第3節 子育てを支援する生活環境の整備

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1 子育てバリアフリーなどを推進する

(1)建築物等におけるバリアフリー化の推進
 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第44号)が、1994(平成6)年9月から施行されており、建築物・施設について利用円滑化基準に適合するよう推進されている。
 高齢者・身体障害者等を対象としているが、乳幼児同伴の利用者に配慮した設備等についても、高齢者・身体障害者等の利用を配慮した建築設計標準に沿って、促進されてきた。
 例えば、乳幼児同伴の利用者が利用する建築物全般における、乳幼児用いす、乳幼児等用ベッド、授乳のためのスペース、多機能トイレの設置等があげられる。他には、建物の出口に近い位置に妊婦や乳幼児同伴の利用者が利用できる駐車施設の確保や通路への手すりの設置、劇場等の客席・観覧席における乳幼児同伴の利用者のための区画された観覧室の設置などがある。
(2)公共交通機関のバリアフリー化
 高齢者、身体障害者などが、自立した日常生活や社会生活を営むことができる環境を目指し、2000(平成12)年11月、公共交通機関を利用する身体障害者等の移動に関する身体の負担を軽減することにより、その移動の利便性及び安全性の向上を促進することを目的とする「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号、以下「交通バリアフリー法」という)が施行され、施行と同日に、交通バリアフリー法に基づき、移動円滑化の意義・目標、公共交通事業者等が講ずべき措置、市町村が作成する基本構想の指針等を定める「移動円滑化の促進に関する基本方針」(平成12年国家公安委員会・運輸省・建設省・自治省告示第1号)が策定された。これらを踏まえ、旅客施設における段差の解消、多機能トイレ(おむつ交換シート等)の設置や乗合バス車両におけるノンステップバス、リフト付バス、路面電車における低床式車両(LRT)の導入等が進められている。
(3)都市公園のバリアフリー化
 歩いて行ける身近な場所において、妊婦、子ども及び子ども連れの人をはじめ、すべての人々の健康運動や遊びの場及び休息やコミュニケーションの場となる都市公園を計画的に整備するとともに、園路やトイレ等の公園施設のバリアフリー化を推進する。
多目的トイレ(東京都)


(4)河川空間のバリアフリー化
 河川の近隣に病院や老人ホーム、福祉施設などが立地している地区や、高齢者の割合が著しく高い地域等において、水辺にアプローチしやすいスロープや手すり付きの階段、緩傾斜堤の整備等バリアフリー化対策を実施し、高齢者、障害者、子ども等を含む全ての人々が安心して河川を訪れ、憩い親しめる河川空間を創造する。
(5)子育てバリアフリーの情報提供
 妊産婦や乳幼児をもつ子育て家庭が地域において安心して生活できる子育て環境を整備するため、妊産婦、子どもや子育て中の親子が外出や社会活動を困難にしているような障壁がないかを点検・確認し、これを反映させた子育てバリアフリーのまちづくりに関する基本計画を策定する際の支援を行っている。
 また、市町村において、乳幼児とその親が外出する際の遊び場、授乳コーナー及び一時預かりの実施場所等を示したマップを作成し、子育て家庭に情報提供することにより、子育てしやすいまちづくりを推進している。
(6)STS(スペシャル・トランスポート・サービス)を活用した育児支援輸送サービスの普及推進
 STSに関しては、2004(平成16)年度において、STSを活用した育児支援輸送サービスのあり方に関する調査を始めた。
 この調査で、育児支援輸送サービスについて、今後の方向性、支援方策等について調査を行い、タクシー会社と子育て支援センター等がそれぞれの専門分野を活かしながら連携するなどして、輸送分野において子育て支援活動を行うことにより、子育てに携わる者に対して、いかにして安全で安心して利用できる足を提供していくかを検討する。

2 良質な住宅・居住環境の確保を図る

 子どもの養育及び成長に適した良質な住宅・居住環境の確保を図るため、税制や融資等による子育てに適した住宅確保の支援、公共賃貸住宅における多子世帯の支援、保育所等を併設した住宅の整備、都心における職住近接等により、安心でゆとりある住宅の整備を促進している。
(1)子育てを支援するゆとりある住宅の確保
 子育てに適した住宅の確保については、住宅ローン減税制度や住宅金融公庫の証券化支援事業等による住宅取得の支援を行ってきた。2004(平成16)年度においても、2003(平成15)年度同様の住宅ローン減税(最大控除額500万円)を2004年12月31日まで入居する者に適用することとしている。また、特定優良賃貸住宅供給促進事業や都市再生機構における民間供給支援型賃貸住宅制度により良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに、新規に建築される公共賃貸住宅はバリアフリーを標準仕様としている。
 シックハウス対策については、「建築基準法」(昭和25年法律第201号)が改正され(平成15年7月1日施行)、新たにホルムアルデヒドに関する建材の制限、換気設備設置の義務付け等が規定された。
(2)公共賃貸住宅における多子世帯の支援
 公共賃貸住宅における多子世帯の支援では、公営住宅における多子世帯の優先入居、都市機構住宅における当選率の優遇措置を図っている。
(3)保育所等を併設した住宅等の供給の促進
 保育所を併設した住宅等の供給については、大規模な公共賃貸住宅団地の建替えに際し保育所等の一体的整備を原則化し、市街地再開発事業等における施設建築物内に保育所等を導入した場合の補助や保育所等に関する容積率制限の緩和等を行っている。
(4)職住近接の実現
 都心における職住近接による子育て世帯の支援では、既存オフィス等のファミリー向け賃貸住宅への転用をはじめとする都市型住宅の供給を促進している。

3 子育てを支援する道路交通環境の整備

 妊婦、子ども及び子ども連れの人が安全にかつ安心して通行することができるよう、交通事故が多発している住居系地区又は商業系地区796か所を「あんしん歩行エリア」として指定し、都道府県公安委員会による信号機、光ビーコン等、道路管理者による歩道、ハンプ(道路上の凸型施設)、クランク(ジグザグ蛇行)等の整備等を重点的に実施し、生活道路における歩行空間の整備及び通過交通の進入や速度の抑制に努めている。また、音響信号機、歩行者感応信号機等のバリアフリー対応型信号機の整備を推進するとともに、幅の広い歩道の整備や、歩道の段差・勾配の改善等に取り組み、歩行空間のバリアフリー化に努めている。

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