これからの少子化対策について(第4次案)

少子化社会対策推進専門委員会報告(案)(平成18年5月)

委員修正版(案田、大日向、大矢、奥山、佐藤、前田)

(目次)

はじめに

第1章 基本的な考え方

  1. 現状
  2. 少子化対策の基本的考え方

第2章 「子ども・子育て応援プラン」に掲げられた課題の検討

 第1節 課題の検討にあたって

 第2節 地域や家族の多様な子育て支援

  1. 地域における子育て支援の現状
  2. 地域における子育て支援拠点の拡充と人材の育成
  3. 子育て支援のためのネットワークの構築
  4. 「待機児童ゼロ作戦」の推進等、保育サービスの拡充
  5. 放課後児童クラブ・子どもの居場所づくりの推進と放課後ルーム(仮称)の検討
  6. 小児科医や産科医の確保

第3節 働き方に関わる施策

  1. 働き方に関わる現状
  2. 育児休業取得促進等、勤労者に対する子育て支援
  3. ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に基づく働き方の実現
  4. 女性の再就職等の支援策の推進
  5. 非正規労働者に対する処遇の改善

 第4節 経済的支援

  1. 経済的支援の現状
  2. 妊娠・出産における負担の軽減
  3. 子育て費用の負担軽減
  4. 経済的支援やサービス拡充に関する財源

おわりに



これからの少子化対策について(案)

はじめに

 2005年の我が国の総人口は、明治時代以降、第2次世界大戦の一時期を除き、初めて減少に転じる見込となった。従来の予想よりも2年早く「人口減少社会」に突入した。出生率は過去30年間にわたって低下傾向を続け、近年は、出生数も毎年過去最低を記録している。

 こうした少子化の急速な進行による人口減少と高齢化の進行は、経済成長の鈍化、税や社会保障における負担の増大、地域社会の活力の低下等、経済社会全体に広範かつ深刻な大きな影響を及ぼすことが懸念されている。

 今こそ少子化の流れを変えなければならない。

 政府は、2004(平成16)年6月、少子化社会対策基本法に基づき、「少子化社会対策大綱」 を策定し、同年12月にはその具体的な実施計画である「子ども・子育て応援プラン」を策定した。2005(平成17)年度から、「子ども・子育て応援プラン」に基づき、幅広い観点から多岐にわたる少子化対策を総合的に推進している。

 応援プランでは、検討課題として、「地域や家族の多様な子育て支援、働き方に関わる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、その在り方等を幅広く検討する」こととし、「骨太方針2005」(2005(平成17)年6月策定)では、これらの課題について、体制を整備して検討を進めることとされた。そこで、昨年10月、少子化社会対策会議の下に、関係閣僚と有識者による「少子化社会対策推進会議」(内閣官房長官主宰)が設置され、その下に、少子化担当大臣と推進会議の有識者により構成する「少子化社会対策推進専門委員会」(少子化担当大臣主宰)が設置され、「子ども・子育て応援プラン」に掲げられた課題の検討等を行い、少子化社会対策の戦略的推進を図ることとされた。

 本専門委員会では、昨年11月以来、10回にわたる会議を重ねてきた。本報告は、委員会での議論を提言として取りまとめたものである。委員会の議論に際して、関連府省が提出した資料や、全国10か所で実施された少子化担当大臣と地方自治体トップとのブロック会合における提案等も参考とした。

 第1章では、今後の少子化対策に関する基本的考え方を整理し、第2章では、「子ども・子育て応援プラン」に掲げられた3つの課題(地域や家族の多様な子育て支援、働き方に関わる施策、経済的支援)を中心に、現状と今後の施策案について議論の結果をまとめている。 政府においては、本報告を基にして、少子化の流れを変えるため、国民に対してメッセージ性が強い新たな少子化対策を打ち出すことを期待する。

第1章 基本的な考え方

1 現状

(少子化の進行)

 2004(平成16)年の出生数(111万人)及び合計特殊出生率(1.29)とも過去最低を記録したが、2005(平成17)年の出生数は、前年よりもさらに4万人減少して110万人台を割り込み、106万人と見込まれている。年間の出生数よりも死亡数が多いという人口の「自然減」も、 2005年に初めて記録している。

 1990年代後半から、第2次ベビーブーム世代(1972年から74年生まれの世代)が結婚・ 出産年齢を迎えているが、第3次ベビーブームは起きる可能性は乏しい。また、夫婦が持ちたいとする理想の子ども数と実際の子ども数との間には、0.3人前後の差が生じている。

 このまま少子化が進行すると、2050年には現在よりも約2,700万人も減少し、我が国の総人口は、初めて1億人を超えた1967年と同様の水準になるものと予想されている。ただし、1967年の高齢化率は5.5%であったが、2050年には35.7%と、極端な「少子高齢社会」を迎えることになる。さらに、2100年には、現在の人口の半分程度になる「人口半減社会」に至ると推測されている。

(少子化対策は「時間との闘い」)

 第2次ベビーブーム世代は人口的には大きな集団であり、これらの世代がまだ30代にある ここ5年間程度の期間が、少子化対策にとっては特に重要な期間である。少子化対策は、いわば「時間との闘い」の局面に入っているのであり、中長期的な観点からの施策も重要であるが、 短期間で実効性がある施策が求められている。

(子育て世代のニーズへの対応)

 各種世論調査をみても、少子化対策に関する国民の関心は高まってきており、従来に増して 切実な国民のニーズにこたえる施策が求められている。なお、少子化対策に関しては、世代間の相違が大きいことに留意し、少子化対策の検討にあたっては、現実に子育て期にあり、様々な苦労に直面している20代から40代を中心とする世代及び結婚・出産を近い将来に控えている若年層の要望の背景を正確に分析して的確に対応する必要がある。

(子ども・子育て応援プランの着実な実施)

