4 保育サービス

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 わが国では、保育サービスとして、認可保育所が主たる役割を果たしてきた。また、幼稚園も幼児教育を行う教育機関としての役割を果たしている。主要国の状況を見ると、待機児童が解消したと言われるスウェーデン、家庭保育が充実しているフランスなどで際だった特徴が見られる。

(1)コミューン(地方政府)の責任の下でサービスが充実したスウェーデンと認定保育ママが普及したフランス

(スウェーデンの保育サービス)

 スウェーデンは、ヨーロッパの主要国で最も充実した保育サービスを提供している国の一つである。保育サービスはわが国の市町村に相当するコミューンが所管している。5歳までの子どものうち、保育所で35.2万人が、家庭型保育等で約3.3万人(いずれも2003年)がそれぞれ保育サービスを受けている。これらの保育サービスを受けている者の人口に対する割合は1~5歳で82%であり、いわゆる待機児童はほとんど解消していると言われている。また、個別保育として、ファミリー・デイケアーがコミューンの実施責任の下で実施されている。これは、最寄りの場所に保育所が存在しない場合等に、保育所の機能を代替する等の役割も果たしている。こうした様々な保育サービスの充実が、仕事と家庭の両立を現実的なものにしている側面があるものと言える。

第1‐4‐13表 スウェーデンにおける保育所等に入所している児童の割合(2003年)
年齢
保育所
家庭型保育
総数
1歳
40%
5%
45%
2歳
79%
8%
87%
3歳
83%
8%
91%
4歳
88%
8%
96%
5歳
90%
7%
97%
総数
75%
7%
82%
資料: Swedish Institute "Childcare in Sweden"


 ただし、スウェーデンでは0歳児保育はほとんど見られない。それは、1歳くらいまでは育児休業の取得や短時間勤務で対応することを前提としているからである。なお、保育所は子どもの生活の場と教育の場を提供するという機能を果たしている。後者の機能も重視する観点から、1996年より社会省から教育省に移されている。

(フランスの保育サービス)

 フランスでもフルタイムで働く女性が多く、こうした人々のニーズにこたえるために保育サービスが提供、利用されている。まず、Crecheと呼ばれる保育所(3歳未満が対象、施設型、親管理型、家庭型等がある)があり、約18.2万人が入所している。3歳未満の人口(約227万人)に対する割合は8.0%にとどまっており(2002年、EU統計局資料による)、この保育所によるサービス提供体制は十分ではないといえる。この他に、一時託児所(Les Halte-Garderie)や2歳から入所できる保育学校(Ecole maternelle)がある。
 その一方で、フランスでは在宅での保育サービスが発達している。その代表が、認定保育ママ(Assistantes maternelle)である。これは、在宅での保育サービスを提供する者のうち、一定の要件を備えた者を登録する制度で、県政府への登録者数は34.2万人、このうち就業している者は25.8万人である(2001年、EU統計局資料による)。この認定保育ママが現在の保育需要の約7割を担っているとされている。認定保育ママは、その利用者が雇用し、賃金や社会保険料を負担する。この費用については、「乳幼児迎入れ手当」から、6歳未満の子どもの保育費用(認定保育ママの雇用の賃金の一部と社会保険の使用者負担等)が補助されている。また、後述のように税制を通じた支援も行われている。このように、スウェーデンと異なり、フランスでは家庭的な保育サービスが中心となっている。
第1‐4‐14図 フランスの主な保育サービス体系(年齢別)


