少子化社会対策推進専門委員会(第4回)議事要旨

1.日時

平成18年2月14日(火)14:00~16:00

2.場所

中央合同庁舎第4号館 4階共用第2特別会議室

3.出席者

(少子化社会対策会議委員)

猪口 邦子
内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)

(有識者)

渥美 由喜
株式会社富士通総研主任研究員
案田 陽治
日本サービス・流通労働組合連合副会長
大日向 雅美
恵泉女学園大学・大学院教授
奥山 千鶴子
特定非営利活動法人びーのびーの理事長
佐藤 博樹
東京大学社会科学研究所教授
藤本 保
大分こども病院長
前田 正子
横浜市副市長

(欠席者)

大矢 和子
資生堂執行役員CSR部長

4.議事概要


○猪口内閣府特命担当大臣
 本日からテーマ別討議を進めていく。「働き方の見直し」について、事務局からの資料説明の後、自由に意見交換をしたい。
 資料説明の中で、地方自治体のトップの方々と行っている地方ブロックプロセスで得られたさまざまな意見をあわせて紹介したい。
 既に4回、九州から始まり、東海・北陸、四国、そして先般、南関東のブロックを行ったところである。それぞれの会合での、非常に尊い地方の声、現場の声、国民の声を広く得ながら、議論を深めていきたい。
○増田内閣府少子化担当参事官
 「働き方の見直し」資料1について、これまでの専門委員会での議論や地方ブロックプロセスでの各県知事等の意見を踏まえて、さらに議論を深め、政策提言をしていただくという観点から課題を整理した。
 検討項目の一つ目である「企業の取組の推進」資料2‐(1)(PDF形式:350KB)PDFを別ウィンドウで開きます資料2‐(1)(HTML形式)の第1点目の課題は、企業の行動計画の自主的公表など、企業の先進的な取組事例や参考情報について、効果的な情報提供のあり方にはどのようなものがあるか。2点目は、経営者や管理職層に対する啓蒙・啓発を進めるための方法。3点目は、企業が少子化対策に積極的に取り組むために、どのようなインセンティブが効果的か。4点目は、300人以下の中小企業に対する行動計画の策定推進を進めるための効果的な働きかけ方の方法があげられる。
 課題の背景として、これまでの地方ブロックプロセスにおける各県知事からのさまざまな意見を紹介している。この分野については、行動計画の公表、中小企業への策定拡大という意見がどの県からも寄せられている。
 例えば、県レベルだと301人以上の大企業はほんの一部であり、大多数が中小企業である。そこで働く人たちも多い。したがって、中小企業における行動計画の策定推進が重要である。
 実際に、各県は中小企業を訪問して行動計画の策定などを要請している。したがって、行動計画の公表、推進あるいは中小企業への策定拡大が課題ではないかという意見が多い。
 また、先進的な取組を行う企業に対して、独自の企業表彰制度も実施されている。それによって、各企業において行動計画の策定推進を図ることを狙いとしている。
 例えば、石川県では政策投資銀行と連携した低利の融資制度を創設して、子育て支援に積極的に取り組む企業に対するインセンティブの方策を講じている。あるいは、子育て支援に熱心な企業がさらに取組を進めるように、税制上の優遇措置を検討してほしいという要望も寄せられている。これについては、第1回目の専門委員会で紹介した日本商工会議所などからも要請が挙げられている。
 また、環境ISOについて、10年前までは環境問題についてまだまだ企業の取組が遅れていたが、現在ではISOをとることが当たり前になった。子育て支援に関してもどこの企業も取り組むようになるような環境整備が重要だという提言もいただいている。
 これまでの推進会議や専門委員会でも、企業経営者への啓発、職場復帰支援策、あるいは柔軟な勤務体系、公平で公正な人事評価制度等が必要であるという議論があった。また、企業に対するインセンティブについて、認定マーク制度に対する意見、あるいはわかりやすい指標を公表して、競い合うようにしたらどうかといった意見が出ているので、さらに議論を深めていただきたい。
 次に、行動計画の現在の策定状況を紹介している。301人以上では、現在97%はもう策定届出済み。300人以下では、現在1,422社が届出が終わっている。認定マークの申請予定は、301人以上では、届出企業の20%以上が申請予定があると答えている。
 行動計画の公表について都道府県知事からの要望が強いが、厚生労働省で1月から「仕事と家庭の両立支援! 取組事例に関するサイト」として、取組事例を集めてホームページに掲載する、あわせて行動計画についても公表することを進めている。
 次に、育児休業を利用できたのに取得しなかった理由のアンケート調査結果を紹介している。
女性が育児休業を利用しなかった最大の理由としては、「職場への迷惑がかかるため」が圧倒的に多い。企業、職場での育休のとりやすさといった環境改善が必要と思われる。 検討項目の二つ目である「育児休業の取得促進等勤労者に対する子育て支援」資料2‐(2)(PDF形式:345KB)PDFを別ウィンドウで開きます資料2‐(2)(HTML形式)の第1点目の課題は、育児休業や短時間勤務制度の取得が当たり前の風土づくりのために、企業においてどのような取組が必要か。特に男性の育児休業取得率が大変低い状況にあるため、女性とともに育児を担うためにはどのような働き方の見直しを進めたらよいのかということである。
 2点目は、現在、企業内では両立支援策としてさまざまな制度がつくられてはいるが、なかなかうまく利用されていない。そのため、制度の利用を促進していくためにはどうしたらよいのかという点。
 3点目は、両立支援に取り組む企業に対する効果的な支援方策にはどのようなものがあるかという点。
 地方ブロック会合での自治体トップの意見では、例えば育児休業の取得促進について、愛知県の事例では、育休法の補償に上乗せしている企業では取得率が高い。そういった視点から、育児休業給付金支給額の引き上げといったような意見も寄せられている。
 また、企業の取組への支援としては、長崎県で民間の人材派遣会社と連携した育休中の代替要員確保の仕組みづくり、あるいは、事業所内保育所を増やしたいが、なかなか基準に合わないため、国の補助対象をもっと増やしてほしいといった意見が寄せられている。
 いずれも現行制度を参考資料として用意しているので、適宜ごらんいただきたい。
 推進会議、専門委員会におけるこれまでの意見では、サービス産業において女性が多く働いているが、実際、他の従業員への負担増とか代替労働力の確保などで負担が発生してしまう、あるいはキャリアや処遇の点で課題が多いといった点が今まで出されていた。
 また、子育てによる短時間勤務が特別なことではなくて、当たり前のこととしてとらえられるような風土づくりが重要である。企業に対する支援策、代替要員確保費用の一部助成、あるいは税制優遇のインセンティブが必要といった意見が寄せられている。
 資生堂の例で、男性向けに短期育児休業制度、有休の制度を設けることによって、従来の育休制度では取得できなかった人たちが、休業制度を使ったという意見も紹介されていた。
 次に、女性の年齢階級・雇用形態別の雇用者比率の図を紹介している。このようにM字カーブを描いている。特に、正社員の比率が25から29歳層をピークに低下して、その後は、再就職したとしてもパート、アルバイトの比率が高まる。正社員とパート、アルバイトの賃金格差の問題から生涯賃金の差となるため、いわゆる機会費用の点でも課題となってくる。
次の女性の就業状況についてのデータでは、M字カーブについて、潜在的な労働力率はもっと高くなっている。一方、第1子出産を契機に約7割の方が離職している。したがって、仕事と育児の両立支援あるいは再就職支援といったところが大変重要ではないか。
 次は育児休業取得率のデータを示したものである。平成16年は、女性は70%、男性は0.56%だが、先ほどのデータにあったように、第1子出産で女性の3分の2は仕事を離れているため、残った方の7割ということであり、全体としては、まだまだ低い。ましてや男性は、まだ1%にもなっていないため、子ども子育て応援プランでは女性80%、男性10%を目標として、今後、対策に取り組んでいくということである。
 次に、事業所規模別の育児休業取得率などのデータを紹介している。規模別では、女性の場合は大企業の方が取得率が高い。男性の場合は、もともと数字は小さいが、小さな企業の方が若干高い傾向がある。
 また、就業規則に育児休業制度を規定している事業所の割合は、応援プランでは100%を目標としているが、中小企業ではまだ低い。勤務時間短縮などの制度がある事業所の割合、子どもの看護休暇制度がある事業所の割合等を見ても、まだまだ企業間で差がある状況である。