 政府は、1990年のいわゆる「1.57ショック」を契機に、1990年代半ばから「エンゼルプラン」(1995年度から99年度)及び「新エンゼルプラン」(2000年度から04年度)の計画)に基づき、保育関係事業を中心として、保育サービスの充実や子育ての負担軽減等の少子化対策に取り組んできた。

 しかしながら、少子化の流れを変えるまでには至らなかったことから、2003(平成15)年7月に成立した「少子化社会対策基本法」に基づき、2004(平成16)年6月、「少子化社会対策大綱」を策定し、同年12月には、「新エンゼルプラン」に代わるものとして、「子ども・子育て応援プラン」が策定された。

 「子ども・子育て応援プラン」では、「少子化社会対策大綱」の4つの重点課題に基づき、幅広 い観点から約130項目に及ぶ多岐にわたる少子化対策を掲げている。少子化対策として考え得る施策はすべて網羅されていると言えよう。あとは時代の動向を見据え、必要な施策の優先順位をつけて、果敢に取り組むべきときを迎えているのであり、それに即して政府は、必要な予算を確保して、「子ども・子育て応援プラン」を着実に推進していくことが必要である。

 あわせて、さらに少子化対策を強化・拡充するものとして、第2章で述べる少子化対策を講じる必要がある。

2 少子化対策の基本的考え方

(少子化対策のねらい)

 少子化対策の個々の施策がどのような効果があるかということについては、必ずしも明らかではないが、我が国よりも出生率が高い水準で推移したり、低下傾向から反転したりしている欧州諸国の取組をみると、保育サービスの充実や働き方の見直し、仕事と家庭・育児の両立支援、経済的負担の軽減など、施策相互の関連を十分に考慮して、総合的に施策を展開することにより、全体として、子どもを生み育てやすい社会とすることが、少子化対策として効果的であると 考えられる。

 欧州諸国の人口動向をみても、出生率の低下傾向の流れを変えることは決して不可能なことではない。第2次ベビーブーム世代やその後の世代といった、わが国にとって、まだ20代、30代の人口層が厚い時期に、インパクトがある少子化対策を講ずることが大切である。

(少子化対策の基本的な考え方)

 少子化・人口減は社会的に由々しき影響を及ぼすことが懸念されるが、結婚や子育ては個人の自発的かつ喜びを伴った選択となるべきことは言うまでもない。従って、少子化対策が目指すべきは、実際に持つ子ども数が理想の子ども数に近づくことができるような環境整備であり、それが結果的に少子化の流れを変えることにつながることが期待される。こうした観点から今後の少子化対策を考える視点として、以下の4点をあげる。

(1)子どもの視点に立った対策が必要

 少子化対策は何よりも、まず子どもの健やかな成長発達を支援するものであるべきであり、そのためには妊娠中・そして子どもが生まれてから成長するまでの発達段階に応じて、子どもや子育て家庭に対して、どのような社会的な支援が必要か、という視点から対策を検討する必少子化対策は何よりも、まず子どもの健やかな成長発達を支援するものであるべきであり、そのためには妊娠中・そして子どもが生まれてから成長するまでの発達段階に応じて、子どもや子育て家庭に対して、どのような社会的な支援が必要か、という視点から対策を検討する必要がある。その際、初めての子ども(第1子)を妊娠したときには、母親自身にとっても、家族にとっても初めての経験であり、慣れないこと等から、第2子以降の妊娠のときよりもリスクが大きいときであるので、特に支援が必要なときであると考えられる。

 また、最初の子どもをもつときに良い経験をすること、たとえば仕事をやめなくてすんだ、ある いは安心して生み育てることができた、という経験が、2人目以降の出産につながると考えられる。

 さらに、少子化対策として、焦点をしぼるとすれば、子どもが10歳頃までの間に重点的に支援を行うこととし、特に3歳未満の子どもの85%は在宅で育児が行われていることから、いわゆる専業主婦の家庭も含め、在宅の子育て支援に対しても集中的に施策を打っていくことが重要である。

 一方、子どもの幸せは親の幸せなくして始まらない。親が子どもの成長にゆとりをもってかか わり、子育てに喜びを見出せるよう、親や家族の生活への支援も重要である。とくに、働き方の見直し等を通じて、親、特に父親が子どもと向き合う時間の確保が求められる。さらには、放課後対策等を充実させることで、子どもが家に1人でいる時間を減少させ、他の子どもたちと触れ合う機会を確保することは、子どもの安全かつ健やかに育つ環境として不可欠である。このことは同時に親にとっても、安心して働き、社会的活動を行うことを可能とする。

(2)子育て家庭を社会全体で支援する対策が必要

 現在の子育ては、ややもすると核家族で地域において孤立し、また、母親ひとりだけの「孤」 育てといわれる問題を抱えがちであるので、子育て家庭を社会全体で支援していくことが必要である。妊娠、出産、子育て、仕事との両立支援など、子どもを生み育てやすい環境づくりが重要であり、そのためには、行政機関、医療機関、地域社会、企業等、さまざまな機関において、子育てを支援していくことが求められている。

 政策面で言えば、少子化対策のメニューはほぼ出揃っているが、地域子育て支援の法定化が進まず、さらには量的に不十分、制度があっても十分使われていない、地域間で偏りがある等の課題がある。子育て支援として必要なサービスについては、市町村間で格差が生じないようにすべきである。国や地方自治体の施策だけでなく、NPO(特定非営利法人)や企業、地域の住民など、民間の力を十分に活用した取組が必要である。

