「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議 第2回 点検・評価分科会 議事要旨

1.日時

 平成19年3月28日(水)13:00~15:00

2.場所

中央合同庁舎第4号館 2階 共用220会議室

3.出席者


(有識者)
佐藤 博樹  東京大学社会科学研究所教授(分科会主査)
渥美 由喜  株式会社富士通総研主任研究員
案田 陽治  日本サービス・流通労働組合連合副会長
大日向 雅美  恵泉女学園大学・大学院教授
大矢 和子  株式会社資生堂執行役員企業文化部長
奥山 千鶴子  特定非営利活動法人びーのびーの理事長
藤本 保  大分こども病院長
前田 正子  横浜市副市長

(説明者)
家本 賢太郎  株式会社クララオンライン代表取締役社長
小堀 京子  小田急百貨店労働組合中央書記次長

4.議事概要


○佐藤主査
 3月7日の第1回分科会における点検・評価すべき重点テーマの議論を踏まえ、本日から具体的な検討に入りたい。
 本日は、重点テーマのうち働き方の改革に関し、関係省庁から制度等の報告、中小企業、子育て世代の労働者、研究者から、現状の問題点等についてヒアリングを行う。本日は、ヒアリングの説明者として、企業側から株式会社クララオンラインの家本社長、子育て世代の労働者として小田急百貨店労働組合の小堀中央書記次長に出席していただいている。

○山田内閣府少子・高齢化対策第1担当企画官
参考1 当面の重点テーマについて(PDF形式:19KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考2 内閣府「企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究」概要(PDF形式:105KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考3 少子化と男女共同参画に関する専門調査会「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書」概要(PDF形式:78KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考4 日本労働研究機構「育児や介護と仕事の両立に関する調査」概要(PDF形式:65KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考5 日本経済団体連合会「少子化問題への総合的な対応を求める ~人口減少下の新しい社会づくりに向けて~」(PDF形式:812KB)
参考6 内閣府HPにおける意見募集に寄せられた意見の結果について(12月分)(「保育所の利用について」「企業における子育て支援制度について」)(PDF形式:24KB)PDFを別ウィンドウで開きます

 参考資料から説明させていただく。
 参考1は「当面の重点テーマについて」である。前回の議論を踏まえ、継続就業環境整備、保育環境の整備、育児不安の解消といったことを掲げているが、今回は継続就業環境整備ということでご議論いただきたい。
 参考2は、昨年3月、本日のテーマにも関連する様々な先行的な事例の調査研究として内閣府がとりまとめたものである。
 7ページの「利用促進上の問題点」では、「代替要員の確保が難しい」、「日常的に労働時間が長い部門・事業所がある」、「職場で周りの人の業務量が増える」といった点、あるいは「社会通念上、男性が育児参加しにくい」、「公的および民間の保育サービスが不足している」といった会社内では解決が難しい点などが指摘されている。
 8ページの「利用促進のための環境づくりに必要なこと」では、「職場ごとに、支援策を利用しやすい雰囲気を醸成する」、「育児支援策を従業員に積極的にPRし、理解を深める」、「管理職が積極的に従業員に利用を呼びかける」といった環境づくりや制度の周知徹底に関する点があげられている。
 18ページの「企業と従業員へのヒアリング調査結果」では、両立上の4つの課題として、経済的コスト、時間的コスト、通勤・転勤コスト、育児サポート体制の不備といった課題を掲げており、それぞれについて各企業の取組事例を紹介している。
 参考3は、昨年12月、男女共同参画会議の少子化と男女共同参画に関する専門調査会がとりまとめたものである。
 3ページの「まとめ」では、両立支援あるいはワーク・ライフ・バランスが図られるような取組は、すべての男女にとって、仕事への意欲や満足を高めるという意味で重要であること、働くものの意欲や満足が高まること、仕事の効率性が意識されることなどによって、職場にもメリットをもたらすものであること、仕事の進め方の見直しやサポートする職員の能力向上等にもつながること、日頃から、チームでの連携や互いに仕事をサポートできる形での人材育成等のマネジメントの仕組みを作っておくことにより、両立支援と職場のマネジメントをよい形で両立させることが可能であるといったことを提言している。
 参考4は、平成15年3月、日本労働研究機構が公表した調査の概要である。
2ページの「職場で育児休業をとりやすい雰囲気」を調査した結果をみると、女性では「どちらかといえばとりやすい」の37.5%が「どちらかといえばとりにくい」の22.6%を上回っているが、男性では「どちらかといえばとりやすい」の3.3%が「どちらかといえばとりにくい」の52.2%を大きく下回っており、男性に関しては特にこの課題が大きいことを示唆している。育児休業を取りにくい理由は、男女とも「職場が忙しい・人が足りない」が最も多く、休業中の代替要員の確保や業務運営の見直しが重要であることを示す結果となっている。
 5ページの「仕事と子育ての両立を促進する方法として公的機関に対して期待するもの」を調査した結果をみると、主なもの3つまでの複数回答で多い順に、「保育園の整備など公的サービスの整備」、「仕事と子育ての両立支援策導入に係る費用助成」、「育児休業中の代替要員の雇い入れに要する費用」、「育児休業者に対する一層の経済的援助」、「企業が両立支援に積極的に取り組む際の雇用管理等についての相談」、「育児休業中の代替要員のための人材情報の提供」、「仕事と子育ての両立支援に積極的な企業の表彰、認定、好事例の紹介等」といったことが期待されている。
 参考5は、本年3月20日、経団連がとりまとめた提言である。
 1ページの「はじめに」では、「産業界・企業も社会の重要な構成員のひとつとして、少子化を自らの問題として認識し、ワーク・ライフ・バランスを基本理念とした働き方の見直しに取り組む決意である」ことが述べられている。
 5ページからの「各論」のうち、「企業の取組の基本姿勢」では、「ワーク・ライフ・バランス推進に向けた企業の行動指針」として、「経営トップのリーダーシップの発揮」、「メリハリのある働き方の実現」、「職場の意識醸成を図るための幅広い運動の展開」、「マネジメント職に対する教育」、「主体的なキャリア形成の環境整備」、「女性の就労継続支援と再雇用の推進」といった項目を掲げている。
 11ページからの「政府の推進する少子化対策に対する要望」のうち、14ページからの「柔軟で再チャレンジ可能な社会づくりに向けて」に関しては、(1)の「柔軟で自律的な働き方の確保」として、「中小企業の創意工夫を生かした取組に対するきめ細かい支援策」、「労働時間に係る規制改革」、「働く場所の多様化に向けた環境整備」、「ワーク・ライフ・バランス推進企業に対する政府調達における配慮」といったことを述べている。
 21ページ以降は「ワーク・ライフ・バランス推進に関する企業の取組事例集」としてまとめており、例えば、29ページの「女性の就労継続支援と再雇用の推進」という項目では、「育児休職中の社員への情報提供と教育機会の提供」、「育児のための短時間勤務制度」、「再就職支援制度の実施」、「女性の就労継続支援と再雇用の仕組み」などの取組事例がある。32ページの事例では、育休中の経済的な援助として、健康保険組合において、産前産後の休暇期間中の出産手当付加金として「標準報酬日額の20%を支給」といった取組が行われている。
 参考6は、内閣府のホームページに寄せられた意見をまとめたものである。
 12月のテーマの1つの「企業における子育て支援制度について」という項目では、企業における子育て支援制度の運用面に関する意見として(1)から(5)までを掲げている。
 内容は、(1)企業の両立支援や子育て支援制度は実際には使われていないことが多く、職場の意識改革が必要、(2)長時間労働の抑制や父親の育児休業の促進について職場の意識改革が必要、(3)育児休業取得後になかなか職場復職できず、会社から退職を求められている、(4)会社の制度として育児休暇、時短制度なども使えるが、キャリアや収入に響くため、実際にはなかなか利用できない、(5)就学前の子どもがいても、正社員の場合、職場からきちんと働いてほしいというプレッシャーがある、といった意見が寄せられている。
 なお、「保育所の利用について」というテーマの中で、育児休業とも関連することとして、「育児休業中だが、保育園の年度途中の入所が難しいため、育児休業を途中で切り上げるか、職場復帰をあきらめざるをえない」といった意見が寄せられている。

