参考資料2 「出生等に対する希望を反映した人口試算」の公表に当たっての人口構造の変化に関する議論の整理

参考資料2
平成19年2月27日
第1回「子どもと家族を応援する日本」
重点戦略検討会議「働き方の改革分科会」

「出生等に対する希望を反映した人口試算」の公表に当たっての人口構造の変化に関する議論の整理

平成19年1月26日

社会保障審議会

人口構造の変化に関する特別部会

1 人口構造の変化と社会経済等への影響
  • 人口減少の動向
  • 人口構造の変化
  • 労働力人口の減少
  • 世帯構成や地域の姿等、生活の状況の変化
2 国民の結婚や出生行動に対する希望と急速な少子化という現実との乖離
  • 急速な少子化をもたらす要素
  • 結婚や子ども数に対する国民の希望
  • 出生等に対する希望と実態との乖離の拡大
  • 結婚や出生行動に対する希望を反映した人口試算の実施
  • 「希望を反映した人口試算」の性格
  • 「希望を反映した人口試算」の前提
  • 「希望を反映した人口試算」の結果
3 経済が持続的に発展でき、かつ、国民の結婚や出生行動に対する希望が実現する社会の姿
  • 労働力人口の状況
  • 女性の労働力率の動向
  • 国民が希望する結婚や出生行動と就労に関する選択を実現でき、今後の安定的な社会経済の発展の基盤となる労働力の確保を図ることのできる構造改革に向けて
結婚や出生行動に影響を及ぼしていると考えられる要素
〔結婚〕
〔出産〕(第1子~)
〔出産〕(特に第2子~)
〔出産〕(特に第3子~)
4 当面焦点を当てて取り組むべき施策分野
  • 要素別の乖離の状況
  • 焦点を当てるべき要素
  • 速やかに取り組むべき施策分野
試算の前提、結果等
委員名簿
審議経過

「出生等に対する希望を反映した人口試算」の公表に当たっての人口構造の変化に関する議論の整理

平成19年1月26日

社会保障審議会

人口構造の変化に関する特別部会

1 人口構造の変化と社会経済等への影響

人口減少の動向

昨年末に公表された「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」(以下「新人口推計」という。)では、今後、我が国は一層少子化・高齢化が進行し、本格的な人口減少社会になるとの見通しが示された。

そのうち出生中位・死亡中位の推計によれば、2055年には、合計特殊出生率は1.26、人口は9000万人を下回り、その4割が65歳以上の高齢者、一年間に生まれる子供の数は50万人を下回る、といった姿が示されている。

人口構造の変化

この推計結果については、ともすれば少子化や人口減少の進行という側面のみが注目されがちである。

しかし、2055年まで見通した場合、単純に人口規模が縮小するのではない。こうした少子高齢化や未婚化の進行等により、労働力・世帯・地域等の「姿」という「我が国の人口構造」そのものが大きく変化していく見通しであることにも、注目しておかなければならない。

新人口推計(出生中位・死亡中位。以下同じ。)による今後の人口構造の変化について概観すれば、以下の通りである。

  1. 団塊世代(1947年~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となる2030年頃までは、高齢者数が急激に増加し、特に後期高齢者数は2005年の約2倍に増加する。しかし、いわゆる団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)がなお現役でいることから、生産年齢人口(15歳~64歳)は大幅に減少するものの、未だ全人口の6割弱であり、65歳以上人口比率も3割強に留まる見通し。
  2. 一方、2030年~2055年においては、人口の山の裾野も含めると団塊世代とほぼ同数となる団塊ジュニア世代が団塊世代と入れ替わり、高齢者となることから、高齢者数は概ね横ばいで推移する見通し。

一方、団塊ジュニア世代の子ども世代(1995年生まれ~)には、現在のところ大きな出生数の山が出現していないことから、2030年頃を境に現役世代の人口はさらに急激に減少する見通し。その結果、団塊ジュニア世代が後期高齢者となる2055年には、生産年齢人口比率は約5割となり、65歳以上人口比率も4割を超えると見込まれている。

なお、新人口推計では、過去のトレンドを将来に投影して外国人が漸増するとの推計結果となっているが、仮に過去のトレンドを超えて外国人が大幅に増加した場合には、社会構造全体が大きく変化することに留意すべきである。