 また、そもそも子育ては、家族ばかりでなく、社会にとってもきわめて重要なことであるので、社会全体で支援をしていくということの意識改革が必要である。

 財政面で言えば、児童・家族に対する支出の対GDP(国内総生産)比は、OECD諸国の中で下位にあり、社会保障給付費についても、高齢者関係給付に手厚く、児童・家族関係給付費は全体の3.8%にすぎないことから、厳しい財政事情の中でも、児童・家族関係の支出の充実に ついて優先的に配慮されるべきである。財政面で言えば、児童・家族に対する支出の対GDP(国内総生産)比は、OECD諸国の中で下位にあり、社会保障給付費についても、高齢者関係給付に手厚く、児童・家族関係給付費は全体の3.8%にすぎないことから、厳しい財政事情の中でも、児童・家族関係の支出の充実について優先的に配慮されるべきである。

(3)ワーク・ライフ・バランスの実現や男女共同参画の推進が必要

 子育て家庭に対する社会的支援に加えて、そもそも長時間労働や仕事優先となっている働き方の見直しが不可欠である。子育て期において、親が子どもと一緒に過ごす時間は、親にとっても子どもにとっても喜びであるばかりか、子どもの発達・成長にとっても欠かすことができない 大切な時間である。現在のように、親、特に父親が、ほとんど家事や育児に参加できない状態は改善しなければならない。

 そのためには、育児休業や年次休暇の取得促進や長時間労働の是正、子育て期間中の短時間就労等の柔軟な働き方が必要である。これらの制度を十分に活用して、女性のみならず、男性も家事や育児に参加することができるように、企業経営者や勤労者自身の意識改革と行動 の変化が必要である。

 働き方の見直しの目的は、勤労者のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現に ある。子育て世代のみならず幅広い世代を対象にしたワーク・ライフ・バランスの実現を図ることにより、子育て期にある勤労者が育児休業など様々な両立支援策を活用しやすく、かつ、柔軟な働き方をしやすくなるという効果が生じるものと考えられる。

 また、少子化対策は、男性も女性も、ともに持てる能力を発揮しつつ、職場のみならず、家庭 (家事・育児等)・地域にともに参画するという男女共同参画を通じて推進されるものである。

(4)家族政策という観点から少子化対策を推進することが必要

 ヨーロッパでは、児童手当制度のような経済的支援や、育児休業制度のような仕事と育児・家庭の両立支援策等の施策は、低下した出生率にどのように対応するかという少子化対策というよりは、子どもやその家族に対して支援を行うことを目途とした「児童・家族政策」として位置づけられている。つまり、家族政策には、婚姻、児童扶養、相続など家族に関する政策、児童手当、育児休業給付など経済的支援に関する政策、保育サービス、児童虐待、母子保健など直接 的なサービスに関する政策などがある。

 現在は、親の養育力(家庭の育児力)や、地域社会で子どもを育てようという意識や体制(地域の育児力)が低下をしていると言われている。親としての自覚が不十分なまま子どもを持つこととなったり、育児能力が乏しいまま子育てを体験したりすることにより、さまざまな問題を抱えたり、また、地域社会で若い子育て家庭が孤立したりしている例がみられる。このため、少子化対策の概念を幅広くとらえて、すべての子どもや子育て家庭に対する支援である「家族政策」(ファミリー・ポリシー)という観点から、少子化対策を考えることが大切である。

 また、地元企業も含めて、地域で子育て家庭を支援したり、子どもの安全確保の取組等を行ったりすることが、地域社会の構成員のきずなを深めることにつながるものである。


第2章 「子ども・子育て応援プラン」の課題の検討

第1節 課題の検討にあたって

 はじめにで述べたように、本報告書は「子ども・子育て応援プラン」で残された課題を検討した ものである。委員会では、「地域や家族の多様な子育て支援」、「働き方に関わる施策」、「児童手当等の経済的支援」の3つについての討議を重ね、特に、前者の2つの「地域や家族の多様な子育て支援」と「働き方に関わる施策」が、重要であるとの認識に至った。

 地域のさまざまなネットワークの中で、互いに支え、支えられという関係の中で、孤立化しな いで子育てできる基盤整備及び若い世帯が安心して仕事と子育てを両立できる就業環境の整備が、日本社会の子育て環境を変えるために不可欠なものである。経済的支援の必要性を否定するものではないが、まず取り組むべき優先課題は先の2つの課題にあると考える。

 確かに、子育ての要望として「経済的支援」があげられることが多い。しかし、専門委員会は その「経済的支援」を要望する背景にある、子育て中の親や子どもたちにとって真に必要なものは何かについて、議論を重ねた。そして、子育てを支える環境が十分に整備されていない日本社会の現状では、経済的支援のみでは子育ての安心感の保障にはつながらないこと、経済的支援は、先にあげた「地域や家族の多様な子育て支援」や「働き方に関わる施策」が十分に展開された上でないと、有効に機能しないものであるとの認識に至った。

 限られた財政条件の下では、まず「子ども・子育て応援プラン」で掲げられた「地域や家族の 多様な子育て支援」と「働き方に関わる施策」に関して集中的に取り組むことで、子育て基盤の整備を一挙に改善することが重要となる。それによって、年齢やそのおかれた状況毎に多様なニーズを持つ子どもたちやその親たちに、安心して子育てできる環境が提供されることになろう。

 こうした問題意識に基づき、第2章第2節以下で、課題を検討する。

第2節 地域や家族の多様な子育て支援

1 地域における子育て支援の現状

(在宅育児に対する支援策の課題)

 地域における子育て支援の現状をみると、働く親の増加に伴って保育所等の施設サービスの一層の充実にも引き続き注力すべきであるが、一方、専業主婦の家庭のように保育所を利用せずに自宅で子育てを行う場合の支援策が乏しいことも大きな課題である。親が働いている、働いていないにかかわらず、すべての子育て家庭を視野に入れた支援策が必要である。保育所の制度に比べて、在宅育児を支援する機能を持つ地域子育て支援について、その法的位置づけがあいまいで、両者の間では公的な予算も非常に格差がある。従って、地域子育て支援の法的整備も視野に入れて検討すべきである。

