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2‐2.両立支援策の導入状況と効果

2‐2‐1.両立支援策の導入状況(アンケート調査Q1)

  • 『休業・休暇関連』の制度では、法律で義務付けられているものについては、就業規則でも整備することが望まれる。
  • 『経済的援助関連』では、「出産祝・入学祝・入院見舞いなど子への一時金を支給している」企業が多い。
  • 『労働時間・場所関連』では、「所定外労働時間を免除するようにしている」、「短時間勤務ができるようにしている」、「始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ」について5割程度の企業が導入している。
  • 非正社員については、「育児休業制度について就業規則に明記している」が54.4%と最も多いが、他の企業でも就業規則などで早急に整備することが望まれる。
  • 今後、企業が両立支援を進めるにあたり、第一に正社員については『休業・休暇関連』の制度について法定を超える内容とすること、非正社員については、法定どおりの制度を早急に導入することが望まれる。また、働く時間や場所について従業員に柔軟性を与える(裁量権を与える)施策を従業員区分に関わらず、さらに充実させることが重要である。

正社員については、「育児休業制度について就業規則に明記している」(81.4%)、「子の病気のための看護などで休めるようにしている」(72.1%)など、『休業・休暇関連』の制度で法律により義務付けられているものについては、就業規則でも整備することが望まれる。また、「法定を超える育児休業制度」では24.4%と回答企業の4分の1も法定以上の取組を実施していない。『経済的援助関連』の制度については、「出産祝・入学祝・入院見舞いなど子への一時金を支給している」(61.0%)を多くの企業が行っていることがわかる。また、『労働時間・場所関連』の制度については、「所定外労働を免除するようにしている」(59.1%)、「短時間勤務ができるようにしている」(53.9%)、「始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ」(48.5%)などについて、5割程度の企業が導入している。これらから、企業は育児介護休業法で定められた「3歳から小学校入学前の子育てをする従業員を対象に育児休業の制度または短時間勤務等の措置を講じること」に対して、何らかの施策を導入していると考えられる。

一方、非正社員に対して整備されている制度については、「育児休業制度について就業規則に明記している」(54.4%)が最も多く、「子の病気のための看護などで休めるようにしている」(48.0%)、「有給休暇の半日単位での使用を認めている」(41.9%)と続き、主に『休業・休暇関連』の制度が実施されている傾向が見られる。2005(平成17)年4月に改正された育児・介護休業法では、一定の範囲の期間雇用者に対しても制度が適用されるようになったことから、企業においては、就業規則に明記するなど早急に整備することが望まれる。『労働時間・場所関連』の制度については、「短時間勤務」、「始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ」、「所定外労働の免除」について、正社員と非正社員では、それぞれ18.4ポイント、18.0ポイント、19.6ポイントと導入の度合いには差がある。また、『経済的援助関連』の制度についても、「企業独自の家族手当」、「出産祝・入学祝・入院見舞いなど子への一時金を支給」、「育児・教育に関する費用の貸付制度」で、それぞれ47.1ポイント、37.0ポイント、15.5ポイントとその差は大きい。なお、『人事・労務上の配慮』については、正社員に対しては「育児休業取得者のいる職場に代替要員を確保している」が39.7%となっているが、正社員・非正社員の両者において、他の制度に比べて実施割合は低い。

図表2‐1 両立支援制度導入状況


2‐2‐2. 制度導入状況と内容の具体例(ヒヤリング調査より)

2‐2‐2‐1.休業・休暇関連の制度

  • 【育児休業に関して】従業員の仕事と育児の両立を支援すべく、休業期間を「子が満2歳に達するまで」と拡大する、制度適用対象者を「育児に専念できる者(専業主婦(夫))が家庭にいる場合も認める」、「育児休業適用期間中に雇用保険からの支給に加え、会社から一定額を支給する」など、法定を上回る内容を取り入れている企業がある。
  • 【子育てのための休暇など休暇制度に関して】子の看護のための休暇制度に対する休暇支給日数を、法定を上回って支給する、休暇制度の適用理由を子育てに限定せず多様な事由で休暇取得できるようにする、失効する有給休暇を積立て、子育てをはじめとする事由で利用できるようにするなど、休暇を取得しやすくするための取組が実施されている
  • 育児休業に関しては、共働き家庭の増加の時代背景を加味するとともに、スキルや知識の遅れ・キャリアの中断を懸念して制度の利用を躊躇する傾向を考慮して、より従業員が制度を利用しやすくすべく、制度の適用を柔軟にすることが重要である。
  • 休暇関連制度に関しては、多様な事由で休暇を利用できるような仕組みとすることが休暇取得促進につながると期待される。