労働力人口の減少

上記のような生産年齢人口の減少に伴い、労働力率が現状のままで推移した場合には、今後、労働力人口についても減少が見込まれることとなる。

もちろん、労働力人口が減少する中では、まず生産性を向上させ、成長力を強化することが必要である。しかし、技術革新や資本増加により労働力人口減少の影響はある程度カバーすることが可能であるが、2030年以降の我が国の生産年齢人口の減少は相当大きなものと見込まれており、その影響は軽視できない。

中長期的な経済成長の基盤を確保する観点からは、イノベーションの推進とともに、人口、労働分野において以下の対策を講じていくことが必要と考えられる。

  1. 2030年までの社会経済との関係
    2030年までの人口構造について見れば、2030年における24歳以上の世代は、現在、既に生まれており、今後のこの世代の人口及びその減少傾向はほぼ確定している。
    したがって、この間の生産年齢人口減少の影響をカバーしていくためには、今後、すべての人の意欲と能力が最大限発揮できるような環境整備に努めることによって、若者、女性、高齢者の労働市場への参加を促進し、労働力人口の減少の緩和を図ることが必要である。
  2. 2030年以降の社会経済との関係
    2030年以降に支え手となっていく世代はこれから生まれる世代であって、今後の出生動向の変化によりその数はまだ変動する余地があるが、新人口推計によれば、生産年齢人口は、それ以前と比べ、急激に減少すると見込まれている。
    この急激な生産年齢人口の減少に伴う労働力人口の減少をカバーするためには、何よりもまず、これから生まれる子ども数の減少をできる限り緩和することが最重要課題であり、次世代育成支援の観点に立った効果的な少子化対策を強力かつ速やかに講じていくことが不可欠である。

世帯構成や地域の姿等、生活の状況の変化

新人口推計に見られる人口構造の変化は、世帯の状況や地域の姿にも大きな影響を与えるものと考えられる。

一例を挙げれば、女性の未婚率に着目した場合、今後、中高齢層での未婚率の上昇が著しく、2005年の50歳代女性の未婚率が6%であるのに対し、2030年では20%、2055年では24%に上ると見込まれている。

単純に考えれば、男性も同様に概ね4人に1人以上が未婚となることが想定される。離別の増加や死別も考慮に入れれば、50歳代以上の者の属する世帯のうち4割以上が「単身かつ無子世帯」となることも想定される。

単身世帯は、世帯員相互のインフォーマルな支援が期待できないことから、相対的に失業や疾病・災害といった社会的リスクに弱く、社会システムによる支援がより必要になると考えられる。また、経済的に見ても、可処分所得減少の影響を受けやすい。単身世帯の増大は、介護問題を始めとした支援を要する世帯の増大や負担能力の減少など、社会全体に大きな影響を及ぼすことが懸念される。

同様に、毎年の出生数は、2030年には約70万人、2055年には50万人弱となると見通されており、通常の地域社会において平日昼間に目にする子どもの数は少なくなり、地域社会の支え手も相当部分が高齢者になるといったことが想定される。

また、子どもの立場で考えても、「仲間と一緒に豊かに育つ」という健全な育成環境が確保されなくなるおそれがあり、社会全体として見ても、文化の継承者が少なくなり、未来への希望が持ちにくくなることが懸念される。

今後、このような世帯や地域社会の姿、暮らしの変化という視点からさらに分析を進め、これに対応した社会の在り方を検討していくことが必要と考えられる。

また、どのような変化が起こるのかということをわかりやすく国民に提示していくことにより、国・地方をはじめ、経済界や労働界、地域社会等において、大幅な人口減少のトレンドを変え、将来の国民の暮らしを守るという観点からの少子化対策の必要性が広く認識されるよう、機運の醸成を図ることも喫緊の課題である。

2 国民の結婚や出生行動に対する希望と急速な少子化という現実との乖離

急速な少子化をもたらす要素

新人口推計においては、これまでのトレンドを将来に投影する形で合計特殊出生率等の諸前提を仮定し、これに基づいて将来の人口の姿を推計しており、2055年の合計特殊出生率は1.26と仮定されている。