○麻田厚生労働省職業家庭両立課長 資料1 厚生労働省説明資料(PDF形式:304KB)PDFを別ウィンドウで開きます
 資料1として、両立支援と継続就業の現状について説明させていただく。
 1ページ目は、妊娠から育児期まで継続就業が可能となるための現行の諸制度をまとめている。
 2ページ目以降は、育児休業の制度と現状である。制度では、1歳または1歳6カ月まで、また一定の要件を満たす期間雇用者も対象としている。育児休業給付については、現在、国会で審議中であるが、給付率が平成19年10月から休業前賃金の40%から50%に引き上げられる予定である。
 育児休業給付ベースでみた場合の育児休業取得者数は、平成17年度11万8,000人となっており、年々、受給者が増えている。
 育児休業取得率の推移をみると、女性は着実に取得率が上がってきている。なお、取得率は、出産した女性労働者数に占める育児休業取得者の割合であり、出産を機に退職する人は算出の際の分母に入っていない。
 男性の育児休業取得率は非常に低い水準で推移しており、平成17年度で0.5%となっている。取得率は、配偶者が出産した男性労働者数に占める育児休業をとった男性の割合である。
 次に「諸外国の育児休業に関連する給付制度の最大支給期間・支給額」であるが、G7とスウェーデンで比較している。育児休業、イギリスの場合はマタニティリーブであるが、その給付を最長期間、最大額もらったときにどのくらいになるかをみている。横軸が受給できる期間、縦軸が給付、給付が定率と定額の国があるため、定額の国については休業前賃金が月額22万円という仮定を置き、それが22万円の何%に当たるかということで作成した。黒塗りの面積が広い方が給付が手厚いということになる。我が国では、今後予定している育児休業給付率の改正も考慮すると、制度面においては、先進国と同等かそれ以上の手厚さになってきている。
 次に、育児期の柔軟な働き方のための制度面について。育児・介護休業法では、勤務時間等の短縮の措置があり、子どもが3歳に達するまでの間は、資料の(1)から(6)に示す柔軟な働き方のためのいずれかの措置を講ずることが事業主に義務づけられている。3歳から小学校就学前までの労働者については努力義務となっている。
 次に、深夜業・時間外労働の制限に関し、まず時間外労働の制限として、育児・介護を行う労働者が請求した場合は、月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならない、また、深夜業の制限として、育児・介護を行う労働者が請求した場合は、深夜労働をさせてはならないこととなっている。
 子の看護休暇制度では、小学校就学前まで、労働者一人当たり年間5日、年次有給休暇と別枠で休暇を取得することができる。
 次に、勤務時間短縮等の措置状況であるが、事業所総数を100としたとき、何らかの措置を講じている事業所が41%、その中で多い項目としては短時間勤務制度、次に所定外労働免除となっている。また、育児休業から復帰した女性にどういう柔軟な働き方を利用しているかを調査した結果では、短時間勤務制度を利用している人が復帰者の18%となっている。
 次からの資料は、継続就業に関するものである。
 なお、今回の戦略会議にも関連し、厚生労働省の人口構造の変化に関する特別部会で、子どもを持って働き続け、出産、結婚するなど、いろいろな国民の希望を実現できるということが少子化対策の柱であるということが打ち出されているので、両立ということも継続就業を可能にするために何が必要かという点から考えていく必要があると考えている。
 最初は、継続就業と育児休業の取得に関するものである。グラフが4つあり、横軸が子どもの出生時期になっているが、それぞれの時期に第1子を産んだ母親が就業を継続したか、それとも出産で退職したかを示している。これをみると、育児休業を利用する割合というのは着実に増えているが、第1子出産前後の継続就業率は過去20年間に変化がない。先程、育児休業制度が利用できているかどうかという説明があったが、むしろこのデータをみると、育児休業の利用は着実に増えている一方で、その最終目的である継続就業率の向上にあまりつながっていない。継続就業を引き上げていくためには何が必要なのかという議論が必要なのではないかと思う。
 次は、21世紀出生児縦断調査によるもので、第1子出生前後の就業の継続状況である。正規、非正規の両方を含め、第1子出産を機に7割の方が離職をしている。雇用形態別にみると、常勤で4割継続であるが、パート・アルバイトは1割継続でほとんど離職してしまう。自営業は継続就業率は高いが、そもそも全体数が少ない。希望する継続就業を実現していく場合に、派遣、契約社員、パート・アルバイトなど、非正規労働の問題が非常に大きい。企業から話を聞くと、継続就業している人に向けてどういう施策をしているかという話が多いが、マクロで見た場合、両立支援に到達する前に辞めてしまう人のことをきちんと見ていく必要がある。
 次は、官民、それから民間での企業規模別に継続就業率をみたものである。第1子のところで、官公庁と民間では非常に大きな格差があり、民間の企業の中で規模別の格差はあるものの、それをはるかに超える格差が官民で存在する。
 出産前後の離職の理由では、出産前後で仕事をやめる女性の約3割が、両立が困難あるいは解雇や退職勧奨ということで両立環境関係の理由でやめている。
 次は、仕事と育児の両立が難しいので、出産後、仕事をやめたと答えている人に、両立の何が難しかったかを聞いている。多いのは、「自分の体力がもたなそうだった」、「育児休業をとれそうもなかった」、「保育園の開所時間と勤務時間が合わなかった」、「子供の病気等で度々休まざるを得ない」ということで、制度的な要因、保育所関係の要因、体力がもたないということに込められた働き方の問題が読み取れる。
 次も継続就業の関係である。育児休業が継続就業を増やすのにあまり貢献していないとすれば、継続就業できていないグループが継続就業できるようにするためには何が有効なのかということが必要になる。継続就業が当たり前にできている国では、日本と両立環境が何が違うのかをみるため、両立先進国としてフランスとスウェーデンを挙げ、日本と比較してみた。継続就業の実現では、30代の女性労働力率はかなり違いがある。それに加えて、両立環境はどう違うかをみるため、ワーク・ライフ・バランス、それから夫婦間の分担、両立支援制度の利用、保育サービスの4つに分けて、代表的な数値をみているが、ワーク・ライフ・バランスのところも、例えば週50時間働く人の割合や、パートタイム労働に対して公正な処遇ルールがあるかどうか、夫の帰宅時間などにおいて顕著な違いがみられる。このワーク・ライフ・バランスを反映して、家事の分担も大きな違いがある。また、保育サービスについても、日本と比べて供給面で非常に充実しており、両立支援制度単独で継続就業を支えるのではなく、こういうワーク・ライフ・バランスの基盤の上で両立支援が機能しているということがあるのではないかと思う。
 現在、日本では育児休業を利用するということに大変な関心が持たれている。確かにスウェーデンをみると、両立支援制度の利用が非常に多い。典型的に言えば、長い休業をとった後、職場に復帰して、そのとき保育所に子どもを預けて短時間勤務をするというモデルである。他方、フランスの場合は、長い休業をとる割合が非常に少なくて、休業をとらず、あるいは短い休業で復帰して、子どもを預け、すぐ働き始める。そのことを支える充実した保育サービスがあるからこそ、こういうモデルが存在するのであって、継続就業イコール育児休業ではないと思う。
 最後の資料になるが、最近の調査で、自分の会社の労働時間と、自分の会社が結婚、出産後、継続就業できる会社だと思うかということを、一般労働者、既婚の男女合わせて聞いたものである。これをみると、長時間労働の会社ほど、あまり継続就業ができるとは思わないという割合が増えており、やはり両立支援制度だけに特化するのではなくて、それがきちんと機能するようなワーク・ライフ・バランス、それも子育て中の人だけではなく、全員のワーク・ライフ・バランスをしっかりやっていくということが重要であると思う。
 このようなことから、今回、重点戦略検討会議が立ち上がり、この分科会で点検・評価のあり方をよりよいものにするということであるので、例えば、現行の「子ども・子育て応援プラン」ではいろいろな政策指標や目標などがあるが、是非それらについて再構築というか、具体的には、例えば育児休業がなぜとれないかを問うよりは、育児休業を取っている人が増えているのになぜ継続就業が増えないのか、そうすると、育児休業取得率だけを指標にするのではなくて、継続就業ができているかどうかということを指標に据えていく、そういう継続就業率のデータが本当に継続的に把握できるような統計調査のあり方など、そのようなことについてもご議論いただければと思う。
 また、男性の育児休業というように狭く考えずに、男性が育児参加できるような働き方の見直しがどのくらい進んでいるのかということも、点検すればよいと思う。そのようにみると、労働時間や年次有給休暇の取得状況、多様で公正な働き方ができているかなど、そういうことが視野に入ってくる。是非そのようなことも検討いただければと思う。

○佐藤主査
 両立支援制度を利用する前に、多くの女性が辞めているという現状を解決する必要があること、制度が使えるためにはワーク・ライフ・バランスなどの環境整備が重要であること、そのことを踏まえると、今までの評価、目標、政策評価のあり方も少し再考する必要がある、という説明であったと思う。