 小学校区はもちろんのこと、中学校区のレベルにおいても、地域子育て支援センターやつどいの広場等の子育て支援施設がひとつもないところがあり、在宅育児を支援する環境は乏しいものといわざるをえない。子育て中の親がベビーカーを押して歩いていけるような、身近なところでの支援の充実が重要である。

 また、孤立した子育てによる不安感や負担感の解消のためには、親子が気軽に集える場としてのつどいの広場等の事業が重要である。また、保育所による一時預かりやファミリー・サポート・センター等の事業の拡充が必要であるが、現行制度では、担い手の不足、制度の構造的な 問題、利用料負担などから制度が十分に機能していない。

(子育て家庭への支援方法の課題)

 市町村は、最も適切な子育て支援事業の利用ができるように、相談・助言を行うことや、ある いは各種事業の利用のあっせん、調整、要請等を行う事になっているが、現実にはこうした機能を十分に市町村が担いきれていない。地域において子育て家庭に対して個別にさまざまな援 助ができるような知識・技術をしっかりと身につけた者(「子育てマネジャー」(仮称))を育成し、こうした人々が市町村と連携をとりつつ、子育て家庭の相談や支援にあたる仕組みを検討する 必要がある。

 市町村では、子育て支援に対するさまざまな支援を行っているが、個々の子育て家庭に対して、こうした支援サービスの内容や制度に関する情報が十分に伝わっていない場合が多いため、実際に支援を必要とする前の段階である母子健康手帳の交付時や出生届時に、これらの必要な情報がすべての子育て家庭に伝わる仕組みが重要である。

(放課後対策や子どもの安心・安全に関する課題)

 近年、共働き世帯が増加していることから、放課後児童クラブに対するニーズが高まっているが、量的には不足しており、利用待機者が増加している状況にある。そのため、小学校就学前までは子育てと仕事の両立ができていた親が、子どもが小学校にあがってから、子どもの放課後の世話のために就労継続しにくくなって離職せざるを得ないという声も聞かれる。開所時間の延長や職員の処遇改善等の要望がある。また、小学校内に設置されているクラブは全体の約4割にとどまっている。

 一方、全児童等を対象にした放課後や週末における子どもの居場所づくりを支援する地域子ども教室推進事業が実施されているが、今後、放課後の子どもの安全確保の観点も含めて、子どもの成長にとって放課後時間をいかに有効に活用するか検討が必要である。

 子どもに対する犯罪が起きていることから、登下校時を含めた学校や地域における安全確保、 に対する関心が急速に高まっている。政府は、昨年12月「犯罪から子どもを守るための対策」をとりまとめたが、今後とも、子どもの安全と親の不安解消のために効果的な対策が求められている。

2 地域における子育て支援拠点の拡充と人材の育成

(地域の育児力の向上)

 つどいの広場やファミリー・サポート・センター、保育所における地域子育て支援センター等 の地域の子育て支援拠点の大幅な量的拡充と、地域で子育て支援にあたる人材の育成を強化することにより、地域の育児力の向上を図るべきである。在宅育児の支援策として、一時預かり事業が重要であるが、保育所で行うとともに、つどいの広場等の子育て家庭が気軽に集える場で行うことで利用機会を広げることができると考えられる。保育所以外の地域の子育て支援サービスに関しても法定化を行い、制度に対する予算面の拡充が必要である。

(子育て支援の人材育成)

 子育て支援の人材育成としては、学生のボランティア、主婦や高齢者等の地域で子育てのノウハウを持っている人たち、いわゆる「団塊の世代」(1947~49年生まれの第1次ベビーブーム世代)で定年退職の時期を迎えて増加が予想される退職したサラリーマンが、それぞれ人生や職業生活で培ってきた能力を地域の子育て支援に発揮できるようなシステムが必要である。

 市町村や社会福祉協議会、NPO 等において、これらの人々を対象にした研修を行い、子育て・家族支援者を養成し、子育て家庭の身近なところで、相談・アドバイス・育児支援等が行われることが望ましい。
 また、学生による子どもとの触れ合い体験や家族支援ボランティア、さらにはベビーシッターの育成は、小さい子どもとの触れ合いを経験する、学生の時期から多様な状態の家庭を知るなど、将来、彼らが親になったときの準備という観点からも重要な事業である。また、地域における子どもたちの縦の関係作りや青少年の地域参画という意味からも、彼らが地域における多様な支え合いの担い手となりうる可能性を持っている。

3 子育て支援のためのネットワークの構築

(訪問事業の重要性)

 はじめて子どもをもった人を支える仕組みとして、保健師や産後ヘルパーなど多様な人が家 庭を訪問する事業が重要である。これにより、出産直後の不安解消や親子の愛着や育児意欲の形成につながっていくほか、児童虐待等の問題の予防にもなると考えられる。

(子育て支援のためのネットワーク)

 したがって、市町村が主体となって、個別の家庭に対して、その家庭の子育て状況を把握し、 地域にある各種支援制度を伝えたり、必要に応じ専門のサービスにつなげたりするために、子どもの誕生後一定期間以内に、市町村職員等による家庭訪問(すべての子どもを対象にした全戸訪問)を組み入れた「子育て支援のためのネットワーク」の構築が必要である。

 既に、生まれてくる子どもに対して特定の保育園を支援施設として登録する「マイ保育園制度」や、胎児期から産科、小児科、行政が一体となって育児支援を行う仕組み(「ペリネイタル・ビジット事業」)を構築し、実施している事例があることから、これらも参考にすることが望ましい。

 こうした市町村によるネットワークに加えて、前述した子育て支援のボランティア活動など地域 において子育て支援のためのネットワークが重層的に構築されることが望ましい。