これを、合計特殊出生率の構成要素である結婚の状況と子ども数の状況に分解してみると、今回参照コーホートとして設定されている1990年生まれの女性では、生涯未婚率は23.5%、夫婦完結出生児数は1.70人と仮定されている。

結婚や子ども数に対する国民の希望

一方、出生動向基本調査等の結果によれば、未婚者の9割はいずれ結婚したいと考えており、また、既婚者及び結婚希望のある未婚者の希望子ども数の平均は、男性女性とも2人以上となっている。

こうした結果から見る限り、現在の急速な少子化の進行は、決して国民が望んだものではないと考えられる。

出生等に対する希望と実態との乖離の拡大

子どもを持ちたいという国民の希望は、この30年間を見た場合、それほど大きな変化はない。しかし、約30年前には希望と実態との乖離が小さかったのに対して、今日まで出生率は低下の一途をたどっており、希望と実態の乖離が拡大し続けている。新人口推計においてもしばらく出生率の低下は続き、希望と実態の乖離の拡大傾向はさらに続くと見込まれる。

社会経済が発展すれば、それぞれの個人の価値観は多様化し、自身の生活の在り方(自己実現)についての希望は質的にも量的にも拡大していくが、それに伴って、希望を実現するための社会的な選択肢も拡大することが求められる。個人の持つ希望が拡大するにもかかわらず、社会的な選択肢が拡大しない場合には、個人は希望の実現を犠牲にせざるを得ず、その結果、社会全体として希望と実態の乖離が生じていくこととなる。

このように考えると、結婚や出産に対する国民の希望には大きな変化がないのに実態との乖離が拡大し続けているのは、社会経済の発展に伴って個人の希望(例えば就労や社会参加に係る希望)が拡大しているにもかかわらず、結婚や出産・子育てと就労との両立に係る社会的な選択肢が拡大しなかった結果、二者択一を迫られて希望の実現を犠牲にしているとみることもできる。

生活を豊かにすることが経済発展の源であることを考えると、経済発展を続けていく上では、こうした希望が実現できるように社会的な選択肢を拡大していくという視点が重要である。

結婚や出生行動に対する希望を反映した人口試算の実施

出生率の低下は様々な社会的・経済的要因が複雑に作用して生じており、特効薬はないと考えられる。現在の急速な少子化の進行に対処していくためにも、まずはそのメカニズムについて冷静に探っていく努力が必要である。

こうした観点からは、これらの結婚や子ども数についての国民の希望が一定程度実現したと仮定して将来の人口の姿を何ケースか試算し、実績値の中立的投影に基づく新人口推計の結果と比較検討していくことは、各要素の重要性の把握につながり、施策の立案等に際して有効であると考えられる(この「出生等に対する希望が一定程度実現したと仮定した場合の人口試算」を、以下「希望を反映した人口試算」という。)。

「希望を反映した人口試算」の性格

結婚や出生行動は、国民一人一人の選択に委ねられるべき性格のものであることは言うまでもない。

この試算の前提として仮定される出生率は、国民の希望が一定程度実現した場合を想定しており、1.75程度となるが、これは、生物学的なヒトの出生力を示すものではなく、また、施策が奏功した際の社会的に達成可能な上限を示すものでもない。

この出生率は、各種調査に基づき算出された国民の結婚や出生行動に対する希望を元にした仮定値であり、いわば子どもを産み育てやすい社会の可視化を試みたものであって、これと新人口推計の前提である2055年で1.26という値との乖離を如何に埋めていくかという議論の素材となることが期待される。

したがって、これがいわゆる「出生率目標」といった類の数値ではないことについては、十分な留意が必要である。

「希望を反映した人口試算」の前提

「希望を反映した人口試算」においては、新人口推計で参照コーホートとして設定されている1990年生まれの女性が50歳に到達する2040年時点で出生等に対する希望が実現すると仮定して下記のケースIを設定した上で、新人口推計の仮定値との乖離が、2/3、1/2、1/3程度解消するケースをそれぞれII、III、IVと置いた。

(ケースI)合計特殊出生率1.75

結婚、出生行動に対する国民の希望(生涯未婚率10%未満、夫婦完結出生児数2.0以上)が実現するケース

また、出生率の回復過程については、早い段階から回復する場合や最初は低く後から徐々に回復するような場合など、様々な経路が考えられるところであり、今後そうした分析を行うことも考えられるが、今回の「希望を反映した人口試算」では、新人口推計の高位推計と中位推計の各年の出生率を2040年時点の各ケースの合計特殊出生率で比例配分することとした。

