2 市区町村別にみた子どもの数と合計特殊出生率

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(市区町村別にみた人口と子どもの数)

 市区町村単位では、既に人口が減少している自治体が多く、国勢調査結果では、1995(平成7)年から2000(平成12)年にかけて2,202の自治体(全自治体の約68%)で人口が減少している。特に、北海道、中国地方は、約85%の自治体で人口が減少しており、東北、四国地方においても約8割の自治体で人口が減少している。年少人口に関しては、地域の差はなく、ほとんどの自治体(約97%)で、年少人口割合が減少しており、少子高齢化が進行していることがわかる。

(市区町村別にみた合計特殊出生率)

 厚生労働省「人口動態統計特殊報告」(平成10年~平成14年人口動態保健所・市区町村別統計の概況)6では、1998(平成10)年から2002(平成14)年平均での市区町村別合計特殊出生率が示されている。
 これによれば、合計特殊出生率1.40以上1.69以下に1,782団体、全体の53.1%という最も多くの市町村が分布し、1.0未満については、29団体、0.9%、1.00以上1.39以下に、841団体、25.1%、1.70以上1.99以下に、620団体、18.5%、2.00以上に83団体、2.5%が分布している。
6 この統計における市区町村数は、2002年12月31日時点のものであり、その対象は東京都三宅村を除く3,355市区町村である(区は特別区及び行政区としている)。

第1‐1‐14表 人口・年少人口割合減少自治体数(2000年と1995年の比較)
   人口減少自治体数 年少人口割合減少自治体数 自治体数
北海道
180
(84.9%)
209
(98.6%)
212
東北
407
(79.5%)
509
(99.4%)
512
北関東
141
(52.6%)
261
(97.4%)
268
南関東
126
(46.3%)
263
(96.7%)
272
北陸
68
(61.3%)
103
(92.8%)
111
中部
236
(52.4%)
422
(93.8%)
450
近畿
204
(63.2%)
310
(96.0%)
323
中国
269
(84.6%)
312
(98.1%)
318
四国
172
(79.6%)
213
(98.6%)
216
九州・沖縄
410
(71.9%)
564
(99.0%)
570
合計
2,213
(68.1%)
3,166
(97.4%)
3,252
資料: 総務省統計局「国勢調査」1995(平成7)年、2000(平成12)年
※地域区分は以下のとおり。
 北海道:北海道 東北:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟
 北関東:茨城、栃木、群馬、山梨 南関東:埼玉、千葉、東京、神奈川
 北陸:富山、石川、福井 中部:長野、岐阜、静岡、愛知、三重
 近畿:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 中国:鳥取、島根、
 岡山、広島、山口 四国:徳島、香川、愛媛、高知
 九州・沖縄:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄


第1‐1‐15図 市区町村別合計特殊出生率


 合計特殊出生率が最も高い市町村は、沖縄県多良間村の3.14を最高に、以下、鹿児島県天城町(2.81)、東京都神津島村(2.51)、鹿児島県伊仙町(2.47)、沖縄県下地町(2.45)となっており、沖縄県や鹿児島県の離島部が目立っている。
 一方、低いところでは、最低は東京都渋谷区の0.75であり、以下、目黒区(0.76)、中野区及び杉並区(0.77)、京都市東山区(0.79)であり、東京都などの都市部が目立っている。
 このように、合計特殊出生率は、全国一律ではなく、地域差があって、最も高い自治体と最も低い自治体を比べると、4倍近い差となっている。
 また、時系列でみると出生率が上昇している自治体、下降を続けている自治体等、自治体によって出生率の動向には多様な動きがみられる。1990(平成2)年から2000(平成12)年の10年間で出生率が上昇している自治体は、152団体となっているが、出生率が上昇した地域では、若年既婚者層の転入と定住化が進んでいる傾向が見られると指摘されている7
7 国立社会保障・人口問題研究所の佐々井司氏による「地方自治体にみる出生率上昇の要因と少子化対策」(2004年)参照。