第1‐4‐15表 保育サービスの各国比較
事項
日本
フランス
スウェーデン
ドイツ
イギリス
アメリカ
保育所の概要
(設置主体、財源等)
・設置運営主体
市町村、民間
・財源
 国から、市町村へ保育所運営費として2分の1、都道府県から4分の1の補助金を給付。
・料金
 所得階層により0円~8万円の基準額が定められており、市町村により基準額を元に軽減措置等が行われている。
・利用者
 0~6歳児
・利用状況
 3歳未満 15.2%
 3歳~6歳未満 36.7%
(2003年10月1日現在、厚生労働省保育課調べ、総務省人口統計より内閣府にて計算)
・設置数
 22,272(2003年)
・設置運営主体
市町村、民間、非営利団体
・財源
 家族給付全国基金から市町村に補助金、市町村から非営利団体に補助金を給付。
・料金
 パリ市運営の場合=1人、月30ユーロ(約4千円)~570ユーロ(約7万7千円)(応能負担)
 パリ市民間保育所=1人、月1,500ユーロ(約20万2千円)程度
・利用者
 0~3歳児
・設置数
 4,300(1999年)
・利用状況
 3歳未満の児童(約230万人)のうち、集団託児所は約13万人、ファミリー保育所は約7万人となっている。
・設置運営主体
保育所の大半は、コミューン(市町村)により設置、経営されている(一部、親たちにより組織運営される両親協同保育所等が存在)。
 保育サービスは、幼児教育の一環として位置づけられており、保育所に通っていない子どもと親が参加するオープン型保育所も設けられている。
・利用者
 1~6歳対象。教育的活動を中心とした託児施設。親の就労支援のため1日10時間~12時間開設
(パートタイムグループ
 4~6歳対象。1日3時間。他の施設と併用されることが多い。)
・利用状況
 1~5歳児の82%が保育所を利用している(2003年)。逆に、両親休暇制度があるため、0歳児の保育所利用は、基本的になし。
・オープンプレスクール
 他のサービスを利用していない未就学児が利用可能。両親の付き添いが必須。
・設置運営主体
地方自治体、協会、福祉団体等
・保育所については、旧西ドイツ地域では、3歳未満児の育児は、家族の役割に属するものとの考えが根強く、保育サービスの整備が低い水準にある(ある州では、対象年齢に占める利用者の割合は、保育所2.3%、幼稚園97%となっている)。一方、旧東ドイツ地域では、社会主義時代の名残で保育施設は充実している。
 また、3歳以上6歳未満の幼児全てに幼稚園入園の権利が保障されている。
・利用者
 0~3歳児
・利用料
 州ごとに決められている。
・設置運営主体
自治体、民間
 公立の施設は数が少なく、一人親家庭など特別なニーズを持つ児童が優先利用しており、施設の多くは、企業内託児施設や民間企業が設立した施設となっている。利用料は、原則、親の負担。伝統的に、保護を必要とする子どもへのサービスが中心に構築され、一般家庭向けサービスの整備は低い水準にとどまっている。
 集団的な施設保育を行う保育形態は、デイナースリーと呼ばれる。
・利用者
 5歳未満児
・利用状況
 施設保育に家庭的保育を合わせても、5歳未満児の10数%をカバーする程度。
・設置運営主体
教会、非営利団体、企業
 いずれも、親が私的に契約して利用。
・利用料
 低所得の援助を受ける家庭を除いて、親が利用料を負担する。
・国全体を通じた制度はなく、保育所の設置基準等も州が定める。また、連邦政府は州に対して、低所得家庭が良質な保育を受けることができるプログラムに対する助成を行っている。
・施設型の保育所は、デイケアセンターという。
保育ママ、ベビーシッター等 ・家庭的保育事業
 保護者の就労等により、保育に欠ける3歳未満児に対し、保育所との連携により保育者の居宅において保育を行うもの。保育需要の増に対する応急措置的なもの。家庭的保育事業を行う市町村へ国、都道府県が助成をしているが、利用者の負担月額は約5万円~7万円となっている。
・地方自治体が単独事業で行うものあり
・ベビーシッター協会に登録する事業者数は、115(2003年)。基本利用料、1時間あたり1,000円~2,400円程度
・認定保育ママ
 3歳未満児の児童(約230万人)のうち、認定保育ママを利用する児童は、約50万人と集団託児所(約13万人)に比べ、圧倒的に多い。
・認定保育ママを利用している親に給付(児童の数と所得により支給額決定(所得制限なし))
<3歳未満>
 151.78ユーロ(約2万円)~354.19ユーロ(約4万8千円)(月額)
<3~6歳>
 75.89ユーロ(約1万円)~177.11ユーロ(約2万4千円)(月額)
・保育ママは、保育所として行政に雇用されるパターンと家族と直接契約するという二通りのパターンあり
・在宅保育手当
 6歳以上の児童のためにベビーシッターを雇う家庭への手当(ただし養育者が双方とも(片親の場合は1人)が働いている場合のみ)
・ファミリーデイケア
 チャイルドマインダーが自宅でチャイルドケアを引き受ける、自治体のサービス。未就学児と、学校に通う子どもたちの放課後の世話をし、両親の都合に合わせて利用される。
・在宅保育サービスは、公的制度として認めておらず、料金が高いため、利用できる親は限られている。 ・チャイルドマインダー
 保育所同様に、利用料は原則親の負担であり、保育所とチャイルドマインダー合わせても、10数%の利用率にとどまっている。
・親が私的に契約を行って雇用するベビーシッターの利用が進んでいる。
・家庭的保育は、自宅で他人の子どもを預かる仕組みで、州に登録して1つの家庭で6人程度の子どもを預かるものである。
資料: 「海外情勢白書 世界の厚生労働2004」(厚生労働省編)等を基に内閣府少子化対策推進室において作成。
 注: 各国の為替レートについては、日銀報告省令レート(2005年9月分)により換算。