「希望を反映した人口試算」の結果

総人口については、ケースI・IIであれば2055年段階でも概ね1億人前後が維持されるという結果となった。

総人口に占める65歳以上人口比率については、ケースIからFIVのいずれでも、2055年段階で4割を下回り、ケースIであれば約35%の水準に留まるという結果となった。

また、20歳~64歳人口と65歳以上人口との比率は、新人口推計では1.2:1と見込まれているのに対し、ケースIでは1.4:1、ケースIIIでも1.3:1という結果となった。

15歳未満人口については、ケースIでは、2030年・2055年のいずれも総人口の1/8以上が維持され、年間出生数は2030年で約100万人、2055年で80万人以上が維持されるという結果となった。

年間出生数は、ケースIIIでも、2030年で80万人以上、2055年で60万人以上が維持されるという結果となった。

15歳~64歳人口については、2030年では、比率・実数とも大きな差はなかった。

2055年においては、比率では大きな差はなかったが、実数ではケースIで2055年で約800万人の増となった。

また、新人口推計では15歳~64歳人口が2030年~2055年で年平均約85万人ずつ減少すると見込まれているのに対し、ケースIでは年平均60万人弱の減少に留まるという結果となった(新人口推計では、2005年~2030年は年平均約70万人弱の減少)。

3 経済が持続的に発展でき、かつ、国民の結婚や出生行動に対する希望が実現する社会の姿

労働力人口の状況

上記のように、1980年代以降の継続的な少子化の進行により、今後新たに労働市場に参加する世代の人口は、継続的に減少していく。

こうした中、中長期的な経済成長の基盤として、労働力人口の減少を緩和していくためには、若者、女性、高齢者の労働市場への参加を促進していくことが必要である。

女性の労働力率の動向

我が国では、近年25歳~39歳層の女性の労働力率が上昇しているが、未婚者と有配偶者とに分けてこの年齢層の労働力率の推移を見た場合、未婚者は90%前後、有配偶者は50%前後で、いずれも労働力率の変動はあまり大きくなく、これまでのこの年齢層の女性の労働力率の上昇は、主に未婚率の上昇の影響と考えられる。

これは、仕事をしている女性のうち第1子の出産を機に辞める女性が7割を占めていることにみられるように、仕事と子育ての両立が依然として我が国では困難なため、就労の継続と結婚・子育てがいわば二者択一になっていることから生じていると考えられる。

すなわち、仕事と子育ての両立が困難で有配偶女性の労働力率が低いという構造を残したままでは、国民が希望する結婚や出生行動の実現と、今後の安定的な社会経済の発展の基盤となる労働力の確保を同時に図ることはできない。

例えば、国民の希望に基づいて生涯未婚率が10%程度となることを想定して試算してみると、現在の未婚者と有配偶者の労働力率に変化がない限り、この年齢層の女性の労働力率は、現在60%台前半から75%程度となっているものが、計算上は50%台後半から60%台前半の水準に低下してしまうこととなり、2030年までの労働力人口の減少は緩和されないことになる。

国民が希望する結婚や出生行動と就労に関する選択を実現でき、今後の安定的な社会経済の発展の基盤となる労働力の確保を図ることのできる構造改革に向けて

現在25歳~39歳層の有配偶の女性の労働力率は50%程度に留まっているが、今後、子どもが欲しいと考えている女性について就業形態の希望を見た調査では、約6割の女性が出産後も継続就業を希望している。また、労働力調査(詳細結果)では、世帯主の配偶者である女性の潜在労働力率も70%程度となっており、若い世代では緩やかながらも上昇傾向にある。この年齢層の有配偶の女性の労働力率がこのような就業希望に沿う形で70%~80%程度まで上昇すれば、国民の希望に基づいて生涯未婚率が10%程度となることを想定して試算しても、この年齢層の女性全体の労働力率は80%程度となる。

