「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議(第1回)議事要旨

1.日時

 平成19年2月9日(金)17:10~18:00

2.場所

 内閣総理大臣官邸 2階小ホール

3.出席者


(少子化社会対策会議委員)
安倍 晋三  内閣総理大臣
塩崎 恭久  内閣官房長官
高市 早苗  内閣府特命担当大臣(少子化対策)
大田 弘子  内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
菅 義偉  総務大臣
尾身 幸次  財務大臣
伊吹 文明  文部科学大臣
柳澤 伯夫  厚生労働大臣
甘利 明  経済産業大臣
冬柴 鐡三  国土交通大臣

(有識者)
池田 守男  株式会社資生堂相談役(日本経済団体連合会少子化対策委員会委員長、日本商工会議所特別顧問)
岩渕 勝好  東北福祉大学教授、産業経済新聞客員論説委員
清原 慶子  三鷹市長
古賀 伸明  日本労働組合総連合会事務局長
佐藤 博樹  東京大学社会科学研究所教授
樋口 美雄  慶應義塾大学商学部教授
吉川 洋  東京大学大学院経済学研究科教授

4.議事概要

1 あいさつ

○安倍内閣総理大臣
 我が国における少子化の急速な進行は、経済産業や社会保障の問題にとどまらず、国や社会の存立基盤に関わる大きな問題であり、政府としては、これまで少子化に対応するための累次のプランを策定し、様々な取組を進めてきた。
 しかしながら、我が国は、一昨年、人口減少社会が到来し、また、昨年末に公表された新人口推計によれば、前回推計よりも出生率が下回り、高齢化率が上回るなど、厳しい見通しが示された。残念ながら少子化の流れを止めることができていないことを深刻に受け止めざるを得ない。
 このような状況の中で、今こそ改めて、国民の結婚や出産に関する希望が実現するには何が必要であるかに焦点を当て、効果的な対策の再構築、実行を図らなければならない。例えば、最近の調査や研究では、結婚や第1子の出産には経済的基盤や継続就業の見通しなどが大きな影響を与えており、第2子以降の出産には夫婦間の家事・育児の分担や育児不安の解消、第3子以降の出産には教育費の負担の軽減が重要であることが明らかにされている。
 子どもは国の宝である。すべての国民が、自らが望むように、安心して結婚し、子どもを生み育てることができる日本としなければならない。同時に、子どもを育む家族の素晴らしさや価値を再認識することも必要である。
 このため、「子どもと家族を応援する日本」という重点戦略を策定し、最近の出生数や婚姻数に見られる明るいきざしを確かな流れにできるよう、50年先、100年先の国家の大計を考え、内閣の総力をあげて真剣に取り組む考えである。
 検討会議の皆様には、建設的で未来に向かっての議論をしていただきたい。