(2)保育サービスの整備が遅れているドイツ、イギリス

 これに対して、保育サービスの整備が低い水準にとどまっているのがドイツである。保育所(Krippe、3歳未満の者を対象)の定員は2002年で約19.0万人であり、3歳未満児(約223.3万人)の8.5%にとどまる。地域的には、旧西ドイツ地域を中心に遅れており、ノルトライン・ヴェストファーレン州やバイエルン州等で保育所の利用者の割合は全国平均を大幅に下回っており、この2州では2.1%にとどまっている(2002年)。その一方で旧東ドイツ地域では、保育所の利用率は全国平均を大幅に上回っている(2002年で37%)。
 その背景として、3歳までは育児休業があり、これを利用すれば十分であるという考えがある。また、子どもの保育は家庭で母親が行うという考えが旧西ドイツ地域を中心に依然として強く(一方で旧東ドイツ地域では男女の平等な社会参加を実現)、保育料も高いため(保育料補助は一部の州のみ)に、利用者が限られること等が挙げられる。また、在宅保育サービスとしての保育ママ(ベビーシッターなど)については、全国的な制度として認められたものはなく、認可も資格も不要であるため、実態を把握するのが困難であるが、料金が高いため利用できる親は限られていると言われている。さらに、幼稚園の制度もあるが、保育は半日制で、給食サービスもない場合がほとんどであり、これが母親のフルタイム就業を困難にさせている現状もある。
 イギリスでも、ドイツと同様に保育サービスの整備が遅れていたところであるが、近年「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」政策の一環で保育サービスの充実が図られつつある。ただし、まだ供給が少ない状態にある。保育所の定員は28.5万人、教育基準事務所(OFSTED)への登録を行った個別保育者(チャイルドマインダー)による保育の定員も30.5万人となっている(2001年、イギリス教育省資料による)。これらは5歳未満の子ども(約348.6万人)の約17%に相当する水準にしかすぎない。

(3)民間サービスが中心のアメリカ

 アメリカでは、保育サービスは民間企業等により、比較的安価で供給されていることや、一定の収入があればそうした民間の保育サービスを購入できるため、公的保育サービスの供給は限定的である。そのため、全国共通の保育サービスの制度は存在せず、州によって制度が定められており、保育士の配置基準等の具体的な規制は州により異なっている。
 その一方で、保育現場における保育担当者の労働条件・給与・福利厚生の水準が低く、定着しない等の問題点も指摘されている。なお、2002年現在で、全国の保育所(Day Care Center)に234万人、保育学校(Nursery, Preschool)に114万人が入所している。両者が学齢前の子どもをそれぞれ12.7%、6.2%カバーしていることになる。また、家庭保育者(ベビーシッター等)による保育サービスを受けている子どもは255万人(13.8%)となっている。

第1‐4‐16表 アメリカにおける保育基準の例(2004年)
(1)保育所
規制の内容
子どもの年齢(一部)
1歳6ヶ月
3歳
4歳
5歳
カリフォルニア 保育士1人
当たり児童数
6人
12人
12人
14人
1クラスの定員
12人
基準なし
基準なし
基準なし
ニューヨーク 保育士1人
当たり児童数
5人
7人
8人
9人
1クラスの定員
12人
18人
21人
24人
(2)家庭型保育
施設当たり児童数の上限
小規模型
大規模型
ニューヨーク
原則として5人
7~12人
オハイオ
基準なし
4~12人
ルイジアナ
基準なし
基準なし
資料: 米国厚生省資料より内閣府少子化対策推進室で作成

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