資料2[1] ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて1

資料2
第2回「子どもと家族を応援する日本」
重点戦略検討会議「働き方と改革分科会」
平成19年4月5日

(北浦委員説明資料)

平成19年4月5日

社会経済生産性本部 北浦 正行

○基本的な認識

  • 少子化が進む中で、人口・労働力の減少が大きな課題となるとともに、労働の実態としても労働時間の二極化など働き方の偏りやゆがみが指摘。
  • 今後は、男女共同参画を前提としつつ、それぞれの就業ニーズに応じた多様な働き方で、かつ安心して参加できる労働市場の整備が重要。
  • そのためには、男性(世帯主)が働き、女性や家事や育児を分担するといった典型的な分業スタイルを前提とした労働モデルからの脱却が不可欠。
  • 企業においても、そうした新しい従業員像をもとにした人事管理改革を進めるとともに、個人の側でも生涯を展望したキャリアデザインが必要。
  • 企業の制度的な枠組みや社会的な制度やサービスについて、こうした「分業」モデルを前提にした要素を改革する必要。
  • 関係施策は多岐に渡ることから、労働領域はもとより、産業、教育、福祉、その他の生活関連などの諸領域が一体的に取り組める体制が必要。

○具体的な方向

◇企業や労働市場の環境整備として検討すべき課題。

  • 集団による一律管理だけでなく、個人の事情に配慮した個別管理が重要となること。そのことは、賃金処遇だけでなく、退職金や福利厚生等の在り方にも関わってくる。
  • 企業に必要な能力を教育して人材を育成していくという視点だけでなく、能力発揮や学習の機会を与えながら個人のキャリアをどのように形成していくこと。
  • 働き方の選択肢が多いことと同時に、どのような働き方を選択しても均衡ある処遇を受けることができ、また必要に応じて転換する機会が与えられること。
  • 育児や介護などの生活事情をはじめライフキャリアの変化に応じて、仕事が両立できるよう、育児休業や労働時間管理の弾力化などによって柔軟に働くことができること。
  • これまで中核的な人材としての活用が進んでいない労働力として、女性の活躍を積極的に促すとともに、定年後の高齢者について企業内外での就業機会を広げること。
  • 若い世代に対しても、新しい労働モデルの中で、企業と個人生活とがウイン・ウインの関係で成り立つよう、キャリア設計を支援するとともに技能継承を進めること。
    • 社会的な施策の整合性を図るための「ワーク・ライフ・バランス基本法」(別紙)の提案(地域レベルにおいて労働施策と関係施策とが総合的に実施できるよう、自治体の果たす役割・権限を強化することが重要)。
    • 「柔軟な働き方」を実現するため、新しい働き方の選択肢や弾力的な労働時間・勤務制度の導入についての検討(時間短縮方策の検討、生産性との関係の研究等)。
    • 個人のキャリア支援を資金設計面でサポートしていく制度の検討(キャリア支援の観点からの雇用保険の機能の見直し―「キャリア保険」への改組、財形・退職金共済制度のあり方など)。

平成18年6月1日

JPC SED

報道機関各位

「ワーク・ライフ・バランス推進基本法」の提案 ~ワーク・ライフ・バランスを政府全体の取組に~

社会経済生産性本部「ワーク・ライフ・バランス研究会」中間報告

(財)社会経済生産性本部(理事長 谷口恒明)の「ワーク・ライフ・バランス研究会」(座長:樋口美雄 慶應大学教授)[注]では、新時代における働き方を様々な観点から検討を行ってきている。これまでも、ワークシェアリングを中心にして、長時間労働の是正や多様な働き方の現実などについて調査研究しその成果を提言してきているが、昨今の社会・労働事情をふまえ、こうした「働き方」の問題は「暮らし方」と密接に結びつくものがあることに鑑み、その両者の調和を重視する必要がある。

このため、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」の実現がいまわが国にとっての最重要課題であることと考え、下記のような方向で、中間的な整理を行い当面の取組に対する提言を取り纏めたものである。本研究会としては、さらに検討を重ねていく予定である。

