2 新しい少子化対策の決定

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(少子化社会対策推進会議)

 前述したとおり、2005(平成17)年度からは、少子化社会対策大綱及び子ども・子育て応援プランに基づき、幅広い観点から多岐にわたる少子化対策が総合的に推進されている。しかしながら、少子化の状況をみると、2005年8月公表の「人口動態統計速報」では、2005年上半期において人口が31,034人の減少(速報値ベース)となり、半年間の人口動態において初めて出生数よりも死亡数が上回るなど、予想以上に少子化が進行していることが明らかになった。
 こうした予想以上の少子化の進行に対応し、少子化社会対策の戦略的な推進を図るため、2005年10月、少子化社会対策会議の下に、関係閣僚と有識者から構成される「少子化社会対策推進会議」(主宰:内閣官房長官、構成員:内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)、総務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、有識者8名)が設置され、さらにその下に、少子化担当大臣と推進会議の有識者から構成される「少子化社会対策推進専門委員会」(主宰:少子化担当大臣)が設置された。
 推進会議及び専門委員会では、子ども・子育て応援プランにおいて掲げられた3つの検討課題(地域や家族の多様な子育て支援、働き方に関わる施策、経済的支援)を中心に議論が行われた。専門委員会では、10回の会議を重ね、2006(平成18)年5月、それまでの議論を報告書(「これからの少子化対策について」)として取りまとめ、推進会議に報告した。
3 子ども・子育て応援プランでは、最後に検討課題として、社会保障給付の見直しと併せて、「地域や家族の多様な子育て支援、働き方に関わる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、その在り方等を幅広く検討する」こととしている。

 報告書では、少子化対策は「時間との闘い」の局面になっているとし、少子化対策の更なる強化・拡充を図るための基本的考え方と具体的な対応策を提言している。今後の少子化対策の基本的考え方としては、〔1〕子どもの視点に立った対策が必要、〔2〕子育て家庭を社会全体で支援する体制が必要、〔3〕ワーク・ライフ・バランスの実現や男女共同参画の推進が必要、〔4〕家族政策という観点から少子化対策を推進することが必要、という4つの視点を掲げている。
 具体的な対応策としては、子ども・子育て応援プランに掲げられた3つの課題を中心に、現状と今後の施策案について議論の結果をまとめている。「地域や家族の多様な子育て支援」の分野では、地域の子育て支援拠点の拡充や人材の育成、子育て支援のためのネットワークの整備、待機児童ゼロ作戦の推進等の保育サービスの拡充、放課後児童対策の充実、小児科医や産科医の確保、「働き方に関わる施策」の分野では、育児休業の取得促進等勤労者に対する子育て支援、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に基づく働き方の実現や、女性の再就職等の支援策の推進、非正規労働者に対する処遇の改善、「経済的支援」の分野では、妊娠・出産における負担の軽減、子育て費用の負担軽減、経済的支援やサービス拡充に関する財源について、それぞれ提言をしている。

(少子化担当大臣と地方自治体トップのブロック会合)

