医師確保に向けた都道府県における新しい取組例

<北海道>

■北海道版地域枠の検討

○道内の医師偏在の実態を踏まえ、単に都道府県単位での地元定着に止まらず、地域での医療を志す学生を入学者選抜段階から発掘するため、地域重視の視点を持つ地域枠推薦入試の実施に向けて、一定期間地域勤務を条件とする奨学金との連動や、特定地域の出身者を対象とするかなどについて、医療対策協議会において、道内三医育大学をはじめとする関係機関と協議・検討中。

■産科拠点づくりの先行例

○滝川市、砂川市、美唄(びばい)市の三つの市立病院では、産科医が1~2人ずつ配置され、それぞれ分娩を実施していたが、平成16年10月から、対象人口約15万人のこの中空知(なかそらち)地域においては、砂川市立病院に産科医4人を集約し、出産、入院治療、時間外救急対応、研修や高度な医療の実施など、医療機能を充実。これまで札幌市や旭川市まで行かなくてはできなかった1,800g未満の未熟児の診療が可能になる(妊娠28週1,020gの未熟児の診療実績)とともに、産科勤務医の労働条件も改善。他の2病院では、砂川市立病院からの派遣医師による外来診療を実施。

<青森県>

■地元大学医局の地域派遣を補完する取組

○地方公共団体として全国初の無料職業紹介所となる「あおもり地域医療・医師支援機構」を設置・運営。青森県内で勤務する希望をもつ医師の方々が安心して勤務できるよう、適切な自治体医療機関を紹介し、勤務や異動の調整を行う。

■若手医師などにアピールできる魅力の創出

○青森県をへき地医療を含むプライマリケア教育・研修の全国的なメッカにすべく、青森県内のへき地診療所での学部実習・臨床研修を奨励。へき地のない大阪市立大の医学部生・卒業生の参加実績。

○海外の医育・医療機関との臨床教育の事業提携を検討中。

<岩手県>

■医師確保対策室の設置・初成果

○即戦力となる医師の招聘を機動的に行うため、平成18年9月に、保健福祉部、医療局の共管組織として同対策室を発足。8人中6人が専任。平成19年2月1日までに、県外の6人の医師について、県立病院などで勤務することが内定。

○医師確保対策室では平成18年12月1日から「ドクターバンク」の募集も併せて実施。「ドクターバンク」は年間5人の医師登録を目指す。ドクターバンク医師は県職員として3年間採用し、県内自治体医療機関に2年間勤務後、3年目は国内外での研修を可能とするもの。

■女性医師就業支援事業スタート

○女性医師が仕事と育児を両立できる環境を整備することを目的として、女性医師の就業形態に合わせて保育にあたる者を確保する「育児支援」と育児等により離職した女性医師が安心して復帰できるよう研修等を行う「職場復帰支援」を事業化。県医師会を窓口に、平成19年1月以降、数名と育児内容や研修内容等について調整中であり、順次支援を開始する。

<宮城県>

■寄附講座「地域医療システム講座」の設置

○医療機関のネットワークに関する研究を行い、その成果を県の医師確保対策に還元し、効率的な医師配置に結びつけるべく、県からの寄附により、東北大学大学院医学系研究科に講座を設置。

<秋田県>

■県立の総合病院が存在しないことを補う取組

○秋田大学の後期研修における医師のプール作りを支援し、派遣力を高めてもらうため、県と13の臨床研修病院が組織する臨床研修協議会では、2年の臨床研修に引き続き、県内で後期研修を受けられるよう、秋田大学医学部附属病院と市中病院との連携づくりを進めており、一部診療科においては既に実現に向けた取組が行われている。

○医師の県内定着率を高めるため、平成19年度より、自治医科大学卒業医師や公募による医師を県職員として採用し、厚生連病院を含む公的病院に派遣する制度を創設することとしている。

<山形県>

■特定診療科勤務を希望する医学部生を対象とする奨学金

○山形県が年額100万円貸与し(5人程度。県外出身者も応募可)、貸与期間の1.5倍(7年に満たない場合は7年)の期間、山形県内の公的な医療機関の特定診療科(小児科、産婦人科、放射線科、麻酔科)で診療に従事すること(うち、臨床研修後の山形大学医学部附属病院での期間は3年を超えないこと)を条件に返還免除。

(参考)特定診療科型奨学金の導入県(6県)

  • 山形県:小児科、産婦人科、放射線科、麻酔科
  • 富山県:小児科、産科、麻酔科
  • 三重県:小児科、産婦人科
  • 兵庫県:小児科、産婦人科、放射線科、麻酔科、病理、救急
  • 佐賀県:小児科、産科
  • 宮崎県:小児科、麻酔科、救命救急科