2 新人口推計及び今後の人口構造の変化に伴う課題について

 将来推計人口は、国立社会保障・人口問題研究所で国勢調査等のデータに基づき、概ね5年ごとに行っている。
 昨年12月の新人口推計では、出生や死亡に関するトレンドを将来に反映する形で2055年までの50年間の人口を推計している。人口を推計する仮定として、中位推計では、合計特殊出生率について、非婚化・晩婚化の進行により、平成14年推計の2050年時点の1.39からさらに低下し、2055年で1.26という仮定を置いている。平均寿命は、2055年にはさらに伸び、男性で83歳強、女性で90歳強という仮定を置いている。
 この仮定に基づく推計の結果、2055年には、総人口は8,993万人、65歳以上の老年人口が4割を超えるということで、更なる人口減少、少子高齢化が進む見通しである。
 ただし、意識調査からみると、9割以上の人が結婚したい、子どもは2人以上持ちたいという希望を持っており、近年の少子化傾向は必ずしも国民が望んだ結果ではないと考えられる。仮に各種の壁が取り除かれ、国民の希望が実現した場合の将来人口の姿について試算をするとともに、結婚、出生に関する国民の希望と実態との乖離を解消するために何が有効か、社会保障審議会に「人口構造の変化に関する特別部会」を設置し議論した。
 その部会の議論のポイントとして、人口構造の変化の影響であるが、単純に人口規模が減っていくということではなくて、労働力、世帯、地域等の姿が大きく変化することに注目すべきとの指摘があった。
 まず、労働力人口については、2030年までは、生産年齢人口がほぼ確定しているので、女性、高齢者等の就労促進により労働力人口減少の緩和を図ることが必要との指摘があった。
 それから、2030年以降の生産年齢人口はこれから生まれる世代であり、効果的な少子化対策を強力かつ速やかに講じることが不可欠であるとの指摘があった。
 それから、地域、世帯構成といった姿について、2055年には50歳代の約4割の世帯が単身で子どもがいない世帯になると見込まれるなど、生活の状況も大きく変化するという指摘があった。したがって、国、地方、経済界、労働界、地域社会において、将来の暮らしを守る観点からの少子化対策の必要性の認識が喫緊の課題である。
 出生等に対する希望と実態ということでは、希望に対して現実には出生率が低下しており、希望との乖離が拡大し続けているのが現状である。これは就労や社会参加等の個人の希望が拡大する中、結婚や出産、子育てと就労の両立にかかる社会的選択肢が拡大していないためと考えられる。
 このような状況の中で、結婚や子ども数についての国民の希望が一定程度実現したと仮定して、将来の人口の姿を試算した。もとより結婚や出生行動というのは、国民一人一人の選択に委ねられるべき事柄であり、この試算は、子どもを産み育てやすい社会の可視化を試みたもので、出生率の目標といった性格のものではないことに留意が必要である。
 この試算の前提としては、国民の希望を踏まえ、生涯未婚率10%未満、夫婦の完結出生児数2.0人以上が実現するとして、合計特殊出生率は1.75程度に回復する場合をケースIとした。希望実現の程度によってケーIIからIVというものも試算した。
 試算の結果について、ケースIでは2055年において、総人口は概ね1億人、高齢化率は35%程度、出生数は90万人弱、生産年齢人口では、比率は新人口推計と同じ程度であるが、人数的には約800万人の増という試算の結果となった。
 次に、結婚・育児と仕事との両立の必要性について議論を行った。これまでの女性の労働力率の上昇であるが、これは主に未婚率の上昇の影響による。これは、仕事と子育ての両立が困難で、就労継続と結婚・子育てがいわば二者択一になっていることの現れである。このような構造を残したままでは、結婚や出生に対する国民の希望の実現と、今後の安定的な社会経済の発展の基盤となる労働力の確保、この2つの両立を図ることはできない。したがって、有配偶の女性が希望するように就労を継続できる環境を整備し、女性が安心して結婚・出産し、男女ともに仕事も家庭も大事にしながら働き続けるといった選択ができるシステムをつくっていくことが必要である。
 各種の調査、研究結果から示唆される要素を整理したものをみると、結婚については、経済的な基盤、雇用・キャリアの将来の見通し・安定性といったものが結婚につながってくる。
 それから、第1子の出産については、育児休業など子育てをしながら就業継続できる見通し、あるいは仕事と家庭の調和が大切である。働き方、家事・育児の分担、保育所の組み合わせ、これが継続就業につながるという指摘もある。
 それから、第2子以降の出産については、夫婦間の家事・育児の分担や育児不安の解消が大切である。夫の労働時間が長いと家事・育児の分担が少なくなるので、そこも問題であるし、育児不安の解消には家庭内あるいは地域からのサポートが大切という指摘がある。
 それから、第3子以降の出産については、教育費の負担感が課題という指摘がある。ただし、1970年代生まれ以降では、1人目、2人目でも教育費の負担感が高いといった指摘がある。
 以上のような分析から、当面、焦点を当てて取り組むべき施策分野としては、結婚をしたい、子どもを持ちたい、2人目が欲しい、といった希望に焦点を当てることが効果的と考えられるということである。
 速やかに取り組むべき施策分野としては、若者の経済的基盤の確立、継続就業の環境整備、家事・育児の分担、保育環境の整備など、働き方や家族・地域の分野と考えられる。今後の施策等によって、国民の希望水準自体も上下するので、希望水準が低下して一層の少子化を招くという悪循環に陥らないように、希望が実現するよう早急な対応が必要であるというのが、本部会の議論の整理である。