4 「待機児童ゼロ作戦」の推進等、保育サービスの拡充

 保育所の待機児童の状況をみると、ゼロ歳児から2歳児までの乳幼児の割合が高いことや、 大都市部で多いことから、保育所の受け入れ機能を拡大するとともに、「保育ママ」の活用をはじめとして、それぞれの地域に潜在する育児機能の発掘養成につとめ、子どものより良い発達 環境の担保に留意しつつ、総合的な対策を進めていく必要がある。

 また、子育て家庭では特に子どもが病気のときに困難に直面することが多く、その対応として、 病後児保育や病児保育に対するニーズ、あるいは就業形態の多様化による延長保育や夜間保育に対するニーズが高いので、これらの特別な保育サービスも充実を図る必要がある。さらに、発達障害児など、障害児に対する保育サービスの拡充に努める必要がある。

 さらに、教育・保育を一体的に提供する機能と地域の子育て支援機能を併せ持った「認定こども園」の制度化が国会で論議されており、制度の活用促進を図る必要がある。

 なお、子育てをしている女性に対する世論調査結果では、経済的支援策の中で、「保育料・幼 稚園費の軽減」をあげる人が最も多いことから、これらの対応も必要である。

5 放課後児童クラブ・子どもの居場所づくりの推進と放課後ルーム(仮称)の検討(放課後児童クラブの設置促進と放課後ルーム(仮称)の検討)

 現状では、全小学校の3分の2程度のところに放課後児童クラブが設置されているが、そのニーズがある全ての小学校での設置や、希望者が多いところの定員の拡大等について、今後より一層努めなければならない。また、小学校内への設置促進や、担当者の処遇改善や安全基準の明確化なども急務の課題である。

 一方で、全児童等を対象にした子どもの居場所づくりを支援する地域子ども教室推進事業が文部科学省により行われているが、小学校を所管する文部科学省と放課後児童クラブを所管する厚生労働省との間で、放課後対策の今後の充実方策について検討を進める必要がある。 このように両省が連携して放課後の取組をさらに充実させ、たとえば「放課後ルーム」(仮称)として、教職を目指す大学生や退職教員等の協力を得て課外授業を行うこととする等、放課後時 間を活用して、子どもの発達・成長に役立つようにする取組を一層推進することが考えられる。

(登下校時等の安全対策)

 子どもの登下校時の安全確保として、スクールバスの導入や路線バスの活用、あるいは企業や福祉施設が有するバスの活用等が考えられる。子どもの通学距離や時間、道路状況等、通学環境は地域によって異なるので、市町村教育委員会及び学校側が責任をもって、個々の通学環境に適した安全対策を講じる必要がある。その場合、自治会や地域の高齢者など、地域団体やボランティアの協力を得ることが不可欠である。一方、登下校時には子どもたちが地域社 会とふれあう貴重な時間である点についての考慮も必要である。

 言うまでもなく、子どもたちは、週末や放課後も学校以外の地域で活動している。登下校時だけの対策では、子どもたちの安全は確保できないことから、子どもたちが自由で伸びやかに暮らせる地域づくりこそ、何よりも必要なことを忘れてはならない。

 また、子どもの不慮の事故について、その事故情報の収集・分析等を行い、再発防止に向け た取組を広げることが必要である。

(「魔の8時間」対策)

 また、子どもが学校が終わってから親が帰宅するまで1人でいる時間(いわゆる「魔の8時 間」)が極力短くなるように、前述した「放課後ルーム」(仮称)の活用や、ファミリー・サポート・センターの一時預かり等のサービスの充実、さらには長時間労働の是正等の働き方の見直しが重要である。

6 小児科医や産科医の確保

 身近な地域で小児科や産科の医療機関が減少しているところが増えてきており、妊娠・出産や乳幼児の子育てにおいて親の不安が大きくなっている。地域における小児科医や産科医の集約化や重点化の推進、小児救急医療体制の整備、診療報酬面における小児科や産科の評 価等が必要である。

 また、女性の医師が増加傾向にあるが、医療機関の一般事務職や看護職等よりも、仕事 家庭・育児の両立支援策等が不十分との指摘があり、病院内の保育施設の整備等の両立支援や、職場復帰支援等に取り組む必要がある。

第3節 働き方に関わる施策

1 働き方に関わる現状

(働き方に関する様々な課題)

 2005(平成17)年4月から、「次世代育成支援対策推進法」に基づき、大企業(従業員301人以上の企業)における次世代育成支援のための行動計画の策定・実施が施行されたことや、人口減少社会を迎え人材の定着や確保の必要が強く認識されてきたこと等から、企業における従業員に対する子育て支援策推進の機運が高まってきている。

 しかし、働いている女性の約7割が、第一子出産を契機に離職をしており、仕事と育児の両立が全般的には依然として困難な状況がうかがえる。さらに、子育て中または子育て後の女性の多くは再就職を希望しているが、本人の希望する仕事に就くこと、特に正規雇用に就くことが非常に困難であるという現状がある。

 男性の働き方も、20代後半から30代前半という子育て期とも重なる男性の就業時間が長く、90年代前半に比べても現在の方が長時間労働の実態となっている。また、職場の雰囲気や仕事優先等の理由から、男性の育児休業取得率は0.56%(2004年度)と低位の水準にある。この結果、夫が家事・育児を行う時間は、先進国の中で極端に低く、妻が働いているか、働いていなかにかかわらず、妻に育児負担がのしかかっている。90年代前半に比べても現在の方が長時間労働の実態となっている。また、職場の雰囲気や仕事優先等の理由から、男性の育児休業取得率は0.56%(2004年度)と低位の水準にある。この結果、夫が家事・育児を行う時間は、先進国の中で極端に低く、妻が働いているか、働いていなかにかかわらず、妻に育児負担がのしかかっている。

(行動計画の策定に関する課題)

