの場を社会的に提供する1つの支援となるのではないかと思う。
 雇用環境の整備については、子育て支援と同時に、仕事と子育ての両立を支援するという視点が大事である。子育てにとって、例えば最近、育児休業期間を延ばす必要があるという議論があるが、育児休業が2年、3年になるということは仕事を継続する点ではマイナスである。したがって、子育てを支援することと同時に、仕事を継続できることを視野に入れながら子育て支援をする必要がある。そういう意味では、育児休業も非常に大事だが、仕事と両立という点では、育児休業だけでなく、例えば短時間勤務や子供が病気になった際の看護休暇など、仕事をしながら子育てができるような仕組みの整備が大事なのではないか。
 もう1つ、男性の子育て参加が進まないと、女性が仕事をしながらも子育てができるという社会、逆に言うと男性は仕事だけという、男女の役割分業を固定化することになりかねないので、これは避けるべきである。
 そうは言っても、男性が子育てに参加するかどうかはカップルの問題だという議論があるが、これも女性が仕事をしながら働いているということを考えると、その女性が子育てを続ける上で、職場の同僚の理解や会社の支援が必要であり、もちろん、本人の努力も非常に大事だが、配偶者である夫は別の会社で長時間労働をしているというのではおかしいことになる。そういうことが続くと、女性をたくさん雇用し、子育てをしやすい状況をつくっている会社だけに子育ての負担を強いて、一方で子育てをしない男性を雇用している企業は、子育て負担を避けることが可能となることであり、企業間競争という点でも問題ではないかと思う。
 保育サービスだが、保育サービスと企業の子育て支援は車の両輪として進める必要がある。今は、待機児童がたくさんいることで、子どもを生む時期や仕事に復帰する時期を、保育園に入れる時期で決めるというような異常な事態がある。もちろん企業の子育て支援を進めなければいけないが、同時に保育サービスの充実を進めないと、例えば保育園に入れられないので育児休業期間を延ばすと、今度は保育サービスの改善が遅れ、企業だけに負担を強いるということにもなりかねないのではないかと思う。
 最後、経済的負担だが、やはりトータルな視点が必要である。つまり働いている人だけとか、働いてない人だけとか、あるいは働いている場合でも正社員だけということではなくて、子育てしている人を全体として所得保証ができるような形にしないと、例えば特定の層だけ支援すると、仕事をやめた方が所得面で得とか、あるいは特定の働き方を選んだ方が所得面で得であるということになりかねないので、女性が働くか働かないか、どういう働き方を選ぶかということに中立的な所得保証の仕組みにする必要があるだろう。
(白石委員)(資料1‐6)
 13歳と11歳、2人の子どもがおり、日々、大学では学生と話し、今の若い人たちが子育てや結婚について、どういう考えを持っているのかを知るにつけて、日本の未来は暗いと感じる。
 多くの学生達は、自由に生きたい、家族への責任を持ちたくない、結婚はしてもいいけれども子どもを持つ責任から回避したい。なぜならば、子どもがこれから生まれてきても幸せな時代と考えられないと言う。
 1人目の子どもを産んだときに、産後休暇2カ月をいただいたことで、半年間降格という処遇を受けた。人事担当者に理由を聞いたところ、子どもを女性が持つと生産性が落ちて、男性並みに働けないという答えが返ってきた。つまり産休や育児休業などの制度はいくらあっても、運用面でそれを取りにくくしている現状があるのではないか。職場の雰囲気やトップの考え方一つで、女性を生きにくくしているような実態があるのではないかということをここ10数年間感じてきた。
 今の少子化対策をめぐる課題のまず1点目は、日々マスコミの報道などを見ていると、少子化の暗い面ばかりが強調されており、社会保障費用の負担や介護の負担など、これからの若い世代にとって何もいいことがないという点ばかりが強調されているのが目につく。1億人という人口で日本はやっていけないのかどうか。少子化を前提とした国の姿、将来的な国の姿をきちんと描かない限りは、若い人たちの不安はますます拡大していくというように思う。
 次に、さまざまな少子化対策が1.57ショック以降行われている。非常にメニューも多様化しており、これでもかこれでもかというぐらいに打ち出されてきているが、少子化は一向に改善されていない。これまで行ってきた施策について、果たして有効であったかどうかという効果の検証を一旦行う必要がある。その上で、施策の優先順位をつけるとともに、まずこの5つ、あるいは7つをやってみるというふうに重点化を図っていく時期に来ているのではないかと思う。
