2.子育て費用の推計の方法と設計

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(1)推計の視点

1)社会全体の子育て費用をマクロでとらえる

これまでの子育て費用に関する調査研究では、世帯の家計単位といったいわばミクロの視点で子育て費用をとらえているものが多い。他方、社会全体で子育て費用がいくらかかっているのかといったマクロの視点からの分析は少なく、あっても一部の費目に限定したものとなっている。

しばしば社会保障給付費の世界で、児童家族関係給付費は全体の約4%にすぎず、約7割を占める高齢者関係給付費に比べて小さく、子育て支援に対する公的支援の規模が小さいことが指摘されている。ただし、子育て費用の全体がわからなければ、社会保障給付費における児童家族関係給付費の規模が十分なのか、それとも不十分といえるのか、にわかには判断がつかない。また、児童に対する公的助成は、社会保障費以外にも公教育費等があり、国家予算以外にも地方自治体の負担による各種手当てやサービス給付が存在する。

公的助成だけではなく、福祉・医療サービスにおける自己負担や、教育における私費負担、子どもの生活費など、子育てに対してさまざまな家計支出がある。実際の現金支出ばかりでなく、無償労働である家庭内育児も、金銭換算して子育て費用としてとらえることができる。これらを総合すると、社会全体の子育て費用の全貌をつかむことができよう。

以上を踏まえ、本研究においては、下図で示したような子育てに関するさまざまな分野における公費負担と私費負担の双方を捕捉し、社会全体の子育て費用のマクロ推計を行った。

図表 1 子育て費用のマクロ推計における主な捕捉対象

2)子育て費用に占める公費負担割合を推定する

社会全体の子育て費用のうち、公費負担部分がどの程度の割合になるかについて推定した。

公費負担のうち「手当・一時金」(現金給付)及び「租税支出」(支払い免除)は、一度家計に繰り入れられた後、子育てに係る私費負担として再支出されるとみなされるため、“見かけ”の私費負担において二重計上される形となる。公費負担割合は、「手当・一時金」及び「租税支出」を含む公費負担と、両費目を控除した“実質”の私費負担との合計である“純計”の子育て費用総額を母数として算出した。

図表 2 公費負担の種類

種類 内容
現金給付 子育て家庭に対して現金で給付され、家計に繰り入れられ、
私費負担として再支出されるとみなされるもの
児童手当等、出産手当金、
出産育児一時金、育児休業給付
現物給付 子育て家庭に対して公費負担のもとにサービス等として現物給付されるもの 保育、教育、医療等
支払い免除 出産や子育てを事由として本来支払うべき費用が免除されるもの 子どもの扶養控除、
社会保険料負担の免除

図表 2 公費負担の種類の画像

(2)推計の対象範囲

本研究が推計対象とする子育て費用とは、原則として妊娠・出産から18歳未満の子どもにかかる費用を指すが、18歳以上についても、特別児童扶養手当、教育費の私費負担分(学費、学生生活費)、扶養親族控除による減税額は積算に含めている。

捕捉する費用領域は、図表1で示したように、家庭内育児労働費用までも含む、公費・私費負担双方のできるだけ広範なものとした。ただし、種々の理由から、以下の費目は含んでいない。

  • 施設整備費などの投資支出。本研究では、1年間(具体的には1997年度及び2002年度)の“フローの”費用を推計することとしており、資本形成に係る費用は対象外とした。
  • 行政の事務職員(例えば市町村の本庁に勤務する児童福祉課員)の人件費。
  • 地方自治体単独の児童福祉事業に係る費用のうち、人件費、及び母子保健関係費。地方自治体単独の児童福祉費は「民生費×扶助費×児童福祉費×地方単独事業分」として採っているため、人件費や、民生費でなく衛生費に含まれる母子保健関係費は含まれない。
  • 大学、短大、各種学校、専修学校への公費負担支出。大学等は教育機能だけでなく研究機能を持っており、後者に係る支出を「子育て費用」として計上するのは相応しくないため。

