2 仕事と家庭の両立支援

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(1)育児休業―各国で制度化、スウェーデンで高い取得率

 育児休業制度は、働く親にとって、子どもが乳児期における仕事と育児・家庭の両立を図る制度として、最も重要な施策の一つである。わが国では、育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)に基づき、子どもが1歳に達するまでの取得が可能である(保育所の利用が困難等の理由があれば1歳6か月までの延長も可能)。

(育児休業制度)

 ヨーロッパの主要国では、各国で制度化されており、ドイツやフランスでは、3歳に達するまでの間に最長3年間までの休業が可能である。イギリスでは、母親が産前産後の期間も含めて52週間の休業をとることができるほか、5歳に達するまでの間に両親合わせて13週間の休業をとることができる。スウェーデンでは、子どもが1歳6か月になるまで、又は8歳に達するまでのうち両親手当を受給できる期間(両親合わせて最長480日間)の休業が可能である。アメリカでは、子どもが1歳に達するまでに12週間の休業の取得が可能であるが、介護か本人の病気の場合も全て含んだ休暇の一部である。
 育児休業中の所得保障については、給付がある国とない国とに分かれる。最も給付水準が高い国は、スウェーデンであり、休業期間の480日間のうち、最初の390日間は従前賃金の80%給付、残りの90日間は定額給付となっている。ドイツやフランスでは、所得制限などの要件を満たせば養育手当等の給付を受給できる(ドイツでは最大2年間。フランスでは第1子は最大半年、第2子以降は最大3年間)。イギリスやアメリカでは給付はないが、アメリカでは、2000年から州の失業保険が給付を行うことができるようになっている。
 なお、日本の場合は、雇用保険から従前賃金の40%の給付がある。
 また、男性に育児休業取得を誘導する制度として有名なものは、ノルウェーの「パパ・クオータ制」である。ノルウェーでは、育児休業は最長で3年間取得できるが、このうち子どもが1歳になるまでの間に、父親に4週間の期間が割り当てられている。もし、父親が取得しない場合には、親に支払われる出産・育児休暇手当の支給期間がその分短縮されることになる。

