内閣府「企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究」(平成18年3月)概要

参考2

調査研究の目的と概要

1.調査研究の目的

子育て支援を推進するにあたり、企業に期待されている役割は大きく、企業自ら子育て支援の一層の推進を図り、仕事と家庭・子育ての両立を促進することが喫緊の課題となっている。

そこで、子育て支援の実践的な推進を視野におき、支援策に係わる現状と課題を把握したうえで、支援策導入に伴う企業経営上の効果や影響について多角的に分析を行い、効果的な支援策導入のあり方について検討することを目的に実施した。

2.調査研究の方法と対象

2-1.研究会の設置

計画にもとづき、調査・分析を中心とした検討を行うため、有識者による研究会「企業における子育て支援策に関する研究会(座長:清家篤・慶應義塾大学商学部教授)」を開催した。また調査研究を機動的に進めるためにワーキンググループ(主査:八代充史・慶應義塾大学商学部 教授)を設置して、アンケート、ヒヤリング、文献調査を実施した。

2-2.アンケート調査

(1)調査名

企業における仕事と子育ての両立支援に関するアンケート調査(総務省承認No.26412)

(2)調査の目的

本調査は、企業の仕事と子育ての両立支援の実践的な推進を視野におき、主要企業の両立支援策に関する導入・運用・利用の現状と課題を把握するとともに、企業経営上の効果や影響について分析を行い、今後の効果的な両立支援策のあり方を検討するために実施した。

(3)調査の方法

日本に本社をもつ従業員数規模301人以上の企業から5,000社を無作為抽出して、各企業の人事部門責任者宛に調査票を郵送した。回収についても、郵送による直接回収を行った(調査実施・集計:株式会社タイムエージェント)。なお、調査時点で従業員数が300人以下になっている企業が129社あり、以下の集計・分析ではこれら300人以下の企業を含めた結果となっている。

(4)実施期間

調査票配布2006(平成18)年2月23日

調査票回収2006(平成18)年3月8日

(5)回収数(回収率)

配布数5,000票

回収数1,368票(回収率27.36%)

2-3.ヒヤリング調査

本調査は、アンケート調査を補完することを主な目的とし、企業の仕事と子育ての両立支援の先進事例(10社)から、導入状況、導入に至る経緯、利用状況、効果、今後の課題について、経営者ないし両立支援策の担当責任者からヒヤリングを行ったものである。3社については、従業員からもヒヤリングを行い、従業員の視点からの両立支援策の効果的な導入と活用について意見と感想を聞いた。

2-4.先行調査研究の文献調査

企業における仕事と子育てにかかわる調査研究には多数があるが、本調査では企業経営への効果を調査・測定・分析した先行調査研究を中心に文献調査を行った。

3.主な調査項目

  1. 両立支援策の導入状況と効果(および変化)
  2. 両立支援策への取組姿勢と経営方針の中での位置づけ
  3. 両立支援策の運用状況と改善の仕組み
  4. 両立支援策の利用状況
  5. 両立支援策に関する要望や期待

4.調査研究委託機関

財団法人 社会経済生産性本部

調査結果の概要

本調査研究では、企業における両立支援策にはどのような効果があり、そのために従業員の利用を促進し、より効果をあげるためにはどのような取組が必要であるかを探った。企業の人事責任者を対象としたアンケート調査を行うとともに、中堅・中小企業を中心にヒヤリング調査を行った。その結果をまとめると次のとおり。

企業における両立支援策の効果は、(1)長期的(5年以上)に現れること、(2)女性従業員の定着と人材活用が最も大きい効果であることが明らかになった。

効果をあげるためには、両立支援策を導入するだけではなく、従業員が利用しやすくする必要があるが、それには、(1)両立支援策を経営方針として明確にすることと、経営トップが積極的に発言し、行動すること、(2)女性・正社員だけではなく、非正社員や男性など、これまでどちらかというと、利用が少ない、使用しにくい、利用できない従業員の利用促進・適用を図ること、などが課題である。

両立支援策の利用を促進するには、労働時間の長さや(休業者の)周囲への負荷が問題のほか、社会通念上、男性が育児参加しにくいといった項目があげられている。企業ごと、職場ごとの雰囲気の醸成や環境づくりなどの努力はもとより、国民的な意識啓発運動が必要であることが示唆される。

1.企業における両立支援策の効果は長期的に、人材活用の視点から

両立支援策の最も大きな効果は、女性従業員の定着と人材活用

経営への効果として、短期・長期ともに効果が高いのは、女性の人材活用に関する項目であり、「女性従業員の定着率が向上した」と「意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ」の二つである。このほかに、職場や企業の雰囲気や信頼などモチベーションを高める効果とともに、仕事の効率化・業務改善など生産性向上に結びつく効果があげられる。