 検討項目の三つ目である「仕事と生活の調和のための働き方の見直し」資料2‐(3)(PDF形式:366KB)PDFを別ウィンドウで開きます資料2‐(3)(HTML形式)の第1点目の課題は、仕事と生活の調和のとれた働き方を社会全体で普及・定着していくためにはどのような取組が必要かという点である。2点目は、労働者個々人の生活に配慮した労働時間、休日・休暇の徹底のための企業内での取組をどのように推進していくのか。3点目は、パートタイム労働法や同法の趣旨に基づいて、パートタイム労働者と正社員の均衡処遇をどのように推進していくのかという課題である。
 地方ブロック会合での自治体トップの意見では、現在、各県においても、行政と企業団体あるいは企業を巻き込んで、一体となった運動を起こしていこうという動きがうかがえる。例えば、徳島県では子育て憲章を策定中である。岐阜県では、有識者と地元企業の経営者によるリレーシンポジウムを実施する。あるいは神奈川県でも次世代育成支援関連企業懇談会を設置するということである。政府としても現在、子育て支援官民トップ懇談会を開催中であり、来年度からは官民一体となった連携事業、国民的運動を実施していきたい。
 また、柔軟な働き方について、勤務時間の中に子育て支援の時間も認めるように指導したらどうかといった意見が寄せられている。
 これまでの推進会議、専門委員会での意見では、子育て中の機会費用が大変大きいため、軽減策が重要である。企業との両立支援策の活用促進。いろいろな制度はあるけれども、うまく使えていない。これをもっと有効に活用できるようにするにはどうしたらよいのか。また、男性の働き方の見直し、あるいは多様な働き方の実現といった意見があった。こういった点について、本日さらに議論を深めて、また具体的な提言をいただきたい。
 次に、男性の長時間労働の状況を示している。90年代よりも現在の方が、特に20代後半から30代前半、週60時間以上雇用者が4人に1人というふうに、長時間労働が高まっているというデータである。
 次に、年次有給休暇の取得率の低下あるいは取得日数の減少傾向を示している。最近10年ぐらいは取得日数の減少、取得率の低下傾向が続いている。
 次に、年次有給休暇の取得にためらいを感じる理由として、みんなに迷惑がかかると感じる、後で多忙になる、雰囲気で取得しづらい、そういった意見が寄せられている。
 次に、短時間労働者数と割合だが、現在、増加傾向にあって、女性雇用者の約4割は短時間労働者が占めているというデータである。
 次に、一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差の推移を示しているが、時給換算で見ると、パートタイム労働者の賃金は一般労働者の3分の2になっている。やはりパートタイム労働者と正規雇用者の均衡処遇が課題である。
 検討項目の四つ目は「女性の再就職等の推進」資料2‐(4)(PDF形式:315KB)PDFを別ウィンドウで開きます資料2‐(4)(HTML形式)である。これについての課題としては、子育て中の女性が再就業に必要な情報やサービスを利用しやすくするための方策は何か。企業が再チャレンジを目指す女性の積極的な採用を進めるための方策は何か。再チャレンジに向けて準備を行っている段階でも、保育サービスなど両立支援策を利用しやすくするための方策は何か。また、NPOやコミュニティビジネスなど、就業以外の分野における再チャレンジを推進するための方策は何かといった点である。
 再就職支援策については、昨年12月に政府で女性の再チャレンジ支援プランをまとめているので、参考資料に載せている。また、厚生労働省、経済産業省、文部科学省の政策を挙げているが、こういったものも踏まえて、先ほどの課題を念頭に置きながら、さらに再就職支援を進めるためにどのような方策があるかといった点をご議論いただきたい。
 次のデータは、女性の場合M字カーブをなしていて、実際の潜在的労働力率はもっと高いということを示している。
 次は、高学歴の女性ほど再就業が進んでいない状況にあるということを示している。
 次は、女性の起業希望者は50から60万人で推移しているが、特に30歳代を中心に子育て期に多い。この辺の支援策が課題ではないか。
 次に、再就職先を探すのが困難な理由として、賃金や労働時間、あるいは年齢制限を理由とする人の割合が高い結果となっている。
 以上、本日議論していただくためのそれぞれの項目と課題、データについてご説明した。
 最後に、イギリスのワーク・ライフ・バランス運動、これは本年版の少子化社会白書でも紹介しているが、参考になる政策ではないかということで、簡単にご説明したい。資料3
 イギリスにおいては、ブレア政権になってから仕事と生活の調和─ワーク・ライフ・バランスを進めることが、企業にとっては競争力を高めて業績向上につながり、労働者にとっては生活の質の向上につながるという認識のもとに、2000年3月からキャンペーンを開始している。
 背景の一つは、景気の拡大に応じて労働需要が逼迫して、柔軟な就業形態が導入されつつあったということである。例えば時短型で、学期期間労働とか期間限定時短制度、あるいはジョブシェアなどの制度がつくられてきた。
 また、企業経営者の方でも、仕事と生活の調和策が企業の経営、従業員の処遇確保の面でメリットがあると認識している。また、ブレア政権も、これが「福祉から就業へ」という政策に一致するということで始めたと聞いている。
 「仕事と生活の調和キャンペーン」の内容は大きく二つあり、一つはチャレンジ基金プログラム。これは政府から企業に対して1年間の無料コンサルティングを派遣するというものであり、3年間に448企業が支援を受けたということである。
 もう一つは、先進事例の紹介。企業の取組について広く情報を提供して、他企業にも影響を与えるというものである。
 このような「仕事と生活の調和キャンペーン」にプラスして、さまざまな条件整備を行ったところも特徴的ではないかと考えている。新たな労働規制の制定、あるいは出産・育児休暇の法改正、子どものいる世帯への経済的支援、保育所整備などを行っている。つまり、総合的な対策、政策パッケージを打ち出しているということである。
 労働時間の関連政策、出生・育児に伴う休暇などの制度。このキャンペーン中に出産休暇手当を引き上げたり、父親休暇をつくったりしている。経済的支援として、児童給付の引き上げや児童税控除、チャイルド・トラスト・ファンドの導入を行っている。また、保育所の整備を進めている。
 このような施策を講じた結果、出生率の向上を直接の目的としたものではないが、結果的にはイギリスの合計特殊出生率が1.7前後であり、働きやすい環境の整備が出生率の向上に寄与しているのではないかとみられている。
○猪口内閣府特命担当大臣
 大臣室に特命室を直轄でつくり、この少子化対策について全力を投入する決意であるのでご協力をお願いする。
 「少子化の流れを変えなければならない」と総理は施政方針演説で断言した。議論の前提として、多くの努力をしてきた。しかし、少子化の流れを止めることができなかったというところから議論をスタートさせなければならない。「これだけよい施策を展開してきたにもかかわらず、なぜ」について答えることができなければ、「少子化の流れをとめなければならない」という総理の決意を実現することは難しいと思う。ぜひその議論の大前提をご理解いただきたい。
 考える上で、二つのことがあると思う。一つは、既に構築した制度を修正ないし改善ないし、さらに促進することによって解決する部分がかなりあること。もう一つは、今後さらに必要とされる施策、この二つのイメージが必要ではないか。エンゼルプランから始まり、応援プランに至るまで、かなりの部分の制度設計がなされている。今日の資料でそれを活用しにくい状況が幾つか出ていたが、制度をどう改善したり強化したり機能的に推進すれば少子化の流れはとめられるのかという観点の議論と、対策として新しいことを考えなければならないのであれば、どういうことなのかという観点の議論である。
 では、最初の「企業の取組」から意見交換したい。
○渥美委員
 四つの課題のそれぞれについて意見を申し上げたい。
 まず一つ目の、企業の取組を促進するに当たって効果的な情報提供。国ができることと地域だからできること、二つあると思う。ご説明のように、地方で独自に認定制度をつくっているところがある。「認定」とは、やっている企業しか評価されないために、これまでやってこなかった企業にとってはハードルが高い。もっとハードルを下げて、「これからやります」という積極的な意向を持っている企業はどんどん拾い上げていこうという姿勢で、福岡県や埼玉県、千葉県は「子育て応援企業の登録」という試みを開始している。例えば、福岡県では宣言をしている企業は、2月時点で180くらい。福岡県には23万ぐらい企業があるので、まだまだこれからだが、あと2年で1,000まで持っていくと目標が掲げられている。このように、ハードルを下げて自主的な取組を促す方法は有効である。
子育て応援宣言企業のアピールの仕方としては、まず、やっている企業に担当者が足を運んで「ぜひ子育て応援宣言してください」と働きかける。そして、企業が宣言すると、同業他社に行って「おたくのライバル企業はこういうことを宣言しているが、関心がないか」と広げていく。企業は横並び意識があるため、他社がやると「自分たちも」となるので、一つのアイデアだと思う。