 少子化対策の実効ある推進において都道府県及び市町村の果たす役割は極めて大きい。そこで、少子化担当大臣が直接地方ブロックに出向いて、知事などの地方自治体トップと、国や地方自治体の取組に関して政策対話を行う「少子化担当大臣と地方自治体トップのブロック会合」(大臣行脚)を行うこととし、2005年12月に熊本県で開催された九州ブロック会合を皮切りに、2006年4月の東京都で開催された東京ブロック会合まで、全国10のブロックにおいて開催された
 ブロック会合では、大臣から国の少子化対策の現状と課題の説明、知事等からそれぞれの自治体の取組の説明がなされ、また、少子化対策の提言や国への要望等について、活発な意見交換が行われた。
 地方自治体から国への要望としては、自治体単独では難しく、全国一律の実施が必要な対策についての方針の明確化、地方の創意工夫や努力に報いる仕組みの実施、経済的支援の拡充などであり、特に強い要望としては、次のようなものがあった。〔1〕妊娠・出産期の経済的支援、〔2〕周産期、乳幼児医療の充実のための制度的、財政的支援、〔3〕若い子育て世帯に対する税制や給付などの経済的支援、〔4〕地域における多様な子育てサービスの充実のための財政的支援、〔5〕放課後の児童対策の充実、〔6〕教育費用の負担軽減、〔7〕企業における子育て支援推進のための税制上の支援、〔8〕育児休業の利用促進、再就職支援、〔9〕若者の就労支援、〔10〕家族の敬愛、結婚の意識啓発
 また、ブロック会合において、地方自治体では妊娠・出産や子育て費用の負担軽減のための取組(地方自治体が単独事業として行っている乳幼児医療費助成事業の対象拡大や独自の手当制度の創設等)や、企業における働き方の見直しのための取組(中小企業における次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定推進や先進的な企業に対する入札時の優遇措置、低利融資制度の創設等)、子育て支援拠点の拡充や人材育成のための取組(空き店舗を活用した子育て支援拠点の整備、世代間の交流事業の実施、子育て支援のボランティアの養成、NPO団体への助成、放課後の児童の居場所づくりの充実等)などの分野で、独自の事業を数多く展開していることが披露された。また、行政機関の中に、少子化対策を専門的に担当する組織を設置する動きもみられる
 これらは、地方自治体が、いずれも少子化の進行に強い危機感を持ち、地方の実情に即したきめ細かな施策の展開を図ろうとしていることをうかがわせるものである。
4 読売新聞社の調査(2006年8月)によると、全国47都道府県及び政令市のうち、約85%の自治体が少子化に危機感を抱いている。深刻な問題として、「社会、経済の担い手が減り、地域の活力が失われる」をあげるところが最も多く、ついで「税収が減るなどして、地域の財政がさらに悪化する」「地域に根付く伝統や技術の継承が難しくなる」となっている。
5 全国知事会では、次世代育成支援対策特別委員会(委員長:潮谷義子熊本県知事)を設置し、次世代育成支援対策に関する議論を進め、本年5月、社会保障給付費における児童・家族関係給付の充実、企業における働き方の見直しの促進、子育てについてのポジティブ・キャンペーンや国民運動の展開を柱とする提言をまとめている。
6 地方自治体の独自の取組をはじめ、国への要望等、少子化担当大臣と地方自治体トップとのブロック会合に関する報告書は、内閣府ホームページで読むことができる。

第1‐2‐4図 少子化担当大臣と地方自治体トップのブロック会合の実施

(政府・与党協議会の検討と新しい少子化対策の決定)

 以上のように、2005年秋以降、政府において少子化対策の検討が進められてきたが、与党においても、政府内の検討にとどまらず、政府・与党で連携を密にしながら、少子化社会対策を総合的かつ戦略的に推進していく必要があるとの認識が高まり、2006年3月、「少子化対策に関する政府・与党協議会」が設置され、さらにその下に、小委員会が設置された。政府・与党協議会は、内閣官房長官と関係閣僚、与党の三役(幹事長、政調会長、総務会長等)や参議院幹部等を中心に構成された。また、小委員会は、少子化担当大臣と官房副長官が中心となって、関係府省の副大臣、与党の関係部会の会長等で構成された。
 政府・与党協議会及び小委員会では、少子化社会対策推進専門委員会の報告書や少子化担当大臣と地方自治体トップとのブロック会議における議論、与党各党における報告等の内容を踏まえつつ、地域における子育て支援、仕事と家庭・育児の両立支援、経済的支援、家族や地域の役割、働き方の見直し等についての国民運動といった課題を中心に議論が行われた。
 そして、2006年6月14日、小委員会において「新しい少子化対策について(案)」がまとまり、同月20日に開催された政府・与党協議会の合意を得て、同日開催の少子化社会対策会議において「新しい少子化対策について」(以下、本章では「新しい少子化対策」という。)が決定された
7 「新しい少子化対策について」の全文は、巻末の参考資料に掲載している。

少子化社会対策会議(6月20日)の様子

第1‐2‐5図 「新しい少子化対策について」の検討のスキーム

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