 次に、子育て支援の制度やメニューは既にもう出揃っているが、形骸化していたり、サービスの量の議論だけで済まされ、サービスの決め細やかさ、柔軟性など質の議論がなされていない。また、利用者に「こんなメニューがありますから安心して子育てしてください」というメッセージが届いていないのではないかと思う。
 三鷹のファミリーサポートセンターの取組を記載させていただいたが、三鷹は先進的な地域で、362日、8時から10時ぐらいまで、3カ月から小学校6年生の子どもまで無条件で1時間単位で預かってくれ、病後児保育や24時間の子どもショートステイといったようなものも行っている。こうした先進的な取組は目立つが、これが全国的に広がりを見せているわけではない。量は整ってきているけれども、全国、どこでもメニューが充実してきているのか、ということについても検証が必要ではないか。
 次に、税や社会保障全体にも子育て世代を応援するメッセージを込めていくことが必要ではないかと思う。今、パートで働いている方の多くが子育て中だが、本人達はもっと働きたい、もっと能力を向上させたいと思っている。今回の年金改正では、週20時間以上働くと厚生年金を支払うという制度変更が盛り込まれているが、これは短時間労働者を増やすスタートになるのではないかと思う。女性の働きたいという思いと、実際の制度変更がかけ離れてきている。こうした税や社会保障にも子育てを応援しますよというメッセージを込めて、政策全体の整合性を図る必要があるのではないかと思う。
 具体的な施策として、私が重点課題と考えるのは4つある。
 まず1つ目は、子育ての経済的コストである。子どもを持たない理由に経済的な理由が上位を占めている。不確実な時代、私と同世代の母親達は、教育さえつけておけば将来の選択肢が広がる、公立の教育で子どもを任せてしまっては不安ということで、私学熱が高まって、子どもに莫大な教育費をかけている。こうした子どもの教育費を始めとする経済的負担を軽減するということも重要ではないか。
 次に、すべての家庭の子育て不安を解消する。家庭というものは、子育ての基本的な場であるが、家族構成や家族の持つ機能が変質しているということに留意しなければならない。今、専業主婦で子どもを育てている人たちは、非常に閉塞的な状況で子どもと向き合うしかない、子育てから逃げられないという状況に追い詰められ、「誰々ちゃんのお母さん」から一時でもいいから逃げたいという思いを持っている。こうした子育て中の家庭や離婚などに伴うシングルマザー、シングルファーザーの増加にどう対応していくか。子育ての状況、それぞれの家庭に応じたきめ細やかなサービスをしていく必要があるのではないかと思う。
 次に、多くの女性は仕事か家庭かという選択をしなければならないが、これは男性にはない。子育て中の女性にも潜在的な就業希望はあるが、この不況の中では女性の就業が思うように進んでいない。片働きモデルから共働きモデル、これはずっと言われているが、まだ実現していない。家庭か仕事かという選択肢を考えることなく、すべての女性が働きたければ働けるというような状況にない。
 男性は、昨年1,000人の中で3人しか育児休業を取得していない。これは、男女間の賃金格差というものが非常に影響している。男女の賃金格差の是正、専業主婦を持つ家庭の男性も、育児休業を一定期間とれるような施策をぜひお願いしたい。
 次は、子育てを支援する社会インフラについてだが、住宅の調査をした時にやはりお金があって住宅が広いほど子どもをたくさん持てている。特に、都市部での子育ての経済的負担を軽減する意味では、住宅コストの低減が非常に大きい意義を持つと思う。都心回帰で多くのファミリー層が都心に住んで、都心の利便性を享受したいと考えているが、まだまだ都心の中で子育て層が無理なく取得できるような分譲住宅や賃貸住宅は少ない。安心して子育てできる住宅、公園といった社会インフラの整備をぜひお願いしたい。
(宮島委員)(資料1‐7)
 少子化が進むという状況の原因としては、豊かさと自由度、つまりいろいろな生き方や働き方の選択が、男性だけではなくて、女性も可能になってきている。ところが、結婚や出産を契機にして就業を中断するコストが非常に大きい。それは単に所得を失うだけではなく、人間のネットワークや友人関係などを失うという意味では非常に大きいと思う。