【概要】

国民生活のあらゆる面での格差拡大や、少子化への対応あるいは次世代育成が緊急のテーマとなる中で、「働き方」と「暮らし方」の構造改革を統一的な視点で進めることが重要となっており、ワーク・ライフ・バランスに着目する必要が高まってきた。こうした中で、国全体の取組として次のような観点から検討を進めることを提起したい。

1.硬直的な「働き方」からの脱却を目指した改革を

これまでの「働き方」を見直し、労使双方にとって望ましい柔軟な方向をめざした改革を進めるとともに、正社員以外の働き方に対しても安心して選択できるよう、「働き方の多様化に対応した労働市場」作りを積極的に進める必要がある。

2.多様な「働き方」で企業や社会の活力を

さらに、選択した「働き方」が不平等とならないように、「やり直し」の効く環境づくりとともに、正社員と非正社員に対する均衡処遇の確保や、公平性・透明性がある人事評価の実施、仕事だけでなく仕事以外の生活も含めたキャリア・デザインへの支援が重要となる。

3.ワーク・ライフ・バランスの推進は総合的な視点で

ワーク・ライフ・バランスに関する各省庁の施策は全体的な整合性を持っているとはいえず、「仕事以外の生活」を充実させる施策を含め産業・企業、個人、社会の取組を総合的な視点から進めていくような仕組みを考えるべきである。

4.「ワーク・ライフ・バランス推進基本法」の制定を

このため、「ワーク・ライフ・バランス推進基本法」を制定して、各省庁の関係施策を総合的に推進できる体制を整備するとともに、民間における取組の支援を行うなど、国全体が統一的な視点からワーク・ライフ・バランスを推進していくことを提案する。

※注)「ワーク・ライフ・バランス研究会」について:
1999年よりワークシェアリング推進の課題の方向について調査研究・政策提言を行ってきました当本部「ワークシェアリング研究会」は、この3月に「ワーク・ライフ・バランス研究会」に改称し、多角的な視点からワーク・ライフ・バランス実現に関わる調査研究を推進することとなりました。
【お問合わせ先】
(財)社会経済生産性本部「ワーク・ライフ・バランス研究会」事務局
担当:内野・小山・有泉 TEL.03-3409-1121 FAX.03-3409-1007

「ワーク・ライフ・バランス推進基本法」の提案 ~ワーク・ライフ・バランスを政府全体の取組に~

はじめに

いま、「働き方」と「暮らし方」との双方における構造改革が必要

本格的な景気回復の中で雇用情勢の改善が進んでいる。こうした中で、ワークシェアリングの議論も、緊急対応型から多様就業型へとその重点を移してきた。政府においても、「多様就業型ワークシェアリング導入実務検討委員会」から短時間正社員(注(1))制度の導入要件・方法などが示されている。また「今後の労働時間制度に関する研究会」報告において、規制を緩やかにした柔軟な時間管理ができる方向への改革が提起されているほか、労働契約法の制定についての論議もはじまっている。

ワークシェアリングからワーク・ライフ・バランスへ

当研究会においても、柔軟な労働時間制度を柱にした新しい働き方の姿を検討してきたが、その議論の過程において明らかになってきたことは、ワークシェアリングが目指す「働き方」の改革が「暮らし方」の改革と強い関係を持っているという点である。時間面のゆとりと働き方の自律性を高めることは、個人の諸活動を積極的に取り組むためにの第一歩となる。働く人たちの多様なニーズが安心して満たすことができるためには、職業生活と家庭をはじめとした仕事以外の生活との両立が実現されなければならない。ワークシェアリングの議論は、今日的な状況の中で、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の問題へと発展してきたといえよう。