 また、「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画については、公表すること により、他の企業の参考になったり、企業自らの取組の改善等につながったりするのではないかとの指摘がある。
 行動計画の策定が努力義務となっている従業員300人以下の中小企業においても、計画策定を促進すべきであるとの指摘がある。一方で、中小企業では、制度の整備ではなく、現場における柔軟な対応により、仕事と育児を両立しやすい職場環境を実現している面もあり、こうした中小企業の特性も生かしながら対応する方が適当であるとの指摘もある。

2 育児休業取得促進等、勤労者に対する子育て支援

(育児休業の取得促進等の取組)

 育児休業など両立支援策の利用促進のためには、上司の理解や勤労者本人の利用意欲等を促進するための意識改革が第一であるが、それとあわせて平素から休業者がでても対応できるような仕事の進め方の再構築が必要であり、専門家のコンサルティングを受けること等によって、再構築を進めることが、ひいては仕事の効率化にも結びつくことになろう。また、代替要員の活用にあたっては、人材確保のための支援が有効である。これらに対する企業の取組を促進するためには、両立支援策の充実に関する誘導的な助成金等の支援も必要である。

 一方で、育児休業取得促進には、キャリアへの影響(育児休業から復帰したあと、査定や昇進 に悪影響が出る)や、業務知識への影響(業務知識が日進月歩の中で休んでいると取り残されてしまう)等の不安を解決することが重要である。企業の現場において、キャリアへの影響については、育児休業期を越えて、持ち越さないような人事評価がなされること、業務知識への影響については、IT を活用したテレワークの働き方を進めること等の対策を講じるべきである。

 また、育児休業期間中の所得保障の在り方や産前・産後休暇時における社会保険料負担の在り方の検討も望まれる。

(企業の行動計画の策定推進と取組への支援)

 「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の自主的な公表を促進するほか、中小企業においても、行動計画の策定・実施や制度の整備によらない柔軟な対応等、従業員に対する子育て支援を促進する必要がある。

 企業が行う子育てなど両立支援策を促進する方法としては、行動計画の策定・公表、男性の育児休業取得等の促進等に向けた誘導的な助成金のほか、税制面における優遇措置の検討、さらには育児休業取得率などわかりやすい指標を企業が公表するようにするなど両立支援などに積極的に取り組むための環境をつくることなどの施策が考えられる。また、従業員のニーズが高く、しかも企業の経済的負担が大きいものとして事業所内託児所の設置があるが、中小企業などにおける共同利用の促進等に努める必要がある。

 また、地方自治体において、独自の評価基準に基づき、子育て支援に積極的な企業を表彰したり、低利融資や入札時の優遇措置等の取組を行ったりしているところがあるが、これらの施策は企業に対する支援策として有効と考えられるので、国から全国の地方自治体に対して情報提供を行い、全国的な展開を図っていくことが望ましい。

3 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に基づく働き方の実現

(ワーク・ライフ・バランスの推進)

 仕事と育児の両立支援を進めていくためには、両立支援の対象を、育児ばかりでなく、介護や 自己啓発、社会貢献活動なども対象にするなど、幅を広げて、職場全体の働き方の雰囲気を変え、必要に応じこれらの活動を優先することにも違和感がないようにすることが重要である。すなわち、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が可能な働き方が重要であり、長時間労働の是正、短時間勤務、フレックスタイム制、在宅勤務など柔軟な働き方の導入により、さまざまな生活ニーズや価値観に即した働き方が選択できるようにする必要がある。

 こうした働き方の見直しは、仕事以外の人的ネットワークを広げる機会となり、未婚者にとっ ては職場以外での出会いの機会が増加することにも貢献しよう。また、仕事や生活に時間的余裕が生じることは、創造力を高め、ひいては企業の競争力向上につながることであろう。

(国民的運動の推進)

 両立支援の推進や働き方の見直し、ワーク・ライフ・バランスの推進のためには、企業経営者 や勤労者の意識改革を図るための国民的運動が必要である。経済団体や労働団体、マスコミ、行政機関等が一体となった会議体を構成し、それぞれの団体において働き方の見直しに向けて取組を進めていくことや、また、地域の視点でとらえても、地域の行政、経済・労働団体等が足並みをそろえて、働き方の見直し等に取り組むことが重要である。

 また、企業が子育て支援に積極的に取り組んでいくためには、他の企業でどのように行っているのか、どのような方法がよいのか、ということについて適切な情報を得ることが必要であり、行政において、企業の取組の好事例の収集・提供や、企業経営における子育て支援の取組の意義や方法の分析を行うとともに、子育て支援策についてわかりやすく伝えるパンフレットの作成・提供等の工夫が望まれる。

(企業の自主的な取組)

 また、こうした運動の中で、企業が地域社会の一員として地方自治体と連携しつつ子育て支援に取り組むための機運を醸成することが期待される。たとえば、本年度からいくつかの県で取組が始まったもので、協賛企業を募り、子育て家庭に対して物品購入の際の割引等を行う仕組みは、企業の自主的な協力を柱としたユニークな取組であり、それぞれの産業の特性を活かしたこのような取組が全国で広がるように検討を進めることが重要である。

4 女性の再就職等の支援策の推進

(再就職支援と少子化対策)

 働く女性の約7割が出産等を契機に退職しているが、これらの人たちについては、その後の再就職、特に正規雇用としての再就職が難しい現状にある。再就職の道が開かれていれば、出産・育児等を理由に退職したとしても、将来の展望があるので、心理的な不安がなくなり安心して子育てに取り組むことができるであろう。

 このため、再就職等を受け入れる企業側の取組を促し、求人年齢緩和の取組の推進、再雇用制度の普及促進、パートタイム労働者の均衡処遇と正社員への転換制度の導入促進など、再就職の環境整備をさまざまな側面から進める必要がある。

(適切な情報の提供等)