したがって、有配偶の女性が希望するように就労を継続できる環境を整備すれば、国民の結婚や出生行動に関する希望を実現しつつ、2030年の前後を通じて持続的な経済発展に必要な労働力が確保されることとなる。

このためには、女性の未婚者と有配偶者の労働力率の大きな差をもたらしている仕事と子育ての両立が困難な現在の構造、すなわち、就業したいという希望と子どもを産み育てたいという希望の二者択一を迫られる構造を、女性が安心して結婚、出産し、男女ともに仕事も家庭も大事にしながら働き続けるという選択ができるシステムへと変革していくことが不可欠である。

なお、外国の例を見ても、現に労働力率も出生率も高い国があり、また、一旦低下した出生率が各種施策によって上昇に転じている国もあることを考えれば、これは決して不可能なことではないと考えられる。

結婚や出生行動に影響を及ぼしていると考えられる要素

国民の結婚や出生行動に関する選択には多様な要素が関係していると考えられ、その全てについて分析、考慮を加えることは難しいが、近年進められている各種の調査結果・研究結果から示唆される「国民の結婚や出生行動に影響を及ぼしていると考えられる要素」について、可能な限り整理を試みた。

〔結婚〕

家庭生活を送っていく上で必要な経済的基盤の有無及び雇用・キャリアの将来の見通し・安定性

【調査・研究結果】

  • 男性では、年収が高いほど有配偶率が高い。
  • 男性では、正社員に比べて非典型雇用の場合、有配偶率が低い。
  • 男性未婚者では、正規雇用者に比べてパート・アルバイトの結婚意欲が低い。
  • 男女雇用機会均等法施行以降に就職した世代の女性では、最初に勤務した勤務先での雇用形態が正規雇用と非正規雇用者の場合で比較すると、非正規雇用の未婚割合が高い。また、利用可能な育児休業制度の有無で比較すると、利用可能な育児休業制度がなかった層で未婚割合が高い。
  • 1歳児入園待機者の多い自治体ほど女性の結婚確率が低い。

第1子出産後に就労している女性の7割が離職し、多くの家庭が男性の片働きとなるという構造の中で、収入が低く雇用が不安定で、家庭生活の経済的基盤を構築できない男性の未婚率が高くなっている。

また、同様の構造の中で、非正規雇用や育児休業制度が利用できない職場、保育所待機児童の多い地域など、子どもを生んだ後の就業継続の見通しが描きにくい場合に女性の未婚率が高くなっている。

〔出産〕(第1子~)

子育てをしながら就業を継続できる見通しの有無及び仕事と家庭生活の調和の確保の度合い

【調査・研究結果】

  • 育児休業が利用可能、とりわけ取得しやすい雰囲気のある職場に勤める女性の方が、育児休業の利用ができない職場に勤める女性よりも出産する割合が高い。
  • 男女雇用機会均等法施行以降に就職した世代で、育児休業の利用が可能な職場に勤めていた女性は、それ以前に就職した人とほぼ同程度に出産を経験している。
  • 労働者が勤務先に育児休業制度があると答えた場合、少なくとも子どもを一人産む確率がその他の場合より高く、無職の女性より出産確率が高くなる。
  • 男性が長時間労働していた家庭では、労働時間の増えた家庭よりも減った家庭の方が子どもが生まれた割合が高い。
  • 女性の勤務が長時間労働の場合は、第1子を産むタイミングが遅れ、出産確率も低下する。

労働者が勤務先に利用可能な育児休業制度があると答え、出産後に就業継続する見込みがある場合には出産確率が高い。また、男女とも長時間労働によって出産確率が低くなる。

なお、現状では育児休業取得者の大多数が女性である現状から、女性の育児休業取得可能性と出産確率との関係の調査になっているが、育児休業制度は男性も取得する前提で考えるべきものである。

また、別の調査で、育児休業制度・勤務時間短縮等の措置、家庭内での家事・育児分担、保育所の利用は、それぞれが単独で実施されても効果は少なく、相互に組み合わされることで就業継続を高めるという結果となっており、就業継続の見通しには、単に企業の取組だけでなく、保育サービス等の地域の取組、育児・家事分担等の家庭内での取組も影響することに留意が必要である。

〔出産〕(特に第2子~)

