2‐8.両立支援策の利用が企業に与える効果についての分析
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全体的に、各制度を女性社員のみならず、男性社員や非正社員も利用している企業の方が、「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」において効果が見られる傾向がある。 |
◆ |
両立支援をより効果的に運用していくためには、女性のみならず男性や非正社員にとっても利用しやすい制度内容に見直していくことが重要である。 |
本調査では、各両立支援策を誰が主に利用しているか(できるか)によって、企業に与える効果が異なる可能性があるとして、Q9の利用状況を「正社員のみならず非正社員においても両立支援策を利用している/女性社員のみならず男性社員においても両立支援策を利用している」という観点から、主な両立支援策の効果(Q2)との項目間クロス集計を行った(図表2‐19)。
その際、Q2の企業に与える効果を‐2~+2まで(0が中央値)の5段階にウェイトづけして数値化し、その平均値から、プラスになっているものは「効果や変化があった」、マイナスになっているものは「効果や変化がなかった」とした。主な結果は次のとおり。
1.育児休業制度(Q9‐1)
「育児休業制度」については、非正社員も利用している企業の方が、「意欲や能力のある女性の人材活用(以下、「女性の活用進展」と記す)」、「職場に従業員同士が互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(以下、「一体感の醸成」と記す)」、「企業や職場に対する愛着や信頼が高まった(以下、「愛社心の向上」と記す)」といった点で効果が見られる。他方で男性も利用している企業は「女性の活用進展」、「愛社心の向上」といった点で効果が見られる。
2.育児休業ができる日数の延長(Q9‐2)
「育児休業ができる日数の延長」について、非正社員も利用している企業の方が、「女性従業員の定着率の向上(以下、「女性の定着」と記す)」、「女性の活用進展」、「愛社心の向上」で効果が見られる。また、男性も利用している企業では「一体感の醸成」、「愛社心の向上」において効果が見られる。
3.子の病気のための看護休暇(Q9‐3)
「子の病気のため看護で休める(看護休暇)」については、正社員・非正社員を対象とした利用状況を軸とした分析では効果が見られる点は見当たらないが、男性も利用している企業では「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」において効果が見られる。
4.短時間勤務制度(Q9‐5)
「短時間勤務制度」については、非正社員も利用している企業の方が、「女性の定着」、「女性の活用進展」、「愛社心の向上」で効果が見られる。他方、男性も利用している企業では「女性の定着」という点で効果が見られる。
5.フレックスタイム制(Q9‐6)
「フレックスタイム制」については、非正社員も利用している企業の方が「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」において効果が出ているほか、男性も利用している企業においても「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」に対して効果があることが明らかになった。
6.始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ(Q9‐7)
「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ」では、非正社員も利用している企業の方が「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」において効果が見られる。また、男性も利用している企業では「女性の定着」、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」、「愛社心の向上」といった点で効果が見られる。
7.所定外労働の免除(Q9‐8)
「所定外労働の免除」については、非正社員も利用している企業の方が、「女性の活用進展」、「一体感の醸成」といった点で効果が見られる。
8.勤務地の限定ないし指定(転勤免除)(Q9‐15)
勤務地の限定ないし指定(転勤免除)については、非正社員および男性も利用している企業の方が「女性の定着」いう点で効果が見られる。男性も利用している企業の方では、この他に「一体感の醸成」という点で効果が見られる。この制度は、非正社員はほとんど利用していないという現状を反映して、企業への効果は「女性の定着」に限定されている。
図表2‐19 両立支援策の利用が企業に与える効果や変化(総括表‐1)
利用状況 | 効果や変化 ( )内は全体平均値 |
全社的な取組が進んでいる![]() |
全社的な取組が進んでいる![]() |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
正社員・非正社員ともに未利用 | 正社員のみ利用 | 正社員・非正社員ともに利用 | 男性社員・女性社員ともに未利用 | 女性社員のみ利用 | 男性社員・女性社員ともに利用 | ||
1.育児休業制度 | (1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
-0.15 |
0.55 |
0.55 |
-0.19 |
0.55 |
>0.40 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | -0.33 |
0.24 |
0.27 |
-0.28 |
0.22 |
0.29 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | -0.28 |
0.16 |
0.17 |
-0.17 |
0.14 |
>0.10 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.32 |
0.04 |
0.15 |
-0.26 |
0.05 |
0.07 |
|
2.育児休業ができる日数の延長 | (1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.33 |
0.63 |
0.72 |
0.33 |
0.66 |
>0.33 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.05 |
0.35 |
0.39 |
0.06 |
0.35 |
>0.17 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | 0.02 |
0.26 |
>0.15 |
0.03 |
0.21 |
0.33 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.06 |
