「児童生活塾」の御提案

-魔の8時間、子育て支援対策-

2005年10月
内閣府特命顧問
慶應義塾大学 教授
島田晴雄


趣旨

1. ますます多くの母親が外で働く社会では、児童が、学校の授業を終えてから、親が帰宅するまで、長時間ひとりで過ごさなくてはならない状況が増えています。幼稚園や小学校低学年では授業は午後2時前後に終了することが多いのですが、フルタイムで働く母親が仕事を終えて帰宅するのは午後8時頃になり、残業などがあれば午後10時頃になることはめずらしくありません。つまり多くの児童は放課後、6ないし8時間、親が側に居ない危険な空白の時聞を過ごすことになります。

2. 保護者が側に居ないこの時間帯には、児童は、事故や犯罪に巻ぎ込まれたり、健全な発育上、好ましくない環境に誘引されたりする危険が少なくなくありません。幼児の保育段階を過ぎて、ひとりで行勣できる児童の段階になっても、今曰の日本では、子供達をめぐる社会的環境は、このように必ずしも安心して育てられる状況ではありません。

3. 乳児や就学前の児童については、母子保健、保育所、幼稚園、地域の子育て支援など、対策が比較的整えられています。近年、少子化対策が強化されつつありますが、それも乳幼児対策に偏っています。他方、中学・高校生については、学校敦育のほか、思春期対策、健全育成(非行予防)対策などがあります。

4. これに対し、小学生の時代は、これまで、育児については親の身体的、精神的、経済的負担が最も軽い安定した時期と考えられており、学校教育のほかは政策的支援がほとんどありません。小学生の母親の大半は働いています。ちなみに、末子年齢がO~3歳では母親の労働力率は32%、4~6歳では52%であるのにたいして、7~9歳では63%、10~12歳では70%です。そのうち、3分の2はパート、自営業者、家族従業員などですが、3分の1はフルタイムの雇用者として働いています。それにもかかわらず、政策は相変わらず専業主婦家庭を念頭に置いているため。とりわけ小学生の段階で、保護者が側にいない「空白の時問」もしくは「魔の時間帯」問題が深刻化しています。

提案

1. そうした制度的欠陥を補い、働く親が安心して子供を育てられる社会的環境を整備する一環として、学習塾ならぬ「生活塾」の制度を創設します。人生経験豊かな退職者や子育てを終えたベテラン主婦の世帯などが自宅で小学生を数名程度、放課後から親が帰宅するまで預かる制度です。

2. 祖父母世代が地域の孫世代である小学生を預かり、親に代わって、おやつや食事を与えるとともに、安全のための保護、健全の発育のためのしつけ、文化、技能などの継承を行うことをねらうものです。

3. 乳幼児の保育ママの小学生版のイメージです。経費は基本的に自己負担ですが、地域の自治体が制度を円滑に運営するために必要な行政支援を行います。

「生活塾の普及促進に関する研究会」について

平成18年1月
厚生労働省
雇用均等・児童家庭局
職業家庭両立課


1 趣旨

 都市部を中心に核家族が増える中、両親ともにフルタイムで働く家庭も増え、そうした家庭においては、小学校(放課後児童クラブ)が終わってから親が帰宅するまでの時間帯、子供をどのように安心して育てるかが切実な問題となっている。

 一方、人生経験豊かな退職者や子育てを終えたベテラン主婦の世帯などの中には、自由になる時間を利用して、仕事と子育ての両立に苦労している家庭を助けたい、子育てをサポートしたいと、人助けに積極的に関わることを希望する者が多く存在すると考えられる。

 このため、両者を結びつけ、働く親が安心して子供を育てる社会的環境を整備する一環として、人生経験豊かな退職者や子育てを終えたベテラン主婦などが、小学生を預かり、親に代わっておやつや食事を与えたり、挨拶などの基本的な生活習慣を身につけることなどを支援する取組(生活塾)を促進することとする。

 こうした取組の受け皿となる制度として、ファミリー・サポート・センター(地域において育児の手助けが必要な人と育児の手助けをする住民ボランティアからなる会員組織)などがあることから、こうした事業の実施の中で生活塾をどのように効果的に普及できるか、また、預けたい人々、預かりたい人々をどのように確保するかについて検討し、提言を取りまとめることとする。

2 検討内容

(1)現状分析

(2)生活塾の普及方法

(3)その他

3スケジュール

平成17年11月~ 研究会の開催
・モデル地域(さいたま市新宿区川崎市平塚市)における実証実験の実施方法について
・有識者からのヒアリング
平成17年12月~
平成18年5月
モデル地域における実証実験の準備及び実施
平成18年6~7月 研究会の開催
・モデル地域における実証実験の結果報告
・普及方法について報告書の取りまとめ
平成18年夏~ 全国への普及

4実証実験の実施方法

(1)モデル地域において、生活塾の実証実験のモニター(預かる側、預ける側双方)を募集

(2)モニターに対する実証実験についての説明

(3)マッチング及び預かりの実施(2か月程度)

(4)モニターに対して、生活塾の有用性等についてアンケート調査を実施

(5)モデル地域としての、実証実験結果についての取りまとめ


5研究会参集者

  • 学識経験者等
    島田 晴雄
    慶応大学経済学部教授
    野中 賢治
    (財)児童健全育成推進財団企画調査室長
    普光院 亜紀
    保育園を考える親の会代表
    山崎 美貴子
    東京ボランティア・市民活動センター所長
  • 事業関係者
    矢田貝 寛文
    (社)全国シルバー人材センター事業協会専務理事
    君嶋 護男
    (財)女性労働協会専務理事
  • 自治体関係者
    中川 秀明
    さいたま市保健福祉局保育課長
    武井 陽子
    さいたまファミリー・サポート・センターアドバイザー
    高橋 麻子
    新宿区福祉部子ども家庭課長
    川端 和泉
    新宿区ファミリー・サポート・センターアドバイザー
    岡本 隆
    川崎市健康福祉局こども計画課長
    伊藤 和良
    川崎市経済局新産業創出担当主幹
    大塚 昭
    平塚市健康福祉部児童福祉課長
    大平久美子
    (社福)平塚市社会福祉協議会主任
  • 関係省庁
    麻田千穂子
    厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長
    東 泰秀
    厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長
    古曳 享司
    厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課長
    桑原 靖
    文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課長