○家本(株)クララオンライン代表取締役社長
資料2 説明資料
1/2(PDF形式:388KB)PDFを別ウィンドウで開きます2/2(PDF形式:236KB)PDFを別ウィンドウで開きます
 私どもは、今から10年前に創業したITのベンチャーの企業であり、インターネットのサーバーコンピュータの運用管理を企業から受託することをメインにしている。この場で紹介したい一番のポイントは、私どもが現在取り組んでいるワーク・ライフ・バランスの実態が、良い結果もあるがすべてが百点満点ではなく、中小のITベンチャーというところでまだまだ壁があるということである。自社単独でワーク・ライフ・バランスを進めているわけではなく、NPO法人に社員とのコミュニケーションの中に密に入っていただいているが、そうした点についても説明したい。
 私の自己紹介をさせていただくと、この会社を今から10年前、15歳のときに創業し、その当時、脳腫瘍の手術の事故で車いすに乗っていて、その後、今のように歩けるようになって身体障害者手帳を返納することができ、学業をしながら会社をずっと経営をしてきた。
 3ページは会社概要であるが、もともと名古屋で創業し、現在、東京、海外はシンガポールと台湾の台北、台南、中国の大連に合計70名ほどの従業員がいる。もう1つの特徴は、ワーク・ライフ・バランスとも非常に密接にかかわるが、現在、従業員の約6割が外国籍である。一方、私は日本語だけで社内でコミュニケーションをとっており、少し変わった社風、雰囲気を持っているかもしれない。スウェーデンやフランスなどの国籍の従業員もおり、非常にいろいろな意識のバックグラウンドがある。
 5ページは、私どもの価値観である。行動や信念は他の企業でもあると思うが、私たちは組織というところで、家族経営という意味ではないが、その組織1つが大きく家族のように互いに尊重しあって働けるようにしていこうと考えた。70名から今後100人、200人と増えていってもこういう価値観を持ちたいと考えている。
 7ページをみると、従業員に占める外国籍の割合が少しずつ増えてきていることが分かる。資料では「フランス・ロシア・ポーランド・マレーシア・インドネシア・シンガポール・中国・韓国・台湾」と書いているが、その他にもインド、ハンガリー、スウェーデン、ベトナムなど様々な国籍の従業員がいる。もともと日本にいて転職で私どもの会社に入ってきたケース、日本に留学し新卒で入ってきたというケース、現地の大学にいて私どもの就職の情報を見て日本に来たというケースなどがある。母国語が日本語ではない、あるいは日本での教育を受けてきたというよりも海外の教育の方が長いという人たちが半分以上いる。
 次のページの写真は、従業員や会社の雰囲気である。日本の企業の場合には、日本語のイントネーションが違う人が電話に出るといろいろとクレームが来ることもあるが、代表の電話では中国人、韓国人、フランス人など、どの国籍の社員も電話に出る。それが「クララオンライン」という会社であることをお客様にも理解していただいて対応するので、日常、いろいろな言語が会社の中で飛び交っている。
 次のページの「採用の原則」は、今は人事のポリシーとして持っており、「Diversity and inclusion」ということで、そもそも何かが間違っている、何かが楽しいというように簡単に物事というのは言い切れない。例えば、男性、女性、その年齢、あるいは私どもの会社に特徴的なものして国籍、宗教、文化の違いがあるが、そうしたものの何がいい何が悪いということではなく、それぞれにいろいろなものを含んでいるということを、そもそも人の中心に置こうということを採用の原則として考えている。そのようなところがワーク・ライフ・バランスに取り組むときの前提になっている。
 11ページ以降、私どもの今の具体的な取組について説明させていただく。
 私どもがワーク・ライフ・バランスに取組始めたのは今から3年ほど前で、最初は子育て中の新卒の社員を採用するときに、さあどうしようといって、会社の中でみんなで悩んだ。子育てをしていた社員が当時いなかったことから、どう対応しようかというので悩み始めたのがきっかけだったが、当時、中小のベンチャーの企業でワーク・ライフ・バランスに取り組もうとするケースがあまり多くなかった。
 経営者の話を聞いても、そもそもベンチャーというのは、例えば四半期や半期ごとに非常に業績を求められる。私どもも、金融機関や株主、機関投資家から相当ご理解をいただける状況になって、今取り組むことができているが、例えば、金融機関にワーク・ライフ・バランスに取り組んで頑張りたいと言っても、目先の利益はどうかという話になると、経営者としては取組にくいところもある。
 そうしたところ、大変応援をいただいている環境が、この3年ぐらいでできてきて、ようやく私たちも外に向かって、ワーク・ライフ・バランスに対しての取組を中小企業の代表としてやっていきたいと申し上げられるようになった。
 12ページの「経営戦略からの考え方」や13ページの「ワークライフバランスに対する取組」について、私どもはこの業界でアジアでナンバーワンになろうというので、その指標を「売上高」と「お客様の満足度」のほか、もう1つ「従業員の満足度」という3つの並列した視点として持っている。
 このうち、従業員の満足度というものが、まさにワーク・ライフ・バランスへの取組にかかわるところと考えており、売上高というのはまさに定量的な、非常に判断のしやすい要素であるが、お客様の満足度や従業員の満足度というのは、例えば離職率などで計れるかもしれないが、どちらかというと、本当にその会社の雰囲気や、そもそもその会社がお客様とどのようにコミュニケーションがとれているか、あるいは従業員が本当に笑顔でいてくれているかというところもあると思っており、あえてこのような定性的な側面も残していいと考えている。
 取組始めて3年ぐらいが経ったところであるが、去年離職率でみると非常にいい結果が出始めており、70名ほどであると他の平均的なベンチャーの企業だと、おおむね15%から20%ぐらいの回転と言われているが、去年は退職者が2名であった。ベンチャーの企業としては、1つの指標として良い結果の数字でよかったと思う。株主や金融機関の方に対して、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいることを理解していただく上では、多少そういう数字も必要と思っている。
 14ページはワーク・ライフ・バランスの具体的な取組について。男性の育児休暇が2005年は4名出た。フランス人、マレーシア人、中国人、台湾人、それぞれ男性社員である。人によってパターンは様々で、完全に休む、ある程度休む、半日会社で働き半日在宅で働くなどのパターンがあった。また、在宅勤務というパターンもあった。
 そもそも、私どもがワーク・ライフ・バランスに対して取組を始めるというときに、自社だけでは情報収集ができないということ、経営者寄りのプログラムになってしまってはいけないということ、大企業と違って専任で当たれる人間がいるわけではなく情報収集の限度もあることから、幼児保育を行っているフローレンスという東京のNPO法人に加わっていただき、我々もコンサルティングを受け、社員のインタビューや社員からのヒアリングなど、全部そこでやっていただいている。例えば、四半期ごとに、社長が全部その社員に話を聞くなどのプログラムはあるが、話しにくい、上下の関係を意識するということがあってはいけない、そこを全部ストレートに聞きたいということで、NPOに入っていただいている。
 外国籍の従業員が多いということもあり、それぞれの家庭環境や、それから育児の仕方も、私たちが当たり前だと思っているパターンと、例えばヒンズーやイスラムの宗教など、普段、私たちとの接点が少ない人たちもいるので、そういう人たちのことを理解するという意味でも、NPO法人に入っていただいて非常に心強いと思っている。
 15ページは、私どもの育児支援に対する取組であるが、正直申し上げて大企業の育児支援の取組と比べ、項目数から言っても決して充実していると思っていない。むしろ、これは最初にできることからやっていこうと考えている。
 逆に言うと、中小企業、ベンチャー企業でワーク・ライフ・バランスに対しての取組ができないはずはなく、可能なことは1つや2つはあり、そこから取り組んでいくのが大切だと考えている。ITの会社としてITを活用した仕組みをまず優先的に入れていく、あるいは、組織の風土も多様なので、子どももミーティングやブリーフィングに参加して、連れてきて良いということにしている。これは、保育所の迎えの時間と重なってしまい、夕方のミーティングに出られない従業員もいるので、その場合、早く帰って子どもを迎えに行ってご飯をあげてから、また夕方、会社に30分か1時間寄って、一緒にミーティングに参加してくれれば一体感も高まる。
 16ページにあるように、情報を集めるためのブログのサイトも開設している。これは2年ぐらい前から私どものワーク・ライフ・バランスの取組や社員のインタビュー、経営者の本音といったものを掲載している。このブログはクララオンラインのサイトというような宣伝ではなく、会社とあまり接点がない形で開設しているが、非常にこれで興味深かったのは、去年の12月から1月ぐらい、高校生や高専生、大学生の方が論文を書いているようなときに、約780件の問い合わせをいただいた。非常に若い世代の方にワーク・ライフ・バランスという言葉自体がキーワードとして広がっていることを強く実感した。
 17ページは、NPO法人のフローレンスに定期的にとっていただいてるアンケートの一部を掲載している。ここでは、良い数字ではなく、「自分には関係ない」、「無駄だと思う」と言っている社員がいるということをあえて紹介したい。ここは、会社としてどのように理解してもらっていくかというところだと思っている。
 1つの原因は、「ワーク・ライフ・バランス」イコール「育児支援」だと思われてしまっているかもしれないという点である。特に、男性でまだ結婚も考えていないような社員にとってはむしろ熱心に働いている中で育児支援は必要ないと思っている社員も結構いる。特に、定性的なデータ以外のアンケートをみると、かなりそういう印象が強いと思っており、会社としても説明の仕方がまだまだ不足していると思っている。
 さらに18ページのワーク・ライフ・バランスの取組への評価として「悪い」または「とても悪い」としている従業員の数値をみると、会社の予算を育児支援に多く割かれることを懸念する従業員がいることがわかる。もっとも、ミドル世代や若い世代への資格取得を応援する取組は大企業で多くみられるケースであり、ベンチャーとして可能な範囲のことを最大限やろうと思っている。ヨーロッパなど一時帰国の費用が高い外国籍社員もいるので、一定期間勤めたら年に1回は渡航費用を全額支給することなども考えている。また、特にコンピュータを扱う業務が中心で体を動かしてそのストレスを発散するという職場ではないので、どのような取組が必要かも考えている。
 中小ベンチャーとしての課題と考えていることの1つは、ベンチャー企業として利益の追求をしなければならないところがあり、しかもよりスピードを要求されるという点である。ワーク・ライフ・バランスとのバランス、経営バランスが本当に成り立っているのか、収益の後送りをしてないだろうかというようなことを聞かれることもある。投資家や株主に対してどれ程その点をきちんと理解していただけるかということもあり、まさに何年かかけないと結果が出ないと思うが、非常に重要だと考えている。これから、ワーク・ライフ・バランスに取り組もうとする中小企業が増えてくるほど、目先の業績だけで周りの支援が得られないということもあるかもしれないので、その辺を何とかしていく必要があると思っている。
 ワーク・シェアリングに関しては、そもそも人数不足という点もあるが、ワーク・シェアリング自体に慣れていない方が中小企業の中には非常に多く、そこから規模を少しずつ拡大していく中で直面している問題であるが、この点も何とかしていく必要があると思っている。
 また、支援の継続性の問題であるが、これまでの3年の取組でも相当な力が必要であったが、さらに10年、20年という単位で続けることを考えると、本当に力を入れていかなければならない。中小ベンチャーの企業が長期的なスパンで取り組むことが可能になるためにはどうすれば良いか、何か仕組みがないのか、日々、考えながら改善を繰り返している。
 私は今25歳であるが、自分たちの世代は必ずグローバル化という側面と、いわゆる超高齢化・少子化という側面の両方を一緒に受けていくことになる。新しい企業の経営のスタイルというのはどういうものなのか、案ずるだけでなく自分たちでつくっていかなければならない役割もある。

