第2節 欧米諸国の少子化対策

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1 主要国の出生率低下の認識と政策スタンス

○自国の出生率の評価として、フランス、ドイツ、イタリアは、「低すぎる」と認識している一方、スウェーデン、イギリス、アメリカは「満足な水準」と認識している。

○政策スタンスを見ると、フランスだけが「回復させる」としているが、他の国は「介入しない」というスタンスである。わが国では、出生率は「低すぎる」との認識であり、政策スタンスとしては、「介入しない」から、最近になって「回復させる」になっている。

○西欧諸国では、児童手当のような経済的支援策や、保育サービス、育児休業制度のような仕事と育児の両立支援策について、低下した出生率にどのように対応するかという「少子化対策」というよりも、子どもやその家族に対して支援を行うことを目的とした「児童・家庭政策」として位置づけ、長い歴史の中で施策が展開されている。

第1‐4‐3表 主要国の出生力への評価と政策スタンス
 
1986年
2003年
合計特殊
出生率
出生率の
評価
出生率の水準
に対する政策
スタンス
合計特殊
出生率
出生率の
評価
出生率の水準
に対する政策
スタンス
フランス
1.83
低すぎる
回復させる
1.89
低すぎる
回復させる
ドイツ
1.41
-
-
1.34
低すぎる
介入しない
イタリア
1.34
満足な水準
介入しない
1.29
低すぎる
介入しない
スウェーデン
1.80
低すぎる
介入しない
1.71
満足な水準
介入しない
イギリス
1.78
満足な水準
介入しない
1.71
満足な水準
介入しない
アメリカ
1.84
満足な水準
介入しない
2.04
満足な水準
介入しない
日本
1.72
満足な水準
介入しない
1.29
低すぎる
回復させる
資料: United Nations, "World Population Polices 2003".合計特殊出生率はE.U.,"Eurostat", U.S.Department of Health and Human services"National Vital Statistics Report",厚生労働省「人口動態統計」。
注1: 調査は国連が加盟国政府に調査票を配布して実施したもの。
 2: 「出生率」の評価は、政府による出生率に対する認識であり、「高すぎる」、「満足できる水準」、「低すぎる」に分類される。「出生率に関する政策スタンス」は、各国が出生率に影響を与える政策に対する態度のことであり、「抑制する」(出生率を低下させる)、「維持する」、「回復させる」(出生率低下に歯止めをかける)、「介入しない」(特に何もしない)の4つに分類される。

2 仕事と家庭の両立支援

○育児休業制度はヨーロッパの主要国各国で制度化されているが、スウェーデンでは男女とも8割前後と、特に取得率が高くなっている。その背景として、育児休業中の所得保障制度の充実(賃金の80%が保障されるほか、企業が独自の上乗せ給付を行う場合がある)と、代替要員の確保等、育児休業を取得しやすくする体制が整っていることが挙げられる。

第1‐4‐5図 スウェーデンの育児休業取得率



3 働き方の見直し

○イギリスでは2000年から「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)キャンペーン」を始めている。「仕事と生活の調和」を進めることにより、労働者にとっては生活の質の向上につながり、企業にとっては競争力を高め、業績向上につながるとしている。

○仕事と生活の調和策は、出生率の向上を直接の目的としているわけではないが、近年のイギリスの合計特殊出生率の水準(1.7程度)をみると、働きやすい環境の整備が、結果として出生率の回復に寄与しているのではないかとみられている。

4 保育サービス

○スウェーデンでは、コミューン(市町村)の責任の下で保育サービスが充実しており、1~5歳人口の約8割がサービスを受け、待機児童は解消しているといわれている。また、フランスでは、在宅での保育サービスが発達しており、一定の要件を備えた者を登録する「認定保育ママ」が保育需要の約8割を担っているとされる。

5 経済的支援(児童手当・税制)

○欧米の主要国の中では、わが国と比較して、給付水準が高い児童手当等の経済的支援策が行われている。経済的支援が最も手厚いと言われているのがフランスである。フランスの家族給付は、企業からの拠出、一般社会税、国庫からの拠出など、幅広い負担を財源とする「家族給付全国公庫」が担っており、いわゆる児童手当も含めて30種類もの手当があり、経済的支援の水準が極めて高い。