両立支援策の経営への効果はより長期的な取組で

経営への効果は、短期的(5年未満)よりも長期的(5年以上)な効果が評価されている。両立支援策はより長期的な視点からの取組が必要である。

女性・正社員だけでなく、男性・非正社員の利用促進が効果的

両立支援策を女性正社員のみならず、男性社員や非正社員も利用している企業のほうが効果が見られる傾向がある。

両立支援策の導入状況や利用状況をみると、男性や非正社員の利用は女性・正社員に比べ低くなっており、これまで相対的に女性・正社員が中心だった両立支援策を、男性や非正社員にも適用・利用促進を図ることが、経営にとっての効果を高める上で課題である。特に非正社員への両立支援策の適用は正社員に比べて遅れており、まずは法定どおりの制度を早急に導入・実施することが両立支援の第一歩といえよう。

2.両立支援策の取組は経営方針やトップの言動から

企業の両立支援策への取組意欲は「今後」に期待できる

両立支援策への取組意欲に積極的な企業は、「現在」では33.7%にとどまるが、「今後」では53.0%と過半数を超え、消極的なところはわずか3.7%である。各企業とも今後は、両立支援策を積極的に導入し、従業員に積極的に周知し利用促進を図っていくとの意向を示していることは注目される。

経営トップが積極的になること

経営トップが両立支援策への取組に積極的に発言し、行動している企業は3割弱にとどまるが、企業規模が大きくなるほどより積極的になる。しかし、中小規模の企業へのヒヤリング結果によれば、社長自身が女性の能力を高く評価して、両立支援策を導入・運用し、女性の人材活用、雇用継続に積極的であるところがあった。こうした事例をみても、相対的に規模の小さい企業ほど、経営トップの言動は社内への直接的な影響が大きいことを考慮すれば、今後が期待される。

3.両立支援策の利用促進は職場の環境づくりから

労働時間の長さや周囲への負荷が問題

両立支援策の利用促進上の問題は、「代替要員の確保が難しい」、「社会通念上、男性が育児参加しにくい」、「労働時間が長い部門・事業所がある」、「職場で周りの人の業務量が増える」といった項目があげられた。労働時間の長さや周囲への負荷の問題は、業務遂行体制の見直しや効率的な業務運営など、誰もが働きやすい職場にすることが望まれ、社会通念上の問題は企業の努力のみならず、国民的な意識啓発運動が必要であることが示唆される。

職場での雰囲気の醸成や利用促進のPRが必要

両立支援策の利用を促進するために必要なことは、「職場ごとに支援策を利用しやすい雰囲気を醸成する」、「育児支援策を従業員に積極的にPRし、理解を深める」、「管理職が積極的に従業員に利用を呼びかける」などが指摘される。

そのためには、管理職がイニシアティブを取って職場環境づくりを推進していくことが重要であり、企業は全社的な取組によってそのための支援を講じていくことが期待される。

利用上の問題(関係部分抜粋)

2-5.制度の利用状況

  • 全体的には、「全社的な所定外労働時間の削減」や「有給休暇の半日単位での使用」について、対象に関わらず利用(実施)されている。
  • より仕事と育児の両立を図るためには、まずは休業・休暇制度を女性のみならずすべての従業員が取得できることが重要であるが、男性や管理職の制度利用を促進するためには、労働時間や働く場所などを柔軟にし、「働きながら育児に参加できる」仕組みを構築していくことが重要である。

全体的には、「全社的な所定外労働時間の削減」や「有給休暇の半日単位での使用」について、対象に関わらず利用(実施)されている。

対象別では、管理職について、「有給休暇の半日単位での使用」(52.6%)が最も高く、次いで「全社的な所定外労働時間の削減」(20.0%)、育児休業制度(13.7%)、「子の病気のため看護などで休める」(13.0%)と、休業・休暇に関する制度の利用が比較的多い。 正社員については、「育児休業制度」(78.9%)が最も高く、「有給休暇の半日単位での使用」(67.0%)、「子の病気のため看護などで休める」(40.4%)となっている。正社員については、企業規模が大きいほど労働時間・場所に関する制度(短時間勤務、フレックスタイム制など)や育児サービス費用の補助などが多く利用される傾向にある。

非正社員については、「有給休暇の半日単位での使用」(42.3%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(28.0%)、育児休業制度(19.7%)の順になっている。

男性については、「有給休暇の半日単位での使用」(59.1%)、「全社的な所定外労働時間の削減」

(33.6%)、フレックスタイム制(20.7%)と回答しており、「所定外労働時間の削減」(6.9%)、「短時間勤務」(6.3%)、「育児休業制度」(5.8%)の利用が少ない。「育児休業制度」については、配偶者が専業主婦の場合は制度を利用できない規程となっている企業が多いことが影響していると考えられる。

