第5章 少子化対策の今後の方向

[目次]  [戻る]  [次へ]


第1節 少子化対策に関する国民のニーズ

(少子化対策に関する関心の高まり)

 前章まで、少子化対策について、国における取組、企業における取組、地方自治体における取組、欧米諸国や東アジア諸国における取組をみてきたが、本章では、これまでの少子化対策の状況を踏まえつつ、少子化対策に対する国民のニーズ、社会全体の子育て費用等について分析しながら、今後の少子化対策のあり方を考える上でのいくつかの視点を提示する。
 政府は、1967(昭和42)年以来、毎年「国民生活に関する世論調査」を行い、各種施策の中で、「政府に対して力をいれてほしいと思う事項」を尋ねている。この調査結果をみると、近年、少子化対策に関して、国民の間では政府に対する要望が急速に高まっていることがわかる。
 調査対象事項の中に「少子化対策」が入ったのは、1998(平成10)年と、比較的最近のことである。当時、最も選択割合が高かったものは「景気対策」で71.9%、「少子化対策」は16.6%と、全項目(27項目)の中では18番目の順位であった。2001(平成13)年には「少子化対策」に対する要望は11.6%と低下したが、その後は上昇傾向となり、最新の2005(平成17)年調査では、30.7%と、4年間で2.6倍、過去最高を記録した。全項目(31項目)の中でも、上から8番目の順位に上昇している。(第1‐5‐1図参照)。また、20代から30代の男女では、「少子化対策」を選択する割合は全年齢の平均よりも高く、特に30代の女性では39.3%、20代の女性では36.4%という高さになっている。結婚や出産、育児にあたる時期の女性の政府に対するニーズが如実にあらわれている。
第1‐5‐1図 政府に対する要望


(子どもの年齢からみた子育て支援策)

 現在のわが国では、様々な子育て支援策が講じられている。主な子育て支援策を子どもの年齢からみると、図のとおりとなる。
 1995(平成7)年度からのエンゼルプラン、2000(平成12)年度からの新エンゼルプランと、10年間にわたって少子化対策が講じられてきた。この間、児童手当の支給対象年齢を3歳未満から義務教育就学前までに拡大(2000年)、さらに小学校第3学年修了前までに拡大(2004年)、育児休業中の給付金制度の創設(1995年に25%給付)、さらにその引上げ(2001年から40%)、「待機児童ゼロ作戦」により保育所入所児童の拡大(1995年の約159万人から、2004年には約197万人)、延長保育等多様な保育サービスの展開、ファミリー・サポート・センターなどの地域における子育て支援への取組等、新たな制度創設・改正等が行われたり、既存施策の充実が図られてきた。
 子どもの妊娠・出産から乳幼児期の子育て、小学校以降の学校教育の期間に至るまで、子育て支援のメニューはそろっているが、これらの施策に対して、国民の評価やニーズはどのようになっているだろうか。
第1‐5‐2図 子どもの年齢からみた子育て支援策

(子どもや親の年齢によって異なるニーズ)

 少子化対策に関する具体的なニーズを知る上で注意しなければならないことは、少子化対策に関するニーズは、子どもや親の年齢、あるいは世帯のあり方によって様々なことである。たとえば、保育所に対するニーズは、子どもが就学前の共働き世帯に生じるが、子どもが小学生以上の共働き世帯では、保育所に対するニーズはなくなる。その代わり、放課後児童クラブに対するニーズが生じる。また、妊産婦がいる世帯では、出産費用や健診に対する支援策のニーズが高いことが考えられるが、子どもが大きくなり、中学・高校あるいは大学に通学している子どもがいる世帯では、出産時点での支援策よりは、教育費負担に対する支援策のニーズが高くなる。さらに、子育てが終わった世代では、子育て支援に対する関心そのものが低下する。
 こうした点を考慮すると、少子化対策に対するニーズを的確に把握するには、全国民を対象にした平均的な調査結果よりも、ある一定年齢層の子育て世帯を対象にした調査結果の方がより的確に現われてくるものといえる。
第1‐5‐3図 児童手当の利用目的