<福島県>

■県立医科大の助手枠拡充による県派遣医師の確保

○平成18年度から、福島県立医科大に新たに33人の医師(助手)を配置し、支援要請のあった福島県内の公的病院へ非常勤による派遣。退職不補充の病院に対して優先的に派遣。

<千葉県>

■千葉県型修学資金貸与制度(20年度入学者から予定)
"千葉大並みの学費(6年間で総額約350万円)で都内の私大医学部へ"

○千葉県は、県内に附属病院を有する都内の医科大学に負担金を支払い、大学側は、卒後千葉県内の自治体病院で勤務を希望する、医学部入学者に修学資金(在学中一人当たり最大3,200万円)を貸与。9年(小児科、産科なら7年)の勤務で返還免除。

■後期研修医に対する研修資金の貸与(19年度から実施予定)

○月20万円。内科、小児科等診療科限定。後期研修後、知事の指定する千葉県内の自治体病院で、貸与期間と同期間勤務すれば返還免除。

■県が主導するNPO法人が医師派遣調整

○千葉県と県内の医療機関が連携して設立する予定のNPO法人(千葉医師研修支援ネットワーク(仮称))が、複数の医療機関が協力した研修プログラムなど多様な情報を元化して提供し、医師の能力や志向に合わせて適切な医療機関に医師を紹介・配置することで、専門医の取得など医師のキャリアデザインを支援。

<新潟県>

■県立高校に「医歯薬」コース新設(19年度から実施予定)

○県内から医学部への進学者が少ない現状にかんがみ、体験学習を通じた倫理観や使命感の醸成を含め、カリキュラム編成に配慮し、医師を目指す県内高校生の学力・資質の向上を目指す。

<富山県>

■県立病院を拠点に後期研修医中心の医師のプール制を構築

○富山県立中央病院で後期研修医を確保し、育て、専門医の取得などキャリアパスにも配慮しつつ、県内の他の公的病院へも医師を派遣できる体制を構築予定。

<静岡県>

■研修助成で人材確保(19年度から実施予定)

○県内の公的病院に一定期間勤務することを条件として、国内外の病院や研究機関で高度な研修(3か月~1年)を受ける医師を対象に、研修費用の2分の1、最大400万円を助成。地域医療の環境と水準の向上とともに、病院の魅力を向上させ、県外からの人材確保を図る。

■県立病院から医師不足の公的病院へ緊急措置として医師派遣

○静岡県立総合病院及び県立こども病院において、常勤医師を増員・確保した上で診療科内で調整し、ローテーションで診療科の維持が困難となっている公的病院に派遣する(県立総合病院では引き続き募集中だが、県立こども病院では2人採用済み)。まずは平成19年2月から3月末まで、県立こども病院から小児科の維持が困難となっている袋井市民病院に、医師を週3日(水、木、金)派遣中。

<三重県>

■招聘奨励金

○三重県尾鷲市では、尾鷲総合病院に5年以上の勤務が見込まれる産婦人科医に対して、500万円を上限に奨励金(補助金)を支給。

<滋賀県>

■産婦人科医に2種類の特殊勤務手当支給

○滋賀県長浜市では、平日は産婦人科医2人で対応している市立長浜病院(分娩実績年間約350件)の体制強化のため、条例を改正し、平成19年1月から、産婦人科医に対し、1日5千円、さらに分娩1件当たり3千円の、2種類の特殊勤務手当を支給開始(条例上は、それぞれの支給上限1万円、5千円)。

(参考)分娩手当の導入例

  • 埼玉県蕨(わらび)市立病院(4人体制):夜間分娩1万5千円
  • 神奈川県小田原市立病院(5人体制):分娩1万円

■医師不足解消へ県が基金創設

○滋賀県は、医師確保のための基金を創設する条例案と、積立金を盛り込んだ補正予算案を県議会へ提出予定。基金の規模は3億円の予定。具体的な活用策は今後検討。

<京都府>

■京都府立医大に「助手」ポスト等新設(19年度から実施予定)

○北部を中心とする医師確保困難地域の病院への派遣を前提に、助手ポストを10人増やすほか、府立医大附属病院に20人の「病院助手」も創設。地域で指導医として若手医師の育成や医療レベルの向上に貢献した医師が、一定期間後には大学の研究に戻れる仕組みを整備することで、専門医資格を取得した中堅医師の確保を図る。

○臨床研修医等が増えている主要病院から、医師確保困難地域の病院に指導医や若手医師を派遣し、若手医師を育成するシステムの構築も図る。

<大阪府>

■一次救急と二次救急の役割分担

○対象人口約100万人の豊能(とよの)二次医療圏においては、箕面(みのお)市、池田市、豊中市、吹田(すいた)市の四つの市立病院などが、それぞれ24時間365日の小児救急診療を実施していたが、平成16年度から、箕面市に、入院機能はなく、軽症を含む一次救急患者を診察する「豊能広域こども急病センター」を設置し、大学や国立病院からの派遣医師のほか、地元の開業医も交代で出務。これに伴い、各市立病院等への一次救急患者は半分以上減少し、小児科勤務医の労働条件も改善。

