(2)子どもの存在に関する価値観

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(子どもを持つことの価値観)

 かつて、農業あるいは自営業が主である時代にあっては、子どもは家族にとって家業の生産を助ける大切な労働力であるとともに、家族の世話をし、また、将来親の老後を支えることが期待された。一方、今日では、親の雇用化(サラリーマン化)、家族規模の縮小、社会保障制度の整備等を背景に、子どもを持つ理由が、愛情を注ぐ対象であり、家庭を明るく楽しくすることへの側面に、その重点が移行してきた傾向がうかがえる。
 夫婦を対象に、子どもを持つことが理想と考える理由は何であるのかを聞いたところ、「子どもがいると生活が楽しく豊かになるから」が81.6%と最も高く、50歳未満の有配偶女性のどの年齢階層でも高い。次いで、「結婚して子どもを持つことは自然なことだから」55.6%、「好きな人の子どもを持ちたいから」39.6%となっている。ただし、「結婚して子どもを持つことは自然なことだから」は40歳代で、「好きな人の子どもを持ちたいから」は20歳代で多い。
 一方、「子どもは老後の支えになるから」(19.0%)、「夫や親など周囲が望むから」(11.5%)、「子どもを持つことで周囲から認められるから」(6.9%)といった、外的な理由や実用的な理由に対する回答割合は低い。
第1‐2‐19表 妻の年齢別にみた、子どもを持つことを理想と考える理由
(%)
  子どもがいると生活が楽しく豊かになるから 結婚して子どもを持つことは自然なことだから 好きな人の子どもを持ちたいから 子どもは夫婦関係を安定させるから 子どもは将来の社会の支えとなるから 子どもは老後の支えになるから 夫や親など周囲が望むから 子どもを持つことで周囲から認められるから その他
総数
81.6
55.6
39.6
33.2
26.6
19.0
11.5
6.9
5.4
25歳未満
81.5
45.1
61.4
34.8
19.0
24.5
8.2
3.3
6.5
25~29歳
81.5
42.7
53.4
28.5
18.0
22.0
15.1
4.8
6.3
30~34歳
83.1
49.9
44.4
30.0
20.5
20.0
11.6
6.7
5.3
35~39歳
84.3
54.4
38.4
35.2
28.4
18.4
12.1
8.4
5.7
40~44歳
80.4
61.7
32.7
35.7
31.2
17.7
10.6
7.3
5.3
45~49歳
78.6
66.7
30.1
34.9
33.1
17.0
9.6
7.1
4.5
資料: 国立社会保障・人口問題研究所「第12回出生動向基本調査」2002(平成14)年
注: 理想子ども数が1人以上と答えた初婚どうしの夫婦について。複数回答のため合計は100%を超える。


(子どもを持つことの価値観の変化)

 子どもを持つことの価値観について、約30年前(1972(昭和47)年)に行われた調査結果(国立社会保障・人口問題研究所「第6次出産力調査」)をみると、表(第1‐2‐20)のとおりである。選択肢が異なるため、2002(平成14)年に同研究所が行った調査との正確な比較対照は難しいが、1972年当時でも「子どもがいると家庭が明るく楽しい」が最も多いが(76.6%)、「子どもは国の将来の発展にとって必要」(38.6%)あるいは「子どもは老後のささえ」(42.3%)のように、子どもに関する公共性、実用性に関する価値観を支持する割合が高くなっていることが特徴的である。
 このように、現在は、子どもを持つ理由について、親としての精神的な充足に求める傾向が、とりわけ若い世代において高まっている。こうした傾向は、一方では、子どもを持つことを必然とはしない考え方が増えていることの背景とも推測される。同研究所の調査から「結婚したら子どもを持つべきか」という設問への回答を見ると、賛成と答える人は、10年前と比較をして約14ポイント低下する一方で、「反対」と答える人の割合が倍増している。
第1‐2‐20表 子どもに対する意見
  割合(%)
子どもがいると家庭が明るく楽しい
76.6
子どもを生むのは当然のこと
37.1
子どもは国の将来の発展にとって必要
38.6
子どもは老後のささえ
42.3
子どもは家業のあとつぎとして必要
18.6
子どもよりも夫婦中心の生活が本来の生き方
8.5
その他
1.7
資料: 国立社会保障・人口問題研究所「第6次出産力調査」1972(昭和47)年
注: 割合はそれぞれの意見を支持する割合であり、複数回答のため合計は100%を超える。


第1‐2‐21図 結婚したら子どもを持つべきか



(家庭を築くことや生命を継承していくことの大切さ)

 結婚して家庭を築くことや、子どもを持つことを積極的に選択していかないという考え方の背景に、個人が自由や気楽さを望むあまり、家庭を築くことや生命を継承していくことの大切さへの意識が失われつつあるのではないかとの指摘がなされている。
 一方、社会においても、子どもの誕生や、妊婦、乳幼児を連れている人達を温かく受け入れたり、その子育てを支援したりする力が弱まっているのではないかと指摘されている。
 学校教育や地域社会における様々な関わりの中で、乳幼児と触れ合う機会を充実し、家庭を築くことの大切さや子育ての意義の理解を深め、また、自らの生命の尊さや大切さを実感し次代に伝えはぐくんでいくことの理解を深めることが求められている。

(子どもを持ってよかったこと)

 実際に子どもを持ってみると、夫婦はどのように感じるのだろうか。前述した「21世紀出生児縦断調査」の2001(平成13)年度調査(対象児年齢6か月)によると、「子どもを持ってよかったと思うことがある」人は全体の99.3%という高率であり、その理由としては、「家庭が明るくなった」(79.1%)、「身近な人が喜んでくれた」(78.1%)、「生活にはりあいができた」(54.4%)が多くなっている。
第1‐2‐22図 子どもを持ってよかったと思うこと



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