(子育て女性の意識調査)

 そこで、内閣府では、子どものいる20歳から49歳の女性を対象に、少子化社会対策に関する意識調査を実施し、子育てをしている女性のニーズを把握することとした1
 その調査結果によると、まず、各制度の利用実態であるが、子どもの就学前においては、95%近くの人が、保育所か幼稚園を利用しているか、利用したことがある。保育所を利用した人の中で、認可保育所以外の施設・事業を利用した人は2割であるが、その人たちの中で半数は無認可保育所の利用経験がある。また、事業所内託児所や民間企業によるベビーシッター、地域の子育て助け合い事業の利用経験者もいる。
 妊娠・出産・乳児・子育て期においては、4割の人は働いていない。働いている人たちの間では、育児休業や短時間勤務等の子育て支援的な制度の利用経験者よりも、これらの制度を利用しなかった人の方が多い。働きながら育児休業等の制度を利用した人は、調査対象者全体の2割であり、育児休業取得者は全体の1割となっている。
 児童手当については、現在受給している人が46.9%、過去に受給したことがある人が28.6%と、両者を合わせると、4人に3人は受給経験がある。児童手当を何に使っているのかというと、図(第1‐5‐3図)のとおり、「特に用途は決めず月々の家計に足して使う」(30.1%)、「子どものミルクやおもちゃ、衣服など子育て費用にあてる」(28.0%)、「子どものための貯蓄に当てている」(26.0%)、「保育料や幼稚園費に当てている」(18.4%)の順となっている。
1 内閣府「少子化社会対策に関する子育て意識調査」(2005年3月)。全国の子どものいる20歳から49歳の女性を対象に実施した調査。2005年2月中旬から3月上旬にかけて調査を実施。有効回収数は、2,260人(全体の57%)である。

(少子化対策としての有効性に関する感想)

 調査では、児童手当と扶養控除の税制について少子化対策として有効と考えるかどうかを尋ねたところ、図(第1‐5‐4図)のとおり、児童手当については、75.6%の人が「役立つ」と答えている(「とても役立つと思う」と答えた人に「役立つと思う」と答えた人を加えた割合)。同様に、扶養控除税制については、75.4%の人が「役立つ」と答えている。このように、4分の3の人たちは、両方の施策とも少子化対策として有効であると考えている。
 児童手当の今後のあり方について尋ねたところ、「支給の対象となる児童の年齢をもっと引き上げる」を選択する人が61.3%、次いで、「毎月の手当額を引き上げる」が59.0%となっている。「毎月の手当額の引き上げ」については、20代といった年齢層の若い人たちの間で希望割合が高い。扶養控除などの税制の今後のあり方については、最も高いものが、「子ども1人あたりの扶養控除の金額を引き上げる」で57.7%、次いで「第1子よりも第2子、第3子の扶養控除の金額を大きくする」で48.2%、「大学生の子どもの扶養控除金額を大きくするなど、子どもの年齢によって差をつける」が41.2%の順となっている。
第1‐5‐4図 少子化対策としての有効性に関する意見


(子育て女性の7割が経済的支援を要望)