女性については、「育児休業制度」(81.5%)の利用が最も多く、次いで「有給休暇の半日単位での使用」(64.3%)、「子の病気のための看護などで休める」(41.7%)と続く。また、労働時間・場所に関する制度(短時間勤務、所定外労働時間の免除、始業・終業時間の繰上げ・繰り下げ)の利用が他の対象に比べて高いことも傾向として見られる。

全体的には、「全社的な所定外労働時間の削減」や「有給休暇の半日単位での使用」について、対象に関わらず利用(実施)されている。

対象別では、管理職について、「有給休暇の半日単位での使用」(52.6%)が最も高く、次いで「全社的な所定外労働時間の削減」(20.0%)、育児休業制度(13.7%)、「子の病気のため看護などで休める」(13.0%)と、休業・休暇に関する制度の利用が比較的多い。

正社員については、「育児休業制度」(78.9%)が最も高く、「有給休暇の半日単位での使用」(67.0%)、「子の病気のため看護などで休める」(40.4%)となっている。正社員については、企業規模が大きいほど労働時間・場所に関する制度(短時間勤務、フレックスタイム制など)や育児サービス費用の補助などが多く利用される傾向にある。

非正社員については、「有給休暇の半日単位での使用」(42.3%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(28.0%)、育児休業制度(19.7%)の順になっている。

男性については、「有給休暇の半日単位での使用」(59.1%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(33.6%)、フレックスタイム制(20.7%)と回答しており、「所定外労働時間の削減」(6.9%)、「短時間勤務」(6.3%)、「育児休業制度」(5.8%)の利用が少ない。「育児休業制度」については、配偶者が専業主婦の場合は制度を利用できない規程となっている企業が多いことが影響していると考えられる。

女性については、「育児休業制度」(81.5%)の利用が最も多く、次いで「有給休暇の半日単位での使用」(64.3%)、「子の病気のための看護などで休める」(41.7%)と続く。また、労働時間・場所に関する制度(短時間勤務、所定外労働時間の免除、始業・終業時間の繰上げ・繰り下げ)の利用が他の対象に比べて高いことも傾向として見られる。

図表2-10 両立支援策でよく利用されているもの(複数回答)


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2-5-1.利用促進上の問題点

  • 両立支援策の利用促進上の問題としては、「代替要員の確保が難しい」(46.7%)、「日常的に労働時間が長い部門・事業所がある」(33.3%)、「職場で周りの人の業務量が増える」(30.9%)といった、労働時間の長さや休業することによる周囲への負荷を配慮する項目が多い。
  • 日ごろから常に職場の業務遂行体制を見直し、管理職を中心に効率的な業務運営を図ることを習慣化していくことによって、仕事と育児を両立できる職場となり、結果的に「誰もが働きやすい職場」になると考えられる。

両立支援策の利用を促進する上では、「代替要員の確保が難しい」(46.7%)、「日常的に労働時間が長い部門・事業所がある」(33.3%)、「職場で周りの人の業務量が増える」(30.9%)といった、労働時間の長さや休業することによる周囲への負荷を配慮する項目が多く見られる。また、「社会通念上、男性が育児参加しにくい」(45.4%)や「公的および民間の保育サービスが不足している」(25.1%)といった、会社内での解決が難しい点を指摘する回答もあげられている。

図表2-11 両立支援策を利用促進する上での問題(※複数回答)


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2-5-2.利用促進のための環境づくりに必要なこと

  • 全体的には、「職場ごとに支援策を利用しやすい雰囲気を醸成する」ことと回答した企業が50.4%と高く、次いで「育児支援策を従業員に積極的にPRし、理解を深める」(47.0%)、「管理職が積極的に従業員に利用を呼びかける」(33.6%)と、環境づくりや制度の周知徹底に関する項目が多い。
  • 両立支援策の利用促進を図るためには、まずは管理職がイニシアチブを取って職場環境づくりを推進していくことが重要であり、企業はそのための支援を講じていくことが期待される。

全体的には、「職場ごとに支援策を利用しやすい雰囲気を醸成する」(50.4%)と回答する企業割合が高く、次いで「育児支援策を従業員に積極的にPRし、理解を深める」(47.0%)、「管理職が積極的に従業員に利用を呼びかける」(33.6%)と、環境づくりや制度の周知徹底に関する項目があげられている。

図表2-12 両立支援策を利用促進するための環境づくり(※複数回答)