3 検討会議及び分科会等について

 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略を策定する背景は、既に総理また厚生労働省から具体的な話があった通りであり、結婚・出生行動にかかる国民の希望がある程度かなえば、合計特殊出生率は1.75程度までに改善される余地があるということである。また、子どもは国の宝であり、安心して結婚し、子どもを生み育てることができる日本にするということで、このような名称にしている。
 基本的な考え方については、「すべての子ども、すべての家族を大切に」ということであり、本格的に少子化に対抗するため、制度・政策・意識改革など、あらゆる観点からの効果的な対策の再構築・実行を図り、「結婚したいけれどもできない」という若い人、「子どもを生みたいけど躊躇する」という若い家族を支え、どのような厳しい状況に置かれていても、この社会に生まれたすべての子どもたちが希望を持って人生を歩んでいけるよう、世代を超えて国民みなで支援する国民総参加の子育てに優しい社会づくりを目指すというのが趣旨である。
 検討体制として、この重点戦略検討会議は、少子化社会対策基本法に基づき総理を会長として全閣僚で構成している少子化社会対策会議の下に置かれる。従来、少子化社会対策会議の下に少子化社会対策推進会議を置いていたが、これを廃止し、この検討会議を置く。さらに、重点戦略検討会議の下に分科会を設けるということであるが、この分科会の設置は重点戦略検討会議で決めるということで、本日この場で、4つの分科会を置くことについてお諮りしたい。
 1つは「基本戦略分科会」。経済支援の在り方や働き方の改革を踏まえた子育て期の所得保障の在り方、子育て支援策の財源、制度的枠組の再構築等を議論する。
 次に「働き方の改革分科会」。ワーク・ライフ・バランスや子育てしながら働き続けられる柔軟な働き方の実現、若者の社会的・経済的自立の支援、社会的責任を果たす企業の取組の促進と意識改革等を議論する。
 次に「地域・家族の再生分科会」。子育て家庭を支える地域づくりということで、孤立化の防止、地域の子育て支援拠点の整備、意識改革といったことの議論のほか、働き方の改革に対応した子育て支援サービスの見直し、児童虐待対策、母子家庭・要援護児童支援などについても議論する。
 最後に「点検・評価分科会」。これまで少子化社会対策大綱や子ども・子育て応援プランなどに基づく政策を進めてきている中で、そのフォローアップ、あるいは実際の運用の改善というものを議論し、都道府県や市町村の行動計画の数値目標の見直しに向けた検討を行う。
 各分科会は、重点戦略検討会議の学識経験者が主査を務め、それぞれの分科会の委員として指名された有識者とで構成する。7、8人から10人程度というメンバーで各分科会を構成してはどうかという案である。
 今後のスケジュールとしては、本日の検討会議以降、2月から5月にかけて各分科会を3回から4回開催し、5月中に各分科会で議論の整理、6月頃に再度検討会議を開催して、重点戦略の基本的な考え方をとりまとめる。そして、経済財政諮問会議等にも報告し、骨太方針2007に反映したいと考えている。
 その後も、具体的施策についての検討を進め、税制改正等の議論を見極めつつ、平成19年末を目途に重点戦略の全体像を提示することを考えている。
 なお、この戦略検討会議は非公開であるが、会議後、配布資料は公表し、議事要旨も速やかに公表することとしている。
 最後に、平成19年度の少子化社会対策関係予算案であるが、総額は1兆7,064億円、前年度比12.3%増である。子育て支援策については、妊娠・出産・乳幼児期は、児童手当の乳幼児加算の創設、妊娠中の検診費用の負担軽減などがある。未就学期は、地域における子育て支援拠点の充実として、「子ども・子育て応援プラン」の平成21年度の目標値6,000カ所を平成19年度に前倒しして実施することなどがある。小学生期は、「放課後子どもプラン」を原則すべての小学校区で進めるということで、放課後児童クラブについては「子ども・子育て応援プラン」の平成21年度の目標値17,500カ所を上回る形で平成19年度に2万カ所整備する。働き方の改革では、育児休業給付の給付率について、平成21年度までの暫定措置ではあるが、従来は休業前賃金の40%であったが50%に引き上げるという措置などがある。社会全体の意識改革のための国民運動の推進として、家族や地域の絆を再生する国民運動を展開することなどである。