 したがって、少子化の流れを変えるというのは、例えば就業のための教育から始まって、その子どもが高等教育を出るまでの一連の、安定した職場の環境とか、家庭の環境がどういうふうに維持されるか、また、非常にコストがかかる教育もあり、経済的なコストと、生き方や働き方の自由を選べないという意味での――これは経済的なコストというよりも心理的なコストだと思うが、そこまで一連に見て、例えば社会保障、教育、住宅政策、高等教育などの全体を若年層向けのものに体系化しておくことが、一番そういう世代に子どもなり若い人を大事にしているというメッセージを送るということになると考えている。
 2番目は、少子化が進んでいるときに経済的コストが非常に強調される面があるが、日本は非常に豊かになってきた。貧困の時代に起こっているのではなく、豊かな時代に起こっているので、そういう面では、子育ての直接的な金銭コストというものは、そんなに私は重いものとは思えない。むしろ、先ほど言った就業の中断に伴う生き方や働き方の自由度がなくなることの方がはるかに大きい内容を持つとすれば、1つの重点は、暗黙の職場の慣行や家庭の慣行、これは制度化されたり、明文化されたものはきちんとなっているが、実は暗黙の実質的な慣行というものが大分大きな障害になっているのではないかという気がしており、それを変えることの重要性を企業の方にもぜひ知っていただきたいと思う。
 3点目は、「少子化対策」という言葉、大変誤解を招く言葉で、これは「少子化社会」と書いてあるが、私たちの通常の理解では、少子化が進むことを前提にして、少子化に耐えられる社会をつくることを少子化対策と言ってきたので、年金制度も、将来高齢化が進むということを前提にして、その中で持続性のある制度をつくることを「少子化対策」と称してきた。したがって、今国民は多くの場合、「少子化対策」と言ったときに、その意味は少子化の流れに歯止めをかけるという意味なのか、あるいはもう流れは決まっているから、それに合った社会をつくることなのかという混乱が起こると思う。
 いわゆる少子化対策と言えば、一般の政策で進んでいる少子化社会に耐え得る政策、これはこれから25年ぐらいはそう言わざるを得ない。子どもの数が増えても、その上の人数は変わらないので、それはある程度過渡的な政策なんだということを仮に明確に位置付けることができるか。本格的な政策は、少子化社会対策だというふうに考えるか、それとも少子化対策というのは、実を言うと余り効果がはっきりしないとすれば、基本は今やっているような少子化に耐えられるいろいろ社会制度をつくっておいて、一方で少子化社会対策を打って、その成果が現れれば何か配当なりボーナスがそこから出てくる。年金制度改革の時のマクロ経済スライドというのは、子どもの数が将来増えるとか、経済成長がよくなれば、それだけ給付が改定されるというようなことを埋め込むものである。基本政策は少子化を前提にした政策なのか、それともどちらが基本政策で、どう組み合わせるかということについて、国民に違いを同時にはっきり説明しないと、多くの若い人は、少子化対策が進んで子どもを生まなくても大丈夫な社会に将来なるということを一生懸命やっているじゃないか、そうしたら、ますます子どもを生む必要ないというメッセージとして受け止めてしまうおそれがないかということを前から気にしている。
(桃井委員)(資料1‐8)
 小児科医として、日頃、子どもと親に日常的に接している立場から意見を申し上げる。
 実感として、日本は極めて子育てのしにくい国である。外国と比べても、体験的にも実感的にも極めて子育てがしにくい。親にとっては非常に辛い国である。そういうモデルを見ていて、若い世代が子育てをしたいと思う意欲が半減するのは、これは必定であろうと思う。今まで、いろいろな法律が施行され、特に最近、多様な法律が制定されたが、実効は極めて少ない。
 なぜかと言うと、やはり実際のニーズに合っていないという感じがする。実際のニーズに合うためにはどうしたらいいかと言うと、対策は、日常的な対策と日常から外れた危機管理的な対策の2つに分ける必要があると思う。
 日常的な対策は、子育て支援のための保育園等の施策であり、この中には、雇用環境も含む。保育園等の施策はなぜ効果を生まないかというと、実態に合っていないからである。就労の男性、女性の役に立っていない。数のみならず、時間も含め役に立つ保育所、実効のある保育所の施策が必要であろうかと思う。もう1つは雇用状況で、今までの委員の話にあったので、繰り返さない。