ヒヤリング調査では、法定を超える独自の育児支援制度やサービスについてたずねている。アンケート調査のQ1では育児休業制度に対してのみ、法定を上回るものがあるかをたずねているが、「ある」企業の割合は、正社員に対しては24.4%、非正社員に対しては11.8%であった。
 法定を上回るものとして、「適用期間」、「適用対象者の拡大(注:1) 」、「制度の分割取得」、「有給の休業制度」などが考えられるが、ヒヤリング調査企業の中では、配偶者が専業主婦(夫)の場合でも制度の適用を認める事例と育児休業中に会社が一定額を支給する事例があった。

味の素(株):適用者の拡大

勤続1年以上の従業員に適用される。子どもが満1歳に達した後の4月末日まで休職することができ、育児に専念できる者(専業主婦(夫))が家庭にいる場合でも休職することができる。

味の素(株):子ども看護休暇制度

 2004(平成16)年4月に導入した。子1人につき1年につき10日間の無給の特別休暇が支給される。中学校入学するまでの子の看護について半日単位の取得も可能である。同制度は、勤続年数の短い従業員はストック有給休暇が少ないことが考えられることや、共働きの従業員がより安心して仕事と家庭の責任を果たせるよう整備をした。

味の素(株):失効年休の積立制度

前年度未消化の有給休暇のうち5日を上限として積み立てることができ、累積積立限度日数は30日である。同制度の適用理由は、(1)本人の私傷病で定期的な通院が必要な場合、(2)2親等以内の親族の私傷病や介護に連続1週間以上の看病が必要な場合、(3)リフレッシュ休暇制度で定められた休暇を取得する場合、(4)当年度および前年度の有給休暇をすべて消化し、次年度の有給休暇が付与される前に(1)または(2)の事由で休暇取得が必要となった場合、としているが、2004(平成16)年4月より1日単位で休暇取得できるようにし、さらに有給休暇が残っていてもストック有給を行使できるように改定した。また、中学校に入学するまでの子の看病を理由とする場合は、半日単位の取得も認めている。

九電ビジネスソリューションズ(株):適用期間の拡大

本人の希望があれば子の満2歳の誕生日の属する年度末(3月末)まで、最大3年近くの育児休業ができる。

(株)クララオンライン:有給の育児休業制度

 雇用保険からの4割の支給額に加え、会社からも一定額(休業前の給与額の3割程度)を支給している。

休暇関連制度については、アンケート調査のQ1で「子の病気のため看護などで休めるようにしている」か、をたずねており、正社員、非正社員に対してそれぞれ72.1%、48.0%の企業が導入している。
 ヒヤリング調査企業では、子の看護のための休暇制度に関して法定を上回る日数を支給している事例や、多様な事由で休暇を取得できる事例、失効する有給休暇を積み立てる「失効年休の積立制度」(注:2)の事例などがあった。

日本電気(株):ファミリー・フレンドリー休暇

本人の療養や家族の看護のための目的別休暇として「医療看護休暇」として1992(平成4)年に導入、2002(平成14)年に適用目的を(1)本人の療養、家族の看護、(2)配偶者の出産、(3)本人・家族の疾病予防(人間ドック等)、(4)家族の介護、(5)子の学校行事(授業参観、保護者会、運動会等)への参加、(6)ボランティアなどにも拡げるとともに、年間の付与日数を3日から5日へ、また積立累積日数を12日から20日に拡大した。

注:1
法律では、労使協定を締結した場合は「配偶者が常態として育児休業に係る子を養育することができると認められる労働者」は育児休業の対象から除外することができるとしている。従って、専業主婦(夫)や育児休業中の妻がいる場合は適用除外となるケースがある。
注:2
有給休暇の積立のため、休暇を取得する場合は100%の有給となる。