○佐藤主査
 両立支援というものを子育て支援だけに限定すると、会社の中に定着していかないということであり、両立支援がうまくいくためにも両立支援の範囲を拡げるといったワーク・ライフ・バランスの取組が重要である、という説明であったかと思う。

○小堀小田急百貨店労働組合中央書記次長 資料3 説明資料(PDF形式:30KB)PDFを別ウィンドウで開きます
 説明資料は、私どもの組合員の方から制度について質問があったときに配布しているものであり、私が制度を利用したときの感想や組合員の意見などを中心に説明したい。
 私は、小学校3年生の男の子と5歳の男の子、2人の男の子の母親で、現在、子育てと仕事に奮闘中の毎日を過ごしている。私の現在の勤務時間は1日5時間の短時間勤務で通常よりも約2時間早く帰宅しており、毎日保育園と学童保育に息子を迎えに行っている。
 まず、弊社の産前・産後育児に関する制度について法定の基準を上回る制度を中心に紹介させていただく。まず、妊娠中に利用できる制度として「産前休職」「産前短時間勤務」がある。どちらも妊娠が確認されたときから産前休暇取得前日まで取得することができる。また、産前休暇についても、出産予定日の56日前から取得することができる。
出産後の制度としては、育児休職を取得できる期間が1子につき最長3年間認められている。
 復職後に利用できる制度では、看護休暇が1子につき年間10日間でき、育児短時間勤務は小学校入学後、その年の6月15日まで取得できる。
 続いて、本日のヒアリングのテーマである継続雇用環境整備について、組合員の声や私の体験を交えながらお話したい。
まず、妊娠中の母性健康管理措置については、先の説明のとおり産前休職と産前短時間勤務がある。産前休職については、この2年間に取得対象者の約7.4%に当たる2名が制度を取得している。私自身も、第2子を妊娠中に、体調不良のため約2カ月間、産前休職を取得した。この制度は、妊娠中の母胎を保護し、安全に出産できることを目的とし、取得期間中の賃金は支給されないが休職期間中の社会保険料本人負担分については会社の負担となっている。
 次に、産前短時間勤務については、この2年間に取得対象者の29.6%に当たる8名の従業員が取得している。この制度は、妊娠中の従業員が勤務時間の短縮を行うことで、安全に出産できる環境を保つことを目的としている。1月単位での取得が可能なので妊娠初期のつわりや通勤緩和措置への対応などにも柔軟に対応することができる。
 次に、育児休職制度について、取得者はこの2年間で対象となる女性の81.5%が取得している。男性の取得者は残念ながら今のところいない。育児休職の取得期間については、先の説明のとおり、1子につき3年間の取得が可能なので、いわゆる保育園入園への待機のために、やむを得ず退職をしてしまったり、保育園への入園時期を考えて逆算して出産するというようなこともない。
 現在の育児休職制度への拡充を求める声の例としては、子どもの怪我や病気などにより、長期間の看護が必要になった際はもちろんだが、それ以外にも子どもの発達段階における精神面での変化にフレキシブルに対応できるように、1子につき1回の育児休職ではなく、一定期間中に複数回取得できるように変えてほしいといった意見もある。こうしたことからも、育児と仕事を両立させるためには、夫や家族の協力、男性の育児休職取得の促進は不可欠と考えている。
男性が育児休職を取得しない理由としては、所得保障と職場の風土、そしてキャリア形成への不安などが挙げられる。
育児休業給付金については、段階的に給付率が見直されているが、現行の水準は必ずしも十分であるとは言えず、その水準の低さが男性の育児休職が増加しない要因の一つであり、またその背景には実質的な男女間の賃金格差の問題もあると思う。既に、私たちの業界の中では、男性の育児休職制度取得者の増加を目指し、育児休職期間のうち一定の期間を有給としたり、2週間程度の短い有給の育児休職制度を導入する企業も出てきている。
しかし、制度の導入だけでは男性の育児休職を増加させることはできないのではないか。もう1つの大きなハードルである職場の風土については、男性の育児参加に対する職場の意識改革を行う必要がある。まず、男性が育児期間であるということについて職場の全員が理解を示し、例えば子どもの看護のための休暇や早退が発生した場合のフォロー体制が明確になるといったような取組から始めていくことが大切であり、そうしたことの積み重ねによって土壌をつくり上げていくことが必要である。
また、育児休職取得者の復職をスムーズに行うためには、休職中の業務知識に対応したプログラムや会社情報の提供を行う取組が必要である。産業別労働組合の調査では、会社の対応にばらつきがあるものの、総じて社内報の配布や通信教育の資料送付にとどまっているのが現状で、十分な支援が行えていない状況である。
 続いて、育児休職を終えてからの短時間勤務制度について、現在、私も含め68名の女性が取得している。短時間勤務の取得についても、その他の制度と同様に、制度を取得することは自然なことであるという意識が企業全体に醸成されているので、多くの従業員が制度を利用し、仕事と子育ての両立を図っている。
制度取得者の声として最も多いのは制度取得期間の延長で、弊社でも平成17年3月にそれまでの1子3年から小学校就学前まで、そしてこの4月から小学校入学後の最初の6月15日までの取得が可能となった。これは小学校入学という非常に大きな環境の変化にさらされる子どもを親としてしっかり支えていきたいという要望が非常に大きいことから実現した。
多くの子どもたちは初めての小学校生活を期待と不安の中で迎える。さらに、働く親を持つ子どもは、学童保育での生活が加わり、心身ともに非常に緊張した日々を過ごすことになる。子どもは1年生になったからといって急に大人になり一人で留守番ができるようになるわけではない。実際に保育園時代の方が働きやすかったという声をよく耳にする。企業における両立支援策は、就学前の子どもを対象としていることが非常に多く、働く親にとっては子どもの小学校就学というのは喜びであるのと同時に、育児休職明けの復職に次ぐ大きな関門であり、新たな不安のスタートとなる。
こうしたことからも、育児を理由とした短時間勤務などの柔軟な働き方の選択は、せめて学童期までは必要であると考えるが、産業別労働組合の調査によると、取得期間を拡充することによる問題も一方で生じている。
1点目として、制度取得者が増加し、同一の職場に複数人の短時間勤務者が在籍するようになり、要員体制面で、職場への支援を求める声があがっている。短時間勤務者とフルタイム勤務者との間に余計なストレスが発生しないよう、業務運営の見直しや配置に工夫が必要であるが限界もある。職場の要員体制の維持がスムーズに行えるよう、代替要員に対する助成金の拡充策なども考える必要があると思う。
 2点目は、短時間勤務の期間が長くなることによって、仕事の範囲がどうしても限られてしまい、キャリアの継続的な形成が困難になるという点である。これについては、弊社でも昨年11月に従来の短時間勤務パターンよりも長い6時間、7時間コースを新設し、本人のキャリアや意向を尊重し、ライフステージや就労環境の変化に合わせた働き方の選択ができるような環境整備を行った。
これからは、短時間勤務取得期間中の働き方が、その後の職業生活においてマイナスとにならないような仕事の与え方や配置が必要であり、その際には本人と企業の間で十な意思疎通、確認を行わなければならないと思う。
 なお、加盟している産業別労働組合内の企業においては人材不足、経営者の価値観、過去に事例がないなどの理由から、制度はあるものの、その活用が十分になされていない状況があるようである。各種の制度利用を促進するために大切なのは、妊娠、出産、育児を特別扱いせず、自然で当たり前のことであるととらえる意識の醸成と制度の趣旨や内容に対する理解を深めることであると考えている。
 最後に、弊社には残念ながらない制度だが、出産、育児を理由に退職した方に対する再雇用制度を導入する企業が増えている。制度導入の前提としては、企業として退職者とのつながりを持ち続けることで、再雇用を希望する方が手を挙げやすいような雰囲気づくりを行うことが大切だと思う。そして制度を導入するに当たっては、年齢制限を設けないこと、採用時の雇用形態、働く時間については、それぞれの希望をできる限り反映できるようにすること、そしてその後のライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる仕組みにすることが必要であると考えている。