行動計画は「これからやっていく」という上乗せ部分しか書けないため、これまで先進的な取組をしている企業ほど「これからやる」という上乗せのプラスアルファを書くのが難しい、というジレンマもある。子育て応援宣言であれば「今までうちは20年間にこういう制度でやってきた。そして今、こういう数字になっている」ということを企業が自由に、自主的にアピールできる。このような取組は国でもあり得るのではないか。
二つ目の経営者への啓発については、既になされている、21世紀職業財団の両立指標について述べたい。両立指標は同業他社と比較した順位が出るため、例えば、人事担当者が、うちの企業は同業他社と比べると真ん中ぐらい、もしくは下位にあると「うちもやらなくてはまずいのではないか」と経営者にアピールできるという点では非常に有効だと思う。ただし、この両立指標については、既に2003年に経団連が指摘しているとおり、育児休業に関するポイントのウエイト配分がとても大きく、育児休業に政策誘導しているのではないかと思う。
例えば、企業内託児所の配分と、育児休業をちょっとでも上乗せした場合とポイントが全く同じだが、企業内託児所は年間数千万円という単位で運営費用がかかる。それを1年1カ月という育児休業と全く同列には評価できないと思う。この他にも多様な働き方の選択肢のポイントをもっと上げるなど、改善の余地があるのではないか。
三つ目のインセンティブについてだが、企業の知名度を上げるという面では工夫する余地が多い。例えば、福岡県では地域の広報誌に、子育て応援宣言企業の名前を180社列挙した広告、あるいは宣言企業の経営者たちの座談会を掲載した記事を多数載せている。そうすると、従業員がそれを見て「うちはこういう宣言をしているんだ」と両立支援の制度を利用しやすくなったり、また「御社はいいことをやっているんだね」と周囲に認められて、地域の中でのCSRの効果がある。企業の経営者にとっても、紙面に登場することで、やる気も出てくるというプラスの効果があるようだ。
そのような地域ならではの働きかけを、今後もっと広げていけばいいのではないかと思う。例えば、認定企業や子育て応援宣言企業を取り上げたパンフレットを、自治体が地元の企業に対して「もしこういうことに興味があったらご連絡ください」というアンケート用紙をつけて配布する。そして、○をつけてきた企業があれば自治体の担当者が足を運び、国の助成制度や自治体の取組を説明する。そういうきめ細やかな対応が必要なのではないかと思う。
その他に、企業へのインセンティブとして「税制優遇措置」が挙げられるが、例えば法人税の税制優遇措置だと、中小企業は今、実際非課税のところが多いため、インセンティブにならない可能性もあるので、それ以外の方法を検討する必要がある。
四つ目の中小企業への働きかけだが、中小企業のヒアリングをしていると、育休取得者の空き要員に関する人材の紹介ニーズがとても強い。中小企業において、人材確保の面で特に困るのは専門職だが、専門職には会報誌が全国津々浦々、各エリアにあるなど、独自のネットワークがある。ある自治体では、地域の子育て応援宣言企業の人材募集が出ると、そういうネットワークに情報提供する。専門技術を持った人はその情報にアクセスして、空き要員を募集している企業に申し込むという形で人材確保のシステムをつくっている自治体もある。このように、地域のネットワーク、技術者など職業集団のネットワークなどが連携した「人材バンク」を地域単位で作っていくのも有効な方法なのではないかと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 横並びのカルチャーを逆手にとってというのは大変興味深い。
○佐藤委員
 特に今やった方がいいのではないかということが二つある。
 一つは、経営者への啓蒙・啓発について、「こういうことが必要ですよ」と言うだけでは弱い。やはり企業経営にとってどういうプラスがあるかをデータ的に裏づけたものを出す必要がある。
 海外では、例えば生産性、従業員1人当たりや企業全体のパフォーマンス、あるいは定着率や人材確保についてデータを出して説得している。やはりそういうものをつくっていくことがすごく大事だと思う。
 また、企業のインセンティブについてだが、インセンティブ、プラスをつけることも大事だが、企業からすると、女性を雇用すると、妊娠・出産、育児休業、子育て期に入るわけだが、そういう人が多い企業とそうでない企業を比較したときに、多い企業の方がコスト増だとなると、企業に「雇い続けてください」と言うことは難しいと思う。女性が早くやめてくれた方が、子育てしない方が企業のコストがかからないということになると、やはり進めるのはなかなか難しいと思うので、ここをどうするかである。
 これについて、まず企業の側の誤解がある。どういうことかと言うと、例えば育児休業の間も給与を払わなければいけないと思っている経営者がまだいる。実際は、育児休業中はノーワーク・ノーペイであり、給料を払わなくていい。これは常識だと思うが、結構知らない経営者がいる。まず誤解に基づくコスト意識をなくすことがすごく大事だと思う。
 その上で、まだコストがある。何かというと、例えば、育児休業期間中は働いていないため、使用者側の社会保険料は今、負担しなくてよくなっている。ところが、産前・産後の休業中の社会保険料免除はない。そうすると、休業期間は6週間プラス8週間ですから、14週間というのは給与は払っていないが、その間、経営者側には社会保険料負担がある。当然それは企業にとって負担増になる。14週間だと、企業側にとっては1人当たり大体5~6万円の負担になる。つまり、働いてもらわないにもかかわらず負担している。ここの部分については、妊娠・出産する前に辞めて、その後、戻ってきた方が企業にすれば負担にならないという事実ある。明らかにディスインセンティブになっており、そのような制度はなくさないと問題ではないかと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 定着率等、データ的に子育て支援企業が収益率もよいという裏づけはあるのか。
○増田参事官
 そこは大変大事なポイントである。イギリスの、ブレア政権のキャンペーンが成功したのも、企業の経営者にもそのような意識があり、それはデータがもとになっている。
 日本では現在、研究中であり、企業からも事例を集めて、これから分析していきたいと思っている。
○猪口内閣府特命担当大臣
 海外の事例でも、海外のデータでも構わないかもしれない。
 もう一つについては、既に財源が企業で決まっているため、それを動かすことについては、いろいろと考えてみなければいけない。
○佐藤委員
 意外と皆さん誤解していて、育児休業中は社会保険料が免除になっているので、産前産後の休業中も免除になっていると誤解している人が多い。
○猪口内閣府特命担当大臣
 育児休業中の誤解については、徹底できるかと思う。
○渥美委員
 業績にプラスとなるというデータだが、私がヒアリングした120近くの先進企業と一般企業とを比較したデータをみると、10年前の売り上げと比べて一般企業は2割近く売り上げが落ちているが、両立先進企業は逆に売り上げは3割近く伸びている。
これについては、そもそも業績がいいところがやっているという相関も考えられるため、現在、検証を深めているところだが、業績の上では明らかに両立先進企業の方が順調である。
○猪口内閣府特命担当大臣
 では、後でシェアさせてほしい。
 その他の要因で上がっているとしても、子育て支援を充実させるような先駆的な企業は、その他の分野においても恐らく突破力があるのではないか。因果関係が逆だとしても、いい因果関係ではないか。
○案田委員
 ソフトの面で少しお話ししたい。子育てしている従業員に対して、いかに上司が配慮するかは非常に大きな課題で、無言のプレッシャーが男女ともにかなりあるのではないか。
 そのようなものを排除していく運動の展開として、今までセクシャル・ハラスメントやクールビズなど、企業内でも定着している運動があり、社会的にはホワイトバンドも若い方に広がったが、ぜひそのような成功事例を研究して、職場の中に根づくような運動を浸透させる必要があると思う。
 シンポジウムなどでの政労使のトップによる呼びかけは非常に大事だと思うが、実際に参加している方を見ると、どうも一部の有識者とか関心の高い、自分で時間のある人が参加しているのではないかと感じられる。いかに子育ての世代、子育てをこれから形成していく世代、子育てを卒業した上司の世代、そのような人が参加するシンポジウムにするかが大事だと思う。
 実際に、開催場所に託児所とかプレイスペースが設置されていない。子育ての世代が子どもを連れて行っても参加できないという意見も聞く。そのような配慮も行っていく必要があると思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 託児所が設置されていないことについて、少なくとも国がやるイベントでは何か徹底する方法があるといい。
 また、自治体に対しても、そのような意識をもう少し強く高める方法を考えなければいけない。
○前田委員
 自治体の現場から、これがいいのではないかと思うのは、佐賀県の入札制度だ。