 これらを変えるには、日本はトップダウンの施策でないと変わらないので、ガバメント主導で、トップダウンでぜひ大きな施策を打っていただきたい。そのためには、保育園、それから雇用環境、すべて含めてやはり企業も動かざるを得ない、動く方向にいくというような、子どものための、そして子育てのための施策をまとめて目に見える形でおつくりいただきたいと考えている。
 2番目の危機管理時の対策であるが、就業女性がその就業を辞める決断をするのは、やはり子どもが病気になった時である。病気になった時にとても両立はできない。日常生活から一時的に離反した時に、核家族ではそれを支え切れないという状況がある。日本の小児医療は崩壊の危機に瀕しているという状況がある。小児科医をいかに増やすかというような重点的な方針が出されたが、病院小児医療がこれだけ危機に瀕している現状で、子育てをしやすいと感じる子育て世代は極めて少ないと思う。日本の病院勤務小児科医は、全員日本の子育ての将来に強い危機感を持っている。
 したがって、子育ての危機時、つまり医療、保健に集中的に対応する。小児医療が、医療経済効率に基づいた施策の中で、崩壊の危機に瀕しているような現状では、安心した子育て環境とは言えない。
 介護保険法、老人保健法が老人のためにあるが、子どものための別枠施策は無い。子どものための施策が、経済効率で動く全体から別枠にされることにより、国民の目に明らかに子どもを重視している国家であるということが見える、そして実効もあるという施策を作るのが極めて重要であろうと思う。
 いろいろな施策を行ってはいるが、国民の目には、そして実際に子どもと親に接するプロの目には、明確なメッセージがないというところが一番大きな欠損である。明確なメッセージが伝わるような形で、子どもと子育て世代に関しては、医療経済論から外れて、別枠の法律の法制化をするという戦略が実効的にも、メッセージ的にも極めて有効である。そして、法制化した暁には、5年たたないと変えないというような慣習ではなくて、1年ごとに実効をチェックして、効果がなければ変えるという迅速な対応がなければ、国民の目には政府が動いているという意識は生まれない。実行を評価するということもこの少子化対策には緊急に必要なことであろうと思う。
 別枠にした育児支援、小児医療保健支援などの別枠の対策をとるときに、「少子化対策」という言葉は私も不適切であろうと思う。国民は、この言葉を少子化だから何とか生めというふうな政府の考え方として取る。少子化対策ではなくて、子どもの育児支援、子どもの支援、子どもを大切にする国家であるというメッセージのためには、別のよりプラスの方向にいくような用語が必要であろうと思う。
(坂口厚生労働大臣)(資料2‐1)(PDF形式:193KB)PDFを別ウィンドウで開きます
 この職に就いて、どうすればいいか考え続けているが、1つやればそれで決着できるということがなく、じりじりした気持ちを持ちながらやっている。
 最近、年金の問題で特にそう感じるが、私も始め少子高齢社会に耐え得る社会をどうつくるかと言っていたが、耐え得る社会ということは少子高齢化を認める――高齢化は良いこととして進んでいくのだが、少子化も今のままで認めていくという社会に自分は立っていないかと反省し、少子高齢社会を乗り越える社会とは何か、そのための構造改革というのは一体何をするのかということを考えている。少子化の問題も、ただ単に少子化の枠の中だけで考えていてはどうにも進んでいかないことから、全体の枠組みとして現在の少子高齢社会を乗り越えていく社会、そこに対して構造改革をどうしていくのかということを明確にしないと、メッセージが皆さん方に伝わらないのではないかという気持ちになっている。そうした意味で、構造改革の目標自体、現在の少子高齢社会をどう改善していくのかということが、1つの大きな目標だろうと思っている。
 それに向かって、全体像をどうするかということをしなければ、企業の立場からすると現在でもなかなかやっていけないのに、今以上負担をしようと言われたらそれはやっていけないという声が戻ってくる。したがって、例えば別途保険をつくればという御意見もあるが、今でもなかなか払えないというお叱りを受けているのに、新しいものをまたつくったら、どれだけお叱りを受けるかと思うと、何となく躊躇してしまうというところがあり、将来、どういう社会をつくっていくのかということを示しながらご理解を得るということでないと、ここは前に進まないと思っており、先日も経済財政諮問会議で少し提言申し上げたところである。