○佐藤主査
 両立支援制度をうまく活用するためには何が重要かについてお話しいただいた。最後に渥美委員から報告をお願いしたい。

○渥美委員 資料4 報告資料(PDF形式:384KB)PDFを別ウィンドウで開きます
 第一の論点は、両立支援策を利用促進するための方策だ。両立を進める上での課題について、企業にアンケートをとったところ、「代替要員の確保が難しい」、「社会通念上、男性が育児参加しにくい」、「日常的に労働時間が長い部門・事業所がある」、「職場で周りの人の業務量が増える」、「全社的に休暇取得率が低い」といった回答が多い。
 一方、従業員に聞くと、「利用を躊躇してしまう雰囲気がある」、「仕事を優先し、利用を望まない」という回答が多く、特に男性で多くなっている。
 企業は代替要員の問題、従業員は利用を躊躇してしまう雰囲気をあげているという違いがある。では、周囲はそんなに迷惑なのかというと、自分の利用は迷惑がかかると考える人が6割近くいる一方で、上司、同僚、部下が利用した場合になると、その割合は減って「どちらともいえない」が増える。こうしたことから、従業員自身の利用には遠慮があり、他の人の利用には曖昧さが影響しているのではないかと考えられる。
 両立先進企業にかつて変化した転機があったと回答した企業に対して、何がその契機になったのかを聞いたところ、「経営陣の意識の変化(トップダウン)」が最も多かった。ワーク・ライフ・バランスというと、ワークとライフの二者択一みたいに誤解をする経営者がいるが、これは間違っている。両立先進企業のトップが考えているのは、充実したライフを前提にワークの質を高めようという点である。先程、クララオンラインの家本社長から説明があったとおり、子育て従業員の支援のみならず、全社員の両立支援ということが重要である。そもそも育休をとれなければ看護休業もとれない、また、休めなければ、早く帰ることもできないため、子育てしている従業員の問題だけではなく、年配や独身の社員も含めた全社員の問題ということをトップが認識し、トップダウンで周知徹底することで遠慮と曖昧さを払拭することが重要である。
 一般の企業では、代替要員の確保の問題がトップにあげられるが、両立支援企業の経営者に聞くと、代替要員の確保よりも、従業員が休む、従業員が早く帰ることを前提として、どのように組織や業務体制を再構築するかということで人員の埋め合わせを図っている。男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門委員会の報告によると、育休の利用による職場への影響は、「仕事の進め方について職場内で見直すきっかけになった」が最も多い。
 こういう組織・業務体制の見直しによって両立もしやすくなり、企業の業績にもプラスになるという一石二鳥の効果があると私は考えている。そして、組織・業務体制の見直しの具体的な内容をみると、無駄な業務のカット、権限移譲の徹底があげられる。例えば、無駄な時間外労働を発生させない仕組みや「時間券」というものを発行することによって、従業員側に時間というものの大切さを認識させ、結果的に残業をさせないように工夫している企業もある。
 第二の論点は、育児休業制度利用に伴う3つのロスへの対応策である。
先程、麻田課長から説明があったとおり、両立支援は育休だけの問題ではないということに私も賛成である。年間に110万人の子どもが生まれているうち、育休をとっている人は12万人だ。母親の1割、両親合計の5%に過ぎない。ただし、育休の取得を重視する理由は3つあると考えている。
 まず、従業員ニーズが最も大きいのは育児休業制度の取得だ。弊社で実施した調査結果をみると、最もニーズが高くて、しかも利用されている。その一方で、利用したいけれども利用できない割合が高いのも育児休業である。
 2つ目は、男性の意識改革、周囲の意識改革には、とてもインパクトがある。私自身、育児休業を取ってみて、実感として価値観が大きく変わった。女性は、妊娠中から徐々に意識改革されるが、男性は子供を育てながら徐々に父親になっていく。また、最近の傾向で特徴的なのは、各社のエース社員と目されている人たちが育休を取っているということである。もともと、エース社員と言われている人は、あまり残業はしない、終業後は自己研鑽のため時間を使ったり、個人でリフレッシュして翌日に備えるという時間の使い方、価値観を持っている人が多い。そういう人がさっそうと働き、限られた時間でちゃんと仕事を終える、もしくは他の人の仕事までやって、定時に帰るようなことをやっていると、若い従業員は憧れる。だらだら残業をしている方にとっては、自分たちが能率が悪いのではないかということを背中で示されている気がするという意味で、周囲の意識がけにもつながる。
 3つ目は、私自身も実感したが、共働きの妻がこんなに大変なことをやってくれてたんだと妻への感謝の気持ちを実感し、夫婦の絆が強まる。以前、愛情曲線の調査というのをやったことがあるが、結婚して子どもが生まれると、妻の夫への愛情度は急に下がって、子どもへの愛情が上がるが、乳幼児期に夫が育児してくれたと考える女性はその愛情曲線がいったん落ちても徐々に上昇する。しかし、育児しない配偶者は、ずっと低いままである。こういう夫婦の絆が強まるという意味で、育休をとることは非常に重要なことである。
 育児休業に伴う3つのロスについて、どの従業員規模で見ても、所得ロスは大きい懸念がある。一方、キャリアロスは、大企業では非常に大きいが、中小企業では少ないという傾向がある。
 所得ロスへの対応策については、参考2の18ページ、「企業と従業員へのヒアリング調査結果」をご覧いただきたい。従業員の「経済的支援ニーズ」の強さに呼応して、最近、経済的支援に取り組む企業は多い。それ以外に、育児は時間と場所の制約があるという意味で、時間と場所のフレキシビリティに関する施策がある。さらに、地縁・血縁による育児のサポート体制、保育サービスが少ない地域では、こういうものを企業がサポートしているところもある。
「所得ロスへの対応策」として、現行制度では給付額の上限があるため、男性で所得が妻よりも多い人だと4割もらえない、実質3割という事例も少なくなく、夫育休取得と妻就労、夫就労と妻育休取得のケースで合計の所得を比較すると、男女の賃金格差の実態があるために、妻が育休をとる方が家計的には所得ロスが少なくてすむというインセンティブになっている。
 男性の育児休業取得率10%という目標は、意識改革としては非常にインパクトがあり必要なことだと思うが、本当にそれを実現するのであれば、父親だけが取得できるパパクォーターを導入し、パパクォーター分の所得保障を8割といった形にしないと、夫婦単位で考えた場合に、夫婦間の育休取得にたいして中立的にはならないのではないかと思う。男性従業員と女性従業員の差別をするのかという問題はあるが、年金が夫婦単位で設計されている部分があるように、育児休業の所得保障についても夫婦単位で考えることもできるのではないか。
 キャリアロスは、本当に難しい問題である。キャリアロスは官民格差が大きい。両立先進企業と言われているところでも全くキャリアロスがないという企業は10にも満たなかった。他方、スウェーデンの企業で特徴的であったのは、9割の企業はロスが発生しなくて、1割の企業は、同じ従業員が育休取得前に、例えばC評価だったら、育休を取ったらB評価、A評価という、上乗せ評価をする企業が1割あった。なぜこんな発想をするのかというと、子育てという社会的に意義のあることをするのだから、ボランティア休暇を評価するのと同じように評価する。もしくは、ワーキングマザーの方が言われるように、限られた期間内でやっていると、時間の管理能力が高まることが見込まれるから評価するということである。私は、時間当たりの生産性というものをもっときちんと把握できるようにすることや業務の標準化を図ることが、こういう育児休業取得によるメリットを見えやすくする一つの方策ではないかと考えている。
 昨年末、イギリスで両立先進企業と言われている企業30社にヒアリングしたが、イギリスのブリティッシュテレコムでは、従業員一人一人について役割分担、業務内容、仕事の質、達成速度などの評価基準を細かく規定したマニュアルをつくっていた。このため、従業員がどこで働こうが、何時間働こうが、そのアウトプットを公平に中立的に評価できるとのことである。例えば、3か月目の新入社員が在宅勤務を申請すれば許可されるそうなのだが、仮に家でさぼるようなことがあったら分かると断言していた。従業員をきちんと評価できるから、時間と場所にこだわらない柔軟な働き方ができるということである。
 業務知識ロスへの対応策としては、資生堂やワークライフバランス社の支援ソフトが非常に有効であるが、これに加え、育休が部分取得・分割取得という形でとれるようにするのが有効ではないかと考えている。スウェーデンでは、子どもが8歳まで分割取得できるため、非常に使いやすい。父親の育児休業取得率は8割と非常に高いが、実際にどういうパターンで取っているかというと、子どもが乳幼児期ではなくて、小学校低学年くらいに夏休みとつなげ、子どもと一緒に魚釣りに行くといったことをしている。
 先程、小堀次長から、小学校入学時にギャップがあって大変であるという話があったが、育休を分割・部分取得できるようにすれば、もっと使い勝手がよくなるのではないかと思う。
 企業の子育て支援の促進に向けて、4月から始まる企業内保育施設に対する税制優遇は本当に画期的な制度であると思っている。企業のニーズが最も高い「税制優遇」は7割の企業が望んでおり、次いで託児所・保育所の整備という順だ。さらに、企業内保育施設に加え、ベビーシッターや家事代行サービスというようなものまで拡げていく。フランスでは、実際にそのようなものを利用できるバウチャーを企業が発行した場合、その経費の4割程度を法人税から税控除できる。このように市場原理を働かせながら、保育サービスの供給を図るやり方も考えたらいい。
 コンサルティングというのは非常に重要な役割である。両立支援制度について全く同じ制度はない。共通する考え方や重なる部分はあるが、従業員規模や業種によって全く異なった最適バランスというのを各企業が模索している。このため、一律の見本というよりも、きめ細やかなアドバイスができるコンサルティングが重要ではないかと思う。
 近年、イギリスでワーク・ライフ・バランスは非常に進んでいるが、そういう行政の政策もさることながら、民間レベルで従業員評価を入れた企業ランキングというのが流行っており、それが大きな促進要因になっているのではないかと思う。日本における企業評価、ファミリーフレンドリー表彰、民間レベルでもそういう仕組みはあるが、いずれも企業の回答で評価している。両立支援に関する企業アンケート調査でトップランクに位置した企業の従業員と名乗る方からメールをいただき、「そんなに褒められても、実態はそんな利用者数がない、だから経営者の方が安心してしまうと困るから、もっと課題を言ってほしい」といったことを言われたことがある。そういう従業員の声を反映するものとして、イギリスの従業員評価をもとにした企業ランキング制度は有効ではないかと思う。
 サンデータイムス社やフィナンシャルタイムスのようなメディアが中立的な機関に委託して、有識者委員会のようなところで企業がプレゼンテーションをして、専門家との質疑応答がある。同じことを日本で実施すれば、「会社は育児休業取得率が高いと言っているけれども、就業継続率は何%なんですか」と質問をする。例えば就業継続率1割ということであれば、平均3割なのに1割しか残っておらず、その中で育休取得率は90%であっても両立しやすい環境とは言えない。イギリスの従業員アンケートについては、企業が従業員名簿を利用して、直接民間シンクタンクから従業員に直接協力依頼をし、それを集計する。全体のポイントの7割は従業員評価を反映している。また、基本的には子どもの有無や年齢とは関係なしに無作為抽出で従業員名簿からアンケートの対象は選ばれるため、すべての従業員にとって働きやすい企業ということになる。ランクインすると、それまで募集に数十万ポンドかかっていたのがゼロになり、何もしなくても優秀な人たちが集まってくるため、企業としてはメリットが大きい。
 先程、就業継続率の話があったが、企業ではデータを捕捉しにくいと思う。大半の企業では、自己都合、会社都合という区分しかないため、なかなか捕捉できないという点に加え、そもそも辞めて、両立しやすい企業に転職したいという従業員ニーズというのもある。両立できるかという観点で就職先を選定しなかった人も少なくないため、当事者になったときに、両立しにくい会社には見切りをつけて別の企業に移るという流動性があればいいのではないか。
 実際、こういう従業員評価で高いランキングの企業は、新卒だけではなくて、再就職とか転職組で優秀な人たちが多く集まってきており、人材戦略上、非常にメリットが大きい。企業に育休取得率以外のものを聞く意味もあるとは思うが、それよりも実際働いている人の評価というのは有効ではないかと思う。