 また、再就職をめぐる厳しい現状は、就職、育児、退職、再就職などの一連の流れにおいて、 女性本人が、再就職等をめぐる現状や必要な制度・施策その他の情報を十分に得ていないということがひとつの原因と考えられる。将来の再就職等を希望する女性が情報を入手したり、相談できたりする体制が身近に存在することが必要である。

 そこで、男女共同参画センター・女性センター、子育てNPOなど身近な場所での再就職に関する情報の提供や、マザーズハローワークによる情報提供等を推進するとともに、既存のハローワークでも子育て支援企業の情報を提供できるようにすることが考えられる。また、本人が長 期的な視点でライフプランニングを行うことを支援することが考えられる。

 さらに、地域で起業するなど雇用以外の選択肢があることも重要であり、コミュニティビジネス やNPO活動を通じて社会に復帰できるような場づくりが重要である。

5 非正規労働者に対する処遇の改善

 我が国の労働者の4人に1人は、パートタイム労働者等の非正規労働者であり、特に女性は40%が非正規労働者となっている。また、90年代後半以降のいわゆる「就職氷河期」の影響を受けてフリーターとなっている20代、30代の人たち存在する。未婚者が結婚へと踏み切ることや、子育て家庭の経済的安定にとって、雇用の安定や収入面の充実が第一であることは言う までもない。

 そこで、パートタイム労働者と正規労働者との処遇の均衡を図るための取組を強化するととも に、正社員への転換制度や短時間正社員の導入に取り組む事業主への支援策、あるいは非正規労働者本人に対する能力開発機会の提供や就労支援等が必要である。また、社会保障における均等待遇の観点からも、懸案となっているパートタイム労働者に対する厚生年金の適用問題について解決が図られることが望ましい。

第4節 経済的支援

1 経済的支援の現状

(経済的支援策の現状)

 経済的支援としては、現行制度では、「児童手当」や「出産育児一時金」、「育児休業給付金」 等の制度があり、児童手当については、本年4月から小学6年生までの対象拡大が図られたほか、出産育児一時金については、出産1件あたり30万円から35万円と、5万円の支給額の引上げを図る方向とされている。児童手当制度を例にとると、支給対象年齢や給付金額の水準、所得制限の有無等の点で、我が国はヨーロッパ諸国の制度よりは限定的な内容となっている。 また、フランスの乳幼児迎入れ手当てやイタリアの一時金制度など、児童手当制度以外の制度を持っている国もある。

(若い世代に対する支援の必要性)

 子育て世帯、特に若い世帯は、同じ年代で子どものいない世帯と比べて可処分所得が低い。 また、母子世帯の数が近年大きく増加しているが、一般世帯に比べてその所得水準は大変低い状況にある。また、子どもがいる世帯の方が、子どもがいない世帯よりは、家計を苦しいと感じている割合が高い。乳幼児期の子育てには一定の費用がかかるため、所得水準が相対的に低い子育て世帯では、経済的な負担感が大きいものと考えられる。この背景には、妊娠・出産 を含め、子育てしながら仕事を継続することが難しいことや、非正規の仕事に従事している者が増加していることなどがある。とりわけ若年層の親の場合、子どもを出産する前後は、所得も低く、経済的負担が大きいため、仕事を継続できる仕組みを整備して収入の安定化を図るなど、この時期に重点的に支援を行うことが、一時的な支援のみならず、長期的に親と子の将来の生活を安定させることに意味し、子どもを持つことにつながるものと考えられる。

(税制における子育て支援)

 税制面では、子どもに対する扶養控除があるが、その拡大を望む声は大きい。

 また、経済的支援策について手当と税制との比較で考えると、児童手当のような給付制度は非課税世帯にもメリットが及ぶものであり、乳幼児を育てる子育て世帯は親が比較的若年で、非課税世帯が多いことを考慮すると、児童手当等の給付の方が税制による対応よりも効果が及ぶ範囲が広い。仮に税制において扶養控除等の人的控除を見直す場合があれば、その財源は家族給付等の充実や教育費の助成に向けて重点的に振り向けることが望ましい。

 一方、現行税制では、子育て費用や教育費などについて一定の配慮(扶養控除)がなされていると考えられるが、それが十分なものかどうか、子育て支援税制の在り方という観点から検討を進める必要がある。

(経済的支援と他のサービスの組み合わせ)

 経済的支援を行う場合には、経済的支援だけで少子化対策を考えるのではなく、保育サービス等の現物給付との組み合わせや、企業の取組や地域の支援との連携の中で施策を進めなければ効果が十分に発揮できないことに留意する必要がある。

(機会費用を小さくする対応)

 また、子育てコストとしては、出産・子育てに関わる直接的な費用ばかりでなく、出産等を理由 に退職すると将来得るはずであった収入を失うことになるという機会費用のウエイトがきわめて大きいことが指摘されている。女性が仕事を中断することなく継続していくことが、結果的に大き な経済的支援となる。したがって、仕事と子育ての両立支援策を進めることや女性の再就職支援を進めることによって、機会費用を可能な限り小さくする対応が必要である。

2 妊娠・出産における負担の軽減

 妊娠・出産は、母親のみならず、父親も含めた家族にとって大変大事なことであり、経済的負担の心配をせずに安心して子どもを妊娠・出産できるように、極力負担を軽減する必要がある。妊娠中の検診費用の負担軽減は、検診機会を増加させることにより、妊婦や胎児の健康の確保、食育等の指導、妊婦の不安の除去等に効果が大きいものと考えられる。また、出産育児一時金については、現在は償還払いであるので、その給付手続きを変更することにより、手元に現金を用意しなくても産科施設に入院・出産ができるようにする工夫が望まれる。

 不妊治療に対する助成は、本年度も拡大される(助成期間を5年間に延長)。しかしながら、不妊助成が当事者にとって産むことへのプレッシャーを増加させる危険性もあり、この点について少子化対策として取組むことに関しては慎重でなければならない。