第1‐4‐4表 育児休業制度等の各国比較
事項
日本
フランス
スウェーデン
ドイツ
イギリス
アメリカ
育児休業の概要(名称、期間、取得要件等) ○育児休業子が1歳になるまで(子が1歳を超えても必要と認められる一定の場合には1歳半まで)。
○取得要件
 雇用者。
 有期雇用者(パート、派遣社員)にも 一定の条件付きで育休が適用されることになった(2005年4月施行の改正育休法)
○養育休暇
〔1〕1~3年休職する、〔2〕パートタイム労働(週16~32時間)に移行する、〔3〕職業教育を受ける、のいずれかの方法又はその組み合わせである。
○両親休暇
育児休業は子どもが8歳になるまで、両親合わせて480労働日(配偶者に譲ることのできない休日「パパクオータ」「ママクオータ」各60労働日を含む)。
○両親休暇
最長3年間。両親の一方だけが取得することも、双方が同時に取得することも可能。4回まで分割して取得することもできる。また、使用者の同意があれば、休暇期間中の週30時間以内のパートタイム就業も可能である。
・取得要件
 労働関係が、継続して6か月を超えている労働者。
○育児休暇
子どもが5歳になるまで男女合計で13週間取得可能。
○家族休暇
家族及び医療休暇法に基づき取得できる12週間の休暇(家族の介護や本人の療養、育児等を理由に)の範囲で取得可能。
 育児の場合は、子の誕生から1年以内。
   育児休業中の手当 ○給与の30%保障及び休業終了時に休業中の給与10%給付(雇用保険に加入している者のみが対象)
○本人負担分及び事業主負担分の社会保険料の免除
○財源
 雇用保険
○無給だが、要件を満たせば、乳幼児保育手当の賃金補助が支給される。
 第1子には6か月間、第2子以降については3歳になるまで、休業あるいは勤務時間短縮の度合いに応じて就業自由選択補足手当(育児休業手当に相当)が支給される(完全休業の場合月501.59ユーロ(約6万7千円)、勤務時間を50%以下に短縮した場合月381.42ユーロ(約5万1千円))、勤務時間を50~80%に短縮した場合月288.43ユーロ(約3万9千円)。
○財源
家族給付全国基金、事業主拠出金と税
○8歳もしくは基礎学校1年を終了するまでの子どもの親に対して支給。両親あわせて合計480日まで取得可能。360日は育児休業により得られなかった給料の80%(最低60クローナ(約860円)保障。残り90日は、日額660円保障。
 2年半以内に次の子どもを生むと、復職して労働時間を短縮していても、前の子の出産直前の給与の8割を保障(スピード・プレミアム)。
○財源
事業主が支払う社会保険拠出(支払い給与の2.2%)
○無給だが、要件を満たせば育児手当が支給される。
・休業給付は、生後24か月まで月額307ユーロ(約4万1千円)支給され、就業経験のない者も受給可。所得制限あり。
○財源
 連邦政府の一般財源。
・休業給付はなし ・休業給付はなし
看護休暇 ○小学校就学前の子どもが病気、けがをして世話が必要なとき、年5日まで取得可能。 ○1回の休暇期間は、最長4か月であり、2回更新できる。
○取得要件
 重病、重度の障害を持つか、事故にあった20歳未満の子どもがいること
   ○子どもが12歳未満1人につき年間10日まで。親1人につき、年間25日を超えてはならない。
○取得要件
 〔1〕子どもの年齢が12歳未満であること、〔2〕看護のための欠勤が必要であることを医師が証明すること、〔3〕他の家族が看護できないこと
   ○家族及び医療休暇法に基づき取得できる12週間の休暇(家族の介護や本人の療養、育児等を理由に)の範囲で取得可能。
 育児の場合は、子の誕生から1年以内。
  看護休暇中に支給される手当 ○なし 子どもに付き添うための手当として、月額823.31ユーロ(約11万1千円、1人親は増額、パートの場合は減額)支給される。          ・休業給付はなし
資料: 「海外情勢白書 世界の厚生労働2004」(厚生労働省編)等を基に内閣府少子化対策推進室において作成。
 注: 各国の為替レートについては、日銀報告省令レート(2005年9月分)により換算。

(スウェーデンにおける取得率の高さ)

 育児休業の取得状況を見ると、国により様々な状況がうかがえるが、スウェーデンでは、特に高くなっている。スウェーデンの育児休業取得率は、女性では8割強、男性では8割弱と、男女とも高く、また、事業所の形態(公的機関、民間企業)を問わずに高い。わが国の育児休業の取得率(2004年度調査では、女性70.6%、男性0.56%)と比較をすると、特に男性においてはるかに高い水準となっている2。ただし、スウェーデンの男性の場合、取得した期間は短いため、日数ベースでは両親が取得した育児休業日数の中で、男性によるものは10%強である(スウェーデン政府資料による)。
 スウェーデンの女性の労働力率は日本よりも高いが、その理由として、出産しても育児休業により雇用を継続して離職をしない結果、労働力率が高いということができる。図(第1‐4‐6図)のとおり、子どもを生み、育てる時期に入る人が多いと思われる25~34歳の女性の労働力率を見ると、スウェーデンでは81.6%であり、わが国の68.4%を約13%ポイント上回っている。労働力率の計算の元になる労働力人口は、現に就業している従業者、失業者、休業者に分けられるが、スウェーデンでは、休業者の割合は20.1%であり、これを除いた割合で見ると、わが国との差は小さくなる。
 つまり、スウェーデンでは休業者の存在が相当に女性の労働力率を押し上げており、その背景には、育児休業制度がうまく機能していることがあげられる。日本と比較をすると、「多く生んで、多く休業する」という状況にある。こうして、仕事と育児との両立や、育児休業後の復職が円滑に行われているものと考えられる。
2 日本の場合、女性の育児休業の取得率は約70%となっているが、仕事を持っている女性のうち第1子出生の場合には67.4%が、第2子以上出生の場合には34.5%が、出産後に無職となっている現状(厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」結果による)をみると、仕事をもっている女性全体での実質的な取得率はかなり低いものと推測される。