○佐藤主査
 それでは、質疑に移らせていただく。質問やご意見をすべて出していただいてから、まとめてお答えいただくということでお願いしたい。

○藤本委員
 いわゆるワーク・ライフ・バランスをうまくやっている先進的な企業というのは、女性社員の割合が高いのか。

○大矢委員
 クララオンラインの家本社長にお伺いしたいが、5名が育児休業を取得したとのことだが、どういった形で対応されたのか、また、取得者は代替できるような業務を担当していたのか。
 小田急の小堀次長にお伺いしたいが、短時間勤務について、5時間、6時間、7時間という形で区分けされているが、その方たちの処遇や評価はどのようにされているのか。

○案田委員
 家本社長にお伺いしたいが、ワーク・ライフ・バランス全体を進めるということと子育ての独自支援ということで、社員の納得性のとり方という部分でどういうポイントがあるのか。
 それから、在宅勤務について、障害になるようなこともなくスムーズにできているのか。
 また、渥美委員にお伺いしたいが、育児休業の分割取得とや部分取得という点について、それを進めていくためには何か重要なポイントがあるか。

○大日向委員
 渥美委員と小堀次長にお伺いしたい。
 キャリアロスの対応に関して、業種、従業員規模、従業員タイプ別によって、影響はいろいろ違うと思う。スウェーデンで9割の企業でキャリアロスが発生しないとの説明があったが、業種別でもう少し細かく見ることはできるのか。
 また、小田急百貨店は女性の多い職場だと思うが、その場合も業種、従業員タイプによって育休をとった場合の効果に関し、何か評価のようなものはしているのか。

○佐藤主査
 キャリアロスについて、いろんな情報提供により、育児休業取得のロスを少なくするというのもあると思うが、キャリアロスという考え方自体について、仕事を続けた人がベストでそれと比較して何かロスがあるというのは、その背後に育児休業も介護休暇もとらないで続けるのがベストであるという発想がある気がする。そういう発想をなくすことが重要で、職業生活の間にいろんな形で男性も女性も仕事以外のものに比重を移すときがあることが当たり前と考えると、ロスであるという考え方はなくなるのではないかと思う。

○奥山委員
 保育園や学童保育を利用するときには、従業員が住んでいる地域の子育て支援メニューや保育サービス、学童の問題が出てくると思うが、企業はどのように対応しているのか、企業の視点から地域行政に対する要望があれば教えていただきたい。

○前田委員
 小堀次長にお伺いしたいのは、5時間勤務、6時間勤務、7時間勤務という複雑なパターンをどのように管理されているかという点である。サービス業においては、特に子育て中の女性が最も働きにくい時間である夕食時や早朝にサービスへのニーズが高い。しかし、子育て中の人はその勤務時間を避けたい。サービス業として、その時間は最も客が多くて、従業員のニーズとどのようににバランスをとっているのか。子育て中ではない社員にその分負担がかかると思うが、職場の公平感はどのように図っているのか。