夫婦間の家事・育児の分担度合い

【調査・研究結果】

  • 子どものいる世帯で、妻から見て夫が家事・育児を分担していないと回答した世帯では、分担していると回答した世帯に比べ、妻の子どもを持つ意欲が弱まる。
  • 夫の育児遂行率が高い夫婦の方が、追加予定子ども数が多い。

上記(第1子~)の場合とも重なるが、特に、子どものいる世帯で夫の家事・育児の分担度合いが低い場合に、出産意欲が弱まる結果となっている。また、別の調査では、夫の労働時間が長いと家事・育児参加が減少する結果となっており、家事・育児の分担とワークライフバランスが裏表の関係になっていることにも留意が必要である。

また、夫の家事・育児の分担は妻の就業継続とも密接に関係しており、夫の育児遂行率が高い夫婦の方が、妻の継続就業割合が高い結果となっている。

育児不安の度合い

【調査・研究結果】

  • 子どもが1人いる母親の場合、育児不安の程度が高まると、追加予定子ども数が減少する。(子どもが2人の場合も概ね同様の傾向)

男性の育児分担が非常に少ない現状の中で、母親の育児不安の程度が高まると出産意欲が弱まる結果となっている。子どもが1人いる父親についてみても、母親ほど顕著ではないが概ね同様の関係がみられる。

また、同じ調査で、父母共に、配偶者の育児や子どもとの関わりに対する満足度が高い場合には育児不安は低くなる、保育所・幼稚園から母親に対するサポート度が高いほど育児不安は低くなる結果となっており、家庭内あるいは地域の育児を支えるサポートを厚くすることが重要と考えられる。

〔出産〕(特に第3子~)

教育費の負担感の度合い

【調査・研究結果】

  • 予定子ども数以上の子どもを持たない理由として教育費負担感をあげる者の割合を予定子ども数別に見ると、予定子ども数を2人とする者のところからその割合が高まる。(1970年代以降の生まれでは、予定子ども数が0人・1人とする者についても割合が高くなっている。)

この調査結果から、特に3人目以降の子どもについて教育費の負担感が強く意識されていることがうかがわれる。

なお、同じ調査で、出生年別にみると、後に生まれた世代ほど教育費負担感をあげる者の割合が増えていること、また、1970年代以降の生まれでは、1人目、2人目から教育費の負担感が強く意識される傾向が出ていることにも留意が必要である。

結婚や出生行動には、例えば若年層における未婚化の要因について、「人間関係構築力や社会的なサポート資源の不足が重要な要因ではないか」との指摘もあり、上記に整理した以外にも様々な要素が影響していることが考えられる。

したがって、今後のこの分野での調査・研究の進展が求められるが、同時に、上記で整理を試みた要素は、これまで述べてきた今後の人口構造の変化に対して我が国の社会経済が取るべき対応の方向性と重なるところが多い。

「男女とも家族を大切にしながら働き続けることができ、それを国、地方自治体、企業、民間の非営利団体、地域社会など、社会全体で支える仕組み」を構築することが、人口構造が急速に変化していく中で我が国が持続的な発展を図っていく上で不可欠であろう。

4 当面焦点を当てて取り組むべき施策分野

要素別の乖離の状況

現時点における結婚や出生行動に対する国民の希望と、新人口推計において参照コーホートとされている1990年生まれ世代について仮定されている未婚率や出生児数を比較してみると、以下のとおりとなっている。

〔未婚率(生涯未婚率)〕

新人口推計では23.5%の者が生涯未婚と仮定しているのに対し、調査結果では未婚者の9割以上が結婚を希望している。

新人口推計未婚者の希望
生涯未婚率 23.5% 生涯未婚率 10%未満
  1. 新人口推計は1990年生まれに係る出生中位仮定の仮定値
  2. 「未婚者の希望」は18歳~34歳の未婚女性のもの「第13回出生動向基本調査(独身者調査、2005年)」
〔出生児数〕

新人口推計では2子以上を持つ者は6割弱と仮定しているが、調査結果では、未婚者の8割以上が2子以上を希望している。

また、調査結果では、現在0子・1子を有する既婚者の追加予定子ども数はそれぞれ1.32人・0.64人である一方、現在2子・3子を有する既婚者の追加予定子ども数はそれぞれ0.08人・0.02人である。