4 意見交換等

 4つの分科会の設置について検討会議として了承した。

○池田委員
 日本経団連で少子化対策委員会委員長を務めている。
 少子化という現象は、戦後築き上げてきた社会構造や価値観といったものをもう一度見直すべきという声であり、人間の根源にかかわることを指摘されている気がする。
 そういうことを考えると、国民総がかり、教育再生会議で言っているような社会総がかりでこの問題に取り組む必要がある。国の役割を明確にするとともに、地方自治体あるいは企業の役割を明確にすべきである。地域社会の役割を考え、また、国民一人一人の意識改革がない限り、前へ進むことはできない。特に企業として取り組むべき最大の課題は、ワーク・ライフ・バランス以外の何物でもなく、多様かつ柔軟な働き方を追求することが大変重要である。
 ワーク・ライフ・バランスの実現を目指して行くには、確かにコストアップにつながることも多いが、コストという意識ではなく、将来への投資というような位置づけで考えない限り、企業はやはり取り組めないのではないかと思う。こういう取組について、経済的、財政的な支援もいただきたいと思うと同時に、税制的なインセンティブもより必要になるのではないか。そういったことを分科会において検討していただきたい。
 いずれにしても、仕事と生活の調和が大変重要な課題である。この問題は、男女共同参画社会から提言されているし、教育再生においても重要課題であるので、男女共同参画社会、少子化対策、教育再生といったものを絡めて、企業は企業なり、経済界は経済界なりに真剣に考えたい。
 そういう流れの中で、一人一人の社員が生きがいと働きがいを見出だして行くことができれば、企業における生産性向上にもつながるし、社会貢献にもつながる。ワーク・ライフ・バランスの実現が育児・保育、あるいは教育にも好影響を及ぼすことは間違いない。
 子どもは国、社会の宝であるのは当然であるが、その出発点を考えると、やはり家族・家庭における宝であり、それが地域社会の宝であり、それが社会の宝であり、最終的に国の宝になると思う。家庭の重要さ、それをサポートする企業の役割の大きさを、この議論の中で色濃く落とし込ませていただきたい。

○岩渕委員
 長く産経新聞にいて、20年ほど前から少子化問題に取り組んできた。最近、出生率が下がり続けているため、これまでの政策が間違っていたという批判もあるが、これは単細胞的な議論、ためにする批判でしかない。
 少子化対策を立てなかった韓国は、2000年の出生率1.54から2005年には一気に1.08まで低下している。日本も対策を立てていなかったら、多分この程度まで落ち込んでおり、これまでの少子化対策はそれなりに下支え効果があったといえる。それでも回復しなかったのは、財政支出が少なすぎたことと国民の意識が変わらなかったためである。
 フランスは2.0に回復したが、家族政策に対する財政支出は日本の約4倍であり、子どもが3人いれば月10万円程度受給できるという。OECDの指摘によると、待機児童と経済的負担を解消すれば、日本も2.0程度まで回復する余地があるとのことである。待機児童は2万人を切ったが、潜在需要が掘り起こされるため、あと少なくとも5年程度は残るのではないかとみている。経済的負担の解消は、さらに前途遼遠な話であるが、この2つは、いわば子育てのインフラであるので、着実に充実していかなければならない。
 これまで立ちおくれていた対策としては、第1に、若年者の雇用と働き方の見直しである。パートタイム労働者が減少し、残業代が高くなるなど改善の動きも見られるが、まだ不十分である。日本の企業は社員の妻の内助の功にも支えられて伸びてきたのだから、雇用と働き方の改善と社会保障制度を維持する社会的な責任、歴史的な責務があると思う。
 第2に、家族と地域の再生について。希望を反映した人口試算は、30代前半の女性労働力率を現在の6割から8割に引き上げることを前提にしている。20代後半に至っては9割が働くという前提なので、専業主婦モデルはもはや成り立たない。夫婦が助け合い、両親や上の子どもが協力して、企業が働き方を見直し、地域が支えなければ子育てはできない。
 地域の支援としては、店が子育て家庭の料金を割り引く優遇制度をほぼ半数の県が既に導入しているかあるいは決めている。お金をかけずに子育て支援の雰囲気を盛り上げ、地域再生の起爆剤にすることができるので、速やかに大都市を含む全都道府県に普及させるべきである。
 最後に、総理を先頭に強力な国民運動を展開していただきたい。本腰を入れて取り組むことで、ダメージをプラスに変えることができると思う。