 私も横浜市の公共事業担当の課に、育児休業制度や障害者雇用比率などを入札の中に盛り込めないか何年も前からお願いしている。しかし、財政難でコストを下げなければいけないという中で、子育てにやさしい企業や、障害者雇用についてどういうハンデをつけるのか、訴訟のリスクなども抱えながら先頭切って新しいことをやるのは、担当の人は怖い。
 横浜市では今回、指定管理者制度に800の施設を移行したので、福祉局が持っている施設に関しては、障害者雇用をどういうふうに促進するかという提案を盛り込んでもらうプロポーザル方式を行った。それが精一杯だったが、これも、国の誘導策で、環境ISOやリサイクルなどのように、企業がこういうことをやることが、社会的責任を果たした上でマーケットでも残っていくための一つの大きなきっかけになるように、入札制度や補助金のところで検討していただければ非常にありがたい。
 国が自治体のそのような取組を誘導するガイドラインがあれば、それに伴っていろいろできる。自治体では、こういうことを盛り込まなければいけないと思いつつも、価格にかわる客観的な手法として入れることができるか、非常に悩みながらやっているため、ある程度ガイドラインがあるだけでも随分踏み切れるところがあるのではないか。
○猪口内閣府特命担当大臣
 国には会計法の考え方がある。しかし、自治体の取組ということであれば、ある程度の幅があると思う。
○案田委員
 企業のインセンティブの件だが、金融機関からの融資や、助成以外にもいろいろな施策があるが、それが各県独自にではなくて、ぜひ国の施策として具体的に出していただきたい。
 地域ごとに取り組むということもあるが、成功事例が出てきたら、それをある程度バーとして、国としての取組の中に入れていく必要があるのではないか。
○猪口内閣府特命担当大臣
 まさに国としての施策の議論を深める、そしてまとめていくというのが推進会議のプロセスであるので、それを今、やっている。
 今、いろいろな自治体の取組を見ているわけだが、それがある程度重なってきたら、国としての取組として考えてもらいたい、そういうご意見でよろしいか。
○案田委員 
 子育てを支援している企業は、支援すればするほど負担感があるので、それについて、金融機関の活用、助成、あるいは法人税の優遇など、そういったものをぜひ具体的に実現していただきたいということである。
 それをやるときに、どういうところが子育てを支援していると見るのか、その基準をつくることが大事ではないか。今までよりも進んでいるということもあるが、絶対的な基準として、実際に従業員に対してどういう支援をしたら認定マークを出すのかといったことや、もっとバーの低い中では、それに手を挙げる、支援宣言というのか、そういうものを挙げるというバーもある。そういったものの組み合わせが大事だと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 次世代法で認定マークを出すことにしているが、そのほかにというお考えか。
○案田委員 
 その認定マークを出す基準である。
○麻田職業家庭両立課長(厚生労働省)
 次世代法で、民間企業がつくる一般事業主行動計画、これは自分で立てた目標を達成して、かつ幾つかの客観条件を満たした場合には、認定マークを使っていいという認定をすることにしており、これについては、もう既に基準が決まっている。
○奥山委員
 企業に対して言うときに、制度だけでなくて、なぜ企業が子育てをサポートしなくてはいけないのかというところが押さえられなくてはいけないと感じている。
 例えば、子どもたちが育っていく家庭で、やはり父親の役割というのは非常に大事なはずなのに、こんなに企業に拘束されていて家庭には母と子しかいない。これで健全な育ちができるわけがないし、子どもたちが家族のイメージを持つわけがないということを考えると、企業は無意識かもしれないが、非常に子育てに、家庭に対して影響を与えているんだという、その目に見えない責任を問われなくてはいけないと思う。それをきちんと企業のトップの方にご理解いただかないと、いろいろな制度をつくっても小手先で終わってしまうのではないかと思う。
 広報、宣伝などデータを活用するものの中には、やはり今、子どもたちの育ちが非常に厳しい状況だということ。そこに企業がどういう影響を与えているのかということをきちんと出してほしい。どこかの労働機構の調査で、専業主婦の不安感が男性の働き方にも影響しているというデータがあった。やはり安心して働けるということが、その方の家族にも大きな影響があるということも含めて、従業員の幸せが子育てにも大きくかかわるし企業の業績にもかかわるということを訴えたい。
 先ほどのホワイトバンドに通じるが、国民のシンポジウムをチェーン的にやることだけでなくて、広くすべての国民の目に触れ、そして意識づけされるような運動を進めなくてはいけないのではないかと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 すばらしいご指摘だ。具体的な施策の方ばかりを考えがちだが、そのベーシックなところである。それを共有していただくために、クールビズのような、非常に浸透力のあることをぜひ考えていただきたい。だれでもわかりやすく、そして自分の努力の範囲で実行でき、そして職場カルチャーとして広まっていくような。一番重要なところかもしれない。
○渥美委員
 中小企業の行動計画策定を進める上で、「男性の育児休業取得者の実績1人以上」という認定マークの基準がハードルになっている。中小企業の中には、女性が多い職場で両立支援を一生懸命やっている一方で、若い男性が少ないために、男性の育児休業取得の実績を出したくても出しにくいジレンマを抱えているところもある。
 こういった企業が認定マークがもらえない結果となると、気の毒である。そこはもう少し柔軟に考えた方が、中小企業の行動計画策定は進むと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 数々の貴重なご意見をいただいた。次の「育児休業の取得促進等、勤労者に対する子育て支援」に移りたい。
○渥美委員
 男性の育児休業取得意向だが、必ずしも取りたくなくて0.6%になっているわけではない。男性・女性に関わらず育児休業に伴う三つのロスがある。所得ロス、これは雇用保険で手当てされない6割のロス。二つ目はキャリアロス、三つ目が業務知識ロス。男性の場合は主たる家計の担い手であるケースが少なくないために所得ロスは足かせとなっているが、とはいえ、所得ロスの軽減、すなわち雇用保険による所得保障を拡充するとなると、現実でも厳しい雇用保険財政がさらに増進する。仮に、将来の男性育児休業取得率10%という目標が達成されたら、それだけでたいへんなことになってしまう。したがって、所得ロスへの対応は財政面では慎重になるざるをえない。
 とすると、キャリアロスへの対応策が考えられるだろう。ある企業では、育児中にわずかな時間でもテレワークできる制度を始めた。現在、職種によっては、自宅でも働ける環境はある。育児中に少しでも働いて、それが評価されればキャリアロスにはつながらない、業務知識ロスもないということで、従業員ニーズが非常に高かったために導入されたと聞いている。そのためには、育児休業は何回かに分けて取得できるように制度改正することも検討すべきだ。
 キャリアロスは公務員にはない。休んでもそのまま昇格していく。一方、民間では両立先進企業であってもキャリアロスがない企業は私が知る限り二つか三つしかない。しかもそういった企業では育休注に昇格することが他の従業員の耳に入ったら、「それは不公正ではないか」と文句を言われかねないので、余り広めないで欲しいとデリケートになっている。
 昨年、スウェーデン企業に対してアンケート調査を行なったところ、1割の企業では育休中にむしろ評価を上げていた。つまり、取得前にB評価だった社員が、休んでいた間にAとなる制度をとっている企業が1割あった。その理由について企業10数社にヒアリングしたところ、子どもを持ってやる気も出るだろうし、めりはりのある働き方をするようになり、時間あたりの生産性が上がることが期待できる。あるいは、子どもを持つことは国全体、社会に貢献していることなのだから、ボランティア休暇を評価するのと同様に評価しようという考え方だった。こういう考え方を、もっと広めることも考えられるのではないか。
 さらに、育休取得者に対して復職後に給与の上乗せ給付を行なっている企業があるが、ある中小企業ではそれに加えて周囲の同僚達にも給与の上乗せ給付をしている。すなわち、育休取得者の周りの同僚の負担が増える点を考慮して、独身者や子どもがいない従業員の間で不公平感が生じないように所得を上乗せしている。
 このような企業をモデルとして提示することも、今後、ぜひ厚生労働省で検討していただきたい。
 前述のようにキャリアロスがない企業は名前を出したくないので匿名にしなければいけない。現在、厚生労働省で検討されている行動計画をHP上で公開する方法に加えて、企業名を伏せることで、より詳細な取組を紹介したり、さらにいろいろな企業の取組を体系的に整理して、課題ごとに解決策を抽出し、提示することも必要ではないか。