3 子育て費用の負担軽減

 子どもの誕生後の経済的支援策としては、児童手当の支給の拡充、保育料や幼稚園費の負担軽減、高校・大学生に対する奨学金事業の充実の検討が必要である。

 子育て家庭に対する手当の支給については、厳しい財政事情の中では重点的に行う必要があり、その中でも高校・大学時期の教育費の負担が大きな焦点となろう。学生・生徒に対する教育費負担の軽減の要望については、大学の授業料等は基本的には本人の負担として、必要な学生・生徒には奨学金の貸与を行うこととし、卒業後の返還が円滑に行われるよう、あわせて税制上の対応を検討すべきである。

4 経済的支援やサービス拡充に関する財源

 これまで検討してきたさまざまな子育て基盤の整備、充実、拡充に関しては、そのための財源 を必要とするところであり、財源の確保について積極的な議論が望まれる。たとえば、国や地方自治体の歳出全般の見直しや、社会保障制度や税制の見直し等になど、さまざまな方途で、社会で負担を分かち合う仕組みを議論していくことが必要である。

おわりに

(これからの進め方)

 第2章において、それぞれの分野の現状を踏まえて今後の施策の方向について提案した。 第2章において検討した事項はいずれも重要課題であるが、すべてを脈絡なく実施することは、財源上も現実的ではなく、施策が総花的となって効果は期待できないであろう。

 施策の具体化を図るには、少子化対策が現状の課題の何を克服し、どのような人々の生き方や社会のあり方をめざそうとするのか、21世紀の日本社会について明確な考察が必要である。すなわち、それは第2章で検討した施策の相互の関連性を明らかにすることに他ならない。 施策の具体化を図るには、少子化対策が現状の課題の何を克服し、どのような人々の生き方や社会のあり方をめざそうとするのか、21世紀の日本社会について明確な考察が必要である。すなわち、それは第2章で検討した施策の相互の関連性を明らかにすることに他ならない。施策の具体化を図るには、少子化対策が現状の課題の何を克服し、どのような人々の生き方や社会のあり方をめざそうとするのか、21世紀の日本社会について明確な考察が必要である。すなわち、それは第2章で検討した施策の相互の関連性を明らかにすることに他ならない。施策の具体化を図るには、少子化対策が現状の課題の何を克服し、どのような人々の生き方や社会のあり方をめざそうとするのか、21世紀の日本社会について明確な考察が必要である。すなわち、それは第2章で検討した施策の相互の関連性を明らかにすることに他ならない。

 この点について委員会の中で検討を重ねた結果、施策の中では、「仕事と育児の両立支援の充実」と「地域における子育て支援」が、特に重点課題であるという結論に達した。

 なぜ、働き方の見直しが必要なのか。前述のように、女性にとっては出産・子育てによって働 き続けることが難しいのが現状である。人生の一時期を子育てに専念することを望む女性も少なくなく、そのライフスタイルの選択ももちろん尊重されるべきであるが、子育て後の職場や社会活動への復帰の可能性が閉ざされていて、それが専業主婦として在宅で子育てをしている母親の孤独感と、子育てへの意欲の減退につながっている場合もある。 また、子育ての伝承が難しく、核家族化している社会の中では、家族の努力だけではなく、地域の中で相互に支え、支えられるという関係性の構築を育む 「地域子育て支援」の充実が求められている。子どもを中心に、多世代がつながり、支えあい、ひいては親としての力を充分に発揮し、社会参加、地域の担い手となれるような支援内容の充実が必要である。この視点がないまま、在宅家庭の母親への支援だけを強調するのは、女性を家庭・育児に閉じ込める危険性もある。また、こうした女性の社会参加支援の視点を持たずに、男性の育児休業だけ推進することは、効果的でない。

 一方、「経済的支援」に関して、現在もすでに出産手当金の拡大や児童手当の所得制限の緩和などが計られており、現状ではその効果を見極めるべきものと考える。これ以上の「経済的支援」の拡大については、「地域における子育て支援」と「仕事と育児の両立支援」の両者が充実し、多様な子育て支援の選択肢が整備させた後に、検討されるべきであろう。その際には、費用対効果や、真に必要な経済的支援とは誰に対して、どの時期に、どのように給付されるべきか、さらに財源論を含めての実現の可能性についても緻密な議論が必要なことはいうまでもない。現時点においては最も効果的な経済的支援は、女性が仕事を中断することなく継続できるようにすることである。そのことを、ここで改めて確認する。

 働く親を支援するためには、安心して子どもを預けることのできるよう、地域の保育機能や放課後対策が必要である。在宅の親に対する支援のためにも、子どもの育ちを見守り支援する地域の育児支援機能の充実は欠かせない。

 このような考察のもとに、「仕事と家庭の両立支援」と「地域における子育て支援」の2つの取組を強力に推進するとともに、子育てにかかわる経済的な負担の軽減を含めた総合的な取組を行うことが必要となる。

(さいごに)

 子ども達は、家族や地域社会の喜びであるばかりでなく、これからの社会の希望の存在であり、未来からの預かりもの、これからの日本社会をつくり上げていく力となる。いつの時代でも、子どもはみな、家族の宝であることはもちろん、地域の宝、社会の宝であるといえる。

 少子化の流れを変えるためには、若い世代が、子どもを生み育て、子育ての喜びを感じながら働き続けることができるようにしていかなければならない。そのためには、政府においては、本報告書で提案した、地域における子育て支援」と「仕事と家庭の両立」との2つの取組を強力に推進するとともに、子育てにかかわる経済的な負担の軽減を含めた総合的な施策を可能な限り具体化するよう努めていただきたい。

(以下、資料編)(略)

  1. 専門委員会の名簿
  2. 専門委員会の開催状況