○清原委員
 私は、三鷹市で学生時代から市民参加の経験を重ね、平成15年4月から市長を務めている。個人的には、働きながら2人の子どもを育て、また育てられてきた母親でもある。
 最近の少子・長寿化の動向は、三鷹市のような自治体でも重要な政策課題を提起している。現行の「第3次三鷹市基本計画(改定)」において、取り組むべき6つの最重点課題の1つに「いきいきと子どもが輝く教育・子育て支援のまちづくり」を位置づけている。
 1つ目は、子どもたちが自ら育つ環境を整備するという視点に立った施策である。例えば、公立保育園の保育の質の確保、私立幼稚園への支援、公立学校としての小・中一貫教育校の取組、子どもたちが使いやすい公園や遊び場・広場の整備などである。
 2つ目は、妊娠中や子育て中の保護者を支援するための施策である。例えば、両親学級の充実、未熟児や双子、三つ子を生んだ夫婦への相互支援のピアサポートの機会の開設、待機児解消に向けた保育園や学童保育所の拡充、子育て支援センター等の子育て支援の拠点とネットワークづくり、医師会、薬剤師会、市内の大学病院と連携した「小児初期救急平日準夜間診療所」の開設、小児医療に係る経費への補助制度等の取組などである。
 3つ目は、市役所職員に対する育児休業制度の利用の推進をはじめ、市内事業者に対する育児休業制度の創設や利用の啓発などである。
 三鷹市の取組の特徴は、取組の推進方法にある。キーワードは、多くの担い手に参加していただく「協働」、「地域・コミュニティー」が支える参加型の取組であり、こうした取組の意義を強調したい。
 「協働」については、たとえば、三鷹市のホームページ上に開設している子育て世代の情報交換の「子育てネット」というサービスや、親子でのまち歩きをサポートする「子育てマップ」について、子育て世代が会員のNPO法人に事業を委託している。また、乳幼児訪問や子育ての相談に市内の助産師会の協力を得たり、保育園が地域開放や子育て広場事業として離乳食や子育て相談に乗ったりしており、働く母親だけを支援しているわけではない。また、子育てを市民が相互に支援する「ファミリーサポート」という仕組みは、子育て経験者や専門家が研修を受け、サポートする会員として登録の上、市内で市民相互の支援を行っている。通学路の安全を見守る「安全安心市民協働パトロール」も、市民が研修を受けた後、学校で児童・生徒に紹介され、顔と名前のわかる関係で見守りをする。
 第2の「地域・コミュニティー」との連携については、例えば、三鷹市立小中一貫教育校をはじめ、市内の各小中学校は、保護者のみならず地域のボランティアが授業や行事の支援に加わるような、コミュニティスクールとしての取組を基礎にしている。昨年5月から全小学校に配置した学校安全推進員、愛称「スクールエンジェルス」の人員配置は、地域のシニア世代を会員とするNPO法人に委託し、地域や学校をよく知っている市民が見守り、安全確認をしている。放課後地域子どもクラブ事業は、文部科学省の放課後の支援事業を大いに活用し、地域のボランティアの参加が基本となっている。子どもたちは自治体においてはまさに地域の宝であり、保護者に加え、子どもたちを支える地域の大人の関わりの広がりを図っている。
 最後に、この会議の進め方について申し上げたい。三鷹市のような基礎自治体による、子どもたちが成長しやすい環境や、保護者が孤立化せずに子育てできる環境をつくることについては、全国においてさまざまな施策が既に展開されている。そこで、本会議では子どもと家族を応援する具体的な施策や事業、あるいはそれを保障する制度や予算のあり方について、さまざまな取組をまずはマクロ的に把握をし、検証して、平成19年度予算で示されているきめの細かい政策などとの整合性をとれば、有効な展開が図られると思う。その上で、私が報告したような自治体によるミクロな取組について、全国的に共通に普及すべきことについて、制度的な整備や推進方法について具体的に提示することが有用ではないかと思う。
 人口構造の変化に関する特別部会は、ライフステージ別に課題を整理しているが、乳幼児や小学生を育てる段階に加えて中学・高校・大学生を育てている段階に焦点を当てた分析が有効だと思う。
 最後に、結婚観や家族観、夫婦観は個人的な価値観が大きく影響するため、行政がどのぐらいかかわれるのか、かかわれるとしたらどのような留意点が必要なのかが問われている。子どもを生みたい、育てたいという方の希望を実現することは大切であるが、それを数値目標だけの量的なものにしないという留意が必要であり、今回、厚生労働省が発表された方法はとても大事だと思う。数字で示されるものだけではなく、子どもたちが人権を尊重されて育まれる社会を日本がつくっていくという新しい「21世紀型の社会のモデルづくり」をこの会議から発信していくことを願っている。

