2 その他の企業等における取組

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(子育て支援官民トップ懇談会)

 以上のとおり、2005年4月から子ども・子育て応援プランや、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画が実施されていることを踏まえ、企業における仕事と家庭の両立支援策や働き方の見直しなどの子育て支援策の一層の積極的な推進を図るとともに、政府の少子化社会対策について官民での意見交換を行うため、同年5月、官邸において、「子育て支援官民トップ懇談会」(以下「トップ懇」という。)が開催された。
 トップ懇は、内閣官房長官の主宰によるもので、関係閣僚(内閣官房長官、少子化対策担当内閣府特命担当大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣)と経済・労働界の団体(日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、日本労働組合総連合会、社会経済生産性本部)のトップで構成されている。
 トップ懇では、仕事と家庭・子育ての両立がしやすい社会をつくるため、国民的な運動を行っていくことが重要であるとの認識が示され、官民をあげて、トップがイニシアチブを発揮して取組を強化していくことになった。さらに、同年10月、第2回のトップ懇が開催され、官民をあげた国民的運動へ向けての取組について意見交換をし、今後、具体的に国民的運動を実施する方向で合意が得られた。以下では、トップ懇を構成する各団体における取組等を紹介する。

コラム 経済・労働界における取組

○少子化への取り組みについて

日本経済団体連合会 少子化対策委員長 茂木賢三郎
 日本経済団体連合会(日本経団連)はこれまでも、職場における子育て環境整備や仕事と家庭の両立支援などに取り組んでまいりましたが、平成17年5月には、少子化問題について様々な観点から検討する「少子化対策委員会」を新たに設置いたしました。この委員会では、これからの人口減少社会に経済界としてどのように対応していくのかということとあわせて、わが国の今後の少子化対策に、国や地方自治体、地域社会、国民、経済界といった各主体が、それぞれどのように、何に重点を置いて取り組んでいくのか等々を検討し、意見をとりまとめる予定です。

○次世代育成支援対策推進法に基づく取組について

 仕事と生活の調和の実現と多様な人材資源を活かした経営の実践を目指して
経済同友会 代表幹事 北城恪太郎
 少子化の進行により、企業は経営のあり方を見直す必要があります。企業の社会的責任経営を推進している経済同友会は、一人ひとりの従業員が子供を育てながら同時にいきいきと仕事をすることができるワークライフバランス(仕事と生活の調和)に配慮した職場環境を整え、多様な人材を有効に活かす経営を実践することが重要と捉えております。そのために我々企業経営者は、次世代育成支援対策推進法を積極的に活用していきます。

○日本商工会議所の少子化対策への取組みについて

 ~安心して子供を育てられる経済・社会環境の実現を目指して~
日本商工会議所 会頭 山口信夫
 少子化はわが国の将来を左右する基本的かつ最大の問題でありますので、今すぐ国を挙げてあらゆる実効性の高い少子化対策を講じる必要があります。子供を持つことの経済的負担の軽減はもちろんのこと、国民の意識改革により子育てを社会全体で支える環境をつくっていくことが必要不可欠であります。企業もその一環として、安心して子育てと仕事が両立でき、子育てなどで会社から離れても復帰しやすい環境を積極的に作っていく必要があると思います。

○中小・零細企業の子育てに政策的支援を

全国商工会連合会 会長 清家 孝
 少子化問題は、我が国の将来に関わる重要な問題であり、官民挙げて取り組んでいかなければなりません。本会としても、会員企業等に子育て支援の推進について普及・啓発に努めてまいります。しかしながら中小・零細企業では、自助努力でできる支援策にも限界があり、また、経営者自身が過酷な就労条件のため自らの子育てに手が回らないケースも多いのが実態ですので、中小・零細企業への支援について政策要望していきたいと考えております。