2‐2‐2‐2.労働時間・場所関連の制度

  • 仕事と育児の両立が可能な働きやすい労働環境を整備すべく、「短時間勤務制度」、「フレックスタイム制度」、「在宅勤務制度」、「勤務地の指定・限定」に取り組む企業がある。
  • 具体的には、学童保育の整備状況を加味して短時間勤務制度の適用期間を子が小学校の2~3年生になるまで延長する、制度の分割取得を認める、短時間勤務制度とフレックスタイム制度の併用を認める、等の取組が実施されている。
  • 「所定外労働時間の削減」策として「ノー残業デー」、「定時退社」に取り組むケースでは、仕事と育児の両立を目的として取り組むのではなく、従業員の働き方の見直し、従業員の満足度向上を目途に取り組むケースが多い。
  • 労働時間や場所に関して働き方を柔軟にする制度については、従業員が各自のキャリアや家庭状況を勘案しながら利用できるよう、制度の適用方法等に柔軟性を持たせることが重要である。また、「両立支援」のみを目的に取り組むのではなく、従業員全体の働き方の見直し・満足度の向上を目的とすることによって、業務効率化や全体的な制度利用促進の効果が得られる可能性が高い。

(1)短時間勤務について

 労働時間に関して、従業員が仕事と育児を両立できるよう柔軟に対応している制度としては、ヒヤリング調査企業では短時間勤務制度やフレックスタイム制度を導入しているケースが多い。(株)コヤマドライビングスクールでは短時間勤務制度の適用期間を小学校2年生まで、医療法人 寿芳会 芳野病院では小学校1年生までとして、法定を上回る適用期間としている。さらに、味の素(株)では、学童保育の不足など社会的サポートが不十分であることに対応して、短時間勤務制度の適用期間をこれまで「子どもが満3歳になるまで」としていたが、2004(平成16)年4月より「小学校4年に進級するまでの合計4年間」と改定し、家族の状況や自分のキャリアを勘案しながら4年間の適用期間を自分で調整しながら利用できる制度へ見直ししているうえ、短時間勤務制度とフレックスタイム制度の併用を認め、従業員に働く時間の柔軟性を持たせるような仕組みにしている。
 また、アンケート結果から明らかなように、短時間勤務制度をはじめとする勤務時間の柔軟性に関する制度は、非正社員への適用が未だ十二分にされていない状況にあるが、医療法人 寿芳会 芳野病院では、非正社員に対しても、個人の事情に応じて柔軟に勤務時間帯を変更している。

味の素(株):短時間勤務制度とフレックスタイム制度との併用、および適用期間の拡大

 同社の短時間勤務制度は、1日あたり2時間30分を上限に、30分単位で勤務時間の短縮ができる仕組みとなっている。同社はフレックスタイム制度も導入しており、短時間勤務制度とフレックスタイム制度の併用も認めている。この場合の月の総労働時間は、「1日あたりの短縮時間×出勤義務日数」で算出する。
 短時間勤務制度の適用期間については、これまで休業終了から「子どもが満3歳になるまで」の期間としていたが、保育園から学童保育への移行に伴う社会的サポートが不十分であることを鑑み、2004(平成16)年4月より「小学校4年生に進級するまでの4年間」と対象期間を拡大している。ただし、連続取得は3年間とし、制度利用者が自分のキャリアと家族状況を勘案しながら4年間を配分する仕組みとしている。なお、次に取得するまでには6か月以上の間隔を空けなければならない。制度利用に対する申請は、取得開始日と終了予定日を提示し、その都度行う。同制度利用期間中に次の子が誕生した場合は、前の子の取得権利は消滅し、新たに次の子について4年間の制度利用権利が与えられる。

医療法人 寿芳会 芳野病院:非正社員に対する勤務時間帯の柔軟な対応

 子どもを預けてから出勤できるよう、個人の事情に応じて柔軟に勤務時間帯を変更し、シフトを組んでいる。

(2)勤務時間中の一時外出

 勤務時間中に育児に関する事由のために一定時間外出することを認める制度である。
 (株)コヤマドライビングスクールでは、小学校2年生までの子を対象に、1日につき2時間までの養育外出を認める制度を整備し、仕事と育児を両立する女性従業員を積極的に支援している。

(3)所定外労働時間の削減について

 同制度の導入企業では、仕事と育児の両立を目的に所定外労働時間の削減を進めたのではなく、従業員の働き方を見直すことや、従業員満足度を向上させる一施策として導入しているケースが多い。
 タイプとしては、(1)月または週の1日程度を「ノー残業デー」と位置づけ、その日は定時に帰宅することを促すものと、(2)原則として毎日が定時退社とするもの、の2つに分けられる。

医療法人 寿芳会 芳野病院:ノー残業デー

月1回の「ノー残業デー」を設け、第3週の真ん中3日間のいずれか1日は残業せずに帰るように促している。1日だけに設定してしまうと、勉強会等で取れなくなる人がでてくるため、幅を持たせた仕組みとした。