○古賀委員
 働く現場の実態をみると、働き方の現在の二極化の解消、そして男女双方の仕事と生活の調和の実現が切り離せない問題だと思っている。働く現場では、極論すれば長時間労働の正社員か、不安定な非正規雇用かという二者択一、その間の働き方の選択肢がないというのが実態である。特に雇用形態に応じて所得の格差がある、あるいは安定した雇用機会等がなかなか見いだせない方たちが増えている。この不安定な雇用形態という増加が少子化の要因となっていると思う。
 一方では、日本の働き方の基準が、男性正社員の働き方、すなわち恒常的長時間労働、家事・育児にかかわらずというのが日本の働き方のスタンダードになっている。これまでも働き方の改革が訴えられ、子育て支援策の対象も女性に限らず全体にということにはなっているが、残念ながら実態を見ると、女性の育児・介護支援の域を脱していないというのが実態ではないかと思う。男性の育児休業が増えた、徐々に増えているということも言われているが、そのことによって、本当に男性の働き方基準そのものが変わっているのかどうか。女性の働き方も、この男性長時間のモデルを基準にして合わせざるを得ない人と、そうでない人に二極化をしてしまっている。その間の選択肢がないことが、急速な少子化に直結していると思う。
 このような状況から、私はこの働き方の二極化による格差ということ、あるいは男性の働き方・暮らし方の見直しというものも視野に入れながら、この課題について議論をしていくことが必要であるし、そのことによる税、社会保障制度、あるいは政策に基づく財政の問題も当然必要なことだと思う。
 最後に、総理も先程述べられたが、これまでにたくさんの類似した研究報告や提言が数多く提示されている。これまでの施策や提言がなぜ実行ができなかったのか、あるいは実行が遅いのか、評価と分析をきちんとした上で、今回のこの会議の検討結果が実効性のあるものになるよう私自身も参画をしていきたい。