また前項で述べた通り、私費負担は、源泉において公費負担支出であるが一度家計に繰り入れられた後に私費負担として再支出される形となる「手当・一時金」及び「租税支出」の分を控除した“実質”の額として捉え、子育て費用総額も、“実質の私費負担”と公費負担とを合計した“純計”の額としてとらえる(図表2参照)。

(3)推計の時点

本研究における費用推計の時点は、国及び地方の決算資料が揃う直近の時点である2002(平成14)年度と、その5年前である1997(平成9)年度の2時点とし、両者間での比較を行った。

当該年度のデータが入手できない場合は、最も近い時点のデータを活用した。

(4)推計の区分

本研究では、推計した費用を、総額に加え、以下の3種の区分によって示した。

  • 年齢別・・・0~5歳(就学前)/6~11歳(小学生)/12~14歳(中学生)/15~17歳(高校生相当)の4区分及び18歳以上(参考値として。大学生・専門学校生相当)
  • 分野別・・・上記の図表1の通り
  • 負担別・・・公費負担/私費負担

(5)費用項目と使用データ(資料)

積算対象とする費用項目は下記のとおりである。

※1)マクロの費用を把握できるものはそれを活用する(●)が、他については、2)家計や子ども1人あたりのミクロの費用に世帯数・子ども人数等をかけあわせることでマクロ化した(○)。

図表 3 費用項目と使用データ(資料)

種類 費用項目 データ状況・推計方法等 主な資料
公費負担 現金給付 児童手当
児童扶養手当等
児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当の支給総額 「社会保障給付費」
「歳出決算報告書」
「社会保障統計年報」
「児童手当事業年報」
出産関係費
育児休業給付
出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付(基本給付金及び職場復帰給付金)の給付総額 「社会保障給付費」
「社会保障統計年報」
「雇用保険事業年報」
現物給付 児童福祉サービス費(国把握分) 保育所運営費、放課後児童健全育成事業費、要保護児童施設運営費など 「社会保障給付費」
「歳出決算報告書」
「特別会計決算参照書」
児童福祉サービス費(地方単独分) 児童福祉費の扶助費における都道府県及び市町村の単独事業分 「地方財政統計年報」
学校教育費 学校教育に要する費用(短大、大学、各種学校、専修学校への公費負担支出は除く) 「文部科学統計要覧」
「学校基本調査報告書」
「地方教育費調査報告書」
「私立学校の財務状況調査」
「今日の私学財政」
医療費(公費負担・保険給付) 医療機関等における傷病の治療の要する費用(出産費、健診費は含まない) 「国民医療費」
支払い免除 子どもの扶養扶養控除 所得税及び住民税の子どもの扶養控除による減税額 「民間給与実態統計調査」
「申告所得税標本調査」
税務調査会資料
育休中の社会保険料負担の免除 保険・組合等の別の免除者数を基に推計 各種保険・共済「事業年報」等
「社会保障統計年報」
私費負担 金銭負担 保育料(保護者負担分) 全国の保育料徴収推計額と保育所運営費法廷負担金との比率から推計 「地方自治体の独自子育て支援施策の実施状況の調査」(アンケート調査)
学校教育費(保護者等負担)、学校外教育費 学生生徒等納付金(学校給食費は、「その他生活費」の「食費」に含まれるため除く)
学校外教育費の短大及び大学分は、学生生活費(食費、住居費等)を指す
「子どもの学習費調査報告書」
「学生生活調査」
妊娠・出産費(家計負担分) 検診、分娩・入院、交通費、衣料、その他妊娠・出産に伴う費用を含む 「子育てコストに関する調査研究」
医療費(患者負担) 国民医療費(患者自己負担分)を基に推計 「国民医療費」
その他生活費 「子どもあり世帯」と「夫婦のみ世帯」の支出構造を比較し、差額を基に「子育て費用」を積算(保育、教育、医療は除く) 「全国消費実態調査」
「子育てコストに関する調査研究」
育児労働の金銭換算 家庭内育児労働 1997年経済企画庁報告における家事労働の金銭換算方法に準拠して推計 「あなたの家事のお値段はおいくらですか?」
「社会生活基礎調査」

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