第3章 地方自治体における取組

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第1節 少子化対策における地方自治体の役割

1 地方自治体の役割の重要性

(地方自治体の役割)

 少子化対策において地方自治体の役割は、極めて重要である。
 その理由は、第一に、地方自治体は、様々な子育て支援施策の実施主体となっているからである。少子化対策における国と地方の役割分担をみると、国は、法制度の創設・改正、全国統一的な指針や基準の作成、必要な予算の確保等、制度の枠組みと基盤づくりを行っている。施策の実施にあたっては、都道府県や、住民に最も身近な地方自治体である市町村が、地域や住民のニーズに応じながら担当している。母子保健事業、保育所の入所決定や公立保育所の運営、母子家庭等に対する支援、地域における子育て支援事業、各種相談事業など、子育て支援施策の多くが、地方自治体、特に市町村を中心に実施されている。
 第二に、第1章でみたとおり、都道府県または市町村のレベルでは全国平均以上に少子高齢化が進展し、いわゆる過疎地域以外でもすでに人口減少社会となっている地域が多く存在していることである。地方自治体にとって、地域の少子化傾向に歯止めをかけることや、生まれてきた子ども達を健全に成長させていくことは、地域社会の活力の維持や発展のために不可欠である。地方自治体においては、国の施策の実施ばかりでなく、その地方自治体独自の取組が各地でみられる。
 なお、少子化社会対策基本法では、国の責務とともに、地方公共団体の責務として、「(少子化社会対策基本法の)基本理念にのっとり、少子化に対処するための施策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と規定している。

2 次世代育成支援のための行動計画

(地方版エンゼルプラン)

 1990年代の国レベルの取組としては、エンゼルプランや新エンゼルプランの策定・実施が進められてきたが、エンゼルプランの初年度にあたる1995(平成7)年、厚生省は、全国の地方自治体に対して、「児童育成計画策定指針について」という通知を発出し、「地方版エンゼルプラン」の策定を推奨した。これを受けて、地方自治体において、自主的に地方版エンゼルプランの策定が進められた。2001(平成13)年4月現在では、全都道府県で策定済み、1,063市町村が策定、309市町村が策定中という結果となった。
 策定のスピードが遅かったことや全市町村で策定されなかった理由としては、法律上義務付けられたものではなかったことや、また、この計画に掲げる目標事業量が保育関連事業に絞られていたため、地方自治体によっては積極的に計画を策定する意味を見出しがたかったこと、と指摘されている。

(次世代育成支援のための行動計画)

 一方、2003(平成15)年7月に制定された次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画は、全都道府県及び全市町村にその策定が義務付けられたものである。
 全都道府県及び全市町村は、厚生労働大臣が定める行動計画策定指針に即して、5年を1期とした行動計画を2004(平成16)年度中に策定し、5年後見直しを行うこととされた。したがって、最初の行動計画は、2005(平成17)年度から2009(平成21)年度までの5か年計画である。
 また、行動計画の策定にあたっては、市町村はサービス対象者に対するニーズ調査を実施するほか、説明会の開催等により住民の意見を反映させるとともに、計画を公表することとされた。また、各年度において実施状況を把握、点検しつつ実施状況も公表することとなっている。

(行動計画の内容)