第1‐1‐16表 市区町村別の合計特殊出生率(1998年から2002年の平均)
上位20団体名
出生率
人口
下位20団体名
出生率
人口
沖縄県多良間村
3.14
1,338
東京都渋谷区
0.75
196,682
鹿児島県天城町
2.81
7,212
東京都目黒区
0.76
250,140
東京都神津島村
2.51
2,144
東京都中野区
0.77
309,526
鹿児島県伊仙町
2.47
7,769
東京都杉並区
0.77
522,103
沖縄県下地町
2.45
3,172
京都市東山区
0.79
44,813
鹿児島県和泊町
2.42
7,736
東京都世田谷区
0.82
814,901
鹿児島県徳之島町
2.41
13,127
福岡市中央区
0.82
151,602
長崎県美津島町
2.39
8,423
東京都新宿区
0.82
286,726
長崎県上県町
2.39
4,494
東京都豊島区
0.83
249,017
長崎県石田町
2.39
4,752
東京都文京区
0.84
176,017
沖縄県伊是名村
2.35
1,897
京都市上京区
0.87
84,187
長崎県勝本町
2.35
6,914
東京都武蔵野市
0.87
135,746
鹿児島県喜界町
2.31
9,041
東京都千代田区
0.89
36,035
鹿児島県知名町
2.30
7,435
札幌市中央区
0.90
181,383
沖縄県伊平屋村
2.30
1,530
東京都品川区
0.92
324,608
鹿児島県住用村
2.29
1,906
大阪市北区
0.92
91,952
鹿児島県中種子町
2.27
9,675
東京都港区
0.94
159,398
沖縄県城辺町
2.25
7,291
広島市中区
0.94
124,719
長崎県上対馬町
2.23
5,226
京都市中京区
0.94
95,038
宮崎県椎葉村
2.22
3,769
東京都台東区
0.96
156,325
資料: 厚生労働省「人口動態統計特殊報告」(平成10~14年 人口動態保健所・市区町村別統計)。ただし、人口は総務省統計局「国勢調査」(2000(平成12)年)

(都道府県内における違い)

 また、一つの都道府県内においても、合計特殊出生率は市区町村ごとに差がある。図のとおり、各都道府県内で、最高と最低の市町村を比較すると、2倍前後の差が生じている。たとえば、都道府県として合計特殊出生率が最も高い沖縄県の中では、最高の多良間村(合計特殊出生率3.14)と最低の佐敷町(1.55)の差は、1.59で、2.0倍の差がある。最も低い東京都の中でも、最高の神津島村(2.51)と最低の渋谷区(0.75)の差は1.76で、3.3倍の差がある。また、最高値と最低値の差が小さい県は、富山県や鳥取県である。富山県では八尾町(2005(平成17)年4月合併により富山市)(1.55)と福岡町(1.34)の差は0.21、鳥取県では東伯町(2004(平成16)年9月合併により琴浦町)(1.73)と鹿野町(2004年11月合併により鳥取市)(1.47)の差は0.26となっている。
第1‐1‐17図 都道府県別にみた合計特殊出生率の最高値と最低値 平成10~14年

(東京都における地域差)

 本節では、特に東京都における合計特殊出生率の地域差について言及してみよう。東京都では、大都市部から島嶼部まで大きな地域差を持っており、地区別にその推移をみると大きな違いがみられる。
 特別区は、1995(平成7)年から1.0前後で推移し、若干変動しながら低下傾向にある。一方、人口の少ない島嶼部は、2001(平成13)年を除いて1.7前後で安定している。東京都全体でみれば、特別区及び市部の低い出生率の動きに影響を受けて、2003(平成15)年までおおむね一貫して低下傾向にあり、2003年には約1.0となっている。しかし、同じ特別区でも、江戸川区のように1.3を超えるような区もあれば、渋谷区のように0.7台とわが国で最低の区もある。また、市部を見ても、福生市のように1.4前後の市と武蔵野市のように0.8台の市と大きな開きが見られる。
 このような違いは、若い子育て世代が集まる地域であるかどうか、子どもを生み育てやすい地域であるかどうかなどの特性も反映しているものと考えられる。特別区の中では最も高い江戸川区における子育て支援の取組をコラムで紹介する。
第1‐1‐18図 東京都にみる地区別合計特殊出生率の推移