 個々の当面する厚生労働省としてやらなければならない仕事、着実に一つ一つやらなければいけないと思っているが、併せて、全体像をどう詰めていくかというところをしっかり踏まえていかないと、なかなか前に進みにくいことも事実である。引き続きいろいろと御意見を頂戴したいというふうに思っている。
(原田文部科学副大臣)(資料2‐2)
 あらゆる会合のときに、必ずまくら言葉に「少子高齢化時代」と使う。これは今が大変だ、これからいろいろ大変になるんだという意味を込めて、少子高齢化時代到来と言うのだが、高齢化時代というのは、ある意味では人間のそれこそ理想郷ができた状況であると考える。戦後の日本の政治、行政、しっかりやってきたことで、ある意味では人間の理想郷ができた。
 一方少子化時代というのは、国民として、国家として心配なことであり、本当にきちっと対応しなければいけない。
 少子化対策は、それに応じた社会にどう対応するかという部分と少子化に歯止めをかけ、端的に言えば出生率を少しでも引き上げる部分に重点を置くかというのは、今混然とやっている。どちらも難しい話で、今まではメニューはたくさん出ていると言うが、何となくそこがはっきりしないまま、これでもかこれでもかと各省が出してきた部分もあると思う。どうもニーズに対していま一つ結びついてないのではないかという感じがする。
 文部科学省としては、生まれた子どもが少ない、その子どもたちをしっかり健全に育成していくということを担っている。教育の世界でも大変少子化が影響してきている。例えば、子ども同士の切磋琢磨する機会が少ないとか、親の子どもに対する過保護、過干渉を招きやすくするとか、子育てについての経験や知恵の伝承、共有が困難になること等である。いずれにしても、この少子化時代にどう対応していくかということは、教育行政としてしっかり頑張らなければいけないと思う。
 例えば、家庭でお父さん、お母さんが悩んでおられることに対応するため、子育てサポーターを配置するとか、親を対象とする家庭教育に関する講座を、妊娠期の親、小学校へ入学前の子どもの親等に対し提供する等の施策を行っている。やはり家庭に対しても、私たちが支援を充実していかなければいけないと思っている。
 また、学校、幼稚園においても、しっかり頑張らなければいけないと思っている。幼稚園関係については、幼児教育振興プログラムを策定したところであり、親と子の育ちの場として、預かり保育等の子育て支援を推進している。
 今、土日が休みになった結果、学校と社会との連携が非常に大事になってきた。奉仕活動・体験活動の推進や、地域の大人の教育力を結集して子どもの居場所を確保するということも考えていこうと思っている。
 もう1つ、教育に伴う経済的負担の軽減についても、制度の中で頑張っていこうと考えている。
(鶴保国土交通大臣政務官)(資料2‐3)
 理想の人数の子どもを持たない理由について、国土交通省関連の理由として、「家が狭い」という回答が、社会保障・人口問題研究所という厚生労働省の外郭団体の統計の中で5番目に挙げられている。国土交通省は、目に見える形での社会インフラの整備に取り組んでいる省であるが、こうした御批判や御指導を伺わせていただくという意味も込め、これまで当省が推進してきた施策について、若干説明させていただきたい。
 家が狭いという点については、住宅取得の支援を進めている。住宅ローン減税制度や住宅金融公庫の証券化の推進に加えて、人生の各ステージに応じて、家の大きさ等を柔軟に変えられるよう、中古住宅市場の活性化施策を進め、住み替えをしやすくするための条件整備をしているところである。
 また、大都市地域の既成市街地域における住宅供給促進による職住近接の支援や、公営住宅などでの保育所の併設を進めている。
 その他にも、バリアフリー環境の整備に取り組んでいる。ショッピングセンターやデパートでのトイレに関しても、設計に関するガイドラインにおいて、トイレの設計についての指針を示し、ベビーベッド等の整備された子連れの方々にも利用しやすいトイレの整備を促進している。こうした取組には目立たないものがあるが、省として積極的に取り組んでいる。
 これらの子どもを生み育てやすくするための生活環境を整備するための施策については、今後ともその推進に努めていきたい。

(2)自由討議
○各有識者委員及び出席大臣等から以下の意見が述べられた。