 行動計画策定指針では、計画策定にあたっての基本的視点として、「子どもの幸せを第一に考え、子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要」という「子どもの視点」をはじめ、「次代の親づくりという視点」、「サービス利用者の視点」、「社会全体による支援の視点」、「すべての子どもと家庭への支援の視点」、「地域における社会資源の効果的な活用の視点」等、8つの視点を提示して、子育て支援のための総合的な計画となることを意図している。
 行動計画の内容については、策定指針の中で、「地域における子育ての支援」、「母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進」、「子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備」、「子育てを支援する生活環境の整備」、「職業生活と家庭生活との両立の推進」、「子ども等の安全の確保」、「要保護児童への対応などきめ細かな取組の推進」の7分野が提示され、それぞれ詳細な事項が示されている。さらに、各施策の目標設定にあたっては、利用者のニーズ等を踏まえて、可能な限り具体的な目標値を設定することが必要とされている。
 このように、次世代育成支援のための都道府県または市町村行動計画は、2005(平成17)年度から実施される国の「子ども・子育て応援プラン」と呼応して、「地方版子ども・子育て応援プラン」という性格を持つものといえる。
市町村行動計画及び都道府県行動計画策定指針
<策定に関する基本的な事項>
1.計画策定に当たっての基本的な視点
 (1)子どもの視点、(2)次代の親づくりという視点、(3)サービス利用者の視点、(4)社会全体による支援の視点、(5)すべての子どもと家庭への支援の視点、(6)地域における社会資源の効果的な活用の視点、(7)サービスの質の視点、(8)地域特性の視点
2.必要とされる手続
 ○サービスの量的・質的なニーズを把握するため、市町村はサービス対象者に対するニーズ調査を実施。
 ○説明会の開催等により住民の意見を反映させるとともに、策定した計画を公表。
3.策定の時期等
 ○5年を1期とした計画を、平成16年度中に策定し、5年後に見直し。
4.実施状況の点検及び推進体制
 ○各年度において実施状況を把握、点検しつつ、実施状況を公表。
<内容に関する事項>
1.地域における子育ての支援
 ○児童福祉法に規定する子育て支援事業をはじめとする地域における子育て支援サービスの充実
 ・居宅における支援、・短期預かり支援、・相談・交流支援、・子育て支援コーディネート
 ○保育計画等に基づく保育所受入児童数の計画的な充実等の保育サービスの充実
 ○地域における子育て支援のネットワークづくり
 ○児童館、公民館等を活用した児童の居場所づくりなど、児童の健全育成の取組の推進
 ○地域の高齢者が参画した世代間交流の推進、余裕教室や商店街の空き店舗等を活用した子育て支援サービスの推進 等
2.母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進
 ○乳幼児健診の場を活用した親への相談指導等の実施、「いいお産」の適切な普及、妊産婦に対する相談支援の充実など、子どもや母親の健康の確保
 ○発達段階に応じた食に関する学習の機会や食事作り等の体験活動を進めるなど、食育の推進
 ○性に関する健全な意識の涵養や正しい知識の普及など、思春期保健対策の充実
 ○小児医療の充実、小児慢性特定疾患治療研究事業の推進、不妊治療対策の推進
3.子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備
 ○子どもを生み育てることの意義に関する教育・啓発の推進
 ○家庭を築き、子どもを生み育てたい男女の希望の実現に資する地域社会の環境整備の推進
 ○不安定就労若年者(フリーター)等に対する意識啓発や職業訓練などの実施
 ○確かな学力の向上、豊かな心や健やかな体の育成、信頼される学校づくり、幼児教育の充実など、子どもの生きる力の育成に向けた学校の教育環境等の整備
 ○発達段階に応じた家庭教育に関する学習機会・情報の提供、子育て経験者等の「子育てサポーター」の養成・配置など、家庭教育への支援の充実
 ○自然環境等を活用した子どもの多様な体験活動の機会の充実など、地域の教育力の向上
 ○子どもを取り巻く有害環境対策の推進
4.子育てを支援する生活環境の整備
 ○良質なファミリー向け賃貸住宅の供給支援など、子育てを支援する広くゆとりある住宅の確保
 ○公共賃貸住宅等と子育て支援施設の一体的整備など、良好な住宅環境の確保
 ○子ども等が安全・安心に通行することができる道路交通環境の整備
 ○公共施設等における「子育てバリアフリー」の推進
 ○子どもが犯罪等の被害に遭わないための安全・安心まちづくりの推進
5.職業生活と家庭生活との両立の推進
 ○多様な働き方の実現、男性を含めた働き方の見直し等を図るための広報・啓発等の推進
 ○仕事と子育ての両立支援のための体制の整備、関係法制度等の広報・啓発等の推進
6.子ども等の安全の確保
 ○子どもを交通事故から守るための交通安全教育の推進、チャイルドシートの正しい使用の徹底
 ○子どもを犯罪等の被害から守るための活動の推進
 ○犯罪、いじめ等により被害を受けた子どもの立ち直り支援
7.要保護児童への対応などきめ細かな取組の推進
 ○児童虐待防止対策の充実
 ○母子家庭等の自立支援の推進
 ○障害児施策の充実

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