○佐藤委員
 取り組むべき課題というのは明らかになっており、これまで取り組んできたことが間違っていたわけではないと思うが、結果としてみると効果が上がっていないという議論もあり得る。そういう意味で、なぜ取り組むべき課題は間違っていないにもかかわらず効果がなかった原因を分析した上で、重点的に取り組むことが重要である。さらに、施策間の連携、特に働き方の見直しと地域の子育て支援強化の連携がすごく大事だと思う。
 働き方の見直しには、イノベーションが必要である。企業はコストがかかると言うが逆である。つまり、今、古賀委員が言われたように、現状は男性の働き方が前提になっているが、今度は、24時間365日みんな働けるわけではなく、子育て期には子育てがあり、介護のときは介護がある。つまり働く人の時間制約である。日本の企業というのはエネルギー制約、環境制約の中でイノベーションを起こしてきた。実は時間制約という時間資源に制約があるということが、働き方を効率化していくことに結びつくのではないか。これは子育て期の人だけでなく、たとえば若い人たちが自分の能力開発に時間を使えるという点で、働き方の生産性を高めていくことにもなると思う。
 もう一つは、これまで政府の取組で一番遅れていたのは未婚化のところである。確かに難しい点はあるが、結婚したい人たちが結婚できていないとすれば、どこにその構造的な問題があるのかを明らかにして取り組むことが政府の課題になり得る。ここはもう少しきちんと議論をすることが今回大事なのではないかと思う。

○樋口委員
 私も人口推計及び人口構造の変化についての審議会に参加し、いろいろ感じるところがあった。まず、出生率が1.26、現在と将来も同じということが安易に考えられがちであるが、1.26が50年間続くことの驚異を改めて感じた。
 人口が9,000万人になることはもちろん、生産年齢人口が3,800万人減少するということの脅威を感じ、単に労働市場、労働力の減少ということだけではなく、我々の生活、地域というものが大きく変わらざるを得ないことを予測している。例えば、中位推計では、現在の生涯未婚率、50代における未婚率は6%であるが、2055年になると24%になる。50代の4人に1人が未婚であるという社会は想像を絶するようなことであるかと思う。さらにその結果として、約4割の世帯が単身1人で住んでいる。しかも、無子世帯、子どものいない世帯だという状況において、今までの介護をはじめ、暮らしというのは夫婦や子どものいることを前提にしてきた面があり、その社会基盤も存立基盤も揺るがされるということになると思う。
 少子化対策は、国のために行うというよりも、個人の選択が実現できる、つまり、子どもを持ちたいという選択肢を用意することが大切である。
 日本人の女性で現在フランスに住んでいる人と話をする機会があった。その女性は、日本にいるときには、自分は仕事を続けたいから子どもは欲しくないと思っていたが、フランスへ来たら、普通の人が普通の生活の中に仕事も子どもも持っているという状況を目の当たりにし、子育てを楽しんでいる様子を見て、自分も持ちたいと思うようになったという。こうした状況を実現するためには、女性だけが子育てをするということではなく、周りの人たちの支援、夫の支援、家族の支援、そして地域の支援といったものがあって、それが実現できると言っていた。
 日本の今後を考えたとき、こういった社会をどう実現していくのかということが問題になる。そのためには、女性の両立支援を進めるだけでなく、やはりワーク・ライフ・バランスといったものが欠かせず、男も女も現在の働き方を見直し、自己実現できるような社会をつくっていく。同時に重要なのは、働き方、仕事の進め方を見直すことによって、企業の時間当たりの生産性を高め、それを企業収益の拡大につなげるということがなければ、安定したこうした環境はできず、その夢は実現できないと思っている。
 ワーク・ライフ・バランスは、少子化のためというよりも、日本の現状あるいは今後将来を考えたときに必要なものであり、それが結果的にこの少子化対策にもつながっていくというような関係にある。したがって、ワーク・ライフ・バランスの実現をいかに進めていくかが最大の課題ではないかと思う。

○吉川委員
 もとより家族、規制、人口といった問題は経済だけで決まるものではなく、新しい価値観やその他違った次元の問題がたくさんあるが、経済の影響というものも非常に大きな影響を与えている。20世紀初め頃までは、婚姻数は景気の動きを最も敏感に反映する一つの指標であった。
 当然のことであるが、まず問題の所在をきちんと正確に把握する、さまざまな印象論や大体こんなものではないかというものがいろいろあるが、どこまでも事実をきちんとまず把握する。それから、もう一つは、既にこの問題についてはさまざまな施策が過去にも試みられた。外国の経験も含めてなぜ効果があったのか、あるいは効果がなかったのか、この点について早急に勉強してみたい。