未来工業(株):定時退社

同社は、「法(労働基準法など)を守り、労働者を大切にすることが、企業がグローバル競争に勝ち、継続的発展を遂げるためには重要である」との考えに基づき、定時退社を徹底している。
具体的には、同社の所定内労働時間は8時30分~16時45分までの7時間15分であるが、24時間稼動し3交代勤務制の生産部門以外は17時までに退社することになっており、ほとんどの部門でこの取組みが徹底されている。取引先等の顧客に対しては、現実的には17時前に仕事を切り上げることは難しいとしながらも、社員は所定外労働時間に対応しなくても顧客に満足してもらえる対応を『常に考え』、提案するなど、理解を得られるよう工夫をしている。

(4)在宅勤務について

 アンケート調査(Q1)では、在宅勤務ができるようにしている企業の割合は、正社員に対して1.5%、非正社員に対して0.5%とわずかであり、同制度の導入が難しいことを示唆する結果となっている。
 同制度の適用者について、ヒヤリング調査企業では希望者すべてに適用するのではなく、在宅で業務を遂行することを勘案して裁量労働制の適用対象者に限定して実施している。

日本電気(株):育児在宅勤務制度の整備

同社では、主任クラス以上に専門業務型、企画業務型の裁量労働制を導入しているが、子が小学校就学の始期に達するまでの期間は裁量労働制適用対象者に限定して在宅勤務を認めている。勤務時間は原則7時間45分である。賃金・賞与は通常どおり支給されるが、1日の勤務時間が7時間45分より短い者は、育児短時間勤務制度の取り扱いに準ずる。

(5)勤務地の指定・限定について

 アンケート調査(Q1)では、「勤務地を限定ないし指定ができる(転勤免除)」の制度を導入している企業の割合は、正社員で14.8%、非正社員で9.9%となっており、在宅勤務制度より導入率が高い。
ヒヤリング調査においても、2社が同制度を導入しており、仕事と子育ての両立を軽減する一施策として活用している。

(株)コヤマドライビングスクール

 同社は四つの教習所を運営しており、保育園などの都合で他の教習所の方が通いやすい場合は、転勤希望を優先的にかなえている。

(株)ユニクロ

 同社では社内結婚が多いが、どちらかが辞めることがないよう自己申告型で異動を行っている。仕事と家庭の両立を希望する場合は、担当店舗の規模を小さくし、負担を軽減する等の対応をすることもある。ただし、店舗規模が小さくなることによって職位が変わることもあるが、資格は変わらない。

2‐2‐2‐3.経済的援助関連の制度

  • 「ベビーシッターやファミリーサポートセンターの利用費用に対する補助」、「従業員の親による支援を受けるための転居費用の補助」など、仕事と育児の両立を図るための環境整備を支援するために経済的援助を行う企業が多い。
  • 従来の家族手当や扶養家族手当を見直し、子の誕生に際し、企業が一定額を支給し、基金として積み立てる制度を整備する事例もある。
  • 育児に関する経済的援助を行う制度整備を図るには、各社の従業員の年齢構成や他の人事制度との兼ね合い、従業員のニーズを考慮することが望まれる。

 アンケート調査(Q1)では、「企業独自の家族手当や児童手当がある」、「産休・育児休業中の給与や手当の部分支給をしている」、「出産祝・入学祝・入院見舞いなど子への一時金を支給している」など、育児に関する直接的な経済的援助を行う制度と、「育児サービス費用を補助している」、「育児・教育に関する費用の貸付制度がある」など間接的な支援を行う制度の二つをたずねており、前者に関する制度を導入している企業の割合が高い結果となった。
 ヒヤリング調査では、後者の仕事と育児の両立を図るための環境整備を支援する制度に関する事例が得られている。

九電ビジネスソリューションズ(株):転勤による幼稚園転園費用の補助
 通常の人事異動の時期が7月であり、幼稚園の入園時期である4月と異なるため、幼稚園児を持つ従業員が転勤すると、転勤先の住所で再度幼稚園入園のための費用が発生することを鑑み、その費用を会社が補助している。