見過ごせない格差問題と「暮らし方」への影響が懸念

いまわが国の国民生活の面でも、所得と資産の面で二極化が進むなど、あらゆる面での格差の拡大が問題となっている。こうした「暮らし方」の変化とともに「働き方」においても格差が指摘されつつある。フリーターやニートから抜け出せず、職業生活の不安定な状態が続くことで、次世代を担う多くの若い世代が希望を持てない状況が見られる。さらに、短時間や有期契約の就業者が増える一方で、週60時間を超える長時間労働者の割合も拡大するなど、「働き方」そのものの二極化が進んできている(図表‐1・2参照)。このような流れは、健康をはじめ「暮らし方」全般に大きな影響を与えていることに注意しなければならず、「働き方」と「暮らし方」の両面から取組が欠かせない。

少子社会であるからこそワーク・ライフ・バランスの推進を

しかも、このワーク・ライフ・バランスの論議は、少子化や次世代育成への対応という点でも緊急のテーマである。というよりも、少子化それ自体が「働き方」と「暮らし方」の歪みがもたらした現象ともいえよう。子育て支援の環境を整えるためにも、企業における「働き方」に対する意識を変え、行動パターンを改めるとともに、個人の「暮らし方」自体を変えていく努力が必要となる。このように、ワークスタイルおよびライフスタイルを別々に考えるのではなく、これを統一的な視点から進める国民生活構造の改革という課題が浮上してきた。それがワーク・ライフ・バランスの実現である。

1.「働き方」の硬直性を打破すべきである

企業活動を支える正社員の積極採用が重要

従業員全体の3割以上を非正社員で占めるほど、就業形態の多様化は急速に進展してきている。それには、採用する企業側と働く側の双方からのニーズが背景にあることは間違いないが、人件費コストの抑制や経営リスクの回避といった側面からの企業行動の結果であるという要素も大きい。そうした中で、人材の中長期的な育成に向かう企業の姿勢が後退気味であったことも事実であり、そのことが企業のポテンシャリティにも悪影響を及ぼしてきた可能性が高い。これまでの極端な抑制傾向を反省しつつ、将来への投資という観点から、まずは正社員の採用への前向きな姿勢が重要であろう。

労使双方にとって最善な「働き方」へ

しかし、いまの正社員の働き方をみれば、長時間で、かつ硬直的な状況にあることは否めない。その背景には、わが国の企業の実情として、長い時間、会社の意図に忠実に従いながら働く者の評価が高くなることがあろう。これに対して、パートタイムなど勤務時間の短い者や定時だけ働き残業がない者など、正社員と異なる働き方をする者には、がんばっていても、なかなか評価が高まりにくい。つまり、「時間すなわち貢献である」といった考え方がまだ根強いのである。職業や仕事に対する個人の考え方や行動も変わってきており、自分と社会を一体化させて、相当の長時間労働も辞さないという「働き方」はもはや好まれない。ワーク・ライフ・バランスを実現していくには、こうした日本的な「働き方」を見直さなければならない。そして、こうした「働き方」を志向することが、むしろタイムマネジメントの考え方を育て、効率的な経営の方向につながっていくだろう。

正社員のワークスタイル見直しにむけた制度改革を

また、企業業績が大きく変動する中で、こうした極端に硬直的な正社員の雇用実態が、経営を圧迫する一つの要因となってきたことも指摘されよう。その意味で、雇用を安定させていくためにもワークシェアリングの発想は重要であり、労働時間の弾力化や柔軟化によって、正社員の「働き方」を変えていかなければならない。

また、休暇制度全体の見直しのほか、フレックスタイム制や裁量労働制の拡大などを通じて、より自律的な労働時間管理が可能となるように、労働時間法制の改革を急ぐべきである(図表‐3 参照)。さらに、採用及び解雇に関する明確なルールの設定を図った上で、経済的理由の解雇の金銭賠償による解決ルールの検討など、紛争の防止と当事者間におけるトラブルを迅速に処理するための手続の整備が必要である。

ワーク・ライフ・バランスを企業の戦略に

企業は、果たしてこのワーク・ライフ・バランスを推進することにどこまで積極的になれるのか。企業の仕事にあわせて個人の生活設計を考えるといういわゆる「会社人間」が生まれた背景には、わが国の従業員の勤勉性があることはもちろんだが、企業の側にも、集団への帰属意識を高めることが競争力の強化につながるという考え方があった。