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3-5.両立支援策の運用状況

3-5-1.周知の方法

男性も含めた従業員が仕事と子育ての両立をしやすくするために、企業がどのような方法で制度や施策を周知しているか、管理職、正社員、非正社員というように従業員の属性別に尋ねた(複数回答)。正社員が管理職や非正社員よりも多くなっている周知方法は、「経営方針や人事の方針として明文化」(22.91%)、「相談窓口の設置」(17.9%)、「従業員研修」(11.3%)となっている(図表3-39)。非正社員については、「特に何もしていない」(30.3%)が目立つ。

図表3-39 両立支援策の周知方法(管理職、正社員、非正社員)(複数回答)


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3-5-2.運用・改善の仕組み

両立支援策を運用したり改善したりする仕組みがあるか尋ねたところ(複数回答)、最も多い回答は「特に何もしていない」(34.4%)で、「定期的な労使協議の場での協議」(29.6%)、「部・課長の集まる会議で周知」(20.7%)といった仕組みをもつ企業が多く見られる(図表3-40)。

これを女性従業員平均勤続年数別に見ると、平均勤続年数が長くなるにつれ、「特に何もしていない」とする回答比率が低下する。そして「定期的な労使協議の場での協議」や「労使の専門委員会を設置して、定期的に検討」や「利用についての相談・苦情処理のための専用窓口の設置」といった回答が多くなる。

図表3-40 女性従業員平均勤続年数別 両立支援策の運用・改善のための仕組み(複数回答)


図表3-40 女性従業員平均勤続年数別 両立支援策の運用・改善のための仕組み(CSV形式:1KB)ファイルを別ウィンドウで開きます

3-5-3.総体的にみた利用状況

総体的にみた利用状況を尋ねたところ、4割を超える企業が、十分に利用されている(7.2%)、おおむね利用されている(36.1%)のいずれかを答えている。その一方で、あまり利用されていない(15.2%)、ほとんど利用されてない(11.5%)と答えた企業も全体の4分の1を超える(図表3-41)。

これを従業員規模別でみると、5,000人以上の企業では33.3%が「十分に利用されている」と答え、規模が大きくなるに従い「おおむね利用されている」と回答する企業の割合が増えている。その一方で、従業員数が少なくなるに従い、「あまり利用されていない」、「ほとんど利用されていない」の回答率が高まる。女性役職者比率別に見ても、比率が高くなるにつれ、利用状況が良くなる傾向が示されている(図表3-42)。

図表3-41 総従業員(正社員)数別 総体的にみた利用状況


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図表3-42 女性役職者比率別 総体的にみた利用状況
(無回答30社を除く)


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(女性従業員比率を算定可能な1,338社について集計)

さらに、業種別でこれを見ると、「十分に利用されている」「おおむね利用されている」といった回答が多かったのはサービス業と製造業である。他方、「あまり利用されていない」、「ほとんど利用されていない」といった回答は情報通信・運輸業や建設業、その他サービス業で多く見られる(図表3-43)。なお、電気・ガス・熱供給・水道業は回答数5社であるが、5社とも「おおむね利用されている」と回答している。

図表3-43 業種別 総体的にみた利用状況


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3-5-4.従業員の属性別にみた利用状況

両立支援策ごとの利用状況(複数回答)を、管理職、正社員、非正社員、男性、女性という従業員の属性別に尋ねた。その結果、いずれの属性においても、「有給休暇の半日単位での使用」や「全社的な所定外労働時間の削減」などといった制度が利用されているが、総じて、非正社員の利用状況が正社員に比べ、低い傾向がうかがえる(図表3-44)。

管理職がよく利用するのは、「有給休暇の半日単位での使用」(52.6%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(20.0%)、「育児休業制度」(13.7%)などである。

正社員と非正社員を比較すると、正社員が最も利用する制度は「育児休業制度」(78.9%)で、「有給休暇の半日単位での使用」(67.0%)、「子の病気のための看護などで休める」(40.4%)などが続いている。他方、非正社員では、「育児休業制度」(19.7%)を利用するとした回答は少なく、「有給休暇の半日単位での使用」(42.3%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(26.0%)などが多く利用されている。正社員よりも非正社員の方が高い回答率を得られたのは、「特に支援策を行っていない(ので利用はない)」のみであり、いずれの制度においても双方間で大きな差が見られる。「教育・育児に関する費用の貸付」や「育児サービス費用の補助」といった経済的支援を行う制度で、その差は大きい。

男性と女性で比較すると、女性は、「育児休業制度」(81.5%)、「有給休暇の半日単位での使用」(64.3%)、「子の病気のための看護などで休める」(41.7%)などが多くなっている。他方、男性は「有給休暇の半日単位での使用」(59.1%)、「全社的な所定外労働時間の削減」(33.6%)、「フレックスタイム制」(20.7%)で女性とほぼ同等の回答率が得られたものの、「育児休業制度」(5.8%)をはじめ、支援制度の利用は総じて少ない。女性を上回る回答が得られたのは、「教育・育児に関する費用の貸付」(男性:9.9%、女性:7.6%)のみである。