第1‐4‐5図 スウェーデンの育児休業取得率



第1‐4‐6図 25~34歳女性の労働力率(2004年)


(スウェーデンの育児休業中の所得保障と代替要員の確保)

 このようにスウェーデンで育児休業制度が機能している背景として、所得保障制度(休業中の賃金の保障)の充実や、休業そのものを取得しやすくする体制(代替要員の確保等)が整っていることを挙げることができる。
 まず、所得保障制度であるが、スウェーデンでは、両親保険(1974年に導入された育児休業の収入補てん制度。財源は、事業主が支払う社会保険拠出による)から休業中の最初の390日間は賃金の80%、その後の90日間は定額の手当を受給することができる。390日間のうち、パパクオータ・ママクオータ(配偶者に譲ることができない休業日数)として、父親・母親のそれぞれが60日ずつ取得でき、両親が譲り合える日数としてはそれぞれ135日ずつある(多くは父親の分を母親が使う)。連続してとる必要はなく、また、全日でとる必要もない。
 両親保険からの高率の給付に加えて、スウェーデンの企業等では独自の上乗せ給付を行っているケースが多く、24.4%の事業所でこれが実施されている。最大90%までの事業所が最も多いが、最大100%以上を支給している事業所もある。
 次に、従業員が育児休業を取得した場合の職場の対応を見ると、わが国では、代替要員を確保しない例が多いが、スウェーデンの事業所では「臨時契約社員を雇う」というケースが74.4%を占めている。「業務を分担する」も54.2%あるが、複数回答であることを考慮すると、残りの職員だけで対応するよりも、業務を分担しつつ、臨時社員を雇用して対応する場合が多いものと思われる。また、休業者に対して休業期間中の連絡を電子メール等で行っている事業所も多く、短時間勤務制度やテレワーク3の利用も多い。そして、育児休業の利用に対して、スウェーデン社会では、否定的な評価がほとんど見られない4。こうした育児休業制度の利用を容易にする体制が整備され、利用しやすい職場の空気があることが、従業員に育児休業の取得やその後の働き方について大きな不安を持たせないことにつながっている。そうしたことが、高い育児休業の取得率につながっているものと思われる。
3 テレワークとは、社団法人日本テレワーク協会の定義によると「情報通信技術(IT)を利用した場所・時間にとらわれない働き方」をいう。
4 日本では、育児休業をとりにくい理由として、職場の雰囲気をあげる人も多い(ニッセイ基礎研究所「男性の育児休業取得に関する研究会報告書」(2003年))

第1‐4‐7図 育児休業中の所得保障(80%)への上乗せ(スウェーデン)



第1‐4‐8図 育児休業中の空きへの対応(複数回答)


コラム 女性の労働力率と合計特殊出生率

 男女共同参画会議の「少子化と男女共同参画に関する専門調査会」の報告書「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較」(2005年9月)によると、OECD加盟24か国(1人あたりGDP1万ドル以上)においては、2000年の女性労働力率と合計特殊出生率は、労働力率の高い国ほど出生率が高いという正の相関関係にある。しかし、1970年には、出生率と女性労働力率とは負の相関関係にあり、80年代の半ばを境に関係が変化している。同報告書では、このことから女性労働力率と出生率の関係は、どちらかが上がれば他方も上がるという固定的な関係にあるのではなく、両者に関係するような社会環境(施策・制度・価値観等)があり、この30年間にこれらが変化したものと推測される、と指摘している。
 2000年現在で、日本よりも女性労働力率及び出生率とも高いアメリカ、ノルウェー、デンマーク、オランダの4か国は、1970年には日本よりも女性労働力率が低い国々であった。特に、ノルウェーとオランダは30%台と低く、男性の片働き社会であった。これらの国々が、女性労働力率が高くなる一方で、高い出生率を維持しているのは、70年代以降、女性の社会進出が進む過程で、男性を含めた働き方の見直しや保育所整備、男性の家事・育児参加等の固定的性別役割分担の見直し、雇用機会の均等など、女性が働くことと子どもを生み育てることを両立し得る環境を整備してきた結果と考えられる。
第1‐4‐9図 OECD加盟24か国における女性労働力率と合計特殊出生率:1970年、1985年、2000年