 少子化対策として重要なものを尋ねたところ、図(第1‐5‐5図)のとおり、「経済的支援措置(保育・教育費への補助、医療費補助、児童手当など)」が69.9%と、子育てをしている女性の7割が選択をするほど、目立って高くなっている。次いで、「保育所をはじめとした子どもを預かる事業の拡充」(39.1%)、「出産・育児のための休業・短時間勤務(産前・産後休業、育児休業、育児時間確保のための短時間勤務など)(37.9%)、「出産・子育て退職後就業を希望する者に対する再就職支援」(36.1%)、「仕事と育児の両立の推進に取り組む事業所への支援」(33.1%)の順と、保育サービスの充実や働き方の見直しに関する事項があげられている2
 「経済的支援措置」をあげる人が最も多いが、2番目以降の「保育所事業の拡充」や「休業・短時間勤務」、「再就職支援」、「事業所への支援」という項目は、いずれも仕事と育児の両立支援策に関する施策である。この質問では、選択肢の中から最高3つまで選ぶこととしたので、両立支援等については、選択が分かれたものと考えられることから、経済的支援に劣らず、仕事と育児の両立支援策に対するニーズも高いとみることができる。
 これを末子の就学状況別にみると、「経済的支援措置」は年齢が低い層ほど多くあげられる傾向がある。子どもが小さい世帯では、親の年齢も若く、収入も比較的低いために、経済的支援に対するニーズが高いことがうかがえる。また、「出産・育児のための休業・短時間勤務」は、末子が中学生の人に、「再就職支援」は、末子が高校生または大学生等の人に、それぞれやや高くなっている。このように、子育て世帯の女性の年齢によってニーズが異なる状況がみられる。
2 内閣府政府広報室「少子化対策に関する特別世論調査」(2004年10月)において、少子化対策で特に期待する政策を尋ねたところ(複数回答)、「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進」(51.1%)、「子育てにおける経済的負担の軽減」(50.5%)の順となっている。20代及び30代では「子育てにおける経済的負担の軽減」が6割を超えて、最も高い。

第1‐5‐5図 少子化対策として重要なもの


(経済的支援の中では、「保育料または幼稚園費の軽減」がトップ)

 少子化対策として経済的支援措置が重要であると考える人に、具体的に望ましいものを尋ねたところ、「保育料または幼稚園費の軽減」(67.7%)が7割弱で最も多くあげられている。次いで「乳幼児(たとえば6歳未満)の医療費の無料化」(45.8%)、「児童手当の金額の引き上げ」(44.7%)、「児童手当の支給対象年齢の引き上げ」(42.5%)の順となっている。税制については、「保育料や教育費を家計の必要経費とすることによる所得税の軽減」(32.3%)、「子どもの多い世帯に対する所得税の減税」(28.4%)があがっている。
 年齢別にみると、乳幼児医療費の無料化は、年齢の低い層ほど多くあげられている。一方、児童手当の対象年齢の引き上げは、35~39歳(48.8%)で、子どもの多い世帯に対する所得税の減額は45~49歳(36.3%)で、それぞれ多くあげられている。「0歳児に対する手当ての支給」は20歳代で比較的多くあげられている。本人職業別にみると、「保育料や教育費を家計の必要経費とすることによる所得税の減税」をフルタイム雇用者の4割強があげている。
第1‐5‐6図 経済的支援措置として望ましいもの


コラム 小泉内閣メールマガジンの少子化対策アンケート結果

 「小泉内閣メールマガジン」では、2005年7月に、「少子化に関するアンケート調査」を実施した。10日間という短期間に、10代から70代以上の人たち約2万3千人から回答があった。これは、これまでメールマガジンで行ってきたアンケート調査の中では最高の数であり、少子化問題に対する国民の反応の高さがうかがえる。
 この中で、「少子化に歯止めをかけるには、どのような政策が必要だと思いますか」という問に対して、以下のような結果となった。「子育てに対する経済的支援を充実する」が70.1%、次いで「安心して子どもを生み育てられる生活環境を整備する」(64.0%)、「希望すれば誰でも預けられるよう保育所を増やす」(55.0%)、「出産退職後の再就職の環境を整備する」(54.6%)、「延長保育などきめ細かい保育サービスを充実する」(52.5%)の順となっている。ここでも、経済的支援の充実に対する要望が大きいことがわかる。
 また、「少子化対策のアイディア」を募ったところ、1万6千人を超える意見が寄せられた。これらについては、今後、少子化対策を検討する上での参考資料とする予定である。なお、このアンケート調査結果や少子化対策のアイディア約240件については、メールマガジンのホームページで読むことができる。
第1‐5‐7図 少子化に歯止めをかけるための政策


[目次]  [戻る]  [次へ]