0.10 |
0.33 |
-0.06 |
0.12 |
0.25 |
|
3.子の病気などで休める | (1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.29 |
0.71 |
>0.49 |
0.28 |
0.62 |
0.63 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.07 |
0.28 |
>0.24 |
0.08 |
0.21 |
0.31 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | -0.02 |
0.27 |
>0.19 |
-0.01 |
0.16 |
0.31 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.10 |
0.16 |
>0.12 |
0.09 |
0.07 |
0.19 |
図表2‐19(つづき) 両立支援策の利用が企業に与える効果や変化(総括表‐2)
利用状況 | 効果や変化 ( )内は全体平均値 |
全社的な取組が進んでいる![]() |
全社的な取組が進んでいる![]() |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
正社員・非正社員ともに未利用 | 正社員のみ利用 | 正社員・非正社員ともに利用 | 男性社員・女性社員ともに未利用 | 女性社員のみ利用 | 男性社員・女性社員ともに利用 | ||
5.短時間勤務 (日週月の単位含む) |
(1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.25 |
0.68 |
0.85 |
0.26 |
0.65 |
0.67 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.03 |
0.29 |
0.41 |
0.04 |
0.32 |
>0.16 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | 0.01 |
0.21 |
>0.19 |
0.02 |
0.20 |
>0.10 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.10 |
0.13 |
0.21 |
-0.09 |
0.13 |
>0.10 |
|
6.フレックスタイム制 (両立支援以外のケース含む) |
(1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.38 |
0.59 |
0.60 |
0.37 |
0.52 |
0.64 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.11 |
0.20 |
0.40 |
0.10 |
0.00 |
0.33 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | 0.05 |
0.12 |
0.39 |
0.04 |
0.18 |
0.25 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.01 |
0.04 |
0.07 |
-0.01 |
-0.05 |
0.06 |
図表2‐19(つづき) 両立支援策の利用が企業に与える効果や変化(総括表‐3)
利用状況 | 効果や変化 ( )内は全体平均値 |
全社的な取組が進んでいる![]() |
全社的な取組が進んでいる![]() |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
正社員・非正社員ともに未利用 | 正社員のみ利用 | 正社員・非正社員ともに利用 | 男性社員・女性社員ともに未利用 | 女性社員のみ利用 | 男性社員・女性社員ともに利用 | ||
7.始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ |
(1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.35 |
0.60 |
0.64 |
0.35 |
0.57 |
0.65 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.08 |
0.27 |
0.36 |
0.08 |
0.23 |
0.43 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | 0.04 |
0.20 |
0.21 |
0.04 |
0.11 |
0.36 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.05 |
0.08 |
0.22 |
-0.06 |
0.07 |
0.24 |
|
8.所定外労働の免除 |
(1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.33 |
0.62 |
>0.61 |
0.35 |
0.63 |
>0.27 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.05 |
0.30 |
0.33 |
0.07 |
0.30 |
>0.13 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | -0.01 |
0.25 |
0.27 |
0.00 |
0.23 |
0.23 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.08 |
0.15 |
>0.11 |
-0.08 |
0.17 |
>0.00 |
|
15.勤務地の限定 |
(1)女性従業員の定着率が向上した (平均 0.44) |
0.42 |
0.54 |
0.55 |
0.42 |
0.49 |
0.63 |
(2)意欲や能力のある女性の人材活用が進んだ(平均 0.15) | 0.13 |
0.40 |
>0.25 |
0.12 |
0.42 |
>0.36 |
|
(5)職場に従業員同士互いに助け合う雰囲気や一体感が醸成されるようになった(平均 0.09) | 0.07 |
0.27 |
>0.23 |
0.07 |
0.12 |
0.35 |
|
(12)企業や職場に対する従業員の愛着や信頼が高まった(平均 0.01) | -0.01 |
0.10 |
>0.05 |
-0.02 |
0.25 |
>0.23 |
(注)
数字に網かけをしてあるものは、「正社員のみ活用」より点数が高いもの、および「女性社員のみ活用」より点数が高いものであり、「全社的な取組」によって企業への効果があるみられる項目である。不等号(>)は、左の属性より点数が低いことを示す。