図表3-44 従業員属性別 両立支援策でよく利用されているもの(複数回答)


図表3-44 従業員属性別 両立支援策でよく利用されているもの(CSV形式:1KB)ファイルを別ウィンドウで開きます

3-5-5.利用促進上の問題点

両立支援策の利用を促進する上での問題点を尋ねたところ(複数回答)、「代替要員の確保が難しい」(46.7%)、「労働時間が長い部門・事業所がある」(33.3%)などといった会社内部の問題点と、「社会通念上、男性が育児に参加しにくい」(45.4%)、「保育サービスの不足」(25.1%)といった会社内で解決することができない問題点を指摘する回答が多くみられた(図表3-45)。

図表3-45 両立支援策を利用促進する上での問題(※複数回答)


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いくつかの項目について業種別に見ると、「代替要員の確保が難しい」と回答した企業の割合は、女性従業員比率が高いサービス業(56.7%)、金融・保険・不動産業(54.4%)、その他サービス業(51.0%)で高くなっている(図表3‐46‐1)。また、「育児支援制度の利用が昇進・昇格に影響する」と答えた企業は金融・保険・不動産業(5.1%)、その他サービス業(3.5%)、卸・小売・飲食業等(3.3%)で多く見られる(図表3-46-2)。

「育児支援に関する管理職の認識が乏しい」は建設業(26.1%)、卸・小売・飲食業等(25.6%)で、「育児支援に関する一般従業員の認識が乏しい」は卸・小売・飲食業等(23.3%)、建設業(23.2%)、情報通信・運輸業(18.3%)、製造業(17.5%)で回答率が高くなっている(図表3-46-3~4)。

さらに、「両立支援策導入に伴いコストが増大する」と回答した企業はサービス業(22.7%)、ガス・熱供給・水道業(20.0%)で、「育児に関する休暇・休業が取りづらい」と回答した企業は農業などのその他(66.7%)、建設業(24.6%)、ガス・熱供給・水道業(20.0%)、卸・小売・飲食業等(19.4%)で多く見られる(図表3-46-5~6)。

図表3-46-1 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 代替要員の確保が難しい>


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図表3-46-2 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 育児支援制度の利用が昇進・昇格に影響する>


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図表3-46-3 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 育児支援に関する管理職の認識が乏しい>


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図表3-46-4 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 育児支援に関する一般従業員の認識が乏しい>


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図表3-46-5 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 仕事と子育ての両立支援策の導入に伴いコストが増大する>


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図表3-46-6 両立支援策を利用促進する上での問題
<業種別 育児に関する休暇・休業が取りづらい>


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企業と従業員へのヒヤリング調査結果

仕事と育児を両立する上で、現在大きく4つの課題があり、それぞれに対応して両立支援策も4つに分類できる。

以下、両立支援策の4つの分類にしたがって、具体的な内容を紹介していく。

両立上の4つの課題両立支援策の分類
1)経済的コスト
子育てにかかる費用の負担(教育費等)。子育てによって生じる機会損失費用(育休取得時には、雇用保険でまかなわれない6割の所得ロスあり)。
(1)経済的支援
2)時間的コスト
仕事と育児を両立しようとすると、時間の余裕がなくなる。また、子育て中は、まとまった休暇が必要になる。
(2)時間のフレキシビリティ
3)通勤コスト・転勤コスト
子育て中は、通勤時間を減らしたり、転勤をなくす必要が生じる。
(3)場所のフレキシビリティ
4)育児サポート体制の不備
地域によっては、家族サポート、保育サービスを受けるのが難しい企業もある。
(4)育児のサポート体制の整備

(1)経済的支援策

従来の家族手当を改廃し、育児に関する一時金制度を導入する企業(日本電気)があった。また、育児休業中の所得ロスを補填しているのみならず、その従業員のフォローをする周囲の同僚たちへのねぎらいの観点から、賃金の上乗せをしている企業(クララオンライン)もあった。

事例1-1:育児休業期間中の所得保障(クララオンライン)

雇用保険からの4割の支給額に加え、会社からも一定額(休業前の給与額の3割程度)を支給している。また、両立支援策の活用は子がいる従業員といない従業員との間に溝をつくりやすいことから、両立に取り組む従業員のフォローをする周囲の同僚たちへのねぎらいの観点から、賃金の上乗せをしている。

事例1-2:早期復職社員への所得保障(クリロン化成)

産前産後休業から早期に復職した従業員に対しては、個々の状況に合わせて公的補助金の追加負担を行っている。例えば、休業者が出た時の埋め合わせに派遣社員を採用すると仮定して、発生する費用効果をある程度勘案した結果、8万円の公的補助を会社が追加補助している。