○猪口内閣府特命担当大臣
 育児休業中にみんなに迷惑をかけるというのは日本的な風土だと思うが、代替要員の導入がない。地方ブロックプロセスの知事からも、それを促進するために、費用について何らかの助成なり支援をするか、あるいは法人税の中で控除を考えるか、いろいろなことを考えてほしいという意見が出ている。
 代替要員ではなく、所得保障という形で、上乗せ保障のような形であれば、企業の支出負担も少な目だろう。
○案田委員
 仕事に人をつけている企業は、社員が休業した場合にはその能力のある人間を代替要員として雇い入れるが、人に仕事がついている場合は、なかなかそうならない。そうすると、もっとシステム的に仕事ができる企業にそれぞれ脱皮していかなければいけないのではないか。
 そういったことを踏まえて、企業の中での仕事の見直しと、代替要員をどういうふうに入れて、どういう能力を持っている人ならば代替が可能かということを考える上で、コンサルタントの力を借りるという手もあるのではないか。そのコンサルタントを雇う費用の助成なども有効だと思う。そして、その能力のある人が人材バンクに登録してあるという仕組みをつくることが大事だと思う。
○麻田職業家庭両立課長(厚生労働省)
 今、代替要員についてどのような支援があるか、2点申し上げたい。
 育児休業をとっている人や産前・産後休業をとっている人に賃金の支払い義務はないため、そこで代替要員を雇って賃金を払って、企業に損になるという構造にはなっていない。
 しかし、育児休業は代替要員がある方がとりやすいということで、今、2種類の助成金がある。1つは、現職復帰の制度を企業内で導入して、かつ、育児休業の取得者が出て代替要員を雇った場合に、最高50万円の助成をすることとしている。
 また、来年度から、100人以下の中小企業で、1人目の育児休業者、あるいは1人目の短時間勤務者を出すことを目的にして、期間限定で、1人目の育児休業者が出たときに100万円、2人目で60万円という大型の助成をすることにしている。
 代替要員を雇ったからといって、その賃金は丸々企業の損になるわけではなくて、休んだ人の分を充ててもらえばいいのだが、それでもやはりいろいろコストがかかるというような受けとめ方もあるので、呼び水にするために、いろいろな助成をしているということをご紹介させていただいた。
○猪口内閣府特命担当大臣
 最初にとった人に100万円というのは、案外とブレークスルーになるかもしれない。実際にそういう人が職場にいるのを見て、「では、私も」といった風土づくりが狙いだと思うが、これが十分に活用されるかどうか、さらによく検討していただきたい。
○佐藤委員
 今の代替要員にかかわるが、育児休業取得者の代替要員を直接そこに入れることで済むような職場は実際上余りない。ある程度同僚がサポートし、補助的な仕事に代替要員を入れるということをやらざるを得ない。やはりだれかが育児休業をとると、いろいろ工夫しても周りに負担がかかるのは間違いない。それを「同僚に迷惑がかかる」と思うのではなくて、「お互いさま」と思えるような仕組みをどうつくるかが課題である。
 そのためには、両立支援が子育てだけではだめだ。職場にはいろいろな人たちがいるわけだから。子育てが終わった人もいれば独身の人もいる。今は介護がある。だから、例えば介護であるとか自己啓発であるとか、いわゆる社会貢献活動みたいなものまで両立支援の範囲になれば、今はだれかの子育て・育児休業をサポートする、自分が勉強するときにはサポートしてもらう、そういう仕組みがない限り、いつまでたっても「人に迷惑がかかる」ということになると思う。
 一つの解決は、両立支援の範囲をある程度、広げていくことだと思う。
 もう一つは、もちろん代替要員をとれるような仕事、例えば教員などはそうだが、それはとるようにした方がいい。しかし、なかなかそうはいかないところもある。これはノウハウである。日ごろからサポートできるような仕組みをつくる。キャリアのある人が休むわけですから、そこはある程度みんなでサポートし、補助的なところに人を入れるとすれば、実際、企業側としては一定の人件費が浮く。休業取得者には給料を払わないわけだから。これをサポートした人に回すことはできると思う。
 そういうやり方についての例をいろいろ提供することが大事かなと思う。
 また、キャリアロスだが、さきほど男性について挙げられたが、男性だけにキャリアロスがあるとなると、また問題だ。一般的には女性の方が育児休業期間が長い。女性はキャリアロスがなくて男性があるとすると、これはおかしい。基本的にはキャリアロスという考え方をなくすことが大事で、みんな何らかの形で長い職業生活の間に介護をしたり勉強したり、社会貢献活動をするというような仕事の仕方に変えていくことが大事ではないか。
○大日向委員
 両立支援の対象を広げない限り、育児、育児というふうに限定していくと、やはり非常にとりづらいと思う。特に中小企業では年配世代の方が多くて、若い世代が入ってこない。そうすると、育休だけをターゲットに次世代育成を論じていくことには限界がある。
 もう一つ、育休をとりやすいように、職場の雰囲気を変えていく方法のもう一つは、成果主義の徹底だと思う。
 ノーワーク・ノーペイはそのとおりだと思う。働いていない人にいろいろ支援をしていくことは、やはり職場の雰囲気として馴染まないものがある。スウェーデンで育休をとるとかえってAランクに上がるというのは国の慣行とか文化の違いだと思うが、日本はまだまだそこまでいかない。育休をとったら、やはりいろいろなペナルティがあって当然である。
 ただし、そのペナルティはその年度内におさめていく。仮に育休を2カ月3カ月とったとそうすると、日本の職場の慣行だと、昇進試験もいろいろな査定も、次の年度までずっと引きずっていく。そうなると、やはり「出世に響くだろう」となってしまう。だから、今年度はあなたはほかの人よりも働いていないんだから、ベアもない、ノーワーク・ノーペイ、あるいは昇進試験も今年度は受けられない。でも、来年は仕切り直してスタートラインは同じだというようなことを徹底することが、本当の成果主義の考え方である。
 企業がなぜ子育て支援をしなくてはいけないのか、そこから論ずることは大切だと思うが、一方で、企業はやはり利潤を上げていくんだ、生き残らなくてはいけないんだというテーゼもある。そことどうやってうまくバランスをとっていくかという議論が必要である。
○猪口内閣府特命担当大臣
 両立支援の枠を広げるということは、社会政策としては非常に正しい方向性である。そもそも日本人は長寿であり、長い人生の中でいろいろなことを両立して自己実現していくし、長い人生の中で労働の中断ということはあり得ることをだれもがある程度、考えながら生きていくことが大切だろう。
○麻田職業家庭両立課長(厚生労働省)
 大きな労働政策の流れとして、子育て中の人だけにいろいろな配慮、保護を厚くしていっても、結局その人たちは特別なグループでコスト高だということになっては進むものも進まないというのは、これまでの経験からよくわかっている。仕事と家庭の両立だけでなく、もっと大きな話として、労働基準局、労働時間の政策を持っている部局で、労働時間の設定改善法、言ってみれば仕事と生活を調和させられるような労働時間の設定をしようという法律を今回つくり、来年4月からスタートさせることにしている。やはりワーク・ライフ・バランスこそが究極の仕事と育児の両立政策だという認識は、急速に今、広がっていると思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 私も、少子化対策から入って、結局、一種の世直し運動にしていくんだというイメージを、1人の政治家として持っている。
しかし、具体的な施策の推進となると、余り広げてしまうと、なかなか少子化の流れを変えるという目的が達成できないと思う不安もある。
ワーク・ライフ・バランスは、今、定着してきている概念であり、次の項目がまさにそれである。こちらに話を広げながらご意見を伺いたい。
○佐藤委員
 私が一番大事だと思うのは、有給休暇である。育児休業は非常に長い休暇なので、育児休業をとると迷惑がかかる。だから、周りがサポートして、ある程度、代替要員を入れてうまく生産性が落ちないようにするという仕組みがなければ、管理職も喜んで送り出せないと思う。
 そういう長期の休業をとった後、うまく回らないような職場では、例えば10日ぐらいの有給休暇がとれないのは当たり前である。逆に言うと、10日ぐらい連続して有給休暇がとれなければ、長期の休業なんてうまくいくわけない。
 そういう意味で、この働き方の見直しをどう進めるかというと、やはり有給休暇の完全消化である。
 今、日本の企業の、従業員が有給休暇を請求したら与えなさいというのではなくて、企業は「とらせなければいけない」と法律の枠組みを変えるというのが一つだと思う。有給休暇を企業はとらせなければいけない。それも、できれば連続して。少なくとも5日連続を2回ですね。そうすると、土日があるから9日だ。そのくらいの有給休暇を連続してとるとどういうことが起きるかというと、仕事の引き継ぎの説明をしなければいけない。その間ほかの人が対応しなければいけない。そうすると、お互い情報共有をしたりサポートをする仕組みが日ごろからできる。そういう仕組みができていないと、例えばだれかが育児とか介護で、長期の休業をとったときにうまく回らない。