(2) 出産時の休業制度―「父親休暇」の制度化に格差

 育児休業の他に、出産時の休業制度として、出産休業がある。わが国は出産予定日前6週間、出産後8週間の合計14週間となっているが、主要国ではアメリカ以外で制度化されている。
 休業の期間は国により異なり、最も長いのはイギリスの予定日前・出産後合計で52週間である(これは実質的に他国の育児休業の役割も果たしている)。次いでフランスの予定日前6週間、出産後10週間(合計16週間)となっている(子どもの出生順位、複産等の場合には期間が延長される)。ドイツとスウェーデンではそれぞれ、予定日前6週間、出産後8週間、出産前後各7週間の合計14週間と、日本と同じ期間になっている。
 出産休業は出産する者、つまり女性を対象とした制度であるが、対応する男性の制度(男女とも取得可能な育児休業とは別の制度)として「父親休業」がある。この制度化には各国間で格差があり、フランスとスウェーデンでは、後述する手厚い家族政策を背景に、「父親休業」としてそれぞれ11日、10日間取得できる。イギリスでは従来この制度がなかったが、後述する「ワーク・ライフ・バランス」の動きを背景に、2003年から1週間~2週間の「父親休業」が取得できるようになっている。なお、わが国では労働基準法に規定する年次有給休暇以外の休暇として、配偶者の出産の際に男性労働者に与えられる配偶者出産休暇を導入している事業所は33.1%にとどまっている(厚生労働省「平成14年女性雇用管理基本調査」)。

第1‐4‐10表 出産休暇の各国比較
事項
日本
フランス
スウェーデン
ドイツ
イギリス
アメリカ
出産休暇の概要
(期間等)
○休暇期間
 産前6週間 + 産後8週間
○第1子、第2子
 産前6週間 + 産後10週間
○第3子以降
 産前8週間 +産後18週間
○双子の場合
 産前12週間+産後22週間
○休暇期間
 出産前後各7週間
○休暇期間
 産前6週間+産後8週間、母親の就労禁止
○休暇期間
 母親に出産後最大1年間
(最初の6ヶ月は休業給付つき、その後の6ヶ月は休業給付はなし)
  
   出産休暇中の手当 ○なし
 ただし、健康保険法に基づき、出産手当金として、標準報酬日額の60%を支給
○出産休暇手当
 家族給付全国基金が休暇前賃金の80%を支給
   ○母性手当
 1日につき、就労禁止期間の開始前3ヶ月間の平均手取日額(母性手当)が支給される。疾病金庫からは1日13ユーロ(約1,700円)、連邦保険庁からは、総額210ユーロ(約2万8千円)が上限。
 休暇期間中は平均賃金相当額が使用者から支払われ、母性手当を受給した場合には、その額が控除される。
○最初の6ヶ月は休業給付つき、その後の6ヶ月は休業給付はなし   
出産時の父親休暇 ○統一した制度はないが、配偶者出産時の休暇制度を就業規則等に規定している例もある。たとえば、国家公務員の場合には、妻が入院等の日から出産後2週間までの間に、2日の範囲内で休暇をとることができる。 ○出産後11日間(双子の場合は18日間)出産から4ヶ月以内に取得    ○出産時の休暇は、制度化されていないが、両親休暇を取得できる。 ○子どもの誕生から8週間以内に2週間の休暇
○休業給付は、事業主が週100ポンド(約2万円)支払う。
  
資料: 「海外情勢白書 世界の厚生労働2004」(厚生労働省編)等を基に内閣府少子化対策推進室において作成。
 注: 各国の為替レートについては、日銀報告省令レート(2005年9月分)により換算。

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