○中小企業における子育て支援への取組の促進について

全国中小企業団体中央会 会長 佐伯昭雄
 少子化の流れを変えるため、我々中小企業にも相応の役割が求められています。全国中小企業団体中央会では、中小企業向け行動計画策定マニュアルやハンドブックの作成・配布、全国各地での説明会の開催などの活動を通じて、広く中小企業の実情に即した子育て支援や行動計画の策定を呼びかけ、その普及・啓発に努めています。また、都道府県中小企業団体中央会等が厚生労働大臣の指定を受けて設置している「次世代育成支援対策推進センター」と連携して、ノウハウのない企業への支援を行ってまいります。

○働いているから子どもを産み育てやすい日本へ

日本労働組合総連合会 会長 高木 剛
 1990年代以降、職場では、「正社員」からパート・派遣・期間雇用者など「非典型労働者」への置き換えが急速に進んでいます。不安定雇用の拡大は少子化の極めて重要な原因の一つです。雇用の安定は将来の生活設計の大前提です。連合は、雇用の安定と、仕事と家庭の両立、労働時間の短縮、次世代育成支援行動計画の策定と実行などを通じ、「働いているから子どもを産み育てやすい日本」を目指し、取り組んでいます。

○次世代育成支援にむけた労使の取り組みについて

 ~子育てにやさしく活力あふれる社会の実現をめざして
社会経済生産性本部 会長 牛尾治朗
 少子高齢化と人口減少が進行するなか、子育てにやさしく活力ある社会を実現するためには、産業労使の一体となった取り組みが重要です。その際、経営者と従業員の意識改革、多様な勤務形態によって女性が働き続けられる環境づくりが不可欠です。このため、次世代育成支援を企業の社会的責任のみならず生産性向上の観点からも捉え、働き方・暮らし方の改革や女性をはじめとする人材活用戦略の再構築、子育て環境の整備などを実践的に推進することが求められます。

(個別企業での取組事例)

 個々の企業においても、積極的な子育て支援策への取組を行っている例が出てきている。厚生労働省では、子育て支援に熱心な企業に対して、毎年「ファミリー・フレンドリー企業」として表彰をしており、2005(平成17)年度までに270企業が表彰を受けている。2005年4月から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画が実施されていることを契機に、なお一層の取組を期待したい。
 数多くの取組事例がある中で、ここでは代表的な事例をコラムとして紹介する。

コラム 各企業の先進的な取組

(1)ワーク・ライフ・バランスの推進

 企業における働き方の見直しの大きな流れの一つに、「ワーク・ライフ・バランス」(生活と仕事との調和)という取組がある。もともとはイギリスで始まった取組(第4章参照)であるが、日本でもその考え方が広まりつつある。
 企業例としては、(株)資生堂などの大企業で取組が進められており、日本IBMやP&Gといった外資系企業のように、アメリカ本国でのダイバーシティー(多様な働き手に合わせ、働く環境も多様で柔軟な仕組みにする)という考え方が定着している企業においては、早い段階からワーク・ライフ・バランスという取組が進められている。
 ワーク・ライフ・バランスとは、単に子育てしている社員だけを対象にしているのではなく、全ての社員が、労働時間の見直し等によって仕事と生活との調和を図る(個人の生活を充実させる)ことが、生産性の向上や企業の業績向上につながっていくという考え方である。(株)資生堂では、2005年4月から始動した次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画に、「『ワーク・ライフ・バランス』実現をめざすアクションプラン」というサブタイトルを付けているように、ワーク・ライフ・バランスを最も重要な柱として取り組んでいる。
 ワーク・ライフ・バランスを推進する観点から、働き方を徹底的に見直すということで残業を禁止している企業もある。それは、「毎日がNO残業デー」のトリンプ・インターナショナル・ジャパン(株)であり、社長の強いリーダーシップの下、効率的な経営・スピード経営という点から全社的な生産性を上げるために取り組んでいるものである。社員の満足度の向上、女性をはじめとした社員の定着率アップ、そして、何よりも企業の業績が向上しているということである。