 連続して有給休暇をとることによって、仕事の仕方を見直して、長期の休業をとれるようになる。
 長期の休業をとらなくても、長期の有給休暇をとってお互いにカバーし合えると、例えば、だれかが病気になったり、だれかが辞めたときもカバーできる。育児休業は予測できることだが、予測できないリスクもいろいろあるが、連続した有給休暇をとることによって、予測できないリスクも吸収できるような職場をつくっていくことになる。やはり企業は、連続した有給休暇をとれるようにする。長期の有休がとれない限り、長期の休業がとれるわけないと思う。
○猪口内閣府特命担当大臣
 職場のやり方をシステム化するという話とつながると思う。
 ある県庁では、男性の育休を強制的にとらせているといった説明もあった。
○増田参事官
 基本的に育休をとるべきだと。とらない場合には、とらない理由を上司がちゃんと説明しなくてはいけない、そういうやり方をしているという県があった。
○猪口内閣府特命担当大臣
 配偶者が妊娠していることをかなり前から職場として押さえておいて、そして、そのころ「あなたは1週間......」と。1週間ぐらいでも革命的なインパクトがあったという報告を受けている。
○前田委員
 横浜市には3万2,000人の職員がおり、女性が多い職場で、公務員なので、女性はほとんど100%育休をとって復帰してくる。アンケートをとってわかったことは、育休をスムーズにとれるかどうかは、育休をとる本人と上司の能力による。つまり、コミュニケーション能力があり、職場でお互いの仕事がわかり、自分の仕事を正しく分類できて、引き継ぎができる高い能力のある人が育休をとる場合は、余り混乱もない。そういう人たちがなぜ育っているかというと、やはり上司が有能で、職場の中で仕事の配分をちゃんとしている。そういうところは余り混乱もなく、もちろん周りの人に負担はかかるが、代替要員にどういう人が来るべきかということもわかりやすく、周りの人の仕事にも混乱がない。
 コミュニケーション能力が余りなく、仕事が余りできない人の方が、自分の責任や仕事割り振りなどの、引きつぎ能力が低い。低いということは、上司も低いから育て方が悪いのか何なのか、そういう職場ではやはり混乱が起こって、引き継ぎがうまくいかない。
 だから、育休をスムーズにとれるかどうかは、その本人と職場の業務遂行能力の棚卸しだということで、うまく育休をとれない職場の上司は日ごろの仕事ぶりもだめだというような形で何とかうまくやれないかということを検討している。
 女の人の能力もはかられる。子どもは大体官庁が忙しい1月、2月、3月に病気をするので、仕事を前倒しにして準備するとか、経験のない上司に「子どもは病気をするから」ということで理解を持ってもらう必要もある。やはり育休は、自分の業務遂行能力を高めないと職場で生き残っていけないということを学ぶ、いいチャンスでもある。
 これを職場のみんなの仕事のコミュニケーション、割り振り、生産性の高い職場をどうつくるかといういいチャンスにしよう、ということを、やっている最中である。
○猪口内閣府特命担当大臣
 企業の競争力にもつながるといえるだろう。
○渥美委員
 有給休暇の取得率を上げるためには、例えば欧米のように、取得しなかった失効部分を会社が買い取らなければいけない、給料として払わなければいけないという制度をつくる方法が考えられる。また、時間外労働の割増賃金率をもっと引き上げれば、企業はコストを惜しんで従業員を残業させないようになり、賄えない仕事量は従業員を新たに新たに雇用する方向にインセンティブが働く。そういった制度的なパッケージが必要ではないか。
 このテーマでは、企業経営者、中間管理職の意識が遅れているのが問題で、意識改革が必要と言われる。それは事実だと思うが、従業員にも改善の余地があると思う。
 スウェーデン企業のヒアリングでは、企業の稼動人数のうち3割休んでいる状況があり、月曜日に出てない従業員は多いという話だった。このため、従業員は自分の抱えている仕事をオープンにして、休みやすい環境を自分でつくっているということである。
 日本の従業員は責任感が強いのは良いことだが、自分しかできない、わからないということを重視してしまい、自分で休みにくくしている面もある。もっとオープンにして、他の人に代替されやすくする工夫も必要だと思う。
 また、労働組合の責任もあるのではないか。非常に有名な両立先進企業にヒアリングに行った際に印象的な話を聞いた。どうして3年連続でA評価をとっているような優秀な従業員が、1年有休をとっただけでD評価となるのか。また、D評価をいったんとると、1年では消えずに、しばらく引きずってしまうのは、非常にもったいないではないかとたずねたところ、仮にそうしたケースでB評価をつけたとすると、労働組合から「どうしてあの人は働いていないのにB評価なんだ、私は働いていたのにD評価だ」というように、足を引っ張る人がいるという話を聞いた。
 このように、必ずしも企業経営者や管理職だけの責任ではなくて、やはり企業で働いている人全員で考えていかなくてはいけない面があると思う。
 育休をとることは業務効率化のバロメーターというのは本当にそのとおりだと思う。ある中小企業のメーカーでは、育休取得者が出るときに全社一斉に業務の棚卸をやる。すなわち、空き要員を補充する代わりに業務の無駄をなくす改善運動により空きを埋めている。その結果、そのメーカーでは不良品発生率をコンマ2桁落としたと聞く。こういう目に見える形での業績アップの事例もある。
 また、別の中小企業のメーカーでは、エース研究者が女性で、その方が育児休暇を取得したら非常に困ってしまうという状況のときに、その方の仕事を難易度でランクづけして、容易な仕事は派遣社員が代替する。難しい仕事は同僚ができるように引き継いで、その方の育休中を乗り切った。そして、そのエース研究者が職場復帰した後も、容易な仕事は他の人が代替して、難しい仕事だけに専念できるようにした。その結果、そのエース研究者の生産性が上がるとともに、そういう働き方を業務全般に広めている中で、企業全体の業績も上げている。育休取得なり両立支援をマイナスあるいはコストととらえるのではなくて、チャンスであり、プラスにするという発想が重要である。
○猪口内閣府特命担当大臣
 業績評価への育休のインパクトについては、何か制度的にあるのか。
○麻田職業家庭両立課長(厚生労働省)
 育児休業法の中に、育児休業を申し出た、あるいは取得したことを理由にする不利益取り扱いをしてはならないという禁止条項がある。
 企業から大変よく質問を受けるのは、「これは不利益取り扱いに当たるか、当たらないか」と。非常に微妙な問題であるが、一つのガイドラインとしては、休まなかったことを休まなかったものとして評価すること、これは不利益取り扱いには当たらない。ただし、実際に休んだ以上に休んだように評価すること、これは不利益取り扱いに当たる。
 例えば、出勤日数に応じて賞与を払うといったルールがあった場合に、実際に育休で休んだ日数を勘案して、全部出てきた人よりも賞与が少ない、これは別に不利益取り扱いではないが、全部出てこなかったものとして取り扱うということになれば、不利益取り扱いになる。
 それ以外の昇進等にかかわるところは、不利益取り扱いとまではっきりは言い切れない、非常にグレーな部分で、大変難しい問題をはらんでいる。
○猪口内閣府特命担当大臣
 大日向先生のご指摘は、そこが重要だということだろう。制度が今後どう改善できるか、あるいはいろいろな指導の仕方、あるいは啓発の仕方も含めて......。
○大日向委員
 制度としてはあるが、職場ではその制度をよく知らない、あるいは制度に対して誤解がある。
○猪口内閣府特命担当大臣
 しっかりと聞き取った。
 また、M字カーブについてだが、正社員のところはM字になっていない。M字と言っても、なかなか、女性が辞めて戻れないし、第一7割辞めてしまうということをどう改善できるかが大きな課題ではないか。ワーク・ライフ・バランスとあわせて、どうやったらここを何とか改善できるかと。
 やはり辞めなければならないと感じるから、結婚するか、しないかの決断や、出産するか、しないかを先延ばしすることが非婚化、晩婚化にもつながるのだろう。続けながら育てることができるのであれば、結婚する人もかなりいるのではないかと思う。先輩たちが結局は辞めて、戻れていない。10歳上の人がどういう人生を歩んだかということで、若い人たちはみんな、自分の人生を必死で考えるものだ。10歳上の先輩たちが職場に戻れない。その後、パートで戻ったけれども賃金は半分以下である。
 さらに、男性の働き方が非常に、残業時間も多い、典型的な家庭の姿がある。ご飯も全く一緒に食べられない。その辺の全般的な改善が必要だ。
○佐藤委員
 まず、基本的には、企業側の両立支援の取組が不十分で辞めざるを得ないという人もいる。これは企業の側に出産、子育てしながら勤められるようにしてもらうしかない。