新人口推計未婚者の希望既婚者の希望
0子 18.20% 0子 5.30% (現在子ども数) (追加予定子ども数)
1子 23.70% 1子 7.30% 0子 +1.32人
2子 43.30% 2子 61.30% 1子 +0.64人
3子以上 14.80% 3子以上 23.90% 2子 +0.08人
3子 +0.02人
4子以上 +0.04人
  1. 新人口推計は1990年生まれに係る出生中位仮定の仮定値
  2. 「未婚者の希望」は18歳~34歳の未婚女性における希望子ども数別割合「第13回出生動向基本調査(独身者調査、2005年)」
  3. 「既婚者の希望」は49歳以下の有配偶女性に係る現存子ども数別の追加予定子ども数「第13回出生動向基本調査(夫婦調査、2005年)」

焦点を当てるべき要素

上記のような乖離状況に照らせば、国民の結婚や出生行動に対する希望を実現し、国民が希望する出生率に近づけていくためには、当面は、「結婚したい」、「子どもを持ちたい」、「2子目がほしい」、といった希望に焦点を当てることが効果的と考えられる。

速やかに取り組むべき施策分野

これまで述べてきたような調査結果・研究結果の整理や要素別の乖離の状況に鑑みれば、・若者の経済的基盤の確立(正規雇用化の促進、就業形態の多様化に合わせた均衡処遇の推進等、就業・キャリアの安定性確保)

  • 継続就業環境整備(育児休業制度、短時間勤務制度等が活用しやすいような働き方や仕事の仕方の見直し等)
  • (特に父親の)家事・育児時間の増加(ワークライフバランスを実現できるような時間管理の効率化や長時間労働の解消等)
  • 保育環境の整備
  • 育児不安の解消(専業主婦も含めた地域における育児支援、家庭内の育児負担の分担等)
  • 等の分野について、効果的な施策を具体的に整理・検討することの重要性が示唆される。

一方、経済的インセンティブについては、子どもの世代に負担を先送りしないよう必要な財源を確保することが当然の前提となるが、真に効果のある施策は何かという観点から、具体的な施策の在り方について、更に踏み込んで検討していくことが課題である。

なお、今回の「希望を反映した人口試算」において前提とした値は、あくまでも国民の希望を反映したものである。したがって、この数値は、子どもを産み育てやすい社会を実現していくことにより達成される可能性があり、かつ、それなくしては達成されない水準であると考えられる。

また、今後の施策の状況や子育て環境等の社会状況の変化等によって、さらに国民の希望も変化し、希望水準自体の上昇や低下があり得ることについても留意が必要である。社会状況の悪化等に伴って結婚や出生行動に対する国民の希望水準がさらに低下すれば、改善の余地がさらに少なくなることとなり、一層の少子化を招くことにもなる。

幸い、現在までのところ、未婚者の9割は結婚の希望を持ち、希望する子ども数も2人を維持している。しかし、1.57ショック以来、約20年にわたり数々の少子化対策が打ち出されてきたにもかかわらず、未だ結婚や出生行動に対する国民の希望と実態の乖離は拡大し続けている。

希望水準の低下が一層の少子化を招くという悪循環に陥らないためにも、国民の希望ができるだけ実現するよう、早急かつ抜本的な対応が必要である。

希望を反映した人口試算の基本的枠組み等

試算の位置づけ

  • 国民の希望が一定程度叶った場合を仮定した人口試算を示すことにより、人口構造の変化に関する諸問題及び諸施策に関する議論に資することを目的として、厚生労働省が試算。

基本的枠組み、仮定値

  • 推計期間、基準人口等の基本的枠組みは、昨年末に公表された社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(平成18年12月推計)と同じ。
  • 出生率の仮定は、国民の希望が一定程度かなったと仮定した場合の出生率に基づき設定。
    2040年(これから出生年齢に入る1990年生まれの女性が50歳になる年)までに結婚や出生の障壁が一定程度解消され合計特殊出生率が回復するものと仮定
     合計特殊出生率(2040)仮定人口試算の出生率の仮定
    ケースI 1.75 結婚、出生に関する希望が実現するケース(※生涯未婚率10%未満、夫婦完結出生児数2.0人以上)
    ケースII 1.6 結婚、出生に関する希望と将来人口推計(中位)との乖離が3分の2程度解消するケース
    ケースIII 1.5 結婚、出生に関する希望と将来人口推計(中位)との乖離が2分の1程度解消するケース
    ケースIV 1.4 結婚、出生に関する希望と将来人口推計(中位)との乖離が3分の1程度解消するケース

