3 働き方の見直し―ヨーロッパで様々な動き

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 仕事と家庭の両立は、休業制度の整備だけではなく、実際に働いている者が、家庭との両立が可能な働き方を実現させていることが重要である。わが国では、「職場優先」の生活スタイルや昨今の経済情勢等から、20代・30代の若い男性層を中心に仕事の負担がかかり、子育て期の労働者の労働時間が長い(帰宅時間が遅い)ことが指摘されている。

(労働時間の短縮)

 ヨーロッパでは、労働時間の短縮が進められている。その方法として、〔1〕パートタイム労働の増加、〔2〕パートタイム労働等の非正規雇用と正規雇用の均等待遇対策、〔3〕採用、訓練、昇進、労働条件等における男女平等を保障することが挙げられる。
 その中で、労働時間そのものの短縮を行っているのがフランスである。フランスでは、「週35時間労働法」(1998年公布。2000年施行)に基づき週35時間労働5という労働時間の短縮が行われており、これが出生率の回復に効果を上げているのではないかと言われている。また、労働時間の短縮により、ワークシェアリングを通して雇用の創出を促すとともに、仕事と生活の調和が可能になるというメリットが指摘されている。
 その結果、家庭での時間を持つことができるよう、男性を含めて帰宅時間が早くなっている。例えば、スウェーデンでは、男女とも約7割が平日でも午後6頃までに帰宅しているのに対して、わが国では男性の61.4%、女性の5.5%が午後8時以降の帰宅となっている。特に、男性では午後10時以降の帰宅が30.0%にのぼる。そのため、平均帰宅時間(家にいることが多い者等を除く)はわが国では、男性が午後8時49分、女性が午後6時52分であるのに対して、スウェーデンでは男性が午後5時11分、女性が午後4時37分となっており、仕事と家事・育児の両立、すなわち家事や育児を十分行うことができる帰宅時間が実現している。なお、フランス(パリ)の場合でも、男性の半数は午後7時頃に帰宅をし、女性の半数は午後6時頃に帰宅をしている。
5 35時間は、それ以上は割増賃金が発生するという意味の標準時間で、別に、それ以上の労働を禁止するという上限時間として48時間がある。

第1‐4‐11図 平日の帰宅時間


(仕事と生活の調和)

 イギリスでは、仕事と家庭生活の両立は重要な課題であり、特に、両立が困難な低所得世帯への支援が重要とされてきた。イギリスのブレア政権は、2000年から「仕事と生活の調和キャンペーン」を始めている。「仕事と生活の調和」(ワーク・ライフ・バランス)を進めることにより、労働者にとっては生活の質の向上につながり、企業にとっては競争力を高め、業績向上につながるとしている。
 2000年3月から開始された「ワーク・ライフ・バランス運動」の内容を具体的に見ると次のとおりである。
 国民に対する啓発運動の他、仕事と家庭の両立に資する対策を導入し、成功した企業の実例を政府が集め、一般企業への情報提供によって同様の取組の普及を図っている。特に、運動の当初には、「チャレンジ基金プログラム」を実施し、仕事と家庭の両立策の導入を検討している企業に対して、無料の経営コンサルティングが提供され、2000年から3年間に、1,150万ポンド(約22.5億円)の公的資金が投入された。プロジェクト実施期間中に、計448企業がコンサルティングを受けている。
 さらに、仕事と生活の調和を下支えするための条件整備として、パートタイム労働における同一労働・同一賃金の義務づけ、出産休暇の延長、父親休暇の創設、児童給付の引き上げ、児童税額控除制度の創設、保育所の整備等、様々な施策を講じている。
 仕事と生活の調和策は、出生率の向上を直接の目的としているものではないか、近年のイギリスの合計特殊出生率の水準(1.7程度)をみると、働きやすい環境の整備が結果として出生率の回復に寄与しているのではないかとみられている。
第1‐4‐12図 イギリスにおけるワーク・ライフ・バランスを実現させるための制度(休業及び労働時間に関して取得が保障されている制度)

(ドイツの取組)

 ドイツでも多様な働き方を実現するための取組みが行われている。例えば、超過勤務縮減につながる制度として労働時間貯蓄口座制度がある。これは、所定内労働時間と異なる場合に、時間外手当等によって金銭的に精算せずに、中長期的にプラスあるいはマイナスの債権として各労働者の労働時間貯蓄口座に記録していく制度で、プラスの債権は休日として、マイナスの債権は勤務として相殺することができる。2001年4月時点で、労働者の26%が同口座を利用しており、労使からも評判がよい。また、ドイツの企業の約4分の3は、何らかの柔軟な労働時間制度があり、導入状況をみると日・月・年単位での柔軟な労働時間制58.0%、一時的なパートタイム労働制40.4%、在宅勤務7.8%等となっている。
 ただし、働き方の見直しが進んでいるにもかかわらず、出生率の回復がみられないのは、女性の労働力が上昇する中で、後述するように、保育をはじめとした仕事と子育てを両立できる環境が十分に整っていないことによるのではないかと考えられる。

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