○家本(株)クララオンライン代表取締役社長
 まず、社員の男女比率は、女性4割、男性6割となっている。
 育休取得者が出たときに実際にどのように対応したかであるが、2人がエンジニア、2人がビジネスのコントローラーで海外の事業を統括している社員であった。
 エンジニアについては、ある程度チームで動いており、24時間でサーバーのメンテナンスをするということもあって、専門性の高い職種ではあるものの、事前にわかることでもあるので、何か月も前からシフトの調整をし、ほかの場所から人を移したりということをした。
 ビジネスのコントローラーについては、チャレンジ人事をやって、下から3か月間なり限定でそこのポストを体験をさせてみるということをやった。そのポストの印鑑を押す人間がきちんといるようにということと下の人間にチャレンジさせるということの両方を試しでやってみた。
 納得性については、私も1歳3か月になる子どもを育てており、社長が取れなければ社員も取れないという話になってはいけないと思った。社長の育児休業という制度はもともとないが、逆に言うと制度を使わないため、みんなと違って、ある意味不公平かもしれないが、必要なときに自分でスケジュールを調整できるため、育児休業を取って、それを社内にフィードバックする。自分は、それまで子育てに関してあまり熱も上がらず、どんなものなのか分からなかったため、なかなかうまく社内にも伝えきれなかったが、自分がそれまで子育てに接点がなかったところに、子育てが新たに自分の生活に入ってきたことを、会社の中にフィードバックするようにして、実際に子どもを持ったらこうだったということをかなり強烈にアピールするような形で返してる。
 在宅でうまくいってるかどうかに関しては、常にパソコンの前で拘束するということはしていない。必要なときは、時間を決めて、あらかじめこの時間にパソコンの前にいて電話会議をするという形でやっている。本人たちは必要なときにパソコンで資料をつくったりメールを書いたりという感じで、決まった時間に電話をするという対応をしている。

○小堀小田急百貨店労働組合中央書記次長
 まず、短時間勤務の処遇や評価に関しては、基本的に休職明けで、ほとんどの方が短時間勤務をとる。もともとの職場にいたところに現職復帰するというのが大前提になっている。
 賃金、臨時賃金については、時間に応じて支給されるようになっており、退職金の加算も時間に応じて配慮されるようになっている。
 評価に関しては、一番難しいところであるが、考え方としては、普通の社員、一般にフルで働いている社員と同じであり、時間に応じて評価をするということではなく、その時間で何をやったかということを評価しなさいというのを、会社側から年に2度、評価者に対して通達をしている。ただし、実際、一人一人の現状をみると、少しグレーゾーンにかかるような部分もあると思う。
 キャリアロスへの対応については、個人の選択の問題もあると思う。子どもを生んでもキャリアをどんどん積んでいきたいと考える人もいれば、子どもに軸を置いて家庭生活を大事にしたいという人もいると思うので、一概にキャリアロスがいけないということではないと思う。一番大事なのは、本人の意思の確認を企業がきちんとやること、自分がキャリアを積んでいきたいというのであればこういう働き方があるという仕事の与え方をきちんとしていくというのが大切ではないかと思う。
 地域の子育てメニューの対応については、残念ながら、企業はなかなかそこまでまだ目が向いていない。実際、人事担当者と話をしても、例えば、地域の学童保育の現状についてほとんど知らないような人も多い。組合という立場でもあるので、私自身体感していることをきちんと企業側にも答えていかなければならないと思っている。
 労務管理については、非常に複雑になっている。今まで4時間、5時間勤務という短いのがあったが、もっと働きたいという女性の声も多かったため、昨年11月、パターンを増やし、6時間、7時間というパターンを追加した。現在、7時間をとっている者は3名、6時間が約30名である。まだ始まったばかりで大きな混乱は起きてないが、今後いろいろな問題が出てくることが予測される。
 実際にフルタイムで働いている人と短時間勤務者、短時間勤務の正社員とパートタイマーとの間の問題については非常に大きく、軋轢も起きている。ただし、一般のフルタイムで働いている社員からは、そういう否定的な見方もあるが、若い世代の社員は、自分がとるときの将来につながるため、ぜひ頑張ってほしいという意見も多い。今とってる人間がどうやって次につなげていくか、私たちの働き方が次につながるという強い意思を持って頑張っていくことが大切ではないかと思っている。

○渥美委員
 育児休業の分割取得・部分取得については、現行制度では1回のみで連続した期間となっている。そこを変えればできるようになる。
 社員の公平性については、独身者と子育て従業員とのバランスは、先程小堀次長からの説明にあったように、いずれ利用する可能性があるためお互い様というロジックで説得するパターンが多い。先ほど申し上げたとおり、子育て従業員の支援のみならず、全社員の両立支援ということが重要である。そもそも育休をとれなければ看護休業もとれない、また、休めなければ、早く帰ることもできないため、子育てしている従業員の問題だけではなく、年配や独身の社員も含めた全社員の問題ということである。
次に、年齢逆差別ではないかという点は大きな論点である。ある企業は、もともと薄く広く家族手当を給付していたものを切りかえ、一時金として若い従業員に支給するという方法をとるので、2年間くらい喧々諤々の議論があったと聞いている。そのときには、もともと年齢による賃金格差が大きいという問題を是正するというロジックで説得した。すなわち、子育て世代である若い従業員は経済的に厳しい時期が続いたために賃金が伸び悩んだ一方で、中高年世代の従業員は高水準の賃金で高どまりしていた。その部分をマクロレベルで調整するのが、子育て従業員への一時金給付であるという論法が有効であろう。
 9割の企業でキャリアロスがないスウェーデンで、職種による違いを調べたところ、たしかに全く育児休業をとっていない職種もあった。スカンジナビア航空にヒアリングをした際に、パイロット組合の組合員である男性が3年前に1人男性でとったら、組合に激震が走ったというエピソードを聞いた。したがって、職種別データというのは非常に有効だと思う。
 キャリアロスという考え方自体が違うのではないかという点については本当にそのとおりで従業員ニーズというのはそもそも多様性があり、しかも、子どもの加齢に応じてニーズは変わっていく。したがって、もう一回キャリアを取り戻したいと思ったとき、リカバリーできない点が問題である。ある企業では、キャリア・リカバリー制度というのをとっている。飛び級みたいなイメージであるが、ロスしても、その後、もう一回頑張れば、他の人よりもスピードをつけて上がれるようにしてキャッチアップするという方法だが、この他にも工夫の余地はあるのではないかと思う。従業員ニーズをきめ細やかに吸い上げて制度を組んでいくと、いろいろ面白い仕組みができると思う。
 短時間勤務の労務管理は、本当に複雑になるという話は聞いた。イギリスで第一位のワーク・ライフ・バランス企業とランキングされているのはKing's College Hospitalだった。病院は昼夜にかかわらずサービスを提供するので、ワーク・ライフ・バランスしにくいとされる職種の典型であるのに、なぜワーク・ライフ・バランス第一にランキングされているのかと思ったら、夕方以降勤めたくない従業員と夕方以降勤めたい看護師を組み合わせて、上手にローテーションを組むやり方をしている。これにより労務管理は複雑になるが、両方とも是非そういうローテーションを組みたい人たちであるため、現場が知恵を出し合って、うまくいくような方策を自分たちで考え、それを吸い上げて円滑なシステムを構築した。システムが完成するとビジネスにもなると言っていた。ある企業では、そういう複雑な人事労務管理を円滑に運営するシステムを売って、むしろ儲かっていると言っていた。

○佐藤主査
 渥美委員の報告にあったように、両立支援の制度がうまく使えるようになるためには、仕事の仕方、業務管理の仕方を変えていかなければいけない。
 これからは会社の中で社員がある期間休業をとるとか、ある期間短時間勤務になるとか、ある期間は残業はしないとかという、いろんな仕事の時間配分の仕方が一人一人違ってくる。そういう社員が仕事もできて会社に貢献してもらうという仕組みを作らないともうだめだという時代であると思う。そういう方向に仕事の仕方を変えないと人材活用ができない時代になってきている。
 また、それは無駄な仕事の仕方を見直すことにもなるし、社員一人一人が効率的に仕事に取り組むという意識に変えていくことになる。
 また、藤本委員から質問のあった、両立支援をやっているところが女性比率が多いかどうかは、そういうものを調べたレポートを書いているので、次回説明したい。