(大塚委員) 少子化対策をいかに具体化していくのかということについて、とにかくできるだけスピーディーにやることが先決ではないかと思う。
 現に、例えば一部の規制緩和というのが進められてきているという実態はあるが、全体的に見ればまだまだスピード感に欠けるという感じがある。企業としては、男女共同参画社会という考え方に沿ったいろいろな人事制度等について、検討を進めている。私どもの会社は特に女性の極めて少ない会社であり、まず女性の採用をいかに増やしていくかというところから始まり、いろいろな制度の改善についても着実に進めるということでやっている。企業でも、規模の大きいところとそうでないところがあるなど実情がそれぞれ違うので、企業でやるべきことを、一律にすべてこういうことをやりなさいというようなことをすると、なかなか現実問題としては進まなくなってしまうのではないかと思う。企業のそれぞれの経営者がこの問題についての意識を高めていくことがまず先決だろうと思っており、男女共同参画社会や少子化問題に対するいろいろなパンフレット、啓発書みたいなものを共同で作るというようなことも含めてやってまいりたいと思っている。やはり何といっても国の政策における、少子化対策の優先順位というのを明確にしていただきたいというのが、正直な私の考えである。
(奥山委員) 横浜市の市営バスにベビーカーを畳まずにそのままお子さまを乗せられるということが、来年の1月1日から始まるが、この制度をつくるにも、結局横浜市の中でも、子育て支援事業本部と、交通局との調整が大変であったようだ。具体的に1つの事業を立ち上げようと思っても、文部科学省、厚生労働省、国土交通省ということで、皆さん揃って、1つのことを考えることができればいいのだが、やはり行政の縦の社会の中で、関係省庁の協力がなくては進まないというのが、国もそうだし、各地方自治体でもそうだという実態があると思う。そのような時に、トップの方なりが、ぜひ実現するんだという強力なトップダウンがないと、こういった事業は実現できないのだということを身をもって感じたので、この検討会の場はとても大事な機会だと思う。1つの目的を持って、いかに連携をとるかということがとても大事だと感じる。
(白石委員) 産後休暇をなぜ取れなかったかという調査でも、職場が取りにくいとか、周りに迷惑がかかるというように、職場の雰囲気そのもので目に見えない圧力を感じている女性が数多くいると思う。
 企業にとっては負担が大きいが、その期間、代替要員を用意するとか、うまく引き継ぎをする。男性であっても、休むと迷惑がかかるという幻想の呪縛から解き放つような、休んで代替要員がいないような企業はおかしいのであって、代わりは他にもいるので、幻想の呪縛からどう男性を解き放っていくかというような風土づくりが重要ではないかと感じている。
(坂口厚生労働大臣) 企業の方にいろいろなお願いをしなければならないが、今回、法律で行動計画を作っていただくことになり、これからお願いをすることとなる。これは、なかなか大変なことだろうと思っているが、この行動計画を作っていただくということもさることながら、やはりトップの方が御理解いただいているところはいいのだが、御理解がなかなか難しいというところも率直に言ってある。そうしたところに、行動計画を作っていただくということが、1つの背中を押すことになるのではないかと思っている。
(桃井委員) なぜ子育てに関する、あるいは子どもに関する施策が実効を上げないかということを自分の現場で見ていても、あるいは他の職業の現場でもそうだと思うが、子どもに関する施策は、すべて経済効率の中で大枠が語られる。大枠が語られて、その次にはパイの奪い合いということになる。限られたパイを取り合う中では、子どもに関する施策は、必ず政治的にも行政的にも弱いために縮小され、実効のない結果となる。財政的な支援が実質的には乏しくなるというのが現状であろうと思う。それを何とか形として浮かび上がらせる、つまり他の財政との奪い合いではなくて、子どもに対する施策がより別枠で、優先される形の法制化なり、あるいは義務化なりが行われると、地方自治体でも子どもの施策に力を注ぎやすいと思う。
 実効を上げるための今までの法律のあり方、あるいは行政のあり方と違うパターンの法律化、あるいは義務化をぜひお考えいただきたいと思う。

 

3 閉会
○小野内閣府特命担当大臣から、次回の検討会は1月13日を予定していること、議事要旨については、後日公表すること等の発言があった。