事例1-3:ファミリー・フレンドリーファンド(日本電気)

これまでの配偶者等の扶養家族に対する手当制度を2004年に見直し、子育ての多様なニーズに対応し、より活用度の高い支援を行うことを目的に「ファミリー・フレンドリーファンド」を導入した。

同制度は、「ペアレント・ファンド」と「ファミリーサポート・ファンド」の二つから構成される。「ペアレント・ファンド」は新たに子が生まれた社員に対して、子1人につき55万円を支給する。さらに会社が提携する子ども育成保険(将来の教育資金に備える貯蓄型や万一のための保険型商品等)に加入する場合は、奨励金として5万円を追加支給する。なお、主たる生計者でない場合にも支給する。「ファミリーサポート・ファンド」は、家計の主たる生計者で、主任以下(ただし、障害をもつ家族の扶養に支援が必要な管理職を除く)の社員に月額5,000円を支給する。

事例1-4:チャイルドケア支援制度(日本電気)

社員がその親による育児支援を受けるための転居費用(社員がその親の近隣へ転居する場合、または社員の親が社員の近隣へ転居する場合)、または、社員が長時間保育を行う保育所を利用するために転居が必要な場合の費用を補助する制度である。産後休暇、育児休職もしくは育児短時間勤務を取得中の社員で、育児環境整備のために転居を必要とする社員を適用の対象とする。転居に関わる費用(引越し費用、礼金、仲介手数料)は、50万円を上限として実費を会社が補助する。

事例1-5:幼稚園転園費用の補助(九電ビジネスソリューションズ)

通常の人事異動の時期が7月であり、幼稚園の通常の入園時期である4月と異なる。幼稚園児を持つ従業員が転勤すると、転勤先の住所で再度、幼稚園入園のための費用がかかることになる。その費用負担を軽減させるために、幼稚園児を持つ社員が転勤した場合に補助金を出している。

(2)時間のフレキシビリティ

労働時間に関して、従業員が仕事と育児を両立できるよう柔軟に対応している制度としては、短時間勤務制度の法定期間を延長している企業(コヤマドライビングスクール、芳野病院)、短時間勤務を非正社員にも適用している企業(芳野病院)、短時間勤務とフレックスタイム制度を併用している企業(味の素)、勤務時間中の一時外出を認める制度など、多様な方法が採られている。

また、所定外労働時間の削減に取り組む企業では、従業員の働き方を見直すことや、従業員満足度を向上させる一施策として導入しているケースが多い。タイプとしては、1)月または週の1日程度を「ノー残業デー」と位置づけ、その日は定時に帰宅することを促す企業(芳野病院)と、2)原則として毎日が定時退社とする企業(未来工業)、3)時間券を発行している企業(クリロン化成)があった。

さらに、育児中はまとまった休暇が必要になることに関連して、育休対象者を拡大している企業(味の素)、子の看護のための休暇制度に関して法定を上回る日数を支給している企業(味の素)、多様な事由で休暇を取得できる事例、失効する有給休暇を積立てる「失効年休の積立制度」の事例などがあった(日本電気、味の素)。

事例2-1:短時間勤務とフレックスタイム制度との併用(味の素)

同社の短時間勤務制度は、1日あたり2時間30分を上限に、30分単位で勤務時間の短縮ができる仕組みとなっている。2004年4月より「小学校4年に進級するまでの合計4年間」と改定し、家族の状況や自分のキャリアを勘案しながら4年間の適用期間を自分で調整しながら利用できる制度へ見直ししている。

同社はフレックスタイム制度も導入しているが、短時間勤務制度とフレックスタイム制度の併用も認めている。この場合の月の総労働時間は、「1日あたりの短縮時間×出勤義務日数」で算出する。

事例2-2:育休取得対象者の拡大(味の素)

勤続1年以上の従業員に適用される。子が満1歳に達した後の4月末日まで休職することができ、育児に専念できる者(専業主婦(夫))が家庭にいる場合でも休職することができる。

事例2-3:子供看護休暇制度(味の素)

2004年4月に導入した。子1人につき1年につき10日間の無給の特別休暇が支給される。中学校入学するまでの子の看護について半日単位の取得も可能である。同制度は、勤続年数の短い従業員はストック有給が少ないことが考えられることや、共働きの従業員がより安心して仕事と家庭の責任を果たせるよう整備をした。

事例2-4:失効年休の積立制度(味の素)