コラム 離島で合計特殊出生率が高い理由

 なぜ、鹿児島県の離島では出生率が高いのであろうか。鹿児島県の沖永良部島(和泊町、知名町)での事例研究「少子化要因とその社会学的意味‐鹿児島県離島、沖永良部島の事例研究‐」(鹿児島大学 片桐資津子助教授)を参考にすると、次のような点が指摘できる。
 沖永良部島にある和泊町、知名町は、前述の合計特殊出生率上位20団体の表にあるように、それぞれ、人口7,736人、7,435人で、出生率は2.42、2.30となっている。地域特性としては、気候は温暖で快適、主要産業は農業で、特に花卉類とサトウキビの収穫量が多いが、教育熱心な土地柄で、地元高校卒業後は90%以上が島の外で進学するという現状である。
 片桐助教授の事例研究における地元住民のヒアリングから鍵となるポイントを整理すると以下のような点が挙げられる。
 〔1〕 地元の高校を卒業するとほとんどの若者は島を出て行くにもかかわらず、島外での進学や就職の後に何年か経つと島に戻ってくる。
 〔2〕 必ずしも親の家業を引き継がなくても、農業の専門家育成機関があり農業経営や技術を学び、農業をして働くという環境が整っている。
 〔3〕 子育てに関しては、親もとに住んでいることが多く、親からのサポートをはじめ、働きながらでも子どもを見てもらえる安心感がある。
 〔4〕 島には、独特のリズムがあり、食料も自給的で、経済的な負担も少なく、穏やかで本当に暮らしやすい。
 以上から、生まれ育った場所への定着率の高さ、就労のしやすさ、仕事と子育ての両立のしやすさ(親元での出産・子育て)、経済的負担の軽さといったことが、出生率の高さにつながっていると考えられる。現在の複雑な社会経済状況によって「子どもを生み、育てにくい社会」となっているわが国を、「子どもを生み、育てやすい社会」へと転換する上で、大切な何かを教えてくれているとは言えないだろうか。

コラム 23区の中で最も出生率の高い江戸川区の地域力

 江戸川区(2005(平成17)年4月1日現在の人口、約66万人)は、2003(平成15)年の合計特殊出生率が1.30と、東京都23区内で最も高い。東京都平均の1.00、23区平均の0.96を大きく上回っている。
 従来から、若い子育て世帯にとって、子育てしやすいまちとして(江戸川区に住む就学前の子どもを持つ保護者3千人に行った調査では、94.9%の人が子育てしやすいまちだと答えている)人口流入も多いが、何が子育て世代を引きつけているのだろうか。
 まず、江戸川区の施策についてみると、江戸川区独自の制度として「保育ママ制度」がある(その概要は、第3章の事例を参照)。保育ママ制度によって0歳児保育を行う一方で、公立保育所における0歳児保育は行われていない。これは、低年齢時には、できるだけ家庭で子育てすることが、親子にとって良いことであるという江戸川区の方針を反映したものである。保護者が負担する費用としては、基本保育料が月額1万4千円と、保育所の保育料に比べ安くなっている。
 また、江戸川区の行政方針として、歴史的に「民間でできることは民間に」という姿勢で、私立幼稚園が圧倒的に多い(私立39、公立6)が、私立幼稚園の授業料等については、公立との差額月2万6千円を補助し、経済的負担の軽減に取り組んでいる。
 江戸川区独自の手当として、満1歳未満の乳児を養育している保護者で、特別区民税の所得割相当額が6万円未満の者については、月額1万円(所得割相当額が1万6千円未満は、1万3千円)を支給している。
 さらに、「すくすくスクール」という放課後児童クラブを発展させた活動を行っており、昼間保護者のいない子どもだけではなく、かつ、小学校3年生までに限らず、小学生であれば誰でも参加できるとともに、幅広い世代の地域住民との交流を通じて多くの人とかかわりながら、社会性やコミュニケーション力を発達させることに貢献している。今までは、参加する子どもは、共働きの子どもに限られており、遊ぶ範囲も一定の範囲で、関わる大人も主に数人の指導員という閉鎖的な状況であったが、2005年度から区内の全小学校73校で、地域の人材を活用して、子どもにとって本当に意味のある活動を提供することができるようになっている。
 次に言えることは、立地に恵まれていることである。5本の鉄道、地下鉄が発達しており、都心へのアクセス、交通の便が良い割に、地価が安く、若い世代にとって住宅を賃貸でも購入でも入手しやすい。また、海に臨み、荒川、江戸川と二つの大きな川が流れ、水辺の自然環境にも恵まれ、遊び場や憩いの場が提供されている。
 以上、江戸川区の特徴を述べたが、江戸川区の担当責任者は、立地条件や行政が行う子育て関連の施策だけで、子育てしやすいまちになれるという簡単なことではないという。区と区民が一体となって魅力的なまちをつくろうという昔からの考え方や、何かあったらみんなで支え合ってやろうとする区民の住民性が土台にあるからこそ、「保育ママ」も「すくすくスクール」も機能しているのであるという。言い換えれば、子育ての地域力の基盤があり、地域の人材の活用がうまくできているからである。江戸川区では、2000(平成12)年度に策定した長期計画で、新たに「共育・協働」という理念を打ち出し、次世代育成支援の行動計画にも「共育・協働 未来への人づくり」として理念を反映させ、これまで培ってきた地域力を土台としながら、今後もまちづくりに取り組んでいくとしている。
※合計特殊出生率(東京都平均、23区平均、江戸川区)については、東京都衛生年報(2004年版)による。

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