しかし、今日のように企業の取り巻く環境が激しく変化し、将来に対する不確実性が高まっている中では、一つの目標に特化し、それに向かって集団をリードしていくような経営の手法はむしろ高いリスクを持つ。ワーク・ライフ・バランスを企業戦略に取り込むことによって、環境の変化に柔軟に対処できるような、しなやかな組織を作りあげるとともに、創造力に富み多様な能力を備えた人材を育てるという視点を持つべきである。このようにワーク・ライフ・バランスを考慮することは、中期的に企業競争力を高める基盤づくりという戦略でもある。

2.多様な「働き方」で企業や社会の活力を

「働き方の多様化に対応した労働市場」へ

「働き方」が多様化することは、それだけ個人の選択の幅を広げることにつながるから、その選択肢が多くなることが人々の「豊かさ」を表わすともいえる。しかし一方で、その選択の結果いかんでは個人間の格差を大きく開かせる要因となることにも注意しなければならない。本人が努力した結果であり、その正確な評価がなされたものであるならば納得できようが、もし選択の機会が制約されていたり、選択しても不平等な取扱いがあったりすれば許されないだろう。

いつでも適切な「働き方」を選択し、その「やり直し」に対しても配慮がなされるよう、個人の生活の状況に応じた仕事探しが円滑に行えるような環境づくりが必要である。このため、雇用保険制度の被保険者範囲を拡大するとともに、官民による需給マッチング制度の整備や再訓練機会の拡大と奨学金の支給など、セイフティネットとサポートを中心にした環境づくりを積極的に進めるべきである。

安定的な「働き方」とするための条件整備を

「働き方」が不平等とならないようにするという観点からは、男女の雇用機会の均等待遇や正社員とパートタイムなど非正社員に対する均衡処遇が重要な課題となる。また、人事評価そのものについても、明確かつ客観的な基準を設けることやその公平性、更にはその結果を本人にフィードバックすることなど、その透明性が強く求められている。職場のコミュニケーションを円滑にする中で不満や苦情に早い段階から対応するとともに、企業内の紛争にまで至らないよう処理していく努力が重要である。

一方、正社員以外の働き方の選択肢を魅力的なものにするという努力も、ワーク・ライフ・バランスを推進していく上で不可欠な取組である(図表‐4 参照)。パート、派遣、契約社員などの働き方の選択肢を広げるとともに、どの仕事に就いても安定して働けるようにする。このため、雇用ルールの明確化や賃金等の就業条件の適正化とあわせ、正社員との均衡処遇を確保することが重要な課題であり、これらの取組についての立法化を早急に検討することが求められよう。

生涯にわたるキャリア・デザインの視点を

ワーク・ライフ・バランスを考える場合、仕事だけでなく仕事以外の生活も含めたキャリア・デザインへの活発な取組が求められる。まずは、職業キャリアを育成するとともに、それがライフ・キャリアと両立できるような支援を行うことが重要である。このため、キャリア・コンサルティング(注(2))などの相談援助制度を整える一方、能力開発や教育研修の機会の拡大と援助処置の充実、育児や介護などと仕事との両立支援を強力に進めていく必要がある(図表‐5 参照)。

とりわけ女性雇用が拡大していることに注目しなければならない。ポジティブ・アクションによって、女性が企業で活躍できる機会を広げようとする動きも強まっているが、キャリアを継続して発展させていくためには、育児・介護などのニーズに対応して、職業生活と家庭生活の両立を図ることが大きな課題となる。その場合、留意しなければならないのは、子育ては育児休業を取得した後も更に続くことである。小学校から中学、高校へと育つに従い、それぞれの段階に課題を抱えることを考えれば、一時期の「両立」だけでは対応は十分でない。そこに、ワーク・ライフ・バランスといった継続的な発想で取り組むことの意義もあるだろう。