 もう一つは、そうではなくて、企業の側の支援が揃っているけれども、別の理由で辞める。これには2つあって、1つは夫の子育て支援がなくて、自分が仕事しながら子育ては大変だという。これは夫の方に変わってもらうしかない。
 もう一つは、やはり自分はこの時期、子育てしようと思って辞める人もいる。その後また働こうと思っているが、今は子育てにかかわる。これはこれでいいのだが、ただ、そのときに、再就業がどういうふうになっているかという情報がなくて辞めて、後からびっくりする人がいる。これはやはり直さなければいけない。もしそういうことがわかっていれば辞めなかったという人も結構いると思う。
 やはり取組の対応というのは幾つもあって、自分はそこで結婚して、子育てに専念して、ずっとそれでいい、それは構わないと思うが、実はそんなに多くない。やはり企業の側の取組の問題、あと夫の問題、あとは、ここは少し子育てに専念して、ある程度子どもが大きくなってから働こうと思ったが、自分が持っていたキャリアに戻れる仕組みがあるかということについて十分な情報がない。これはきちっと情報を出すことによって、やはりそれを知った上で退職するのか続けるのか。
 情報が十分なくて辞めて、後からびっくりするという人も結構多いので、これはやはり何らかの形でなくした方がいいとは思う。
○大日向委員
 M字型のところで、女性の労働力率と潜在的労働力率のギャップがある。これを見ると、30代前半は14ポイントぐらいあり、これは確かに、今はこの子が小さいから育児に専念しよう、そして育児が一段落したら働きたいという差だと思う。
 ところが、40代ぐらいになったところでまた10ポイントの差がある。これは学童だと思う。本当は働きたいが、保育園よりももっと厳しい状況があって、地域によっては学童保育がないから働けない。ギャップの意味が年代によって違う。そこをどうやって手当てしていくかということも、企業側だけではなくて地域の問題、保育の問題、学童の問題と一緒に、連携して論じていくことが必要だ。
○度山少子化対策企画室長(厚生労働省)
 確かに通常の保育のサービスに比べて、量的な意味でも、あるいは普及の度合いという意味でも、放課後児童クラブの方がちょっと遅れた状況にあるということは否めない。
 数的に言うと、保育所に入っている年齢の割合の半分ぐらいしか、まだ放課後児童クラブは活用できていないような状況にある。
 今までやってきたことは、昔は単なる予算事業だったが、児童福祉法を改正して法定化したということ、それから、エンゼルプランや新エンゼルプラン、あるいは今回の子ども子育て応援プランにおいても、基本的には必要とする小学校区にすべて配置ができるようにという考え方をもっている。
 実際には、地方自治体の方の行動計画の策定状況も踏まえて、応援プランの設定は大体小学校区の4分の3ぐらいの数になっているが、基本的にはそういったサービスがどこの学区でも受けられるという体制づくりが必要だろうとは考えており、そういったことに向けて一歩一歩取り組んでいるのが実情である。
○猪口内閣府特命担当大臣
 非常に重要なご指摘をされた。次回に引き継ぐが、ブロックプロセスの中でも、学童保育を全部やめてしまって、それで小学校区内でやる放課後対策、トワイライトスクールとか、いろいろなことをやって、10倍以上の生徒を放課後、面倒見ることができるので、子どもの安全対策からも重要だというご指摘。他方で、やはり地元のお母様方中心に、学童がなくなって非常に辛いという意見も多々寄せられていて、その両方のご意見が今ある。
 今、やはり多様性を持った子育て支援策が必要であり、多様なものを組み合わせる、そしてまた評価をしていかなければならないであろうとは思う。
 子どもが小学校に上がって初めて職場を退職したというお母さん方の声は、やはり日本の育児の現実である。
 子どもの送り迎えで突然退職することを決心した。そういうことを見ながら、今の22歳、23歳の世代の人たちが自分の結婚についてどう考えるかということを少子化対策としては考えなければならない。そういうふうに判断した世代が、今後、辛さのようなものを引きずらないように、また、社会にきちっと復帰できるように考えなければならないないというところが、4番目の課題である。
 これは内閣府でもかなり努力して、女性が社会にカムバックしなければならないと。とにかく日本は無資源国ですから、そういう観点からも。総理も「国民の潜在力を引き出して、発揮させるんだ」とおっしゃっており、その流れの中にある。
 それでは、4番目のところでご意見等を伺いたい。
○渥美委員
 育児により仕事を辞めざるを得なかった女性たちに話を聞くと、小学校入学後の学童保育の問題や時間外保育をやっているところが見つからないという声が多いので、全体で考えていかなくてはいけないというのは、本当にそうだと思う。
 高学歴女性ほど再就職が進んでいないという現状については、2つの要因がある。一つは、企業情報への不安。これは、企業情報にアクセスする方法がわからない、また再就職した後に、両立できるかどうかという不安がある、もう一つは、業務知識ロスができてしまった、自分のスキルは時代遅れになってしまったのではないかという不安がある。
 まず、一つ目の不安への対応策として、企業情報へのアクセスをサポートする取組としてマザーズハローワークがやることになったのは良いことだと思う。ただし、初年度は12ヵ所とまだ少ないので、既存のハローワークの有効活用も重要だと思う。現在、ハローワークでは企業検索できるが、自治体によっては検索項目の一つに「子育て支援企業」を加えているところもある。すなわち、再就職先を探す際に、そのエリアにある両立先進企業を選べるようにすることで、復職後に両立できるかどうかという不安を軽減する工夫がなされている。
 次に、二つ目の不安への対応策として、母子手帳発行時に仕事を辞めている人の登録制度をつくっていて、そこに登録した方が再就職したくなった場合に復職までの多様なコースを用意している自治体がある。例えば、自分はスキルが高いと自信がある方は、そのまま条件に合ったところを探せばいいし、自信がない方についてはスキルアップのための方策、セミナーを受講する、あるいは資格を取得するなど複数のコースを用意している。そういう取組を広めたらいいのではないか。
 また、企業へのインセンティブについて、現状では残念ながら子どもがいる女性をお荷物扱いする企業は少なくないので、そうならないようにインセンティブを働かせなければいけない。例えば、企業に従業員子持ち率を出してもらって、「あそこの企業は1.8いってるらしいぞ」とか、一目瞭然で、少子化の指標になり得るようなものが考えられる。そうした指標を目安として、「もっと子どもがいる従業員を雇おうじゃないか」というように、インセンティブを働かせるのも一つのアイデアではないか。
○名取男女共同参画局長
 やはり情報提供というのは非常に大事なことだと思っており、各地の女性センターの活用を考えている。そちらの方でワンストップサービスのような形で、そこに行けば子どもを預けながら、すべてのいろいろな情報が集まって、場合によってはスキルアップもできるということが広がっていくと、お母さんたちも使いやすいかなと思う。
○奥山委員
 横浜では3カ所あるが、18区の中で3カ所では、まだまだ足りない。例えば地域子育てセンターやつどいの広場で女性の職業についてハローワーク的な紹介ができるとよいのではないか。子育て中のお母さんたちは、電車を乗り継いで出かけるのは非常に大変ですので、身近にそういう場所がたくさんあるということが大事ではないか。
 また、企業がいろいろな準備をしていても辞めてしまう女性が7割という分析はとても大事である。夫の問題というのは確かに大きい。「子どもができたら、あなたが辞めて面倒見るんでしょう」という意識がある。また、うっかり辞めてしまってから、もう保育所にも預けられないし再就職も難しいということに突然気がつくということも実際ある。私たちの「びーのびーの」の方にも、「保育所に入れないんだけれども、もう育休を終わらなくてはいけない。どうしたらいいか」といった相談の電話がある。やはり現実として、今、動いてももう間に合わないといった厳しい現実の中で、やはり妊娠してから復帰するまでの計画をもうちょっと細かくケアできるような体制がないといけない。
 ケアマネのような形で個々人に対応できるようなことができないか。
○佐藤委員
 育児休業をとる人については、その後の復帰のプログラムとか、企業はいろいろ情報提供しているが、辞める人についても辞める前に、例えば復帰するとすれば早目に準備するといった情報を出す必要があると思う。
 辞めたあと、復帰しようかなと思ったときに準備しても遅い。やはり長くなればなるほどそれまでの職業能力は落ちてしまう。極端なことを言うとゼロになってしまう。だから、早目に準備しなければいけないということが本人にわかるようにしてあげないと難しい。ある程度子どもが大きくなったから「では、探そう」とか「勉強しよう」ではもう遅い。もし将来そういうことを考えているのであれば、早くから準備が必要だということがわかるような情報を出してあげる。