前年度未消化の有給休暇のうち5日を上限として積み立てることができ、累積積立限度日数は30日である。同制度の適用理由は、1)本人の私傷病で定期的な通院が必要な場合、2)2親等以内の親族の私傷病や介護に連続1週間以上の看病が必要な場合、3)リフレッシュ休暇制度で定められた休暇を取得する場合、4)当年度および前年度の有給休暇をすべて消化し、次年度の有給休暇が付与される前に1)または2)の事由で休暇取得が必要となった場合、としているが、2004年4月より1日単位で休暇取得できるようにし、さらに有給休暇が残っていてもストック有給を行使できるように改定した。また、中学校に入学するまでの子の看病を理由とする場合は、半日単位の取得も認めている。

事例2-5:時間券の発行(クリロン化成)

通常勤務をしていた場合には、各部門で残業が発生する時間を想定して、時間券を発行している。時間券が添付されていないと残業として認められない。何かがあって余分に残業が発生する際には、通常は前もって予想がつくものなので、全て事前申告制になっている。

事例2-6:短時間勤務期間の延長(芳野病院、コヤマドライビングスクール)

短時間勤務制度の適用期間を小学校2年生までとして法定を上回る適用期間としている。

事例2-7:短時間勤務の非正社員への適用(芳野病院)

非正社員に対しても子を預けてから出勤できるよう、個人の事情に応じて柔軟に勤務時間帯を変更し、シフトを組んでいる。

事例2-8:ノー残業デー(芳野病院)

月1回に「ノー残業デー」を設け、第3週の真ん中3日間のいずれか1日には残業せずに帰るように促している。1日だけに設定してしまうと、勉強会等で取れなくなる人がでてくるため、このような仕組みとした。

事例2-9:勤務時間中の一時外出(コヤマドライビングスクール)

小学校2年生までの子を対象に、1日につき2時間まで勤務時間中に育児に関する事由のために一定時間外出することを認める制度を導入している。

事例2-10:ファミリー・フレンドリー休暇(日本電気)

本人の療養や家族の看護のための目的別休暇として「医療看護休暇」として1992年に導入、2002年に適用目的を1)本人の療養、家族の看護、2)配偶者の出産、3)本人・家族の疾病予防(人間ドック等)、4)家族の介護、5)子の学校行事(授業参観、保護者会、運動会等)への参加、6)ボランティアにも拡大し、さらに年間付与日数も3日から5日へ拡大した。

事例2-11:就業を継続するための短時間勤務(フージャースコーポレーション)

女性社員の就業を継続させることに重点がおかれており、1)妊娠中はラッシュを避けるために時差出勤、2)出産の1~2ヶ月前まで働く、3)出産後1年程度で職場に復帰、4)育児のために短時間勤務(16時帰社)などの独自の仕組みで運用している。

事例2-12:定時退社(未来工業)

特筆すべきは、短い労働時間である。原則として、従業員に残業はさせず、年間の休日数は140日(日本企業の平均休日数は120日)、有給を含めると160日となっている。具体的には、ゴールデンウイークの連休は11日間、夏休みは10日間、正月休みは20日間。火曜や木曜が祝日なら、月曜、金曜を休みにして、4連休としている。その一方で、従業員の給料は、少なくとも地域の平均より、かなり上回る水準となっている。創業者である山田相談役は「給料だけで満足させるには限度がある。工夫して労働時間を減らすのにカネはかからない」と言う。労働時間を短くして従業員の満足度を高め、やる気を最大限引き出している。

(3)場所のフレキシビリティ

在宅で業務を遂行することを勘案して裁量労働制の適用対象者に限定して実施している企業(日本電気)があった。また、勤務地の指定・限定制度を導入している企業があった(コヤマドライビングスクール、ユニクロ)。

事例3-1:勤務地限定制度(コヤマドライビングスクール)

同社は4つの教習所を運営しており、保育園などの都合で他の教習所の方が通いやすい場合は、転勤希望を優先的にかなえている。

事例3-2:育児在宅勤務制度の整備(日本電気)

同社では、主任クラス以上に専門業務型、企画業務型の裁量労働制を導入しているが、子が小学校就学の始期に達するまでの期間は裁量労働制適用対象者に限定して在宅勤務を認めている。勤務時間は原則7時間45分である。賃金・賞与は通常どおり支給されるが、1日の勤務時間が7時間45分より短い者は、育児短時間勤務制度の取り扱いに準ずる。

事例3-3:勤務地限定制度(ユニクロ)

同社では社内結婚が多いが、どちらかが辞めることがないよう自己申告型で異動を行っている。仕事と家庭の両立を希望する場合は、担当店舗の規模を小さくし、負担を軽減する等の対応をすることもある。ただし、店舗規模が小さくなることによって職位が変わることもあるが、資格は変わらない。

(4)育児のサポート体制の整備

地域のファミリーサポートセンターと連携している企業(日本電気)、事業所内託児所を設けている企業(コヤマドライビングスクール)、さまざまなサポート体制を整備している企業(クララオンライン)があった。