○また、フランスの税制はN分N乗方式が用いられており、累進課税が高い場合、子どもの数が多くなるほど所得税負担が緩和されることとなる。

第1‐4‐15表 保育サービスの各国比較
 
日本
フランス
スウェーデン
設置主体、利用状況等 ・設置運営主体
市町村、民間
・財源
 国から、市町村へ保育所運営費として2分の1、都道府県から4分の1の補助金を給付。
・料金
 所得階層により0円~8万円の基準額が定められており、市町村により基準額を元に軽減措置等が行われている。
・利用者
 0~6歳児
・利用状況
 3歳未満 15.2%
 3歳~6歳未満 36.7%
(2003年10月1日現在、厚生労働省保育課調べ、総務省人口統計より内閣府にて計算)
・設置数
 22,272(2003年)
・設置運営主体
市町村、民間、非営利団体
・財源
 家族給付全国基金から市町村に補助金、市町村から非営利団体に補助金を給付。
・料金
 パリ市運営の場合=1人、月30ユーロ(約4千円)~570ユーロ(約7万7千円)(応能負担)
 パリ市民間保育所=1人、月1,500ユーロ(約20万2千円)程度
・利用者
 0~3歳児
・設置数
 4,300(1999年)
・利用状況
 3歳未満の児童(約230万人)のうち、集団託児所は約13万人、ファミリー保育所は約7万人となっている。
・設置運営主体
保育所の大半は、コミューン(市町村)により設置、経営されている(一部、親たちにより組織運営される両親協同保育所等が存在)。
 保育サービスは、幼児教育の一環として位置づけられており、保育所に通っていない子どもと親が参加するオープン型保育所も設けられている。
・利用者
 1~6歳対象。教育的活動を中心とした託児施設。親の就労支援のため1日10時間~12時間開設
(パートタイムグループ
 4~6歳対象。1日3時間。他の施設と併用されることが多い。)
    ・利用状況
 1~5歳児の82%が保育所を利用している(2003年)。逆に、両親休暇制度があるため、0歳児の保育所利用は、基本的になし。
・オープンプレスクール
 他のサービスを利用していない未就学児が利用可能。両親の付き添いが必須。
ドイツ
イギリス
アメリカ
・設置運営主体
地方自治体、協会、福祉団体等
・保育所については、旧西ドイツ地域では、3歳未満児の育児は、家族の役割に属するものとの考えが根強く、保育サービスの整備が低い水準にある(ある州では、対象年齢に占める利用者の割合は、保育所2.3%、幼稚園97%となっている)。
 一方、旧東ドイツ地域では、社会主義時代の名残で保育施設は充実している。また、3歳以上6歳未満の幼児全てに幼稚園入園の権利が保障されている。
・利用者
 0~3歳児
・利用料
 州ごとに決められている。
・設置運営主体
自治体、民間
 公立の施設は数が少なく、一人親家庭など特別なニーズを持つ児童が優先利用しており、施設の多くは、企業内託児施設や民間企業が設立した施設となっている。利用料は、原則、親の負担。伝統的に、保護を必要とする子どもへのサービスが中心に構築され、一般家庭向けサービスの整備は低い水準にとどまっている。
 集団的な施設保育を行う保育形態は、デイナースリーと呼ばれる。
・利用者
 5歳未満児
・利用状況
 施設保育に家庭的保育を合わせても、5歳未満児の10数%をカバーする程度。
・設置運営主体
教会、非営利団体、企業
 いずれも、親が私的に契約して利用。
・利用料
 低所得の援助を受ける家庭を除いて、親が利用料を負担する。
・国全体を通じた制度はなく、保育所の設置基準等も州が定める。また、連邦政府は州に対して、低所得家庭が良質な保育を受けることができるプログ?ラムに対する助成を行っている。
・施設型の保育所は、デイケアセンターという。
資料: 「海外情勢白書 世界の厚生労働2004」(厚生労働省編)等を基に内閣府少子化対策推進室において作成。
 注: 各国の為替レートについては、日銀報告省令レート(2005年9月分)により換算。


第1‐4‐20表 児童手当の各国比較
事項
日本
フランス
スウェーデン
ドイツ
イギリス
支給対象児童 第1子から 第2子から 第1子から 第1子から 第1子から
9歳到達後最初の年度末まで(小学校3学年修了前) 20歳未満 16歳未満(義務教育修了前)
20歳の春学期まで奨励金手当等
18歳未満(失業者は21歳未満、学生は27歳未満) 16歳未満(全日制教育を受けている場合は19歳未満)
支給月額 ・第1子、第2子
0.5万円
・第3子~
1.0万円

・第1子
なし
・第2子
約1.5万円
・第3子~
約2.0万円

<割増給付>
11~16歳
約0.4万円
16~19歳
約0.8万円
・第1子、第2子
約1.4万円
・第3子
約1.7万円
・第4子
約2.4万円
・第5子~
約2.7万円

奨学金手当
 児童が17歳以上でも学生の場合、児童手当と同額を支給
・第1子から第3子
約2.1万円
・第4子~
約2.4万円

・第1子
約1.4万円
・第2子
約0.9万円

所得制限 あり なし なし 原則なし なし
財源 公費と事業主拠出金 家族給付全国基金、事業主拠出金、税 国庫負担 公費負担 国庫負担
資料: 「海外情勢白書 世界の厚生労働2004」(厚生労働省編)、フランス家族手当金庫ホームページを基に内閣府少子化対策推進室において作成
注: 各国の為替レートについては、日銀報告省令レート(2005年9月分)により換算

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