2 結婚・出産に対する価値観の変化

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 未婚化の進展の理由のひとつとして、近年、結婚に関する社会的な規範が薄らいできたとともに、結婚に対する価値観も変化してきたことがしばしば指摘される。また、出産については、子どもがかつては家業の生産を助ける労働力でもあった時代から変化してきた現在、出産や子どもを持つことに対する理由についても変化が見受けられる。
 以下では、独身者の結婚に関する価値観や、夫婦の子どもを持つことの理由など出産に関する価値観についてみることとする。

(1)結婚に関する価値観


(結婚に対する意識の変化)
 先に引用した「出生動向基本調査」の中で、結婚する意思があると回答した未婚者に対して結婚に関する考え方を聞いたところ、「ある程度の年齢までには結婚するつもり」と回答した未婚者は減少傾向にある。一方で、「理想の相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない」と回答する人は増加傾向にある。たとえば、女性の場合、「ある程度の年齢までには結婚するつもり」とする人は、54.1%(1987(昭和62)年)から43.6%(2002(平成14)年)へと減少し、「理想の相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない」とする人は、44.5%(1987年)から55.2%(2002年)へと上昇している。
 2002年調査では、男性、女性ともに、後者の回答割合が前者を上回っている。
 このように、これまで社会的規範意識としてあった一定年齢に達したら結婚するという考え方は減少し、理想的な相手が見つかるまでは結婚を先延ばしするという傾向が増加してきている。「結婚適齢期」という言葉が死語になりつつある。すなわち、結婚に対する意識が、個人的な理由に基づくものへと変化してきたということができる。
第1‐2‐15図 結婚の時期に対する考え方(未婚者)



(結婚することの利点)

 結婚に対する意欲は、未婚者が結婚そのものに対してどのような価値観を有しているか、あるいは独身生活にどのような魅力を感じているかによっても左右される。未婚者(独身者)の結婚、独身それぞれの利点に対する考え方について、「第12回出生動向基本調査」で見てみよう。
 未婚者に対して、「結婚することに利点がある」かどうか聞いたところ、「ある」と答えた者は男性62.3%、女性69.4%であるが、男性では減少傾向にある。一方で「独身生活に利点がある」と解答した未婚者は、男女ともに微減傾向にあるものの、男性79.8%、女性86.6%と、結婚に利点があると思う人の割合を上回っている。
第1‐2‐16表 未婚者の結婚の利点、独身生活の利点に対する考え
(%)
(年)
男性
女性
1987年
(昭和62)
1992年
(平成4)
1997年
(9)
2002年
(14)
1987年
(昭和62)
1992年
(平成4)
1997年
(9)
2002年
(14)
結婚することは 利点があると思う
69.1
66.7
64.6
62.3
70.8
71.4
69.9
69.4
利点はないと思う
25.4
29.1
30.3
33.1
24.7
25.2
25.5
26.3
不詳
5.5
4.2
5.1
4.6
4.5
3.4
4.6
4.3
独身生活は 利点があると思う
83.0
83.6
82.7
79.8
89.7
89.0
88.5
86.6
利点はないと思う
10.7
11.2
11.6
14.6
5.4
7.4
7.2
8.6
不詳
6.3
5.2
5.7
5.6
4.9
3.6
4.3
4.8
資料: 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
注: 対象は18~34歳未婚者


 結婚することの利点について、男性では「精神的安らぎの場が得られる」が割合として一番高く、次いで、「子どもや家族をもてる」が続く。女性では「子どもや家族をもてる」が一番高く、ほぼ同じ程度の割合で「精神的安らぎの場が得られる」が続く。「愛情を感じている人と暮らせる」と回答する割合は、男性よりも女性の方が高い。
 一方、減少傾向が顕著であるのは男性、女性ともに「社会的信用や対等な関係が得られる」であり、「親や周囲の期待に応えられる」も減少傾向にある。男性では「生活上便利になる」も減少しつつある。
 このように、結婚の利点としては、精神的な充足や家族を得られるという理由が優位であり、社会的な規範や実利面に関して利点を感じる人の割合は低下しつつある。
 また、独身生活の利点をみると、男性、女性ともに「行動や生き方が自由」が割合としては圧倒的に高い。女性では「広い友人関係を保ちやすい」がこれに続くが、やや減少傾向にある。
第1‐2‐17図 結婚・独身の利点



(結婚は、選択肢のひとつ)

 「結婚しなくても、豊かで満足のいく生活ができる」かどうか尋ねた調査(内閣府「国民生活選好度調査」2001(平成13)年)によると、肯定する人(「全くそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)が32.6%、「どちらともいえない」が46.5%、否定する人(「全くそう思わない」と「どちらかといえばそう思わない」の合計)が20.9%となっており、肯定する人と否定する人の割合の差はさほど大きくない。
 これは、結婚を必然のことととらえているのではなく、人生の選択肢のひとつとしてとらえている人も多いことを示しているのではないかと考えられる。前述したとおり、「理想の相手とめぐり合うまで」結婚を先延ばししたり、結婚資金が足りなかったり、独身生活の利点を享受したりしているうちに、必ずしも結婚をしなくてもよいという意識が強くなってくることを示唆している。
 また、こうした結婚に対する価値観の変化の背景には、女性の就業の増大による経済力の向上、食事や洗濯等の家事サービスの外部化、社会の結婚への圧力が弱まったことなどもあると指摘されている。
第1‐2‐18表 「結婚しなくても、豊かで満足のいく生活ができる」という考えについて
(%)
  そう思う どちらともいえない そう思わない 無回答
(合計) 全くそう思う どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない 全くそう思わない (合計)
総数 32.6 9.9 22.7 46.5 15.1 5.8 20.9 0.1
男性 29.3 9.1 20.3 45.9 17.2 7.6 24.8 0.1
女性 35.7 10.7 25.0 47.1 13.0 4.1 17.1 0.1
資料: 内閣府「国民生活選好度調査」2001(平成13)年
注: 18歳以上の男女を対象


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