○藤本委員
 なぜそういう質問をしたかというと、職種や社員の性別、年齢など、いろんなことによって、ニーズも違えば、そこでとられる対策も違うと思ったからである。したがって、一概にこういうものがいいということはできないと思う。評価するときの基準を何にするか、評価の方法をどうするかということも含めて大事な点だと思う。
 病院の場合、医師の半分は女性である。看護師はほとんど女性で男性の看護師は2人しかいないため、90%は女性である。夜勤があるが、それを望む人はいないため、義務感でみんなやってる。その中でどうやって公平性を保つかとかいうのは、非常に大きな要素となっている。

○佐藤主査
 渥美委員から個々の企業から継続就業のデータをとるのは非常に難しいという話があったが、個々の企業ではそこで働いている人の勤め方について希望が違う、あるいは男女比率も違ったりライフステージも違うため、継続就業率は違ってくる。
 それぞれの企業で働きたい人が働けるような努力をしていただく必要があるが、それを積み上げたとき、日本社会全体として、この20年間、継続就業する女性が3割で動いていない。これを上げていくことを目標としたとき、国全体としての政策目標をどう立てるかということと個別企業が一律同じ数字でなければいけないということはないと思う。

○麻田厚生労働省職業家庭両立課長
 継続就業率は個人調査をしないととれないデータであると思う。私が申し上げたのはマクロの話である。

○前田委員
 横浜市では、24時間保育、夜間保育を実施しているが、サービス業の方から土日保育や深夜保育の要望が高い。土日保育や24時間保育というのは、非常に社会コストもかかるし、親子の生活時間、子どもの生活時間を考えると、迷いながらやっているのが事実である。しかし、実情として、サービス業は、デパートも夜遅くまでやっているし、土日もやっている。
 実際のところ皆さんのニーズはどうなのか。本当に土日の保育も欲しいと思うのか。子育て中の人は土日も働かなくてもいいようにする方がいいのか。しかし、女性が多い職場で子育て中の人の仕事を軽くすると、同じように病院でも、保育の現場でも同じことが起こる。独身の人や夜働ける人に非常に負担がかかるから、その人達にはますます出会いの機会がなくなる。この点、小堀次長にお伺いしたい。

○小堀小田急百貨店労働組合中央書記次長
 デパートは1月2日から営業しているため、私も実際に子どもを2日から預けたこともある。1月2日に子どもを預かってくれるところが非常に少なく、預け先を探すのに苦労した。また、預かってくれるところがあったとしても、非常に利用料が高い。それから、夜に関しても、例えば、小学校就学後の6月15日まで育休がとれることを紹介したが、その後はとれない。実際どうするかというと、学童保育に行って、そこから、10時半までやっている民間の保育園にもう一度預けるといった二重保育の状況もある。これは個人的にはあまりいいことではないと思う。例えば、短時間勤務をもう少し長くとれるようにする、日曜日もできれば子どもと過ごせるように優先的に休みをとれるようにするということが大事だと思う。しかしながら、一遍になかなか進むことはできない。やはり、会社をやめざるを得ないという状況を回避するため、何らかのセーフティネットが必要である。会社をやめるという選択しかないというのは非常に辛いため、そこまでやっても私は働き続けるという人に対する、預け先、窓口のようなものが必要ではないかと思う。

○佐藤主査
 土日や夜間のニーズがあるから保育サービスを充実するという議論もあるわけだが、そもそも働き方がおかしいのではないか。残業をそんなにしなくてもいいのではないかということも考えなければいけない。
 土日は、また別の難しい問題がある。土日働くというのも、非社会的な労働と考えるかどうかというところにもかなりかかわるが、消費者の考え方も変わっていかないと、土日、どこへ行ってもサービスが受けられるような社会が望ましいと考えるかということにも結びついてくる。

○大矢委員
 仕事を構造的に変えて労働時間が短くなるところもあれば、土日に仕事をしなくてはいけない業種がある。そういうところの受皿は必要であり、多様な働き方を実現するという意味で土日にサービスがあった方がいいと思う。資生堂も店頭要員が多くいるが、土日のサービスに対するニーズは非常に高い。

○藤本委員
 いろんなサービスを行政サービスで求めるかどうかの問題と思う。病院の場合、24時間、365日動いており、夜もなければ正月もない。保育所が年末年始開いているところはないため、院内保育が必要になるが、従業員が喜ぶかというと決してそうではない。自分の子どもは一番その地域ですばらしいと言われる保育所で預けたいというニーズがある。しかし、認可保育所になっているため、夜間はできないし、日曜日とか限られたときしかやれない。それを補完するために院内に託児施設をまたつくってやってる。それはもう企業側で努力しなくてはいけないことで、そこまで公的サービスを求める必要はない。公的サービスで日曜日にわずかな人のためにすることを考えなければならないというのがおかしいと個人的には思う。

○奥山委員
 フランス、スウェーデンと日本のワーク・ライフ・バランスの基盤の比較で、日本はどういう方向性を目指していくのかという話があった。スウェーデンでは、ゼロ歳児は基本的に休み、2歳児ぐらいから保育園などを利用してみんなが働けるような環境をつくるという意図が非常に見える。一方、フランスは、個々の働き方に合わせて保育サービスを非常に拡充する。しかも、公的なものだけでなく、企業もかなり出資し、個々のサービスに対し多様にやっている。日本はどちらを目指すべきかという方向性を議論していくことが重要であると考えている。
 私自身は、できればスウェーデン型がよいと思う。ゼロ歳のときに、父親も母親もある程度子どもと一緒に1年休んで、そこの時間を守っていくことがとても大事である。それがあって、2歳ぐらいから働きたいという方には多様なサービスができてくる。0歳、1歳の保育というのはかなりお金もかかるし、そういうことを考えると、家庭にとっても一緒にいることはとても大事だと思う。

○渥美委員
 ある会社の取組であるが、女性店長の多くが20代で今後その人たちが育児期になったときに辞めてしまうと困るということで、いくつかの店舗で、店長が土日に強制的に休みを取り、それでも仕事が成り立つよう、業務の標準化、明確化してマニュアル化ということを実験している。
 実際やってみたら、店長がいなくても何とかやれるし、上司がいない期間、部下が成長するというメリットもあったということで、将来の布石として、全店舗にそういうことを進めているということである。
 また、不動産業界の話を聞いたところ、営業の8割が女性であると言っていた。土日に営業を受けるわけだが、営業トークは全体的に女性が担っている。そういう業種の話を聞くと、民間でやってる企業の知恵を集めるということ、保育サービス、サポート体制という点でやれるところはあると思う。土日に成り立たないサービスでもできるのではないかと思う。

○藤本委員
 主眼に置いてもらいたいことは、特に働き方ということを考えたとき、働く人のみの視点ではなく、子育て、つまり子どもという視点で考えて、子ども中心の生活をしたときに、親の働き方がよりその人の生活に合ったようにするという方向性を軸にしてほしい。親の働きたいニーズも分かるが、子どもを育てるためには、どういう環境が子どもにとってベストなのか、子ども中心に考えるべきである。したがって、日曜日とか、子どもが小さいうちは親がいるべきで、その親が家にいられる状況をつくるための働きやすい環境をつくるという方向で議論を進めていただきたい。

○佐藤主査
 ひとり親の子どももいるが、カップルで育てているということを基軸に置けば、2人とも土日に仕事がある人はそんなに多くいない。したがって、女性だけではなく男性もワーク・ライフ・バランスを進めていくことが非常に大事である。
 保育の様々なニーズは、土日や深夜のニーズがあるのは事実だが、今後、もっと少なくなるのではないかと思う。労働時間を短縮するとか無駄な残業をなくすことをしながら、父親も子育てにかかわるということで相当変わってくると思う。

○案田委員
 資料1で、麻田課長から指摘のあった指標の見方は、非常に重要な視点であると思う。今後議論する中で、子育てと働き方に影響を与える原因となっている指標、両立ができるような状況を把握するための指標をどのように色分けし、関連して見ていくかということが重要である。

○佐藤主査
 点検・評価について、これまでの施策もあるが、これからの施策を見るときにどういう評価のポイントを考えるべきかという点で、本日重要な意見をいただいたので、それを整理していきたい。

○大日向委員
 私も、麻田課長から説明のあった通り、育休だけがワーク・ライフ・バランスではなく、就業継続が非常に重要であると思う。就業継続をどのようにしたら高めることができるかというファクターを探していくのがこの分科会の役割であると思う。
 先程、子どもの視点に立って親の働き方を考えるという意見が出たが、一方で母親が家にいることだけが子どものためになるとは限らないというデータもある。つまり、2歳ぐらいまでの子どもを持つ専業主婦の母親の育児不安や育児ストレスが最も強い。そういうことを考えると、どういう形で家にいるか、家にいても職場と寸断されないような働き方の工夫など、多様な働き方への支援を考えていく必要がある。子どもの最善の利益はとても大切だが、同時に母親のメンタルケアとのバランスは大事に議論していきたい。

5.閉会