日本電気(株):ファミリー・フレンドリーファンド
 これまでの配偶者等の扶養家族に対する手当制度を2004(平成16)年に見直し、子育ての多様なニーズに対応し、より活用度の高い支援を行うことを目的に「ファミリー・フレンドリーファンド」を導入した。
 同制度は、「ペアレント・ファンド」と「ファミリーサポート・ファンド」の2つから構成される。「ペアレント・ファンド」は新たに子どもが生まれた社員に対して、子ども1人につき55万円を支給する。さらに会社が提携する子ども育成保険(将来の教育資金に備える貯蓄型や万一のための保険型商品等)に加入する場合は、奨励金として5万円を追加支給する。なお、主たる生計者でない場合にも支給する。「ファミリーサポート・ファンド」は、家計の主たる生計者で、主任以下(ただし、障害をもつ家族の扶養に支援が必要な管理職を除く)の社員に月額5,000円を支給する。

日本電気(株):チャイルドケア支援制度
 社員が親による育児支援を受けるための転居費用(社員が親の近隣へ転居する場合、または親が社員の近隣へ転居する場合)、または、社員が長時間保育を行う保育所を利用するために転居が必要な場合の費用を補助する制度である。産後休暇、育児休職、もしくは育児短時間勤務を取得中の社員で、育児環境整備のために転居を必要とする社員を適用の対象とする。転居に関わる費用(引越し費用、礼金、仲介手数料)は、50万円を上限として実費を会社が補助する。

日本電気(株):ファミリーサポートセンター加入促進と利用者支援
 育児を行う社員がファミリーサポートセンターを利用する場合、1時間につき300円(月額18,000円を限度)を補助する。

2‐2‐3.両立支援策の効果(アンケート調査 Q2)

  • 「短期」・「長期」ともに「女性従業員の定着率が向上した」(短期:38.0%、長期:41.2%、大きな効果や変化があった+ある程度の効果や変化があった)が最も多く、次いで「意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ」(短期:25.4%、長期:27.2%)、「従業員同士が助け合う雰囲気や一体感が醸成された」(短期:23.5%、長期:24.0%)等の効果がある。
  • 長期的な効果として、女性の人材関連のほかに「従業員同士が助け合う雰囲気や一体感が醸成された」、「育児経験により視野が広がった」「企業や職場への従業員の愛着や信頼が高まった」、「仕事の進め方の効率化や業務改善に役立った」の項目に対する効果がみられる。
  • 短期的と比べた場合、長期的に見たほうが効果や変化があったとする項目が多い。
  • 両立支援策は、長期的な姿勢で取り組むことが重要である。

両立支援策を導入することによって、企業はどのような効果が得られたのであろうか。本調査では、この効果について、「短期」(導入・実施後5年未満)と「長期」(導入・実施後5年以上)に分けてたずねている。「短期」と「長期」の両者についてたずねた理由としては、制度導入の効果は、財務パフォーマンスや労働意欲などに短期的に現れるものと、従業員の定着率や勤続年数、業務効率化など一定の期間を経過して効果が現れるものがある、とする先行研究に基づくものである。
 その結果、「短期」・「長期」ともに「女性従業員の定着率が向上した」(短期:38.0%、長期:41.2%、大きな効果や変化があった+ある程度の効果や変化があった)が最も多く、次いで「意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ」(短期:25.4%、長期:27.2%、前に同じ)、「従業員同士が助け合う雰囲気や一体感が醸成された」(短期:23.5%、長期:24.0%)となった。
 長期的な効果を考察すると、女性の人材関連のほかに「従業員同士が助け合う雰囲気や一体感が醸成された」、「育児経験により視野が広がった」「企業や職場への従業員の愛着や信頼が高まった」、「仕事の進め方の効率化や業務改善に役立った」の項目について、「大きな効果や変化があった+ある程度の効果や変化があった」が「あまり効果や変化がなかった+ほとんど効果や変化はなかった」を上回る結果となった。

図表2‐2 両立支援策導入・実施による効果・変化(上段:短期的、下段:長期的)

図表2‐3 両立支援策導入・実施による効果・変化 (単位:%)