○猪口内閣府特命担当大臣
 企業の側の誤解や、あるいは女性の側の情報のなさといったことから起きている問題もかなり多いということに初めて気がついた。
 広報・啓発活動は相当頑張ってやっていたつもりだが、やはり少子化という観点から、なかなかこのテーマをメインストリーム化できてこなかった結果があるのかもしれない。やはり報道機関の協力も得て、情報提供、あるいは考えるきっかけをつくるということもやらなければいけない。
○大日向委員
 私の子育て広場で、再就職のライフデザイン講座というのをやっている。やはり赤ちゃんにおっぱいをあげたり、育児の真っ最中のときから、何となく子育て終了後、一段落した後のことを考えるが、まだ心ががんじがらめになっていて、本当に私、この子を保育園等に預けて働いて大丈夫かといった不安をお持ちのお母様たち、たくさんいらっしゃる。そういう方々に「全く心配ない」と言うのも無責任ですが、「こういう条件を整えていくと大丈夫ですよ」という情報提供を何回か講座でやっている。そうすると、それを受けて心がまず解き放たれて、それからその次に、では、具体的にどういう再就職講座を受けて準備したらいいかというふうに動き始める。小さな試みだが、そんなことも全国的に広がっていけばいいと思う。
 それからもう一つ、資料としてお願いしたいのは、今日はイギリスのワーク・ライフ・バランスについて大変詳細な資料をいただき、とても勉強になった。
 諸外国の例として、女性の再就職あるいは復職に関して、フランスの事例を、もう少し教えていただきたい。というのは、フランスとドイツを比較したときに、男性の育休取得は余り変わらない。それでもフランスの方が、今、少子化が止まっていて、少し回復し、ドイツはずっと低迷している。その違いが女性の再就職のあり方、復職のあり方に関連していると少し聞いたことがあるが、十分わからないので、次回で結構なので、詳しいデータ等を今日のイギリスのような形で教えてほしい。復職プランとか、それをバックアップする保育所の問題等、いろいろ勉強したいと思っている。
○増田参事官
 ただいまの件は、昨年、内閣府の経済社会研究所がフランス、スウェーデンなどの働き方等を比較したデータがあるので、整理して、次回またご説明したい。
○奥山委員
 ここの課題の中に、NPOやコミュニティビジネスなど、就業以外の分野における再チャレンジというのがあるが、私もNPO法人の1人として、確かに、再就職をして正社員として戻るという道も一つの選択ではあるが、通勤1時間かけて、子どもを保育園に預けてまで働くというと、それはそれでちょっとハードルが高い。都心部においては。その場合、やはり親としては身近な所に子どもの気配を感じながら、PTAにも出たい、保護者会にも出たい、だけれども自分自身のキャリアも考えたいといったときに、やはり地域で企業するという選択も考えていきたい。
 私たち「びーのびーの」の活動も、まだまだ雇用にまでは結びつかない事業だが、少しずつ、いろいろな意味で働き方を考えてきている。
 全国のNPOの人たちは、例えば地域の情報誌をつくったり親子の広場を運営したり、いろいろな意味で取組始めている。正社員としてはなかなか難しいが、そのステップとしてのコミュニティビジネス等の支援、そして、やはり生活に根差した、当事者の目線での起業ということが、もう少しいろいろな意味でできてくればいい。その一つのできてきた形としては、例えばワーカーズコレクティブというような働き方や、生協活動とか共同購入とかがあったわけだが、それは物を購入する形だったと思う。もう少し福祉分野でビジネスができてきたらいいのではないか。そこをぜひ、経済産業省の方も含めて支援の形ができてきたらいいと思う。
○三田官房企画官(経済産業省)
 経済産業省では、起業支援という施策があり、全国、地域の商工会議所などに協力していただき、起業塾のようなものを開催したり、あるいはファンドの面についても、支援策を一部持っている。
 また、今年4月から、サービス産業創出支援事業の中で、新しく、子育て関係の事業についても、地域のNPOなどと一体的に実証実験をしていきたいと考えている。
 さまざまなNPO法人から今、問い合わせも来ており、新しい就業の形態であるとか、あるいは新しいサービスの創出であるとか、そういったことを期待しているところである。
○塩満参事官
 内閣府の男女共同参画局では、地域における起業に関して、支援体制、ネットワークづくりを進めていくということで、平成18年度、新規に予算をつけて、モデル地域指定事業を行う予定である。
 また、女性が再就職できなかったり、子育て後に、何を選択したらよかったかということで後悔するような場合もあるので、そういうライフプランニングの支援のための調査も進めて、女性が後悔しない、再チャレンジできるような、そういう支援を進めていきたいと考えている。
○案田委員
 再就職の中で、かなりの部分がパートタイマーでの就職ということがある。パートタイム労働そのものがいけないということではないが、有期雇用でパートタイマーというのがリンクされて、1年の反復更新をずっと繰り返しているような契約形態のケースがある。これは、実質的にはもう継続雇用という形になっているが、契約的にその手続をしていることが非常にプレッシャーになるという面がある。ある程度法律の中で、有期雇用を反復でやっている場合は、何回やったら無期雇用に変えなければいけないといった取組をする必要があるのではないか。
○麻田職業家庭両立課長(厚生労働省)
 有期契約の反復更新については、今、労働契約法制の検討が進められており、その中で検討されている。
○前田委員
 子育て支援というと多くの自治体が、職員がお母さんに何かしてあげるというふうに考えがちだが、不用意にそれをやって、お母さんたちがよりいいつながりで一生懸命やっていた子育て支援のネットワークをかえって潰してしまったりする場合もある。だから、横浜では、お母さんたちにお願いしてNPOをつくってもらって、地域のいろいろなネットワークをもつお母さんたちの資源を生かして、子育て支援してもらうようにと言っている。
 そんな中で、例えばコミュニティビジネスが重要だと言うと、いろいろなところ省庁からいろいろなメニューが出てくる。中小企業とか商店街振興とか。それが縦割りで細切れで、それぞれの細かい補助要件等が「こういう条件が必要だ」と出されると、自治体もとても困るしNPOの人たちも困る。空き店舗なんかでも、子育て支援で空き店舗を使う条件とコミュニティビジネスの方の条件で空き店舗を使って子育てするのと、つくる申請書類とか条件が全然違ったりする。
 地域の資源を有効に活用し、柔軟に機動的な作業ができるように、ぜひ省庁間で話をしていただいて、まとめていただければありがたい。
○猪口内閣府特命担当大臣
 内閣府としてさまざまな調整をしなければいけないところだ。利用の皆様にご迷惑がかからないようにできるだけ努力したい。
○度山少子化対策企画室長(厚生労働省)
 つどいの広場事業に関して言うと、そこがうまくリンクができた。中心市街地活性化のときにもそういった議論があって、経済産業省の方からは家賃補助的なものをいただきながら、こちらは広場の運営費用を出すというような形で、うまくリンクできたことも事業としてはあった。
 すべての事業がまだそのようにはなっていないと思うが、各種の取組を結びつける努力は、やはりいろいろな面でしていかなければいけないというのはご指摘のとおりである。
○案田委員
 典型労働、非典型労働という言い方をしているが、今、パートタイマーは非典型労働という言い方をされているが、実際にパートタイマーというのは、スーパーマーケットの中で店長まで任せられたりしている。ただ、そのための処遇がされていないことが問題なのであって、そこはぜひご理解いただきたい。
○猪口内閣府特命担当大臣
 冒頭申し上げたとおり、いろいろと制度はあるが、にもかかわらず少子化の流れが止まらないというところから考え直さなければならない。既にある制度をどう利用しやすくしていくか、そういうことも今日、たくさんのご意見をいただいた。
 関係省庁も、委員の先生方のご意見、感じ方があるということで、積極的に対応をお願いする。
 今日は働き方の見直しということで、企業のところが非常に重要なので、特に経済産業省において、こういう観点から企業に対してどう働きかけて、どのような提案をしていくことが必要なのかということもあわせて、ご一緒に考えていただきたい。
 また、クールビズに相当するような、やはりみんなの認識の構造改革に働きかけるようなキャッチーな、フレーズであるか、あるいは概念であるか、きっと経産省にはいろいろとアイデアがたくさんあると思うので、お助けいただければありがたい。
 この働き方の見直しは、再びテーマとしてビジットしたいと思うので、先生方におかれても、さらにいろいろとお考えを深めていただきたい。

5.閉会


 事務局より、今後のスケジュールとして、第5回は、3月7日(火)14時から「家庭、地域における子育て支援」について、第6回は、3月29日(水)13時半から「経済的支援」などについて議論する旨の発言があった。