<兵庫県>

■研修医師の県採用による医師確保(18年度から実施予定)

○臨床研修修了医師を県職員として採用し、小児科医、産科医、麻酔科医、救急医、総合診療医の養成コースを設け、各コース5人(計25人)に4年間の後期研修を行う中で、2・3年目には県が指定する地域の医療機関に派遣することにより、県内各堪域における医師の確保を図る。希望者は、4年目には、海外や国内の高度医療実施病院での研修に参加可。

■県医師会と連携したドクターバンク支援の展開

○兵庫県医師会では、本年1月1日有料職業紹介事業の許可を得て、兵庫県医師会ドクターバンクを開設した。
兵庫県医師会では、県下約11,000人の全ての医師に対して、意向調査を実施。4,000人以上の回答を得て、現在、詳細な意向調査を展開中である。
県ではこの事業の支援をめざし、(1)郡市医師会活動支援、(2)医療過疎地等医療機関見学ツアー、(3)医療過疎地等医療機関診療体験プログラム、(4)医師技術研修、(5)医師職による都市部及び医療過疎地でのマッチング調整及び相談調整窓口設置、(6)キャリアアップ支援研修事業などの支援事業を展開することとしており、他府県に見られない、医師会との共同事業としてドクターバンク事業を展開することとしている。

<鳥取県>

■地域枠と連動させた奨学金

○鳥取大学医学部が実施する地域枠推薦による入学者(5人以内)に対し、鳥取県が月額12万円を貸与し、初期臨床研修終了後、貸与期間の1.5倍の期間内に、貸与期間と同期間、知事が定める医療機関において医療に従事することを条件に返還免除。

(参考)地域枠連動型奨学金の導入県(5県)

岩手県、秋田県、鳥取県、島根県、鹿児島県

<島根県>

■島根県版地域枠

○島根大学医学部が実施する特別な地域枠推薦(注)による入学者(10人以内)を対象に、県が奨学金を貸与。一定条件の下、返還免除。

(注)
島根県内のへき地で生まれ育った者に対し、出身地近辺のへき地医療機関及び社会福祉施設での体験活動を通じた適性評価、及び市町村長の面接を課し、地域医療に対する強い意志と資質を確認する。

<長崎県>

■長崎県型ドクターバンク

○県内の離島に所在する市町からの要請を踏まえ、医師を全国的に公募し、長崎県職員(常勤の地方公務員)として採用し、身分保証した上で(給与は市町村が支給(1,600万円程度/年(免歴10年))、退職金は県が支給)、県内の離島診療所に派遣。
原則として2年間を1単位として、1年半の離島勤務後、半年間の有給(1,200万円程度/年(同上))の自主研修を保証。
県の離島・へき地医療支援センター専任医師が、国立病院機構長崎医療センターの協力の下、派遣医師の相談にいつでも応じる(必要に応じ、診療応援や代診医としての支援も)。
これらの特徴により、離島勤務に際しての不安(離島勤務長期化、専門外対応、最新医学からの遅れ)を解消。5名の採用・派遣実績、11名の斡旋(2年以上の勤務を希望したり、外科を希望する場合等県の制度では採用できない場合、市町等へ紹介し直接採用)
(平成16年4月~)

<大分県>

■編入学枠への地域枠設定

○大分大学医学部では、県からの要請も踏まえ、平成19年度学士編入学(第2年次後学期(10月)への編入)から、編入学募集人員10人中3人以内を、地域枠募集人員として設定。

(参考)

島根大学医学部(定員95人):
地域枠10人/85人+地域枠3人/3年次編入学枠10人
大分大学医学部(定員95人):
地域枠なし/85人+地域枠3人/2年次編入学枠10人

<沖縄県>

■意欲に応える豊富な研修機会

○沖縄県立中部病院では、40年前(1967年)から、ハワイ大学との連携により、スーパーローテート方式の臨床研修を実施。海外から指導医を招聘し、活きた英語で教育。
一次から三次までの救急を受け入れ、救急患者は年間3万5千件。24時間診療水準を同一とするため、手術室、検査室等は3交代制。
プライマリケア医コースでは、2年の初期研修に引き続き1年の後期研修を行い、その後1年の離島診療を実践する計4年のカリキュラム。離島に派遣された医師の生涯研修の支援として、中部病院での講義を沖縄県立の全病院・診療所にテレビ配信。
これらの特徴により、中部病院の臨床研修には、毎年募集定員の3倍以上の応募があり、研修後も、県外からの研修医も一定数が県内で勤務。