事例4-1:さまざまなサポート体制の整備(クララオンライン)

  1. ビフォア・アフターサポート:産前休業・育児休業2ヶ月前より社内で業務移行の準備を徐々に開始し、休業終了1ヶ月前より社内で受け入れ態勢を徐々に整える。従業員の状況に合わせて、保育園、幼稚園、ファミリーサポートセンターなどを紹介する。
  2. イージーハロー・サポート:育児休業中の従業員と会社のコミュニケーションの希薄化を防ぐ為、2ヶ月に1回程度、育休中の従業員を別の社員が訪問し、その子育て状況を取材し、社内WEBにアップしている。
  3. パートナー・サポート:産前産後休業、育児休業中の従業員に社内パートナー(同部署の同性の後輩など)をつける。月に1度、パートナーは社内状況の報告など休業者とコミュニケーションの機会をつくり、休業者の精神的ケアを図る。先輩がサポートするよりも、後輩がサポートするほうが、休業者がいろいろと聞きやすく、休業取得者のメンタルヘルス上良い。
  4. ホームオフィス・サポート:重要な会議に休業者がTV電話形式で参加でき、月に1度上司ともTV電話形式で対面コミュニケーションを取れるようにする。
  5. イーラーニング・サポート:育児休業中の従業員にパソコンを支給し、資生堂の「wiwiw」または月額6,000円までのイーラーニングをブラッシュアップのために使用できる。

事例4-2:事業所内託児所(コヤマドライビングスクール)

教習生の子を預かるために託児所を設置しており、従業員も利用可能となっている。

事例4-3:ファミリーサポートセンター加入促進と利用者支援(日本電気)

育児を行う社員がファミリーサポートセンターを利用する場合、1時間につき300円(月額18,000円を限度)を補助する。また、同社ではOB・OG社員に対して、年金の通知などの機会を通じて、地域のファミリーサポートセンターに登録するようアピールしている。

(5)その他

両立支援策の効果を高めるためには、組織・業務体制全体の見直しが重要である。ヒヤリング企業の中でも、時間あたりの生産性を高めるための工夫をしている企業(クリロン化成)、権限委譲を徹底している企業(未来工業)があった。

事例5-1:時間あたりの生産性を高めるための工夫(クリロン化成)

自己の職務について見直すために導入されており、加重平均気がかり度(時間と気がかり度を掛けて加重平均した値)、職務の難易度、それぞれの職務にかかった時間などを記入するようになっている。営業・事務・技術部門でよく利用されている。また、社員は金儲けでなく時間儲けに徹してほしいという理念から「時間を有効に生かすための12ヶ条」を職務実施要領として社員に提示している。

事例5-2:制度化されていないが、柔軟に運用(フージャースコーポレーション)

社長が全社員の状況を把握しており、自然発生的に出産・育児支援の仕組みが形成された。女性社員に継続的に就業してもらう必要があり、職場に自由な社風があることから、育児支援策は制度化されていないが、必要に応じて柔軟な運用がなされている。

事例5-3:権限委譲の徹底(未来工業)

従業員の管理は極力排除し、現場に最大限の裁量を与えて製品の差別化を生んでいる。売り上げ目標やノルマは一切ない。その代わり、新製品の投入計画や顧客の要望を基に、各自が目標をたてる。例えば、営業マンは商談で全ての権限を与えられている。一般企業で常識となっている「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)は、まったく不要とされている。「現場が一番現場を知っていて、無知な上司に相談するより、従業員に自分の頭で考えさせる」(山田相談役)という企業文化が背景にある。

こうした経営方針の下で、同社の従業員は勤務時間内で、能率や生産性を上げ、競争力を確保しようと必死になるという。実際に、同社の収益力を示す売上高経常利益率は常に10%以上を維持してきた。つまり、大幅な権限委譲をすることによって、短い労働時間の中でも良好な経営パフォーマンスを維持した上で、結果的に仕事と育児を両立しやすい職場環境を実現している。

事例5-4:業務改善マニュアルの作成・配布(ユニクロ)

全国から6名の女性店長を募り、小売業としては異例の店長が絶対に8時間勤務で帰る、又は店長が土日に休みをとるという試みを行った。プロジェクト開始当初は、スタッフの理解が得られないなどの混乱も生まれたが、中長期的には人員を増やすことなく業務分担が改善された。両立支援策とともに、店舗の業務分担の見直しが同時に行われることで期待以上の効果をあげたと考えられている。

代行者の体制や配置の見直しを行いながら問題点を洗い出し、それぞれの店舗での改善案をマニュアル化した。マニュアルは教育部門に送られ、社員教育に反映することで全店舗に展開された。