○塩崎内閣官房長官
 それでは、関係閣僚から、有識者からの意見について発言があればお願いしたい。

○尾身財務大臣
 少子化対策は極めて重要であり、先程、厚生労働省から50年後の人口推計の説明があったが、100年後も考え、きちんと対策を考えていかなければいけない。100年後に4,500万人ということが現実になったら、日本は確実に三流国家になると思う。そこも視野に入れながら、ぜひ考えていただきたい。
 日本のいわゆる少子化対策は、GDP比でOECDの統計だと0.75で、フランスの3.02に比べて4分の1となっており、いろいろな事情もあるが、ここにあらわれているような意味において、国家としてのこの少子化対策の力の入れ方が基本的に至らないのではないかと考えている。30年前の1975年の出生率は、フランスも日本も1.9であり、それが30年たってこれだけ違ってきたということは、やはり政策の問題もあると考えており、この点、抜本的に国家のあり方という観点も含めて考えていただきたい。
 これを検討するのが、今までの発想を変えなければだめだと思っており、フランスなどヨーロッパ諸国等に行き、どういうことをやっているか現実に見てきて、検討をしていただければ大変ありがたい。
 それから、最後にもう一点は、日本は出生率が一番低いのに、使っているお金はまた一番少ないというような実態にあるわけで、現在程度の1億2,800万人、あるいは1億2,500万人程度の人口は、国家として維持することが必要であると考えている。そういう点も含め、具体的に有効な現実的な対策をとったらお金が幾らかかるのか、財政が幾ら負担をすることになるのかということも、客観的に検討いただき、それをつけた上での結論を出していただきたい。
 もちろん、今は財政が非常に厳しい状況だが、100年、50年後のことを考えたときに、そういう点をきちんと国家として対応していかなければならないため、そこも遠慮なくきちんと数字を出してほしい。

○甘利経済産業大臣
 労働力人口の減少が進む中、日本が経済成長を成し遂げていくことが重要な課題であるが、そうした中でも、仕事と家庭の両立の支援や夫婦の育児の分担などの働き方の見直し等につながる環境整備に向け、経済産業省としても積極的に貢献していきたい。
 実は、数年前、経済産業研究所が少子化の原因分析の研究レポートを出した。今、シカゴ大学の教授をしている山口一男客員研究員が中心になって行ったものだが、このレポートは第1子を産んだ女性が第2子を産みたくなくなるという最大の原因が、亭主に対する不信感、不満感であった。何の不満かというと、育児の大変さに対する理解が足りないということの不信感、不満感が2子以降を産ませないようにしてしまうということであった。これを防ぐためには、夫婦の会話をする、時間の共有をするということである。特に平日の会話時間を確保するということと、何よりも夫の方の育児分担負担をちゃんとするということだという結論になった。

○菅総務大臣
 地方公共団体で成功している例を紹介したい。
 福井県では、3番目の子どもに対して医療費と保育料を3歳まで無料とし、出生率が1.5になった。宮古市では、子育て日本一を目指して窓口を一本化して取組、1.67という出生率になった。さまざまな施策を行えばできるということであり、そうしたことを踏まえ、議論していただきたい。

○冬柴国土交通大臣
 子育て支援というと、子どもが生まれた家庭を前提として考えるが、結婚する前のことをもっと考えてほしい。若い人たちは、適齢期になれば誰でも好きな人ができると思うが、結婚を阻んでいる要因は、合計特殊出生率が低い東京都、特に都心では1を切っていることからわかるように、家賃が高いからである。私は、巣づくり支援といっているが、若い所得の少ない人も、結婚して住む家を公的に支援する、家賃補助するということは非常に大切であり、早く結婚すれば2人、3人、4人と子どもを生む確率も高くなると思う。その点もぜひ検討いただきたい。

5.閉会

 塩崎内閣官房長官より、今後、各分科会において掘り下げた議論をして一定の整理がなされた時点で、本検討会議において議論していただきたい旨の発言があった。