(2)育児休業等の休暇を取りやすくする取組

 育児休業によって昇格が遅れたりすることがないような人事制度を導入することで、育児休業を取りやすくしている企業としては、(株)リコーやNTTコミュニケーションズ(株)がある。また、ソニー(株)では、育児休業中に在宅で仕事をできる制度を全職種に導入している。ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)では、育児等に従事している社員を対象に、育児休業としてではなく、年間20日までの在宅勤務を認めている。
 また、秋田県にある社員約30人の(株)カミテは、子どもが病気の時の1時間単位の看護休暇、妻の出産時に男性社員が5日間とれる特別有給休暇、事業所内託児所を無料で利用可能にするなど幅広い子育て支援を行っている。

(3)年次休暇の利用促進の取組

 休暇をとりやすくして、従業員の育児や介護などを支援することを狙いとして、労働基準法では2年間で消滅する「年次有給休暇」を独自に100日まで積み立てることができる制度を大和ハウス工業(株)が2005(平成17)年度から導入している。労働基準法によると、その年に有休が未消化だった場合、翌年まで繰り越すことができ、労働者が1年間に消化できるのは40日までとされているが、同社では法定日数に上乗せする形で、翌々年以降の繰り越しも含め、通算100日まで認められる。法定日数と合わせて最大で年140日の有休休暇が取得可能である。

(4)出産一時金などの祝い金の支給

 高額の出産一時金を支給している例がある。育児用品メーカーであるコンビ(株)では、第1子または第2子の誕生に対して50万円を支給、第3子以降では200万円という高額の一時金を支給する制度を持っている。また、三洋電機(株)では、出産時一時金(第1子50万円、第2子70万円、第3子90万円)のほか、子どもの成長に合わせ、入園、入学時の節目においても50~70万円を支給している。
 大和ハウス工業(株)では、社員に子どもが生まれた場合、1人あたり一律100万円の一時金を支給する仕組みを導入しており、第1子、第2子等の区別がないことが特徴的である。

(5)再雇用、パート労働者の処遇改善等

 積水ハウスリフォーム(株)は、50歳までの女性を対象に、将来の正社員採用を前提にした契約社員制度を導入しており、主婦経験者の活用を進めている。(株)損害保険ジャパンでは、育児休業中の社員の仕事を、退職した元社員が職場復帰してカバーする「OB・OG登録制度」を始めており、経験者を活用することで専門的な仕事にも効率よく対応できるようになっている。
 また、スーパー大手のイオン(株)では、全社員の8割を占めるパート社員を正社員と統一基準で評価することで、賃金や人事などに反映する仕組みを導入しており、これにより、出産・育児等でパート社員になった場合でも、人材登用の機会に差がつかないことになる。

(6)事業所内託児所

 (株)資生堂では、本社内に「カンガルーム汐留」を開設し、その利用促進を図っている。2004(平成16)年度の月平均の在籍人数は約19名となっており、年度途中などいつでも入所が可能であること、インターネットカメラなど安心して預けられる環境が魅力的であるということである。
 日産自動車(株)は、神奈川県にある研究開発センターに、定員40名、利用時間も午前7時半~午後10時までという託児所「マーチランド」を開設し、現在定員の半数近くの利用が進んでいる。
 また、新生銀行では本社内に「日比谷キッズ」という事業所内託児所を2003(平成15)年9月から開設している。利用時間も通勤ラッシュを避けるため午前8時から午後7時まで(午後9時まで延長可能)となっており、一日平均12~13人が利用している。
 文部科学省では、2001(平成13)年10月から霞が関初の取組として文部科学省のビル内に「かすみがせき保育室」を開設している。現在(2005年10月時点)、22名が利用し、利用者は、文部科学省の職員が9名、他は、他省庁、民間企業に勤務している者となっており、霞が関近辺に働く人々に幅広く利用されている。

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