    ※将来人口推計(中位)の仮定では、1990年生(女性)の生涯未婚率23.5%、夫婦完結出生児数1.70人である。

  • その他の仮定(死亡率、国際人口移動、男女出生性比)は、将来推計人口(平成18年12月推計)の中位の仮定値と同じ。

希望を反映した人口試算の仮定


希望を反映した人口試算の合計特殊出生率の仮定

  • 2040年(これから出生年齢に入る1990年生の女性が50歳となるとき)までに、結婚や出生の障壁が一定程度解消され合計特殊出生率が回復するものとして仮定人口試算を実施。
  • 出生率の回復過程については、様々な経路が考えられるが、この試算においては将来推計人口(平成18年12月)の高位推計と中位推計の出生率を機械的に比例配分した。

希望を反映した人口試算の合計特殊出生率の仮定

希望を反映した人口試算(平成19年1月)の試算結果(単位:万人)
 合計特殊出生率(2040)2005年(実績)2030年2055年
総人口 ケースI(1.75) 12,777 12,061 10,391
ケースII(1.60) 11,901 9,954
ケースIII(1.50) 11,793 9,670
ケースIV(1.40) 11,684 9,393
将来推計人口-中位(1.25) 12,777 11,522 8,993
(~14歳)年少人口 ケースI(1.75) 1,759[13.8%] 1,519[12.6%] 1,318[12.7%]
ケースII(1.60) 1,398[11.7%] 1,132[11.4%]
ケースIII(1.50) 1,317[11.2%] 1,015[10.5%]
ケースIV(1.40) 1,236[10.6%] 904[9.6%]
将来推計人口-中位(1.25) 1,759[13.8%] 1,115[9.7%] 752[8.4%]
(15~64歳)生産年齢人口 ケースI(1.75) 8,442[66.1%] 6,875[57.0%] 5,427[52.2%]
ケースII(1.60) 6,836[57.4%] 5,176[52.0%]
ケースIII(1.50) 6,809[57.7%] 5,009[51.8%]
ケースIV(1.40) 6,782[58.0%] 4,842[51.6%]
将来推計人口-中位(1.25) 8,442[66.1%] 6,740[58.5%] 4,595[51.1%]
(65~歳)老年人口 ケースI(1.75) 2,576[20.2%] 3,667[30.4%] 3,646[35.1%]
ケースII(1.60) 3,667[30.8%] 3,646[36.6%]
ケースIII(1.50) 3,667[31.1%] 3,646[37.7%]
ケースIV(1.40) 3,667[31.4%] 3,646[38.8%]
将来推計人口―中位(1.25) 2,576[20.2%] 3,667[31.8%] 3,646[40.5%]

委員名簿

氏名所属・役職
○阿藤 誠 早稲田大学人間科学学術院教授
大石 亜希子 千葉大学法経学部助教授
小塩 隆士 神戸大学大学院経済学研究科教授
◎貝塚 啓明 中央大学研究開発機構教授
鬼頭 宏 上智大学経済学部教授
榊原 智子 読売新聞東京本社生活情報部記者
佐藤 博樹 東京大学社会科学研究所 日本社会研究情報センター教授
樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
前田 正子 横浜市副市長

◎:部会長 ○:部会長代理

審議経過

第1回(平成18年11月21日)

  • 部会長選出及び部会長代理指名
  • 人口構造の変化に関する特別部会について
報告聴取
将来推計人口について
少子化が社会経済に与える影響について
国民の結婚、出生に関する希望
結婚や出生に影響を与えている要因に関する調査結果

第2回(平成18年12月15日)

  • 人口構造の変化をめぐる論点
  • 潜在出生率に基づく仮定人口試算イメージ

第3回(平成19年1月19日)

報告聴取
日本の将来推計人口(平成18年12月推計)
  • 人口構造の変化をめぐる論点

第4回(平成19年1月26日)

  • 人口構造の変化をめぐる論点