  短期的 長期的
  (a)大きな効果や変化があった+ある程度の効果や変化があった (b)あまり効果や変化はなかった+ほとんど効果や変化はなかった (a)大きな効果や変化があった+ある程度の効果や変化があった (b)あまり効果や変化はなかった+ほとんど効果や変化はなかった
女性従業員の定着率が向上した
38.0
13.9
41.2
8.6
意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ
25.4
16.7
27.2
12.0
仕事に積極的に取り組むようになった
11.7
19.2
13.0
14.9
従業員のストレスが減った
16.0
18.4
17.0
13.5
従業員同士が助け合う雰囲気や一体感が醸成された
23.5
16.1
24.0
12.2
仕事の進め方の効率化や業務改善に役立った
16.2
19.8
16.8
15.4
労働時間に対する意識が変化し生産性が高まった
13.0
23.4
13.3
18.5
育児経験により、従業員の視野が広がった
18.7
18.3
19.1
14.9
育児経験により新商品開発や販路開拓につながった
2.0
40.6
3.5
33.9
社会的責任を果たす企業のイメージが高まった
18.0
23.9
18.9
18.7
優秀な人材の確保が以前より容易になった
9.9
28.2
11.1
21.8
企業や職場への従業員の愛着や信頼が高まった
16.8
17.0
18.1
12.8
育児休業者等の仕事を引き継いだ人の能力が高まった
11.7
22.4
11.2
18.2
総体的にみて、経営にとって効果があった
14.1
19.4
16.6
15.2
利用者の職場で他の従業員の不満が高まった
7.5
31.1
6.3
26.2
両立支援策の利用者が孤立するようになった
2.5
41.3
2.5
34.4
現場管理職のマネジメントが難しくなった
24.5
19.7
20.7
16.1

2‐2‐4.両立支援策の効果の具体例(ヒヤリング調査)

  • 「女性従業員の定着率の向上」、「女性社員のモチベーションの変化」を効果としてあげる企業も多く、アンケート調査の結果を裏付けている。
  • 企業が両立支援に取り組むことによって、従業員は「会社は長期的視点で従業員を活用していこうと考えている」、「従業員を必要としてくれている」と実感する傾向があることから、企業は取組内容を積極的にアピールしていくことが望まれる

ヒヤリング調査では、独自の育児支援策の導入後にどのような変化があったかをたずねており、効果として「女性従業員の定着率の向上」をあげた企業が10社中4社と最も多く、そのほか「女性社員のモチベーションの変化」などもあげられ、アンケート調査の結果を裏付けている。また、「男性従業員や管理職の意識改革に寄与した」、「長時間勤務の是正を検討するきっかけになっている」といった効果事例も得られた。

2‐2‐4‐1.女性従業員の定着率の変化

味の素(株)
 2001(平成13)年度以降、20代後半から30代後半の女性従業員の退職者数が半減していることから、出産・育児を理由とする退職は減少しているだろうと推測している。また、同社の男女別平均勤続年数および平均年齢も次第に伸びてきていることから、女性従業員の定着率は上昇していると考えられる。

九電ビジネスソリューションズ(株)
 企業として仕事と家庭の両立支援に取り組んできた結果、女性従業員の育児休業後の復職率は100%となっている。過去3~4年で出産に伴う退職は見られなくなった。

日本電気(株)
 結婚・出産・育児に伴う女性従業員の退職数が減少した。

(株)フージャースコーポレーション
 有能な女性社員が継続就業できるようになった。

2‐2‐4‐2.制度利用者の増加

医療法人 寿芳会 芳野病院
 「子育て応援宣言」(福岡県が取り組んでいる子育て応援企業の登録制度)を行うことで柔軟な働き方をする従業員を病院として支援する姿勢を伝えることができた。それによって、これまで育児休業の取得希望を言い出せなかった職員が安心して制度を利用するようになり、制度の利用者が増えた。

2‐2‐4‐3.女性従業員のモチベーションの変化

味の素(株):制度利用者の見解より
 会社側が長期的視点で女性従業員を必要としていると実感しているとともに、キャリアの継続に対する意欲や「将来は事業に貢献したい」との思いが芽生えている。また、後輩に対しても良き手本、アドバイザーでありたいと考え、女性従業員の可能性を広げる働き方をしていきたいと考えている。

2‐2‐4‐4.男性従業員、管理職の意識改革

九電ビジネスソリューションズ(株)
 育児休業制度導入当初は、本人・管理職の意識改革のための各種施策を通じて、まずは女性が活躍できるための土壌作り、雰囲気作りを促進した。現在では、現場の管理職も育児休業は当然のことと考えている。

日本電気(株)
 制度導入当初は、本人・管理職の意識改革のための各施策を展開し、女性が活躍できる土壌づくり・雰囲気作りを推進したが、現在は育児休職は当然、といった風土が社内に醸成されたと考えている。

2‐2‐4‐5.長時間勤務を見直すきっかけ

(株)フージャースコーポレーション
 産休を取得し、その後短時間勤務で業務をこなせる人は本来的に優秀な人たちであり、効率的に仕事をこなし、就業時間を短縮していく方法を検討していくきっかけになっている。


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